2014年、集会等の報告
2014年11月03日
2000人参加し岐阜で「『戦争をさせない』私たちは平和主義を、そして命を守ります!憲法理念の実現をめざす第51回大会(護憲大会)」
「『戦争をさせない』私たちは平和主義を、そして命を守ります!憲法理念の実現をめざす第51回大会(護憲大会)」を正式名称に、11月1日から3日までの日程で、岐阜市の長良川国際会議場「さらさーら」をメイン会場に、全国・岐阜からの2000人が参加して開催されました。全国47都道府県持ち回りで行われる護憲大会の、岐阜県での開催は初めて。全国38番目の開催県となりました。
今回の大会は、安倍内閣のもとで、歴史認識・靖国参拝などで中国・韓国など東北アジア諸国との関係を極端に悪化させる一方、特定秘密保護法の制定や、集団的自衛権の行使はできないと確立されている憲法解釈を閣議決定で覆し、戦争に参加する道をいっそう開くなど、憲法理念の破棄と平和国家の変更を露骨にすすめています。こうした状況を打開し、憲法のもっとも重要な基調を守り、戦争をさせないとりくみをすすめるための大会でした。
大会は、第1日に開会総会・シンポジウム、第2日に分科会・フィールドワーク・ひろば、最終日に閉会総会という日程でしたが、第1日目には、関連企画として「岐阜空襲パネル展」と「11.1憲法・平和を守る1000人集会」も行われました。
→大会呼びかけ文と開催要綱 →ポスター 岐阜に全国から1200人参加し「護憲・平和を守るデモ&集会」 ビデオ報告 憲法理念の実現をめざす第51回大会(護憲大会)とデモ行進
11月1日の開会総会は大粒の雨が落ちる荒天のもと行われました。前段のオープニングでは、シャンソン歌手の今里哲さんのコンサート。今里さんは、ファッショナブルな衣裳、熱い歌唱、軽妙なおしゃべりで参加者に安倍首相と内閣メンバーの非道を訴えました。
開会総会は、総合司会の犬飼米男・森林労連書記次長と、岐阜県実行委員会の佐藤惠・自治労岐阜県本部副委員長のもとで進行。最初に、福山真劫・実行委員長の主催者あいさつ、つづいて、河合良房・岐阜県実行委員長(弁護士)の地元歓迎あいさつ、 江田五月・民主党最高顧問(参議院議員)、吉田忠智・社会民主党党首(参議院議員)の連帯あいさつ、また、大会への連帯メッセージが古賀伸明・連合会長、立憲フォーラム代表の近藤昭一衆議院議員などから寄せられていることが報告されました。これらを受けて、藤本泰成実行委員会事務局長が基調提案し、改憲阻止を呼びかけました。
このうち、福山実行委員長は、安倍政権下の現状について「戦後の平和と民主主義の最大の危機に至っている」との認識を示した上で、「私たちは安倍政権と対決するためにもう一度私たちの原点、憲法の基本を確認する必要がある」と呼びかけました。また、集団的自衛権問題に関して、「自衛隊は米国の軍事戦略の下、東アジアから中東まで武力を行使し、日本は戦争をする国になろうとしている。まさに憲法の破壊だ」と危機感を強調。その上で「総がかりで闘えば沖縄の新基地建設も(日米)ガイドライン改定も戦争関連法案(成立)も川内原発再稼働も阻止することが可能だ。集団的自衛権行使合憲化の閣議決定も撒回させることができる」と訴え、「時代は安倍内閣退陣に確実に動き出している。ひるまず私たちの闘いに確信を持って頑張りたい」と撒を飛ばしました。とくに沖縄の新米軍基地建設については「懐柔と弾圧による辺野古新基地建設は絶対に許せない」と語気を強めました。河合県実行委員長は「憲法の理念をどう実現するかを考え、この3日間で大きな成果を上げてほしい。理念実現の第一歩にしよう」と呼びかけ。民主党の江田最高顧問は、冒頭、民主党が政権を失ったことへのお詫びをするとともに、世界の常識とかけ離れた歴史認識を持つ安倍内閣の危険な動きを現実化させない戦後70年のアジアをはじめとした世界との友好関係を圧倒的多数の国民とともに築いていくと発言しました。社民党の吉田党首は、安倍首相が自衛のための必要最小限度の範囲内の「受動的活動」などとして容認にこだわる(他国領海内の武力行使にはかならない)ホルムズ海峡の機雷掃海をめぐり、与党内の不一致が露呈していることに言及し、「これからの私たちの世論形成がいま政府部内、与党の中で、アメリカとの間で行なわれている議論に大きな影響を及ぼす」と指摘。また、現在戦われている沖縄県知事選について「基地の島から平和の島に変えていく重大な転換点になる知事選」と述べ、新基地建設反対を掲げる翁長雄志候補の必勝を訴えました。
→福山真劫実行委員長の主催者あいさつ →河合良房岐阜県実行委員長の地元歓迎あいさつ →江田五月民主党最高顧問の来賓あいさつ →藤本泰成事務局長の大会基調提案 →大会基調全文
開会総会に引き続いて開かれた「戦後70年に向けて、私たちが確認しなくてはならないもの-歴史認識・憲法・沖縄・脱原発」と題したシンポジウムは、大会実行委員長を務める福山真劫・平和フォーラム代表を司会・コーディネータ。パネリストは、弁護士で戦争をさせ名1000人委員会事務局も務める内田雅敏さんと、憲法学者で名古屋学院大学准教授の飯島滋明さん。内田さんは安倍首相が修正を図る村山談話が戦後の保守内閣のもとでも積みあげられてきたものであることなど指摘しました。また、飯島さんは集団的自衛権をめぐる問題について提起しました。
内田さんは、過去の植民地支配と侵略への反省とおわびを表明しだ1995年村山談話について、これはその前後にわたって表明されてきた「日本政府の国際公約」だとした上で、この内容を覆そうとするであろう「戦後70年安倍談話」への警戒感を表明しました。
安倍首相の歴史認識に関して、首相が5月にシンガポールで開がれたアジア安保会議での演説で「戦争を憎み、ひたぶるに、ただひたぶるに平和を追求する一本の道を、日本は一度としてぶれることなく、何世代にもわたって歩んできました」と述べていることを紹介し、「まったく歴史を見ていない。どうしてそんなことが言えるのか」と戦前戦後の断絶を認めない歴史観を批判。「これは戦後世界の平和秩序に対する挑戦だ。この認識と全く同じものが靖国神社の歴史認識」と述べました。
その上で内田さんは、では私たちに問われていることはないのかと指摘し、「戦後70年、戦争の歴史と向き合い、これを克服する努力をしてきたのか。何をし、何をしてこなかったのか」と問題提起。その一例として、1960年に右翼少年に暗殺された社会党の浅沼稲次郎委員長の遭難記念碑(レリーフ像)が1971年に日比谷公会堂に設置されたのに、右翼の抗議を受けて1990年ころに掲示板で隠され、事実上封印された格好となっているのだが、この事実がほとんど知られていないという問題を挙げました。
これを受けて飯島さんは、4月にフランス・パリ政治学院で講演した際、「仮にドイツの首相が『国のために死んだ人だから』などと言ってヒトラーの墓を参ったら、近隣諸国の民衆はどう反応するだろうか」と問いかけたところ、「仮にドイツ人が『侵略戦争ではない』と言い、ナチス幹部の墓参りをし、その上で『ポーランド、フランスは脅威だ』などと言って軍備を強化する動きをしたら、フランスや近隣諸国の民衆は決して許さないだろう」との反応が返ってきたというエピソードを語り、世界的な常識からずれている日本の状況の特異性を強調しました。
また飯島さんは、日米ガイドライン(防衛協力指針)再改定に向けた中間報告について、その中に宇宙空間軍事利用の日米協力が含まれていることに注意を促し、周辺事態対処が削除されたことによる地理的制約の消滅だけでなく、空間的制約もなくされようとしていると指摘。日本有事の際の日米共同対処と日本・極東の平和と安全維持のための米軍基地提供を骨子とする安保条約を逸脱する内容を、国会承認を必要とする条約ではない政府間合意で決めようとしているとして、「手続きを踏まないで勝手に条約を変えるようなことをしている」と批判しました。
また、有事動員を確保するために予備自衛官を船員として雇っておく仕組みが防衛省で検討されていることに触れ、「民間人は戦争に関係ないというのは大間違い」と警鐘を打ち鳴らしました。
第2日の11月2日は、午前から「非核・平和・安全保障」、「地球環境-脱原発に向けて」、「歴史認識と戦後補償」、「教育と子どもの権利」、「人権確立」、「地方の自立・市民政治」、「憲法」の7分科会、「世界遺産白川郷合掌造りと高山市内観光」と「可児市久々利地下工場跡と中仙道・馬籠宿」の2つのコースのフィールドワーク、午後には「男女共同参画-女性と人権」、「オスプレイ・低空飛行問題全国交流」、「超深地層研究所を考える」の3つの「ひろば」、特別分科会「運動交流」が行われました。
このうち、「非核・平和・安全保障」分科会は、東京新聞論説兼編集委員の半田滋さんを講師に招いて開かれました。半田さんは、日米ガイドライン(防衛協力指針)再改定を安保関連法制整備に先行させる政府の方針について「手順が逆」だと批判。「ここまでわが国がアメリカの戦争に協力しますという約束が先に決まってしまう」と述べました。
半田さんは、安倍首相が、集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更を閣議決定した7月1日の記者会見で述べた、「他国を守るために日本が戦争に巻き込まれるという誤解があるが、あり得ない」との発言を取り上げ、朝鮮半島有事(米国の対北朝鮮攻撃)という米国の戦争が即、日本の戦争になることは自明の理だとして首相発言を批判。集団的自衛権行使とは「戦争に巻き込まれる行為そのもの」だとし、「国民にとって直接影響のあるアメリカの北朝鮮攻撃の背中を押してしまうことが一番怖い」「ウソとでたらめを上乗せした結果として7月1日の閣議決定があった」と強調しました。
さらに半田さんは、安保法制懇が報告書の中で示した、攻撃を受けた国の明示的な要請や首相の総合的判断、原則国会事前承認などのいわゆる「集団的自衛権行使5条件」に言及。危機の切迫時にこうした手順を踏むことに現実性がないことは明らかだとした上で、これは裏を返せば、「本格的なアメリカの戦争に参加するかしないか」を事前に問われるのが集団的自衛権行使問題であることを物語っていると指摘しました。
10月のガイドライン見直し中間報告の内容については、まだ詰め切れていないとしつつ、最終報告では「より具体的にどのような場面で集団的自衛権を行使できるのかがはっきり書かれる」と強調。他方、ガイドライン改定と連動する関連法案の書きぶりが、もし国内への配慮で曖昧さを残すような場合、現場制服組の暴走を許しかねないという懸念もあるとしました。
関連して、中間報告でも2ヵ所で項目として挙げられている「後方支援」について、閣議決定が「現に戦闘行為を行なっている現場以外」への実施要件の緩和を行なっていることに注意を喚起。最終報告などが、従来の対米軍後方支援法制では行なわないとされてきた武器・弾薬の提供や他国領での輸送などに踏み込んでくるおそれは十分あり、米軍と完全に一体化した自衛隊が交戦当事者となる可能性が強まるとしました。
「男女共同参画」のひろばでは、「女性の活躍推進法で本当に女性は輝けるの?」をテーマに、まず「徹底解剖!アベノミクスの『雇用改革』と女性の活躍推進」と題して、中野麻美・弁護士が講演。女性の活躍推進法では「労働時間」「賃金格差」を問題にしていないこと。ディーセントワーク(人間らしい労働)と均等待遇を実現し、女性に不利益な慣行も排除しなければ「活躍」などあり得ないと指摘しました。会場からは、女に何ができると言われながら、初めて連合自治会長になった方から「上から目線ではなく下からつながる地域づくりが女性の視点」との話や、貧困女性に関わるNPO活動、特養ホームの介護現場などから男女共同参画の実態が報告されました。さまざまなジャンルで女性が活躍し、重要な役割を果たしているにもかかわらず、それが経済的に社会的に評価されないことが問題であることを感じさせる場となりました。
最終日の閉会総会は、会場をじゅうろくプラザ2階ホールに移して行われました。最初に、「辺野古新基地建設を阻止するとりくみ」について沖縄平和運動センター事務局次長の岸本喬さん、「戦争をさせない1000人委員会・信州でのとりくみ」について同事務局の山田和敏さん、「強制連行犠牲者追悼碑をめぐるとりくみ」について群馬県平和運動センター事務局長の唐沢武臣さん、「オスプレイ配備に反対するとりくみ」について神奈川県平和運動センター事務局長の小原慎一さんの4人の特別提起を受けました。
次に、「大会のまとめ」を藤本事務局長が提案。大会議論の詳細に触れるとともに、青森で開催する第52回大会まで1年間、全力で安倍内閣の憲法無視の政治を許さず、憲法理念の実現をめざそうと訴えました。
→藤本事務局長の大会のまとめ
大会は、平和・護憲運動の功労者を表彰する「遠藤三郎賞」として、元徳島人権・平和運動センター事務局長の寺前學さん、鹿児島県の反戦・反核・平和運動をすすめる大隅市民の会代表の上山陸三さん、元フォーラム岐阜事務局長・会長の池戸修さんの3人を表彰しました。その後、「憲法の理念、命と平和に生きる権利を守り抜くため、一人ひとりが最先頭に立って取り組もう」とした大会アピールを北嶋あづさ岐阜県副実行委員長が読み上げて提案、参加者全体の拍手で採択しました。つづいて、来年の開催地青森の掛村政則青森県平和労組会議副議長(自治労県本部委員長)から決意が述べられ、最後に岐阜県実行委員会の大矢浩フォーラム岐阜会長の力強い閉会あいさつで3日間の日程を終了しました。
→大会アピール