憲法審査会レポート、2023年
2023年04月21日
憲法審査会レポート No.15
2023年4月20日(木) 第211回国会(常会)
第8回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54548
※「はじめから再生」をクリックしてください
【会議録】
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021120230420008.htm
【マスコミ報道から】
衆院憲法審査会 自衛隊明記を巡って討議 自民は9条改憲を主張、立民と共産は反発
https://www.tokyo-np.co.jp/article/245293
“衆院憲法審査会は20日、憲法への自衛隊明記を巡って討議した。自民党が戦争放棄などをうたう9条を改憲し自衛隊を位置づけるべきだと主張したのに対し、立憲民主党は拙速な論議が行われているなどとして反発した。”
衆院憲法審査会・発言の要旨(2023年4月20日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/245300
公明、自民の9条改憲案に反対表明 衆院憲法審査会で
https://mainichi.jp/articles/20230420/k00/00m/010/261000c
“「(自民側は)『妨げず』はあくまでも(戦力不保持の)9条2項の範囲内にあると述べているが、『妨げず』を例外規定として使用する法律は数多くある。9条2項の例外規定と読まれる余地を残すことになり、賛成できない」”
※自民党・公明党の自衛隊明記をめぐる主張については飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)の以下の論考を参照してください。
【壊憲・改憲ウォッチ(28)】自衛隊明記の憲法改正を主張する自民党・公明党など
http://www.anti-war.info/watch/2304211/
立民が憲法への自衛隊明記に慎重論 中国反発を懸念
https://www.sankei.com/article/20230420-4PKMKJR74NO4LFP77URVV5GZ3Y/
“立憲民主党の吉田晴美衆院議員が20日の憲法審査会で、自民党などが提案する9条への自衛隊明記をめぐり、中国などの反発を招きかねないと懸念を示す場面があった。「国内だけの問題にとどまらない。国際的にどう受け止められるだろうか」と述べた。”
“選挙困難な場合 国会議員任期を延長”認める可能性も 立民
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230420/k10014043921000.html
“「結論によっては、憲法に選挙が困難な事態における議員任期の特例を設ける必要が出てくる可能性もありうる」”
“「私たちは、緊急集会でやっていけるのではないかという想定だが、まず、参議院でしっかり議論してもらいたい」”
【傍聴者の感想】
第8回の衆院憲法審査会は、最初に7会派の代表が順に発言をしました。
課題を定めずに自由討議という申し合わせだったようですが、立憲民主を除くすべての会派が9条の改正あるいは自衛隊明記について発言し、ある委員からは「どこかで示し合わせているのですか」という皮肉も漏れていました。
その一方で国民民主と公明の委員からは「この間、緊急事態条項の議論を詰めてきたのに、9条を課題にするとむしろ議論が拡散してしまう」という意見も。自民党は従来通りの主張を漫然と語り、その応援団がまとめを促すという分担のようです。
会派代表の発言後は7人が発言し、立憲民主の階委員は国民投票法の問題について、吉田はるみ委員は憲法審査会のNHK中継について提起しました。
各委員が思うところの問題意識を語って終わりといわんばかりの審査会運営は歯がゆいですが、その中で頑張っている立憲野党の委員の皆さんを今後も応援していく必要があります。皆さんもよろしくお願いします。
【国会議員から】階猛さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)
私からは、3月2日の当審査会でご紹介した立憲民主党の国民投票法改正案の背景にある憲法上の論点について意見を述べます。配布資料を適宜ご参照ください。まず表題は、「情報化社会と人権保障分科会」となっておりますが、「情報化社会」というよりも「ネット社会」あるいは「デジタル社会」という表現の方が現在ではふさわしいかもしれません。
このネット社会、デジタル社会によって情報の発信、流通、入手が飛躍的に容易かつ活発になった反面、情報の受け手である人々が払うことのできる関心や消費時間が流通する情報量に比べて希少となり、人々の関心を引き付けるための刺激的なコンテンツがあふれるアテンション・エコノミーが発達しました。
さらに、GAFAなどのデジタルプラットフォーム(DPF)等の情報の送り手が、膨大な個人データをAI(人工知能)などを駆使して収集・分析し、受け手の関心に合わせてコンテンツを配信するマイクロターゲッティング、偏った意見・知識・情報のみに接触することによるフィルターバブル・エコーチェンバーといった問題も生じています。
その結果、内心の自由(憲法19条)が知らぬ間に侵されたり、選挙や国民投票など民主主義の根幹たる制度に影響を及ぼしたり、個人の人格的自律が脅かされたり、ここには書いていませんが外国勢力による主権侵害のおそれが高まるなど重大な憲法問題が生じています。
また誹謗中傷やフェイクニュースの流通、本人の意思に反した個人情報の拡散など、いわば「悪化が良貨を駆逐する」傾向が強まり、「表現の自由市場」が想定した世界とはまったく異なる状況となっています。
こうした状況の下では、信頼できる公の情報を国民に提供するニーズが必然的に高まってきますが、公文書管理制度や情報公開制度の不備により行政情報の隠蔽、廃棄、改ざんという言語道断の事件も起きています。
そこで、これらの問題を解決するため私たちは三つの権利を保障するべきだと考えます。
第一に、「自己情報コントロール権」。これは、先ほど述べたデジタルプラットフォームによる行き過ぎた個人データの収集・分析・活用への規制根拠となりうるものです。ただし、適正なデータの利活用を妨げるものではありません。
第二に、「情報アクセス権」。これは、国家に必要な情報の開示を求める権利であり、知る権利や取材・報道の自由、ひいては国民主権に由来し、これを発展させるものです。
第三に、「情報環境権」。これは、国民がフェイクニュース等への批判的能力を獲得できるよう、多様な情報に接することができる環境を作ることを国家に求める権利です。
これらの人権の中には、法律で一部保障されているものもありますが、より保障を充実・強化するために、憲法上の権利として位置付けるかどうか、位置づける場合に解釈上の権利とするか、明文上の権利として位置づけるかどうか、を考える必要があります。
2週間前に、私は衆議院を代表して自民党のお二人の議員と共に、「OECDグローバル議員ネットワーク会合」に参加してまいりました。その場においても、「誤情報及び偽情報への対処」や「外国の不当な影響及び干渉に対する強靭性の強化」が主要議題とされ、こうした問題の解決が「民主主義の強化」にとって極めて重要であるという認識が参加者の間で共有されました。
「選挙困難事態」という万一の場合に国会機能を維持するという議論も民主主義の強化に関わるテーマだと思いますが、本日私が取り上げたテーマに関わる問題につき国際社会の関心が高まっていることを踏まえると、当審査会でも優先的にこれを議論すべきではないでしょうか。以上を申し上げ、発言を終わります。
(憲法審査会での発言から)
参議院憲法審査会は今週の開催なし
【マスコミ報道から】
参院憲法審査会、「慣例」により開催見送り 弾劾裁判の開催日
https://www.sankei.com/article/20230419-6BELC2XE5NL2FIYPIYFEWLESGU/
“参院憲法審査会の開催が19日、見送られた。弾劾裁判の開催日は憲法審を開かないという慣例があるという。自民党は同日の幹事懇談会で慣例を見直すべきだと訴えたが、結論は出なかった。次回憲法審は26日、参院選挙区の合区問題をテーマに開かれる。”