声明・申し入れ、2010年
2010年03月11日
原水禁/「密約」問題に関する有識者委員会に対する声明
3月9日、「密約」問題に関する有識者委員会は、核問題などをめぐる「いわゆる『密約』問題に関する調査報告書」をまとめ政府に提出しました。2009年の外務省事務次官の発言に端を発した密約問題については、岡田外務大臣が徹底的に調査し国民に対して報告するとしていたもので、長い間疑惑とされていた事への解明に着手した新政権の姿勢は評価されるものです。
報告書は、「朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動」については、日米二国間の文書による狭義の密約として認定し、「安保改定時の核持ち込みの容認」、「沖縄返還時の原状回復補償費肩代わり」については、文書の交換はないが事実は認識していたとして広義の密約と認定しました。「沖縄返還時の核再持ち込み」については「密約」としないとしましたが、岡田外相は、「一般常識からみれば、密約ではないかと」と述べるなど、4つの案件は全て密約であったと言わざるを得ないものです。あらためてこれまでの歴代政権と一部官僚の国民をあざむく姿勢に強い怒りを覚えます。
「非核三原則」は国是としながらも、一方で長い間国民を裏切ってきた自民党政権の責任は重大です。憲法が規定する民主主義は、主権者への情報へのアクセスの権利と政策決定プロセスへの参加を保証するものであり、今回の案件は、自民党政権がいかに非民主的な政権であったかを表すものです。このことを、「極めて重要な政治判断であった」などとして免罪されるものではありません。
持たず、作らず、持ち込ませずという「非核3原則」が、被爆国日本の主権者の強い「思い」であったことは論を待ちません。現状を是認しようとする動きもありますが、原水禁は断固として反対するものです。鳩山首相や岡田外相の「非核3原則」の堅持の表明を、私たちは支持するもので、さらに非核政策を確かなものにするためにも「非核3原則」の法制化へと踏み出すことを求めます。アメリカの核の傘からの離脱し、武力にたよらない平和外交の構築が必要です。
今回の調査では失われた文書の存在が明らかにされました。徹底解明とは言い難い部分も数多くあります。公文書などの文書の保管や公開についても、透明性の確保を強く求めます。密約の存在は、これだけではないことも考えられ、徹底した洗い出しによって、「開かれた外交と信頼」をつくり出す事が重要です。現政権のさらなる努力を期待します。
核疑惑は、これまでも何回となく取りざたされ問題にされてきました。原水禁は、核廃絶の運動を進めてきたものの立場としても、今回の密約問題を真摯に反省し、今後の運動に生かしていきます。また、現政権には過去の政権の批判に終ることなく、非核政策のさらなる強化と、平和と民主主義の前進に向けたさらなる努力を求めます。
原水爆禁止日本国民会議 議長 川野浩一