イラク情勢Watch vol.5 05年7月30日 発行:フォーラム平和・人権・環境 編集:志葉 玲 毎週更新(予定) Topics 1)週間イラク報道Pick up 2)サマワ情報提供者からの報告 3)緊急転載・水不足に悩むバグダッド市民 1)週間イラク報道Pick up 【05.7.29】女性の職業訓練施設爆破=「日本支援感謝」放映の矢先(時事) 【05.7.28】サマワ情勢「変化してきている」…陸幕長(読売) 【05.7.27】来春にも米軍大幅削減か 米司令官が発言(共同) 【05.7.26】市内の日の丸撤去を要求 サマワのデモ隊(共同) 【05.7.25】親日派の店爆破「非常に残念」=サマワの治安は安定−大野防衛長官(時事) 【05.7.24】日本友好協会を解散=相次ぐ脅迫受け−(時事) 2)サマワ情報提供者からの報告 最近のサマワの状況に関して、現地住民である情報提供者とやりとりしたので、本コーナーでも紹介したい。 Q1 サマワの状況で特に以前と変わったことはあるか? 今のサマワの状況はあなたが以前来た時(2004年7月)より、非常に悪くなっている。特に今年1月の直接選挙の頃からバドル旅団*がイランの諜報部員と共にスパイとして、サマワの中を動き回っており、何人ものイラク人が暗殺されている。サマワの人々は以前のようには自由に話をできない。まるでサダム政権下の時のようだ。 今月上旬に、職を求める人々のデモ隊へイラク警察が発砲、10人が殺され、8人が凝らされるということがあったが、私はこれもサマワ行政府内のバドル旅団の指示だと疑っている。今サマワの人々が恐れているのは、テロリストではなく、警察だ。理由もなく法の手続きによることもなく、人々を拘束していっている。 *バドル旅団とは、シーア派政治組織「イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)」の抱える民兵集団。最近、バドル旅団はイラク治安当局に組み込まれており、被拘束者の拷問や殺害もいとわないその残酷さからイラクの一般市民に恐れている。 Q2 水や電気の配給はどうなっている? サマワの中心部では、水は一日に一回、一時間ほど出るが、それではとても足りない。水がまったく出ない日もある。これは大変な問題だ。人々は日々水を買わなくてはならず、貧しい人々は川の水を飲んでいるが、それが健康によくないことは言うまでもないことだ。 電気に関しても、4時間に10〜60分来るという状況だ。こうした問題はサマワの人々を苛立たせている。 Q3 自衛隊は何をやっている?実際に働いているのはイラク人労働者で、自衛隊員はただ、宿営地の中で風呂に入っているだけじゃないのか? あなたの言う通りだ。自衛隊は何もやっていないし、自衛隊に向けられる目はずっと厳しいものになっている。以前は日本のジャーナリストが来ていたが、今は誰もいない。いるのはカネのために働くイラク人記者たちばかりだ。だから、自衛隊は自分達が何もしてなくても、「私達は学校や道路を修復しています」というようなことが言えるのだ。しかし、それは実際とは違う。自衛隊は我々サマワの住民から嫌われており攻撃を受けているのもそのためだ。 * 一方で、共同通信や朝日新聞等のアンケート調査によれば、現在も自衛隊の駐留を支持するという住民も多いようだ。 Q4 サマワの治安状況はどうか? もし、あなたがサマワに来たいというなら、止めといた方がいい。今、イラクでは自衛隊が駐留しているため、対日感情は非常に悪く大変危険だ。過激派集団もサマワに来て活自衛隊の攻撃等に参加していると思う。彼らは自衛隊の駐留に反対しているサドル派*から支援を受けて活動している。 自衛隊の車両や宿営地が攻撃を受けたことをうけて、今月上旬、自衛隊駐留支持サマワの市民グループやサマワ行政府は「自衛隊がいることで日本から支援を取り付けやすくなる」として自衛隊駐留継続を訴えるデモを企画したが、サドル派は「デモを決行したら、お前らを殺す」というメッセージを主催者に送りつけ、デモは中止された。サマワもイラクもますます危険になるばかりだ。 *比較的米国に協力的とされるイラクのシーア派の中で対米最強硬派として米軍の撤退を強く求めおり、自衛隊のサマワ駐留にも反対している。 サマワ市内に張られたサドル派のポスター (C)志葉 玲 3)緊急転載・渇水に苦しむバグダッド市民 イラク戦争後、イラク各地の街で電気や水の配給が滞っているというのは、以前からあったことだが、現在、バグダッドの水事情はいよいよ深刻化しているようである。Iraq Hope Networkメンバーの細井明美さんへ、水不足に悩むバグダッド市民からメールが送られてきた。 以下、細井さんがIraq Hope NetworkのMLに流したメールから抜粋。 ************************ ・バグダッドの水について、最近まで、汚水ではあるが水は来ているという話でした。濾過器が300ドルもするので貧しい人たちにはとても購入することが出来ないとのことで、ペットボトルとティッシュペーパーで濾過する方法を連絡し、その方法をチラシにして貧しい地域に配るという算段をしていました。 ところが一昨日に起きた浄水場と発電所の攻撃でまったく水がこなくなり、濾過器もいらなくなったわけです(汚水がまた出るようになったら出番があるかもしれませんが・・・) ・浄水場からの給水が可能かどうか問い合わせたところ、レンタルの給水車はたくさんあるのだけれど、米軍が守っていて誰も浄水場に近づけないとのこと。浄水場はいまや最も危険な地域。 ・その後7月20日から水が来ましたが、過去6週間の間に7日間水が来なかったことが4回もあったとか(水が来てもすぐに止まるようですね)。 ************************ 抜粋転載ここまで。 現地からの報告を受けて、Iraq Hope Networkメンバーの間では、緊急支援が検討されている。現地の友人に細井さんが問い合わせたところ、一番安上がりな方法は、井戸を掘ることだそうだ。1万1000ドル程(今日のレートだと、123万2000円)あれば、500家族以上に水を提供する井戸を掘ることができるという。近々、Iraq Hope Networkから義援金の呼びかけがあると思うが、その時は改めて本コーナーでも紹介したい。 ●バックナンバー 第4号 2005年07月22日 第3号 2005年07月12日 第2号 2005年07月05日 第1号 2005年06月29日 |