2013年、トップランク、東北アジア平和キャンペーン、集会等の報告
2013年06月20日
日朝国交正常化連絡会総会・記念講演会開く
日本と東北アジアの平和構築にあたって、世界で唯一、日本が国交を持たない朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化と核開発問題の解決は最重要課題です。日朝国交正常化連絡会は、政府・与党への働きかけをはじめ、全国各地の組織も、集会や学習会、訪朝交流などをとりくんできました。
しかし、第1次安倍内閣の打ち出した「拉致問題の解決なくして日朝国交正常化なし」の方針に拘束されたまま、政権交代してもまともな交渉も行わず制裁を強めるばかり。安倍内閣が再び登場して関係はさらに悪化し在日朝鮮人の人権侵害は極度に達しています。朝鮮半島の平和を確実なものにするためにも、多くの人たちと手を携えて、日朝国交正常化を求めるとりくみを全国各地ですすめていくことが重要です。
そのため、6月20日、日朝国交正常化連絡会は連合会館で全国総会を開催するとともに、記念講演会を行い、約100人が参加しました。全国総会では、議事に先立ち黙祷を行ないました。1月に逝去された清水澄子共同代表、そして連絡会に継続的に協力していただいた前参議院議員で4月に急逝された今野東衆議院議員に弔意を表しました。総会では中村元気共同代表(福岡県日朝友好協会)の開会のあいさつに続き、福山真劫共同代表(平和フォーラム共同代表)を議長として、議事に入りました。まず、石坂浩一共同代表兼事務局長(立教大学准教授)が「活動報告と運動方針提起案」をもとに、この間の朝鮮半島情勢、1年間の運動のまとめと今後の方向、具体的取組について提起を行ないました。これを受けて、長野、北海道、岩手、新潟、神奈川、静岡、大阪、福岡の参加者からの1年間の活動報告と今後の活動への表明が行なわれました。昨年9月、平壌宣言10周年に際し日朝交渉再開を求める要請を集会で決議し10月に野田首相(当時)に伝達したとりくみのほか、朝鮮学校に対する差別是正問題にも取り組んできたこと。また、朝鮮学校支援のための募金活動(長野)、補助金予算の復活を求める署名運動(神奈川)、日朝友好フェスティバル支援(新潟)などの積極的な活動が紹介されました。福岡からは、今後朝鮮学校に対する無償化措置適用除外をめぐる裁判が始まるので、それに対する支援も積極的に行なうべきだとの意見が提起され、提起に具体的に盛り込まれていなかったので、今後の共通課題として確認しました。民主党政権が日朝問題を前進させることができなかった後を受けて、安倍政権は憲法や歴史認識をはじめ危険な方向へと進もうとしていますが、こうした動きと闘う中で、あらゆる核に反対し日朝国交正常化を前進させていくことをともに確認しました。また、6.15共同宣言実践日本地域委員会が展開している「朝米平和協定締結と北南共同宣言履行のための宣言運動」についての説明も行われました。
つづく、記念講演会ではまず主催者を代表し、伊藤晃二共同代表(日朝長野県民会議会長)があいさつ。日朝両国が国交を正常化することが何よりも大切であり、そのために訪朝団をはじめ民間レベルでの交流を推し進めるとともに、日本の中で世論を形成していくことが必要だと訴えました。そののち、琉球大学の高嶋伸欣名誉教授が「歴史認識とヘイトスピーチ」と題して、日本で昨今問題となっている在日朝鮮人に対するヘイトスピーチ(憎悪表現)について、東京大学の和田春樹名誉教授(連絡会顧問)が「朝鮮半島情勢と私たちの課題」と題して、日朝関係改善のための課題について、それぞれ講演。また連絡会の石坂浩一共同代表兼事務局長(立教大学准教授)が、連絡会の今後の取り組みについて話しました。
高嶋名誉教授は、在特会に象徴される排外主義的な動きのこれまでにない公然化、ヘイトスピーチに見られる論理矛盾と破たん、ヘイトスピーチの台頭を許してしまう結果を招いた日本のマスコミの問題点などを指摘。新大久保などで休日の白昼に行われているヘイトスピーチデモについて、表現の自由などではないれっきとした脅迫行為だと断じたうえで、「大半の参加者は冷静な判断のもとに行っているわけではない」とし、その根本には「社会の閉塞感に対する若者たちの苛立ち」があり、社会での存在感を得ようとする若者たちのエネルギーの受け皿を作ることが必要だと話しました。また政治家たちが日本軍性奴隷問題などについて「日本の一部でしか通じない歴史認識」(高嶋教授)を振りかざしていることに警鐘を鳴らしながら、植民地下で行われた犯罪が「非人道的な罪」なのだという本質についてマスメディアがしっかりと語っていないと非難。高嶋教授は、歪んだ歴史認識とヘイトスピーチは対を成すものであり、解決の筋道をつけるためにも「歴史の事実を知ること」がもっとも大切であり、日本で歴史教育がしっかりと行われなければならないと話しました。
和田名誉教授は、2002年の日朝平壌宣言にもかかわらず日朝関係の前進を押しとどめてきたのは第1次安倍内閣(2006年)の対北朝鮮圧迫政策にほかならず、以降、民主党を経て再度自民党が政権与党となり、第2次安倍内閣が誕生したが、朝鮮に対する圧力を優先する政策は変化していないと指摘。朝鮮との交渉再開のためには、安倍政権が拉致問題解決の3つのポイント(全員帰国、真相究明、実行者引渡)を見直さない限り前進はない、日本社会に対朝鮮政策の転換を促すために、世論を変えていくことが重要だと力説しました。
石坂共同代表は日朝国交正常化連絡会の今後の具体的な取り組みについて、1.日朝平壌宣言発表日(9月17日)を前後して国交正常化を求める集会の開催、2.日本政府に植民地支配への反省と謝罪の態度表明を要求、3.「高校無償化」制度適用をはじめとした朝鮮学校への差別是正などを求めていくと話しました。
最後に、東北アジアの平和を実現するために、安倍政権が圧力を基本とした対朝鮮政策を見直し、日朝国交正常化のための交渉を再開すよう求めるアピールが、拍手のもと採択され、日程を終了しました。