2016年、トップランク、集会等の報告

2016年02月11日

350人参加し「憲法と『建国記念の日』を考える2.11集会-『個人より国家』を私たちは許さない!-」

160211.jpg

昨年の戦後70年は、日本の市民社会全体が「戦争法」反対のとりくみに全力でぶつかりました。しかし、安倍政権は世論を顧みず日本社会を戦前に回帰させるがごとく暴走を続けています。昨年11月の「日本会議」主導で開催された「憲法改正」集会に安倍首相はビデオメッセージで応えました。もし、本年の参院選で3分の2の議席を確保すれば、その動きは加速します。地域社会でも、育鵬社版中学歴史教科書の採択運動を通じて、「日本会議」の動きが活発化しています。侵略戦争と植民地支配をアジア解放の戦いと位置づけ、家父長制と階級制を基本にした儒教的・封建的社会制度を求める「日本会議」の誤った思想は、ヘイトスピーチなどに代表される外国人蔑視と夫婦別姓排除などの女性差別、道徳の教科化いわゆる修身の復活などに見られる天皇制を基本にした上意下達の社会構造をつくり出さんとしています。これは戦争への道につながるものです。
平和フォーラムは例年2月11日、戦前の「紀元節」を「建国記念の日」としていることに異議を唱え、集会を行っています。日本人の歴史認識や人権意識についての問題を象徴する日だからです。これを踏まえて本年も、「憲法と『建国記念の日』を考える2.11集会-『個人より国家』を私たちは許さない!-」を名称に、会場の日本教育会館に満員で立ち見の出る350人が参加して学習集会を行いました。
最初に福山真劫代表が登壇。「昨年の戦争法反対のたたかいを上回る大きな運動をつくり、7月の参院選挙に勝利し安倍政権の暴走を止めよう」と主催者あいさつしました。
つづいて、「日本会議と地域社会-日本国憲法と教育の危機-」と題して日本の戦争責任資料センター事務局長の上杉聰さんの講演、在日本朝鮮人人権協会の金優綺(キム・ウギ)さんの「朝鮮高校への授業料無償化適用を求めるとりくみ」の報告を受け、最後に藤本泰成事務局長のまとめと閉会あいさつで終了しました。
このうち、上杉さんはまず、安倍首相がこの間、9条改憲に前のめりな答弁を繰り返すようになった要因について、株安・円高に表われているアベノミクスの変調により、経済を争点に参院選を乗り切ることが難しくなったため、当初消極的だった改憲の争点化を図らざるを得なくなったのであり、そのためには(教育基本法改定実現や女系天皇阻止などで実績のある)手堅い実働部隊に頼る必要が生じたからだと、官邸を取り巻く力学の変化を分析しました。
その最大の団体である「日本会議」が展開する草の根右翼運動の特徴について、上杉さんは「彼らは姿を見せない」と端的に述べ、集票力をちらつかせて自治体議員に働きかけ議会決議を上げるなどして、徐々に影響力を拡大することで「社会全体が右に流れているという空気を感じさせるのが彼らの手法」だと説明。その実例として、日本会議を構成する宗教団体のメンバーである社長が、いわゆる「つくる会」系中学校歴史・公民教科書(育鵬社版)の採択運動への参加を社員に強要し裁判にまで発展した大阪府の事例を紹介しました。
その上で上杉さんは、組織力を誇示するこうした宗教右派の弱点について、実は(宗教的確信をバネにしているがゆえに)「絶対勝たなければならない」ことだと指摘。歴史修正主義の教科書の採択を阻止するなどして「断固として継続した意思を持っている人が彼ら(の企て)をつぶしていけば、彼らは立ち上がれなくなる」と述べました。
また上杉さんは、18歳選挙権の実現に関して、この前提には改憲国民投票の投票権年齢が18歳以上とされたことがあるとした上で、ではなぜ国民投票が18歳からとされたのかと問題提起。自衛隊への入隊可能年齢が(基本的に)18歳以上であることに注意を促し、「戦争をやる人間が憲法に対して投票権を持っていないのはおかしい、あるいは、戦争を担う人間が憲法を自分たちの決めたものとして戦争をやってくれなければ戦争できない。そこまで彼らは考えている」と指摘し、併せて歴史教科書問題との重大なつながりを強調しました。
金さんは、国連人種差別撤廃委員会が14年8月、朝鮮学校を高校無償化制度の対象とすること、および良治体が朝鮮学校への補助金を再開または維持するよう促すことを日本政府に勧告したことの意義を強調。その上で、同勧告に関する日本の報道はヘイトスピーチに触れたものが多い一方、朝鮮学校の問題についてはほとんど言及がなかったと指摘し、「同じ日本の植民地主義の問題、朝鮮人への差別の問題であるにもかかわらず、分けられていることに危機感を感じている」と発言。これは、ヘイトスピーチを憂慮しているとする一方で、高校無償化法の施行親側を改悪することで朝鮮学校を制度的に無償化の対象から排除した日本政府の姿勢に見られるものだとして「自分たちが排外主義者であり、民間における排外主義の雰囲気をあおっていることが分かっていながら、恐らく切り離そうとするのだろう」と安倍政権を批判し、無償化排除は公権力による差別との認識を再確認するよう求めました。

IWJ記事

TOPに戻る