イラク情勢Watch vol.6 05年8月5日
         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲

       毎週更新(予定)


Topics
1)週間イラク報道Pick up
2)懸念されるイラクの女性の権利の後退
3)滞る食料配給で困窮するイラクの貧困層
4)来年末までにイラク駐留米軍を大幅削減か〜米誌が報道〜
5)反戦イラク帰還兵団体メンバー、兵役拒否の米兵への支援を訴える
6)イラク人ブロガー、不当拘束の体験をブログで報告



1)週間イラク報道Pick up

【05.8.3】イラク米兵14人と通訳死亡 米記者の射殺体も発見(共同)

【05.8.2】<イラク>米兵死者が1800人超す 国防総省(毎日)

【05.8.1】イラク新憲法、期限内に 対立点は政治決着へ(共同)

【05.7.31】国防総省イラク駐留軍の大幅削減検討=来年半ばまでに8万人へ−米誌(時事)

【05.7.30】陸自7次部隊、イラクへ出発=現地治安悪化で空港も厳戒−(時事)

【05.7.29】イラク帰還米兵の3割、「心の健康」に問題(読売)

【05.7.28】陸自宿営地付近で爆発音騒ぎ=英軍の不発弾処理−サマワ(時事)



2)懸念されるイラクの女性の権利の後退

 
 イラクの新たな憲法の草案が今月15日に提出されるが、イスラム法(シャリーア)を憲法に反映するかどうかで、世俗派と宗教政党との間で対立が続いている。特に懸念されるのが、女性の権利の後退だ。
 
 サダム政権下のイラクでは世俗化政策が進められ、中東においてイラクは女性の社会進出が最も進んだ国であり、結婚や離婚、遺産相続に関する民法でも女性の権利は擁護されていた。しかし、シーア派の宗教政党がイラク国民議会の議席の過半数を占める中、男尊女卑のイスラム法を家族法のベースにしようとする動きがみられ、UNIFEM(国連婦人開発基金)も、先月22日、「イラクの女性は国の新しい憲法を起草している国民議会委員会が女性の権利を抑制していることを大変心配している」と報告している。
 
 イラクの女性団体の一つである「イラク女性自由協会」は23日の声明で、「憲法草案はイラクの1300万人の女性を二級市民あるいは、”半人前”に貶めるものである」と強く非難した上で、こうした事態を招いたのは、米国による宗派・民族ごとに分断された新政権発足のプロセスにあると指摘。イラクの女性の権利が損なわれないよう、国際社会が米国に対して働きかけることが必要だと訴えている。
 

 
3)滞る食料配給で困窮するイラクの貧困層
 
 イラクでは、サダム政権時代から政府によって米や砂糖、お茶や油などの最低限の日用品の配給を行っており、貧困層は生活を支えてきた。WFPとイラク政府が2004年に公表した基本調査では、人口のおよそ4分の1がこうした日用品の配給に大きく依存しているという。ところが、現在この配給が滞っており、イラクの貧困層は困窮している。IRIN(国連統一地域情報ネットワーク)が7月25日付けの記事で伝えた。
 
 食料配給に責任を負うイラク通商省下の食料配給国営企業の副社長であるアリ・マズロン氏は、「油とお茶、砂糖、米と洗濯石鹸が全州で不足している」と言う。WFP(世界食糧計画)も7月はじめに日用品の配給の不足を指摘していた。
 
 食料配給が遅れている原因として、治安と資金不足があげられている。マズロン氏は、イラクで操業しようとする輸送会社がほとんどないと言う。WFPは2003年と2004年に大規模に生活必需品の配給を支援、これまで2万トンの日用品が提供されたが、充分な配給のためには4000万米ドルが不足しているとされる。
 

 
4)来年末までにイラク駐留米軍を大幅削減か〜米誌が報道〜
 
 8月1日発売の米誌ニューズウィークは米国防総省がイラク駐留米軍を来年末までに現在の13万5000人から、4〜6万人と大幅に削減することを検討していると報じた。先月27日にもイラク駐留多国籍軍のジョージ・ケーシー司令官が、「イラクの憲法起草がスケジュールどおりに進められるのであれば、2006年には駐留軍を大幅に撤退させることができるだろう」と発言していた。
 
 一方で、先月21日に米国防省が連邦議会に提出したイラクの政治・経済・治安情勢に関する統計報告書では撤退時期は明確にされていない。同報告で撤退の条件とされているのは「イラク治安部隊が主要な任務を多国籍軍から引き継ぐことができるまで治安維持能力を高めること」だが、同日米国防総省がメディアにむけた発表では「イラク軍の3分の2と警察部隊の半分は依然として能力不足であり、米軍の支援を受けても十分に作戦が遂行できない」とする厳しい評価をしている。
 
 米当局者が撤退について言及することに対しては、国内の批判をかわす目的もあるのではという見方もある。今月2日には犠牲者数は1800人を突破したが、このまま犠牲者数が増加すると来年秋の米中間選挙にも悪影響を与えることが予想される。撤退を計画していることをうかがわせることで、ブッシュ政権の対イラク政策に理解を得させようという計算もあるのかもしれない。

 
 
5)反戦イラク帰還兵団体メンバー、兵役拒否の米兵への支援を訴える
 
 米国のイラク帰還兵による反戦団体「IVAW(戦争に抗うイラク帰還兵たち)」のメンバーで、良心的兵役拒否をした宣言したカミロ・メヒヤ氏が、IVAWのホームページ上で、やはり兵役を拒否したケビン・ベンダーマン氏の救援を呼びかけている。ベンダーマン氏は10年間、兵役を勤めたが、イラク戦争/占領への参加を拒否、先月28日から軍法会議にかけられている。メヒヤ氏は、裁判に支持者が出席する他、多くの人々がこの裁判に注目することが必要だとしてベンダーマン氏のホームページにリンクを張ることを訴えている。
 
*ベンダーマン氏のホームページはこちら。 http://www.bendermandefense.org/
 
 メヒヤ氏自身、今年2月に釈放されたばかり。昨年5月21日に軍法会議にかけられ、懲役1年の判決を受けていた。
 
 

6)イラク人ブロガー、不当拘束の体験をブログで報告
 
 バグダッド在住のイラク人ブロガーで、ファルージャ総攻撃の避難民等の救援活動もしているハリド・ジャラール氏は、先月、大学内でイラク治安当局に不当に拘束された顛末を自身のブログ”Tell Me a Secret“で報告している。
 
 ハリド氏は大学内のインターネットカフェで英字のブログ等を見た後、構内で拘束され、そのままムハバラート(秘密警察)の拘置所に連れて行かれたという。インターネットを見ていただけでロンドン同時多発テロとの関連を疑われ尋問されたり、他の非拘束者が拷問の末、やってもいない罪状を認めさせられるのを見聞きしたりするなど、サダム時代に逆戻りしたかの様な不条理かつ恐ろしい治安当局の実態を生々しく報告している。
 ハリド氏のブログは英文とアラビア語だが、リバーベンドプロジェクト/TUP速報の池田真理氏が日本語訳しているので、ご参照。
 
*Khalidが語る「こんな状況でした」 http://ritmj.blog7.fc2.com/blog-entry-32.html
 
 

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