声明・申し入れ、2019年
2019年04月26日
山城博治さんたちの上告棄却に抗議する声明
最高裁第3小法廷(宮﨑裕子裁判長)は4月22日付で、沖縄での新基地建設に反対するなかで逮捕された沖縄平和運動センター議長の山城博治さんたちの上告を棄却する決定を下しました。
平和フォーラムはこの最高裁の不当な決定に対して、強い憤りをもって抗議します。
この裁判は、沖縄県北部の米軍北部訓練場の一部返還の代わりに、オスプレイも発着できる新たなヘリパッドを建設すること、また辺野古の海を埋立て米軍のための新たな新基地建設を造ることに対して、多くの県民らが抗議行動を展開する渦中で起きた事件がきっかけでした。
有刺鉄線を切断したとして「器物損壊」、沖縄防衛局の職員に対すると押し問答をした際の混乱で「暴行」、「公務執行妨害」、ブロックを積み上げたとして「威力業務妨害」。これらの容疑で山城博治さんたちは、3ヵ月から半年以上に渡る長期勾留を強いられた挙句、執行猶予はついたものの、不当にも懲役刑が科されました。
上告趣意書では、①行政不服審査法を濫用して工事を継続し、県民の民意を無視した国の建設強行により、自然破壊が進んでいる状況。 ②1、2審判決が沖縄の歴史を理解せず、刑法の形式的解釈と適用に終始していること。③日本の沖縄に対する差別と抑圧の歴史を真摯に受け止めるべきであること。 ④1、2審判決が、事件の本質である事件の動機、背景事実を一顧だにせず、県民の行動を抑止する手段として刑法を運用解釈していること。 ⑤米軍基地に起因する事件事故の危険のなかで沖縄県民の生活が強いられている現状。以上を訴えたうえで、威力業務妨害と公務執行妨害、傷害について、容疑事実となる罪の構成要件に該当することだけに拘泥している不当なものだとしていました。
最高裁においては、これら弁護側の主張に一切答えることなく、不当な決定が下され、1、2審判決が確定してしまいました。
裁判所は事件の本質を見極めようとしたのでしょうか。あるいは見る必要はないと考えているのでしょうか。辺野古新基地建設を強行する安倍政権に忖度した政治弾圧裁判と指弾されてもおかしくはないでしょう。
裁判のなかで、山城さんは「事件の本質は沖縄差別で、裁かれるべきは日本政府である」と語っています。そして沖縄の歴史、米軍施設の過剰負担など、沖縄が置かれている現状を述べ、一方で、新基地建設に伴って政府が行ってきた様々な違法な行為、脱法行為の数々をとりあげています。ここに示された山城さんたちの思いは、かけられた容疑の抗弁ではなく、こうした歴史や社会的背景などをふくめ、日本政府からかけられている様々な行為をしっかりとみて判断して欲しいということだったのです。
平和フォーラムは、今後も辺野古新基地建設に反対するとりくみを力強くすすめていきます。それは、安倍政治のために失われつつある平和と民主主義、地方自治の精神をとりもどすためであり、安倍政治の強権的な振る舞いで、行政機関で隠ぺいや偽造などが横行している現状を打開するためであり、司法が三権分立のまっとうな民主政治に基づく機関となるためにです。そしてあらためて、上告を棄却した最高裁が思料することのなかった沖縄の置かれた歴史や社会的背景を、我々自身との関係のなかで、見つめなおし、沖縄の反基地運動と平和を求める闘いに連帯していく決意です。
2019年4月26日
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)