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2014年10月09日
日米防衛協力のための指針の中間報告に関する事務局長見解
日米防衛協力のための指針の中間報告に関する事務局長見解
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 藤本泰成
10月8日、日米両政府は防衛協力小委員会において、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直しの中間報告をまとめ公表した。これまでの地理的概念であるといえる「周辺事態」を削除し、軍事的活動の範囲を世界規模に拡大するとした。加えて、平時から緊急事態まで幅広い米軍への支援を可能にし、米軍と一体化した軍事力の世界展開をねらっている。
ガイドラインは、「日本にとって、指針の見直しは、その領域と国民を守るためのとりくみ及び国際協調主義に基づく『積極的平和主義』に対応する」として、平和維持活動や海洋安全保障など「地域の及びグローバルな平和と安全のための協力」で日米同盟の範囲の拡大を企図しているが、そのことがどう平和につながるかは明確にしていない。この間の中東における米軍の軍事的活動が、いかなる平和にもつながっていないことは明らかである。ガイドラインの見直しは、米国の世界覇権に協力し、米国の戦争を世界規模で補完するものに他ならない。そのことが世界平和に貢献するなどという話は、欺瞞以外の何物でもない。
「日本に対し武力攻撃を伴う状況及び、日本と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生し、日本国憲法の下、2014年7月1日の日本政府の閣議決定の内容に従って日本の武力行使が許容される場合における日米両政府間の協力について詳述する」と記載され、集団的自衛権行使を前提にしてガイドラインは決定されることとなっている。集団的自衛権行使に関しては、閣議で決定されたに過ぎない。国会における議論は衆参両院あわせて2日間であり、その決定に伴う関連法の改正についてもいまだ未定のままである。ガイドラインは行政協定であり日米間の政策合意にすぎず現行法の範囲で行われなくてはならない。前回のガイドライン見直しもそうであるが、対米合意を国内の法整備に優先することは、国会軽視であり民主主義の破壊行為だ。その意味で、ガイドライン見直しを認めることはできない。
ガイドラインは、あくまでも日米安全保障条約(日米安保条約)に基づく軍事協力の指針である。日米安保条約は、第4条で「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威」と条約が適用される範囲を限定し、第6条で「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリ力合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」として、在日米軍への基地提供が米軍による日本の安全保障義務にあることを規定している。地理的制約の排除や軍事行動の一体化など、今回のガイドラインの見直しは、日米安保条約の枠内におさまるものではない。中間報告の内容が現実化するならば、日米安保条約の改定が求められるべきであり、そのためには国会承認が必要だ。密室の議論において、憲法が規定する日本国の基本的あり方が変更されてはならない。そもそも、これらガイドラインの見直しをめぐる考え方が、決して世界平和につながらないとともに日本の安全にもつながらない。
平和フォーラムは、日本国憲法の理念に則って武力によらない平和への活動を継続するべきであると考える。日本の民主主義成立の過程を「敗北を抱きしめて」で描き、ピューリツアー賞を受賞したジョン・ダワー(マサチューセッツ工科大学名誉教授)は、「日本国民はこれまで一貫して、憲法が掲げる反軍国主義の理想を支持し、改憲は実現してこなかった。私はそのことに敬服している。日本は米国の軍事活動に関与を深める「普通の国」ではなく、憲法を守り、非軍事的な手段で国際問題の解決をめざす国であってほしい」と述べている。まさしく、日本のあり方を問うものだ。平和フォーラムは、「戦争をさせない1000人委員会」の運動に連帯して、「戦争をする国」への策動を阻むことに全力を挙げる。