12月, 2020 | 平和フォーラム - パート 2
2020年12月01日
高レベル放射性廃棄物処分場立地調査へのさらなる応募を許さないために
「はんげんぱつ新聞」編集委員 末田 一秀
高レベル放射性廃棄物処分場の候補地については、原子力発電環境整備機構(以下NUMO)が、2002年から公募を行っています。高知県東洋町長が2007年に独断で応募した後に辞任に追い込まれて撤回されたことがきっかけとなり、国による申し入れ方式も併用されることになりました。その後は、2017年に国が有望地を示してテコ入れするとして「科学的特性マップ」が示されましたが、目立った動きはありませんでした。
ところが、ここにきて北海道寿都町長が10月9日に自ら上京してNUMOに応募書類を提出。寿都湾の対岸に位置する神恵内村でも商工会が応募検討を求める請願を提出し、採択の翌日に国が申し入れを行って村長が受諾、10月15日に受諾を伝える文書を発送しています。立地調査の第1段階である文献調査が11月中旬に両町村で始まることになりました。
これまで私たちは文献調査を許さない立場で拒否条例の制定等を呼びかけてきましたから、一歩後退であることは否めません。しかし、実際に文献調査が始まれば、高レベル放射性廃棄物処分場候補地の選定制度がはらむ問題点がより顕在化してくることは確実で、追及の手を緩めずに両町村での調査の撤回も求めていかなければなりません。
また、北海道では両町村の動きに刺激され、滝上町において町議会議員らの呼びかけで、NUMO職員を講師に招いた勉強会が10月17日に開催されるなどの動きが出ています。NHK札幌放送局が行ったアンケート調査に、国から文献調査の「申し入れ」があった場合に乙部町、奥尻町、積丹町、遠軽町、別海町の5町が検討すると回答したことも報じられています。続いて手が挙がるようなことがないよう警戒が必要です。
なぜ候補地調査に手をあげるのか
そのために、なぜ両町村が調査に応募し受諾したのか、分析しておくことも有用です。
もちろんNUMOが行ってきた地域工作が浸透してきたことや、福島事故の「風化」が進んだこともありますが、金で釣る汚い国のやり口の影響が大きいでしょう。文献調査では2年間に最大20億円、仮に次の段階の概要調査に進めば4年間で最大70億円の交付金が出ることになっています。財政難の自治体にとっては魅力でしょう。しかし、これまでの原発立地にともなう交付金では、いわゆる箱物への支出に偏り、立地自治体の振興に役立たなかったばかりか、維持管理費がその後の自治体財政を圧迫していることは広く知られている通りです。ましてや処分場調査の交付金は一時的なあぶく銭に過ぎず、それがどのような効果を生むのか、両町村の結果を注視していきたいと思います。
応募検討を求める請願を出した神恵内村商工会の会長は「欲しいのは金ではなく人と雇用」とも発言しています。人口が8月末現在で823人、直近5年間で100人超減少という過疎化が進む小村の将来像を村民が描けていないことも、原子力村が付け入る大きな要因です。全国的に少子化による自然減の人口減少は避けられませんが、その中にあっても地場産業の振興や移住者の受入れサポートなどに力を入れて社会増につなげている自治体も数多く存在します。そのような努力を放棄して原子力に頼ろうというのでは、地域に魅力は生まれず、人も育たないことから、人口減少に歯止めをかけることはできないでしょう。
候補地調査に手が挙がる要因には、段階的選定というまやかしもあげられます。文献調査、概要調査、精密調査の3段階が法律に定められ、次の段階に進む際に知事と当該市町村長の意見を聞き「尊重」すると規定されていることから、反対であれば次の段階に進まないと説明されてきました。今回、北海道鈴木知事は反対する旨を早くから表明していますから、文献調査を行っても処分場立地とは別という詭弁が成立しています。梶山経産大臣も「知事または市町村長の意見に反して概要調査地区等の選定を行うことはない」とした文書を発出して、応募へのハードルを下げることに腐心しました。結果、国を信じられるかどうかという不毛な議論まで行われました。文献調査時にNUMOは現地事務所を設けて「対話活動」を進めるとされており、後戻りできなくなるおそれをどう理解してもらうのかが課題となっています。
問われる地域の民主主義
特に寿都町のケースでは、当初賛否が拮抗していれば応募しないとしていた町長が「肌感覚で賛成が多い」として応募してしまった独断の問題にも触れざるを得ません。住民投票条例の制定が求める直接請求署名が選管に提出された翌日の応募でした。町議会のあり方も問われます。全員協議会という非公開の場で検討を進め、「町民に伺いを立てて勉強会をするっていったらかえって面倒な話になる」という町長の発言を許していたばかりか、問題が報じられた後でさえ議事録の公開を拒んでいます。情報公開や説明責任が徹底され、民主主義が正しく機能していれば、原子力の立地は進まないはずです。(すえだ かずひで)
2020年12月01日
まもろう、平和と人権!すすめよう、民主主義と共生!
第57回護憲大会を開催
11月7日・8日、滋賀県大津市・びわ湖ホールで、「まもろう、平和と人権!すすめよう、民主主義と共生!憲法理念の実現をめざす第57回大会(滋賀大会)」(第57回護憲大会)が開催されました。新型コロナウイルス感染症問題が終息していないことから、例年3日間の日程を短縮し、参加者を大きく絞ったうえ、オンライン中継を行うという形式での開催となった本大会には、全国各地から約200人が参加したほか、多くの「リモート参加」がありました。
本大会は、7日は開会総会とシンポジウム、8日は憲法課題にかかわる各地からの報告で構成され、全体として事前に取材・収録したビデオをふんだんに活用するかたちになりました。これら大会全体を中継した記録動画や報告に使用した個別の動画は、youtubeチャンネル「 peaceforum channel 」にて配信していますので、ぜひご覧ください。
改憲への動きを阻止するとりくみを
本大会の意義としてまず確認したいのは、感染症問題によって見通しを立てることが困難ななか、しかし開催を決定したうえで、可能な実施形態を模索しながら、最終的にやりきることができたという点です。これは何をおいても地元・滋賀県実行委員会のご尽力によるもので、あらためてここで感謝申し上げたいと思います。改憲を掲げ続けてきた安倍政権が退陣したとは言え、それを引き継いだ菅政権の下で改憲策動が止まったわけではありません。護憲勢力の側として今の状況をどう捉えているかを共有する作業は、今後私たちのとりくみの方向性を打ち立てていくうえで重要なものです。
コロナ禍で見える差別・抑圧の構造
第二に、日程上時間的制約のなかにあって、こんにちの情勢下で問われている課題に対応した内容をもった大会になったという点です。シンポジウム「新型コロナウイルス感染症と日本の人権状況」では、感染症問題が弱い立場にある人びとのいのちと生活に集中的に打撃を与えている実態、そしてこれらが日本社会に存在する差別・抑圧の構造に起因していることを、多様なパネリストからの提起とディスカッションによって示しました。また、滋賀における多文化共生のとりくみ、水俣病の解決をめざすとりくみ、女性のおかれた現状、そして沖縄現地の情勢が重点的に報告されたほか、憲法にかかわるさまざまな課題についての報告が全国各地からありました。
若い世代へのアプローチを模索しよう
第三に、ビデオ映像の活用とインターネット配信の実施というあらたな試みを行ったという点です。いまやインターネットの動画配信を利用することは年齢を問わず個人の日常生活の一コマですが、旧来の形式に縛られがちな私たちのとりくみのなかでは、その導入は大きな「冒険」でした。また、特別報告「敵基地攻撃論と日米軍事同盟強化」は、大会日程においては時間の都合で冒頭部分のみ上映したもののフルバージョン(約90分)を前述の「 peaceforum channel 」にて配信していますが、このように大会中にできなかった部分や、補足が必要な部分などのフォローアップが行えることも強みです。
いっぽうで、本大会をじっさい開催するなかで明らかになった課題もあります。原水禁や沖縄などのとりくみについても共通したことですが、やはり実際に集まり、現地の様子に触れ、ともに議論するという機会は、ほかの手段によって代えることのできない、得がたい経験であることは言うまでもありません。動画配信で代替するにしても、実際に参加して聞くのと同じ時間を動画視聴するのは、だいぶん趣も違ってきます。また、これまでの大会規模かそれ以上に「参加」してもらうためには、各地での動画視聴会の実施や多くの人びとへの周知の徹底などがセットにならなくてはいけません。とりわけ若い世代にも届くようなアプローチの試行が必要です。
とりくみの成果を次回宮城大会に持ち寄ろう
次回(第58回)の開催地は宮城県仙台市を予定しており、宮城の皆さんからも成功に向けた意気込みをビデオメッセージとして寄せていただきました。感染症の早期終息を祈りつつも、しかしその時点の情勢次第でまたさまざまな試行錯誤が必要になることでしょう。そしてまた、菅政権は「オリンピック開催」を政治上のカードとして利用しつつ、来たる衆議院選挙に向けた策謀をすすめています。菅首相が安倍前首相の憲法軽視を「継承」していることは、この間の学術会議会員任命拒否問題で明らかです。けっして油断してはいけません。
一人ひとりのいのちの尊厳がおびやかされる状況でなお、このような政権と引き続き対決しなくてはならないという困難をともにのりこえつつ、そのなかでつかみとった成果と課題を来年11月の宮城大会にともに持ち寄ることができるよう、いっそうの努力を重ねていきましょう。(山本 圭介)
2020年12月01日
核のごみは200年まちましょう
インタビュー・シリーズ:160
小野有五さん(北海道大学名誉教授)
北海道の寿都町、神恵内村が高レベル放射性廃棄物の処分場選定に向けた文献調査に名乗りをあげ、北海道は核のごみの最終処分場に狙われています。この問題に対して専門的立場から警鐘をならしている小野有五さんに、地層処分の問題点をお聞きしました。
─自然地理学者の立場から日本の地層・地盤の特徴を教えてください。
日本列島は地震帯と火山帯の上にあり、地震と火山活動が活発に起きています。それは、日本列島が、プレートとプレートの境目、それをプレート境界と言いますが、その境目にあるからです。それも世界で唯一4つのプレートがぶつかっているところにあります。
それに対して、ドイツ、フランス、フィンランドなど地層処分しようとしているところは、安定大陸といって地盤がずっと安定しているところです。特にフィンランドは、10億年間も安定しています。アメリカの大部分や、カナダ、ロシアもそういったところです。プレート境界の変動帯にある日本と、安定大陸では、全く条件が違います。
世界の原発も、大部分は安定大陸にあって、日本とカリフォルニアだけがプレート境界の変動帯にあります。そこが危ないところです。原発や地層処分というものは、本来、安定大陸で考えられたものです。それをそのまま、日本に持ち込むことがまず問題です。変動帯の地層は新しく、柔らかい。不安定で、活断層がいっぱいあるところです。フィンランドとかスウェーデンといった国は、少なくとも10億年以上も前の古い地層からできていて、それ以降は地震もなく、ほとんど動いていません。
地盤の安定性の違いの他に、もうひとつ大きな違いは、地下水の問題です。日本は山国で、雨も多く、傾斜がありますから、山で地面にしみ込んだ雨水が、地下水となって大量に流れてきます。福島第一原発では、背後の丘陵からもどんどん地下水が流れてきて、大量の汚染水を発生させています。
例えばアメリカの地層処分場は、砂漠に計画されていますし、ヨーロッパの降水量は、日本の3分の1以下です。そして、日本に比べたらずっと平らな場所に計画されています。日本とは根本的に条件が違うのです。
地下水が多いということは決定的にマイナスです。地層に埋めた放射性物質が溶け出すことが一番怖いのです。地下水が多いというのは最悪の条件です。プレート境界にあって、活断層が多いこと、地下水が多いということで、あらゆる意味で日本は条件が悪く地層処分に向いていません。
フィンランドでは首都からして10億年も前の岩盤の上にあり、安定した岩盤の上で市民が生活しているわけです。でも日本では、たとえば札幌や東京で地面を掘ったら1000年前とか100年前の新しい地層が出てきます。地震もしょっちゅうあります。
そのフィンランドでさえ、地層処分に反対している専門家は少なくありません。まず、地層処分には10万年という時間がかかります。10万年前の地球は温度が高かったのですが、それから氷河期が来て、1万年前ころから気温が上がってきて氷河期は終わりました。2万年くらい前が一番寒かったのですが、このころ、北ヨーロッパは、氷床と呼ばれる巨大なドーム状の氷河にすっぽり覆われていました。ちょうどフィンランドあたりにその中心があって、そこでは厚さが、なんと4000メートルもあったのです。氷は固く、重たいので、これだけ厚い氷が載ると、10億年前の岩盤でも沈んでしまいます。氷が溶けると岩盤が持ち上がるわけです。地震が全くなくても、上がったり、沈んだりをすることで、岩盤に亀裂が入る可能性があります。また、氷が解けると莫大な水が地下水になったときが問題です。固い岩盤があるフィンランドでも、地層処分の危険性はあります。
─原子力環境整備機構(NUMO)の「科学的特性マップ」で「適地」とされた場所は安全なのですか。
適地マップでは、日本の国土の65%が地層処分の適地としていますが、あくまで日本の中で相対的にみて「適地」というだけです。グローバルスタンダードで見たらどうでしょうか。日本の地盤は、フィンランドが100点満点で90点なら、日本はせいぜい10点くらいと言えるかもしれません。それくらいの差があります。いくら日本の中で相対的に「適地」といっても、世界と比べれば箸にも棒にもかからないのです。
またNUMOは、放射性物質はガラス固化体にされ、丈夫な鉄製容器に入っていて、いかにも漏れないかのように印象づけていますが、実際は漏れることが前提になっています。
ガラス固化体を取り囲む鉄製容器はわずか1000年で壊れるとNUMOも認めています。1000年で無くなったら粘土層の中に漏れだし、粘土層は外に漏れる時間を遅くするだけなのです。
地層処分では、上からトンネルを掘り、300mより深いところにガラス固化体を埋める計画ですが、そのトンネルの総延長は200kmにもなります。10万年間、そこに1か所も割れ目(亀裂)が発生しない、などということは、とても信じられません。たとえ断層がない場所でも、トンネルは、亀裂だらけの地層に、コンクリートを流し込んでつくられます。コンクリートの壁は100年や200年でボロボロになるのではないでしょうか。地下水だって、水だけでなく温泉水もあります。そういうものでコンクリートや容器をさらに腐食させることになるでしょう。
一番問題なのは、適地マップでは、活断層の真上と、そこから、活断層の地表での長さの100分の1の幅だけを避ければ、「適地」にされていることです。しかし、2018年の北海道胆振東部地震では、今まで知られていた活断層から15kmも離れたNUMOのマップの「適地」で、大きな地震が起きました。石狩低地東縁断層帯の長さは、最近の研究では、約150kmとされています。その100分の1は1.5kmですね。マップでは、そこだけが「不適地」だったわけです。しかし、実際の地震は、その10倍も離れた「適地」で起きたわけです。また、この地震は石狩低地東縁断層帯とは無関係で、未知の活断層が動いたのです。やはりマップの「適地」でも、このような大地震が起き得ることが証明されたわけですから、マップは科学的とは言えないことが証明されたともいえるでしょう。
熊本地震は横ずれで、ほぼ垂直な断層でしたが、日本の多くの活断層は石狩低地東縁断層のように、緩やかに傾斜した逆断層なのです。地震を起こす断層面は、地下深くに向かって、斜めに入り込んでいくわけですから、胆振東部地震のように、活断層が地表に現れたところからはるかに離れた場所で地震は起きるわけです。そのことを全く認めていない「科学的特性マップ」は、とても「科学的」とは言えないわけです。
─工学的に安全が担保できるのでしょうか。
NUMOは、どんなに地盤が悪くても、工学的技術で克服することが出来るとしています。これは工学に対する信仰みたいなもので「安全神話」です。「安全神話」は、3・11のフクシマで崩壊したはずです。しかし彼らはいまだにそれを言い続けています。日本のように、本来は地層処分には適さないところでも、日本の技術で、工学的に守れるのだとしているのです。工学の人たちは、ある意味では、条件が厳しければ厳しいほど燃えるわけです。青函トンネル、黒部ダム、丹那トンネルなど、断層や活断層がいっぱいあっても、日本は造ってきました。それだけ日本の工学は、テクノロジーに自信があるのです。戦艦大和やゼロ戦をつくってきたという技術に対する自信と、それをもってすれば、どんなに条件が悪くても克服できる、勝てるという神話があります。しかし、戦争というのは総力戦ですから、いくらすぐれた軍艦や飛行機を造る技術があっても、日本は負けました。地層処分も、総力戦のようなものと言えるかもしれません。人間の技術を超えた自然がありながら、1つ1つの技術が素晴らしければ、安全が担保できると信じしまうことは、一種の精神論になっているようにも思えます。
しかし、原子力に関しては、福島原発事故で、工学神話、安全神話は破たんしたのではないでしょうか。工学の方々は、「できない」というと、存在価値が無くなっていると思っているのかもしれません。でもそうではないのです。今の時点ではできませんと正直に言うべきです。今はできないけど、将来は、今よりずっと安全にできるようにします、だからその時間をください、と言えばいいのではないでしょうか。
─今後どのようにすればよいと思いますか。
私は「200年まちましょう」と主張しています。ガラス固化体では、200年後には、放射能のレベルが大きく下がります。その間、人間の目で見える地上または半地下で管理し、放射能の減衰を待てばいいのです。200年たったら工学や断層の研究だって、もっと進んでいるはずです。200年後に地層処分の判断を下してもいいのではないかと思います。それまでは、「乾式貯蔵」で保管すればいいのです。現在多くの原発で使用済み核燃料は、冷却用プールで貯蔵されていますが、地震などによって水漏れの危険性があります。ある程度、冷却したら取り出して、丈夫な容器(キャスク)に入れて保管する「乾式貯蔵」に移せばいいのです。ただ、それを、現在は、原発の敷地から持ち出して、青森県へ持っていっているわけですが、それこそ無責任です。核のごみは、それを出した原発の敷地内で保管するのが当然で、発生者責任だと思います。危険な核のごみを、まだ漏れ出さないように管理する技術もできていないのに、今すぐ地下に埋めてしまうことほど無責任なやり方はありません。電力会社が自らの責任において、原発の敷地内で、少なくとも200年は、人間の目の届くところで安全に管理する。それが責任ある態度ではないでしょか。もちろん、危険で処理が困難な原発のごみをこれ以上増やさないこと、そのためにも原発を止めることが必要です。それが将来世代に対する私たちの責任です。
2020年12月01日
ニュースペーパー News Paper 2020.12
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12月号もくじ
- 核のごみは200年まちましょう─小野有五さんに聞く
核のごみは200年まちましょう
インタビュー・シリーズ:160
小野有五さん(北海道大学名誉教授)
北海道の寿都町、神恵内村が高レベル放射性廃棄物の処分場選定に向けた文献調査に名乗りをあげ、北海道は核のごみの最終処分場に狙われています。この問題に対して専門的立場から警鐘をならしている小野有五さんに、地層処分の問題点をお聞きしました。
─自然地理学者の立場から日本の地層・地盤の特徴を教えてください。
日本列島は地震帯と火山帯の上にあり、地震と火山活動が活発に起きています。それは、日本列島が、プレートとプレートの境目、それをプレート境界と言いますが、その境目にあるからです。それも世界で唯一4つのプレートがぶつかっているところにあります。
それに対して、ドイツ、フランス、フィンランドなど地層処分しようとしているところは、安定大陸といって地盤がずっと安定しているところです。特にフィンランドは、10億年間も安定しています。アメリカの大部分や、カナダ、ロシアもそういったところです。プレート境界の変動帯にある日本と、安定大陸では、全く条件が違います。
世界の原発も、大部分は安定大陸にあって、日本とカリフォルニアだけがプレート境界の変動帯にあります。そこが危ないところです。原発や地層処分というものは、本来、安定大陸で考えられたものです。それをそのまま、日本に持ち込むことがまず問題です。変動帯の地層は新しく、柔らかい。不安定で、活断層がいっぱいあるところです。フィンランドとかスウェーデンといった国は、少なくとも10億年以上も前の古い地層からできていて、それ以降は地震もなく、ほとんど動いていません。
地盤の安定性の違いの他に、もうひとつ大きな違いは、地下水の問題です。日本は山国で、雨も多く、傾斜がありますから、山で地面にしみ込んだ雨水が、地下水となって大量に流れてきます。福島第一原発では、背後の丘陵からもどんどん地下水が流れてきて、大量の汚染水を発生させています。
例えばアメリカの地層処分場は、砂漠に計画されていますし、ヨーロッパの降水量は、日本の3分の1以下です。そして、日本に比べたらずっと平らな場所に計画されています。日本とは根本的に条件が違うのです。
地下水が多いということは決定的にマイナスです。地層に埋めた放射性物質が溶け出すことが一番怖いのです。地下水が多いというのは最悪の条件です。プレート境界にあって、活断層が多いこと、地下水が多いということで、あらゆる意味で日本は条件が悪く地層処分に向いていません。
フィンランドでは首都からして10億年も前の岩盤の上にあり、安定した岩盤の上で市民が生活しているわけです。でも日本では、たとえば札幌や東京で地面を掘ったら1000年前とか100年前の新しい地層が出てきます。地震もしょっちゅうあります。
そのフィンランドでさえ、地層処分に反対している専門家は少なくありません。まず、地層処分には10万年という時間がかかります。10万年前の地球は温度が高かったのですが、それから氷河期が来て、1万年前ころから気温が上がってきて氷河期は終わりました。2万年くらい前が一番寒かったのですが、このころ、北ヨーロッパは、氷床と呼ばれる巨大なドーム状の氷河にすっぽり覆われていました。ちょうどフィンランドあたりにその中心があって、そこでは厚さが、なんと4000メートルもあったのです。氷は固く、重たいので、これだけ厚い氷が載ると、10億年前の岩盤でも沈んでしまいます。氷が溶けると岩盤が持ち上がるわけです。地震が全くなくても、上がったり、沈んだりをすることで、岩盤に亀裂が入る可能性があります。また、氷が解けると莫大な水が地下水になったときが問題です。固い岩盤があるフィンランドでも、地層処分の危険性はあります。
─原子力環境整備機構(NUMO)の「科学的特性マップ」で「適地」とされた場所は安全なのですか。
適地マップでは、日本の国土の65%が地層処分の適地としていますが、あくまで日本の中で相対的にみて「適地」というだけです。グローバルスタンダードで見たらどうでしょうか。日本の地盤は、フィンランドが100点満点で90点なら、日本はせいぜい10点くらいと言えるかもしれません。それくらいの差があります。いくら日本の中で相対的に「適地」といっても、世界と比べれば箸にも棒にもかからないのです。
またNUMOは、放射性物質はガラス固化体にされ、丈夫な鉄製容器に入っていて、いかにも漏れないかのように印象づけていますが、実際は漏れることが前提になっています。
ガラス固化体を取り囲む鉄製容器はわずか1000年で壊れるとNUMOも認めています。1000年で無くなったら粘土層の中に漏れだし、粘土層は外に漏れる時間を遅くするだけなのです。
地層処分では、上からトンネルを掘り、300mより深いところにガラス固化体を埋める計画ですが、そのトンネルの総延長は200kmにもなります。10万年間、そこに1か所も割れ目(亀裂)が発生しない、などということは、とても信じられません。たとえ断層がない場所でも、トンネルは、亀裂だらけの地層に、コンクリートを流し込んでつくられます。コンクリートの壁は100年や200年でボロボロになるのではないでしょうか。地下水だって、水だけでなく温泉水もあります。そういうものでコンクリートや容器をさらに腐食させることになるでしょう。
一番問題なのは、適地マップでは、活断層の真上と、そこから、活断層の地表での長さの100分の1の幅だけを避ければ、「適地」にされていることです。しかし、2018年の北海道胆振東部地震では、今まで知られていた活断層から15kmも離れたNUMOのマップの「適地」で、大きな地震が起きました。石狩低地東縁断層帯の長さは、最近の研究では、約150kmとされています。その100分の1は1.5kmですね。マップでは、そこだけが「不適地」だったわけです。しかし、実際の地震は、その10倍も離れた「適地」で起きたわけです。また、この地震は石狩低地東縁断層帯とは無関係で、未知の活断層が動いたのです。やはりマップの「適地」でも、このような大地震が起き得ることが証明されたわけですから、マップは科学的とは言えないことが証明されたともいえるでしょう。
熊本地震は横ずれで、ほぼ垂直な断層でしたが、日本の多くの活断層は石狩低地東縁断層のように、緩やかに傾斜した逆断層なのです。地震を起こす断層面は、地下深くに向かって、斜めに入り込んでいくわけですから、胆振東部地震のように、活断層が地表に現れたところからはるかに離れた場所で地震は起きるわけです。そのことを全く認めていない「科学的特性マップ」は、とても「科学的」とは言えないわけです。
─工学的に安全が担保できるのでしょうか。
NUMOは、どんなに地盤が悪くても、工学的技術で克服することが出来るとしています。これは工学に対する信仰みたいなもので「安全神話」です。「安全神話」は、3・11のフクシマで崩壊したはずです。しかし彼らはいまだにそれを言い続けています。日本のように、本来は地層処分には適さないところでも、日本の技術で、工学的に守れるのだとしているのです。工学の人たちは、ある意味では、条件が厳しければ厳しいほど燃えるわけです。青函トンネル、黒部ダム、丹那トンネルなど、断層や活断層がいっぱいあっても、日本は造ってきました。それだけ日本の工学は、テクノロジーに自信があるのです。戦艦大和やゼロ戦をつくってきたという技術に対する自信と、それをもってすれば、どんなに条件が悪くても克服できる、勝てるという神話があります。しかし、戦争というのは総力戦ですから、いくらすぐれた軍艦や飛行機を造る技術があっても、日本は負けました。地層処分も、総力戦のようなものと言えるかもしれません。人間の技術を超えた自然がありながら、1つ1つの技術が素晴らしければ、安全が担保できると信じしまうことは、一種の精神論になっているようにも思えます。
しかし、原子力に関しては、福島原発事故で、工学神話、安全神話は破たんしたのではないでしょうか。工学の方々は、「できない」というと、存在価値が無くなっていると思っているのかもしれません。でもそうではないのです。今の時点ではできませんと正直に言うべきです。今はできないけど、将来は、今よりずっと安全にできるようにします、だからその時間をください、と言えばいいのではないでしょうか。
─今後どのようにすればよいと思いますか。
私は「200年まちましょう」と主張しています。ガラス固化体では、200年後には、放射能のレベルが大きく下がります。その間、人間の目で見える地上または半地下で管理し、放射能の減衰を待てばいいのです。200年たったら工学や断層の研究だって、もっと進んでいるはずです。200年後に地層処分の判断を下してもいいのではないかと思います。それまでは、「乾式貯蔵」で保管すればいいのです。現在多くの原発で使用済み核燃料は、冷却用プールで貯蔵されていますが、地震などによって水漏れの危険性があります。ある程度、冷却したら取り出して、丈夫な容器(キャスク)に入れて保管する「乾式貯蔵」に移せばいいのです。ただ、それを、現在は、原発の敷地から持ち出して、青森県へ持っていっているわけですが、それこそ無責任です。核のごみは、それを出した原発の敷地内で保管するのが当然で、発生者責任だと思います。危険な核のごみを、まだ漏れ出さないように管理する技術もできていないのに、今すぐ地下に埋めてしまうことほど無責任なやり方はありません。電力会社が自らの責任において、原発の敷地内で、少なくとも200年は、人間の目の届くところで安全に管理する。それが責任ある態度ではないでしょか。もちろん、危険で処理が困難な原発のごみをこれ以上増やさないこと、そのためにも原発を止めることが必要です。それが将来世代に対する私たちの責任です。
- 第57回護憲大会を開催
まもろう、平和と人権!すすめよう、民主主義と共生!
第57回護憲大会を開催
11月7日・8日、滋賀県大津市・びわ湖ホールで、「まもろう、平和と人権!すすめよう、民主主義と共生!憲法理念の実現をめざす第57回大会(滋賀大会)」(第57回護憲大会)が開催されました。新型コロナウイルス感染症問題が終息していないことから、例年3日間の日程を短縮し、参加者を大きく絞ったうえ、オンライン中継を行うという形式での開催となった本大会には、全国各地から約200人が参加したほか、多くの「リモート参加」がありました。
本大会は、7日は開会総会とシンポジウム、8日は憲法課題にかかわる各地からの報告で構成され、全体として事前に取材・収録したビデオをふんだんに活用するかたちになりました。これら大会全体を中継した記録動画や報告に使用した個別の動画は、youtubeチャンネル「 peaceforum channel 」にて配信していますので、ぜひご覧ください。
改憲への動きを阻止するとりくみを
本大会の意義としてまず確認したいのは、感染症問題によって見通しを立てることが困難ななか、しかし開催を決定したうえで、可能な実施形態を模索しながら、最終的にやりきることができたという点です。これは何をおいても地元・滋賀県実行委員会のご尽力によるもので、あらためてここで感謝申し上げたいと思います。改憲を掲げ続けてきた安倍政権が退陣したとは言え、それを引き継いだ菅政権の下で改憲策動が止まったわけではありません。護憲勢力の側として今の状況をどう捉えているかを共有する作業は、今後私たちのとりくみの方向性を打ち立てていくうえで重要なものです。
コロナ禍で見える差別・抑圧の構造
第二に、日程上時間的制約のなかにあって、こんにちの情勢下で問われている課題に対応した内容をもった大会になったという点です。シンポジウム「新型コロナウイルス感染症と日本の人権状況」では、感染症問題が弱い立場にある人びとのいのちと生活に集中的に打撃を与えている実態、そしてこれらが日本社会に存在する差別・抑圧の構造に起因していることを、多様なパネリストからの提起とディスカッションによって示しました。また、滋賀における多文化共生のとりくみ、水俣病の解決をめざすとりくみ、女性のおかれた現状、そして沖縄現地の情勢が重点的に報告されたほか、憲法にかかわるさまざまな課題についての報告が全国各地からありました。
若い世代へのアプローチを模索しよう
第三に、ビデオ映像の活用とインターネット配信の実施というあらたな試みを行ったという点です。いまやインターネットの動画配信を利用することは年齢を問わず個人の日常生活の一コマですが、旧来の形式に縛られがちな私たちのとりくみのなかでは、その導入は大きな「冒険」でした。また、特別報告「敵基地攻撃論と日米軍事同盟強化」は、大会日程においては時間の都合で冒頭部分のみ上映したもののフルバージョン(約90分)を前述の「 peaceforum channel 」にて配信していますが、このように大会中にできなかった部分や、補足が必要な部分などのフォローアップが行えることも強みです。
いっぽうで、本大会をじっさい開催するなかで明らかになった課題もあります。原水禁や沖縄などのとりくみについても共通したことですが、やはり実際に集まり、現地の様子に触れ、ともに議論するという機会は、ほかの手段によって代えることのできない、得がたい経験であることは言うまでもありません。動画配信で代替するにしても、実際に参加して聞くのと同じ時間を動画視聴するのは、だいぶん趣も違ってきます。また、これまでの大会規模かそれ以上に「参加」してもらうためには、各地での動画視聴会の実施や多くの人びとへの周知の徹底などがセットにならなくてはいけません。とりわけ若い世代にも届くようなアプローチの試行が必要です。
とりくみの成果を次回宮城大会に持ち寄ろう
次回(第58回)の開催地は宮城県仙台市を予定しており、宮城の皆さんからも成功に向けた意気込みをビデオメッセージとして寄せていただきました。感染症の早期終息を祈りつつも、しかしその時点の情勢次第でまたさまざまな試行錯誤が必要になることでしょう。そしてまた、菅政権は「オリンピック開催」を政治上のカードとして利用しつつ、来たる衆議院選挙に向けた策謀をすすめています。菅首相が安倍前首相の憲法軽視を「継承」していることは、この間の学術会議会員任命拒否問題で明らかです。けっして油断してはいけません。
一人ひとりのいのちの尊厳がおびやかされる状況でなお、このような政権と引き続き対決しなくてはならないという困難をともにのりこえつつ、そのなかでつかみとった成果と課題を来年11月の宮城大会にともに持ち寄ることができるよう、いっそうの努力を重ねていきましょう。(山本 圭介)
- 高レベル処分場立地調査への応募を許さない
高レベル放射性廃棄物処分場立地調査へのさらなる応募を許さないために
「はんげんぱつ新聞」編集委員 末田 一秀
高レベル放射性廃棄物処分場の候補地については、原子力発電環境整備機構(以下NUMO)が、2002年から公募を行っています。高知県東洋町長が2007年に独断で応募した後に辞任に追い込まれて撤回されたことがきっかけとなり、国による申し入れ方式も併用されることになりました。その後は、2017年に国が有望地を示してテコ入れするとして「科学的特性マップ」が示されましたが、目立った動きはありませんでした。
ところが、ここにきて北海道寿都町長が10月9日に自ら上京してNUMOに応募書類を提出。寿都湾の対岸に位置する神恵内村でも商工会が応募検討を求める請願を提出し、採択の翌日に国が申し入れを行って村長が受諾、10月15日に受諾を伝える文書を発送しています。立地調査の第1段階である文献調査が11月中旬に両町村で始まることになりました。
これまで私たちは文献調査を許さない立場で拒否条例の制定等を呼びかけてきましたから、一歩後退であることは否めません。しかし、実際に文献調査が始まれば、高レベル放射性廃棄物処分場候補地の選定制度がはらむ問題点がより顕在化してくることは確実で、追及の手を緩めずに両町村での調査の撤回も求めていかなければなりません。
また、北海道では両町村の動きに刺激され、滝上町において町議会議員らの呼びかけで、NUMO職員を講師に招いた勉強会が10月17日に開催されるなどの動きが出ています。NHK札幌放送局が行ったアンケート調査に、国から文献調査の「申し入れ」があった場合に乙部町、奥尻町、積丹町、遠軽町、別海町の5町が検討すると回答したことも報じられています。続いて手が挙がるようなことがないよう警戒が必要です。
なぜ候補地調査に手をあげるのか
そのために、なぜ両町村が調査に応募し受諾したのか、分析しておくことも有用です。
もちろんNUMOが行ってきた地域工作が浸透してきたことや、福島事故の「風化」が進んだこともありますが、金で釣る汚い国のやり口の影響が大きいでしょう。文献調査では2年間に最大20億円、仮に次の段階の概要調査に進めば4年間で最大70億円の交付金が出ることになっています。財政難の自治体にとっては魅力でしょう。しかし、これまでの原発立地にともなう交付金では、いわゆる箱物への支出に偏り、立地自治体の振興に役立たなかったばかりか、維持管理費がその後の自治体財政を圧迫していることは広く知られている通りです。ましてや処分場調査の交付金は一時的なあぶく銭に過ぎず、それがどのような効果を生むのか、両町村の結果を注視していきたいと思います。
応募検討を求める請願を出した神恵内村商工会の会長は「欲しいのは金ではなく人と雇用」とも発言しています。人口が8月末現在で823人、直近5年間で100人超減少という過疎化が進む小村の将来像を村民が描けていないことも、原子力村が付け入る大きな要因です。全国的に少子化による自然減の人口減少は避けられませんが、その中にあっても地場産業の振興や移住者の受入れサポートなどに力を入れて社会増につなげている自治体も数多く存在します。そのような努力を放棄して原子力に頼ろうというのでは、地域に魅力は生まれず、人も育たないことから、人口減少に歯止めをかけることはできないでしょう。
候補地調査に手が挙がる要因には、段階的選定というまやかしもあげられます。文献調査、概要調査、精密調査の3段階が法律に定められ、次の段階に進む際に知事と当該市町村長の意見を聞き「尊重」すると規定されていることから、反対であれば次の段階に進まないと説明されてきました。今回、北海道鈴木知事は反対する旨を早くから表明していますから、文献調査を行っても処分場立地とは別という詭弁が成立しています。梶山経産大臣も「知事または市町村長の意見に反して概要調査地区等の選定を行うことはない」とした文書を発出して、応募へのハードルを下げることに腐心しました。結果、国を信じられるかどうかという不毛な議論まで行われました。文献調査時にNUMOは現地事務所を設けて「対話活動」を進めるとされており、後戻りできなくなるおそれをどう理解してもらうのかが課題となっています。
問われる地域の民主主義
特に寿都町のケースでは、当初賛否が拮抗していれば応募しないとしていた町長が「肌感覚で賛成が多い」として応募してしまった独断の問題にも触れざるを得ません。住民投票条例の制定が求める直接請求署名が選管に提出された翌日の応募でした。町議会のあり方も問われます。全員協議会という非公開の場で検討を進め、「町民に伺いを立てて勉強会をするっていったらかえって面倒な話になる」という町長の発言を許していたばかりか、問題が報じられた後でさえ議事録の公開を拒んでいます。情報公開や説明責任が徹底され、民主主義が正しく機能していれば、原子力の立地は進まないはずです。(すえだ かずひで)
- バイデン新政権と日本の反核運動の課題─先制不使用に焦点を
バイデン新政権と日本の反核運動の課題
先制不使用に焦点を
核兵器禁止条約が2021年1月22日に発効とのニュースを受けて、条約に好意的な各紙の社説は、核兵器国との橋渡し役となるよう政府に呼び掛けています。「唯一の被爆国日本」は米国の核の傘の下にあるが、核戦争の悲惨さをよく理解していて、核廃絶を強く願っているはずだ。だから「非核保有国(核兵器禁止条約推進国)」(A)と「核保有国」(B)(とりわけ米国)の間の橋渡しをすることができるはずだし、また、そうすべきだ、という主張です。以下、このA、日本、Bという位置関係の想定がそもそも正しいのかどうかを検討してみましょう。
米国における先制不使用議論と日本
オバマ政権は2016年、「米国は決して先に核兵器を使うことはない」との「先制不使用」宣言をすることを検討しましたが、結局断念しました。ニューヨーク・タイムズ紙は、16年9月5日の記事で、同年4月に広島を訪れたばかりのジョン・ケリー国務長官が「米国の核の傘のいかなる縮小も日本を不安にさせ、独自核武装に向かわせるかもしれないと主張した」ことが一つの理由だと報じました。ウォールストリート・ジャーナル紙は、その1カ月前の8月12日に、7月に開かれた「国家安全保障会議(NSC)」の関係者の話として、アシュトン・カーター国防長官が「先制不使用宣言は米国の抑止力について同盟国の間に不安をもたらす可能性があり、それらの国々の中には、それに対応して独自の核武装を追求するところが出てくる可能性があるとして、先制不使用宣言に反対した」と伝えていました。
クリントン政権において先制不使用宣言が検討された際にも、オバマ政権が誕生した2009年に、「核態勢の見直し(NPR)」の中で「米国の核兵器の唯一の目的(役割)は他国による核攻撃の抑止とする」との政策の採用が検討された際にも、日本の不安や独自核武装の可能性が断念の理由の一つとされました。
日本側の懸念とそれによる核武装の可能性が、米国の核の役割を減らす政策の採用を妨げているという構図です。つまり、「非核保有国(核兵器禁止条約推進国)」、「米国核穏健派」、「米国核保守派+日本政府」というのが正確な位置関係ということです。
米国による先制不使用宣言に反対する日本
日本政府は、日本に対する核攻撃だけでなく、生物・化学兵器及び大量の通常兵器による攻撃にも核報復をするオプションを米国が維持することを望んでいます。例えば、1982年6月25日の国会で、政府は次のような解釈を示しています。米国の「核の抑止力または核の報復力がわが国に対する核攻撃に局限されるものではない」。また、1999年8月6日には、高村正彦外務大臣が、「いまだに核などの大量破壊兵器を含む多大な軍事力が存在している現実の国際社会では、当事国の意図に関して何ら検証の方途のない先制不使用の考え方に依存して、我が国の安全保障に十全を期することは困難である」と述べています。この種の答弁が、民主党政権時代も含め、繰り返されてきました(民主党の岡田克也外相は先制不使用に理解を示しながら、外務省が首相用に準備する文章は変えられなかったようです)。
下線部分は、「先制不使用条約」についての反論のようです。しかし、米国で議論されているのは、米国による一方的宣言です。敵国の先制使用は、米国側の核報復の威嚇で抑止する考えです。核攻撃に対する核報復は否定されていません。そもそも、一般の人々は、日本が頼っている核の傘は核攻撃を抑止するだけのものだと理解しているのではないでしょうか。
バイデン元副大統領の信念と米国の核軍縮運動
オバマ政権のバイデン副大統領は、退陣直前の2017年1月11日に行った演説で、「核攻撃を抑止すること──そして、必要とあれば核攻撃に対し報復すること──を米国の核兵器の唯一の目的(役割)とすべきである」との信念を表明しました。「唯一の目的」は、定義に曖昧な点があり、敵の核攻撃が目前に迫っているとの判断あるいは口実の下での核使用を認める可能性が残るが、「使用の可能性は核攻撃に対する報復に限る」と強調すれば、「先には絶対使わない」とする先制不使用と同じ意味になると理解されています。米国では、今回の大統領選挙に向けて、民主党のどの候補が大統領となっても先制不使用宣言をするよう保証することを目指す運動が展開されました。
例えば、集会などで各候補の見解を質すという戦術が採用されました。バイデン候補は、2019年6月4日の集会で、先制不使用を支持するかと問われ、20年前から支持していると応じています。また同じ6月、NGOによるアンケートの「米国は、核兵器を最初に使う権利を保持するという現在の政策を見直すべきか」という問いにイエスと答えました。
バイデン候補は2019年7月11日、17年1月に表明した信念に触れ「同盟国及び軍部と協議してこの信念を実現するために力を尽くす」と述べています。
日本の反核運動は米国の運動に呼応できるか
米国の軍縮運動は、バイデン新政権に対し、先制不使用宣言を要請する取り組みを強化していくでしょう。その時、「核を先に使うことはしない」という最低限の宣言を米国がするのを日本政府がまた邪魔することになるのでしょうか。日本の運動が米国による先制不使用宣言を支持する声を上げ、日本政府の政策を変えさせられるかどうかが鍵となります。それさえできないなら「橋渡し」の話をしてもしょうがないし、日本政府による条約支持など望みようもないでしょう。(核情報主宰 田窪 雅文)
- きれいな水といのちを守る全国集会にむけて
きれいな水といのちを守る全国集会にむけて
オンラインシンポジウムを開催
10月10日、「きれいな水といのちを守る全国連絡会」の第31回総会がオンラインで開催され、それに続き、「きれいな水といのちを守る全国オンラインシンポジウム」が行われました。岐阜県垂井町で開催予定であった第36回全国集会は1年延期となりましたが、運動継続の観点から、オンラインシンポジウムを実施したものです。
開会のあいさつを兼ね、岐阜県実行委員会の岩間誠実行委員長(西濃環境NPOネットワーク)から、オンラインシンポジウム開催の経緯、来年へ向けて継続的に準備を進めていくことなどが説明されました。
シンポジウムの第1部では、垂井町の会場(写真)から現地実行委員を代表して、神田浩史さん(NPO法人泉京・垂井/副代表理事)が、「多彩な水環境から学ぶ私たちの未来 樽井・揖斐川流域で紡ぐ穏豊社会」をキーワードに、垂井の多彩な水環境について多くの写真を用いて報告しました。続いて、揖斐川流域の様々な取り組みをテーマに、3人が報告を行いました。小寺春樹さん(NPO法人「山菜の里いび」理事長)は、「織田信長の薬草園再生プロジェクト」のほか、地元の小学生に森の未来を考えてもらえるようにフィールドワークを実施していることを報告するとともに、林業衰退で山が荒れてきていることに警鐘を鳴らしました。松久幸義さん(NPO法人「里山会」副理事長)は、高度経済成長を経て燃料としての木材が不要になったことから林業が衰退していること、荒れた山は大雨の影響で山林崩壊につながることを指摘しました。地元自治会と共同で山の清掃をし、里山つくりに力を入れていることが報告されました。安田裕美子さん(NPO法人「ピープルズコミュニティ」理事長)は、NPO法人を立ち上げたきっかけが「生ごみの回収」の不経済性であったこと、身近なごみの分別が未来の環境問題の解決につながり、循環型社会に寄与することの大切さを訴えました。
第2部では、岐阜県垂井市と東京の全水道会館のそれぞれの会場をつなぎ「水から考える私たちの未来」をテーマにディスカッションを行いました。オンラインでの開催を考慮し、配信会場全体の様子がうかがえるような画角も取り入れるなどの工夫を行いました。
シンポジウムの進行は、現地実行委員の神田浩史さんが担当し、登壇者各々に簡単な活動報告を求める形で始まりました。片岡栄子さん(ふぇみん婦人民主クラブ)が「石けんの共同購入から合成洗剤追放運動を始めた」と自身の体験談を交えて話し、水俣病、琵琶湖の汚染問題、東京の下水処理問題など、日本が公害列島であったことを提起しました。また、熱帯雨林破壊の問題をフィールドワークで目の当たりにした経験から、グローバルな視点でとらえていく必要性を訴えました。全国実行委員会の辻谷貴文事務局長は、全水道として水道事業にかかわっている経験から、「蛇口の向こう側」をキーワードに、地域コミュニティがあるところは上下水道職員が存在し、エッセンシャルワーカーとして奮闘しているが、人員削減、効率化が進み、大変なことになっていると訴えました。大坪久美子さん(NPO法人「Nプロジェクトひと・みち・まち」理事長)は、持続可能な社会をめざし、SDGsにある「ジェンダー平等」を推進していると報告しました。老若男女共同参画こそが、災害時にも対応できる環境づくりをすることができると、自身の取り組みを具体的に話しました。中村賀久さん(西濃環境NPOネットワーク会長)は、河川へのごみ散乱問題が自身の活動のきっかけであるとして、子どものころは川に入って遊べたのに、そうできないのは、自分たちの世代が汚してしまったという反省から清掃活動を始めたと話しました。今井和樹さん(22世紀奈佐の浜プロジェクト・学生部会代表)は、大学3年生であり、環境教育サークルでの活動を楽しみながらやっていると発言しました。活動のポリシーは「答志島だけではなく流域全体の問題であり、ごみを拾うことを目的にせず、問題の現状をしり、学びながら活動をつなぎ、広めていく」ことだとし、自分事として考え、持続可能な活動をしていくことの必要性を訴えました。
登壇者の報告に続き、お互いに質疑応答を行いました。報告に対するもののみならず、コロナ禍の対策など、今だからこそ話し合うべき事項が取り上げられました。最後に、神田さんが、「オンラインにすることで若者との交流が広がる。岐阜県と東京をつないで開催すると考えられたのも、コロナ禍だからこそ」と述べ、岐阜県の揖斐川流域の話だけではなく、水の問題を世界に訴えていかなければならないとまとめました。
きれいな水といのちを守る全国集会は、2021年の岐阜県内での実施を目標に、引き続き準備していきます。(橋本 麻由)
- 誠信の記憶を見て─歴史を学ぶ、そして今をつくる
「誠信の記憶」を見て
歴史を学ぶ、そして今をつくる!
今年の「憲法理念の実現をめざす第57回大会」は、大会が始まって初めて湖国滋賀県で開催された。コロナ禍の中の集会で、WEBを十二分に活用した大会になった。大会二日目のはじめに上映された「誠信の記憶」と題したビデオに感動した。朝鮮半島と滋賀のつながりの中で、日韓、日朝の問題を捉えたもの。戦争をさせない1000人委員会滋賀の共同代表で日朝交流を研究されてきた京都芸術大学の仲尾宏さんと朝鮮史研究を専門とされている滋賀県立大学の河かおるさんのガイドに誘われ、朝鮮との交流の陰と陽を学ぶ。日韓の間では、元徴用工裁判を中心に対立が続き、日朝関係は安倍前首相の「拉致三原則」が立ちはだかってびくとも動かない。国内では、朝鮮学園で民族教育を学ぶ子どもたちに、授業料無償化措置からの排除が続く。朝鮮幼稚園は幼保無償化から、朝大生は学生緊急支援金制度からも外された。現在の日本と朝鮮半島の不幸な関係はいつまで続くのか。解決の方法はないのか、このビデオを見ながら、もう一度日本と朝鮮半島の歴史を学びなおして、考えてみてはどうだろうか。
飛鳥の時代から、日本人の目は西へ、大陸へと向いていた。古代から様々な文物をもたらすのは西方であり、朝鮮半島だった。そこは、日本人にとって憧憬の地であり、新文化の摂取の地でもあった。日本列島と朝鮮半島は、旧石器時代や縄文時代から交流のあることが様々な出土品から証明できる。特に百済との交流は活発で、論語を伝えたとされる王仁や五経博士の段楊爾などは著名だ。石上神宮の七支刀や仏教の公伝などは百済第26代聖明王の時代とされている。様々な資料が、朝鮮半島南部の百済との交流を明らかにしている。660年の百済滅亡後は、多くの百済人が近江大津の宮に渡来したが、彼らの知識は律令制度を中心とした政治制度の確立に大きな役割を担った。
近江大津宮はわずか5年、壬申の乱後政権を掌握した大海人皇子は、飛鳥浄御原宮に遷都した。それから1000年の時が経過した1607年、秀吉の朝鮮出兵の過去を清算して「朝鮮通信使」が滋賀を通るようになる。最初の通信使は「回答兼刷還使」と呼ばれ、朝鮮出兵に対する謝罪と捕虜の刷還(帰還)を求めるものであったらしい。対馬藩の働きもあって4回目からは通信使となり、江戸時代に12回も実施された。仲尾さんが話されるように、それは対等な関係であり、朝鮮人街道の名称が残る滋賀県を含めて全国にその遺構が残る。鈴鹿市東玉垣町や瀬戸内海に面した岡山県牛窓町の唐子踊りなどは、朝鮮の文化が大きく反映されている。ビデオを見ながら、是非ゆっくりとその跡を尋ねる旅がしたいと考えた。
近江ゆかりの儒学者に、新井白石・室鳩巣ともに木下順庵門下の十哲に数えられた雨森芳洲がいる。芳洲は、幕府より朝鮮方佐役に任命され朝鮮に7度も足を運んでいる。仲尾さんは、芳洲が秀吉の朝鮮出兵を「無謀の極み」と批判したこと、そして「争わず、偽らず、真実を以て交わり候を、誠信の交わりと申し候」との芳洲の言葉を紹介している。
日本は、1910年に朝鮮半島を植民地として、敗戦まで過酷な政策を強要した。滋賀県各地にも強制連行・強制労働の痕跡が残っている。河さんは、滋賀県内で確認できる範囲で700人くらいが強制連行されてきたと語っている。
敗戦から75年、日本政府は韓国の元徴用工が起こした裁判に対して、解決済みとして一切応じようとしない。加えて、在日朝鮮人の民族教育を認めず、無償化措置から排除し日本の学校に通えとの植民地政策同様の主張を繰り返している。11月3日の国会議事堂前で開催された憲法集会で朝鮮大学4年の学生は、「私たちは自国の言葉を学ぶことも許されないのですか」と、朝鮮学園への差別に抗議した。75年も経過しながら、日本と朝鮮半島は、心から理解し合えているとは言いがたい。これまでの政治の不作為としか言い様がないのではないか。仲尾さんは、芳洲の「誠信の交わり」は多文化共生の考え方と評した。河さんは、強制連行の歴史の中から「平和っていうものを作っていこうと思ったら、市民こそが歴史を忘れたら絶対だめだと思う」と結んだ。滋賀朝鮮初級学校の鄭想根校長は最後にこう話した。「朝鮮通信使が通った東海道(朝鮮人街道)は、実は本校の真横、そこを2000人の行列が行く。鳥肌が立つ。そんな実体験がこの近江の地にある。じゃあ、私は、あなたは、ともに何をなすべきか。何ができるか。」私たちも考えたい。(藤本 泰成)
憲法理念の実現をめざす第57回大会で上映:「誠信の記憶」https://youtu.be/HBCuxMY7MsY
放射能を海に捨てるな!
放射性物質トリチウムなどが含まれる、福島第一原発から排出された汚染水の海洋放出を決めるとみられていた関係閣僚会議の開催予定日、10月27日に衆議院第二議員会館前では「福島原発汚染水を海に捨てるな!緊急行動」が行われました。ルポライターの鎌田慧さんが発言「福島での住民、漁民の皆さんの汚染水廃棄に対する怒りが、全国に広がりつつある。全世界に影響する環境汚染であり、国際的にも運動を作り上げていきたい…私たちは海洋投棄を許さない闘いを強めて行こう」。参加者の約170人で海洋投棄阻止への決意を再度確認しました。「処分方針」の決定は延期されました。しかし、日本政府はさらに、福島第一原発からの汚染水よりも大量の放射能を海洋と大気中に放出する計画です。7月29日に新規制基準に適合するとされた、六ヶ所再処理工場が本格稼働すれば、他の放射性物質に加えて、毎年、約9700兆Bqのトリチウムが海洋に放出されます。これは現在貯まっている福島原発汚染水に含まれるトリチウム総量の10倍以上。再処理工場の稼働もなんとしても止めなければなりません。
すでに多くの国際的な反対メッセージが各国から表明されていますが、原水禁が呼びかけた放射性物質汚染水海洋投棄反対の国際メッセージ募集には、今次々と海外から投稿が寄せられています。
(写真上は、福島第一原発から排出された汚染水が蓄積されているタンク群の一部。出典:東京電力ホールディングス。他は10月27日の集会の模様)
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