2021年、声明・申し入れ

2021年05月17日

入管法改悪案の衆議院での採決に反対する見解

菅政権は4月20日から衆議院法務委員会で審議されている「出入国管理及び難民認定法」の改悪について、明日以降の法務委員会で採決を強行しようとしている。

政府案には、3回以上の難民申請をした者を対象に強制送還を行う措置が盛り込まれている。これまでも、日本における難民認定率が1パーセント以下と極めて低い問題が指摘されていた。このため、出身国における政治的な迫害や経済的な困窮から逃れてきた人々が、難民認定を何度も繰り返さざるを得ない状況に追い込まれている。今回の政府案は、難民申請中でも強制送還を可能としており、このことは日本政府が加入している難民条約に違反するばかりか、難民申請者の生命に関わる問題を引き起こすものであり、看過できない。

政府案には有効な在留資格を持たない外国人を対象とした「在留特別許可」に関する規定が盛り込まれているが、適用対象が非常に限定されており、加えて退去強制令書の発付後は在留特別許可の申請権が認められないとされている。改悪案は、「帰ることができない事情」を抱える外国人を「送還忌避者」として送還することを容易にするものであり、対象とされた人々に重大な不利益や人権侵害をもたらすものである。

また、政府案には、退去命令に従わない者を刑事罰の対象とする「退去強制拒否罪」が設けられている。安価な労働力、雇用の調整弁として外国人を都合よく利用している日本社会の側の責任が問われないまま、外国人に刑事罰をちらつかせることは、多文化共生社会、基本的人権が尊重される社会の実現に向けた努力と逆行している。

今年3月のスリランカ人のウィシュマさんの死亡についても、名古屋入管は監視カメラの映像開示を拒むなど、真相究明に非協力的な姿勢を崩していない。昨年8月から収容が続いていたウィシュマさんの診療記録が病院と入管で食い違うなど長期収容に伴う問題も発生している。収容、仮放免、さらに政府案で示されている「監理措置」のいずれも入管当局の独断で決定されることとなっており、その対応をただすことが困難である。ウィシュマさんをはじめ入管で多発する収容者の死亡の真相究明と、基本的人権を尊重する日本国憲法の理念に沿った入管行政の見直しが優先されなければならない。このため、平和フォーラムは入管法改悪案の衆議院での採決に強く反対するものである。

2021年5月17日

フォーラム平和・人権・環境

事務局長 竹内広人

 

TOPに戻る