2010年、人権コーナー、集会等の報告
2010年12月02日
待ったなし!今こそ可視化の実現を~冤罪はこうして作られる~取調べの可視化を求める市民集会
足利事件や布川事件の冤罪被害者や「厚労省元局長事件」の担当弁護士が参加して捜査の問題点を考えるシンポジウム「待ったなし!今こそ可視化の実現を~冤罪はこうして作られる~取調べの可視化を求める市民集会」が、12月2日、東京・弁護士会館講堂クレオに約400人の参加者を得て、行われました。主催は、アムネスティ・インターナショナル日本や監獄人権センター、人権市民会議などの人権団体をはじめ平和フォーラムも参加する取調べの可視化を求める市民集会実行委員会。日弁連と東京3弁護士会が共催しました。
集会は、「こうして冤罪は作られた~冤罪被害者の声」と題した第一部で、日弁連作成ドキュメンタリービデオ「つくられる自白~志布志の悲劇」ダイジェスト版の上映につづいて、人権市民会議の福井昌子さんの主催者あいさつ、足利事件冤罪被害者の菅家利和さんと弁護団の泉澤章弁護士、布川事件冤罪被害者の桜井昌司さんと杉山卓男さん、厚労省元局長事件弁護団の河津博史弁護士によるスピーチが行われました。
このうち、福井さんは、集会の目的を「取調べ可視化をできるだけ早く実現すること」とし、足利事件で再審無罪が確定した菅家さんは、警察官から髪の毛を思いっきり強く引っ張られ、それから足蹴りで脅され、恐怖心から虚偽の自白をしたと振り返り、また、裁判所では「傍聴席に刑事がいるんじゃないかとビクビクしてました」と述べ、警察による暴力で精神的に抵抗できない状況が公判段階まで続いたと強調。「私のようなことは二度とあってはいけない」と訴えるとともに、取調べの可視化について、検事だけでなく、任意同行から、パトカーのなか、警察のものを含め「全過程を可視化(録音・録画)しないと冤罪はなくならない」と呼びかけました。茨城県で1967年に起きた布川事件で再審無罪が確実視されている桜井さんも「なぜ当然のことができないのか。不思議で仕方ない。日本の警察官は、取り調べ技術を磨こうとしていない」と指摘。杉山さんは、自白強要で冤罪の調書が作られたと、密室での取り調べの怖さを訴えました。大阪地検特捜部に逮捕され、その後無罪が確定した村木厚子さんを弁護した河津さんは、「検察官は、関係者を呼び出しては逮捕すると脅して自分たちのストーリーどおりの供述調書を作り上げた。密室での取り調べをすべて録画して検証できるようにしなければならない」と述べました。
「今こそ取調べの可視化を!」と題した第二部では、大阪府警の恫喝の取調べの録音音声の一部が紹介された後、秋田真志弁護士の解説、ジャーナリストの江川紹子さん、元裁判官の木谷明法政大学大学院法務研究科教授のスピーチを受けました。議員アンケート結果の報告、集会アピールにつづいて、宇都宮健児日弁連会長の閉会のあいさつで終了しました。
このうち、法務省が設置した「検察の在り方検討会議」の委員を務めている江川さんは、検察官と裁判官の馴れ合いを批判。「裁判所は書面さえ作れば検察の言うとおりに認めるという経験が続いてきた。ぽいぽい書面を採用する『書面大好き』マインドの裁判官が冤罪をいっぱい作ってきた」と述べ、取り調べの様子をすべて録画するだけでなく、検察官の倫理規定を作り、録画・録音の上で作成された調書のみを証拠採用するよう捜査のシステム自体を変える必要があると訴えました。元東京高裁判事の木谷教授は「捜査側は可視化すると『信頼関係が構築できなくなり、真実の自白が得られない』と言うが、そうやって得た自白が次々に虚偽だと明らかになった。どう説明するのか」と批判。警察官と被疑者という上下関係のなかでのいわば「えせ信頼関係」だとして、密室での自白には容易に虚偽が入り込むと指摘。また、現在行なわれている「取り調べの一部可視化」も逆に冤罪を生むばかりだとして、全面可視化の速やかな実現を訴えました。法務省の検討会議では、今後、取り調べの全面的な可視化を導入するかどうかを含め、来年3月末までに改革案を取りまとめることにしており、引き続き、取り調べの可視化の必要性を訴えていくことを確認しました。