2015年、集会等の報告

2015年11月15日

憲法理念の実現をめざす第52回大会(護憲大会)分科会・ひろば報告

第1分科会「非核・平和・安全保障」

参加数=228名

問題提起・助言者    前田哲男(ジャーナリスト)
  大城   悟(沖縄平和運動センター事務局長)

質疑&回答(要旨)

  • 国は防衛費を増やしている。動向を注視しなければならないが、助言者としての見解は?
    回答:
       民主党政権時代の防衛費は、微減ではあるが減少傾向となっていた。
       安倍内閣に代わり増加傾向に転じている。これは、日米安保条約の拡大を考慮してではないか。日本の軍拡はとどまることを知らない。
     
  • 中国の防衛費が拡大しているが、これをどう見るか?
    回答:
       中国が増額しているから日本も増やす考えが、今の安倍政権。
       中国は、軍備を外洋化しているが、これは平和につながらない。しかし、この政策は、日米のガイドライン(安保条約)強化が挑発となり、対抗しようとしているのではないか。
     
  • 沖縄の辺野古埋立では、賛成派の3地区に補助金を出しているが、沖縄全土に影響していくのではないか?
    回答:
       原発問題も沖縄基地問題も根っこは一緒。反対派、賛成派と様々にあるが、私たちが平和を求めることに変わりはない。

    討論(要旨)

    1. 日米ガイドラインの問題で横須賀の報告。
         ヘリ空母が、自衛隊のイージス艦の先導が入港してきた。追加配備をすると聞いた。目的は、ミサイルの精度強化や作戦の充実という。日本が共同行動を図っているのは協同作戦が進んでいることの表れか。
         「思いやり予算が本年度切れるが、今後どうなるか注視する。
       
    2. 平和や安保条約を考えたときに、平和運動や労組に関わりのない人たちの理解や、関心はどこまであるのか不安感がある。
         もっとわかりやすく説明をしなければ世論は流されてしまうのではないか。大衆行動につなげるためにどうすればよいかアドバイスが欲しい。
       
    3. 公職選挙法の改正で選挙権が18歳に引き下げられ、この動向が不安である。ニュースや新聞・マスコミ報道の一部だけを捉えると、現政権の取り組みが良いものだと鵜呑みしている感じがする。彼らにはどのように平和を伝えればよいのか・・・
       
    4. 日本の平和や安全保障は危機的な状況にある。戦争準備法とも言える成立した法律を施行させないことが重要。このことは、9条を壊していくし他の条項にも影響する。宮城では食い止めるために、準備委員会を立ち上げる。全国でも必要だと考える。
       
    5. 広島から報告する。昭和50年後半までは原爆について学校教育として行っていた。また、8月6日は登校日としていた。これらの取り組みが少なくなっていくのは残念。今後もしっかり伝えていかなければならない。
       

    まとめ・・(要旨)

    大城:       国民の無関心さに危惧を感じるとの話があったが、8月の国会前行動を見たとき、国民の危機意識が大衆行動となっていると感じた。
       子ども(学校)教育が、政府の考えを大きく関与している中で、選挙権が引き下げられたのは不安。教組の皆さんに頑張っていただきたい。
    前田:       米軍基地施設が完成したのちに生まれた人にとっては、異物ではなく自然のものとなって受け入れられている。平和についても同様だろう。
       平和の問題を学ぶことは大切であり、後世に語り継ぐ責務がある。

    第2分科会「地球環境-脱原発に向けて」

       第2分科会は、はじめに鎌田慧さんより挨拶と、国による核燃料サイクルと原子力政策の問題点について提起を受けた。その中で1985年「むつ小川原開発」の一部として核燃料サイクル計画が盛り込まれたが、それ以前から六ケ所は核燃料サイクルの拠点として狙われていたことなどに触れ、「もんじゅの命運は尽きようとしている」と再処理工場を止める運動をしようと呼びかけられた。
       続いて浅石さんより青森県内の原子力施設や再処理の問題点などが詳しく報告され、伴さんからは「六ケ所再処理を止めるのは今」として既に破綻が明らかな核燃料サイクルが何故止まらないのか、そのロジックや、原発依存のエネルギー政策への批判なども交えて報告された。
       会場からは最終処分の問題や石油備蓄基地と隣り合わせの再処理工場の危険性などについての質問があり、福島県からの参加者は「原子力政策の失敗を自治体や市民に押し付ける国のやり方に怒りを覚える」、宮城県からは村井宮城県知事が「市町村長の総意」として加美町が最終処分場の候補とされたことに対して「なぜ加美町なのか具体的な説明は一切ない、絶対に認められない」との発言があった。また、福井県からは運転差し止めの仮処分が出たことを受け、「もんじゅを廃炉に、そして高浜3、4号機の再稼動をさせない。」との決意とともに12月の福井の集会への参加アピールがあった。
       最後に座長と運営委員より、「原発と核燃料サイクルなど日本の原子力政策は多くの人々の犠牲の上に成り立っている。平和や人権、環境保護の観点からも原子力政策を改めてさせる必要がある。引き続き憲法を守る取り組みとともに取り組んでいこう」とまとめて分科会を終了した。

    第3分科会「歴史認識と戦後補償」

       第3分科会は「歴史認識と戦後補償」というテーマで、安倍首相のゆがんだ歴史観が平和と信頼と友好を作り出すための障害になっているなかで、アジア諸国との和解のために何が今必要かを学んだ。
       はじめに、琉球大学名誉教授の高嶋伸欣さんから「戦後70年、アジア諸国との和解のために」として、高嶋さんのこれまでの教育現場で実際に使ったものをはじめとする多くの資料を参照しながら提起を受けた。
       今年、「戦後70年談話」いわゆる安倍談話が発表されたが、安倍首相の歴史認識のひどさもあり、「70年談話」には多くの問題があるが、特に2点に触れたい。
       1点目は、「あの戦争に何らかかわりのない世代の子どもたちに謝罪をし続ける宿命を背負わせてはなりません」としていること。日本軍は戦時中、大量の米をベトナムから日本に送り日本人の餓死者を防ぎ防ぎ、命のリレーを次世代へつないだが、ベトナムでは100万人以上の餓死者を出している。このことでも、「かかわりのない世代」など有り得ず、関係ないでは済まされない。
       2点目は、日本が「アジアで独立を守り抜いた」とし、「日露戦争の勝利はアジアの人々を勇気づけた」としている点である。インド大反乱や太平天国の乱でアジア民衆の抵抗が大きかったため列国の対日政策が変わったため日本の独立が達成されたものであり、日露戦争の勝利は、少数の侵略的帝国主義的諸国に日本が加わったに過ぎなかったのである。
       「70年談話」は保守派からも批判されている。特に日本軍のアジア独立貢献論について、有識者会議の報告でアジア太平洋戦争が「アジア解放を目的にしたとは言えない」とされ、安倍首相は挫折し談話には盛り込まれなかった。
       しかし、安倍政権の歴史修正主義は確実に教科書検定制度を通じて教科書に浸透しつつある。新版中学校歴史教科書の記述では、関東大震災の朝鮮人虐殺については、「被害者は数千人」から「数に通説なし」、アイヌ差別の旧土人保護法については、土地を「取り上げ」から「あたえ」に、沖縄戦の住民虐殺では、スパイ扱いし「殺害」から「処罰」などに教科書検定で記述が変更されている。
       われわれは、安倍歴史観のおそまつさを広く共有し、発信していこうと問題提起がされた。

       その後の質疑・討論では、次のような意見が出された。

    • 自治体での検定教科書の展示会での閲覧が、形骸化している。安倍政権を監視する場を追求する必要があるのはないか。また、反動化する教育に対して判断する力を持つことが必要で、「おかしいぞ」と言っていくことが必要だ。

         一般の人の意見を聞く機会であるはずの展示会で、教科書の内容について意見を受け付けない自治体があるなど問題は多い。意見を押し上げていく努力が求められる。
       

    • 福沢諭吉について歴史修正主義をつながるとしているという意見があるなど評価が分かれるが見解を。

         福沢諭吉は小学校6年生の教科書にも出てくるが、有名な「学問のすすめ」では「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」の後に「~と言えり」と書かれている。これは、「私はそう思わないが、欧米ではそう言われている」と読むことができる。福沢諭吉は啓蒙思想家だとしての思い込みがあるのではないか。侵略等を奨励したことも忘れてはならないのではないか。
       

    • 18歳選挙権へむけて教育現場では困惑している。選挙制度の学習はできても、現場教員には「自分の意見は示してはならない」との指導がされている。どこまで教えていくべきか迷いがある。

         客観的とは何か?例えば地理で使用する地図も、さまざまな情報の何を記載するかは編集者が取捨選択した情報の価値判断になる。受け取る側に100%客観的なものはなく、憲法・民主主義の到達点は人権が制限されたりしている弱者の視点に立つか否かになる。誰でも弱者を追い込む側になることがあるということを学んでいく判断力をつける学習が必要では。教師が「私はこれが正しいと思う」と言ってはならない。一人ではなくみんなで考え、討論して生徒に判断させることだと思う。
       

       また、参加者から感想として、地元でアジア連帯(日朝・日中)の交流活動に取り組むなかで、日本を含めたアジア各国のそれぞれの人たちがどのような戦後を生きてきたのかを考え、地域・学校でお互いを受け入れ共有化していくことが歴史認識の相互理解につながっていると感じているとの実践の報告もされました。
       最後に、安倍首相の歴史観は権力者からの視線であり、私たちは庶民から見た視点の歴史観を持たなければならない。安倍歴史修正主義では真のアジア諸国との和解はあり得ない。戦後補償を言うと金銭面がクローズアップされがちだが、長い友好関係は侵略の歴史を直視していくことで築かれる。このことが世界に日本のイメージを高める、友好関係を拡げることになり、真の「愛国的」な行動ではないか?歴史の学習不足の安倍政権下で、日本人が肩身の狭い思いをしないよう、安倍首相は「歴史に口出しするな」という広範な世論を作っていくことが重要と全体で確認し、分科会を閉じた。

    第4分科会「教育と子どもの権利」

       最初に、神奈川県立田奈高校の中野和己校長から高校現場における子どもの貧困の実態とその克服にむけたとりくみについて話を受けました。
       田奈高校は、神奈川県より「学習意欲を高める全日制の新たな学校のしくみづくり」(クリエイティブスクール)の指定を3校の1校である。全日制の新たな学校のしくみづくりとして、中学までに、持っている力を必ずしも十分に発揮しきれなかった生徒を積極的に受け入れ、社会で必要な実践力を育む学校とされている。入学にあたって、入試を行わず、中学での成績も考慮せずに面接やグループ討論を基本に選考していることが特徴である。
       生徒の実態は、九九を半分が言えない生徒が半数いるなど学力上の困難、貧困や家庭の崩壊、人間関係を構築するのが困難で不登校や退学してしまうなどの課題がある。
       そのため田奈高校では負の連鎖を断ち切ることを使命として3つの支援を行っている。一つ目は、大学生や大学院生による学習支援ボランティアを活用した「田奈ゼミ」の開講、二つ目は、生徒の困難な実態を把握するため教育相談担当者(コーディネーター)を複数配置し、スクールカウンセラーや外部機関等と連携した組織的な教育相談体制の構築、労働局やハローワークなど外部との連携により資格取得や就職支援のためのキャリア支援センターの設置である。
       田奈高校に通っている生徒は、非常に明るく高校生活を楽しんでいる。また、卒業生や中退生も頻繁に高校に顔を出している。教職員の負担は大きく、外部の人材に頼っている現状を持続させることは困難と考えているが、50年後の日本のために寄与していきたい。

       次に、山梨学院大学法科大学院教授の荒牧重人さんから子どもの権利に関しての問題提起を受けました。 田奈高校の中野校長は、支援と話された。教育関係者は、指導と言いたがるが、支援は使わない傾向にある。田奈高校の試みは、教育と福祉との連携の試みである。日本の現状は、行政が縦割りで、教育行政が所管する学齢期の福祉対策による下支えがなく、学校が孤軍奮闘している。田奈高校のとりくみは、この状況を変える挑戦である。その一つのモデルケースとして私たちは、ユニセフが提唱者している「子どもに優しいまちづくり」にとりくんでいる。子どもは宝という考えから、社会の一員としての子どもの力を借りて社会を立て直すことが必要である。
       権力者の統治の手段は、軍事・情報・教育を手中に収めることである。教育は国民の内面を支配することにつながり、安倍政権は教育への介入を強めている。すでに大学は、独法化の時に骨抜きにされ、文科省の方針に従うようにされている。道徳の教科化、教科書検定基準の改悪など矢継ぎ早に教育改革をすすめている。安倍教育改革へのオルターナティブとして、今までの教育実践の成果と効果を総括・確認して共有するとりくみが必要である。また人権という観点から教育を組み直したい。国際人権規約には、教育に関する条項が詳細に定められている。また、過去には教育が国家のための国民を育成するという役割を担ったことへの反省から、他の国際規約とは違い教育だけが、その役割・目的が明記された。
       親、家庭、教師、地域がダメという、ダメダメ論から子どもにやさしい町をつくることが大事。また、子どもの権利だけが保障されることはない。教職員が人間として、専門職として、教育労働者として保障されることが重要となる。また、「子育て支援」とは親や家庭を支援する政策であるが、子どもを直接支援する「子ども支援」が両輪となって行われなければならない。

       その後、会場からの質疑応答が行われ、分科会は終了しました。

    第5分科会「人権確立」

    参加者-61人

       マイナンバー制度について
       個人番号は、取り消せないがカードは拒否できるのか?
       申請は個人の意思に基づく。しかし、会社によっては、就業規則を変更して申請させる動きがある。労働組合の運動が必要性。役所、自治体の現場が大変。カードの発行をしない運動を展開する必要がある。
       個人番号を記載する場面では、事業者に理由と目的を明示させる。在日外国人、性同一性障がいなどで戸籍上とはことなる人達がおり、人権侵害が発生する可能性も。
       DV被害の人達への影響も大きいのでは?
       運動を展開して、被害者の人には、対応すると総務省が回答。しかし、25万人の被害者がおり、現実的にはもれがある。政府の対応は、人権感覚がない。
       個人番号の写真は、認証システムは子どもから老人に変わっても認証するのか?
       15歳以下の子どもは、親が変わりに申請。認証システムは、優秀で、わかる。
       12月1日に、マイナンバー訴訟を起こす準備をしている、是非、ご協力を。
       事前登録型制度の根拠は?三つの制度とは?
       日本中で、不正に個人情報が取得されている。
       事前登録型は、本人が申請、被害告知は不正取得されても知らせる義務自治体にはないため、被害があった時知らせる制度。全市民対象(委任状)は、委任状を偽造して不正取得した事件があった。委任した人に知らせる制度。
       身元調査は、当然という意識の背景は?東北地方には、制度はないが、原因は?
       身元調査の意識が増えたのではなく、以前から根強い。
       韓国では、2億人以上の個人情報が漏洩、多くは、個人情報にアクセスできる従事者。必ず、日本でも漏洩する可能性が高い。マイナンバーと戸籍の問題を深めていく事が必要性ある。
       秘密保護法で、適正評価の実態が不明、情報があれば教えて。特定秘密を扱うことに、適正かどうかを判断する基準。一般的には、国家公務員。本人や家族も調べられる。

    問題提起者・助言者
       マイナンバーは、国が国民を管理するために悪用される。本人通知も本人の知らない間に個人情報が取られ、結婚差別などの人権侵害に悪用されている。マイナンバーが導入されると必ず盗まれ、悪用される。様々な国で、番号法が導入されているが限定的に活用されている。これは、政治のあり方が問われている事で、今の安倍政権は、民意を無視し、ごまかし、情報を公開しない、こういう政治を許してはいけない。

    第6分科会「地方の自立・市民政治」

       2015年11月15日、ラ・プラス青い森「メープル」において、第6分科会「地方の自立・市民政治」が開催され、およそ100名が参加した。
       はじめに東京自治研センター特別研究員の伊藤久雄さんから「福島と沖縄から考える地方の自立・市民政治」と題した問題提起を受けた。まず、福島の現状について、楢葉町の帰還者がまだ4%であることや、政府の「特定避難勧奨地点」解除の問題や精神的損害賠償の終了など、まさに「原発事故はなかったことにする」という政府の姿勢について報告があった。このなかで、用地買収に同意した人が9月末時点で9人であったことが報告された。伊藤さんはこれを「カネで解決」しようとする政府の方針であるとし、政府の交付金は原発被災者には渡らないことや、県や町が何に使うか不明であることなどを挙げ、政府の手法の誤りを指摘した。さらに福島の状況は、住民と、町・県・国との意識のはなはだしい乖離があることが根本にあり、このまま事態が推移すれば県内の汚染土は行き場を失い、県内の市町村の対立や、住民同士の対立を生じる危険性があることを指摘した。
       続いて、沖縄の現状について、辺野古移設をめぐる国と沖縄県との対立にしぼって報告がされた。沖縄県の翁長知事は普天間基地の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消したが、これに対し国がとった手法が「私人」として行政不服審査法を使ったことは許されないとして、本来国は「国地方係争処理委員会」で争うべきであったと指摘した。一方で県側が「国地方係争処理委員会」に審査を申し出たことを高く評価し、地方自治の観点からも、きわめて意義深いものである」と述べた。
       以上を踏まえ市民政治の確立について、翁長知事の判断の背景にあるのは、各種選挙で示した沖縄県民の「民意」であることを指摘。一方、福島県において昨年10月の知事選挙において、自民党による知事候補おろしがあり、民主党の候補者に自公が相乗りしたこと、また、反原発の候補者も2人となったことにより、福島の住民の民意が分散されてしまったことが指摘された。あわせて、各種選挙で低投票率や無投票が増加している状態では、市民政治は確立できないとの問題提起があった。今後は、市民の政治的関心を高めるために、「一つの自治体全域にトータルに関心を持ち政策提案できる活動」が重要であることが提起され、来年の参院選に向けては、そのような地域の力を結集して、自公による金のバラマキと争点隠しに対処できるよう、野党が結束して争点を明確にすることが重要であるとの課題提起がされた。
       つづいて、自治労沖縄県本部の平良誠さんから、沖縄の現状についての報告を受けた。平良さんは沖縄の地元紙である琉球新報・沖縄タイムスの記事を資料として示し、ゲート前における500人の抗議の緊迫した状況が報告された。その上で、国が代執行を目論んでいることについて強く批判、地方分権の時代において決して許されないことであると述べた。また、アメリカの総領事が、辺野古移設に反対する沖縄の民意について「小さな問題にすぎない」と発言したことに強い憤りを示した。
       こののち議論に入り、「多様な市民の主張をとりまとめていくために、どのような方法があるか」「自治体の財政力が厳しい中で、どのように市民自治をつくっていけばよいか」などの質問があり、電源立地交付金の問題や、被災地での住宅の課題などが報告された。また、福島からは「目にみえない放射性汚染」と闘うむずかしさが報告され、それでも今後もがんばっていく、と力強い決意が示された。
       また、沖縄の一行政区に国が補助金を出すという、法的根拠のなんらない行為に対する批判がなされた。
       以上をうけ、最後のまとめとして、「安倍政権は憲法違反の戦争法を私たちに押しつけ、沖縄県に対しても代執行という強権的な手段を発動しようとしている。これに対抗するには沖縄のように地域から陣形をつくり、市民自治を確立して民意をまとめあげていくしかない。来年の参議院選挙に向け、それぞれが今日の議論を持ちかえり、地域・職場から、運動をつくっていこう」と総括し、分科会を終了した。

    第7分科会「憲法」

    第7分科会(憲法とは何か、立憲主義とは何か ~なぜ登場し、何のためにあるのか)

    【清水雅彦さん講演概要】

    1 憲法とは何か
       今日本社会において日本国憲法が生かされるているか。例えば、労働組合活動が憲法18条で保障されているが組織率は17.5%。憲法が実践されていないことが如実に表あれている。いろんな権利が憲法で保障されているのに認識していない人が多い。
       憲法の誕生はヨーロッパにおける市民革命における副産物。階級がなかった原始共産制社会から奴隷制社会、封建制社会と移行していくが、封建制社会は生まれた時から階級が決まっていて差別や国王がら弾圧されるなど理不尽な社会。国家が悪さをしてきたので近代市民革命により法の支配(憲法)に代わってきた。国家を縛るために憲法が生まれた。
       近代憲法は、国家からの自由(人身の自由・経済的自由・精神的自由)を保障したが、資本主義社会の中で国家が労使間に介入できないため、弱い労働者との格差が拡大し、資本家が労働者革命を防ぐため妥協してワイマール憲法(社会権、生存権、教育の権利、労働基本権)つくった。
       日本は、第二次世界大戦を経て日本国憲法をつくり生まれ変わった。近代立憲主義を引き継いだ内容と同時に20世紀の憲法として現代憲法的な内容が盛り込まれた。
       私は日本国憲法をすべて肯定するものでなく、将来的には「改憲」の立場にある。第1章(天皇)は全部削除すべき。天皇制は封建制の遺物。天皇制は民主主義と法のもとの平等に反するもの。世界的にも君主制から民主制に移行しており、将来的に日本も改憲すべきだが、今の政治勢力では到底無理。また、悪用される危険が大なので、今は徹底的に護憲を貫くべき。

    2 憲法の基本概念
       憲法は国家権力を縛るもの。その憲法を守るため、憲法の最高法規制の宣言が98条にある。宣言だけでなく、81条(裁判所)で担保している。また、公務員の憲法尊重擁護義務が99条にあり、そういう意味では石原新太郎元都知事や安倍首相は99条違反に問われなけばならない。96条(憲法改正)を安倍首相は国会議員2分の1に改正したいとしているが、硬性憲法の意味や意義を知らない議論だ。違憲審査制(81条)は、一時の一般庶民の感情でものが動く場合があり、それを防ぐための是正措置としてアメリカではじまりヨーロパでも導入していった。
       このようにいろんな形で憲法を守ろうしている。憲法改正の限界説の根拠として、「人類普遍の原理」(全文1段)、基本的人権の永久の不可侵性(11条、97条)、改正手続、基本原理(国民主権、基本的人権の尊重、平和主義)があるが、これは、これまでの世界の多くの人たちの闘いの成果の内に日本国憲法がある。決して変えてはならない将来に引き継ぐ人類普遍のもの。96条を変えれば何でも出来ると考える人がいるが、変えていけない部分がり、憲法改正の限界説だ。
       「法事主義」は「悪法も法なり」で必ず守らなかければならいもの。「法の支配」は、「法は正義にかなっていなけらばならない。悪法は無効にすべき。時には破るべき」との考え方。日本国民は、法事主義的な人が多いが、この法律は正しいのか、守るべきなのかを考え判断することが必要。残念がなら数の力で悪法が出来ている。裁判所も保守的で違憲の判断をやらない。市民は悪法を時には不服従とて時にはやぶってもいいと考える。例えば国旗・国歌法は国民主権に反するので私はやぶってもいいと考える。憲法81で「法の支配」に変わった。教育の場や市民生活の中でも「法の支配」的考え方を広める必要がある。戦争法も憲法違反の悪法。自衛隊、指定公共機関、公務員など抵抗して欲しい。
       橋本大阪市長や安倍政権的な民主主義は、単純多数決主義だが 現代立憲主義は多数派の暴走を阻止することも目的にしている。多数派の暴走を食い止めるため81条で違憲審査権があり、現代立憲主義の考え方を広めていく必要がある。

    3 終わりに
       自民党の改憲案は復古主義的改憲論復活と新自由主義的改憲論であり危険。まだまだ憲法の価値感や知識が市民に根付いておらず、また、使えていない。平和フォーラムに結集する皆さんが、職場、地域で憲法学習を積み上げて、特に第3章の国民の権利を広めていくこと。自民党政権の中で憲法理念が生かされていないので、改めて憲法理念を徹底的に追求していくことが重要。

    4 質問・意見
       講演のあと、7名の参加者から、平和活動、憲法を守る取り組み、教育現場などでの運動の広め方などについてい、意見・質問が出され議論を深め、憲法学習の輪を広めていくことを意思統一し終了した。

    ひろば1「男女共同参画(女性と人権)」

       男女共同参画の実践と教育、女性の自立を支援する活動を続けている佐藤惠子さん(NPOウイメンズネット青森理事長、元青森保健大学教授)を講師に「女性の人権と憲法~戦争への達を繰り返さないために~」と題した講演が行われ、、107人(うち男性19人)が参加した。佐藤さんの講演要皆は、以下の通り。
       結婚後、子育てが辛く育児ノイローゼになり、夫との葛藤など悩みもがいていた。その時出会ったのが、女性学だった。女性問題は「人権問題」と気づき、その後大学で教鞭をとり、自身の自立と社会での実現をめざした。女性の人権とは個人として尊重され、自分の意志で自分らしく生きること。日本では多くの女性に「生きがたさ」がある。
       女性は職業を通して自立して生きていくことが未だに認められず、労働権が侵害されている。経済力が剥がされる一方で、家事・育児・介護などのケア役割が押し付けられ、仕事や自分の時間、個としての自分がなくなる。それは役割分業の押しつけで、自分の意志でそうなるのではない。 憲法24条には「家族生活における個人の尊厳と両性の本質的平等」とある。
       しかし、夫は仕事で自己実現しているのに私は全部(名前も仕事も)失った。ケア役割が必要なら男女がともに担うべきとして、夫と議論する中から分担するようになった。
       日本国憲法によって初めて女性の人権保障が明文化された。この法律を作る際に、ベアテ・シロタ・ゴードンさんが「男女平等条項」を起草した功績はとても大きい。戦前の婚姻は夫と妻は主従関係とされ、女性は家制度の下で無権利状態だった。明治政府は武士の家制度にならい、国が国民をコントロールする手段として「家制度」を使った。ベアテさんがこれを変えようとした熱い思いが結実したのが憲法24条。そのおかげで女性の人権はここまで来た。
       男女共同参画社会基本法が1999年に制定されたが、憲法理念の実現を目指すこの法律はとても重要。たとえ基本法が政治的妥協の産物であっても、私たちがより良いものに実現するよう働きかけるべき。「全ての人がかけがえのない個人として尊重される社会」をめざすことは憲法11、13、14条の実現を図ることとなる。この基本法は日本の男性の生き方、働き方をも変え、男性の家庭参画という底辺を変える可能性を持つ。
       平和が人権の基盤。どのような理由があろうとも戦争は殺しあいであり、すべての人々の人権を踏みにじる絶対悪である。パリでのISのテロを見るまでもなく、一度始めたら止められない。戦争させない、しない勇気を主権者である国民が強力に示すべきだ。
       憲法を現実に合わせて変えるのではなく、憲法をよりどころとして現実を変えていくことが大事。環境権にしても、人権条項に照らせば全部法律でカバーできる。
       (中国脅威論や領土問題などの)挑発に乗ってはいけない。「非戦」を誓った現憲法がいかに大切か、憲法が示す社会を実現するために活動することだ。平和憲法に基づいた女性の人権確立こそが、これからの私たちの進む道だ。

       質疑応答では、ひろばに参加していた福島みずほ参議院議員から自民党憲法草案などの問題点に関する指摘や、国会報告があった。
       また、自治労青森県本部の女性部から「侵略を心に刻み語る平和の旅」の参加報告が行われた。「南京大虐殺記念館」訪問で、91歳になる南京大虐殺の生存者の女性からの証言を聞き、日本兵が強姦を自慢話にしていたこと、首を落とす競争をしていたなどの記録もあり、「被害者の数の問題ではなく、何の罪もない人々を殺し、非人間的な行為が蔓延していたことこそ問題だ」と話した。さらに「教育こそ平和の武器だ。私たちは見てきたことを伝え、憲法を学ばなければならないと思う」と熱く決意を語った。
       会場にはI女性会議十和田支部が作成した「女性と戦争」の歴史がパネルで展示され、女性が戦争に協力させられ、犠牲となった歴史が解説されていた。内容を見ると今の安倍政権の姿と重なり、この国が危険な分岐点に来ていることを教えていた。

    ひろば2「辺野古新基地建設反対・沖縄基地問題交流会」

       ひろば「辺野古新基地建設反対・沖縄基地問題交流」は、前田哲男さん、大城悟さんを発題者として、「全国基地問題ネットワーク」の運営で行なわれ、約150人が参加した。司会は神奈川平和運動センター事務局長の小原慎一さん。各地の取り組みや課題について活発に報告し合った。
       前田さんは「平時即有事」をキーワードに、「切れ目のない」安保協力をうたった新ガイドライン(防衛協力指針)合意および戦争法制定が地域や自治体に及ぼす影響について問題提起した。
       前田さんは、新指針には「平時からの協力措置」の1項目として「施設の使用」が盛り込まれ、「施設・区域の共同使用を強化」「適切な場合に、民間の空港および港湾を含む施設の実地調査の実施に当たって協力」とされていることに注意を求めると同時に、戦争法制定の一環として、有事法制の一部として作られた特定公共施設利用法、米軍行動関連措置法(米軍行動円滑化法)が改正され、その対象が米軍以外の他国軍隊、あるいは、集団的自衛権を行使する「存立危機事態」にまで拡大されたことを指摘。
       米軍と自衛隊相互の基地共同使用について「基地行政に目立った変化を与える可能性がある」としたのに加え、集団的自衛権行使に際して、港湾や飛行場などを管理する自治体や、医療、放送通信、交通運輸、エネルギー供給などに携わる「指定公共機関←正対して自衛隊や米軍などへの協力が義務づけられることに関して、「自治体が管理している施設にまでガイドラインや戦争法がズカズカ踏み込んでくる。それが戦争法の極めて危険な側面」と強調した。
       大城さんは「政府は法治国家とか民主主義という言葉を何度も口にするが、辺野古にはそういうものは一切ない。国はやりたい放題だ」と安倍政権を批判し、全国の仲間の支援を要請した。
       政府は辺野古新基地建設の理由として「普天間の危険性除去」を繰り返している。これに対し大城さんは、仲井真前知事の埋め立て承認について検証するため沖縄県が設置した第三者委員会が承認には法的瑕疵(かし)があると結論づけた理由の一つとして挙げた、「埋め立ての必要性が立証されていない」との見解に触れ、「なぜ普天間の危険性除去のため埋め立てが必要なのかとの問いに政府は回答できていない」と指摘。
       また、今後の闘いの展望について大城さんは「多くの県民を集めて(米軍キャンプ・シュワブの)ゲートを本当に封鎖する行動をつくっていきたい」と述べ、現地闘争体制の強化に意欲を示すとともに、現場の闘いを支える広範な陣型として「県民総がかり行動をあらためてつくり、基地建設をしっかり止めていかなければならない」と決意を新たにしていた。

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