第46回護憲大会 第6分科会「地方主権・市民政治」報告     2009年11月02日
  ◆第6分科会「地方主権・市民政治」は、日本の地域の荒廃、生活の困窮が、世界同時不況のなかでいっそうすすむなかで、地方主権、地域の自立と振興がきわめて重要な課題となっていることを踏まえ、憲法理念実現の観点から、あらためて地方自治のあり方について、地方財政の現状と課題、市民生活の命と暮らしを守る政治のあり方について議論する場として設定されました。長野市生涯学習センター(TOiGO)の大学習室を会場に107人(半数以上がはじめて)が参加して行われました。地方主権・地域主権を確立する観点から財政健全化法と自治体財政についての課題提起を地方自治総合研究所の菅原敏夫さんが行い、続いて財政問題と市民自治の観点から「医療における生存権といまの『医療破壊』の流れ」を公立病院ガイドライン下の「病院」を典型に甲府市議会議員の山田厚さんが問題提起・助言者、井加田まりさん(自治労)、田中喜久雄さん(全自交労連)、篠原國造さん(ヘルスケア)が運営委員、千葉文吉さん(秋田)、片岡靖貴さん(愛知)が座長。運営委員紹介、座長選出の後、講師による問題提起に入りました。

提起 自治体財政の仕組みと現状−菅原敏夫さん
プロフィール  財団法人地方自治総合研究所研究員。横浜国立大学大学院終了。専門は地方財政論、自治体財務論、地方自治論、非営利セクター論。主な著作「NPOと行政・協働の再構築」(共著、第一書林、2004年)、「中長期視点から見たいわゆる『三位一体』の改革と地方財務」「地方財政レポート'04」(財団法人地方自治総合研究所、2004年11月)、「東京から見た『三位一体』改革-税源移譲を中心とする国地方関係」(自治総研2004年12月)。

 →問題提起レジュメ

  ◆長妻厚生大臣は、多忙にもかかわらず、10月31日に複数の保育所の視察を行いました。これは現在、保育所の設置基準は「国」で決めていますが、これを11月4日までに見直すかどうか結論を出さなければならないからで、特養などなどの設置基準も含め「国」が決めるべきか、「自治体」が決めるべきか議論をする必要があること。憲法の第92条(地方自治の基本原則)は、国が基準を決めることを想定していませんでした。
◆2009年4月1日から全面施行された「自治体財政健全化法」で、10月2日、総務省はイエローカード22枚、レッドカード1枚を含む健全化判断基準を発表しました。健全化比率をどう読むか、市民、議員、職員が目をこらしています。地方財政は、その制度も実態も急激な変革期にあります。財政健全化法、公営企業会計制度など議論を深める必要があります。

提起 命を削る政策・医療切り捨て政策の大転換を!−山田厚さん
プロフィール  山梨県甲府市議会議員。1951年、現在の甲府市北口3丁目に生まれる。甲府南高、立正大学史学科卒業。1995年市議会当選。現在、全国労働安全衛生研究会副代表。財団法人労働安全衛生研修所教務員。

 →問題提起レジュメ

  ◆貧困化と患者自己負担増が進むなか、有訴者率が増加しているにもかかわらず、受診抑制が経済力の弱い人ほど強くなっていることを指摘。診療報酬のマイナス改定と入院日数短縮への誘導策は、官民を問わず病院収入は減少し、民間病院では生き残り競争と縮小、倒産も増えていること。
◆自治体病院では、これまでの地方行革と小泉改革によって、廃止・削減された国庫補助は、1994年度から2006年度には地方交付税が253億円も減少し、病院事業債では地方交付税の計算方法が「改正」され、病院自体の負担(支出)が増加されていること。さらに、「公立病院ガイドライン」では、病床利用率の低い病院には実質的なペナルティ措置が課せられることになっていること。すでに50を超える病院が独立行政法人化、指定管理、完全民間移譲へと経営形態が変更され、さらに計画中を含めると全国で100病院もが自治体から切り離されようとしていること。
◆医師・看護師不足も深刻で、収入源の要因となっていること。自治体病院の「赤字」の責任はどこにあるのか。たとえば、一般会計からの繰出金を病院への「赤字補填」と解するのは間違いであり、公営企業繰出金には「繰出基準」があり、他の公営企業(下水・水道・交通など)には、全額繰り出されていることが多いが、病院では基準以下の自治体が増えていること。
◆経営形態変更による、経営側、患者側にとってのメリット・デメリットを明らかにし、自治体病院を守ることが地域医療の崩壊を食い止め、地域医療の再生に向け、医療労働者の雇用を守り労働条件を改善することが急務になっていること。医療は地域で完結しないと患者の命と健康は守れないこと、公的な不採算医療は自治体病院の公的な役割りであり地域にとって不可欠であることが提起されました。

質疑・討論・意見交換の概要
   質疑、討論、意見交換では以下のようなことが出されました。
●医療は、診療所も病院が必要、高額医療機器、救急医療も地域になければ完結しないこと。
●公立病院の存続問題は厳しい状況にあること。病院を支えるには、住民、市民に必要とされ、支持される必要があること。
●財政健全化法では、病院など単独事業を切り離せば「健全化」すること。それで本体から切り離したくなること。自らの「もの指し」が必要であること。
●「地方公営企業繰出基準」による病院への繰り入れ率と他への率の比較をすべきこと。
●待機児童対策で東京都の認証保育所では2.5u(認可保育園では3.3u)としているが、労働安全衛生法による事務所基準10uにも満たない基準であること。
●合併特例債は、自治体が返済することになるが、国は交付税に含むとしているが、今後も補填される保証があるわけではないこと。
●健全化判断比率の4項目(実質赤字比率、連結実質赤字比率、将来負担比率)だけを見るのではなく、隠されているすべてを明らかにし、中身を解明する運動なしには信用できないこと。
●保育所の例など、コストがかかる意味を考え、財政の読み方を習得する必要があること。数字の持つ意味、必要な赤字が、そうでないかを議論し、市民と共有していくこと。検討すべき項目は多いが、手分けして調べ、よい方向に動かしていく運動を市民とともに創っていくことが重要であること。◆医療は診療所も病院も必要。高額医療機器、救急医療も地域になければ完結しない。公立病院の存続問題が厳しい状況にある。病院を支えるには、住民・市民に必要とされ、支持される必要がある。

まとめ
  ◆地方財政の現状と課題、財政健全化法の見方などの提起に続き、病院財政問題を中心に市民の命とくらしを守るところがどういう状況に陥っているのかを提起を受けました。財政健全化法では、イエローカードにならないために「自主的」に赤字解消のために公立病院を切り離そうとする動きが加速することが懸念されること。命を支える自治体の業務を担う現場の実態は、保育所では、正規でなく低賃金で不安定な臨時・非常勤職員に置き換えられ、病院でも補助金の削減や診療報酬マイナス改定による経営赤字を理由に公立病院を直営から切り離そうとする動きになっていること。
◆諸外国との比較では、日本の公務員数は3分の1の水準で、現場感覚とは合わないこと。現場は物も言えない凄まじい働き方を余儀なくさせられていること。自公政権のツケは地方の隅々まで疲弊させ経済格差をもたらしたこと。自治体においても、地方主権の名の下、交付税が切り下げられ、住民生活を支える自治体の業務が、変わっていったこと。さらに使い捨て状態の労働者の現状に合わせて国の規準を緩和することも含めて議論がされていること。憲法第94条に規程される「地方公共団体の権能」が発揮できる状況にあるのか問われていること。足元からの見直しが必要であること。議論は始まっていること。何処の自治体においても、現場感覚を大切にし、自己規制ではなく、住民の身近にあるべきセーフティネットを市民の立場で選択していけるよう議論を深めていくこと。それぞれの現場で憲法理念・命とくらしを守る運動をお互いに担っていこうとのまとめで分科会を終了しました。

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