運動方針
2010年04月21日
2010年度 主な課題
以下は2010年4月21日に開かれたフォーラム平和・人権・環境第12回総会において決定された2009年度総括と2010年度運動方針です。
1. 運動の展開にあたって
1) 特徴的な情勢について
- 三党連立政権誕生
2009年8月30日の衆議院総選挙において、民主党は308人を当選させるという歴史的勝利を飾りました。民主党・社民党・国民新党は、「政権交代という民意に従い、国民の負託に応えることを確認する」とする連立合意を結び、9月16日、三党連立新政権を発足させました。これは、1955年の保守合同以来の本格的政権交代と言えます。このことが、総選挙の結果として国民の選択によって成し遂げられたことは、日本の民主主義の現時点での到達点として重要です。 - 不透明な憲法改正の動向
2006年の教育基本法改悪から一貫して危機的状況にあった憲法改悪の動きは、政権交代によって、止まっているかのようにみえます。しかし、憲法審査会の始動をはじめとして改憲手続きへのプロセスは残ったままであり、民主党は、憲法改正について「2005年にまとめた『憲法提言』をもとに自由闊達な憲法論議を行」うとしています。平和主義・人権尊重・民主主義の憲法理念を揺るぎないものにするとりくみが求められます。また、与党内には「集団的自衛権の行使」に言及する声もあり、解釈改憲の方向も懸念されます。 - 孤立化する市民生活
民主党は「生活が一番」を合い言葉に衆議院総選挙を闘いました。新自由主義を基本とした旧政権の政策は、公共サービスの低下と所得格差を増大させ、特に地方経済の衰退を招きました。そのようななかで、新政権に期待するものは大きいと言えます。社会全体が個人間の関係性の希薄化の傾向を強め、派遣村やネットカフェ難民、3万人を超える自殺者に象徴されるような個人の孤立化を招いています。「生命」を基本とした人権の問題として極めてきびしい状況にあり、雇用と生活を守るとりくみは、人権問題としてとらえるべき状況にあります。 - きびしさ増す、オバマ新政権
米国のオバマ大統領は、政権発足から1年をすぎました。プラハ演説やノーベル平和賞受賞などといった国際世論の期待感も高く、対話と協調の外交路線は評価できます。しかし、国内では失業率も発足時より悪化し、経済対策も大きな成果を上げずにいます。また、アフガン情勢も悪化の一途をたどっています。厭戦感と失望感の広がりのなかで、今年1月の上院議員補欠選挙において民主党が敗北するなど、きびしい政治情勢に直面しています。 - 情勢は核兵器廃絶へ
米国オバマ大統領が「核兵器を使用した国の道義的責任」に触れ、核兵器廃絶に言及したプラハ演説以降、米ロ両国の間で第一次戦略核兵器削減条約(STARTⅠ)の後継条約が2010年4月8日に調印されるなど、核兵器廃絶の流れがすすんでいます。しかし一方で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の2度目の核実験、イランのウラン濃縮技術の開発、NPT条約未加盟国のインドの核保有が認められるなど、核拡散の動きが広がっています。2010年5月には、NPT再検討会議が開催の予定となっており、核廃絶へ、より踏み込んだ議論ととりくみが要請されています。
新政権は、旧政権における米国との核密約についての調査をおこない、その実態が明らかになりました。日本の国是とする「非核三原則」の法制化による、より厳格な姿勢が求められます。 - 普天間・辺野古問題5月決着へ
日米両政府が締結した「在沖米海兵隊グアム移転協定」および「SACO普天間基地返還合意」にともなう新基地建設問題について、新政権の政策合意では、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と表現されました。米国側は「辺野古案は日米の約束であり、変更は許されない」とする強い圧力をかけていますが、米軍再編の一環である米第1軍団司令部の神奈川県キャンプ座間移駐は撤回されており、再編も情勢のなかで常に見直しの対象であることを示唆しています。
鳩山首相は、第173回国会の所信表明演説で「沖縄の方々が背負ってこられた負担、苦しみや悲しみに十分に思いをいたし、地元の皆さまの思いをしっかりと受けとめながら、真剣にとりくんでまいります」としました。移転先の見直しを、5月をめどに提案するとしています。
2010年1月24日、名護市長選挙がおこなわれ、新基地建設反対を明確に主張した稲嶺進さんが当選しました。新政権が辺野古への基地建設の見直しを模索していることやこの間の北部振興策が目にみえる効果を上げていないことなどが影響したと思われます。地元市長が反対の立場に立つこととなったため、沖縄県知事の新基地建設の主張も崩れることとなりました。普天間基地の即時返還と辺野古新基地建設撤回に向けた、沖縄県民の意志結集がはかられています。新しい日米関係の構築のためにも、その実現が望まれます。 - 日米安保50年、新しい日米関係を!
今年で1960年の新日米安保条約締結から、50年を経過します。マスコミの多くは辺野古新基地建設問題への新政権の対応について、「日米同盟の危機」といった扇情的記事を確実な根拠もなく掲載してきました。東西冷戦のなかで締結された日米安保条約に基づく日米関係は、東アジアを重視する新政権のもと、新たな時代を迎えたと言えます。核の傘や強大な軍事力に頼る安全保障のあり方は、グローバル化による国境の希薄化と国際的テロが懸念されるなかで、変わらざるを得ない情勢と言えます。非軍事による、より広範な地域の安全保障のしくみが要求されています。 - 新しい安全保障、非軍事国際貢献活動へ
新政権は、新しい防衛大綱の策定を予定しています。専守防衛の枠組みのなかで、2010年度予算では、ミサイル防衛計画(MD)が認められることとなっています。MDについては、政府内でも、その有効性に疑問の声があがっています。日本の安全保障をどう考えるかということが問われることとなります。新政権の下でも、米国や国連の要請による自衛隊の海外出動が懸念されます。平和フォーラムが提起する「平和基本法」の論議をすすめ、非軍事による民生支援などを中心とした国際貢献のとりくみをすすめることが要請されています。 - 解決すべき課題多い東アジア関係
朝鮮半島を植民地化した1910年の韓国併合条約の強制締結から100年がたちました。しかし、靖国問題や歴史教科書問題など、日本政府の歴史認識を問われる課題は依然として解決されず、戦後補償も進展していません。日本と東アジア諸国に横たわる課題は大きいと言えます。
2006年の安倍晋三首相(当時)と胡錦濤中国国家主席との合意ですすめられてきた「日中歴史共同研究」は、2010年1月31日報告書が発表されました。両国の見解には相違点はあるものの、日中戦争の項では、日本側が「中国に深い傷跡を残したが原因の大半は日本側がつくった」とし、盧溝橋の発砲事件も両国とも偶発的としながらも、日本側から戦争に突入していく点では一致しています。被害者数にはいまだ隔たりはありますが、南京事件での日本軍の強姦・略奪・放火などの事実については異論がありません。相互の歴史認識の共通理解をつくり将来の豊かな関係性を構築するためにも、さらなるとりくみが必要とされています。
一時中断していた6カ国協議は、米国や中国の外交努力によって復活のきざしもみえてきています。しかし日本は新政権発足後も、北朝鮮に対する制裁措置を継続し、2002年の「日朝ピョンヤン宣言」で合意した国交回復への努力はみえません。新政権は、東アジア共同体の構想をかかげ、米国一辺倒であった関係の転換を提起しています。制裁解除の実施と対話を求める努力が重要となっています。 - 歴史歪曲教科書、横浜でも採択される
沖縄戦の集団死への日本軍関与を否定した2007年の教科書検定意見の根拠となった「大江・岩波沖縄戦裁判」では、地裁・高裁で「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」側敗訴の判決が下されました。根拠は大きく揺らいでいますが、文科省は依然として検定意見の撤回には応じていません。
2010年から2011年度使用教科書の採択において、横浜市や愛媛県今治市・上島町で新たに歴史歪曲教科書が採択されました。政権交代後も広がる歴史歪曲教科書は問題です。1995年の村山首相談話が政府の公式見解とされているなかにあって、歴史観のダブルスタンダードは許されません。
愛国心と公共への奉仕が強調された2006年改悪の教育基本法のもとで、新しい指導要領に基づく教科書検定・採択がすすみます。歴史歪曲教科書への対応が求められます。 - 人権政策の提案、早急な政権内合意を
世界では、国際人権規約のほか、人種差別撤廃や女性、子ども、移住者、障碍者、死刑廃止など各分野におよぶ30の国際人権条約が積み上げられたほか、さまざまな分野で人権確立がすすめられてきました。しかし、日本は12の条約に加入したにすぎません。批准した条約も留保や未批准部分があり、人権侵害の被害者に対する救済制度は世界水準から遅れています。新政権は第174回国会において、労働者派遣法改正案、永住外国人地方参政権付与法案、取調べ可視化法案、夫婦別姓法案など人権関連法案の提出を予定していますが、与党内部においてまだ異論もあり、先行きは不透明な状況です。
自民党政権においては、日本の人権状況は低いレベルに抑えられてきました。新政権の下で、人権救済を専門に扱う独立性の高い行政機関を実効性あるものとして法制度化することや、差別を禁止・処罰する法律の制定が必要となっています。国際水準と国内状況のギャップを埋めるとりくみが要請されています。グローバル化がすすむなかで、人権のグローバルスタンダードを確立するためにも、とりくみを強化することが必要です。 - 再生可能なエネルギー中心へ
オバマ米新大統領は、就任にあたって「グリーンニューディール政策」を提唱し、太陽光発電などの再生可能なエネルギー中心の社会づくりとそのことによる雇用の創出を提唱しました。再生可能なエネルギーへの移行に積極的なEU諸国は、2020年までに総エネルギーの20%を太陽光や風力などによってまかなう計画をかかげています。世界のエネルギー政策は、脱原子力・再生可能なエネルギー優先へと変化しつつあります。日本国内においても、新政権が太陽光発電の固定買い取り制度を導入するなど、再生可能なエネルギーへの国民的関心が高まっています。 - 破たんする核燃料サイクル計画
高速増殖炉「もんじゅ」は、1995年のナトリウム漏出事故以来、稼動することがないまま膨大な予算を浪費してきました。六ヶ所再処理工場においては、ガラス固化体の試験でトラブルが発生し、工場稼動のめどが立っていません。「もんじゅ」や六ヶ所再処理工場などの核燃料サイクルシステム計画は、現時点で破たんしたと言わざるを得ない状況にあります。「もんじゅ」再稼動の動きは、2010年6月に福井市で開催予定のアジア太平洋経済協力(APEC)エネルギー大臣会合開催にあわせた政治的判断が優先されているとの指摘もあります。危険な核燃料サイクルシステム計画を放棄し、再生可能な自然エネルギーを中心としたエネルギー政策へ転換することが求められています。 - 危険なプルサーマル計画
2009年12月2日、九州電力は、玄海原発3号機において、MOX燃料(使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物による燃料)による国内初のプルサーマル発電を強行しました。また、四国電力伊方原発3号機でも実施されました。
今年中に中部電力浜岡原発4号機、関西電力高浜原発3・4号機での実施が予定され、2015年までには15~18基の原発でプルサーマルが実施される計画となっています。危険な計画を、使用済みMOX燃料の処分方法も未定のまま推進することの背景には、核燃料サイクルシステムの遅れ、増加する余剰プルトニウムと核拡散の問題などがあります。
経済産業省は、プルサーマルに同意した自治体に対して支払う、最大30億円の交付金を新設することを関係自治体に通知しました(2010年2月1日)。2010年7月までに同意すると30億円、その後は時の経過に対応し額が減少するというものです。このような、地方に対して交付金を好餌として原発政策を押しつける政治手法は、米軍基地建設やダム建設などにおいて批判されてきたもので、決して地方振興の役に立ちません。このような政治手法からの脱却が求められていることを忘れてはなりません。 - 低迷する食料自給率
日本の食料自給率は40%程度を推移し、その多くを輸入に頼ることとなり、食の安全と安定確保が課題となっています。第一次産業の就業人口は5%を割り込み、その低下に歯止めがかかりません。また担い手の高齢化がすすみ、後継問題は深刻です。さらに、農水産物などの価格が低迷するなか、所得補償も困難な状況となっています。新政権は、農業などの従事者への「戸別所得補償制度」の導入を提起しています。農山漁村再生のとりくみは、食料自給率向上や雇用の創出の観点からも喫緊の課題となっています。 - COP15乏しい成果
低炭素社会に向けた気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)は、2009年12月、コペンハーゲンで開催されました。参加各国の対立によって、合意には法的拘束力を欠くこととなり、不満足な内容となりました。主要排出国55ヵ国は、2020年までの中期目標を1月末までに条約事務局に提出しました。主要排出国が排出削減を国際社会に正式に約束したことで、削減への一定の効力が期待できます。しかし新興国側は「目標はあくまで自主的なもの」としており、第16回締約国会議(COP16)で新興国のとりくみを含む次期の法的枠組みの成立については不透明なものとなっています。
日本は中期目標を2020年までに90年比25%削減として提出しました。地球温暖化防止に対する新政権の意欲(いわゆる「鳩山イニシアティブ」)は評価できます。しかし一方で、発表された地球温暖化対策基本法案は原発活用論などの問題も含まれています。 - 「人間の安全保障」国連計画すすまず
グローバル化のすすむ世界において、国連は「人間の安全保障」の考えに基づいて、極度の貧困と飢餓の撲滅、普遍的な初等教育の達成、幼児死亡率の引き下げ、環境の持続可能性の確保など8項目からなる「ミレニアム開発目標(MDGs)」を提起していますが、2015年の予定期間内での実現はほぼ不可能となっています。現在、世界では10億人を超える人々が飢餓の恐怖にさらされています。米国の金融危機から端を発した経済恐慌は、新自由主義の行き詰まりを明確にしました。行き過ぎた市場経済優先は世界の格差をさらに拡大していきます。今後、世界では食料や水などの争奪が戦争の原因となるとの指摘もあり、地球規模での資源の共有と再分配へのとりくみが、重要な課題となっています。 - 食の安全追求を、消費者庁創設
放射線照射食品、遺伝子組み換え(GM)食品、クローン動物由来食品、牛海綿状脳症(BSE)問題など、食の安全が問われる状況があります。また、産地や原料の偽装、輸入食品や特定保健用食品の安全性など、食をめぐる不安・不信がつづいています。2009年9月、「消費者行政の一元化」をめざすとして、「消費者庁」と監視機能をもつ第三者機関「消費者委員会」が創設されました。消費者の立場に立って、食の安全性を徹底して追求する行政のあり方が求められています。
2) とりくみの基本スタンス
- 新政権下におけるとりくみ
平和フォーラムは、2009年に結成10年を迎えました。とりくみの基本的スタンスである「人間の安全保障」の実現、とりわけ日本国憲法の理念の実現に向けて、2009年9月の新政権の発足後、基本的により可能性が広がったとの見地から、平和フォーラムは以下の点を踏まえ、めざす政策実現に向けて全力でとりくむことを確認してきました。さらなる運動の展開を追求していくことが重要です。
1.旧来の勢力の抵抗と巻き返しが必至であること
2.連立政権を支持すること
3.従来の抵抗・対決型から政策実現型へ運動の組み立て方を転換すること
4.これまでの平和フォーラムの方針を堅持し、新政権に対して政策の転換や充実を求めていくこと
戦後初とも言える政権交代のなかで、連立与党は多くの場面で試行錯誤を繰り返しています。旧来の政権からひきついだ政策には、与党内での議論が追いついていない状況も散見されます。運動組織ではそのことが失望感につながる場合があります。私たちは、長期的視野に立ってめざす方向をつくり上げていかなくてはならないと考えます。その意味では、新政権において政策を共有できる民主リベラルの勢力と協力・連携し、中・長期的に、その勢力の拡大と平和フォーラムのとりくみの共有化をはかることが重要な課題となります。 - 連帯と運動の広がりを求めるとりくみ
2008年7月の「原子力空母の横須賀母港化を許さない全国集会」において、平和フォーラムは結成以来最高の1万5千人を全国から結集して、運動を展開しました。現地実行委員会の設置と全国オルグの実施などのとりくみの成果と、平和運動への中央組織・地方運動組織の理解の深まりがありました。2009年10月の原子力政策の転換を迫る「NO NUKES FESTA 2009」においても、衆議院総選挙後の困難な時期にもかかわらず全国から7,000人の結集が得られました。今年1月30日の「チェンジ日米関係! 普天間基地はいらない・辺野古新基地建設を許さない全国集会」にも、6,000人が結集しています。この間、市民の方々の集会参加が目立っています。一方で、自民党政権の下では困難であった人権課題も動きを見せ、これまでねばり強く運動を展開してきた市民や組織がとりくみを活発化しています。イラク戦争以降のアフガンやパレスチナの実態などへの厭戦感の広がり、米国のオバマ新大統領や新政権の鳩山首相に象徴される平和や民主主義実現の期待感、加えて政権交代を実現した市民社会の高揚が背景にあります。平和フォーラムは、この動きの結集軸として、市民社会の要求を新政権内で実現していくためのとりくみを強化していきます。
原水禁世界大会のとりくみでは、連合・核禁会議と連帯して核兵器廃絶へのとりくみをすすめてきました。2010年5月には、5年ごとに開催されてきたNPT(核不拡散条約)再検討会議が開催予定となっており、2009年5月のキックオフ集会以降、街頭行動も含めて「核兵器廃絶1000万署名」にとりくんできました。NPT再検討会議の席上に届けるとともに、オバマ大統領のプラハ演説以降の核廃絶の機運のなかで連帯を強化しさらなるとりくみが求められています。平和実現に向けて多くの課題で議論を深め連帯した運動を展開することが求められます。 - 2010年をめぐる重点的とりくみ
- 新しい米国・東アジア諸国との関係構築を求めるとりくみ
2010年は、新日米安全保障条約(60年安保)から50年の節目となります。東西冷戦と朝鮮半島の南北分断など、第2次世界大戦後の東西対立構造のなかでの日米関係とは大きく異なり、東西対立の融解のなか、国境を越えて人々が交流するグローバル化した世界では、自ずと各国間の関係性の再構築が求められています。平和フォーラムは、「武力で平和はつくれない」ことを基本に、非軍事的構想に基づいた「安全保障」を求めてとりくみます。また、そのことを基本に「新防衛大綱」策定の問題にもとりくみます。
すすむ米軍再編については、新しい日米関係についての論議を優先しつつ、基地の縮小・撤去、地位協定の改定を基軸にすすめることが重要です。その意味で、普天間基地即時返還、辺野古新基地建設撤回の実現は喫緊の課題です。
一方、韓国併合条約締結、朝鮮半島の植民地化から100年が経過します。この重要な節目を、東アジアとの友好関係の構築の機会としなくてはなりません。新政権が東アジア重視の政策を提唱していることを踏まえ、戦後問題を精算しアジア外交の新しい地平を切り開くことが重要です。侵略戦争や植民地支配への反省にたった国家的歴史観の構築や戦後補償や靖国問題の解決、朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化など、平和フォーラムはこれらの課題に重点的にとりくみます。 - 再生可能なエネルギー中心に政策転換を求めるとりくみ
オバマ米大統領の「グリーンニューディール政策」の提唱から、環境を基軸に再生可能なエネルギー関連するとりくみが世界で注目されていますが、新政権は、将来のプルトニウム利用を基本とした原子力エネルギー中心の旧来の政策に固執しています。平和フォーラム・原水禁は「核と人類は共存できない」との理念を基本に、原子力発電、とくにプルトニウムを使用する核燃料サイクルシステム計画の問題点について指摘し、計画の推進に反対してとりくんできました。再生可能なエネルギーの現状と破たんしている核燃料サイクルシステム計画を見据え、再生可能なエネルギーを中心にした政策への転換を求めることを重点にとりくみをすすめます。 - 人権の世界基準を求めるとりくみ
新政権は、旧政権が果たし得なかった人権課題について、その実現に向けた議論をすすめています。取調べ可視化や夫婦別姓の課題、永住外国人地方参政権などグローバルスタンダードの確立に向けたとりくみを強化しなくてはなりません。旧政権の下では国際人権条約の批准は進展しませんでした。世界に開かれた日本社会の構築のためにも、運動の展開をすすめることが重要です。
2. 平和・人権・民主主義の憲法理念の実現をめざすとりくみ
- 憲法改悪阻止に向けたとりくみ
平和フォーラムは、憲法の前文・第9条の平和主義、第3章「基本的人権」や第10章「最高法規」で定めた憲法の重要部分の改悪に反対するとともに、憲法理念の実現をめざすことに基本的なスタンスをおき、東北アジアの平和に向けたとりくみや、人々の「命」や生活を重視する「人間の安全保障」の具体化をめざしてきました。そして、改憲手続法の見直しをはかること、米軍再編などとかかわりの深い「集団的自衛権」の行使に向けたなし崩し的な解釈改憲を許さないこと、そのためにも政権交代させることに、当面する焦点をあてて、「武力で平和はつくれない! 9条キャンペーン」を各地ですすめてきました。
全国各地では、5月3日を中心とした5月の憲法月間に東京の「政権交代・生存権・司法をめぐって憲法を語る」をテーマにした「施行62周年憲法記念日集会」をはじめとした集会・行動をとりくんだほか、「9の日」などの定例や節目の日のとりくみを総選挙の動きも踏まえながらおこないました。
2009年9月に誕生した鳩山新政権は、政権発足に先立つ「連立政権樹立にあたっての政策合意」で、「憲法」について、「唯一の被爆国として、日本国憲法の『平和主義』をはじめ『国民主権』『基本的人権の尊重』の三原則の遵守を確認するとともに、憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる」と明記しました。 - 「改憲手続法」「集団的自衛権」をめぐって
2010年5月に施行される「改憲手続法」については、自公政権与党が2009年6月に衆議院で憲法審査会規程の採決を強行し、これに抗議打電行動をとりくみました(2009年6月10日平F発第22号)。政権交代後、内閣特命担当大臣である福島社民党党首は憲法理念を実現する第46回大会のあいさつで、「社民党が連立政権の一員である限り憲法審査会は動かさない」と明言しており、院内では動いていません。しかし、「改憲手続法」は5月18日に施行されることとなり、憲法改正のプロセスは成立します。新憲法制定を主張する動きも活発化している中で、参議院特別委員会での18項目特別決議などを活かし、法の見直しを求めるとりくみが重要となります。
また、総務省は施行に向けて、2009年度には50億円近くの「国民投票制度準備等関係経費」を予算化し、大量のリーフレットやポスターを作成して宣伝したり、投票人名簿のシステム構築をすすめ、主権者の意思を無視した既成事実化がはかられましたが、2010年にも減額したとはいえ21億円を概算要求し、先の事業仕分けの対象とはなりませんでした。既成事実化の動きを中止させなければなりません。
「集団的自衛権」の行使については、鳩山首相は「現政権で考え方を変えるつもりはない」と明言しました。しかし一方で、平野官房長官が変更の可能性に言及したことは問題です。憲法理念に基づいて、対話と協調、外交を軸とした政治への転換を実現させるためにも、「集団的自衛権の行使は許されない」とする政府見解を変更させてはなりません。 - 「平和基本法」をめぐって
大きな転換点にあるなか、平和・軍縮への道筋を切り拓くため、「平和基本法」の確立に向けたとりくみが重要です。憲法第9条を具現化するには、日米軍事同盟・自衛隊の縮小・改革とそのための基本法が不可欠です。平和フォーラムは、①国家の交戦権否定、②集団的自衛権禁止、③非核三原則、④武器輸出三原則、⑤海外派兵禁止、⑥攻撃的兵器の不保持を条文に明記し、⑦文民統制原則、⑧国連中心主義をかかげること。さらに、自衛隊を改編し、①国土警備隊、②平和待機隊、③災害救助隊に分割すること。当面存置される「国土警備隊」は、組織・任務・装備の面で、「陸海空その他の戦力」に当たらないものに限定すること。大幅に削減される予算・人員・施設を、「災害救助」と「国際協力」分野にふりむけ、憲法前文と9条にふさわしい日本の姿を世界に示すこと―などを内容とする「平和基本法」により、まず東アジアに「EU型共通の安全保障」を実現、最終的に国境を越える地球ぐるみの「人間の安全保障」へと発展させていく大きな流れを政治のなかに活かしていくことを提起しています。 - 「憲法理念の実現をめざす大会(護憲大会)」について
憲法理念の実現をめざす第46回大会(長野県長野市)は、「対話と協調の世界を求め、市民政治の新時代に」と題して、9月の政権交代で誕生した鳩山新政権のもとでいかに憲法理念を実現するかを討議する場となりました。2009年は、第45回香川県高松大会が大会日程を当初の11月から1月に変更したため、年2回の開催となりました。総選挙と政権交代後のさまざまな動きと日程が重なりましたが、全国47都道府県、とりわけ長野県内各地からあわせて約2,800人が参加し、会場はいずれも盛会となる熱気あふれる大会となりました。政権交代後初の大会であるとともに、護憲大会にはじめて現職大臣が列席するとともに、シンポジウムのパネリストとなり、「憲法理念の実現」を従来以上に体感させるものとなりました。期間中に連日速報ニュースを発行するなど地元長野の献身的なとりくみで成果ある大会となりました(報告・記録の詳細は平和フォーラムホームページに掲載)。
★2010年度運動方針
- 戦争被害の悲惨な実相などを明らかにしながら「軍事力による平和」という逆行した流れを許さず、人々の「命」(平和・人権・環境)を重視する「人間の安全保障」の政策実現を広げていく「武力で平和はつくれない! 9条キャンペーン」としてすすめます。
- 米軍再編、自衛隊増強などを許さないとりくみと連携して、「集団的自衛権の行使」に向けた憲法解釈変更を許さないとりくみをすすめます。
- 毎月の定例行動(9の日行動)や全国共同行動などのとりくみをすすめます。
- 民主党、社民党との連携をいっそう強化し、衆参両院の憲法審査会を始動させず、改憲手続法の参院特別委での18項目特別決議などを活かし、法の見直しを求めるとりくみをおこないます。
- 5月3日の「施行63周年憲法記念日集会」(東京・日本教育会館大ホール)をはじめ、憲法記念日を中心に5月を憲法月間とした全国各地で多様なとりくみをすすめます。自治体などに対して、憲法月間にその理念を活かした行事などの実施を求めます。
- 憲法問題の論点・問題点整理をおこなうため、適宜、課題に応じて「憲法学習会」をおこないます。中央・東京での開催とともに、ブロックでの開催を奨励し協力します。
- 憲法前文・9条改悪の動きに対抗する憲法理念を実現し、立憲主義を確立するとりくみとして、日米軍事同盟・自衛隊縮小、「平和基本法」の確立、日米安保条約については、平和友好条約に変えるとりくみをすすめます。
- 平和基本法プロジェクト(軍事評論家の前田哲男さんなどで構成)のまとめた案を活かして「平和基本法案要綱」を作成し、討議をすすめます。そのため、民主党・社民党など政党への要請をすすめます。書籍「平和基本法」を各地で活用します。各団体・地域(ブロック)での学習・討議集会をすすめます。
- 本年度の「憲法理念の実現をめざす第47回大会」(護憲大会)は、憲法をめぐる動きが重要な局面にあることを踏まえて、下記日程で宮崎県宮崎市において2,500人規模で開催します。
11月6日(土)午後 開会総会(サンホテルフェニックス国際会議場)
11月7日(日)午前 分科会(宮崎市内)
11月8日(月)午前 閉会総会(宮崎観光ホテル)
3. 東アジアをはじめ世界の平和と安全保障に関するとりくみ
1) 平和実現へのとりくみ
- 米軍再編と沖縄の動き
日米両国政府は2009年2月17日に、「海兵隊グアム移転協定」を結びました。この協定に対して、沖縄県内では強い反発が起こりました。3月25日には県議会が「グアム移転協定に反対する意見書」を賛成多数で採択し、4月6日・7日の両日には県議会の代表団が上京して政府や衆参両院に対する要請行動をおこないました。平和フォーラムは沖縄上京団を迎えて、社会文化会館で「グアム移転協定反対 沖縄上京団に連帯する4・6緊急集会」(2009年4月6日・250人)を開催しました。
8月におこなわれた総選挙で、政権交代が実現しました。新政権は、普天間基地の閉鎖と辺野古新基地建設の中止に向けて大きく動きはじめました。これを受けて沖縄では、「普天間基地の即時閉鎖・辺野古新基地建設反対!9・18県民集会」「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する11・8県民大会」の2回の集会がおこなわれました。
沖縄の動きと連帯するために、平和フォーラムは市民団体と協力して、「普天間基地はいらない 辺野古・新基地建設を許さない 12・15緊急集会」(2009年12月15日・星陵会館・700人)を開催しました。また「チェンジ日米関係! 普天間基地はいらない・辺野古新基地建設を許さない1・30全国集会」(2010年1月30日・日比谷野外音楽堂・6,000人)を開催しました。
2009年中に、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機・F22の嘉手納基地への一時配備が、2回おこなわれました。基地周辺の自治体や住民は、F22の恒久的な配備につながるのではと警戒しています。6月5日には北谷町議会が、15日には嘉手納町議会が、F22配備に反対する決議・意見書を採択しました。F22の一時配備に加えて、岩国基地や厚木基地、また在韓米空軍基地などからの外来機の飛来によって、嘉手納基地周辺の騒音が激化しています。
嘉手納基地の騒音被害については、飛行差止めを求める訴訟が最高裁でおこなわれています。平和フォーラムは、新嘉手納基地爆音訴訟原告団と沖縄平和運動センターの要請に応じて、最高裁への署名活動にとりくみました。訴訟団は381,321筆の署名を最高裁に提出しました。
2004年には辺野古では防衛施設庁の工事強行着工に対して座り込み阻止闘争がはじまり、同年に普天間基地のヘリコプターが沖縄国際大学に墜落しました。平和フォーラムはこの2つの事件を受けて、国会議員に働きかけて、「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」の結成を実現し、市民団体と協力して東京圏で数度にわたる沖縄集会を開催するとともに、沖縄と政府・国会との橋渡しに努めてきました。こうした努力が、政権交代によって成果として現れはじめました。2010年度は普天間基地の閉鎖と辺野古・新基地建設の中止を現実のものとするためにいっそうの努力が必要です。 - 米軍再編と神奈川の動き
原子力空母ジョージ・ワシントンは2009年1月から、横須賀で整備作業をおこなっていました。この整備の対象に原子炉の一次冷却水系の設備が含まれていること、また整備作業で出た「低レベル放射性廃棄物」約1トンを貨物船に積み込み米国向けに搬出していたことが明らかになりました。横須賀港での原子炉の整備や、放射性廃棄物を船から搬出することは、原子力艦船の日本寄港にあたって米海軍が約束した「エード・メモワール」(1964年)や、原子力空母の横須賀母港化にあたって米国が提出した「ファクトシート」で記載した内容に違反する行為です。
こうしたなかでジョージ・ワシントンの横須賀配備から1周年に際しては、「空母母港化36周年 原子力空母ジョージ・ワシントン横須賀基地母港化1周年抗議 原子力空配備撤回を求める9・26全国集会」(2009年9月26日ヴェルニー公園・3,500人)を開催しました。
米海軍横須賀基地と原子力空母ジョージ・ワシントンについては、現地の市民団体や三浦半島地区労、神奈川平和運動センターの活動により、さまざまな問題が明らかになってきました。今後も米軍基地に対して、情報公開を求めるとともに、監視活動などを実施することが大切です。 相模原市と座間市にまたがる米陸軍キャンプ座間では、現在は米国ワシントン州にある米陸軍第1軍団の司令部の移転が予定されていました。これに対して神奈川平和運動センターや地域の市民団体は司令部移転に反対する運動をつづけてきました。米国はこれまでに第1軍団前方司令部の移転を実施しましたが、司令部本体の移転は事実上中止になりました。 - 米軍の訓練移転と民間港湾使用
沖縄県キャンプ・ハンセンに駐留する海兵隊の実弾射撃訓練の本土移転は、2009年度は4回予定されていましたが、海兵隊の運用上の理由で2回が中止となり、北富士演習場(山梨県)と、日出生台演習場(大分県)の2回が実施されました。詳細は以下の表のとおりです。
米軍の訓練実施にあたっては、各地の地域運動組織が反対運動や申し入れなどを実施しました。実弾射撃演習は、当初は155ミリ榴弾砲のみが対象でしたが、最近は機関銃などの小火器の射撃訓練もあわせておこなわれています。演習の回数が減少するなかで、内容の拡充がすすんでいます。また日本政府から関係自治体への情報提供も遅くなっています。こうした問題へも対処しなければなりません。
なお2010年度は4回が予定されています。2010年度の実施予定
回数 実施演習地 実施日時 第1回 矢臼別演習場 5月中旬~6月中旬 第2回 東富士演習場 9月上旬~10月上旬 第3回 王城寺原演習場 11月上旬~12月上旬 第4回 日出生台演習場 1月中旬~2月中旬 米軍戦闘機の訓練移転は、2009年度には5回が実施されました。詳細は以下の表のとおりです。米軍の訓練実施にあたっては、各地の地域運動組織が反対運動や申し入れなどを実施しました。
2009年度の実施状況
訓練地 日程 移転部隊 千歳基地 4月20日~4月23日 岩国基地 三沢基地 7月25日~8月1日 岩国基地 百里基地 10月2日~10月9日 嘉手納基地 小松基地 11月14日~11月20日 岩国基地・三沢基地 百里基地 1月29日~2月5日 三沢基地 2009年3月23日にイージス艦「ステザム」(横須賀基地所属)が、青森県・青森港に入港しました。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が発射したロケットへの対応と思われます。
また4月3日には、掃海艦パトリオットとガーディアンの2隻(佐世保基地所属)が、沖縄県の石垣港に強行入港しました。石垣港の港湾管理者である大浜長照・石垣市長は、米軍艦の入港を拒否しました。ところが中曽根外務大臣(当時)は「国の決定に地方公共団体が関与し、制約することは港湾管理者の権能を逸脱するものだと思う」と述べ、石垣市は寄港を認める国の判断に従うべきだとの見方を示しました。入港に際しては大浜市長や市議会議員、平和運動センターや市民が抗議行動を展開、港から市街地につながるゲートにピケットを張り、ケビン・メア在沖米総領事や米軍艦の艦長・乗組員の市内への立ち入りを5時間阻止しました。自治体の首長が先頭に立って米軍艦の入港に抗議したことはこれまでに例がなく、特筆すべきことです。
また米軍艦船の民間港湾入港に対しては、各地で反対運動がおこなわれました。 - 防衛政策の転換を求めるとしくみ
ミサイル防衛(MD)の全国配備がすすんでいます。2009年度には、4ヵ所の航空自衛隊基地に、地上発射型の対空ミサイルPAC-3が配備されました。詳細は以下の表のとおりです。PAC-3の配備に際しては、当該地域の運動組織による自衛隊への申し入れや、抗議行動がおこなわれました。2009年度のPAC-3配備状況
第4高射群・第14高射隊(三重県・白山基地) 6月23日 第4高射群・第15高射隊(岐阜県・岐阜基地) 8月21日 第2高射群・第5高射隊(福岡県・芦屋基地) 10月28日 第2高射群・第7高射隊(福岡県・築城基地) 12月22日 自公政権の下では、2009年中に新しい防衛計画の大綱を策定する予定でした。しかし政権交代を受け、新政権は策定を先延ばししました。私たちは、新政権の下でつくられる新しい防衛計画の大綱が、軍事力によらずにアジア太平洋地域の平和と安定に寄与する内容となるように、新政権ならびに与党3党に対しての働きかけをおこないます。
また自公政権下で作成された有事関連法案、とりわけ国民保護法については廃止を含めた抜本的な見直しを求めて、新政権と与党3党への働きかけます。
防衛問題の論議の基本には、日本の安全保障をどのように考えるかが必要です。日米安保50年にあたって、現下の世界情勢から「武力で平和はつくれない」を基本に、核および通常兵器の抑止力に依存しない非軍事による安全保障のあり方を追求することが重要です。 - 自衛隊の海外派遣
麻生内閣は、アフリカ大陸東岸のソマリア沖で多発する海賊に対処するため、自衛隊の派遣を実施しました。新政権下でも、派遣は継続されています。私たちは、ソマリア沖からの自衛隊の撤退を求めます。軍事力によらない国際貢献のあり方を、新政権ならびに与党3党に提言します。 - 国際連帯
2009年9月10日~12日にかけて、韓国で「東アジア米軍基地環境問題解決をめざす国際シンポジウム」と関連するフィールドワークがおこなわれました。この国際シンポジウムは、韓国・沖縄・日本の3地域の米軍基地反対運動が連携を深めるために一昨年からはじまったもので、昨年で2回目です。平和フォーラムからも事務局が参加して、韓国の反基地運動との交流を深めました。韓国と沖縄からは、10年度の第3回国際シンポジウムに関して、日本での開催が希望されています。
★2010年度運動方針
- 新政権ならびに与党3党に対して、普天間基地の閉鎖・返還と、辺野古・新基地建設の中止を求めるとりくみをすすめます。
- 「5・15平和行進」に全国から参加します。普天間基地包囲行動を成功させます。
- 自民党政権下ですすめられた米軍再編に対する見直しを求めるとりくみをすすめます。
- 在日米軍の訓練移転や、米軍艦船の民間港湾使用について、中止や撤回にとりくみます。
- 「非核平和条例を考える全国集会」を実施します。
- 米軍基地・自衛隊基地などの周辺住民によってすすめられている、爆音訴訟に協力します。
- 米軍犯罪の被害者によってすすめられている、被害者補償の制度化に協力します。
- 日米地位協定の改正に向けて、政府ならびに与党3党への働きかけにとりくみます。
- ミサイル防衛の推進など、自民党政権下ですすめられた軍拡の動きを止めるために、政府ならびに与党3党への働きかけにとりくみます。
- 非軍事による新しい安全保障の考えをすすめるようとりくみます。
- 自衛隊のソマリア派遣など海外派遣の中止を、政府ならびに与党3党への働きかけにとりくみます。
- 市民団体の開催する「東アジア米軍基地環境問題解決をめざす国際シンポジウム」に協力します。
- 全国基地問題ネットワークや、沖縄基地問題にとりくむ市民団体、またアジア太平洋地域の反基地運動団体との連携と協力をすすめます。
2) 東アジアの非核・平和の確立と日朝国交正常化に向けたとりくみ
日本と東アジアの平和を構築するにあたって、最重要課題は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発問題であり、日朝国交正常化です。6カ国協議は、朝鮮半島の非核化に向けて共同声明(2005年9月19日)やその後の合意が積み重ねられました。しかし、2009年4月の北朝鮮の「人工衛星」ロケット発射をめぐる対立から5月25日の2度目の核実験強行など、緊張を増しました。平和フォーラム・原水禁は東アジアの緊張を高めるものとして、北朝鮮ロケット発射前に自制を求める声明(2009年3月24日)を発するとともに、核実験に対しては強く抗議しました(2009年5月25日)。
8月以後は、クリントン元大統領、10月の中国の温家宝首相、12月のボズワース米特別代表などの訪朝と協議で、6カ国協議再開に向けたきざしがみえはじめましたが、日本では、自公政権、タカ派を中心に声高な対決姿勢が強調され、対話と協調を築くとりくみはまったく軽視されてきました。そして、制裁措置は継続を重ねたまま、朝鮮総聯関係団体を弾圧し、在日朝鮮人に圧迫を加えるばかりでした。
新政権も、「日朝平壌宣言に則り、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を誠意をもって清算して国交正常化をはかる」との方針は表明していますが、なお不透明な状況です。
平和フォーラムと日朝国交正常化連絡会(東北アジアに非核・平和の確立を! 日朝国交正常化を求める連絡会)は、事態は困難であっても重要な局面であり、日朝両国がピョンヤン宣言に基づいた交渉をすすめることを求めてとりくみをすすめてきました。7月の総会や9月の日朝ピョンヤン宣言7周年集会をはじめ月1回ペースの学習会を重ねるとともに、4月、12月には外務省や政党への要請を重ねてきました。
さらに、韓国併合100年にあたる2010年までに決定的な前進をするため、日朝基本条約構想の提案をおこない、パンフレットを発行し、国会内集会をおこないました。今後も、対話と協調、平和を求める全国的な世論形成とそのためのとりくみをすすめます。
また、日朝国交促進国民協会、在朝被爆者支援連絡会と連携したとりくみもすすめました。
★2010年度運動方針
- 連絡会への全国各地の運動組織の参加を求め、連携を強めるとともに、国交正常化に向けた世論を喚起するため、継続的に全国各地での講演会・学習会・全国行動をおこないます。
- 「日朝国交正常化に向けた私たちの提案」をもとに、ひきつづき政府、国会議員、各政党に対する要請や働きかけをおこないます。また、提案をもとにした署名運動を全国的にとりくみます。
- パンフレット「朝鮮植民地化100年を機に日朝基本条約締結を」を活用します。
- 東京では月1回程度の定期的学習会や集会・行動をひきつづきおこなうほか、必要に応じて随時集会をおこないます。
- 日朝国交促進国民協会、在朝被爆者支援連絡会をはじめ、在日の人権確立や、北朝鮮の人道支援のとりくみ、韓国の平和・人道支援運動との連携・交流・協力をすすめます。
4. 核兵器廃絶に向けたとりくみ
1) 核兵器廃絶の課題―NPT再検討会議に向けて
2万3千発もの核兵器が存在するなか、核兵器廃絶は喫緊の課題です。ブッシュ政権からオバマ政権への交代によって、これまで停滞していた核兵器廃絶の流れが活性化しようとしています。しかし、2009年5月25日の北朝鮮が2度目の核実験をおこなうなど、東北アジアに緊張がもたらされました(原水禁としては抗議声明を発出)。その後6カ国協議は停滞していますが、日米の新政権の誕生を受けて、今後の進展を注視していくことが必要です。
核兵器廃絶の機運を、今年5月に開かれるNPT再検討会議に向け、盛り上げていかなければなりません。この間、「核兵器廃絶1000万署名」を原水禁・連合・核禁会議の3団体でとりくんできました。現在約660万筆を集めており、これを日本政府と国連に提出し、核兵器廃絶の動きを促進させることをめざしています。さらに国際労働組合総連合(ITUC)の協力も得て、署名は国際的広がりをつくりだしています。署名に連動し、3団体によるさまざまなとりくみをおこないました。キックオフ集会の開催(2009年5月23日)、街頭での署名活動(2009年9月29日、10月1日、11月10日)、原水禁大会における共同シンポジウム(広島・長崎)などを展開し、核兵器廃絶の課題を確認してきました。原水禁は核兵器をめぐる課題を深化させるために、原水禁世界大会の国際会議を「NPT再検討会議に向けて―東北アジアをめぐる核状況」のテーマで開催し、分科会でも核軍縮の必要性・重要性を訴えました。
そうしたなか、日本政府が被爆国としてこれまでの米国の「核の傘」の下での抑止政策を転換し、アメリカの核政策に対して「先制不使用宣言(核の役割の限定)」「消極的安全保証」などを働きかけることの重要性が高まっています。12月には、核兵器廃絶を訴えとりくんできた国際的NGO組織「中堅国家構想(MPI)」の日本派遣団を招き、外務大臣や民主党などの議員との会談や市民との交流もおこないました。
日豪政府がすすめてきた「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」の動きに対応して、国内のNGOや市民グループとともに、積極的に発言をしてきました。12月15日にはその報告がまとまりました。核の先制不使用に触れるなど評価できる点もありますが、「東北アジア非核地帯化構想」に触れられていないなど、さまざまな問題点もあり、今後の政府の政策をしっかり監視する必要があります。これに関して2009年12月に事務局長見解を発しました。
また、新政権下で「核密約」の存在が明らかになりました。それにあわせて非核三原則のなかでの核持ち込み(領海内通過など)を許容しようとする動きが出ています。原水禁として「核密約」問題に関して声明を発しました。あらためて非核三原則の堅持を確認することが必要です。さらに、非核三原則の法制化への論議をすすめることが重要となっています。
★2010年度運動方針
- 5月に国連本部(米・ニューヨーク)で開かれるNPT再検討会議にあわせたNGOのとりくみに参加し、世界の核兵器廃絶運動との連帯・連携をはかります。また、「核兵器廃絶1000万署名」を提出します。
- 原水禁・連合・核禁会議3団体での核兵器廃絶に向けた運動の強化をはかります。
- 政府・政党への核軍縮に向けた働きかけを強化します。とくに民主党の核軍縮議連への働きかけを強化し、平和と核軍縮政策の促進をはかります。
- 東北アジア非核地帯化構想などの具体化をするために、日本政府や日本のNGOへの働きかけを強化し、具体的な行動にとりくみます。さらにアメリカや中国、韓国などのNGOとの協議を深めます。
- 「核密約」問題では、あらためて非核三原則の堅持を確認し、法制化へ向けた議論と行動にとりくみます。
- 被爆65周年原水爆禁止世界大会、3・1ビキニ・デーの前進と成功をはかります。
- 非核自治体決議をすすめ、自治体の非核政策の充実を求めます。また、非核宣言自治体協議会や平和市長会議への加盟・参加の拡大をすすめます。
2) 被爆65周年原水爆禁止世界大会/ビキニ・デーの開催について
被爆64周年原水爆禁止世界大会では、参加者数が国際会議・約100名、平和ヒロシマ集会(三団体主催)・6,500名、平和ナガサキ集会(三団体主催)・3,900名、「メッセージ from ヒロシマ 2009」・403名となりました。また、海外ゲストは6ヵ国15名(子どものゲスト含む)の参加となりました。各分科会では、初参加者が7~8割という大会の現状にあわせ、分科会を「入門編」と「交流編」に分け、参加者が選択できるように工夫しました。今後ともひきつづき参加者のレベルにあわせた内容構成について検討することが重要となっています。なお、大会への賛同団体・個人については、15団体・139個人でした。
「メッセージ from ヒロシマ 2009」や「ピース・ブリッジ 2009」への参加は昨年よりも増え、親子での参加を含め、関係者の努力が少しずつ定着しつつあります。とくに高校生のとりくみや主張には、今年も大きな共感が寄せられました。
★2010年度運動方針
- 被爆65周年原水爆禁止世界大会と国際会議を広島、長崎で開催します。
8月5日 国際会議(広島市内)
8月4日~6日 広島大会
8月7日~9日 長崎大会 - 2011年被災57周年ビキニ・デー集会を、56周年集会の成果をひきつぎ、被爆66周年原水禁世界大会に連動する集会として開催します。
5. 多文化・多民族共生社会に向けた人権確立のとりくみ
1) 実効性ある人権救済法の制定と国際人権諸条約・選択議定書の批准に向けたとりくみ
鳩山政権が誕生し、人権施策が大きく転換をしようとしています。千葉景子法務大臣は、就任記者会見で、新政権下でとりくむべき課題として、人権救済機関の設置、個人通報制度の受諾、取調べの可視化という3点に言及しました。これらはいずれも国際人権機関からの再三の勧告にもかかわらず、自公政権下ではまったく実現の見込みが立たなかったものにほかなりません。
日弁連や、当事者団体、人権市民会議などで構成された「国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動(人権共同行動)」は、未批准の国際人権諸条約を批准や人権救済機関の設置、取調べ過程の可視化に向けたとりくみを具体化するため、一連のとりくみをすすめており、平和フォーラムとしても参加・協力しました。
すでに20年を超えた1,047名のJR採用差別問題は、再三のILO勧告はもとより、司法判断も国鉄による差別・不当性を指摘しており、2009年3月の鉄建公団訴訟控訴審判決でも裁判長から早期解決が付言されました。政権交代したいま、政治解決の大きな山場を迎えています。2月16日の日比谷野音集会に中央・地方から参加・協力しました。
★2010年度運動方針
国際人権諸条約の批准促進を求めます。とりわけ、個人通報制度にかかわる条約の選択議定書の早期実現を求めます。部落解放同盟などがすすめる「『人権侵害救済法』(仮称)の早期制定を求める」署名に協力します。
- 国連の「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)にそった独立性と実効性ある人権救済機関を制度化する法律の制定、「差別禁止法」の制定に向けてとりくみます。「国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動(人権共同行動)」や日弁連と協力して新政権に対して実現に向けたとりくみをおこないます。
- 全国の自治体でより充実した「人権教育・啓発推進に関する基本計画」を策定・実行を求めるとともに、「人権のまちづくり」や「人権の核心は生存権」との認識のもとに生活に密着した「社会的セーフティネット」などのとりくみを広げていきます。また、地域・職場でさまざまな差別問題など人権学習・教宣活動をおこないます。
- JR採用差別事件のとりくみを、国鉄労働組合に協力し、要請に応じておこないます。2) 男女共同参画社会の実現に向けたとりくみ
2009年は女性差別撤廃条約採択30周年、選択議定書採択10周年でした。国際社会の流れは、あらゆる分野で女性の重要性・ジェンダーの視点を強調する動きにあります。しかし、2009年7月23日、日本政府は、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)から60項目におよぶきびしい勧告を受けるなど、日本における女性の人権確立の低さが国際的に指摘されています。とりわけ、日本は選択議定書の批准が当面する重要課題です。平和フォーラムは、I女性会議の要請に応えて「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」(JNNC)のとりくみや「女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求める」請願署名に協力してとりくみました。また、長野で開かれた憲法理念を実現する第46回大会では、「人権確立」分科会や男女共同参画のひろばで討議・交流するだけでなく、保育所を設置するなど参加環境を保証するとりくみがおこなわれました。
★2010年度運動方針
- 「男女共同参画第3次基本計画」へのCEDAWの勧告の反映と、勧告内容を基本とした民法改正・暫定的措置の実施を求めて、I女性会議などと連帯しておこないます。
- 女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求めるI女性会議など「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」(JNNC)のとりくみに協力します。
- 女性の重要性・ジェンダーの視点を強調した人権確立の国際社会の流れを活かしたとりくみをすすめます。
- 平和フォーラム自身の組織構成、諸会議をはじめ、かかわる運動全般で女性が参加できる条件・環境づくりをおこないます。
3) 地方参政権など在日定住外国人の権利確立のとりくみ
日本における外国籍住民の人権確立は歴史的にも重要課題です。定住外国人の地方参政権は、すでに欧州各国や韓国で地域社会に参画する権利として実施されており、OECD(経済開発協力機構)30ヵ国中、外国籍住民に地方参政権を与えず、出生地主義をとらず二重国籍を認めないのは日本だけ、G8国のうち地方参政権を認めない国は日本だけとなっています。
永住外国人参政権の立法化は、全国過半数の自治体議会で要望決議がされているうえ、10年前には自自公政権でも合意されたものです。当時の野党もこぞって賛成しながら、自民党内をはじめとした偏狭なナショナリズムのなかで実現できないできました。
平和フォーラムも参加する「定住外国人の地方参政権を実現する日・韓・在日ネットワーク」(参政権ネット)は、在日本大韓民国民団(民団)と協力して、韓国でアジア発の外国人地方参政権投票日である5月31日に「永住外国人に地方参政権を! 5・31集会」をおこなったほか、随時集会・院内集会などをおこなってきました。
鳩山政権が誕生したなかで動きはじめ、実現しようとしています。平和フォーラム、参政権ネットは、差別なき立法化を求めてとりくみをいっそう強化しなければなりません。
外国籍住民の排除と管理強化の動きは、この間強められてきました。先の通常国会では、「新たな在留管理制度」を導入する入管法・入管特例法改定案と住民基本台帳法が改定されました。平和フォーラムは、法案の対象となる外国籍者のほとんどは、法改定について知らされてもいないことから、この法案に反対して、とりくみをすすめました。移住連などの市民団体とともに「在留カードに異議ありNGO実行委員会」に参加し、共同声明の発表(2009年1月24日)や、5月24日の集会・デモ、院内集会、国会前座り込み行動などを重ねました。法案は修正のうえ、通過しましたが、3年後の施行に向けて、在留管理のあり方に関する15項目の附帯決議や「住民基本台帳法」の附帯決議を実効化させるとりくみなど、新たな政治状況の下で見直していくことも含めとりくみが必要です。また、非正規滞在者の正規化と難民申請者の収容の停止、入国時における外国人の指紋採取などの廃止、入国管理局の「不法滞在者」通報制度の廃止なども重要課題です。子どもの権利に立った外国人学校(朝鮮学校やブラジル人学校など)の整備など多民族・多文化共生社会の実現に向けたとりくみも重要です。外国人学校振興法制定をめざす「外国人学校・民族学校の制度的補償を実現するネットワーク」のとりくみや、在日外国人学校の中学校・高校卒業者を差別なく高校・大学受験資格を認めることをはじめ、学校教育法における「1条校」並みとしていくとりくみに協力・支援してきました。高校の実質無償化について、中井洽拉致問題担当大臣が拉致問題を理由に朝鮮学校を除外するよう要請していることが明らかになりました(4月実施時点では対象から除外)。日本に居住する在日朝鮮人に拉致問題の責任があるかのような姿勢は許せません。★2010年度運動方針
- 差別なき定住外国人参政権法案の制定に向けて、参政権ネット、民団と協力して、全国各地でとりくみをすすめます。
- 子どもの権利に立った外国人学校の整備など多民族・多文化共生社会の実現に向けたとりくみをおこないます。
- 2009年入管法改定を見直させるため、外国人人権法連絡会や日弁連のとりくみに参加・協力します。
- 無権利状態におかれた外国人労働者などの救済に向けて外国人研修生権利ネットワークなどのとりくみに協力します。
4) 司法制度・地方主権などに関するとりくみ
自公政権のもとでは、監視社会化がすすむなかで警察による人権侵害事件が多発したほか、法律違反について話し合うだけで罪とする稀代の悪法である共謀罪新設法案などが画策されてきました。また、医療の分野に司法を介在させた医療観察法を強行制定させました。
これらの動きも政権交代で大きく転換してきました。とくに取調べの可視化について千葉法相は就任記者会見で表明しました。可視化は、足利事件のえん罪判明などからも必要性が明らかになってきました。また、2009年5月に開始した裁判員制度の前提としても、えん罪を生み出さず、再審の道を開く制度保証としても、取調べ過程の可視化のほか、代用監獄制度の見直しや死刑制度の廃止が不可欠です。平和フォーラムは、日弁連を中心に、随時開かれてきた可視化実現集会に参加してきました。
また、長期にわたるたたかいをつづける狭山差別裁判のたたかいは、第3次再審の動きの山場を迎え、5月に加え、9月、11月に「狭山事件の再審を求める市民集会」がおこなわれました。そして、12月に検察に証拠開示勧告が出されるという前進をみています。
これらえん罪訴訟のとりくみとともに、司法の民主化が問われています。2009年5月21日に開始した裁判員制度は裁判官の恣意に左右されること、全員一致制ではなく多数決で決めることなど数多くの問題点があることが明らかになっています。また、総選挙の際におこなわれる最高裁判所裁判官国民審査は、主権者が裁判官の判断をチェックする重要な機会であり、2009年8月の審査では、中央選管に対して投票運営などについて要請(2009年7月22日)するとともに、自衛隊イラク派兵をすすめた竹内行夫、多くの反動的判決をしてきた涌井紀夫、裁判員制度導入責任者であり任命と同時に長官に就任をした竹崎博允の3人に「×」(不信任)を集中することを呼びかけました。しかし、棄権票を信任票にしてしまう非民主的、前近代的な投票制度がつづいたままであり、投票した人の意思が結果に反映する民主主義的な方法への改善を早急に実現させる必要があります。★2010年度運動方針
- 裁判員制度は多くの問題点があり、抜本的に見直させるとりくみをおこないます。
- 最高裁判所裁判官国民審査にかかわって、日常的な判決チェックをおこなうとともに、権利の行使として「×」を増大させるとりくみをすすめます。また、期日前投票などの改善を中央選管に求めます。
- 山場を迎えた狭山差別裁判第3次再審実現など、えん罪をなくすとりくみに参加・協力するとともに、日弁連などのとりくみに協力して「取調べ可視化法案」の成立をめざします。
- 制定前から重大な人権侵害をもたらす恐れが指摘されていた医療観察法の廃止を求めるとりくみをすすめます。
- 共謀罪の新設を許さず、盗聴法の廃止に向けたとりくみをおこないます。
- 警察公安による微罪逮捕や自衛隊による取調べ事件や情報収集増大の動きを警戒し、不当弾圧、人権侵害を許さないとりくみをおこないます。
- 地方分権を促進し、地方自治体の自主財源の確保とともに、条例制定権の拡大、拘束力のある住民投票の導入などのとりくみをおこないます。
- 反住基ネット連絡会のとりくみに協力します。
- 言論や表現の自由を暴力やテロで封じる動きを許さないとりくみを随時、おこないます。
5) 民主教育をすすめるとりくみ
- 新指導要領および2006年改悪教育基本法
新学習指導要領に基づく教科書検定基準について、2009年3月4日文部科学省は、授業時数を増やし、発展的な学習内容の制限を撤廃するとしました。子どもの負担増と学校間競争の激化や教育格差の肯定につながるなどの懸念があります。また、2006年に改悪された教育基本法に書き込まれた「公共の精神」「国と郷土を愛する態度」「伝統文化の尊重」などの教育目標遵守も求めるとしました。
この基準に基づき、教科書会社は、新学習指導要領に基づく2011年以降の教科書採択にあわせて、新しい教科書の作成作業に入っています。平和フォーラムは、歴史事実に基づく内容、過度の競争を招来させない無理のない内容、個人の権利と国民主権の憲法理念に基づく教科書を求めて、全教科書出版会社への文書での申し入れ(2009年6月16日)をおこないました。憲法の理念と子ども権利条約に基づく教育の実現へのとりくみが、ますます重要となっています。 - 沖縄教科書問題
新政権誕生にともない、沖縄県で、2007年の教科書検定意見の撤回を求める「9・29県民大会決議を実現させる会」が県民集会を開催(2009年9月26日)するとともに、川端達夫文部科学大臣と面談し(2009年11月30日)、沖縄戦をめぐる教科書検定意見問題について話し合いをもちました。県民の意見を聞く態度はこれまでの政権になかったものですが、検定意見の撤回は必要ないとの結論は変わっていません。この問題に関しては、当時の民主党鳩山由紀夫幹事長は「集団死は、日本軍の強制、誘導、関与なしには起こりえなかった」との見解を示しており、川端文科大臣の発言は、沖縄県民を失望させるものです。 - 「つくる会」教科書
「新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)」は、中学校用歴史教科書「新編新しい歴史教科書」を、今年度自由社から出版するべく検定申請をおこない、4月9日文科省は検定合格としました。内容は、ほとんど扶桑社版の教科書と変わらず、検定時には516ヵ所の検定意見が付くなどずさんなものです。扶桑社版同様に問題の多いものとなっています。平和フォーラムは「つくる会」の中学歴史教科書の偏った歴史認識と記載内容は問題であるとして「正しい歴史と憲法理念に基づく教育を求める声明」(2009年4月13日)を発出しました。
2010・2011年使用中学校用歴史教科書について、横浜市が8採択地区(全18採択地区)で、自由社版中学校用歴史教科書を採択しました。また、愛媛県今治市と上島町も扶桑社版を採択しました。低迷する採択率を引き上げるために「つくる会」などの動きが活発化している証左であり、これまで以上のとりくみが要請されます。平和フォーラムは、横浜市教育委員会および今治市・上島町教育委員会に対して、①教科書の内容が、政府見解である1995年の「村山首相談話」の歴史観に反している、②採択方法に公正を欠く、③各地区審査会などや保護者や現場教員の意向を無視しているとして、抗議声明を発するとともに抗議打電行動に全国からとりくみました(2009年8月5日・横浜市、9月7日・今治市、上島町)。今後、採択の撤回と指導要領改訂による2011年以降の採択阻止に向けたとりくみを、市民と連帯して広げていく必要があります。 - 採択地区問題について
神奈川県教育委員会は横浜市教育委員会の要請を受けて、現在18地区ある横浜市の教科用図書採択地区を1地区に統合する案を了承しました(2009年10月14日)。これは、採択地区をより細分化し、最終的には各学校がその教育課程に基づいて教科書を採択しようとする文部科学省の方針に反するもので、市民主体の教育を実現する観点から問題のあるものです。平和フォーラムは、事務局長見解を発出し(2009年10月19日)、両教育委員会に対し反対の意思を表明しています。2010年夏には、新学習指導要領に基づく教科書採択がはじまります。教科書採択が、各地域の実情を反映し、教員・保護者の意見をもとにしたものになるよう、採択地域が大きい政令指定都市・文科省などに対して、採択地区の細分化を求めていくことが重要です。
★2010年度運動方針
- 日教組、沖縄平和運動センター、現地実行委員会などと連帯して、検定意見の撤回および沖縄の県民感情に配慮する「沖縄戦条項」の制定を要求してとりくみます。大江・岩波沖縄戦裁判の大阪地裁・高裁判決の確定を求めてとりくみます。
- 日教組と連携し、教科書検定制度のさらなる弾力化・透明化へ向けた制度改革にとりくみます。政府・文科省などへの要請にとりくみます。
- 「つくる会」および「改善の会」の動向に注視しつつ、歴史を歪曲するような国家主義的教科書の不採択に向けて、日教組と連携し、運動の全国展開や広範な連帯を求めてとりくみます。
- 「村山首相談話」に示された政府の公式な歴史観に基づく教科書検定がおこなわれるようとりくみます。
- 教科書採択に関しては、教員や保護者の意見に基づき、各学校の教育課程や教育目標に対応できるよう、制度の民主化と学校採択を基本にとりくみます。
6) 「過去の清算」と戦後補償の実現と「在日朝鮮人歴史・人権月間」のとりくみ
村山首相談話を踏襲することを伝え、日韓首脳会談で「新政権は歴史をしっかりと見つめる勇気をもった政権」であると表明しました。これまで、自民党政権のもとで、日本に何よりも必要な戦争の歴史と責任に関する認識が回避され、偏狭なナショナリズムによる歪曲が横行していた事態から、重要な転換です。中国・韓国などでの新政権に対する期待感は非常に大きなものがあります。戦争についての国の責任をめぐる内外の戦後補償のとりくみに対する、国の姿勢を変更させていく大きな機会です。日中、日韓での歴史共同研究をさらにすすめ、共通認識を拡大していくことがまず重要です。
日朝・日韓関係は植民地支配の「過去の清算」が大きな問題です。2010年は韓国併合100年です。植民地支配がもたらした人権侵害の歴史についてあらためて強い認識をもつ世論を築くことが重要です。「戦争責任」とともに「植民地支配責任」をも明確にした「鳩山談話」を閣議決定させるなどのとりくみが重要になっています。
戦争中の強制労働をはじめとした人権侵害に対し、ILO(国際労働機関)や国連人権機関、「慰安婦問題」で首相の公式謝罪表明の各国議会決議や日本の自治体決議が広がっています。自公政権が回避してきた問題に、新政権が誠実に応えていくよう、アジアの市民と連携したとりくみが重要です。また、12月14日に地裁判決で敗訴した東京大空襲訴訟は、3月、8月、12月などに節目のとりくみをおこなったほか、判決前に個人署名のほか、団体署名もとりくみました。軍人・軍属ではない一般人の戦争犠牲者に対する支援も大きな課題です。
平和フォーラムは、2007年から朝鮮人強制連行真相調査団や在日朝鮮人人権協会とともに「在日朝鮮人歴史・人権週間」のとりくみを3年計画ですすめ、在日コリアンに対する現在の差別や人権侵害とともに、その歴史性を明らかにする努力をしてきました。3年間で、遺骨問題、阪神教育闘争60年と関東大震災85年、強制連行、年金問題などをテーマに、関東、関西、東海、山口など各地のとりくみや青年への奨励賞のとりくみをおこないました。2009年は、7月に横須賀で東日本集会、8月に名古屋で全国集会、10月に神戸で関西集会をおこなったほか、関東・近畿・東海地区の県・地域集会もおこないました。また、11月にはまとめの会をおこないました。2010年度以後も「在日朝鮮人歴史・人権月間」として九州などとりくみの全国化をめざして継承していきます。★2010年度運動方針
- 韓国併合100年であることを踏まえ、別項の日朝国交正常化に向けたとりくみをすすめるほか、「韓国強制併合100年」共同行動のとりくみに協力します。
- 戦後補償をとりくむ市民団体や、歴史の事実を明らかにする立法(国立国会図書館法改正、恒久平和調査局設置)を求める市民グループとの共同のとりくみをおこないます。
- 「在日朝鮮人歴史・人権月間」のとりくみ
・2010年は、韓国併合100年をテーマに8月22日から9月20日までを「月間」とし、9月18~19日に福岡で全国集会を開催します。皇民化政策の歴史と民族の尊厳が現在も踏みにじられ差別されている問題をとりあげます。
・全国集会、東日本集会、西日本集会(奈良)などは実行委員会を発足させてとりくみます。また、朝鮮人強制連行真相調査団などと連携・協力して全国各地でとりくみをすすめます。
・「在日朝鮮人歴史・人権月間」奨励賞を通じて、日朝の友好や和解に向けた青年・若い世代のとりくみを発掘・紹介します。 - 日韓首脳会談で約束された韓国・朝鮮人強制連行被害者などの遺骨調査、遺族への早期返還実現に向けた「韓国・朝鮮の遺族とともに全国連絡会」のとりくみをすすめます。各地で「証言集会」などを開催します。
- 司法解決の道は狭められてきたものの、国際法や道義的責任に基づき企業・国に謝罪と補償を求め立法解決への道を開こうとする戦後補償のとりくみに支援・協力します。
- 米下院「慰安婦問題」決議をはじめ国際的に広がる日本の首相の公式謝罪表明要求を、首相が真摯に受けとめ実行することを求めるとりくみをすすめます。「日本軍『慰安婦』問題の立法解決を求める緊急120万署名」を紹介・協力します。
- 東京大空襲訴訟の支援をおこないます。
- 8月15日に千鳥ヶ淵戦没者墓苑をはじめ各地で戦争犠牲者追悼・平和を誓う集会をおこないます。政権交代にともない衆参両院議長、首相・閣僚の千鳥ヶ淵墓苑での追悼・献花との連携をはかります。また、ひきつづき首相・閣僚などの靖国参拝や靖国神社国家護持に反対するとともに、国の無宗教の追悼施設設立に向けた討議やとりくみをおこないます。
- 1967年から戦前の「紀元節」を「建国記念の日」とした問題点を忘れず、2月11日に歴史認識にかかわる集会をおこないます。
6. ヒバクシャの権利確立のとりくみ
1) ヒロシマ・ナガサキの被爆者について
被爆から65年を迎え、高齢化がすすむ被爆者の援護施策の充実と実施が急務となっています。この間、被爆者課題については、原水禁・連合・核禁会議の3団体を基本にとりくみをすすめ、政府や国会議員への要請などをはかってきました。
2009年8月には、原爆症認定集団訴訟がすべて勝利し、和解しました。原水禁は、この集団訴訟支援として数度にわたる対厚生労働省行動(座り込みや交渉など)や各種集会に連帯し参加し、課題解決にとりくんできました。しかし、8,000名以上の被爆者認定審査の滞留が発生するなど認定制度上の問題が依然残されています。さらなるとりくみが求められています。
在外被爆者課題で、各地でおこなわれた裁判支援にとりくみました。また放置されている在朝被爆者の問題についても、パンフレット「放置された在朝被爆者」の発行や映画「ヒロシマ・ピョンヤン」の紹介など課題の情宣をおこなってきました。
被爆二世の課題では、健康診断の法制化とガン検診の追加が課題となっています。これまで全国被爆二世団体連絡協議会(被爆二世協)と連携して、2010年2月に厚生労働省交渉をおこない、被爆二世が求めるガン検診の追加などを強く申し入れました。また、被爆二世協が行った日韓被爆二世交流会(2009年11月)や全国総会(2010年1月)などに参加し、関係強化をはかってきました。さらに原水禁大会でも被爆二世課題についての「ひろば」を開催し、その課題を明らかにしてきました。
残された課題として、「被爆体験者」の認定問題があります。長崎においては、同じ被爆者でありながら地域によって扱いが異なり、爆心地から12キロ圏内でも被爆手帳が交付されず、限られた医療費給付しか受けられない「被爆体験者」が存在します。被爆者についても、残された課題がいまだ存在しています。すべての課題解決に向けて、ひきつづき3団体の連携強化が必要です。2) ヒバクシャをめぐって
核開発過程で生み出される核被害者は、世界に広がっています。あらゆるヒバクシャとの連携・連帯は、原水禁運動の重要な課題です。2009年度は、原水禁大会などを通じて、フランスの核実験被害者問題研究者を招へいし、その被害を学びました。
また国内では、被曝労働の裁判支援をとりくみました。継続しておこなわれてきたJCO臨界事故裁判支援に加え、2010年2月には島根原発などで従事した新たな被曝労働者の被害の支援にとりくみました。原水禁として連携を強めていくことが必要となっています。★2010年度運動方針
- 原爆症認定制度の抜本的改善を求めます。被爆者の実態に則した制度と審査体制の構築に向けて、運動をすすめます。
- 在外被爆者の裁判闘争の支援や交流、制度・政策の改善・強化にとりくみます。
- 在朝被爆者支援連絡会などと協力し、在朝被爆者問題の解決に向けてとりくみます。
- 健康不安の解消として現在実施されている健康診断にガン検診の追加など二世対策の充実をはかり、被爆二世を援護法の対象とするよう法制化に向けたとりくみを強化します。さらに健康診断などを被爆三世へ拡大するよう求めていきます。
- 被爆認定地域の拡大と被爆者行政の充実の拡大をめざして、現在すすめられている裁判を支援します。また、署名運動の展開を協力します。
- 被爆者の権利の拡大に向けたとりくみをはかります。
- 被爆の実相の継承するとりくみをすすめます。「メッセージ from ヒロシマ」や「高校生1万人署名」、平和大使などの若者の運動のとりくみに協力します。
- 原水禁・連合・核禁会議3団体での被爆者の権利拡大に向けた運動の強化をはかります。
- 世界に広がる核被害者への連帯を、国際交流や原水禁世界大会などを通して強化します。
- 被曝労働者被害者の救済支援を強化します。
7. 原子力政策の根本的転換と脱原子力に向けたとりくみ
- プルトニウム利用政策について
プルトニウム利用推進の動きに反対し、「反核燃の日」全国集会(2009年4月4日)や「もんじゅ」全国集会(2009年12月5日)など全国規模の集会を開催しました。またプルサーマル問題では、「玄海原発のプルサーマルの中止を求める署名」のとりくみ、玄海原発や伊方原発の現地での集会に協力しました。とくに国内初となった玄海原発のプルサーマル試運転に対しては、抗議声明(2009年11月6日)を発出し、全国からの抗議打電集中行動などにとりくみました。危険なプルトニウム利用政策からの脱却を求めてとりくみを強化しなくてはなりません。 - 原発震災について
2007年7月の中越沖地震から2年。地震の影響を過小評価しようとする電力・推進側に対して、地元を中心にねばり強い追及がなされています。現在、柏崎刈羽原発7号機が運転再開されましたが、全号機再開までは長期化する見通しです。そのようななかで運転再開に反対する「震災2周年 動かすな! 傷だらけ原発」県民集会(2009年7月11日)が開催されました。原水禁としてもこれらのたたかいに連携し、6・7号機の運転再開に際して抗議打電行動にとりくみました。地震国日本では原発直近の活断層の存在などが明らかになっており、危険と隣り合わせの原発の停止をねばり強く求めることが重要です。 - 原発の新増設について
2009年のとりくみでは、上関原発計画に反対するとりくみが中心となりました。これまで28年間原発建設を阻止してきましたが、中国電力による原発設置許可申請や地元での調査や準備工事強行の動きが出てきました。これに対して「上関原発建設中止を求める署名」を全国的にとりくみました。第一次集約で612,613筆(2009年9月30日集約)を集め、10月2日には、上関住民を先頭に署名提出と政府交渉をおこない、建設中止を訴えました。さらに調査ブイの設置強行をすすめる中国電力に抗議する「原発いらん! in 上関集会」(2009年10月25日)を上関現地で開催し、全国から1,200名が結集しました。また、現地での闘争を支援するために全国カンパや「檄布」を送る連帯行動にもとりくみました。さらに、上関原発をめぐる問題を全国化させるために、原水禁世界大会でも署名活動をおこなうともに、「ひろば」やフィールドワークなどで上関原発問題をとりあげました。
大間原発(青森県)の新設や川内原発3号機(鹿児島県)の増設問題では、現地集会などに協力しました。今後も現地との連携を深め、新増設阻止のとりくみを全国化することが重要となっています。 - 高レベル放射性廃棄物について
高レベル放射性廃棄物処分場問題については、2009年度は具体的な誘致などの動きがみられませんでした。一方で推進側はマスコミなどを利用し、広報宣伝活動を強化しています。今年の参議院選挙以降の動きに注視する必要があります。幌延(北海道)ですすむ地層処分研究施設建設に反対して、北海道平和運動フォーラムと協力し、政府と交渉をおこないました。 - エネルギー政策の転換に向けて
原水禁は「プルトニウム利用からのエネルギー政策転換」を2009年の重点課題にかかげ、運動をすすめてきました。2009年10月3日に明治公園で全国集会「NO NUKES FESTA 2009」を開催し、全国から7000人の結集の下、エネルギー政策政策転換を訴えました。10月2日には、「原子力政策転換署名」570,511筆を政府に提出し、政策転換を迫りました。
新政権での事業仕分けに対しては、各委員や議員へ政策転換を求める働きかけにとりくみました。
政権交代をエネルギー政策の転換のチャンスとして、原水禁として新政権に対する提言案をまとめる作業をおこなう「エネルギー政策プロジェクト」(西尾漠座長)を立ち上げ、具体的に政策転換に向けた働きかけを強化することになりました。対決・抵抗型の運動から政策実現型の運動へシフトしていく動きでもあります。ひきつづき新政権・与党との協議を深めていくことが必要です。
各地の原発・原子力施設立地県との連携を強化するために原発・原子力施設立地県連絡会のとりくみに協力しました。原水禁大会や「もんじゅ」全国集会などの全国的な集まりにあわせて立地県会議を開催し、各地の活動について共有化をめざしました。
また、原発建設の国内展開がきびしくなるなかで、原発輸出の動きも活発化しています。ベトナムやインドネシアなどの新興国に対して、企業の働きかけが強まっています。環境問題や核拡散の問題として海外のNGOとの連携を深めることが必要となっています。
★2010年度運動方針
- 六ヶ所再処理工場の建設・運転阻止に向けて、「4・9反核燃の日」行動などの全国集会を中心に運動を強化します。
- 「もんじゅ」再開後の動きに注視し、「もんじゅ」の問題点を訴えるためにひきつづき「もんじゅ」全国集会を開催します。
- 各地に広がるプルサーマル計画に対して、現地の動きにあわせて運動を全国化し、危険性や不必要性を訴えます。
- プルトニウム利用政策の転換に向けて、原子力委員会との公開討論会の開催を追求します。
- 中越沖地震で大きな被害を被った柏崎刈羽原発の問題を風化させず、これから起こると予想され東海地震による浜岡原発の問題など、各地で問題とされる地震と原発について提起し、新潟などで開かれる「中越沖地震3周年集会」などに協力していきます。
- 上関原発や大間原発、川内原発などの新増設に対する地元の反対闘争に対して全国的な支援強化をはかります。
- 高レベル放射性廃棄物処分場誘致の動きがあれば、地元の運動と協力し、課題の全国化をはかります。
- 幌延・東濃など各地ですすむ地層処分研究に注視し、現地と連携して最終処分場にさせないための運動を強化します。
- 政府・政党に対して原水禁としてのエネルギー政策の具体的な政策提言をまとめます。そのための有識者を中心としたプロジェクトを立ち上げます。
- 原子力政策の転換に向けて、政府・政党への働きかけを強化します。そのためにも「エネルギー政策懇談会」との連携します。
- 老朽化した原発の廃炉を求める運動をすすめます。
- 放射性廃棄物の「スソ切り」処分の動きを注視し、その問題点を訴えます。
- 6月に福井で開催されるAPECエネルギー大臣会合に対して、対抗的なシンポジウムなどを開催します。
- 原発原子力施設立地県全国連絡会との連携を強化します。
- 原発の海外輸出に対して、海外のNGOと協力を深めていきます。
8. 環境問題のとりくみ
1) 地球温暖化問題のとりくみ
地球の温暖化問題は、食料や水、安全な暮らしなど、人類の社会基盤を脅かすものとなっています。温暖化の主要原因である温室効果ガスの早急な削減に向けたとりくみが必要です。2009年末にコペンハーゲンで開かれた気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の会合に向けて、国内では、平和フォーラムも参加して「MAKE the RULE キャンペーン」がつくられ、温室効果ガスを確実に減らす制度つくりを求めるキャンペーンがすすめられました。こうしたキャンペーンの情報提供や集会、温暖化問題でのパレード(2009年12月12日・代々木公園)などに中央・地方で参加・協力してきました。
また、韓国の環境団体が提起した、地球の温暖化によりホッキョクグマの生存が脅かされているとした「ホッキョクグマを救おうキャンペーン」の日本の連絡所を担い、ぬいぐるみの販売収益を「MAKE the RULE キャンペーン」に寄付しました。今後は、具体的実践について、関係団体と検討していく必要があります。
新政権は温室効果ガスについて、2020年までに90年比25%の削減を打ち出しました。これまでの自公政権が経済界などの圧力を受けて、その削減努力を怠ってきたことに対して、大きな前進であり、国際合意の機運を高めることに貢献しました。
しかし、COP15では温室効果ガスの大幅削減については、期待したような成果を得られなかったことから、2010年11月にメキシコで開かれるCOP16会議では世界全体の排出量を削減に転じるような国際的な枠組みに合意する必要があります。国内では事業所に総量で排出上限枠を設けるなどの施策、環境税の導入、森林吸収源対策の着実な実施などを求めることが重要です。
また、自然エネルギーを推進する法制度を早急に確立し、身近な地域資源を活用したバイオ燃料や風車、太陽光発電などの地域分散型エネルギーの利用を推進することが必要です。今後は「エネルギー政策プロジェクト」のなかで、具体的に自然エネルギーの推進や省エネ社会のあり方に対するとりくみを推進する運動と制度政策の要求を積み上げることが必要です。
なお地球温暖化対策基本法案に対しては、原水禁として、原発活用論は地球温暖化対策として役に立たないとする声明を発しています。2) 水・森林・化学物質問題などのとりくみ
化学物質の総合的な管理・規制の強化を求めて、「化学物質政策基本法を求めるネットワーク」に参加し、「化学物質政策基本法」(仮称)を求める運動をすすめてきました。2008年度からひきつづいてきた「化学物質政策基本法の制定を求める署名」は、6月に院内集会を開き、国会への提出行動をおこないました(2009年6月30日・衆院、個人79,380筆、団体1,365筆)。ひきつづいて院内集会を開くなど、同基本法を支持してきた民主党を中心に要請行動などの運動を強めています。
家庭から出される化学物質の最大のものが合成洗剤です。平和フォーラムは、「合成洗剤追放全国連絡会」の事務局団体の一つとなり、第31回合成洗剤追放全国集会(2010年3月13~14日・さいたま市)の開催準備やニュースの発行に協力してきました。また、同連絡会が結成35周年を迎えたことから、記念事業として、ポスター、リーフレット、記念誌の発行などをすすめてきました。また、各地でも水源地域の保全活動や水質検査活動などがすすめられてきました。今後も、化学物質の管理に関する法制度の制定とも関連づけながら、合成洗剤の規制のための活動を強化していく必要があります。
また、健全な水循環を構築するとともに、水の公共性を守るため、森林、河川、海岸などに関連する法体系を統合した、「水基本法」の制定が提起され、全国集会などで学習・討議がおこなわれ、「水基本法を求めるシンポジウム」の開催にも協力しました(2010年3月26日・憲政記念館、自治労・全水道等主催)。政権交代はそうした要求を実現する機会であり、さらに運動をすすめていく必要があります。
一方、森林は国民生活の安全・安心を守る上で、水源かん養、山地災害防止、保健休養、生物多様性の保全などの多面的機能(公益性)の発揮により、環境・国土保全などに大きく貢献しています。その公益的機能に対する学習活動として、各地域で森林視察や林業体験などがとりくまれてきました。今後も森林・林業・農山村の再生、木材産業の活性化などをはかり、温暖化防止の目標達成を実現する必要があります。
人体や環境に影響を与える恐れがあるフッ素問題については、10月に開催されたフッ素問題全国集会(2009年10月25日・教育会館)に協力しました。集会では、学校などでの集団洗口に反対する活動などが提起されてきました。今後も関係団体と協力して規制を求めていく必要があります。
また、カネミ油症被害者の恒久救済に関する請願署名運動にも協力してきました。3) 貿易自由化やWTO・FTA交渉のとりくみ
日本は世界中から食料や木材を大量に輸入しています。これは、国内の第一次産業の衰退を招くばかりか、膨大なエネルギーを消費し、輸出国の水や土壌、環境の汚染を招いています。さらに、世界的な食料不足の時代を迎え、今後も穀物価格の高騰が予想されています。こうした状況のなかで、自由貿易の一方的な推進は、日本と世界の食料や環境問題の解決を困難にしています。
こうした問題があるにも関わらず、WTO(世界貿易機関)やFTA(二国間・多国間自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)により、貿易自由化をめざす交渉がすすめられています。WTO交渉については、農業分野を中心にインド・中国とアメリカの対立がつづくなか、昨年12月に閣僚会合がおこなわれたことから、これに向けて学習会や外務省、農水省などとの意見交換(2009年11月17日・外務省)をすすめてきました。12月の会合では大きな進展はありませんでしたが、今年6月にも大枠の合意をめざす動きも出ています。
二国間・多国間自由貿易協定をめざすFTA交渉も、農業大国のオーストラリアとの交渉に加えて、今後はアメリカ、EUとの交渉が主張されていることから、各国が共存できる公平な貿易ルールを求め、農民や消費者・市民団体と連携した活動をすすめていく必要があります。なお、各地ではWTO農業交渉や日豪FTA交渉に対する自治体意見書採択もすすめられました(WTO農業交渉612自治体、日豪FTA交渉676自治体)。
さらに、2010年10月に名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議などが開催されます。会議の課題である生物多様性の保全や希少生物の保護、遺伝子組み換え作物の国境移動問題も含めて、自由貿易が環境悪化に拍車をかけていることの問い直しをすすめなければなりません。この問題についても、消費者団体とともに学習会など(2010年1月24日)を開催してきました。今後、国際会議に向けた市民団体のキャンペーン活動に協力して、とりくみをすすめます。
また、貿易自由化と新自由主義・グローバリゼーションのもたらす問題点について、世界的にとりくまれている「世界社会フォーラム」(WSF)に呼応して、1月に東京で開かれた「WSF in TOKYO」(2010年1月24日・韓国YMCA)でもとりあげて討議をおこなってきました。2010年に、日本でアジア太平洋経済協力(APEC)の閣僚会合や担当大臣会合が開かれます。こうした場に市民の声を反映できるよう、関係団体とのとりくみをすすめる必要があります。4) 第一次産業の転換や農林業政策のとりくみ世界的な食料・農業危機を前に、国内の食料自給率の向上と農業の再建が求められています。これまでの規模拡大・効率化一辺倒の政策は、食の不安を引き起こす一方で、自給率の向上に結びついてきませんでした。いまこそ、食の安全や環境問題などに配慮した食料・農業・農村政策への転換を求めていくことが重要です。
こうした状況なか、新政権は「農業者戸別所得補償制度」を導入して、生産費・所得を償う制度の導入をめざし、2010年度は米の補償制度をスタートします。また、主要農畜産物の生産目標を設定し、食料自給率の数値目標(10年後50%、20年後60%)を定めています。こうした政策の実現に向けて、さらに運動を強めていく必要があります。
平和フォーラムは、農業政策を中心に、政府・政党に対する要請や意見交換(2009年10月26日)などをすすめてきました。今年3月には、「食料・農業・農村基本法」の改定と、今後の「戸別所得補償制度」などの政策に対して、各県代表が参加しての集会を開催しました(2010年3月11日・衆院)。関連する法案が今年秋の臨時国会で審議されることから、各地域の要求を集約して要請活動などをすすめる必要があります。
また、各地では、全国的なアジア・アフリカ支援米作付け・送付運動(45都道府県からカンボジアとアフリカ・マリへ約60トン送付)や、遺伝子組み換えに対抗する大豆畑トラスト運動、田畑の生き物調査活動などがとりくまれました。こうした活動をさらに拡大し、食の安全や農林水産業の振興に向けた条例つくりや計画の着実な実施が必要です。5) 食とみどり、水を守る全国集会の開催
「食の安全」、「食料・農業政策」、「森林・水を中心とした環境問題」を中心とした食とみどり、水・環境にかかわる課題について、情勢と運動課題の確認、各地の活動交流のために、11月に島根県松江市で「第41回食とみどり、水を守る全国集会」を開きました(2009年11月27~28日・くにびきメッセ、630人参加)。また、いくつかの講演を収録した記録集を発行してきました(2010年1月発行)。
第42回全国集会については、さまざまな制度・政策が重要な段階を迎えていることなどを踏まえ、東京で開催するよう準備します。そのため、関係団体や、東京の地域組織に呼びかけて実行委員会をつくります。★2010年度運動方針
- 温暖化防止の国内対策の推進を求め、企業などへの排出削減の義務づけをはじめ、森林の整備、温暖化対策のための税制(環境税)の導入など、削減効果のある具体的な政策を求めます。
- 自然(再生可能)エネルギー普及や省エネルギーのための法・制度の改正などを求めていきます。
- 森林労連など関係団体と協力して、政府の「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の確実な推進、地産地消による国産材の利用拡大、再生可能な木質バイオマスの推進などにとりくみます。
- 「水基本法」の制定に向けたとりくみをすすめます。また、水中や環境中の化学物質に対する規制運動を強めていきます。とくに、化学物質全体の規制のため、「化学物質政策基本法」の制定運動にとりくみます。
- 「きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国連絡会」の事務局団体として、活動を推進します。
- WTO農業交渉やFTA交渉は、環境や農業、食料に大きな影響をもたらすことから、重要農産物を交渉から除外することなどを求めて集会、学習会、政府要請などの活動をすすめます。
- 生物多様性条約国際会議に対しては、その問題点を明らかにし、集会や学習会などをおこないます。
- APEC会合などを通じて、グローバリゼーション、新自由主義がもたらした、平和、環境、生活、労働などに対する影響などを検証し、それらをただすとりくみをすすめます。
- 政府の「戸別所得補償制度」の確立に向け、食料や林産物の自給率向上、農地の確保、幅広い担い手の育成、食の安全・安心を支える食料供給体制が構築されるよう、各地域で意見・要求を集約し、政府への要請行動などにとりくみます。
- 各地域における食料自給率や地産地消のとりくみ目標の設定を要求していきます。さらに、食の安全や有機農業の推進、農林水産業の振興に向けた条例つくりをはじめ、学校給食に地場の農産物を使用する運動、地域資源を活かしたバイオマス運動や間伐材の利用などのとりくみを広げていきます。
- 子どもや市民を中心としたアジア・アフリカ支援米作付け運動や森林・林業の視察・体験、農林産品フェスティバルなどを通じ、食料問題や農林水産業の多面的機能を訴える機会をつくっていきます。とくに、支援米運動では小学校の総合学習やイベントなどとの結合、地域連合との共同行動など、地域に広げてとりくみます。
- 「第42回食とみどり、水を守る全国集会」の開催に向けてとりくみます。
9. 食の安全のとりくみ
1) 食の安全行政に対するとりくみ
昨年9月に設立された「消費者庁」や厚生労働省などに対して、食品表示の一元化をめざした「食品表示法」(仮称)の制定を求めてとりくみをすすめました。同法は、平和フォーラムも参加する「食の安全・監視市民委員会」が提起し、学習会をおこなうとともに、衆議院総選挙時に各党にアンケート調査をおこない、新政権を構成する3党などから賛同を得ました(2009年8月3日公表)。現在、他の消費者団体や生協などとも協力して、その実現をめざすとりくみがつづけられています。
また、加工食品や外食での原料原産地表示の義務づけ拡大や、遺伝子組み換え食品、クローン動物由来食品の表示、輸入農産物・食品に対する安全管理の徹底などについても政府・政党に求め、民主党などの公約にも取り入れられました。これらの政策の実現や食品安全委員会のあり方の見直しも含めて、食の安全確保を求めていく必要があります。2) 照射食品やクローンなど新規食品技術に対するとりくみ
政府の原子力推進行政と一体となってすすめられている放射線照射食品の推進に反対して、「照射食品反対連絡会」をつくり、厚生労働省や食品安全委員会との交渉や院内集会(2009年7月2日・参院)を開いて、その問題点を指摘してきました。また、署名運動もおこない、12月に厚生労働省に提出しました(2009年12月10日・衆院、195,306筆)。その結果、原子力委員会の強い働きかけにも関わらず、3年以上にわたり推進を止めてきました。今後とも、厚生労働省や関連業界、消費者などへの働きかけを強めて反対運動をおこなっていく必要があります。
体細胞クローン家畜由来のミルクや食肉について、食品安全委員会は2009年6月に「食品として安全」と認めました。しかし、問題点が残されているとして、「食の安全・監視市民委員会」などは、表示も含めて慎重な取り扱いを求めて要請(2009年7月2日)や署名運動(2010年2月15日・厚生労働省等提出)、パンフレットの発行(2009年4月発行)などにとりくみました。その結果、農水省は当面は流通させないこととし、新政権でも表示の義務化を公約しました。さらに、とりくみをすすめる必要があります。
BSE問題では、国内での全頭検査の継続を求めて、各地で自治体への要請がおこなわれた結果、現在も全都道府県での実施がつづいています。今後も国内検査への助成金復活、原料原産地表示の義務化、アメリカなどの牛肉の輸入条件の緩和の動きへの対応などのとりくみが重要になっています。
遺伝子組み換え(GM)食品の表示問題では、現在、表示義務がない食用油や醤油も含めて、GM食品の全面的表示を求める消費者団体の活動に協力してきました。ひきつづき、表示の改善や国内でのGM農作物の作付けに反対するとりくみをすすめる必要があります。
「エコナクッキングオイル」の問題を契機に、健康食品の問題について、集会や学習会(2009年12月5日・総評会館)、政府への申し入れなどのとりくみをすすめました。今後も野放しになっている健康食品の表示や広告の問題も含めて、規制を求めてとりくみを広める必要があります。3) 食農教育の推進のとりくみ
自給率の低下とともに、食のグローバル化がすすみ、輸入農産物を多用した外食や加工食品が急増してきたことの弊害がさまざまに指摘されるなか、学校や地域での子どもたちを中心とした「食農教育」が推進されてきました。全国集会などで大きな課題として討議するとともに、中央・地方の行政との意見交換、各地域での支援米作付け運動などを通じた地域・子どもたちへの働きかけなどをすすめてきました。今後も「食育推進基本計画」に基づき、学校給食での地場食材使用、栄養職員の教諭化など、各地域段階での実効性のある食育推進に向け自治体要請などをすすめていく必要があります。
また、日本消費者連盟とともに、食と農のあり方について市民向けの連続講座「暮らしの安心・安全セミナー」(春季2009年4月~7月、秋期2009年10月~2010年1月)を開き、学習会や現地視察などをおこなってきました。広く市民へアピールする場としてひきつづきとりくみをすすめる必要があります。★2010年度運動方針
- 食品偽装や輸入食品の安全性などに対する対策の徹底、表示の改善を求めていきます。とくに表示制度の一元化、原料・原産地表示の徹底・拡大などを要求して、政府や企業への申し入れや集会、学習会などをおこなっていきます。
- 各地域において、食品安全条例の制定などを求める運動を広めていきます。
- 照射食品を認めない運動をすすめます。そのため、政府への要請とともに、食品関連業界や消費者へのアピール活動などをすすめます。
- 体細胞クローン家畜由来の食品に対する適切な表示を求めるとともに、実質的に流通されることのないよう要求していきます。
- BSEにともなう、米国が要求している輸入条件の緩和を認めないように求めていきます。また、国内においてひきつづき全頭検査を継続するよう、各自治体への要請にとりくみます。さらに、牛肉およびそのすべての加工品の販売、外食、中食において、原料・原産地表示を義務化することを求めていきます。
- 遺伝子組み換え食品については、国内における商業的作付けはしないことを求めるとともに、表示制度の改善を要求していきます。
- 健康食品の表示・広告などの規制を求めていきます。
- 各地域で食育(食農教育)推進のための条例づくりなどの具体的施策を求める運動をすすめます。また、学校給食の自校調理方式、栄養教諭制度の推進を求め、学校給食に地場の農産物や米を使う運動や、地域の食材の見直し、地域内の安全な生産物の消費をすすめる地産地消運動などの具体的な実践をすすめます。