運動方針

2019年04月22日

2019年度運動方針

 

2019年度運動方針

1.情勢と課題
(1) はじめに
昨年の国会では安倍晋三首相と「お友達」による国家権力の私物化が明らかになるなか、事態は森友・加計学園問題にとどまらず、防衛省、厚生労働省、文科省による隠蔽や改ざんなど国会や主権者軽視の深刻な事態が浮き彫りになり、さらに、昨年暮れに発覚した「毎月勤労統計」や「賃金構造基本統計」の不正調査問題も国家権力の腐敗、隠蔽体質を象徴するものといえます。
また、昨年は、女性に対する許しがたいセクシャルハラスメントや医大・医学部入試におけるあからさまな
女性差別、国や地方自治体における雇用水増し問題の背景にある障がい者差別、外国人研修生や技能実習制度に名を借りた著しい人権侵害による外国人差別、そして、「生産性がない」とするLGBT差別など、日本の政治・社会における様々な差別が明らかになった1年でもありました。
こうした国家権力の私物化、腐敗、隠蔽、国会軽視を許さない闘いや、様々な差別を許さない闘いは、マスコミ報道をきっかけに市民や労働組合、そして野党による国会内外におけるとりくみによって大きく高揚し、私たち平和フォーラムは総がかり行動実行委員会に結集し、野党との連携を強めながら、この間の改憲阻止のとりくみと一体のものとして、安倍退陣を求めるとりくみを全国で展開してきました。
結果として、昨年は安倍退陣を実現することはできなかったものの、安倍首相と日本会議など右翼が目
論む「2020年改憲」につながる改憲発議など憲法審査会の具体的な動きを拒み続けています。

さて、2019年の政治決戦の年を迎え、私たちは多くの困難な課題に直面しています。1点目は安倍政権
の「2020年改憲」との闘いが最大の山場を迎えようとしていることです。2月の自民党大会で安倍首相は「いよいよ憲法改正に取り組む時が来た」として、2020年の改正憲法施行に相変わらず執着しています。2020年の新憲法施行は政治日程から困難なスケジュールですが、追いつめられるたびに数を頼りの強権的な国会運営を繰り返してきた安倍政権は、憲法破壊の総仕上げとして改憲発議を強行する姿勢を崩しておらず、全国でありとあらゆるとりくみを展開していかなければなりません。
2点目は沖縄の課題です。2月24日投開票で行われた辺野古新基地建設の賛否を問う県民投票で示された辺野古新基地建設反対の圧倒的な民意をもとに、3月19日、玉城デニー県知事は安倍首相との会談の中で、上告中の岩礁破砕をめぐる訴訟を取り下げることや、土砂投入の1か月程度の中止と普天間飛行場の返還に向けた日米両政府と沖縄県の3者協議の場の設置を求めました。
しかし、安倍首相は、普天間飛行場の危険性の除去を理由に県側の申し出には応じなかったため、22
日、沖縄県はやむを得ず国を相手取り埋め立て承認撤回の効力回復を求める訴訟を福岡高裁那覇支部に提起することとなり、辺野古新基地建設を巡って、法廷闘争へと緊迫した新たな局面を迎えることになりました。
一方、2月19日には、辺野古新基地建設と切り離して日本政府が約束した「普天間飛行場の5年以内の運用停止」の期限を迎えましたが、この普天間飛行場の即時返還の闘いも新基地建設と合わせ重要な闘いであり、沖縄と一体となった「本土」の闘いの強化が求められています。
3点目は「専守防衛」の枠をも超えて進む軍事大国化に対するとりくみです。
12月18日、国家安全保障会議と閣議において、2019年度以降の「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整
備計画」(中期防)が決定されました。
この防衛計画の大綱には、「いずも」型護衛艦の事実上の空母化と敵基地攻撃を可能にす
る長距離巡行ミサイルの導入などが盛り込まれており、政府がことあるごとに表明してきた「憲
法9条は攻撃型空母などを保持することを許さない」とする見解を大きく逸脱するものです。
また、決定された中期防では、現行の計画(2014年度~2018年度)より2兆8000億円増の27兆4700
億円と過去最大となり、トランプ政権の要求を丸呑みしたかのような新規購入装備品の多くが米国製となっているのが特徴です。
2015年の集団的自衛権行使を柱とした平和安全法制(戦争法)の成立以降、安倍政権は「専守防衛」を
も投げ捨て、自衛隊と米軍の一体的運用をもとに、一気に軍事大国化への道を突き進もうとしており、今こそ、憲法の平和主義に基づく戦争放棄と武力の不保持を基本とした平和国家への道が求められています。
4点目は2019年の政治決戦に勝利することです。
2019年は、統一自治体選挙や参議院選挙が予定される政治決戦の年であり、強固な野党共闘を柱に、
改憲阻止、安倍政権打倒の展望をつくり出さなくてはなりません。
今回の参議院選挙では、2016年の参議院選挙と同じ41議席を野党共闘で獲得することによって、3分
の2の改憲勢力を参議院で打破することが可能といわれています。
改めて、参議院選挙における野党共闘の強化に向けて中央・地方一体となったとりくみ強
化が求められています。
その他、人権課題へのとりくみ、核兵器廃絶をめざすとりくみ、脱原発・再生可能エネルギ
ーの推進、東北アジアの平和と非核化のためのとりくみなど私たちは多くの困難な課題に直面しています。しかし、こうした厳しい情勢は新しい展望の幕開けでもあります。一つ一つ困難な課題に挑戦し、闘いの中で新しい展望を切り拓いていくため以下のとりくみを提起します。

(2) 改憲発議・国民投票を許さず、平和憲法を守るとりくみ
①第198通常国会の情勢ととりくみ
第198通常国会が1月28日に開会されました。開会に先立ち、安倍首相は、年頭のあいさつに伴う記者団との質疑の中で、「まずは具体的な改正案を示して、国会での活発な議論がなされ、与党、野党といった政治的な立場を超え、できる限り広範な合意が得られることを期待します」と述べるとともに、施政方針演説では「国会の憲法審査会の場において各党の議論が深められることを期待する」と述べています。
また、安倍首相は、2月10日に開会された自民党大会でも「いよいよ立党以来の悲願である憲法改正に取り組む時が来た」と語り、改めて改憲に強い意欲を示すとともに、「自衛隊員の新規募集について都道府県の6割以上が協力を拒否している」との虚偽情報を公然と語りつつ「憲法にしっかりと自衛隊を明記して、改憲論争に終止符を打とうではないか」と主張するなど、これまで同様改憲発議への執念をたぎらせています。
安倍首相が求める「2020年改憲」については、与党・公明党が現段階で改憲に対し消極的な姿勢を示していることや、今年予定されている統一自治体選挙や参議院選挙、天皇の退位と即位などの政治日程が続くこと、さらに、今通常国会冒頭から厚生労働省の毎月勤労統計の不正をめぐって混乱が続いていることなどから極めて困難が予想されます。
しかし、安倍政権がいまだに「2020年改憲」に執着していることや、幾度となく強行採決を繰り返してきた安倍政権の国会運営の手法、さらに、2月9日、日本維新の会が、党大会で「憲法改正へ衆参両院の憲法審査会の議論をリードし、国民投票を実現する」との方針を採択するなど、「2020年改憲」をめぐってはかつてない緊迫した状況であり、私たちは戦後最大の闘いを迎えようとしています。
平和フォーラムは、改憲発議に直結する憲法審査会の動向を注視するとともに、改憲発議と国民投票阻止に向けて立憲野党をはじめ様々な市民団体との共闘を進めていかなければなりません。
3000万署名運動を中心とした「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」(全国市民アクション)や「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」(総がかり行動実行委員会)、戦争をさせない1000人委員会の中心的役割を担い、とりくみを強化していきます。
また、改憲発議と国民投票が具体化する場合は、改めて闘争本部を立ち上げ、ありとあらゆる闘いを構築していきます。

②改憲阻止と安倍政権の退陣を求める総がかり行動実行委員会などの共闘運動の推進
改憲阻止に向けたとりくみを進めるにあたっては、引き続き3000万筆を目標とした「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」を進める全国市民アクションや、総がかり行動実行委員会に結集した闘いを進めるとともに、その運動のさらなる強化が求められています。
特に総がかり行動実行委員会は、改憲阻止のとりくみと合わせ、沖縄課題のとりくみ、東アジアの非核・平和を求めるとりくみ、森友学園・加計学園問題の真相究明、共謀罪法廃止を求めるとりくみ、貧困・格差問題へのとりくみ、安保法制違憲訴訟支援のとりくみ、さようなら原発のとりくみへの参加、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)による野党共闘の推進などとりくんできましたが、こうした多くの課題へのとりくみは、必然的に改憲阻止と安倍政権の退陣を求めるとりくみへと結実し、全国に広まってきています。
私たちは、総がかり実行委員会の毎月19日の共同行動を継続するとともに、安倍政権の退陣を求めて様々な宣伝活動など、中央・地方が一体となったとりくみを強化・拡大していかなければなりません。
なお、総がかり行動実行委員会の宣伝活動の強化については、様々な宣伝活動を重要な柱として位置づけ、SNSなどを活用した情報発信能力の強化をめざします。
また、全国各地で運動が拡大している「戦争をさせない1000人委員会」や超党派の国会議員や地方議員でつくる「立憲フォーラム」「立憲ネットワーク」との連携を強め、院内外でのとりくみも強めなければなりません。

③5.3憲法集会の開催
この間、5月3日の憲法記念日集会については、実行委員会によるより大きな枠組みでの集会開催を追求してきましたが、その結果、2015年の横浜・みなとみらいの開催以来参加者数は拡大し、2018年には東京・有明に約6万人が結集しました。
この集会は憲法擁護の市民の大きな声をつくり出するもので、2019年についても、「平和といのちと人権を!5.3憲法集会 ―許すな!安倍改憲発議―」(東京・有明防災公園)として開催します。
特に今年は「2020年改憲」をめぐって戦後最大の闘いを迎えての集会であり、全国各地の集会と連動させたとりくみとして成功させなければなりません。

④「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)」のとりくみ
2019年は、統一自治体選挙や参議院選挙が予定される政治決戦の年であり、これまでにも増して強固な野党共闘を柱に、それぞれの選挙戦を闘うことにより改憲阻止、安倍政権打倒の展望を創り出さなければなりません。
市民連合は2015年12月に結成され、以来、市民連合と野党各党との政策協定締結を基本に野党共闘を推進し、2016年の参議院選挙での1人区32選挙区での統一候補の擁立と11人の当選、さらに、新潟県知事選挙などにもとりくみ、2017年衆議院選挙でも短期間で野党共闘候補をつくりだしました。
この野党共闘による安倍政権との闘いは、2016年の参議院選挙以降、全国から期待が寄せられ、さらに広がりをみせています。私たちは、来たる参議院選挙のなかでも、市民連合を中心とした本格的な野党共闘を実現し勝利していき、そしてこのことによって改憲阻止、安倍退陣を勝ち取っていかなければなりません。
2月14日には、市民連合と5野党1会派による意見交換会がもたれ、その中で参議院選挙に向けこの春に政策協定を結ぶ方向が確認されるとともに、17日には市民連合による全国市民意見交換会が開催されるなど、参議院選挙での野党共闘の前進を勝ち取る上で民連合が果たす役割がますます重要となってきています。

⑤安保法制違憲訴訟
法律に携わる弁護士や裁判官、学者、市民の協力のもと、戦争法の違憲性を問う「安保法制違憲訴訟」が、現在全国25か所でとりくまれています。そして、これらの各地の訴訟原告は「安保法制違憲訴訟の会」として、全国の弁護団とのネットワークが形成され、全国の経験交流会なども開催されています。また、このとりくみを支援する「安保法制違憲訴訟を支える会(支える会)」も積極的に活動を進めてきていますが、引き続き、平和フォーラムとしてこの支える会の事務局を担い、協力していきます。

⑥憲法理念の実現をめざす第56回大会の開催について
2019年については11月9日~11日の日程で、北海道・函館市において「憲法理念の実現をめざす第56回大会」を開催する準備をすすめています。憲法理念の実現をめざして運動を展開してきた私たちにとって、安倍政権のすすめる改憲策動を打ち砕くことができるか否かはまさに死活問題であり、全国からの結集を求めるとともに、大会での提起と議論を地域・職場の運動に持ち帰り活かしていきます。

(3) 日米軍事一体化と「専守防衛」の枠をも超えて拡大する日本の防衛政策
①混沌とする東北アジアと安倍政権の外交・防衛政策
米国のドナルド・トランプ政権は、ロシアと中国等を念頭に置き、「核の脅威が急激に悪化している」として、核抑止力の強化やあらたな核開発を進める方針を示した「核態勢の見直し」(NPR)を2018年2月に公表したほか、中距離核戦略(INF)全廃条約からの離脱を宣言するなど、「核なき世界」を掲げた前オバマ政権とは違い、核抑止力に依存する方向を明らかにしています。そして、「同盟国のさらなる責任分担の機会を検討」し、「必要に応じて核兵器を北東アジア等に配備する」との発言は、北東アジアの非核化の動きに逆行するものと言えます。
他方、日本は国連での核兵器禁止条約の採択に反対し、尚且つこのNPRを高く評価し、日米同盟による抑止力を強化していくことを表明しています。
米国の新たな核戦略の一方で、朝鮮半島の非核化と終戦に向け、韓国と朝鮮の歴史的対話や米朝首脳会談が開かれ、軍当局者の協議が進展するなど、東北アジアの平和的安定をめざすうえで重要な局面を迎えています。2月27日~28日には2回目となる米朝首脳会談がベトナムで開催されましたが共同声明発表には至らず、3回目以降の首脳会談に期待しなければなりません。
日米同盟の深化をうたう安倍政権は、経済政策として中国政府の世界経済戦略である「一帯一路」政策に対抗し、アジアとアフリカを重要地域と位置付けて、太平洋とインド洋をつないでインフラ投資と自由貿易を進め、安全保障面の整備もめざし「自由で開かれたインド太平洋戦略」を打ち出しています。
また、この経済政策と一体のものとして、第2次安倍政権は、その発足以降一気に防衛政策を転換し、2013年12月に特定秘密保護法の強行採決、2015年4月に日米ガイドライン改訂、同年9月にはそのガイドラインのための国内法の整備と言える平和安全法制(戦争法)を強行採決しました。この一連の流れにより、日本は米軍と共に、地理的な制約なく軍事力を展開することが可能な「戦争ができる国」へと変貌を遂げることになってきました。

②自衛隊の強化と日米軍事一体化
安倍政権は2018年12月18日、防衛計画の大綱(以下「30大綱」)、中期防衛力整備計画(以下「中期防」)を閣議決定しました。「30大綱」は、「戦争をする国」づくりのための指針と言っても過言ではありません。「日米同盟は、安全保障協力を戦略的に進めていく基盤」とし、米国の戦力の前方展開の継続と責任分担の増加の求めに応える意思を明らかにしています。そして、海外への軍事力の展開についても、「国際平和協力活動等は、平和安全法制も踏まえ、主体的に推進する」としています。そして、このような日米の軍事一体化と海外展開は、具体的な装備計画にも端的に表れています。
歴代の政府は、これまで専守防衛に反する攻撃型の兵器、空母や長距離ミサイルなどはもたないとしてきました。しかし、「30大綱」を踏まえた「中期防」では、いずも級の護衛艦にストーブル機(F35B)を搭載する事実上の空母化を打ち出しています。加えて、F35Aにノルウェー製の対艦・対地ミサイル「JSM」(射程約500km)、F15には米国製対艦ミサイル「LRASM」(射程約900km)、対地用の「JASSM」(射程約900km)など、敵の射程圏外から攻撃可能なスタンドオフ・ミサイルを搭載することも盛り込まれています。これらミサイルの導入は、これまで政府が否定してきた敵地攻撃能力を保有することにほかなりません。
日米軍事一体化は、日本版海兵隊である水陸機動団が米海兵隊とともに上陸演習を行うなど、各地で日米共同訓練が行われているほか、山梨県の北富士、東富士の演習場や岡山県の日本原演習場などの自衛隊演習場で、米海兵隊が単独で訓練を行うなど、基地使用の面でも日米の一体化が進行しています。また、尖閣諸島をめぐる問題や中国の海洋進出を口実にして、既に陸上自衛隊の警備部隊が配備された与那国島を皮切りに、石垣島、宮古島、奄美大島にミサイル部隊を配備する新基地建設など、南西諸島の自衛隊の強化が進んでいます。 
また、沖縄の負担軽減を理由に、国内ではじめての自衛隊敷地外での日米合同訓練(鹿児島県中種子町)、防衛省による「馬毛島」買収問題、海上自衛隊鹿屋基地での米軍空中給油機KC130による陸上・海上給油訓練、福岡県築城基地(滑走路延長)及び宮崎県新田原基地で米軍の弾薬庫や施設の建設、大分県の日出生台での実弾訓練及びオスプレイも参加した日米合同訓練、佐賀県佐賀空港へのオスプレイ配備計画、長崎県佐世保市の相浦駐屯地への水陸機動団配備など、自衛隊と米軍との一体強化の動きが、九州全域に拡大しています。
政府は、南西諸島等での自衛隊強化は、抑止力を維持・強化するものとしていますが、軍事力の強化をもって抑止力とすることは、相手国との軍拡競争を煽るばかりか、些細な衝突から戦争への拡大へと繋がりかねません。
さらに、東シナ海、南シナ海で行われた日米共同訓練は、日本近海の防衛をこえて、対中国を意識した米国の軍事戦略に日本が加わった共同訓練であり、「集団的自衛権」行使を想定した訓練に他なりません。

③7年連続で拡大する2019年度防衛予算
2018年度の防衛費は、当初予算5兆1911億円に第1次補正予算547億円と第2次補正予算3998億円を合わせ、5兆6456億円にも達しています(2017年度は当初予算と補正予算あわせて5兆3524億円)。2019年度の当初予算についても5兆2574億円と2018年度の当初予算の1.28%の伸びを示し、安倍政権下7年連続の増大となっています。
この防衛費にまつわる問題点は、制限なく拡大していることもさることながら、F35戦闘機やイージス・アショアの購入など、米国からの高額な兵器の買い入れにより、対外有償軍事援助(FMS)と後年度負担が拡大していることです。
また、自民党がまとめた防衛大綱と中期防への提言では、対GDP(国内総生産)比で、ほぼ1%弱で推移してきた防衛費の枠の撤廃を求めており、歯止めなき防衛費の拡大を警戒しなければなりません。
私たちの暮らしに直結する社会保障関連予算を抑制し、軍事費を聖域化することは許されません。

④崩れる自衛隊のシビリアンコントロール
南スーダンPKOの日報問題に続き、自衛隊のイラク派遣での日報の隠蔽が発覚するなど、自衛隊のシビリアンコントロールに懸念が強まっています。
日本でのシビリアンコントロールについては、旧日本軍が暴走したことの反省から、憲法で内閣構成員の資格を文民とする規定をもうけているほか、2015年の防衛省設置法改正までは、日本におけるシビリアンコントロールの一形態として制度化されていた「文官統制」、つまり防衛官僚(文官)が制服組より優位な立場に立ち、制服組を統制するシステムがありました。しかしながら、法改正により、制服組である「統合幕僚監部」と陸海空の各「幕僚長」が、防衛官僚と対等、並列の立場となり、また部隊の活動や訓練などの運用を計画していた内局の「運用企画局」が廃止され、「統合幕僚監部」に一元化的に関与するよう組織が大幅に改められたのです。
また、2月10日の自民党大会で、安倍首相は、全国6割の自治体が自衛隊員募集に非協力的だとして、憲法9条への自衛隊明記を訴えました。この発言は、自衛隊員の募集が困難になる中で、改憲の推進と自治体による協力をより強め募集活動を円滑化するための発言で、将来的な徴兵制も視野にいれたものとして警戒しなければなりません。
こうした軍事組織に対するコントロールが制度的に弱まっている中で発覚した日報問題は、内閣構成員である防衛大臣および、文官と制服組も一体となって、隠蔽、ねつ造にかかわったことであり、シビリアンコントロールが機能不全を起こしていることを示しています。自衛隊に対するシビリアンコントロールをいかに強化していくかが問われています。
一方、自衛隊の海外展開を積極的に推進する安倍政権下で、自衛隊員の任務は拡大し、「戦死」の危険性が現実のものとなりつつあります。また、自衛隊内でのいじめを原因とする自死も後を絶ちません。差別や様々なハラスメントが強まる社会の中で、特に軍隊という強固な階級社会の中で起こりうるいじめや自死などを、人権の問題ととらえて、支援するとりくみも大切です。

⑤日本の武器輸出と軍事研究
2014年に武器輸出三原則を破棄して、あらたに防衛装備移転三原則を閣議決定した安倍政権の目論見は、武器・技術の輸出の拡大でした。しかし、フィリピンに海上自衛隊の練習機「TC90」を無償譲渡したほか、さしたる成果もないのが現状です。しかしながら、アラブ首長国連邦に川崎重工製のC2輸送機、東南アジア諸国に練習機や対潜哨戒機の売り込みの動きが続けられ、タイへの売り込みには失敗した三菱電機製の防空レーダーを、フィリピンに輸出しようと目論まれています。
一方、軍事の共同研究の面では、イギリスとのミサイルの共同技術開発が進んでいるほか、イージス艦のレーダー開発に日米共同で乗り出すことも検討されており、引き続き注視が必要です。
また防衛省は2015年度に新設された「安全保障技術研究推進制度」を活用し、大学・研究機関への助成に余念がありません。その結果、この助成に応募する民間企業が増えていますが、大学に関しては、2017年3月の日本学術会議の「戦争目的の軍事研究はしない」とする3度目の声明発出以降で応募件数が減少しています。
武力ではなく平和的に国際紛争を解決することを誓った戦後の日本が、その一線を越え、「死の商人」の仲間入りを果たすことを許さず、日本学術会議の声明を支持しとりくみを進めていきます。

⑥危険なオスプレイ等米軍機の訓練拡大
オスプレイをはじめとした米軍機の墜落事故や部品落下事故が、沖縄をはじめ、高知県沖や東京・横田基地等で頻繁に発生しています。米軍は、事故があった際には一時的に飛行停止措置をとるものの、事故原因の究明も十分に行わないまま、すぐさま飛行再開し、そして日本政府もその米軍の行動を容認しています。米軍機の低空飛行の目撃情報や爆音被害は、各地で認められています。しかし、米軍機の飛行を規制する法律はないに等しく、日本の領空を自由に飛行可能としています。沖縄の嘉手納基地では、在日米軍以外にも米国州軍機が飛来し訓練することもあり、「沖縄の負担軽減」には程遠い状況になっています。岩国基地(山口県)でも、駐留する機数が増加し、嘉手納基地に次ぐ極東最大の米空軍基地となっており、騒音被害が拡大しています。
また、米軍・横田基地では、パラシュート降下訓練での事故が繰り返し発生しているほか、横田基地を起点としたCV22オスプレイの飛行訓練の拡大が懸念されます。このCV22の訓練区域となる沖縄、東富士演習場(静岡県)、ホテルエリア(群馬県、栃木県、長野県、新潟県、福島県)、三沢射爆撃場(青森県)およびこれら訓練区域につながる飛行ルートでの危険な飛行訓練に対して、各自治体と連携したとりくみと、米軍機の運用を規制するとりくみを強化していく必要があります。
平和フォーラムは、米軍基地を抱える各都道府県運動組織や全国基地問題ネットワークとの連携を進め、オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会と共同で発行したリーフレットやパンフレットなどを活用して、自治体との連携を進め、政府交渉も継続してとりくむほか、嘉手納基地をはじめ、厚木基地、横田基地、岩国基地、普天間基地などの各地の爆音訴訟に協力していきます。

⑦求められる日米地位協定の抜本的見直し
米軍の基地は、日本のどこにでも作ることができ、その基地は米軍が排他的に管理することができます。そして、仮に基地返還となったとしても、原状回復義務はなく、ダイオキシン等で環境を破壊しても、その除去作業などは日本政府が負うことになり私たちの税金で行われることになります。また、米軍機は日本の航空法の適用が大幅に免除され、「提供区域外であっても訓練飛行は認められる」としています。また、日米地位協定の下で、米軍が事件や事故を起こしても日本の警察や消防などが現場検証にあたることすらできず、公務中の米軍人・軍属が事件を起こしても、日本には第1次裁判権もありません。こうした不平等な・従属的な日米地位協定の問題に対して、全国知事会も抜本的な改定を求めています。
日本の主権が制限される日米地位協定を抜本的に改訂しなければ、私たちの命とくらしは脅かされ続けることになり、日米地位協定の改定に向けたとりくみが求められています。

(4) 辺野古新基地建設を許さない沖縄の闘い
①普天間基地の運用停止と辺野古新基地建設に反対するとりくみ
安倍政権は普天間基地の運用停止ができないのは、沖縄県が辺野古移設に反対だからだと沖縄県に責任転嫁しています。このことは、辺野古新基地建設とは切り離して、「普天間基地の5年以内の運用停止」を約束した経緯を反故にする無責任極まる対応です。
そもそも沖縄県は、国土の0.6%の面積に70,6%の米軍施設が集中するという過重な基地負担を押し付けられ、基地の存在に起因した軍用機の騒音や墜落事故、米兵による事故や犯罪も後を絶ちません。さらに、辺野古新基地建設をめぐっては、あらゆる選挙で反対の民意が幾度となく示されたばかりか、2月に行われた県民投票においても、圧倒的な新基地建設反対の民意が示されました。
一方、何が何でも工事を進めたい安倍政権は、こうした民意を踏みにじり、県の行政指導すら無視し、沖縄防衛局は県の埋め立て承認の撤回に対し、行政不服審査法に基づき審査請求と撤回の執行停止を求め、その5日後には国土交通大臣が執行停止を認めるという法治国家にあるまじき蛮行を繰り返しています。安倍政権こそ「法の支配」に従わなければなりません。
この沖縄防衛局の審査請求とその結果に対し、110名に上る行政法学者は、「国が一般私人と同様の立場で審査請求や執行停止申し立てを行うことは許されるはずもなく、違法行為に他ならない」と厳しく批判するとともに、政府が防衛局に同じ行政機関の国交省に申し立てさせたことに対し、「第三者性、中立性、公平性が期待しえない」と断じています。
辺野古新基地建設を巡っては、埋め立て海域の軟弱地盤や活断層の存在、さらに、360件に及ぶといわれる高さ制限を超えた基地周辺建造物の存在など、物理的にも技術的にも建設が不可能なことは明らかです。防衛省はこの軟弱地盤対策で、鋼管を打ち込み砂を流し込んで圧搾する砂杭を7万7千本、新たに650万立方メートルもの砂が必要だとしています。沖縄県内では賄うことは不可能と考えられ、県外からの搬入が想定されます。県外での海砂の採取は、採取地の自然環境の破壊であり、沖縄県内への搬入は外来種の持込で沖縄本島の生態系をかく乱することにつながります。こうしたことは、日本政府がすすめる生物多様性基本法や生物多様性国家戦略に反する行為です。
こうした自然環境を破壊する日本政府の工事強行に対して、SNSを通した署名が展開され、トランプ大統領宛に工事中止を求める嘆願書が国内外で20万筆を超えるなど、国際的にも大きな批判が寄せられています。
平和フォーラムは、辺野古新基地建設に反対するとりくみを、米軍基地問題に対する闘いとしての側面はもとより、日本全体の民主主義、立憲主義、地方自治を取り戻す重要課題として位置づけ、闘いを強化します。

②山城博治沖縄平和運動センター議長らへの政治弾圧と裁判闘争
辺野古新基地建設及び高江ヘリパッド建設の抗議行動をけん引してきた山城博治沖縄平和運動センター議長らに対する刑事弾圧は、国内はもとより世界の人権団体、環境団体などから日本政府に対して抗議の声が上がっています。5か月を超える長期拘束のうえ、那覇地方裁判所では、山城さんに懲役2年6月(執行猶予3年)、また、山城議長とともに逮捕された市民二人にはそれぞれ8月(執行猶予2年)、1年6月(執行猶予5年)という判決がくだり、控訴審(2018年12月13日)では控訴棄却、上告した最高裁での闘いが進められています。
違法行為、法の濫用を繰り返す日本政府の罪が問われることなく、辺野古の海を守る、基地の被害から県民の生活といのちを守る非暴力の抵抗運動に対しての刑事弾圧は許されません。市民団体や労働団体に対する弾圧も起きている今日、物言うものの口を封じようとする政府による過剰な権力行使を許さないために、山城議長らの裁判支援を継続してとりくんでいかなければなりません。

(5) 東北アジアの平和と非核化を求めて
①朝鮮半島の緊張緩和に向けた国際連帯活動の強化を
東北アジアの平和と非核化には国家間の協議に加えそれぞれの国における世論喚起も重要です。平和フォーラムは引き続き国内において東アジアの平和・非核化の実現を求めて運動の連携を強化していくとともに、「コリア国際平和フォーラム」など国際的な平和運動団体とも連帯したとりくみを強め、国際的な世論形成に努めていきます。
また、日朝関係の正常化に関しては、朝鮮に対し敵視政策を続け主体的な外交を展開できない安倍政権では国交正常化が実現できないことは明らかです。引き続き平和フォーラムが中心的役割を担っている「日朝国交正常化連絡会」を中心に、植民地支配・侵略戦争への真摯な謝罪と反省に立脚した日朝の国交正常化に向けた運動を展開していきます。

②すべての当事者が納得できる日本軍「慰安婦」問題や徴用工問題の解決を
日本軍「慰安婦」や徴用工を巡る日韓の摩擦は、日本がかつての植民地支配・侵略戦争に対する謝罪・賠償をおざなりにしてきたために生じた問題です。それにも関わらず安倍政権はこうした責任を直視しようとせず、むしろ韓国を一方的に非難し国内の排外主義を煽っています。こうした日本政府の姿勢は、問題の解決を遅らせるばかりでなく国家間の緊張関係を強めるだけであり、南北朝鮮が平和共存へと大きく歩みだした現在の東アジア情勢に逆行するものといえます。
立場の違いだけを強調し、批判を繰り返すだけでは何の解決も生まれてきません。これらの課題はアジア・太平洋戦争での植民地支配や強制労働に端を発したものであり、なによりも植民地支配や侵略戦争の歴史に真摯に向き合い、被害者の立場から問題解決を図ろうとする姿勢こそ求められています。2015年の日本軍「慰安婦」問題に関する日韓合意は被害者の意思がなおざりにされたものであり、一方、徴用工裁判における韓国司法の判断は、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配及び侵略戦争の遂行、そしてそれに直結した日本企業の反人道的な不法行為を裁いたものであり、日本政府は加害の事実と責任を認め謝罪する、また、謝罪の証としての補償を行い、同じ過ちを犯さないよう歴史教育追悼事業などを行うことにより戦争被害の「和解」と友好を求めていきます。
2019年は、「3・1朝鮮独立運動」から100年を迎える節目の年を迎えます。しかし、100年を経た今も日本による植民地支配や侵略戦争への真摯な反省や謝罪は十分なされていません。特に今年は、天皇退位と即位により「令和」への「改元」が行われようとしていますが、「改元」によって歴史を区分し塗り替えることによって、加害の忘却と責任の放棄がよりいっそう強まっていくことが危惧されます。
平和フォーラムは、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」と連携を強め、加害の事実と積極的に向き合い、すべての当事者が納得できる解決方法を求めていきます。

(6) 民主教育を進めるとりくみ
子どもの貧困率は、13.9%(2016年国民生活基礎調査より)で、依然として7人に1人が貧困状態にあります。中でも一人親家庭の貧困率は50.8%と深刻です。経済格差が教育格差に直結している実態があります。高等教育を受けている学生の2人に1人が奨学金制度を利用していますが、給付型奨学金を受給している学生の割合は全体の1%未満です。子どもの権利条約や国際人権規約にもとづき、就学援助や給付型奨学金の拡充などにより、すべての子どもの学習権を保障しなければなりません。
「特別の教科 道徳」は、2018年度から小学校で、2019年度から中学校で実施されています。特定の価値観の押し付けにつながることがないよう、教科書だけではなく、地域教材や平和フォーラムが市民等の協力のもと立ち上げたホームページなど、多様な教材を十分活用した教育実践が大切です。

(7) ヘイトスピーチや様々な人権課題へのとりくみ
①ヘイトスピーチに対するとりくみ
安倍政権が持つ排外主義を反映してヘイトスピーチが横行しています。従来の隠然たる差別を超えた、言葉の迫害、脅迫が在日外国人の暮らす地域に集中して繰り返されており、一向に止む気配はありません。2016年6月にはヘイトスピーチ解消法が制定し一定の役割は果たしていますが、人種差別撤廃条約が示唆する「人種差別を禁止し終了させる」根拠たりえません。同じく人種差別撤廃条約は、第4条aで、「人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、いかなる人種を異にする人の集団に対するものであるかを問わずすべての暴力行為又はその行為の扇動も、法律で処罰すべき犯罪であることを宣言すること」と述べていますが、実効性のある差別言動の規制ははかられていません。川崎市や世田谷区などで差別行為の事前規制に踏み出した自治体のとりくみに、むしろこれを封殺し押しとどめようとする攻撃も展開されています。ヘイトスピーチをはじめとする差別と排外主義に反対し、ヘイト行為を終わらせる真に実効性のある制度の確立を求めます。
また元在特会会長を代表とする政党「日本第一党」は統一自治体選挙に複数の候補を出馬させ、選挙運動とは名ばかりのヘイトスピーチを繰り返してきました。このように執拗に行われる街頭でのヘイトスピーチにも引き続き注意が必要です。

②「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」のとりくみ
高校無償化制度適用から朝鮮学校が除外された問題について、国連の各条約機関から差別の是正を求める勧告が出されています。昨年8月の「人種差別撤廃委員会」につづき、今年2月には「子どもの権利委員会」から「『授業料無償化制度』の朝鮮学校への適用を促進するために基準を見直すとともに、大学や短期大学へのアクセスに関して差別が行われないことを確保すること」とする勧告が出されています。しかし日本政府はこれらの勧告に真摯に向き合おうとしていません。
さらに朝鮮学校への高校無償化制度適用を求める裁判では、国による差別を認めるという不当判決が相次いで出されています。こうした判決は安倍政権の差別政策を追認するものであり、絶対に覆さなければなりません。これまで平和フォーラムは「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」を通じて全国の朝鮮学校支援運動の輪を拡大・強化し、国家による差別を許さない世論形成にとりくんでいます。引き続き裁判闘争の勝利と自治体からの補助金支給の再開を求めてとりくみを進めていきます。

③技能実習制度の廃止と多民族多文化共生社会の実現
先の臨時国会で「出入国管理法改正案」が成立しました。この法案について政府は「日本の労働力が足りないという経済界などからの要請に応えるため」と国会で説明してきました。しかし、国際的批判を受けている技能実習生の実態は、「実習」という名の低賃金、長時間労働、セクハラ、パワハラ、残業代の未払いやパスポートの取り上げなどの人権侵害を受け、最後は脱走をはかるというものです。また、出稼ぎ目的の留学生は、多額の借金を背負い入国し、アルバイト代は留学先の日本語学校などに吸い上げられるという「日本の現代版奴隷制度」といわれるような実態であり、こうした現状に対する対策を放置したままの強行採決は断じて許せるものではありません。
また、改正案では、「特定技能」という在留資格を「1号」「2号」と2段階設けていますが、「2号」の制度化は危ぶまれ、「1号」においては在留期間5年、家族の帯同は禁止されているなど、外国人労働者の人権はないがしろにされるものとなっています。
引き続き平和フォーラムは、「マーチ・イン・マーチ実行委員会」や「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)等と連携をはかりながら、6月1日~2日の「移住者と連帯する全国フォーラム」の開催などにより、外国人労働者の権利確立をはじめ、真の多文化共生社会の実現をめざしてとりくみを進めていきます。
また、増加する外国人労働者の子どもたちは、義務教育の対象外とされていることから教育を受けられていない子どもが多数いる可能性があります。全国100自治体を対象にした毎日新聞のアンケート調査では、外国籍の子どもの2割以上の16,000人が「就学不明」であることが明らかになるなど、外国人労働者の受け入れと合わせて、日本語指導など支援体制の充実を図る中で、子どもたちの教育を受ける権利を保障していくことが重要です。

④様々な人権を踏みにじる安倍政権に反対するとりくみ
財務省・福田淳一事務次官(当時)のセクハラや中央省庁による、義務付けられた障がい者雇用の割合の42年間にわたる水増し、さらに、杉田水脈衆議院議員による「LGBTには生産性がない」とする発言など、政権や官僚による人権侵害や差別が後を絶ちません。また、東京医科大学による女性受験生への差別的対応も、こうした風潮と無縁ではありません。
2017年4月から、厚生労働省のホームページに「女性の活躍推進企業データベース」が掲載されています。女性の活躍推進に積極的な企業かどうかの目安になる「えるぼし」認定企業が確認できるため、その効果が期待されていました。しかし実際には、女子行員に接客の席に着くことを強要していた百十四銀行が「えるぼし」、さらには次世代育成支援対策推進法による認定制度である「プラチナくるみん」にも認定されていたことが明らかになりました。セクハラについての認識がなかったというお粗末さでした。
また、憲法24条で「婚姻の自由」が保障されているにも関わらず、民法750条「夫婦同氏の強制」が残っているため結婚した女性の97%が夫の姓を選択させられています。氏名は個人を識別し特定する機能をもつものですが、人格の象徴でもあります。夫の姓にするのは「家制度」の名残です。「家制度」による男女役割分業も根強く残っています。その結果、少子高齢化、介護・保育労働者不足、子どもの貧困、格差と貧困等が深刻になっています。
そして女性に対する性暴力も後を絶ちません。この背景には被害者が声を上げにくく、上げれば逆にバッシングを受けてしまう日本社会の状況があります。子どもの虐待が社会問題になっていますが、その多くに妻に対するDVがあります。女性差別撤廃条約はこうした女性差別の救済を謳っているものですが、日本の裁判では解決できていません。救済できる方法として個人が国連に救済を求めて訴えることができる「選択議定書」を批准することが重要です。
日本国内の人権課題にとりくむためには、まず差別的な政府の姿勢そのものをただすことから始めなければなりません。平和フォーラムは引き続き政府の差別に対して厳しく監視するとともに、各運動団体との連携も含めながら人権課題の解決に努めていきます。
また国が国連の各条約機関からの勧告を受け入れ実現していくよう、「国連・人権勧告の実現を!実行委員会」とともに運動を展開していきます。

(8)全日本建設運輸連帯労働組合(全日建)関西地区生コン支部への権力弾圧に対
する闘い
2017年12月のストライキ闘争を「威力業務妨害」と認定し、また、建設現場でのゼネコンによる違法行為を告発した組合活動を「恐喝未遂」として、滋賀県警や大阪府警が仕立て上げた6つの「事件」で、のべ55人の組合役員や組合員が逮捕され、2月10日現在のべ21人が起訴されています。しかも、関西生コン支部委員長らの勾留期間はすでに6カ月を超え、接見禁止も続くという異常事態になっています。担当弁護団は一連の不当捜査を指して「共謀罪のリハーサル弾圧」だと警鐘を鳴らし、宮里邦雄弁護士(元日本労働弁護団会長)は「平成労働運動史上で最大の弾圧事件であり、きわめて悪質かつ政治的」と強く批判しています。
本来、憲法28条が労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権の労働三権を保障し、労働組合の正当な組合活動を刑事罰の対象とはしないとの刑事免責が労働組合法1条2項で定められていますが、あたかも憲法をないがしろにする安倍内閣の政治姿勢を後ろ盾としているかのような警察や司法の労働基本権を無視した組合つぶし攻撃を断じて許すことはできません。
平和フォーラムは、この全日建に対する異常な権力弾圧を労働三権の破壊と労働組合潰しの攻撃と位置づけ全力で支援活動にとりくみます。

(9) 核兵器廃絶に背を向ける被爆国日本
①核保有国と共に核兵器禁止条約に反対する日本政府
2017年7月に国連で採択された核兵器禁止条約は、50か国の署名、批准が発効要件となっており、2018年2月現在で、70か国が署名、22か国が批准し2019年にも発効する見込みです。この条約の発効を見込んで、核兵器製造企業への投融資を行わない方針を掲げる金融機関も増える一方、日本ではESG投資(海外事業を拡大させている企業が、環境(Environment)、社会(Sociality)、企業統治(Governance)を重視する投資)することへの動きが鈍いといわれています。しかし、近年、日本でも「ESG投資」への関心が高くなっています。
また、日本が昨年12月に25年連続で国連総会に提案した核兵器廃絶の決議案は、2020年にNPT再検討会議が開催されることを見据えてのものですが、昨年は記載のなかった「核拡散防止条約(NPT)6条の再確認」を盛り込み、160か国の賛成を得て採択されました。しかし、この決議案は核兵器禁止条約については一切言及せず、また、日本が唯一の戦争被爆国であるにも関わらず「核抑止力の正当性を損なう」として当初からこの条約に対し核兵器保有国とともに反対する姿勢のままです。
日本政府は日米安保条約による「核の傘」に固執し、トランプ政権に追随するのではなく、唯一の戦争被爆国として世界の核兵器廃絶へ向けて、早期に核兵器禁止条約に署名・批准するべきであり、核保有国の禁止条約への参加に尽力しなければなりません。

②核軍縮に逆行し崩壊するINF全廃条約 
米国は、2月1日、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を正式に表明しました。翌2日には条約履行義務を停止しロシア側へ通告されると、ロシア側も条約の義務履行を停止すると表明しました。この状況は、INF全廃条約に加盟していない中国の、中距離弾道ミサイル「東風」の配備なども含め、アジア・ヨーロッパ地域の安全保障の後退を意味しています。また、2021年には米ロで結ばれた新戦略兵器削減条約(新SATRT)が期限を迎え、その協議にも大きな影響を与えることが予想され、このままでは軍拡競争の時代に戻ることさえも懸念されます。INF全廃条約離脱に際して、アメリカからは日本を含む同盟国の協力と日本の非核三原則の改定(特に核持ち込み)を求める声もあり、日本国内への核兵器配備要求とあわせて危機的状況が高まっていくことが懸念されます。
日本は、毅然とした態度で、米国と中国、及び、米国とロシアの対話と協調をはかり、アジアの平和への視点を持って対処しなくてはなりません。被爆国日本としての役割を自覚し、条約の維持と拡大に向けての努力を怠ってはなりません。原水禁は、核兵器禁止条約への署名・批准が進む中にあって、米ロのINF全廃条約離脱などを許さず、あの核軍拡への道に決して後戻りしないよう、とりくみの強化をめざします。

③「もんじゅ」廃炉決定後も固執する核燃料サイクル政策  
2018年7月、30年の期限を迎えた日米原子力協定は自動延長され協定に基づく日本のプルトニウムの保有と核燃料サイクル政策の継続が「6か月前通告で終了」することを条件に可能となりました。プルサーマル計画も一向に見通しが立たず、核燃料サイクル計画が頓挫する中で、日本が保有する47トンにも上る分離済みプルトニュウムは、核兵器の原料でもあることから国際社会の懸念となっています。日本政府は、エネルギー基本計画の中で「保有量の削減に取り組む」と初めて明記しましたが、その目処は立っていません。
高速増殖実験炉もんじゅの廃炉決定、度重なる六ヶ所再処理工場の完工延期など、核燃料サイクル計画は頓挫していると言っても過言ではなく、一方、「もんじゅ」廃炉後の代替え候補として想定している日仏共同研究対象の高速実証炉(アストリッド)について、フランス側が計画の大幅縮小の方針であることが明らかになるなど、日本政府は、核燃料サイクルを根本から見直す必要にも迫られつつあります。
自民党の石破茂議員は、テレビ番組に出演し「日本は核を持つべきだと私は思っておりません。しかし同時に、日本は(核を)作ろうと思えばいつでも作れると。それはひとつの抑止力ではあるのでしょう。それを本当に放棄していいですかということは、それこそもっと突き詰めた議論が必要だと思うし、私は放棄すべきだとは思わない」と述べています。核燃料サイクル計画と生み出されるプルトニウムは、核兵器課題であることをしっかりと認識すべきです。

④2019年もノーベル平和賞候補に申請・受理された高校生平和大使
若者の平和活動として注目されている高校生平和大使は、2019年に入り、第22代の募集が開始され、各地で選考会が始まりました。例年同様、6月の広島での結団式、8月上旬の原水禁大会日程に合わせた長崎での研修を経て、8月下旬にはスイス・ジュネーブの国連欧州本部へ高校生一万人署名を届けるほか、ICANなどを訪問し、核兵器廃絶へ向けた交流を行います。2018年度ノーベル平和賞候補へのノミネートに続き、2019年1月にもノーベル委員会に申請し、受理されました。申請にあたっては国会議員の推薦人が昨年の2倍近い44人となり、若者の活動を歓迎し、応援してくれる環境が醸成しています。高校生平和大使が国連に届ける「高校生1万人署名」は、平和大使以外の高校生も日常の活動として署名活動を行っています。また、被爆者から被爆体験を直接聞くことが出来る最後の世代と言われており、被爆体験の継承活動も重要です。原水禁は「高校生平和大使を支援する全国連絡会」を通し、平和運動の担い手として大いに期待がよせられる高校生平和大使、高校生1万人署名活動を支援していきます。

(10) 破綻する安倍政権の原子力政策―原発再稼働・核燃料サイクル・原発輸出の破綻
① 原発「廃炉」の時代に逆行する安倍政権。
(ア)安倍政権の原発推進政策と原発の再稼働を許さないとりくみ
経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は、新年の報道機関とのインタビューで、今後の原発政策について「国民が反対しているものはつくれない。全員が反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダー(設備納入業者)が無理につくることは民主国家ではない」とし、国民の意見を踏まえたエネルギー政策を再構築すべきだと述べました。背景には、原発企業を買収し、原発輸出に乗り出したものの撤退を余儀なくされた日立製作所の事業失敗やその他の様々な原発輸出事業の失敗、脱原発の世論による国内原発政策の不透明感などがあると思われます。しかし、その後、中西経団連会長は、2月の浜岡原子力発電所を視察後には「万全の安全対策をやっているとの印象を受けた。早く再稼働したいなと正直思う」と発言するなど、前言をひるがえす発言をしています。
経団連は2019年4月8日、「日本を支える電力システムを再構築する」とするエネルギー政策の新たな提言を発表しました。提言は、福島第一原発事故後の火力依存を批判するとともに、再生可能エネルギーには限界があるとして、原発の再稼働や新増設を求めるものとなっています。また、既存原発の稼働期間を、現行の40年、認められれば1回に限り20年の延長を認めるとしているものを60年より更なる延長を求めています。事故後の原発の停止期間を運転期間の40年から差し引くことも求めています。
原発の現状は、安全性に対するコストや人件費が高騰し、経済性が失われ、国内外での新規建設の需要も縮小し、経済的観点からも成立し得ないエネルギーとなっています。福島原発事故を契機に原発をめぐる環境が変化し、世論も脱原発に大きく傾き始めた中にあって、このような福島原発事故の経験に学ばないきわめて無責任な経営者団体の姿勢は、決して許されません。
これまで安倍政権は、民意も無視し強引に原発政策を推し進めてきました。しかし現実には、アベノミクスの経済政策の重要な柱であった原発輸出がことごとくとん挫し、原発の再稼働も思うように進まず、核燃料サイクルは実質的に破綻に近い状態を迎えています。
脱原発に向けて大きく政策を転換することが求められています。

(イ)原発は再稼働より廃炉の時代に
現在原発は、再稼働は9基、廃炉決定・検討中26基となっています。そして、今後もさらに廃炉に向けたとりくみが求められています。
そのような中で、東海第二原発の再稼働については、日本原電と周辺6市村で結ばれた協定には30キロ圏内の「6市村が納得するまでとことん協議を継続」と明記されており、引き続き日本原電と周辺自治体との協議を進めていくことが確認されています。老朽原発の再稼働は危険性も高く、現地の運動と連携し廃炉を求めていくことが重要です。
さらに、女川原発の再稼働の動きに対しては、現在「女川原発二号機の再稼働を問う!」県民投票条例制定に向けた署名運動が進められ、法定必要数約39,000筆をはるかに上回る120,304筆の署名が集まりました。東日本大震災によって被災した原発の稼働の是非を問う県民投票条例案は、2月~3月の定例県議会に諮られましたが、県議会与党の自公の反対により否決されました。しかし、女川原発の再稼働の是非についての県民の意思表示の機会を奪ったことで、今後の再稼働をめぐる議論に与える影響は大きいと思われます。今後の再稼働の動きに引き続き注視していかなければなりません。
また、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働も焦点となっています。2017年7月の中越沖地震により大きなダメージを受けた原発の再稼働には多くの県民が反対してきました。福島原発事故の収束も見通せず、賠償も不十分な中で、原発の再稼働はあまりにも無責任であり、原発再稼働の前に被災者の救済や事故の収束に全力をあげるべきです。今後各地で繰り広げられる再稼働を許さない闘いを、現地と共に作りあげていかなければなりません。
一方、新増設の動きでも島根原発3号機やフルMOXの大間原発などが今後の焦点になってきます。再稼働に加え新増設を許さないとりくみも現地との連携を進め全国的なとりくみとして強化していかなければなりません。

(ウ)行き詰る核燃料サイクル                 
日本は非核保有国で唯一プルトニウムの保有が認められて来ましたが、プルトニウムが核兵器の原料にもなることから、国際社会は日本の核兵器保有に憂慮を示しています。
これに対し、日本は従来から、プルトニウムはあくまで原発の燃料であり「利用目的のないプルトニウムは持たない」と主張してきました。しかし、核燃料サイクル計画をめぐる日本の現状は、日本政府の主張を擁護するものではありません。
六ヶ所再処理工場は1997年に完成予定でしたが、これまでトラブルや設計見直しなどが相次いだため24回もの完工延期を繰り返し、現時点では2021年度上期の完工予定とされています。現在、原子力規制委員会が、日本原燃の地震や事故対策が新基準に適合していることを示す審査書案をまとめている段階にあり、今後、工事計画についての原子力規制委員会の認可のほか、青森県と六ヶ所村の地元同意が求められます。
高速増殖炉計画が頓挫する中で、原発の再稼働が計画通り進まず、唯一プルトニウムの使い道であるプルサーマルにも進展はありません。使用済み燃料から分離したプルトニウムの使い道がないとなれば、余剰プルトニウムを持たないことを国際公約としている日本は、これ以上プルトニウムの在庫を増やすわけにはいきません。また、今後10年、15年と経つうちに大半の原発が廃炉を迎え、プルトニウムの「行き先」はますます失われていきます。
さらに、生み出されたプルトニウム燃料(MOX燃料)は、通常のウラン燃料よりはるかに高額であり、六ヶ所再処理工場の稼働率が低ければ燃料単価はさらに上がり、経済性からいっても六ヶ所再処理工場の経営はますます成り立たなくなります。
六ヶ所村再処理工場については、現地青森で行われる「反核燃の日」行動(今年は5月に開催予定)などの中で、さらに問題点を明らかにし様々な行動を積み上げていくことが重要です。
核燃料サイクル計画の一方を担う高速増殖炉計画は、「もんじゅ」の次の段階の実証炉を2025年頃に、商業炉を2050年頃に実用化するとするものでした。経済産業省は「もんじゅ」の廃炉後の高速増殖炉開発計画について、2018年12月3日、今後の工程表の骨子を発表しました。しかし、具体的な炉型や規模、明確な目標時期は示されず先送りされました。高速炉計画の破綻は、核燃料サイクル計画の破綻を意味しており、再処理工場の建設継続か、使用済み核燃料をどうするのか、分離したプルトニウムはどこで使うのかなど様々な課題が噴出することとなります。高速炉計画の継続は、単に核燃料サイクル計画の破綻を取り繕うものでしかありません。
また、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の課題では、この間、北海道平和運動フォーラムを中心に、幌延深地層研究センター開設当初の約束である「研究開始から20年程度で閉鎖する」とする三者協定の厳守を求めて、文部科学省、日本原子力研究開発機構、NUMOなどに対し要請を行なってきましたが、原水禁としても引き続き現地の運動団体と協力し、政府や研究主体の日本原子力研究開発機構に対してとりくみを強化します。

(エ)原発輸出の破綻―アベノミクスの破綻の象徴
政府と三菱重工が共同で進めるトルコへの原発輸出は、当初見込まれた2兆5000億円の建設費が5兆円に膨らんだ結果、昨年12月4日には計画を断念する方向であることが報じられました。  
原発輸出は安倍政権の成長戦略の柱の一つでしたが、福島原発事故以降、安全対策費用が膨らみ、ベトナムやリトアニアなどで進んでいた原発建設がことごとくとん挫しています。
一方、英国では原発建設を進めている日立が、建設費の高騰や英国政府や日本の国内企業の支援が難航して計画を凍結しました。(事実上の断念)。この計画中断で日立は3000億円の損失を負うことになりました。このように安倍政権が進めてきたアベノミクスの重要な経済政策の一つであった原発輸出の案件で成功したものはなく、また、国内での原発建設も難しい中で、原子力産業界の建設部門は壊滅的状況となっています。
国内外での原発建設が進まない中で、安倍政権が進める原子力推進政策の破綻が次々と明らかになり、原子力メーカーの生き残りとして日立・三菱・東芝の大手プラントメーカーの統合も取りざたされています。原発依存の政策転換こそが必要です。

②重要性を増すさようなら原発1000万人アクションと「原発ゼロ基本法案」
福島原発事故以来、さようなら原発1000万人アクションは、全国での「脱原発」運動に携わる市民をつなぐ運動体として発展し、原水禁・平和フォーラムはこの運動の中核を担い運動を推進してきました。
さようなら原発1000万人アクションは、引き続き安倍政権の原子力推進政策に抗し、脱原発運動の強化を図らなければなりません。原水禁・平和フォーラムは、さようなら原発1000万人アクション実行委員会に引き続き結集し、市民とともにその運動の中核を担っていきます。
また、4野党共同で提出された「原発ゼロ基本法案」の今国会での早期審議入りを求め院内外の運動を強めていかなければなりません。

(11) エネルギー政策の転換を求めるとりくみ
①地球温暖化対策のための脱炭素化の推進
2018年12月ポーランドで開かれた国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)において、2020年以降の地球温暖化対策の国際枠組みとなる「パリ協定」の実施指針が採択されました。この協定では、先進国と途上国の間で指針策定の交渉が難航しましたが、最終的には脱炭素化に向け各国が歩み寄り、すべての国が温室効果ガスの削減目標を自主的に掲げ対策にとりくむことが定められました。
また、2019年9月に行われる「気候サミット」に先立ち、日本で主要20か国・地域首脳会議
(G20)が行われる予定です。日本はG20の議長国として率先して温暖化ガスの削減に努めるとともに、火力発電所の増設を掲げる第5次エネルギー基本計画の内容を見直すことが求められています。
クリーンで安価なエネルギーとして推進されてきた原子力発電は安全対策費の高騰でコストが上がり、現在、企業は再生可能エネルギーへの転換を急激に進めています。その結果、再生可能エネルギーは世界で急速に拡大し、世界の総発電量の4分の1を超えています。日本は世界のエネルギーの潮流にこれ以上遅れることなく、脱原発・脱石炭化石発電と共にクリーン技術や省エネ技術で世界をリードできるよう、環境先進国へ向けた政策を積極的に打ち出していかなくてはなりません。

②必要性が高まる送電網の強化
2018年9月の北海道胆振東部地震で発生したブラックアウトや10月以降に九州電力管内で複数回にわたって行われた太陽光発電の出力制御は、どちらも送電網の問題でもあったといえます。各地域間の連携線を通して、広域的に電気を融通できるように、地域間で需給バランスをとることが重要となっています。
また、明確な発送電分離を確立するとともに、中央集中型の発送電形態を改めることが求められています。環境省は大手電力会社の送電網から自立した送電線を引き、再生可能エネルギーで地域の電力をまかなう実証事業を計画し「自立分散型のネットワークを創設しなければ根本的な解決にならない」として、2019年度政府予算案に60億円を盛り込んでいます。
このように発送電分離と再生化のエネルギーの推進を一体のものとしてとりくんでいくことが求められています。

③「原発ゼロ基本法案」制定により再生可能エネルギーの推進を
再生可能エネルギーの活用は、「脱原発」を進めるという側面ばかりでなく、地域の特色を生かしたエネルギー事業など地域経済の活性化においても有効なものとなります。また、未だに原発推進の姿勢を崩さない政府に対し、野党4党が衆議院経済産業委員会に共同提出した「原発ゼロ基本法案」は議論のないままたな晒しにされており、法案制定を求めたとりくみの強化が求められています。

(12) ヒバクシャの援護・連帯に向けてのとりくみ
①被爆者の課題解決にむけて
(ア)被爆者の高齢化に伴い急がれる被爆者課題の解決
ヒ口シマ・ナガサキの被爆者の高齢化(平均年齢 82.06歳/2018年3月31日)とともに、被爆二世の高齢化も進んでいます。被爆の実相を次世代につなげる課題、原爆症認定の課題、被爆体験者の課題、在外被爆者の課題、被爆二世・三世の課題などの解決が急がれています。
また、祖国へ帰還した在外被爆者への援護は、日本の戦争責任・戦後責任と重なって重要な課題であり、早急な解決が求められています。広島で原爆に被爆した後に帰国した韓国人4人が被爆者援護法の適用外とされたのは違法として、遺族計21人が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、昨年12月20日、大阪高裁は20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」の経過を認めた1審・大阪地裁判決を支持し、遺族側の控訴を棄却しましたが、その一方で除斥を理由とした在外被爆者への国の対応を「公平の理念を欠く」と批判しています。

(イ)在外被爆者課題の解決を
1月8日、長崎地裁は、戦時中に長崎市の三菱重工長崎造船所に徴用された90歳代の韓国人3人に被爆者健康手帳を交付するよう長崎市に命じました。被爆の証人や直接的な証拠はありませんでしたが、「発言の内容が一貫しており具体的で信用性が高い」と判断され認められました。
被爆から70年以上が経過し、認定請求者の被爆の事実を証明できる人も減少する中で、今回のような司法の柔軟な対応が求められていますが、一方で証拠が不十分として認定されない被爆者が数多く存在しています。引き続き国内外の被爆者を支援し、被爆者としての認定をはじめ権利拡大に向けた運動の強化が求められています。
また、在朝被爆者については、国交がないことを理由に援護の枠外に置かれたままです。朝鮮被爆者協会の発表によると2008年の調査で382人であった被爆者数は、今年5月までの調査で111人の調査を終え、内60人が生存し51人が死亡していることが明らかになりました。在朝被爆者に対しては、これまで緊張の続く日朝関係の中で困難な状況が続いていますが、アジア・太平洋戦争での植民地支配と戦争責任の課題と合わせ、在朝被爆者問題の前進に向けたとりくみも進めていかなければなりません。

(ウ)被爆体験者の援護法適用を求めるとりくみ
被爆者援護法が適用されない被爆体験者は、その適用を求め裁判闘争を展開し、これまで原水禁としても裁判支援を中心にとりくみを進めてきました。
昨年、12月10日、福岡高裁で被爆体験者第二陣の控訴審判決が出されました。この判決に先立ち、16年2月の長崎地裁判決では、「自然放射線による年間積算線量の平均2.4mSvの10倍を超える25 mSv前後の被爆での健康被害の報告、研究に照らすと、原爆の被爆の放射線により健康被害を生ずる可能性」があったとしましたが、福岡高裁判決では、100 mSv以下の被爆による健康被害を全く認めず、一審(長崎地裁)で手帳交付を認められた10人を含め、原告161人全員の敗訴が言い渡されました。この判決は、現在進行中である福島原発事故による健康被害や補償などをめぐる裁判にも影響するものであり、100 mSv以下でも労災認定を勝ち取ってきたことを否定するもので看過できません。引き続き被爆体験者訴訟を支援し、原発事故被災者や被曝労働者との連携を図りながら、被爆体験者の権利確立に向けて支援を強化していくことが重要です。

(エ)被爆二世のとりくみの強化と支援 
被爆二世の課題については、国の援護対策が進まない状況の中で、全国被爆二世団体連絡協議会(全国被爆二世協)が、国連人権理事会の場で被爆二世の人権保障を日本政府に求める国際的運動をスタートさせました。また、被爆二世に対する国家賠償を求め、2017年2月17日に広島地裁、2月20日には長崎地裁に「原爆被爆二世の援護を求める集団訴訟」を起こしましたが、この訴訟を通して問題の所在を社会的に明らかにし、被爆二世を援護の対象とする立法的措置の契機とすることをめざしています。
また、2018年4月末~5月初めにジュネーブで開催されたNPT再検討会議準備委員会に全国被爆二世協として代表を派遣し、核廃絶と二世の人権保障を訴えてきました。  
2月16日~17日には広島において全国総会が開催され、「対厚生労働省交渉の強化」、「裁判強化」、「国連人権委員会への働きかけ強化」など今後の運動方針を確認しました。原水禁としても裁判闘争や国連での活動など被爆二世の運動を強化、支援していきます。
とりわけ被爆者たちの思いを引き継ぎ、平和と核廃絶運動の担い手として被爆二世、三世の役割がさらに重要となっています。

(オ)高校生平和大使のとりくみなどを通じ被爆体験の継承を 
被爆体験の継承の課題では、高齢化する被爆者に直接話が聴ける時間は限られてきており、被爆体験の継承は焦眉の課題となっています。特に継承活動を進める高校生1万人署名活動・高校生平和大使の運動に参加する高校生のとりくみは貴重で、「高校生平和大使」の活動を支え、被爆の実相の継承をはかっていくことが重要です。3月2日~8日にはオスロへ高校生平和大使の派遣団を送り、ノーベル委員会への要請行動や現地高校生との交流などを行っていきますが、引き続き、原水禁・平和フォーラムが中心となって高校生平和大使の運動を支援していきます。

②被曝労働者との連帯を
原水禁・平和フォーラムとしてこれまで被曝労働者の様々な裁判を支援してきました。また、福島原発事故以降も厚生労働省や文部科学省、復興庁などへ被曝量の低減など「安心・安全」に働ける労働環境の整備求め、現地福島や原子力資料情報室などの市民団体とともに交渉を重ねてきました。
現在、多くの労働者が多重下請け構造の中に置かれ、放射線量の高い場所での労働で、常に被曝と健康被害のリスクにさらされています。本来、収束作業の責任を持つ東電や除染作業を受注している大手ゼネコンなどが、労働者の線量管理や健康管理に責任を持たなくてはなりませんが、業務委託の多重構造のなかで、管理と責任は明確になっておらず、現場労働者の権利侵害も報告されています。今後も長く続く事故の収束作業や除染作業における現場労働者の労働条件整備を求めていくことは重要です。また、引き続き労働者の被爆線量の低減を求めていくことも必要です。

③世界の核被害者との連帯について                          
核被害は、核の軍事利用・商業利用を問わずウラン採掘に始まり、あらゆる核開発の過程で存在しまた拡大し続けています。核被害者との連携強化は、ヒロシマ・ナガサキだけでなくフクシマの被害の実相を明らかにするうえでも重要です。これまでも米国ナバホ族のコミュニティやマーシャル諸島、仏領・ポリネシアとの交流にとりくんできましたが、今年の原水禁世界大会をはじめあらゆる機会を通じ核被害者との交流を進め、核と人類は共存できないことを世界に訴えていくことが必要です。

(13) 急がれる福島の復旧・復興
①困難な廃炉作業と巨額な廃炉費用
東日本大震災・福島原発事故から8年が過ぎ、依然として事故の収束作業は難航し、廃炉に向けて最も難関といわれる溶融燃料(デブリ)の取り出し作業は、格納容器内で毎時80Svというわずか数分で死に至る放射線に阻まれています。現在までデブリの全容を把握するには至っておらず、取り出しの技術確立の目処も立っていません。政府・東京電力は、デブリの取り出し開始を2021年内、廃炉完了の目標を2041年から2051年と時期を示していますがさらに長期化することが予想されます。また、廃炉費用も現時点で、21.5兆円と見積もられていますが、工事の長期化、人材確保、廃炉に向けた研究開発など様々なコストが膨らむ可能性が高く、廃炉費用も巨額に上ることが予想されています。

②避難生活者に対する政府の支援打ち切り
被災地福島では、県内に8,655人(2月25日現在)、県外に32,613(2月7日現在)、不明13人の合計41,299人の方々が、今なお長期の避難生活を余儀なくされています。しかし、自主避難者などこの数字から零れ落ちた被災者も多数おり、福島県・復興庁の調査でも十分に避難の実態が反映されていないのが現状です。
福島県の震災関連死と認定された人は、2,250人(2018年12月現在)で、福島原発事故の影響によるふるさとの喪失や、生業を奪われたこと、長期にわたる避難生活や将来への不安などが原因にあげられます。
一方、帰還困難区域を除いた居住制限区域・避難指示解除準備区域では、除染作業によって年間被曝量20mSv/年を基準にそれを下回るとされる地域から避難指示が解除されています。しかし、20mSv/年という数字は、国際放射能防護委員会(ICRP)が緊急時の基準として示しているもので、これまでの国内基準(1mSv/年)の20倍もあり、許されるものではありません。また、避難指示解除に合わせて、帰還を強要するかのように住宅支援などの補償が打ち切られています。被害者は、20mSv/年というこれまでに経験のない高放射線量での被曝(実際には日常生活を制限すれば2~5mSv/年程度に留まるが、ホットスポットに入ると高くなる)を覚悟して戻るか、補償が打ち切られても避難し続けるかきびしい選択を迫られています。そこには政府の被害者に寄り添う姿勢が全くなく、原発事故の早期幕引きと被害の矮小化をはかり、被害者を切り捨てようとする「棄民」政策と言わざるを得ません。
自主避難者に対する数少ない支援が災害救助法に基づく住宅の無償提供でしたが、国と福島県が2017年3月で無償提供を打ち切り、住宅から追い出された多くの家庭が生活困難に陥っています。
また、山形県に居住する自主避難者は、住宅の明け渡しを求める「高齢・障害・求職者雇用支援機構」から裁判に訴えられる事態を迎えています。被害者がいつの間にか加害者に仕立てられる事態を許すわけにはいきません。

③国や東電の加害者としての責任を明確化するとりくみ
福島原発事故の刑事責任を求めて、被害者らが訴えた「福島原発刑事訴訟」は検察庁が二度不起訴にしたものの、検察審査会が強制起訴し、2017年6月30日に初公判が開かれ刑事裁判がスタートしました。裁判では、津波の予見可能性などが争点となり、今年3月には最終弁論が行われました。現在、訴えられている3人の旧東電経営陣に対して懲役5年が求刑されています。この刑事裁判は9月19日に東京地裁で判決を迎えることとなっており、引き続き支援を継続していきます。
また、国を相手にした国賠訴訟や裁判外紛争解決手続き(ADR)を、事故責任の当事者である東電が拒否する事案が裁判となって各地で争われています。国や東電の原発事故被害者への不誠実な態度は、「事故の原因は予想を超えた津波による自然災害にある」として、原発の安全性に対して監督責任のある国や原発を運転する東京電力が事故の責任を免れようとしていることにあります。国や東電の加害者としての責任をこれらの裁判闘争などを通じて明らかにしていくことに協力していきます。

④子どもや住民のいのちを守れ                  
2018年4月8日に開催された「県民健康調査」検討委員会において、福島原発事故当時18歳未満であった子どものうち、調査において202人が甲状腺がんまたはがんの疑いと診断されそのうち164人ががんと確定されました。2018年7月8日の福島県の甲状腺検査評価部会で報告された「県民健康調査」から外れた子どもたちを加えると、甲状腺がんまたはその疑いがあると診断された子どもたちが211人、甲状腺がんと確定した子どもが174人となっています。また、東京新聞は、これまで公表されてこなかった11歳の少女(現在は甲状腺がんと診断され手術を受けた)が100mSvの被曝をしたことを報道するとともに、原発周辺の子どもたちの放射線測定はわずか1080人しか行われず、大半は未測定のままであることも明らかにしました。
このような、確実な調査が行われないままに、健康被害を隠蔽する行為を許すわけにはいきません。放射線測定の実態を明らかにするとともに、健康被害者に対しては長期にわたる公的なケアと医療面、経済面でのサポートなどを求めていくことが必要であり、県民の健康不安、特に子どもの健康にしっかりと向き合うことが求められています。
一方、原子力規制委員会は「線量に大きな変動がなく安定しているため、継続的な測定の必要性は低いと判断した」として、福島県内にあるモニタリングポストの大幅な削減や増え続ける汚染水対策としてトリチウムの海洋放出を行うとしており、被災者の不安をさらに拡大させています。
こうした子どもたちへの不十分な放射線測定や日常的な放射線量測定の縮小は、福島原発事故をなかったものにしようとする政府の姿勢の表れであり、政府には、被災者によりそう姿勢が強く求められています。

(14) TPPなど通商交渉に対するとりくみ
TPP11、日欧EPA協定の発効に続いて、日本とアメリカとの二国間の貿易交渉が今年から開始されます。アメリカが示した日本への要求項目では、物品だけでなく、サービスや投資などTPP協定のほぼ全ての内容に加えて、為替条項も含めた包括的な協定をめざしています。この他、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国、韓国、インドなどによる東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)も本年中の妥結をめざして交渉が続けられます。
このように、かつてない巨大な通商協定(メガFTA)が現実のものとなりました。特に、農畜林産物の関税の大幅引き下げや撤廃、輸入割当の拡大などによる農林水産業への影響が懸念されます。また、世界でも最低水準にある食料自給率(38%)を、さらに引き下げる危険があります。さらに、メガFTAは多国籍企業が参入しやすいように各国の基準や規制を統一・緩和するものであることから、農林業だけでなく、食の安全や医療・医薬品、サ-ビス貿易、投資、政府調達、国有企業、地域経済など多くの分野へも影響がおよぶものです。
こうしたことから、徹底した情報公開や市民との意見交換を求めていく必要があります。また、世界的にも行き過ぎたグローバリズムによる格差の拡大、新自由主義経済に対する市民の反対の声も広がっていることから、グローバリズムの問題も検討していく必要があります。
平和フォーラムは「TPPプラスを許さない!全国共同行動」など、関係団体と連携を取って学習・集会の開催や政府交渉なども進め、日米交渉をはじめ、TPP11協定の見直しなどを含めてとりくみを進めます。

(15) 食の安全のとりくみ
メガFTAの動きは食の安全に関しても大きな影響を与えるものです。特にアメリカからは、牛海綿状脳症(BSE)による米国産牛肉の輸入制限撤廃や、食品添加物・収穫後使用の防かび用農薬の規制緩和、遺伝子組み換え食品の輸入拡大などが求められてきました。
これに呼応するように、食品安全委員会は米国産牛肉の月齢による規制撤廃を行う見込みです。また、遺伝子組み換え食品の表示も改訂されようとしています。さらに、消費者庁は新年度から「食品添加物」についての表示改訂の検討を始めるとしています。規制の緩和につながることのないように、消費者団体などの運動に引き続き協力することが重要です。また、政府が検討を進めるゲノム編集作物の栽培規制、食品の安全審査、表示を求めていくことも必要です。
機能性表示食品制度は、依然として、安全性や効果を示すデータの信ぴょう性、公開情報が不十分なことが指摘されています。このため、トクホも含め健康食品制度に関する見直しが求められています。

(16) 水・森林・化学物質・環境問題などのとりくみ
水問題については、化学物質の排出・移動量届出制度(PRTR制度)を活用した合成洗剤の規制や、化学的香料による健康被害の「香害」問題など、化学物質の総合的な管理・規制にむけた法制度や、有害物質に対する国際的な共通絵表示制度(GHS)の合成洗剤への適用などを求めて運動を展開していく必要があります。
また、水の公共性と安全確保のため、今後も水循環基本法の理念の具体化や水道・下水道事業の公共・公営原則を守り発展させることが、引き続き重要な課題となっています。一方、「水道法改正」による水道事業民営化の動きを注視する必要があります。
地球規模での森林の減少と劣化が進み、砂漠化や温暖化を加速させています。日本は世界有数の森林国でありながら、大量の木材輸入により、国内の木材自給率は低迷してきましたが、最近は、国産材の使用拡大施策などが図られています。しかし、今後の様々な通商交渉の中で木材製品の関税削減により、木材自給率等への影響を注視する必要があります。今後も、温暖化防止の森林吸収源対策を含めた、森林・林業政策の推進に向けて、「森林・林業基本計画」の推進、林業労働力確保、地域材の利用対策、山村における定住の促進などを求めていくことが必要です。
地球温暖化問題では、原発とともに、石炭火力発電所を推進する日本のエネルギー政策の抜本的な見直しなど、目標達成のための実行性をともなう仕組みづくりが求められています。また、身近な地域資源を活用したバイオ燃料や太陽光発電など地域分散型の再生可能エネルギーの事業を興していくことが大切です。そのため法・制度、生産システムの確立を求めていくことが必要です。

(17)食料・農業政策のとりくみ
安倍政権は「世界で一番企業が活躍しやすい国にする」(2013年2月の安倍晋三首相の施政方針演説)として、企業のための規制緩和や国家戦略特区の設定などを押し進めています。特に農業分野では「農業の成長産業化」のかけ声のもと、「規制改革推進会議」が主導する急進的な「官邸農政」が進められてきました。
昨年4月から政府による生産者の保護のための不足払い制度の廃止や公共の品種を守ってきた「主要農産物種子法」の廃止などが行われ、さらに、漁業などへの企業参入につながる法改正が行われました。また、貿易自由化で最も打撃を受ける酪農でも生乳の流通自由化が始まり、安定的な供給体制が出来なくなる懸念があります。一方、農業の担い手不足も深刻になり、入国管理法により農業へも3万人以上の外国人労働者の就労を図ろうとしています。
こうした安倍政権の改革は、地域社会や国土保全に貢献している農業の多面的機能を軽視し、小規模でも農村地域を支えてきた多様な担い手を切り捨てることにつながります。また、食料自給率(カロリーベース)は依然として低迷が続いており、今後の通商交渉によってはさらなる低下が予想されます。
今後も農民・消費者団体と協力し、際限のない国際競争と規模拡大ではなく、食料自給率向上や所得補償制度の拡充、食品の安全性向上などの法・制度確立と着実な実施を求めていく必要があります。また、各地域でも、食の安全や農林水産業の振興に向けた自治体の条例作りや計画の着実な実施も重要です。

2. 具体的なとりくみ課題
(1)改憲発議・国民投票を許さず、平和憲法を守るとりくみ
①戦争国家づくりを推し進める安倍政権の動きに対抗する全国的運動として「戦争をさせない1000人委員会」のとりくみをすすめます。人々の「生命」(平和・人権・環境)を重視する「人間の安全保障」の政策実現を広げていく「武力で平和はつくれない!9条キャンペーン」、「9の日行動」など各地で行います。「持続可能で平和な社会(脱原発社会)」を求める「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみと連携します。

②「総がかり行動実行委員会」「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」主催の共同行動にとりくむとともに、「戦争をさせない1000人委員会」独自の諸集会・行動、宣伝活動を展開します。また、3000万人署名運動のさらなる拡大に向けて、様々な宣伝物を利用した各戸への署名行動や街頭署名行動など地域でのとりくみを強めます。

③戦争法の廃止・憲法改悪の阻止のとりくみを引き続き全力でとりくみます。米軍再編、自衛隊増強などを許さないとりくみと連携して、日米軍事同盟・自衛隊縮小、「平和基本法」の確立、日米安保条約を平和友好条約に変えるとりくみをすすめます。

④自民党による改憲攻撃に対抗するとりくみを強め、立憲フォーラムと協力し、院内外での学習会などを行います。中央・東京での開催とともに、ブロックでの開催を奨励し協力します。学習会を開催します。また、機関誌「ニュースペーパー」での連載企画や冊子発行、論点整理のホームページなどを適宜、情報発信します。

⑤新しい時代の安全保障のあり方や、アメリカや東アジア諸国との新たな友好関係についての大衆的議論を巻きおこすとりくみを引き続きすすめます。

⑥5.3憲法集会を、2015年以来の共同のとりくみを継続、「平和といのちと人権を!5.3憲法集会―許すな!安倍改憲発議―」(東京・有明防災公園)として開催し、安倍政権と闘う諸団体・個人の総結集をめざします。あわせて、全国各地での多様なとりくみを推進します。

⑦「憲法理念の実現をめざす第56回大会」(護憲大会)は、下記日程で北海道・函館市で開催します。
11月9日 (土)午後 開会総会
11月10日(日)午前 分科会
11月11日(月)午前 閉会総会

(2)日米軍事一体化と専守防衛の枠を超えて拡大する日本の防衛政策
①戦争をさせない1000人委員会とともに、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、および安倍9条改憲NO!全国市民アクションに結集し、平和安全法制(戦争法)の廃止および憲法9条改悪阻止のとりくみをすすめていきます。また、安保法制違憲訴訟の会のとりくみに協力します。

②自衛隊基地や米軍基地の新設、基地機能の強化および日米共同訓練等に反対する各都道府県組織のとりくみを支援するとともに、全国基地問題ネットワークとの連携を深めていきます。

③専守防衛から逸脱する装備・技術研究に反対し、防衛予算の拡大に反対するとりくみを行います。また、憲法9条理念の実現に向け、自衛隊のあり方を考えるとりくみを追及します。

④人権問題にかかわる自衛官の隊内いじめや自殺などに関心をよせ、「防衛大人権侵害裁判に支援する会」等のとりくみに協力していきます。

⑤防衛装備移転三原則に基づく武器・技術の輸出に反対し、政府援助をやめさせるとりくみを追及します。

⑥全国基地問題ネットワーク、オスプレイと低空飛行に反対する東日本連絡会と連携して、外務省・防衛省等、および関係自治体への要請行動をとりくみます。また、関係自治体に向けたパンフレット、情宣用のリーフレット等を発行します。

⑦全国基地問題ネットワークと連携したとりくみを追及していくほか、日米地位協定改定の提言を行う弁護士グループのとりくみに協力していきます。

(3)辺野古新基地建設を許さない沖縄の闘い
①普天間基地の即時運用停止、辺野古新基地阻止のために、沖縄平和運動センターのよびかけるとりくみを支援し、協力していきます。

②沖縄の闘いの拡大強化を図るため、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会に結集して新基地建設反対のとりくみを行うほか、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会、「辺野古土砂搬出反対」全国連絡協議会などの市民団体との共闘を追及します。また沖縄等米軍基地問題議員懇談会に結集する国会議員と連携し、対政府交渉や院内集会等を行っていきます。

③平和フォーラム沖縄事務所を、東京平和運動センター等の協力を得ながら、2019年度も継続し、沖縄からの情報発信に努めます。

④山城博治沖縄平和運動センター議長らの裁判闘争を支援していきます。

⑤復帰47年(第42回)5.15平和行進(5月16〜19日)のとりくみに協力します。

(4)東北アジアの平和と非核化を求めるとりくみ
①東アジアの平和体制・非核化実現のため、板門店宣言・米朝共同声明での合意事項を支持し、一方で米韓軍事演習など軍事的恫喝や制裁措置の強化などに反対する運動を進め、日米韓の政府への要請にとりくみます。
国際平和機構「コリア国際平和フォーラム(korea international peace forum、略称KIPF)」には「東アジア市民連帯」の枠で参加し、国際的な連携の強化に努めます。

②東北アジアの平和と非核化を求め、総がかり実行委員会や「2019・3・1独立運動100周年キャンペーン」の実行委員会の参加団体などに幅広く参加を求め、6月7日・日比谷野外音楽堂、6月8日星稜会館で「東北アジアに非核・平和の確立を!市民連帯行動&シンポジウム(仮称)」を開催します。

③東北アジアの緊張状態や「制裁」による在日コリアンの人権侵害の動きに対して、日朝国交正常化全国連絡会による対話と友好のとりくみをすすめ、政府・外務省などに対する働きかけをおこないます。

④植民地支配責任・戦後責任問題の解決のために、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」とともにとりくんでいきます。

⑤韓国の平和運動団体からインターン学生を受け入れ、将来の国際連帯強化をにらんだ人材育成を行っていきます。

(5)民主教育を進めるとりくみ
①育鵬社や教育再生機構が大阪府岸和田市の企業と結託した、教科書展示会での不正アンケート問題では、大阪の運動団体と連携し、大阪市議会での追及にとりくむとともに、公正取引委員会への資料提供などを通じて不当採択の問題として排除勧告などを引き出すようとりくみをすすめます。

②政権の意図に偏った恣意的な教科書検定の実態を明確にし、全国の市民団体及び韓国のNGO「アジアの平和と歴史教育連帯」とともに、バランスのとれた教科書の記述内容を求めてとりくみをすすめます。

③憲法改悪反対のとりくみと連動し、「修身」などの復活を許さず、復古的家族主義、国家主
義的教育を許さないとりくみを展開します。

④人に優しい社会へのとりくみを様々な方向から強化し、貧困・格差を許さない方向からも、教育の無償化へのとりくみを強化します。

⑤歴史教育課題・道徳教育課題に対応するため、問題・課題を共有し授業実践の還流を目
的としたホームページを、市民等の協力のもと、運営していきます。
●人権を大切にする道徳教育研究会
「道徳教科書/もうひとつの指導案―ここが問題・こうしてみたら?」
https://www.doutoku.info

(6)ヘイトスピーチや様々な人権課題へのとりくみ
①「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」など、全国各地や海外のさまざまな動きに対応し、連携した朝鮮学校支援のとりくみをすすめます。

②実効性ある人権救済法の制定と国際人権諸条約・選択議定書の批准に向け、「国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動」や日弁連のとりくみに参加・協力します。「国連・人権勧告の実現を!」実行委員会に参加・協力し、日本政府に国連の人権勧告を遵守するよう求めるキャンペーンをとりくみます。

③狭山差別裁判第3次再審の実現など、冤罪をなくすとりくみに参加・協力します。冤罪発生の危険性を高め捜査機関の権限拡大を図る刑事司法改革関連法の内容に反対するとともに、実効性ある「取り調べの可視化」の実現を求めて運動を進めていきます。

④障害者権利条約の完全実施を求める当事者団体のとりくみに協力します。

⑤重大な人権侵害をもたらす恐れが指摘されている医療観察法の廃止を求めるとりくみに協力します。

⑥差別なき定住外国人参政権法案の制定に向けて、参政権ネットや民団と協力して、全国各地でとりくみをすすめます。

⑦女性の経済的自立と意思決定の場における発言力を高めることが、日本のジェンダー平等を実現するために不可欠です。「選択的夫婦別姓」は最高裁で不当な判決が出され、これからは国会の場で政治的決着をつけなければなりません。関係団体とともにとりくみを強化します。さらに、「同一価値労働同一賃金」の実現は女性の人権を国際的水準に引き上げる運動の要としてとりくみます。

⑧一般市民の戦争犠牲者の救済を求めるとりくみとして、東京大空襲訴訟、空襲被害者立法の支援をおこないます。重慶爆撃の被害者による訴訟のとりくみに協力します。

⑨「菅首相談話」にも明記された遺骨問題や文化財返還問題については、関連団体と連携したとりくみをすすめます。

⑩「共謀罪」「特定秘密保護法」の廃止を求めます。

⑪改正出入国管理法・技能実習生制度の見直しと本格的な移民受け入れ政策の検討の
ために各運動体と連携していきます。

(7)全日建関西生コン支部への権力弾圧に対する闘い
①不当弾圧に抗議し、長期勾留中止と即時釈放、接見禁止の解除、公正裁判実施などを要求する署名活動にとりくみます。

②全日建と平和フォーラムによる支援要請のオルグ団を結成し、平和フォーラム加盟の中央団体、都道府県組織で事件の本質について共有化をはかると共に、全国的な支援闘争にとりくみます。

(8)核廃絶に背を向ける被爆国日本
①核兵器廃絶にとりくむ国内外のNGO・市民団体との国際的な連携強化をはかり、核兵器廃絶に向けたとりくみを進めます。

②原水禁・連合・KAKKIN3団体での核兵器廃絶に向けた運動の強化をはかります。2020年NPT再検討会議に向けて、協力してとりくみます。

③東北アジア非核地帯化構想の実現のために、日本政府やNGOへの働きかけを強化し、具体的な行動にとりくみます。さらにアメリカや中国、韓国などのNGOとの協議を深めます。

④非核自治体決議を促進します。自治体の非核政策の充実を求めます。さらに非核宣言自治体協議会や平和市長会議への加盟・参加の拡大を促進させます。

⑤政府・政党への核軍縮に向けた働きかけを強化します。そのためにも核軍縮・不拡散議員連(PNND)や国会議員と連携したとりくみをすすめます。

⑥日本政府に対し、核兵器の非人道性声明に署名しながら、核政策としての拡大抑止政策を変更しようとしない姿勢をただします。国連の「核兵器禁止条約」への署名・批准をもとめ、被爆国として核兵器廃絶に向けた積極的な役割を果たすよう追求します。

⑦日本のプルトニウム増産への国際的警戒感が高まる中、再処理問題は核拡散・核兵器課題として、プルトニウム削減へのとりくみをすすめます。

⑧「高校生平和大使を支援する全国連絡会」を通して、高校生平和大使の運動をサポートし、運動の強化をはかります。

⑨「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」に協力します。

⑩核軍縮具体策としての核役割低減、先制不使用、警戒態勢解除、核物質最小化等の内容を広く情報発信します。

(9) 被爆74周年原水爆禁止世界大会及び被災66周年ビキニデー集会       
①被爆74周年原水爆禁止世界大会は、下記の日時で開催します。
7月27日    福島大会
8月4日~6日  広島大会
8月7日~9日  長崎大会

②被災66周年3.1ビキニデー集会を2020年3月に静岡で開催します。

(10) 原発再稼働を許さず、脱原発に向けたとりくみ
①原発の再稼働阻止にむけて、現地と協力しながら、課題を全国化していきます。合わせて
治体や政府への交渉を進めます。

②老朽原発の危険性を訴え、廃炉に向けた運動を進めます。

③「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」の運動に協力し、事務局を担い「1000万署
名」の達成、各種集会等の成功をめざしてとりくみの強化を進めます。

④核燃料サイクル政策の破綻を明らかにし、六ヶ所再処理工場の建設中止を求め、「高速炉開発」に反対します。また、「4.9反核燃の日」全国集会を開催します。現地のとりくみを支援するとともに、国・事業者などへも要請や提言を行います。

⑤フルMOX燃料の大間原発や上関原発などの新規原発の建設中止を求めていきます。

⑥中越沖地震の集会、JCO 臨界事故の集会など各地の集会に協力します。

⑦高レベル放射性廃棄物の地層処分のための「科学的有望地」の動きに対して、その問題点を明らかにし、各地でのとりくみ支援とネットワークの強化を図ります。

⑧原子力空母の危険性を訴え、寄港地での防災対策について政府や自治体と交渉行いま
す。

⑨廃炉費用、福島原発事故処理費用の原則事業者負担を求め、託送料に上乗せすることに
反対します。

(11) フクシマの課題を前進させるとりくみ                                      
①福島原発事故に関する様々な課題について、現地と協力しながら運動を進めます。被災者
問題や被曝問題について、政府や行政への要請や交渉を進めます。

②フクシマ連帯キャラバンを、労働組合の若い組合員を中心にとりくみます。

③福島原発事故にかかわる各種裁判を支援します。

(12) エネルギー政策の転換を求めるとりくみ
①原発輸出を許さないとりくみを市民団体とともにすすめます。

②電力システム改革へ後ろ向きの勢力に注視し、政策決定の過程を明らかにさせるとりくみを行います。

③eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)などによるキャンペーン、パワーシフトにも協力し、消費者の側から購入電力を選ぶことを推進し、再生可能エネルギーへの転換を進めます。

④大手電力から、再生可能エネルギー中心の新電力への切り替えをすすめる案内チラシなどを作成し、切り替え拡大を進めます。

⑤リーフレット「どうする?これからの日本のエネルギー」(改訂版)を使って政府のエネルギー基本計画の問題点を広めます。

⑥各地の自然エネルギー利用のとりくみに協力します。とくに「再生可能エネルギー促進条
例」(仮称)づくりなど、地域から再生可能エネルギーのとりくみをつくり上げることに協力しま
す。

(13) ヒバクシャの援護・連帯に向けたとりくみ
①原爆症認定制度の改善を求めます。被爆者の実態に則した制度と審査体制の構築に向
けて、運動をすすめます。

②在外被爆者の裁判闘争の支援や交流、制度・政策の改善・強化にとりくみます。

③在朝被爆者支援連絡会などと協力し、在朝被爆者問題の解決に向けてとりくみます。

④健康不安の解消として現在実施されている健康診断に、ガン検診の追加など二世対策の
充実をはかり、被爆二世を援護法の対象とするよう法制化に向けたとりくみを強化します。さ
らに健康診断などを被爆三世へ拡大するよう求めていきます。また、被爆者二世裁判を支援
します。

⑤被爆認定地域の拡大と被爆者行政の充実・拡大をめざして、現在すすめられている被爆
体験者裁判を支援し、国への働きかけを強化します。

⑥被団協が進める核兵器廃絶国際署名に協力します。

⑦被曝線量の規制強化を求めます。被曝労働者の被曝線量の引き上げに反対し、労働者
への援護連帯を強化します。

⑧被爆の実相を継承するとりくみをすすめます。「メッセージ from ヒロシマ」や「高校生1万
人署名」、高校生平和大使などの若者による運動のとりくみに協力します。

⑨世界のあらゆる核開発で生み出される核被害者との連携・連帯を強化します。

(14) 環境・食の安全・食料農林業問題のとりくみ
①様々な通商交渉に対し、その情報開示を求め、問題点を明らかにするとりくみを幅広い団体と連携を図りながらとりくみを進めます。そのため、集会や学習会などを開催していきます。

②輸入食品の安全性対策の徹底とともに、日米二国間交渉等にともなう食品規制緩和の動きに反対して、消費者団体などと反対運動を進めます。

③「食品表示制度」に対し、消費者のためになる表示のあり方を求めていきます。また、ゲノム編集作物の規制や「機能性食品表示制度」の見直しを求めます。

④「きれいな水といのちを守る全国連絡会」の事務局団体として、活動を推進します。また、「水循環基本法」の具体化に向けたとりくみを求めます。

⑤関係団体と協力して、「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の確実な推進、地産地消による国産材の利用拡大、木質バイオマスの推進などにとりくみます。

⑥温暖化防止の国内対策の推進を求め、企業などへの排出削減の義務づけや森林の整備など、削減効果のある具体的な政策を求めます。

⑦農林業政策に対し、食料自給率向上対策、直接所得補償制度の確立、地産地消の推進、環境保全対策、自然エネルギーを含む地域産業支援策などの政策実現を求めます。

⑧各地域で食品安全条例や食育(食農教育)推進条例づくり、学校給食に地場の農産物や米を使う運動、子どもや市民を中心としたアフリカ支援米作付け運動や森林・林業の視察・体験、農林産品フェスティバルなどを通じ、食料問題や農林水産業の多面的機能を訴える機会をつくっていきます。

3. 平和フォーラムの運動と組織の強化にむけて                     
(1) 巨大な安倍政権と闘う組織の強化を
私たち平和フォーラムは、かつてない多くの困難な課題に直面しながら、平和と民主主義、人権と反差別、原発とエネルギー政策などで市民や労働組合の奮闘に依拠し、その運動の中心を担うとともに、安倍政権の政策と全面的に対決してきました。
もちろん、この安倍政権との闘いは、総評労働運動の歴史的な運動方針を継承し、共闘の基礎を担う産別中央組織と中央団体によって、そして、全都道府県に組織されている地方組織の活動によって支えられてきたものです。
私たちのとりくみは、今なお重要な局面が継続しているばかりか運動領域も拡大し、かつ困難さも増してきています。これらに対応できる総体としての平和フォーラムの組織強化が、今こそ内外から求められています。
そして、この組織強化は、平和フォーラムの事務局機能と組織力量の強化にとどまることなく、平和フォーラムに結集する中央組織、地方組織の総体の意志統一を基礎としたものでなければなりません。
そのため、組織検討委員会や同作業委員会での討議をはじめとして、組織強化の具体化について中央・地方の機関会議などで討論を進めていきます。

(2) より広範な運動展開と社会の多数派を目指す活動
安倍政権の国会内の多数の力と民意をまったく顧みない政治手法に怒りの声をあげる新たな人々の広がりが生まれてきています。また、従来保守層と言われていた人々の中からも、「戦争」への危機感から抗議の声があがっています。このように、安倍政権自身が生み出しているこのような政権反対派の人々と連帯、連携することも重要な課題です。
「さようなら原発1000人アクション」と「戦争をさせない1000人委員会」の運動は、従来の枠組みを超えた新しい運動を展開してきました。なかでも結成から5年を経過した「戦争をさせない1000人委員会」は、ほぼ全都道府県で「1000人委員会」が結成され、市町村でも「1000人委員会」地域組織も立ちあがってきています。しかし、この間のとりくみの中でも正確な実態については把握しきれておらず、平和フォーラムの中央、地方組織の将来の組織強化を展望するうえからも「1000人委員会」の拡大と合わせて組織的な整備も行っていかなければなりません。
一方、戦争法の成立に続き安倍政権下で憲法改悪を許してはなりません。今日の圧倒的な安倍政権に対峙し、戦争法の廃止や憲法改悪を阻止するためには「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」、さらには、全国で訴訟を展開する「違憲訴訟の会」との連携は重要です。
また、立憲主義の確立を求め、超党派の国会議員でつくられた「立憲フォーラム」や地方議員を対象にした「立憲ネット」との連携したとりくみも広げていかなければなりません。
さらに、組織労働者への不断の働きかけなくして、社会の多数派形成はなく、連合との共同行動や連携の重要性がますます高まっています。平和と憲法、立憲主義、核兵器廃絶と被爆者援護、人権と環境など、平和フォーラムがとりくむ課題を提起しながら、共有課題を尊重して連合とより積極的な連携をはかることが中央・地方で求められています。

(3) 運動を担う主体の強化について
平和をめぐる意見の相違が先鋭化している中、労働組合において平和と人権の意義、役割をより丁寧に宣伝する活動が重要となっています。「防衛力の増強が戦争の危機を招来している問題」、「侵略戦争の過去の謝罪と総括がいかに不十分か」、「憲法の先見性、普遍性」など、とくに若い世代に丁寧に伝えることが重要です。次代を担う人材の育成が組織強化の使命です。これらの課題を目的意識においた対策が柔軟に講じられる必要があります。沖縄平和行進やフクシマ連帯キャラバンなどの具体的な課題を通じて若い世代が参加し交流できるよう工夫することが求められます。
また、運動の協力者(サポーター)を組織活動の周りにひきつけ、行動を共にする中から後進の育成を展望するとりくみとして2019年も「平和フォーラムピーススクール」を開催します。個々の集会、運動などの機会が、新しい運動の担い手の結集の機会でなければなりません。そのために、運動の情報発信をより広く行い、とりくみの意義と目的が迫力のあるものとするよう努めます。

(4) 政策の実現をめざして
平和フォーラムは東アジアの平和友好、立憲主義の回復と憲法理念の実現、脱原発、人権、貧困・格差の解消、食と環境などの運動の到達点を踏まえ政策実現のとりくみを進めなければなりません。そのため、新しい政策実現への展望を切り開きつつある運動体との連携を進める中で政策化をはかり、政府との対抗関係を構築します。
とりわけ、ナショナルセンターとしての連合にその役割を果たすことを期待し連携を強化するとともに、広範な運動の構築をめざします。
また、立憲フォーラムや立憲ネットをはじめ、立憲民主党、社民党などと連携し、よりきめ細かな政府・各省・自治体等への対策を強化します。また、2019年7月に予定されている参議院選挙に向けてのとりくみは重要です。立憲フォーラムをはじめとする国会議員、立憲ネットワークなどの地方議員、連合の奮闘、そして市民連合に期待すると同時に平和フォーラムも従来のとりくみ経過を踏まえ最大限のとりくみを進めます。
こうしたとりくみ全体を促進するため、研究者・研究団体、NPO・NGO、青年や女性団体などとの連携も強化します。

(5) 結集軸としての組織活動
①機関運営について
平和フォーラムの目標を具現化するために、常任幹事会、運営委員会・原水禁常任執行委員会を開催し、具体的な運動の課題と目標の共有化につとめます。また、各地方組織の課題、共通目標の確認のため各都道府県・中央団体責任者会議、全国活動者会議を開催するとともに、各地方ブロック会議とも積極的に連携します。

②情報の発信と集中、共有化について
全国組織の平和フォーラムにとって、ホームページ、メールマガジン、機関誌「ニュースペーパー」、パンフレットやブックレット、記録集の発行などは情報の発信と共有化のための重要な役割を果たしています。それぞれの機能を有効に活用し、一方的な情報発信にならないような工夫、情報の整理と蓄積などが今後の課題です。
また、「さようなら原発1000万人アクション」「戦争をさせない1000人委員会」の運動の中で、インターネットやその他の通信手段で平和フォーラム・原水禁のとりくみに参加する市民が増えており、インターネット等による平和フォーラム・原水禁の精力的な発信力が求められています。

③集会の開催、声明などの発信
中央、地方の大衆的な集会の開催、署名活動、社会状況や政治的動向に対する見解や声明などの発信などは、平和フォーラムの運動目標を具現化し、社会的な役割を拡大するために重要なとりくみです。日程や場所など参加しやすい環境づくりとともに運動の拡大をめざし、前例踏襲型にならない工夫が必要です。

④政策提言の発信
環境政策、エネルギー政策と原子力規制、基地と原発依存からの脱却、ヒバクシャの課題など、政府等に対する政策要求・提言活動を強めます。そのため、学者やNGO専門家の協力を得るよう努めます。

(6) 具体的なとりくみ
①事務局体制の強化
全国組織の事務局として、情報の収集発信機能を強めるとともに、地域の運動と中央の課題を結びつけ、持続的な運動を組み立てる視点で運営します。
(ア)課題別担当、中央団体・労働団体、ブロック別担当を配置し、コミュニケーション機能を強めます。

(イ)要請・紹介文書・各種資料・宣伝物などについて、構成組織の実態を踏まえた作成・連絡・配布など丁寧な運営に努めます。

(ウ)情報提供体制の充実に努めます。
*提供する情報量の充実をめざします。
*ホームページについて、引き続き画面の改革、掲載情報量の豊富化をめざします。
*リーフ、パンフレットなどの充実をめざします。
  *機関紙「ニュースペーパー」、メールマガジンは内容の充実をはかります。とくに「ニュースペーパー」については掲載内容も含め検討します。

②組織の運営
(ア)平和フォーラムでは、常任幹事会、運営委員会を定期的に開催すると同時に中央・地方組織責任者会議、全国活動者会議など必要に応じて開催し、とりくみの意思統一を深めます。また運動目的に合わせて課題別委員会を設置します。

(イ)原水禁では、常任執行委員会を定期的に開催すると同時に、必要に応じて専門部、専門委員会を設
置し、課題別のとりくみを推進します。また各種集会では、可能な限り運動交流部会を開催し、意志統一と
交流を深めます。引き続き、平和フォーラム運営委員会と原水禁常任執行委員会を合同で開催します。

(ウ)運動の重点化、年中行事型運動の見直し、運動スタイルの見直しなど運動全体の改革を行います。

(エ)各ブロック協議会を確立し、各都道府県組織を強化するとともに、地域社会への影響力の拡大をめざします。

(オ)組織体制や運動づくりを男女共同参画の視点で行います。

(カ)常任幹事会のもとに組織検討委員会を設置し、長期的視野にたった運動と組織のあり方を協議し提
言をまとめます。また、その課題検討のために、組織検討委員会・作業委員会で議論を深めます。

(キ)運動の前進と継続のため、財政基盤の確立と効率的な執行に努めます。

(ク) 沖縄の闘いの強化と全国への情報発信などのため「平和フォーラム沖縄事務所」を継続します。

③組織の拡大と連携
(ア)平和フォーラムの運動を進める上で労働組合の参加は不可欠であり、ナショナルセンターの連合中央、地方連合との連携を強化します。

(イ)引き続き労働団体、市民団体、平和団体に加盟を呼びかけます。立憲フォーラムをはじめとした国会議員会員や立憲ネットワークをはじめとした自治体議員の拡大も含めてとりくみを強化します。

(ウ)運動の拡大をめざして、平和団体、市民団体、人権団体との連携を強化します。研究者、文化人との連携も強化します。

(エ)国際的平和団体、反核団体、市民団体、労働団体などと連帯し、国連や関係政府に働きかけると同時に運動の国際連帯を強化します。とりわけ東アジアを重点とした関係強化を図ります。

(オ)制度・政策活動の充実に向けて、他団体、政党・議員との連携を強化し、政府・各省・地方自体・関係企業などとの交渉力を強めます。また政策課題に対応した立憲フォーラムをはじめとする議員団会議、議員懇談会との連携を強化します。

以上

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