WE INSIST!、ニュースペーパー
2021年02月01日
衰退する政治、苦しむ市民社会
WE INSIST!
菅義偉内閣の支持率が急降下している。安倍政権の下、内閣官房長官として君臨した存在感が、急速に失われつつある。そう感じるのは私だけではないだろう。7年8ヵ月に及んだ官房長官時代の強面のイメージは、壊滅と言ってもいいのではないか。官僚人事を掌握し、記者会見における自信に満ちた有無も言わせぬ答弁は、幻だったかようだ。コロナ禍のへの対応でも、不安そうな、自信なさげな答弁は、見ていてなさけないとしか言い様がない。東京新聞の望月衣塑子記者との確執など、いつの話しなのだろうか。そう思わせる。
その望月記者は、菅首相のコロナ対策の一連の発言から危機感が感じられなかったことにその原因があるのではないかと指摘している。象徴的なのは、ニコニコ生放送に出た際の、「ガースーです」との発言。「令和おじさん」ともてはやされたことからの発想なのかもしれないが、市民の思いや状況を、その場の空気を読めない振る舞いは、あきれるばかりだ。望月衣塑子記者は、2020年12月のドイツのメルケル首相の会見に、目に涙を浮かべながら「今年のクリスマスを我慢すれば、来年はおじいちゃんやおばあちゃんと皆でクリスマスが祝えるかもしれない。でも我慢しなければ、最後のクリスマスになるでしょう」と語ったことに、心を揺さぶられたと述べている。この日独の違いは何なのかと、問わざるを得ない。言葉を持たない政治の悲劇を、目の当たりにしている。
菅首相は、官房長官時代の記者会見では、「全く問題ない」「指摘は当たらない」そして「仮定の質問にはお答えできない」と答弁を繰り返し、首相就任後の臨時国会では「お答えは差し控える」と繰り返した。安倍首相は、ご飯論法と批判されたが、輪をかけて菅首相の答弁はひどい。答えられない理由は、自信のなさはどこから来るのか。菅首相個人の問題とはしたくない。想定しなかった新型コロナウイルス感染症拡大に、政治はまったく無力に陥っている。もう少し具体的に言うと、新自由主義を基本にした政治がこのコロナ禍の状況に対応できないと言うことであり、もっと言うと政治の哲学を持たないと言うことだ。
長らく官邸の人事権限に抑え込まれた官僚機構が、機能不全に陥っている。否、「唇寒し」との思いが蔓延しているのではないだろうか。安倍政権7年8ヵ月、日本の政治機構は大きく衰微した。そして、そのとばっちりを受けているのは市民社会だ。(藤本 泰成)