2019年11月アーカイブ

 核不拡散条約(以下、NPT)の発効から半世紀、無期限延長から25年というメモリアルな2020年NPT再検討会議まで約4か月強となる中、核軍縮を巡る情勢は極めて深刻である。この現状を克服するには、核兵器廃絶を求める新たな国際的な流れを生み出さねばならない。そこで、2020年NPT再検討会議へ向けて何が問われているのかについて考える。

1)2020年NPT再検討会議へ向け情勢は厳しい   
 米トランプ政権は、「核態勢見直し(NPR)」(2018 年2月)で、低威力の核弾頭や海洋発射の中距離巡航ミサイルなど新型核兵器の開発をうちだした。一方、ロシアは、米国が2002年にABM制限条約を一方的に破棄した後、弾道ミサイル防衛(以下、BMD)を拡充させたことに対抗し、米BMD を無意味にする新しい大型ICBM 、原子力推進で無限の航続距離をもつ核巡航ミサイル、極超音速滑空弾、無人原潜など、新概念の戦略兵器の開発や配備を誇示している。中国は、2019年の「国防白書」で、核戦力は「必要最小限の水準に維持する」としつつも、米国のBMD に打ち勝つことを目指した核兵器の近代化を進め、核弾頭数を増やし続けている。さらに19年8月2日にINF全廃条約が失効し、北東アジアや欧州での中距離ミサイル陸上配備の新たな核軍拡競争が始まっている。2021年2月に失効する新戦略兵器削減条約(新 START)の延長に係る交渉は進みそうもない。このように核兵器国、とりわけ米ロは、NPT 6条や過去のNPT合意に反する行動に走っている。
 この状況を背景として、19年5月、2020年NPT再検討会議第3回準備委員会において、サイード議長がまとめた2020年へ向けた勧告案に対して、米国をはじめとした核兵器国は、「核軍縮に関する表現が強化された」ことを理由に強く反発し、全会一致で勧告案をまとめることはできなかった。●1

2)これまでのNPT合意に照らし核兵器国の核政策を検証しよう
 今日、核兵器国、とりわけ米国やロシアは、核兵器の有用性を、当然のように口にするに至っている。核兵器国はNPT第6条や、過去のNPT合意に明確に反する行為に走っている。たとえば以下のようなことが挙げられる。●2

  1. INF全廃条約からの離脱は、いったん合意した重要な核軍縮合意の放棄であり、軍縮合意の原則の一つである「不可逆性の原則」に反している。ちなみに2010年行動計画の行動2は全会一致で「条約義務の履行に関して、不可逆性、検証可能性、透明性の原則を適用することを誓約する」としている。
  2. 相手がINFの開発をしたからこちらも対抗してINFを開発するという米国とロシアの考え方は、まさに新しい核軍備競争の行為である。これはNPT第6条に反する。NPT第6条は「核軍備競争の早期の停止に関する・・効果的な措置につき、誠実に交渉を行うことを約束する」と定めている。
  3. 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の核弾頭の一部を低威力核弾頭に置き換える行為は、ある種の核弾頭を減らして他の種類の弾頭を増やす行為である。これは、2010年行動計画の行動3「配備・非配備を含むあらゆる種類の核兵器を削減…の努力を行うことを誓約する」、行動5a「あらゆる種類の核兵器の世界的備蓄の総体的削減に速やかに向かう」という合意に違反する。
  4.  ロシアの新しい大型ICBMや無限の航続距離をもつ核巡航ミサイルなど新概念の兵器の開発は、核・非核両用であっても、NPT及び核兵器のない世界という目的に反する行為であり、2010年行動計画の行動1に違反する。行動1は「NPT及び核兵器のない世界という目的に完全に合致した政策を追求することを誓約する」と述べ、このような政策を根本的に禁じている。
  5. 核兵器国の中で唯一行われている中国の核弾頭数の増加は、行動3、行動5aに違反する。
     ここからわかるように、現時点の核軍縮における最大の障害は、米ロがNPTに定められた核軍縮義務に背を向けていることである。したがって、何はともあれNPT再検討会議において、これを正面から指摘し、米ロが核兵器削減についての協議を直ちに開始するよう強く要求すべきである。そのうえで、特に米ロに対しては、以下の2点を具体的に求めていかねばならない。
    ①    新START条約第14条で規定される条約の5年間延長を行う協議を直ちに始めること。
    ②    中距離核、極超音速兵器を含む戦略核兵器を含む攻撃的兵器全般にわたる協議を行い、核兵器削減の次の段階の目標について合意を目指すこと。

3)戦争被爆国としての責任放棄を表明した国連総会日本決議 
 ここで重要な役割を担うことが期待されるのが、「唯一の戦争被爆国」を自認する日本政府と、NPT第6条の軍縮義務の履行を求め続ける新アジェンダ連合(以下、NAC)の国々である。最新の第74回国連総会に提出された核軍縮決議から、その可能性を占うことができる。現在、出されている国連総会決議の中で、核兵器のない世界を実現するために必要な諸問題を包括的に取り上げているのは、新アジェンダ連合(NAC)決議と日本決議の2つである。今日の核軍縮における困難な情勢を踏まえたとき、この2つの決議の役割は極めて重要である。
 日本決議は、94年に第1回目が提案されてから今年が26回目となる。今年の決議は、「核兵器のない世界に向けた共同の行動指針と未来志向の対話」と題され、昨年までの「核兵器の完全廃絶に向けた新たな決意の下での団結した行動」から一変した●3。内容的にも主文が6項目と極端に短縮され、過去の日本決議への言及がほとんどなくなった。
 共同の行動方針として挙げられた6項目は、(a)透明性の強化、(b)核爆発のリスク低減、
(c)核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)成立、(d)包括的核実験禁止条約(CTBT)成立 、(e)核軍縮の検証、(f)軍縮・不拡散教育など、核兵器国でも受け入れやすいものに限定している。過去の重要なNPT合意が履行されていない状況に踏み込む要素がまったくみられない。特に、2010年NPT合意で初めて盛り込まれた「核兵器使用の壊滅的な人道上の被害」や2000年合意の「核兵器国は保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束を行うこと」(13項目の6)を「共同の行動方針」から除外していることは大問題である。
 これまで、日本決議は、NPT条約の合意履行を一つ一つ積み重ねることを基本方針としてきた。2016年では、主文3節で1995 年再検討・延長会議、2000年、2010年再検討会議の最終文書など過去のNPT合意の「諸措置を履行することを求める」としていた。ところが、2017年、2018年の日本決議は、2016年決議と比べて過去のNPT合意の履行を求める姿勢が極端に弱まっており、この現象は核兵器禁止条約(以下、TPNW)の成立とともに起こった。2017年になると同節は主文から消え、前文で「過去のNPT合意を想起」するだけになった。2018年、主文3節は復活したが、「グローバルな安全保障を発展させることへの配慮のもとで」という条件が付いている。
 2019年の新決議は、NPT合意を尊重し、それに依拠するという基本姿勢を放棄したようにみえる。広島、長崎の被爆という人類史的な経験をもつ日本が、人類に対して負っている核兵器廃絶への責任を、どういう道筋で果たそうとしているのか、皆目、見当がつかない。
 これに対し、新アジェンダ連合(NAC)決議は、NPT第6条義務を履行するよう求める原則を貫いている。例えば、核兵器国が、「安全保障ドクトリンにおいてますます核兵器を重視していることに…深刻な懸念をもって留意し」(前文第26節)、「新START条約の延長と後継条約に関する交渉の出来るだけ早期の締結」を求める(前文第29節)としており、2)の最後で見た2つの項目を意識したものとなっている。
 NAC決議は、2018年の主文に新たに以下の2節を加えており、これらは、2019年も継続されている。
主文10節:核軍縮への誓約をないがしろにし、核兵器使用のリスクと新たな軍備競争の可能性を高める、核兵器計画の近代化に関する核兵器国の最近の政策表明に懸念をもって留意する。
 主文19節:すべてのNPT締約国に対して、NPT条約及びその再検討プロセスの健全さを確保するために、第6条下の義務の履行を切迫感をもって前進させることを要請する。
 この2節は、近年の米国、ロシア に見られる際立った核兵器依存への回帰とNPT上の義務を無視した言動に対する警告であり、2020年NPT再検討会議に向け多くの締約国が主張すべき内容を含んでいる。
 以上より、新アジェンダ連合は、一貫してNPT6条とそれに依拠したNPT合意を根拠に、核兵器国に対して核軍縮の促進を求め続けているが、日本は、過去のNPT合意を軽視する姿勢を強め、安全保障を米国の核の傘に依存する道に固執している姿が浮かび上がる。

4)カギは、東北アジア非核兵器地帯で日本が核抑止から抜け出すこと
 これまでのNPT合意の前進を振り返ると、国際情勢を活用することによって前進を勝ちとってきたという経過がある。1995年はNPT無期限延長の是非が問われる中、1996年までのCTBT交渉の完了や中東決議が合意された。2000年はインド・パキスタンの核実験から生まれた危機感で、核兵器廃絶が国際的な共通目標となった。そして2010年はオバマ大統領のプラハ演説の勢いが「核兵器のない世界」をめざす声を作り出した。
 それでは、2020年NPT再検討会議は何を契機として国際的な意欲を引き出せるのか。2020年NPT再検討会議の成功には2000年や 2010年NPT再検討会議の時のように核軍縮への機運を作りだす新しい国際的な努力が必要であり、核軍縮における困難な現状を打破するための新たなリーダーシップが求められている。
 しかし、残念ながら2020年NPT再検討会議は、上記のように核兵器国間の核軍拡が勢いを増し、日本のような核兵器依存国は、その流れに押し込まれる状況が生まれており、核軍縮における停滞状況の中で開かれることになる。それを考慮すると、2020年NPT再検討会議は、まずはNACを先頭に、NGOも協力しながら、NPT第6条や過去のNPT合意を順守し、その強化に努めることの重要性を多くの国が指摘し、特に米国に行動の修正を求めていく場とせねばならない。
 併せて核兵器禁止条約が採択された今の時点で、日本のビジョンと行動が問われていることを強調したい。NPT合意すら無視する方向に動く日本政府に対し、核兵器の非人道性を身をもって知る唯一の戦争被爆国としての道義的責任を果たす立場の堅持を求め、そのために自らの安全保障における核兵器の役割の見直し・低減に着手するよう求めていかねばならない。それには、日本が「核兵器依存政策」から抜け出す道を歩み始めることが必要である。
 幸い膠着状態が続き、合意履行の行方は定かではないにしろ、2018年に始まった米朝、南北の首脳外交により朝鮮半島の平和と非核化が外交の現実的な課題となっている。この好機を活かすためにも、今こそ、日本政府は、核兵器に依存しない安全保障政策へと転換する具体的な政策として、東北アジア非核兵器地帯の創設を提案すべきである。これは、今年の日本決議からは、政府が自ら提案することは想像もできない政策であるが、そうであれば、市民社会は、日本政府を動かすために、東北アジア非核兵器地帯の設立を求める日本の世論を強めねばならない。ピースデポは、20年以上にわたり、東北アジア非核兵器地帯について「3+3」構想を提案し、努力してきたが、今こそ、日本の自治体や宗教者の取組みを強めるとともに、日韓の市民・労働団体、国会議員の協力、連携などに幅広く取り組んでいかねばならない。鍵は、東北アジア非核兵器地帯で日本が核抑止から抜け出すことである。

 19年9月23日、国連の気候変動サミットでグレタ・トゥンベリさんは、世界の指導者へ向けて、「生態系は崩壊しつつあります。私たちは、大量絶滅の始まりにいるのです。なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よく、そんなことが言えますね」とスピーチした。これは、若者からの「未来世代につけを残すな」という強いメッセージである。同じことは、核兵器問題にも当てはまる。生命体が生きる場を瞬時にして奪いかねない核兵器を未来世代へ残すな!との訴えを世代を超えた取り組みとして強化せねばならない。

注:
1 「核兵器・核実験モニター」第569号(2019年6月1日)。
2 「核兵器・核実験モニター」第577号(2019年10月1日)。
3 「核兵器・核実験モニター」第580号(2019年11月15日)。

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 11月29日、日本教育会館で「第51回食とみどり、水を守る全国活動者会議」が開催され、全国46都道府県から97名が参加しました
 農業・森林・環境のそれぞれの課題について、①安藤光義さん(東京大学教授)より「農村政策の展開と現実」について、②村上幸一郎さん(農林水産省大臣官房政策課調整官兼林野庁計画課)より 「森林経営管理制度と森林環境税・森林環境譲与税」について、③橋本淳司さん(水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表)より「気候変動対策として食・森・エネルギー・水を流域産流域消にシフトする」についての3講演が行われました。
 その後、北海道から「食・みどり・水を守る道民の会の取組」について、熊本県からは「熊本県民会議における活動報告」についての2つの取り組み報告を受けました。

 

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 「桜を見る会」を私物化する安倍首相に対する疑惑は一層の深まりを見せています。緊急の呼びかけにもかかわらず、首相官邸前には400人の参加者が集まりました。

 集会は「予算委員会今すぐ開け!」など怒りのこもったコールからはじまり、主催者を代表して総がかり行動実行委員会の小田川義和共同代表が「花見の問題ではなく、社会正義の問題であり、一発アウトの問題である」と挨拶しました。
 
 つづいて「桜を見る会追求本部」に参加する国会議員5名が駆けつけ、それぞれに「桜を見る会」の問題点を訴えかけました。法律に反しているにも関わらず安倍首相が説明する責任を果たさないこと、招待状区分の「60」という番号が総理大臣・官房長官等推薦枠であることは明白であること、霞ヶ関が『総理という個人情報』を守ろうとしていることなど、追求する会で取りくまなければならない疑惑が数多く並べられました。
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 映画『誰がために憲法はある』を制作した井上純一監督は、映画制作のための資料集めをしようとした際、岸信介が満州に行っている時期の資料が無くなっていたことを挙げ、「資料が無いことは検証が出来ず、未来の世代に責任が持てないことだ」と招待者名簿の処分を許してはいけないと発言しました。東京大学の醍醐聡名誉教授は「桜を見る会は海外の大使・公使との交流で十分ではないか」と招待者の選定基準に疑問を投げかけました。看護師の宮子あずささんは「首相の利益誘導は許されるのに、生活保護を受けている人がちょっとした贅沢をするのは許せないと言う人が増えている」と発言し、モラルがおかしくなっていると指摘しました。集会の最後には、「今回は絶対に安倍首相を逃がさない」と総がかり行動実行委員会の高田健共同代表から行動提起が行われました。
 
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 11月27日、日本教育会館で日朝国交正常化連絡会主催の「日朝国交正常化連絡会記念講演会『どう切りひらく日朝関係』」が開催されました。まず、主催者を代表して、藤本泰成全国連絡会代表委員・平和フォーラム共同代表が「安倍政権は無条件に朝鮮と対話をすると主張しているけれど、これまでの朝鮮半島をめぐる動きにはまったく参加できていない。朝鮮高校や幼稚園の授業料無償化からの排除を始めとして、日本政府は政府として在日朝鮮人社会に対してヘイトを繰り返している。私たち市民社会がしっかりと本質をわきまえ、日朝国交正常化への道程に目を向けなくてはならない」と訴えました。
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 続いて故金丸信自民党副総裁の秘書であり、次男でもある金丸信吾さんが、22回訪朝するなど、日朝国交正常化交渉に尽力してきた経験を踏まえ、講演を行いました。「平壌宣言の主旨は過去の清算と、実りのある関係を結んでいくことにある」と述べ、「原点に戻って掛け違えたボタンをもとに戻すよう努力をしよう。そのためには圧力と制裁ではなく、まず対話が必要である」と強く訴えました。
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 次に元日朝国交正常化交渉日本政府代表の美根慶樹さんが話されました。「日本政府が拉致だけにこだわっていたら、永遠に問題は解決しない。相手がどう見ているか、自分たちが事実と違うことを思い込んでいないか、意図的なものがあったのではないかを追究する必要がある」と述べました。そして「日朝関係の悪化は安倍政権の2015年安保法成立のときに役に立った」と指摘しました。
 最後に全国連絡会代表委員・事務局長の石坂浩一さんが、日朝国交正常化に向けてこれからも努力していくと訴え、閉会となりました。

沖縄だよりNO.95(PDF)

安倍9条改憲NO! 50回目の19日行動に2600人

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 「安倍9条改憲NO! 安倍政権退陣! 11.19国会議員会館前」がおこなわれ、2600名が参加しました。

主催者代表の高田健さんは「今日で安倍首相は任期が第1位に並んだが、外交、経済の状況は悪くなるばかりだ。憲法調査会を悪用しようとする動きを許さず安倍改憲を阻止しようと訴えました。

続いて立憲野党から発言がありました。

まず国民民主党の日吉雄太国会対策委員長代理が、さまざま問題を指摘されていながらあえて任命したといえる2人の大臣が辞任しながら、責任を取ろうともしない権力私物化の安倍政権を倒し、別の政権を作ろうと呼びかけました。次に立憲民主党の打越さく良参議院議員が憲法大好きだった少女時代に触れながら、厳しい時代を生き抜いてきた憲法をいまこそ活かすべきであり、自衛隊の調査研究を名目とした中東派兵は認められない、民間英語入試の延期など議会少数でも市民と共同で頑張れる、安倍改憲阻止を頑張ろうと訴えました。社民党の福島瑞穂副党首は「桜を見る会」にみられる私物化を許さず、中東派兵、武器見本市開催など憲法無視の政治を許さず、野党共闘で政府を倒そうと呼びかけました。共産党の山下芳生副委員長は、「桜を見る会の」や前夜祭で後援会を常識では考えられない費用でもてなした行為に疑義をしめし、こうした政治を変える立憲主義にもとづき、格差をなくす政府を作ろうと述べました。沖縄の風の高良鉄美参議院議員は、首相は義務ではない改定発議にかまけている、国会は帽子を被っては入れないというが、われわれは臣民ではない、安倍を退陣させ、逮捕すべきである。このままでは日本はだめになってしまうと、訴えました。

その後市民から発言が行われました。元教員で民間英語試験導入反対に取り組んでいる田中真実は、8400の大学教員が参加した反対を押し切って進められていたのが、SNSでの拡散や高校生の行動で止められたこと、これから採点能力のない民間企業による記述式試験をやめさせる決意を述べました。

ジャーナリストの志葉玲さんが、アメリカがイランを追い詰めるのを支援するだけの中東派兵に警鐘を鳴らし、これまであった中東での日本への好意を壊し、反日意識を生み出す行為を許してはならないと訴えました。その後も市民から中東派兵やシビリアンコントロールを破壊する安倍の政策や、沖縄辺野古建設の強行が続いていることへの批判が続きました。

最後に自由学園の高校生が、民主主義、平和主義、沖縄、核兵器禁止条約について学んだこと、これからも行動していきたいということを話しました。

 

その後年内の行動提起が行われ、終了しました。

イージス・アショア配備問題で政府要請行動

 

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 秋田県秋田市と山口県萩市に配備が計画されているイージス・アショア(地上配備型ミサイル迎撃システム)について、政府はすでに今年の4月、本体購入費の一部を米政府と契約し、配備に向けた準備を着々と進めています。そのいっぽう、住民説明会で防衛省職員が居眠りをし、さらに防衛省のずさんな予定地調査が明らかになるなど問題が拡がっています。
 こうしたなか11月19日、秋田県平和センター、山口県平和運動フォーラムとそれぞれの現地市民団体が協力して、国会議員への要請行動、防衛省に対して要請および問題点を質す行動にとりくみました。
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 19日の午前中には、衆議院の安全保障委員会委員および参議院外交防衛委員会委員に要請し、午後は防衛省に対して要請を行いました。イージス・アショアに搭載予定で、日本とアメリカで開発中の迎撃ミサイル「SM3ブロックⅡA」について、要請団が防衛省に問いただしたところ、実験試射の回数が少なく、命中率も芳しくないにもかかわらず、「基本的な性能は充分で、対策は万全である」と豪語する始末。ミサイル防衛システムで日米軍事一体化の点を指摘されると、「我が国が主体的に、独自の防衛力の整備」を強調し、米国からは支援を受けることだけと答えています。この点は、2015年の日米ガイドライン、安保法制(戦争法)の強行成立で、日米軍事協力が拡大したことをあたかも覆い隠すような発言と言えるでしょう。
 そのほか、イージス・アショアが迎撃ではなく、攻撃型の兵器に容易に転用できること、他国から攻撃目標とされ地域住民の不安、電磁波の影響などの点で、納得できる説明はありませんでした。そして、地元の理解を求めるとしながらも、地元の理解が自治体の長であるのか住民であるのか問い質しても、「その時々の状態で、一概にはこたえられない」とはぐらかすなど不誠実な対応に終始しました。
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 また、この日立憲フォーラムおよび戦争をさせない1000人委員会が主催する「安倍政治を終わらせよう!11.19院内集会」が開催され、イージス・アショアの配備に関する集会が行われました。
 要請行動に参加した秋田、山口両県から、櫻田憂子さん(STOPイージス!秋田フォーラム代表)と森上雅昭さん(「イージス・アショア」配備計画の撤回を求める住民の会代表)が、現地でのとりくみを報告し、前田哲男さん(軍事評論家)が、イージス・アショア導入の経緯や中距離核戦略(INF)全廃条約失効後に予測される事態などについて問題を提起し、今後敵基地攻撃用に変質していく可能性を指摘したうえで、イージス・アショア配備計画撤回のとりくみの必要性を訴えました。そして、纐纈厚さん(明治大学特任教授)が座長となり、4名のパネルトークと会場からの発言などを踏まえ、配備の問題点を共有していきました。

戦争をさせない1000人委員会が新宿西口で街宣

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 戦争をさせない1000人委員会は、安倍9条改憲に反対するとともに、安倍政権の退陣を訴える街頭宣伝行動を行い、あわせて「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」も実施しました。

  平和フォーラムの藤本泰成共同代表は、「桜を見る会」に税金で自らの支援者を招いていたことに触れ、「税金は市民のために使うもの、安倍首相のためのものではない。安倍首相は直ちに退陣を!」と訴え、「そのためにも、『安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名』に協力を」と、道行く市民に呼びかけました。

 署名に協力してくれた市民からは、「安倍政権を早く退陣に追い込みたい」などの意見が多く聞かれました。

 国会では、憲法審査会が開かれ、憲法改正手続きを定める国民投票法の議論がすすむ可能性もあります。安倍9条改憲阻止に向けて、みなさんのさらなるご協力をお願いします。

2012年12月の第二次安倍政権成立以来、日本国憲法によって保障された権利や自由の空洞化が、急速に進行してきました。このことは、この間強行されてきた特定秘密保護法や戦争法、共謀罪新設といった、明文的な、憲法違反の法律によるものにとどまりません。

安倍首相の演説への抗議の声を上げた市民を、何らの法的根拠も示さず警察が拘束する。あいちトリエンナーレにおける「表現の不自由展」に対する脅迫を契機に行政が介入、補助金の停止を強行する。基本的人権のひとつである「表現の自由」への抑圧が、著しく拡がっています。

そしていま、全日建関西生コン支部に弾圧が集中しています。憲法28条に規定された労働基本権に基づく労働組合による正当な活動を、「威力業務妨害」「恐喝」などとでっち上げる強引な手法で、のべ数十人もの組合員を逮捕するという、許しがたい暴挙です。

これらはまさに安倍政権が目論む改憲内容の先取りというべきもので、いま、ここで、表現者や労働組合と市民がしっかり結び合って、この攻撃をはね返すことなくしては、一人ひとりの自由や権利の破壊がよりいっそう、進行していくことになるでしょう。

安倍政権のもとで、格差と貧困がますます拡大しています。そのことはとりわけ、女性や子ども、高齢者、障がい者、外国籍住民など、弱い立場に置かれた人びとを直撃し、大きな打撃を与えています。

また、安倍政権は、韓国敵視煽動や在日朝鮮人への差別的政策を推し進め、東アジアの非核・平和や友好関係醸成の努力に敵対的な振る舞いを続けています。さらに、沖縄・辺野古新基地建設強行を継続し、沖縄県民の民意と心情を踏みにじっています。そしてあらたに、アメリカの意を体して、中東への自衛隊派遣を行おうとしています。

憲法理念の中心をなす平和主義や地方自治、男女平等、生存権を一貫して軽んじる、こうした姿勢に対し、沖縄県民、そして東アジアの民衆とともに、「NO!」を突きつけましょう。

いま、安倍首相が公言していた2020年までの改憲は、日程上それ自体は困難になりつつありますが、今臨時国会中の改憲手続法(「国民投票法」)改正を策動するとともに、自民党の地方組織に号令をかけ、各地での改憲キャンペーンを展開しています。私たちとしても改憲発議阻止のとりくみを、これまでを超える熱量をもってすすめていかなくてはなりません。

私たちは11月9日から11日にかけ、北海道・函館の地で、56回目となる護憲大会を、「平和・自由・人権 すべての生命を尊重する社会を」をメインテーマとして掲げ、開催しました。開会総会、分科会、そして閉会総会をつうじて確認されたことは、安倍政権の行ってきた諸政策が、憲法の理念からかけはなれたものばかりだということです。

私たちは、憲法理念をないがしろにしてきたうえ、さらには明文改憲に手を付けようとする安倍政権を早急に退陣させるとともに、憲法理念に立ち戻り、そしてまたそれを実現させるために、全力を尽くさなければなりません。

今年7月の参議院選挙では、辛くも改憲勢力の3分の2割れを実現しましたが、近く予想される衆議院選挙では、改憲発議そのものを断念させる、大きな勝利を実現しなくてはなりません。そのためには、ひろく人びとの心をつかむような、市民と野党の共闘のありかたをつくりだしていく必要があります。全国各地での奮闘をあらためて誓いあいましょう。ともにがんばりましょう。

2019年11月11日

平和・自由・人権 すべての生命を尊重する社会を 憲法理念の実現をめざす第56回大会閉会総会

憲法理念の実現をめざす第56回大会まとめ

憲法理念の実現をめざす第56回大会もいよいよ閉会の時が近づいています。この3日間、参加者の皆さんには、真摯な討論をいただいたことにまず感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。また、本大会成功に向けて、大変お忙しい中、ご協力いただいた助言者や運営委員の皆さん、そして、大会を支えていただきました地元北海道実行委員会の皆さんに心から感謝申し上げます。

さて、この3日間の中で多くの貴重な意見をいただき議論を進め深めることができました。1日目には「日本社会はこれでいいのか? 安倍政権の7年を問う」をテーマに清末愛砂さん、雨宮処凛さん、中野麻美さんの3名をお招きして鼎談を開催しました。

この中で、お三方からは、憲政史上最長となった安倍政権の中で打ち出されたアベノミクスによる国づくりの結果、貧困・格差問題が深刻化し格差や貧困、偏見、差別があたりまえの社会が作り出されてきたこと。一人一人の生命が序列化され選別される社会が生まれてきていること。アベノミクスや働き方改革の中で人間と労働を国家と経済の道具として、あるいは、国家と経済に貢献させるものとするなど、人間の安全保障がなおざりにされ国家の安全保障が優先される社会作りが行われてきた。と話されています。また、こうしたアベノミクスによる生命の破壊が進行する中で、これからの私たちの希望や課題、取り組みについてそれぞれの立場からお話しいただきました。

雨宮さんからは、具体的に人の生命を守るための防波堤として、あるいは「便利グッズ」として、25条生存権をはじめとした憲法を活用するとの意見が出されました。また、清末さんは、現在のような不寛容ではなく寛容な社会づくりが提起され、助け合いの精神、コミュニティの中でケアすることができる社会づくりが必要と発言されています。

さらに、中野さんからは、「貧しいことは恥ずかしいことではない、恥ずかしいことは貧しさに追いやっている社会の構造を知ろうとしないこと、知っていても挑もうとしないこと」という貴重な言葉を紹介いただくとともに、「憲法、平和、権利は私たち自身が勝ち取っていくものであり、現実から目を背けず、また、死者の声にも耳を傾け、この時代にこう生きたというものを残すとともに、どう闘ったか次の世代に誇りあるものを残していこう」と訴えられました。

2日目の分科会では、第1分科会の「非核平和・安全保障」から第7分科会の「憲法」まで7つの分野でそれぞれのテーマに沿って参加者の皆さんから多くの発言をいただき議論が深められたと聞いています。各分科会の詳細について触れ、議論のすべてにわたってまとめることは到底できませんが、それぞれの分科会での問題提起や議論をしっかりと受け止め持ち帰りいただくとともに、明日からの職場や地域での様々な運動に繋げていただければと思います。

その上で、私なりの稚拙な見解と喫緊の課題について申し上げ「まとめ」とさせていただきたいと思います。

まずは、今護憲大会の基調提案でも触れましたが、戦争放棄と武力の不保持を謳った憲法の破壊が進行している課題です。具体的には、「非核平和・安全保障」をテーマとした第1分科会の中で、東京新聞論説委員兼解説委員の半田滋さんと名古屋学院大学教授の飯島滋明さんとから問題を提起いただきました。

その中で、東京新聞の半田滋さんは、2018年12月に閣議決定された「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」について触れ、先の防衛大綱が2013年から向こう10年を見通して作成されたにも関わらず、2016年の安保関連法の施行を受けて、軍拡を進めるために5年で前倒し・改訂されたとし、「防衛計画の大綱」は、事実上の専守防衛の放棄であるとともに、強力な日米一体化を目指すものであり、日本は自ら進んで米中対立に巻き込まれていると警鐘を鳴らしています。また、「中期防」の中では、5年間の装備品の調達規模は過去最大の27兆4700億円となり、米政府の言いなりの購入と指摘していました。

同じく、第1分科会の飯島さんは、まず、近隣諸国の民衆2000万人が犠牲となったアジア・太平洋における「自衛権」を名目とした日本の侵略戦争について、権力者や軍上層部は国民に死を強要しながら戦時に軍隊は国民を守らないという無責任かつ悲惨な戦争であったと批判しています。そして、こうした無責任かつ悲惨な戦争を2度と権力者や軍部にさせないために憲法で徹底した平和主義をうたい、武力行使の禁止、戦力の不保持、交戦権の否認を内容とすることとなったと話されています。

そのため、戦後の「戦力」や「自衛隊」に関する政府や内閣法制局の見解は、自衛隊については「自衛のための最小限度の実力であって軍隊ではない」とし、また、「日本の自衛隊が日本の領海外に出て行動することは一切許されない、海外での武力行使の代表である集団的自衛権は憲法的に許されない」と見解であったと述べています。また、戦力についても、「憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢」を貫き、「長距離爆撃機、航空母艦、長距離ミサイルは憲法上保有が許されない」との見解が示されてきたと話されています。

そのうえで、飯島さんは、第2次安倍自公政権以降、2014年7月の集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更の閣議決定や、2015年の安保法制等により大きく自衛隊が変容し、現在では、人員、装備、編成などの実態から9条2項でいう、まさに「戦力」に該当すると指摘しています。そして、いずも型空母とF35Bやイージスアショア、中距離弾道ミサイルの配備、C-2輸送機など、こうした「海外派兵型兵器」「敵基地攻撃能力」の保有は、まさに「専守防衛」からも逸脱したものであることも強く指摘しておられました。

また、「自衛隊が領海外で活動することが許されない」とした政府見解から大きく逸脱し、2018年度の護衛艦3隻によるインド太平洋方面派遣訓練や、2019年度の同訓練がアメリカ、カナダ、フランス、オーストラリアとの共同訓練として行われてきたことを挙げ、安倍政権のもとで、「安保条約」をも超える日米の軍事一体化が進み、憲法学者の通説だけでなく「歴代日本政府の見解からも自衛隊は憲法違反の組織に変容した」と厳しく断じています。

今日、安倍首相は、ホルムズ海峡周辺のオマーン湾などに自衛隊を派遣することを検討するよう指示したと報じられています。しかし、今回の派遣は、自衛隊の海外派遣を日常化させたい日本政府が、アメリカからの有志連合への参加呼びかけを「渡りに船」で選択したものであり、有志連合の一員という形式をとらなくとも、実質的には、菅官房長官が記者会見で「米国とは緊密に連携していく」と述べているとおり、近隣に展開するアメリカ軍などの他国軍と事実上の共同した活動は避けられない派遣といえます。このことは、自衛隊員が紛争に巻き込まれたり、武力を行使する危険を伴ったものとして、まさしく平和主義に反する派遣といわざるを得ません。

あらためて、ホルムズ海峡周辺への自衛隊派遣を許さない緊急の取り組みと合わせ、「専守防衛」の枠すら超えて肥大化する「憲法違反の組織に変容した自衛隊」を許さない取り組みを進めていかなければなりません。

今護憲大会では、人権課題についても分科会で討論されました。第4分科会「教育と子どもの権利」では、山梨学院大学教授の荒牧重人さんより国連の子供の権利条約採択30年にあたり、その意義や内容について再確認するとともに、国際水準から見た日本の教育の課題について提起いただきました。

また、第5分科会「人権確立」では、移住者と連帯するネットワークの鳥井一平さんから、これまでの日本における移民労働者に対する受け入れ政策が国連理事会からの勧告や批判を受けてきたことに触れ、2017年からスタートした技能実習制度の中でも、時給300円、強制帰国、セクハラ、人権侵害、暴力・パワハラ、人身売買、長時間労働が横行するなど、人権侵害、奴隷労働が凝縮的に表れていると指摘しています。そして、すでに日本は移民の存在なくして存在しない社会であり、外国人労働者とその家族の労働者としての権利、生活者としての権利の確立が求められていると話されています。

こうした子どもや、外国人の権利の確立は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とする、まさに、憲法前文に謳われた理念でありその実現に向けてしっかり取り組みを進めていかなければなりません。

さて、2つ目の課題は、改憲阻止と憲法審査会に関する課題です。10月4日臨時国会が開会しましたが、今臨時国会での最大の焦点は憲法審査会の動向です。自民・公明与党に加え、日本維新の会も 憲法改正議論に前のめりであり、すでに提出されている国民民主党の国民投票法案も含め、国民投票法の審議を行うことにより、自民党改憲案をベースとした改憲議論が進むことを警戒しなければなりません。

この国民投票法、改憲手続法は、2007年第一次安倍政権のもとで初めて憲法改正のための具体的な手続きを定め、強行採決によって成立しました。 そして、この間議論となってきたのは公職選挙法に準じた7項目の改正案でした。しかし、第7分科会の日本体育大学教授の清水雅彦のさんは、この改憲手続き法について6つの問題点を指摘するとともに、「国民投票で改憲を否決すればいい」という考え方は誤りであると断言しています。つまり、現行の改憲手続法は、①公務員・教育者を対象に国民の運動が規制され、従来護憲運動をけん引してきた人々の運動が規制されること、②メディア規制によって護憲派の宣伝に規制がかかり、改憲派の宣伝が圧倒的に多くなる仕組みであること、③広報の分野においては、多数派である改憲派優遇と解説による世論誘導の可能性が強いこと、④承認にあたっても「有効投票数の2分の1」というだけで最低投票率の定めがないことなど、多くの問題を抱えた内容であり、改憲についての国民投票が実施された場合、これを否決することは不可能であるということです。

私たちは、法律家6団体や野党との連携を図りながら、憲法審査会に対しては、審査会自体を開かせないことを基本に、改憲案の提示など実質的な審議を行わせないことを求めてきました。引き続き、私たちは、野党との連携を強めるとともに、憲法審査会が開催される場合は傍聴行動にも取り組むなど、緊迫した国会情勢の中で大衆的な行動も配置し、憲法審査会での改憲発議を許さない様々な取り組みを進めていかなければなりません。

3つ目の課題は安倍政権の退陣を求める闘いです。この間私たちは平和憲法を守る闘いと合わせ、安倍政権の退陣を求めて取り組んできました。とりわけ、2015年に結成された市民連合を基軸とした野党共闘による安倍政権との闘いは、2017年の希望の党への民進党の合流と、立憲民主党の結成が行われた2017年衆議院選挙では不十分な共闘に終わったものの、2016年の参議院選挙以降、全国からの期待も寄せられ、一気に定着し、さらに広がりをみせています。

しかし、これまでの野党共闘による闘いでは参議院での改憲勢力3分の2割れを実現したものの、安倍退陣を勝ち取ることはできませんでした。来る衆議院選挙に向けて、様々な政党との信頼関係を基に、市民連合を中心とした本格的な野党共闘を実現し勝利していく、そしてこのことによって改憲阻止、安倍政権打倒の展望をつくり出さなくてはなりません。解散による総選挙もありえる中で、今日の野党共闘の状況は、289に及ぶ選挙区数や野党共闘の進捗状況からも極めて厳しい状況であり、決して楽観は許されません。衆議院選挙における野党共闘の強化に向けて、全国で様々な困難を乗り越え、お互いが努力し合いたいと思います。

3日間の討論でも明らかになりましたが、今、安倍政権のもとで「戦争できる国づくり」に向けて日本の国の形が大きく変えられようとしています。また、公布後73年が経過した日本国憲法の破壊・空洞化が進む中で、文字通り様々な分野で憲法理念の実現を目指す取り組みが私たちに求められています。そして、日本における立憲主義、民主主義、平和主義を守り未来に引き継ぐ闘いが正念場を迎えています。まさに「平和・自由・人権、すべての命を尊重する社会を」をスローガン掲げ開催した今護憲大会での議論を、参加者一人一人がしっかり持ち帰り、引き続き私たちが憲法理念の実現と改憲阻止、安倍退陣を求めるという正念場の闘いを先頭に立って進めていかなければなりません。

そして、1日目・中野さんの提起にもありましたが、「私たち自身がこの時代をこう生きた、そして、こう闘った」という誇りあるものを次の世代に残していくこと、このことを全体で確認し3日間の大会のまとめとさせていただきます。ご苦労様でした。

憲法理念の実現をめざす第56回大会基調

 1.はじめに

1946年11月3日、日本国憲法が公布されました。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」し武力の不保持と戦争放棄を誓うとともに、主権が国民にあることを宣言し、侵すことのできない永久の権利としてすべての基本的人権が国民に与えられました。

以来、73年が経過しました。しかし、「この憲法を尊重し擁護する義務を負う」安倍首相は、2012年の自民党「憲法改正草案」の発表以降、2013年の特定秘密保護法、2015年の戦争法、2017年の共謀罪法など憲法違反の法律を矢継ぎ早に、強行採決によって成立させてきました。

そもそも、自民党の改憲草案は、①「天賦人権に基づく」侵すことのできない永久の権利としての基本的人権を否定し「公共及び公の秩序」の名のもとに基本的人権を制限、②現憲法で「人類普遍の原理」とされた主権在民は軽んじ「国があっての国民」へ、また、立憲主義の理念もかなぐり捨て、権力を縛る憲法から国民を縛るものへ変化させる、③「戦争放棄」の題がついた9条を「安全保障」に置き換え、集団的自衛権が全面的に認められる「国防軍」を創設するとともに、国内の治安維持をも展開、④立憲体制を停止させる「緊急事態宣言」を盛り込むというもので、日本国憲法の基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を真っ向から否定するものといえます。

また、2015年の安保関連法(戦争法)は、集団的自衛権の行使を認めるかどうかが最大の争点でした。この集団的自衛権については戦後70年近く自民党政権も内閣法制局も「違憲である」として何度も国会で答弁してきました。また、憲法学者の大多数はもとより、衆議院憲法審査会で参考人として出席した憲法学者3名が「憲法違反」との認識を表明し、世論調査でも6割が法案に反対、8割が今決めるべきではないとの声がありました。

しかし、与党は、なり振りかまわない過去最大の会期延長と強行採決により法案を成立させましたが、この憲法違反の集団的自衛権行使を基本とした戦争法の成立以降、防衛予算の増大により、日本の軍事大国化と日米による軍事一体化が加速するとともに、これまでの軍拡の歯止めとされてきた「専守防衛」の枠すら超えて攻撃型装備の購入や配備が進むなど、今日の日本の安全保障において実態的にも戦争放棄と武力の不保持をうたった9条破壊が進行しています。

安倍首相は、参議院選挙で与党が改選議席の過半数を占めたことに触れ、「少なくとも議論は行うべき。それが国民の審判だ」と強調するとともに、自民党改憲推進本部が取りまとめた「改憲4項目」にはこだわらず「柔軟な議論を行う」とし、野党の一部の取り込みにも意欲をみせています。

また、参議院での改憲勢力の3分の2割れ後も「(2021年9月までの)総裁任期の中で改憲に挑みたい」と引き続き改憲に執着しています。実態的な9条破壊から、憲法改正によって自衛隊を明記することにより、フルスペックの「戦争できる国づくり」へ進もうとしています。絶対に許すことはできません。

一方、憲法の空洞化は、憲法の平和主義にとどまりません。様々な選挙や県民投票で何度も示された民意を無視して進む辺野古新基地建設や、圧倒的な脱原発を求める声を無視して進められる原発推進政策などをみれば、主権が国民にあることすら忘れさせられてしまいます。

また、財務省福田前事務次官のセクハラと財務省の対応は官僚たちの人権感覚の低さをさらけ出しましたが、「人身売買、奴隷労働」といわれる技能実習制度をはじめ、横行するヘイトスピーチ、朝鮮高校に加え朝鮮学校幼級部を幼児教育・保育無償化の適用除外とし、テレビキャスターのコメントや週刊誌による韓国に対する嫌悪感を煽る報道の在り方などは「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努める」とする憲法理念とは真逆の事態が進行しており、まさに基本的人権の侵害が拡大しているといえます。

さらに、憲法9条について詠んだ俳句を「公民館便り」の掲載から除外したさいたま市や、参議院選挙での安倍首相の街頭演説で上がった抗議の声に対する警察の弾圧、愛知で開催された表現の不自由展・その後」への行政の介入など、警察や行政によって不当に表現の自由が制限される事態も生まれています。

このように、今、現実に、日本国憲法の空洞化が進み、大きくその理念が歪められてきていることを認識しなくてはなりません。

私たちは、ここに開催された第56回護憲大会を機に、改めて平和憲法を守る闘いを強化するとともに、憲法の空洞化を阻止し「平和・自由・人権」という憲法理念をあらゆる場面で実現し「すべての命を尊重する社会を」作り出していかなければなりません。

 

2.総裁任期中に憲法改悪を目論む安倍政権

7月21日投開票の第25回参議院選挙において、私たちは、安倍首相の最大の政治目標であった「改憲勢力」による改憲発議に必要な3分の2の議席確保を阻止し、新たに参議院で改憲を許さない大きな一歩を築くことができました。しかし、参議院では引き続き与党が過半数を占めた結果、安倍政権の続投を許すこととなり、安倍首相は野党の一部の取り込みに意欲を見せるなか、選挙後のインタビューでも「残された総裁任期の中で改憲に挑む」と決意を述べています。

また、その後の内閣改造、自民党役員人事では、全体として日本会議や神道政治連盟に所属する議員を中心とする極右内閣が継続されるとともに、役員人事と合わせ改憲シフトが鮮明な内閣改造が行われました。

しかし、この内閣改造を受けて9月11・12日の実施された世論調査(共同通信社)では、改憲に反対が47.1%で賛成の38.8%を上回ったほか、新内閣の取り組むべき課題としては「年金・医療・介護」47.0%、「景気や雇用対策」35.0%、「子育て・少子化対策」25.7%と大きな期待が寄せられる一方、「憲法改正」は5.9%に止まり、民意とかけ離れた安倍政権の独りよがりの「憲法改正」といえます。

10月4日、臨時国会が開会しました。自民・公明は今会期中に、改憲発議の前提条件となる「国民投票法」改正を行う方向で合意しており、憲法審査会をめぐって、与党が審議に応じない野党に対する攻撃をいっそう強めるなど与野党の激しい攻防が繰り広げられることが予想されます。

現に、10月4日の所信表明演説では、安倍首相は「令和の時代に、日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ、憲法審査会ではないでしょうか」などと述べています。また、8日行われた衆参代表質問では、安倍首相は「自民党は既に憲法改正のたたき台を提示している。野党各党にも案を持ち寄ってもらい、憲法審査会の場で、国民の期待に応える活発な議論を行ってほしい」などとも発言しています。

安倍首相は、日程上ほぼ不可能になりつつある「2020年までの改憲」から、「総裁任期中の改憲(2021年9月まで)」へと日程を引き延ばしながら、改憲へ執着し続けています。

また、野党に対する分断・取り込みや、マスコミ・インターネットを使っての改憲煽動など、さまざまなかたちでの改憲攻勢が予想されるとともに、一部に今臨時国会中の解散総選挙もささやかれており、市民連合を中心に衆議院選挙区での野党共闘の体制構築についても喫緊の課題となってきています。

これまで長期間分裂していた平和運動は、2014年の安保法制(戦争法)の闘い以降、「戦争させない・9条壊すな!総がかり実行委員会」(総がかり行動実行委員会)を共闘組織として合流し、平和フォーラムも参加する中で、安倍政権との対決の中心的役割を果たしてきました。また、全国各地においても「19日行動」を中心に、安保法制の廃止と安倍改憲に反対する様々なとりくみが継続的にとりくまれてきました。

総がかり実行委員会および「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」(全国市民アクション)は、参議院選挙の結果を受けて、これまでのとりくみを総括するとともに、今後のとりくみについては、参議院における改憲勢力の3分の2割れという新たな情勢を踏まえ、総がかり実行委員会として、安倍政権の打倒・退陣を求めてさらに組織と運動の強化を進めていくこととしました。

安倍政権が引き続き「改憲」の旗幟を掲げるなか、私たちのたたかいも正念場を迎えています。

総がかり行動実行委員会の総括を受け、これまでの各地のとりくみについて点検・集約を進めるとともに、今後の護憲運動と安倍政権打倒に向けた戦線を改めて構築していかなければなりません。

 

3.憲法を逸脱した日本の防衛政策

(1)戦争放棄と武力の不保持から「戦争できる国づくり」へ

74年前の1945年8月、日本の敗戦によって、侵略戦争に明け暮れたアジア・太平洋戦争がようやく終結しました。この戦争で日本は、アジア・太平洋で約2000万人もの牲者を生み出し、自国内でも約300万人の犠牲者を出しました。

戦後の日本はこの戦争の反省にたち、戦争を放棄することを選択し、新たに制定された日本国憲法を、戦争放棄と武力の不保持をうたった平和憲法として携えてきました。しかし、その後、武力を放棄したはずの日本は、米ソ冷戦、朝鮮戦争を経て、自衛隊を保持するようになり、いまや世界有数の「軍事」大国となるに至っています。例えば、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、2018年の日本の軍事支出を466億ドル、世界9位であると発表しています。

これまでの自民党政権は、党内には自主憲法制定、国防軍の創設を主張する勢力や核武装まで意図する政治家を抱え込みながらも、日本の防衛施策の基本を「専守防衛」にとどめてきました。しかし、この日本の防衛政策を事実上変換したのが安倍政権であり、2015年9月の集団的自衛権行使を基本とした戦争法の強行採決により、憲法9条に関わる日本の防衛政策は大きく変質し、そのことをみるならばすでに「改憲」されたと言っても過言ではありません。

この戦争法の強行成立と前後して、安倍政権下の2013年に特定秘密保護法、2014年に「集団的自衛権」の行使容認の閣議決定、2015年4月には新しい日米ガイドラインを締結し、そして、2015年9月の戦争法をはさみ、2017年には共謀罪も強行成立させました。これにより日米軍事一体化がますます強化され、日本はアメリカとともに戦争ができる体制が整いました。

何が話し合われ、何をしようとしているのか、政府の都合の悪いことは秘密にされ、それを探れば逮捕され、政府のよからぬ企みに反対しようと話し合えば、これまた逮捕されることが事実上可能になったのです。

(2)日米軍事一体化で進む自衛隊の増強

安倍政権は2018年12月18日、専守防衛に反する攻撃型兵器の導入に踏み切った防衛計画の大綱(以下「30大綱」)、中期防衛力整備計画(以下「中期防」)を閣議決定しました。

日本の防衛政策は、東西冷戦終結後の1995年まで、1976年に初めて閣議決定された防衛計画の大綱(以下「76大綱」)に沿い、「必要最小限度の基盤的防衛力を保有」としていました。その後、湾岸戦争、台頭する中華人民共和国の覇権の拡大の中で、米国の要求に従い、自衛隊を海外派兵、南西諸島の防衛力整備へと、徐々に日本の領域から外へその活動の範囲を広げていきました。

そして、自衛隊の活動領域の拡大と合わせ、これまで掲げてきた「専守防衛」すら逸脱する軍事力整備が進められてきました。いずも級の護衛艦を空母へと改修し、その空母にはステルス戦闘機であるF35Bを搭載することになりました。スタンド・オフ・ミサイル、高速滑空弾と称して、長距離ミサイルの購入・開発も進められることにもなりました。平和フォーラムによる防衛省交渉の中では、イージス・アショアの発射管を変えれば、巡航ミサイルも装着できると防衛省官僚は発言しています。

さらに、自衛隊は南シナ海で米軍とともに対潜水艦作戦行動などの共同訓練を繰り返しています。このことは、中国に対して、米軍とともにインド洋、南シナ海に乗り出し、対中国封じ込みを目論む安倍政権の姿勢をはっきり示しています。日本の領域から大きくはみ出し、中国を刺激、挑発する行為は、東アジアの安全保障を不安定にし、軍拡競争を拡大させる愚かな軍事外交行動でしかありません。同様に空母化されるいずも級の護衛艦は太平洋に展開し、米軍とともに中国の海軍に対抗し、イージス・アショアの目的もグアムや米国本土への大陸間弾道ミサイルに対する対処と指摘されています。まさに守るも攻めるもアメリカのためと言えるのではないでしょうか。

こうした自衛隊の軍事力増強で、防衛費は伸び続け、2020年度の防衛費概算要求額は、5兆3千億円を超えました。私たちの暮らしに直結する社会保障関連予算を抑制し、軍事費を聖域化することは許されないことです。

政府は米国が主導する対イランの有志連合には参加しないものの、中東沖への自衛隊派遣の検討を開始しました。「独自」と言いつつ米の意向を汲んだものであることは明らかです。また、派遣する根拠を防衛省設置法に基づく調査・研究などとしていますが、このような口実でなし崩し的に自衛隊を海外に送ることは問題です。

(3)憲法の上に立つ日米地位協定

日本が米国を中心とする連合軍の占領から独立を果たしたのは、1951年4月、サンフランシスコ講和条約を調印し、翌1952年4月に同条約が発効したときです。そのとき同時に、日米安全保障条約、日米行政協定が締結されました。その後日米間で、安保条約と行政協定は改定交渉が進められ、1960年1月に新日米安全保障条約と日米地位協定が調印されました。安保条約に対する批判と自民党の岸信介首相の強引な国会運営に人びとの批判は高まり、全国的な「安保闘争」が闘われましたが、岸首相は条約に反対する国会議員を、警官隊によって排除した上で強行採決し、同年6月19日、同条約と協定は自然承認され、発効しました。

旧安保条約と行政協定は、独立を果たして「主権」を回復した日本の国内で、米軍が占領期と同じように自由に行動できるようにしたもので、その後改訂された新安保条約、日米地位協定も防衛分担金廃止などの改定は行われたものの、米軍の特権は維持されたままになっています。とりわけ基地の管理権を巡っては、日米地位協定3条では、合同委員会を通して日米両政府の協議が明文化されていますが、『日米地位協定合意議事録』では行政協定と変わらない米軍の占有が保障されています。なお、この合意議事録は、日米地位協定とは別に作成され、国会でも審議されなかったいわば「秘密協定」と言えるものです。

米軍基地は、日本のどこにでも作ることができ、その基地は米軍が排他的に管理することができます。そして、仮に基地返還となったとしても、原状回復義務はなく、ダイオキシン等で環境を破壊しても、その除去作業などは日本政府が負うことになり、したがって私たちの税金で行われることになります。また、米軍機は日本の航空法の適用が大幅に免除されています。また、米軍が事件や事故を起こしても日本の警察や消防などが現場検証にあたることすらできず、公務中の米軍人・軍属が事件を起こしても、日本には第一次裁判権もありません。こうした不平等な・従属的な日米関係は、日本国憲法の発布以降に日米間で作成された安保条約と行政協定、その後の日米地位協定とそれに付随する「秘密協定」にあります。

オスプレイをはじめとした米軍機の墜落事故や部品落下事故が、沖縄をはじめ全国で頻繁に発生しています。米軍・横田基地では、空軍特殊部隊用のオスプレイCV22の飛行訓練の拡大が懸念されます。このCV22の訓練区域となる沖縄県、東富士演習場(静岡県)、ホテルエリア(群馬県、栃木県、長野県、新潟県、福島県)、三沢射爆撃場(青森県)およびこれら訓練区域につながる飛行ルートでは、危険な飛行訓練が行われることは確実です。

私たちのいのちとくらしを守るためには、「秘密協定」を無効にし、日米地位協定の抜本的な改定を実現させていかなければなりません。

(4)弱体化する社会的規制力

日本の安全保障政策は、戦争放棄をした日本国憲法をなし崩しにしていく歴史を経て、ついに「集団的自衛権」の行使容認、「専守防衛」からの逸脱に至っています。そうした中、自衛隊に対する規制をはかる、いわゆるシビリアンコントロールも弱体化されている現状があります。

日本でのシビリアンコントロールについては、憲法で内閣構成員の資格を文民とする規定をもうけているほか、2015年の防衛省設置法改正までは、日本におけるシビリアンコントロールの一形態として制度化されていた「文官統制」、つまり防衛官僚(文官)が制服組より優位な立場に立ち、制服組を統制するシステムがありました。

しかしながら、法改正により、制服組である「統合幕僚監部」と陸海空の各「幕僚長」が、防衛官僚と対等、並列の立場となり、また部隊の活動や訓練などの運用を計画していた内局の「運用企画局」が廃止され、「統合幕僚監部」が一元化的に関与するよう大幅な組織再編が行われました。そして、この再編以降、南スーダンPKOの日報問題に続き、自衛隊のイラク派遣での日報の隠蔽など、自衛隊のシビリアンコントロールが機能していない現実が明らかになりました。

また、文民で構成されているとはいえ、日本版NSC(国家安全保障会議)で日本の安全保障に関わる事項が決定され、協議事項は特定秘密だとして、内容の検証ができない構造になっていることは極めて問題です。

一方、2014年に武器輸出三原則を破棄して、あらたに防衛装備移転三原則を閣議決定した安倍政権の目論見は、武器・技術の輸出の拡大でしたが、現在さしたる成果はありません。しかし、2015年度に新設された「安全保障技術研究推進制度」を活用した大学・研究機関への助成では、大学に関しては2017年3月の日本学術会議の「戦争目的の軍事研究はしない」とする3度目の声明発表以降で応募件数が減少していますが、一方、研究機関では助成を受け取るところが少なからずあることも事実です。

私たちは、シビリアンコントロールを強め、平和主義をうたった憲法理念から遠のいていく現状を押しとどめるとともに、憲法改悪阻止はもちろん、憲法理念をひとつひとつ実現していくことが求められています。

 

4.辺野古新基地建設―問われる日本の法治主義と地方自治

辺野古新基地建設をめぐっては、あらゆる選挙で建設反対が幾度となく示され、2019年2月に行われた県民投票においても、沖縄県民の反対の民意が示されました。安倍政権は、沖縄県や県民の思いを尊重し、最低でも工事を一時停止し、真摯に話し合うべきです。

沖縄県は、米国政府も含めた三者協議を申し入れていましたが、しかし、安倍首相は何ら回答をしていません。こうした日本政府の姿勢は、地方自治の精神に反しているといえるでしょう。

また、沖縄防衛局が県の埋め立て承認の撤回に対し、国が行政不服審査法に基づき審査請求と撤回の執行停止を求めた問題では、私人の救済を目的とする法律をねじ曲げて適用し、国が「国民・私人になりすまし」たことが大きな問題です。これに対し、110名に上る行政法学者は、「国が一般私人と同様の立場で審査請求や執行停止申し立てを行うことは許されるはずもなく、違法行為に他ならない」と厳しく批判するとともに、政府が防衛局に同じ行政機関の国交省に申し立てさせたことに対し、「第三者性、中立性、公平性が期待しえない」と断じています。政権の意志を貫くためには、法律も無視する安倍政権の国政運営は、法治主義を踏みにじるものと言えます。

また、埋め立て海域の軟弱地盤や活断層の存在、サンゴの移植の課題、さらに360件に及ぶといわれる高さ制限を超えた基地周辺建造物の存在など、辺野古の基地建設は極めて困難であるといえます。にもかかわらず、工事を強行し続けることによって、壊滅的な環境破壊と人びとの生活を一変させる地域崩壊につながることは明白です。

地域の住民が自立し、地域の課題を自主的に解決していくことが、地域社会の民主化の基礎となるという考え方が、近代民主国家における地方自治の必要性として論じられています。日本においては、戦後の平和憲法下にあっても国と地方の関係は、ながらく中央集権的な関係にありました。しかし、地方分権改革と地方自治法改正により、国と地方は対等な関係へと向かいつつあるはずです。国と沖縄県の関係は、全く対等とは言えず、「国による沖縄いじめ」と言っても過言ではありません。

辺野古新基地建設に反対するとりくみは、米軍基地問題に対するたたかいはもとより、日本全体の民主主義、立憲主義、地方自治を取り戻す重要課題と言えます。

 

5.東北アジアの平和と非核化

(1)朝鮮半島における緊張緩和と米朝国交正常化に向けた動きを加速させよう

2018年4月27日、板門店においてムン・ジェイン(文在寅)大韓民国(以下韓国)大統領とキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮民主主義人民共和国(以下朝鮮)国務委員長による、11年ぶり通算3回の南北首脳会談が行われ、朝鮮半島情勢は大きく進展しました。共同宣言(板門店宣言)は、様々な南北交流促進のためのとりくみとともに、南北共同の目標として朝鮮半島の完全な非核化へ努力すること、朝鮮戦争の停戦協定を平和協定に転換することなどが謳われ、ムン・ジェイン政権の「南北のすべての構成員が合意する平和的・民主的方式の統一をめざす」とする韓半島(朝鮮半島)政策の具体的とりくみとして重要です。

また、同年6月12日にはシンガポールにおいて史上初、歴史的な米朝首脳会談が開催され、米朝首脳による共同声明は、①米国と北朝鮮は、両国民が平和と繁栄を切望していることに応じ、新たな米朝関係を確立すると約束する、②米国と北朝鮮は、朝鮮半島において持続的で安定した平和体制を築くため共に努力する、③2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島における完全非核化に向けて努力するなど、朝鮮戦争の終結や朝鮮半島の非核化へ向けた画期的内容となっています。

その後も、朝鮮と韓国は歩調を合わせ、板門店宣言やシンガポール共同声明の合意事項の実現に向けとりくみをすすめ、9月18日から20日にかけては、ピョンヤンで首脳会談を開催し、合意されたピョンヤン共同宣言では、「軍事的敵対関係を終息させるために脅威の除去と根本的な敵対関係を解消させること」が確認され、民族経済の均衡的発展のための経済交流と協力、離散家族問題の解決、様々な文化交流を掲げるとともに、トンチャンリ(東倉里)のエンジン試験場・ミサイル発射台を廃棄や米国の「相応の措置」に合わせ、ニョンビョン(寧辺)の核施設の永久的廃棄などの追加措置を表明しました。

2019年2月27日に開催されたベトナム・ハノイでの第2回米朝首脳会談は、米国内のタカ派の影響もあってか、合意も取り決めもないままに終了しました。しかし、ハノイにおける米朝首脳会談が決裂して以降も、南北対話、中朝首脳会談など、情勢の打開に向けて様々動きがありました。とりわけ、中国の習近平国家主席は「朝鮮の安保の懸念の解決に中国が積極的な役割を果たす」と発言するなど、朝鮮半島を巡る情勢に積極的に介入する意志を示しています。6月28~29日のG20大阪会議の直後、韓国を訪問したトランプ米大統領は、30日に板門店を訪れてキム・ジョンウン朝鮮国務委員長と3度目の会談を行いました。ムン・ジェイン韓国大統領も交えて実質的には3国の首脳会談となっています。

9月10日、トランプ米大統領は、アフガニスタンやイラン、ベネズエラをめぐって強硬姿勢を貫いてきた国家安全保障担当のボルトン大統領補佐官を更迭しました。今後の米国の朝鮮政策は、ビーガン朝鮮政策特別代表とポンペオ国務長官を中心に進められ、膠着した事態が動き出すことも予想されます。

2018年4月27日の南北首脳会談以降、南北朝鮮が緊張緩和・非核化に向けて実質的な動きを始める中、米国をはじめとする国際社会が朝鮮の安全を保障し制裁解除に動き出さなくてはなりません。そして、ピョンヤン共同宣言とシンガポール共同声明を支持するとともに、「包括的妥結、段階的履行」による非核化実現・平和協定締結を求め、朝鮮半島の非核化への具体化への動きをつくり出し、東アジアにおける平和体制の構築に繋げていかなければなりません。

(2)深刻化する徴用工問題をはじめとした日韓対立

2018年10月30日の韓国大法院の徴用工判決に端を発した日韓対立は、2019年8月2日、日本政府によるに韓国のホワイト国からの除外と、これを受けて韓国政府が8月22日、日韓の軍事連携を象徴する「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)を破棄するなど、混迷を深めています。こうした日韓の対立は、韓米、日米の軍事同盟を基本に東アジアでの覇権を展開する米国にとっては極めて深刻で、米国防総省は韓国政府に対して「失望と強い懸念」を表明しています。

日本のマスコミ報道は、「韓国人元徴用工問題に端を発した日韓関係の悪化は、輸出手続きの厳格化という経済分野から、安保協力にも拡大した」として韓国批判の姿勢を強めていますが、そもそもホワイト国は、「安全保障貿易管理において、大量破壊兵器及び通常兵器の開発等に使われる可能性のある貨物の輸出や技術提供行為は、経済産業大臣への届け出およびその許可を受けることを義務付ける」としたキャッチオール規制( Catch-All Controls )を免除するもので、安全保障上問題のない国と位置づけ、アジアでは韓国のみ(韓国を含めて27カ国)が指定されていたものです。まさに、ホワイト国からの除外は、韓国は安全保障上信用できないと決めつけるものです。一方、GSOMIAは、国家間で軍事機密情報を共有化しようとするもので、日本側から安全保障上信用できないとホワイト国から除外された韓国にとって、軍事情報を日本と共有化することなどできるわけなどありません。

一方、日本政府は徴用工判決とホワイト国外しは関係がないとしていますが、安倍首相は、常に徴用工問題の解決が先決との発言を繰り返し、ホワイト国外しが徴用工問題の意趣返しであることは明白です。

また、日本のマスコミ報道は、ホワイト国外しとGSOMIA破棄の関連性には触れず、ホワイト国外しは単なる経済問題として、GSOMIAを破棄した韓国を一方的に批判する報道がはびこっています。公正・中立を基本に冷静な情報提供が必要なマスメディアが、ナショナリズムをあおる行為は許せません。

そもそも、韓国徴用工問題は、個人請求権の問題であり、元徴用工とその属した企業との問題です。日本政府は、サンフランシスコ講和条約などの請求権放棄の条項に関して、日本国民に対して「個人請求権は含まれない」と繰り返し説明してきました。日本の最高裁も、中国徴用工判決に際して、「日中韓の外交保護権は放棄されたが、個人請求権については、実体的に消滅させるものではなく、当該請求権に基づいて訴求する機能を失わせるに留まる」として、この法理は日韓請求権協定の「完全かつ最終的に解決」の文言にも及ぶとしています。

また、1996年の国連人権委員会へのクマラスワミ報告は、「日韓請求権協定には個人請求権は含まれない」との立場を取っています。韓国大法院判決の「反人道的不法行為に対する個人の損害賠償請求権は依然として有効」との立場は、現在の国際的な人権環境では説得力をもつものと考えられます。

中国徴用工問題では、この間日本企業は和解を積み重ねてきましたが、和解の基本は、謝罪と記憶の継承そして賠償でした。日本政府および日本企業は、韓国政府の提起を受け止めて、徴用工問題を人道的問題と捉え、解決に向けて話し合いのテーブルにつくべきです。

こうした徴用工問題による日韓の対立の根底には、過去の植民地の歴史とそのことに対する安倍政権の歴史認識への反発があり、問題の解決を遅らせています。安倍政権の閣僚の韓国政府に対する不遜な態度と徴用工問題解決に拘泥するかたくなな姿勢から解決はほど遠いものといえます。

今、大幅に日韓の旅行者が減少し、草の根の交流が途絶える事態が起きています。例年、原水禁大会に参加する韓国光州の5・18拘束負傷者会からの参加も中止となり、愛知県などを訪問する光州の子どもたちの交流も中止されました。政治の対立を越えて、日韓連帯の輪を広げる努力が、まさに重要になっています。

(3)日朝国交正常化を推進しよう

米国トランプ政権の対朝鮮強硬政策を支持してきた安倍政権は、米朝首脳会談や南北首脳会談による、非核・平和に向けた朝鮮半島情勢に全く対応できずに来ました。安倍首相は、「条件を付けずに金委員長と向き合う」として無条件の対話を呼びかけましたが、朝鮮は「無条件と言いつつ、拉致・核・ミサイルなどの問題を必ず話すと言っているから、それは条件つけていることになる」「(高校授業料無償化措置からの朝鮮学校の除外について)この措置を撤回しない限り、両国の関係は1ミリたりとも前進しない」(朝鮮のソン・イルホ(宋日昊)日朝国交正常化担当大使)と批判し、首脳会談の受諾についても応える段階にないとしています。

安倍首相は、「拉致問題は日本の最重要課題」「拉致問題の解決なしには国交正常化はない」「致被害者の全員生存・全員帰国」とする「拉致三原則」に拘泥し、日朝国交正常化に向けた努力を怠ってきました。結果として拉致問題も今日まで全く進展がありません。一方で、朝鮮高校の授業料無償化から排除を継続し、在日朝鮮人の民族教育の権利を剥奪しています。10月1日から始まった幼保の無償化からも各種学校を理由に朝鮮学園の幼稚園を無償化から排除すしようとしています。このような在日朝鮮人差別を積極的に続けている現状では、日朝国交正常化や拉致問題の解決は、困難極まりないと言わざるを得ません。

(4)真摯に戦後責任問題に向き合い、東アジアの友好を築こう

第1次安倍内閣の2007年3月、安倍首相は、国会で慰安婦問題に触れて「強制性を示す客観的な証拠はなかった」「広い意味での強制性はあったけれども、狭い意味での強制性はなかった」と答弁しました。アジア各国や米国メディアなどから一斉に批判を浴びると、一転して河野談話を容認する姿勢に転じます。安倍首相は、議員に当選した直後から戦後の歴史教育を自虐史観として攻撃する「新しい歴史教科書をつくる会」を支援する「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長に就任、侵略戦争を聖戦と言い換え、極東軍事法廷(東京裁判)を否定する日本会議と歴史認識の立場を同じくしました。これらの歴史観は、米国など第2次世界大戦の戦勝国を基軸にした国連の立場とそもそも対立するものです。安倍首相の持つ歴史観は、戦後世界の歴史観と対立し、歴史修正主義と断ぜられるべきものです。

韓国徴用工問題での安倍政権のかたくなな姿勢は、このような歴史観から生まれていると考えられます。日本政府は、徴用工や日本軍慰安婦などの被害者はもちろん、植民地支配・侵略戦争の歴史から目を背けることなく、歴史を直視し、真摯な謝罪を行うなかで東アジア各国との友好関係を築いていかなければなりません。

 

6.人権確立に向けた様々なとりくみ

(1)「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」のとりくみ

安倍首相は、2012年12月の総選挙で再び政権の座に帰ると、2013年2月20日に文科省令を改正し、朝鮮高校を授業料無償化制度から完全に排除しました。これを不服として全国5ヵ所の地裁で朝鮮高校への無償化措置を求める訴訟が行われてきましたが、大阪地裁判決を除いて、朝鮮高校生の訴えを退ける不当判決が出されてきました。2019年8月27日、最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)は、学校側を敗訴とした一、二審判決を支持し、東京朝鮮中高級学校卒業生らの上告を退ける判断を下しました。朝鮮人学校の歴史をいっさい無視し、在日朝鮮人の民族教育の権利を侵害してきた日本政府と、その立場を忖度するような司法の姿勢を許すことはできません。また日本政府は、幼保無償化措置からも、各種学校であることを理由に朝鮮学校やブラジル学校の幼稚部を除外しています。

無償化制度からの適用除外は、朝鮮民族への差別意識を利用して「拉致問題に進展がないこと」を理由に恣意的に行われたものであり、拉致問題への対応や朝鮮によるミサイル実験などと同様に、政権維持、国民支持を固める政策として行われてきました。

子どもの人権を、政治的思惑から奪うことは許されません。高校無償化制度からの朝鮮学校差別は、あきらかな民族差別であり、すべての子どもたちの学ぶ権利を保障しようという高校無償化法の理念からもかけ離れたものです。また、2018年8月に行われた国連人種差別撤廃委員会の対日審査のなかで、朝鮮学校にも制度を適用するよう勧告が出されています。裁判の結果に関わらず、朝鮮学校への無償化制度適用や各自治体からの補助金支給を求める活動をすすめ、在日コリアンとの共生を実現していかなくてはなりません。

(2)先住民族としてのアイヌの権利確立を

2019年4月19日の参議院本会議で、アイヌ民族を先住民族として初めて位置づけた「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ新法)が可決・成立しました。アイヌ民族は、12世紀頃から独自のアイヌ文化を形成してきました。しかし、明治維新後の1869年に北海道開拓使が設置され、本土からの移民による北海道開拓が本格化する中で、一方的に土地を奪われ「旧土人」として、独自の伝統文化も否定され日本社会への同化を強要され、長きにわたってアイヌ民族は、民族根絶政策の中に押し込まれてきました。戦後アイヌ民族は、北海道アイヌ協会(1961年から2009年までは「ウタリ協会」、その後再改称)を組織して、民族の権利へのとりくみを開始しました。

国連が、1990年の総会で1993年を「世界の先住民族のための国際年」(国際先住民年)とすることを採択した後、1992年のニューヨークでの開幕集会で、アイヌ民族を代表して野村義一北海道ウタリ協会理事長が記念演説を行いました。野村理事長は日本政府の同化政策によって「アイヌ語の使用を禁じられ、伝統文化を否定され、経済生活を破壊され、抑圧と収奪の対象とされ」と、先祖伝来の土地で民族として伝統的な生活ができなくなった深刻な実態を訴え、こうした民族の誇りを取り戻す運動は、1997年に「北海道旧土人保護法」の廃止と「アイヌの文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」の成立に結びつきます。

しかし、日本政府は、2007年の国連総会における「先住民族の権利に対する国際連合宣言」採択に賛成票を投じながら、アイヌ民族の権利回復には後ろ向きです。国連の宣言文は、先住民族の権利やその構成員の人権は他の者と差別なく平等に保障されるべきことが強調されるとともに, 先住民族の特殊性や多様な歴史的・文化的背景を考慮して、自決権や固有の権利、とりわけ国家によって奪われた土地や資源に対する権利の尊重が謳われています。しかし、今年成立した「アイヌ新法」においても、欧米諸国が先住民族に認めている土地や漁業権等の権利回復が盛り込まれていません。アイヌ文化振興や民族共生空間の運営、アイヌ施策推進地域の認定など、新法に盛り込まれている内容は観光施策と結びついていて、アイヌ民族のアイデンティティーおよび権利回復に結びついていないとの指摘がされています。

日本政府は、アイヌ民族、琉球民族、朝鮮民族などに対する差別を温存してきました。そのことは、ヘイトスピーチなど多くの問題を引き起こしています。朝鮮高校の無償化排除などの在日朝鮮人差別、米軍基地問題に象徴される沖縄差別などを含めて問題は多岐にわたります。日本は単一民族国家との幻想を振りまき、様々な民族の文化を否定し国家の多様性を認めてこなかった歴史を総括し、多文化・多民族共生の社会構築へ歩み出すべきです。

(3)外国人労働者の権利確立を

様々な課題が指摘されているにもかかわらず、外国人労働者受け入れのための出入国管理法改正案を、自民・公明の与党は、2018年12月8日、参議院法務委員会で採決を強行し、本会議で採択しました。2019年4月1日から新入管法は施行され、5年間で34万5000人の外国人労働者の受け入れを見込んでいます。現代の奴隷制度としてきびしく批判される「技能実習制度」は温存され、その延長上に「特定技能1号」が設けられました。「技能実習制度」はもともと途上国への技術移転を目的としていましたが、実際は企業の人手不足解消策の労働力として利用されています。

家族の帯同も許されず、転職や居住の自由も与えられず、悪質なブローカーなども存在し、最低賃金以下の労働や人権侵害などが後を絶ちません。臨時国会で技能実習生が2年間で69人死亡していたことをどのように総括するのかを問われた安倍首相は、「初めて伺ったわけで、私は答えようがない」と答弁しています。「特定技能1号」は延長を含めて10年間の労働が認められますが、家族の帯同は許されず、転職の自由や一時帰国に関しても曖昧なままです。その多くが、技能実習生からの移行とみられ、労働環境の改善が喫緊の課題です。

2019年9月、日立製作所が、外国人技能実習において法令違反があったとして国の改善命令を受けました。実習生は、電気機器組み立ての技能実習と聞いていたが、120キロの窓を新幹線車両に取り付ける作業ばかりさせられたと訴えています。日立は、約100人の実習生を解雇しています。日立製作所は、外国人労働者の受け入れ拡大を訴えてきた経団連の会長の出身企業です。入管法改正と外国人労働者受け入れが、労働力確保を目的として人権侵害を引き起こすことのないように十分な監視が必要です。

外国人労働者を人としてではなく労働力としてのみ受け入れようとする政府・企業の姿勢は、絶対に認められません。すでに日本には多くの外国人労働者が存在しており、政府は、人権侵害がまかり通る技能実習生制度の見直しと本格的な移民受け入れ政策の検討を行い、多文化共生社会の実現をすすめていかなければなりません。

(4)進行する貧困と格差社会

バブル経済が崩壊し、新自由主義政策が進行する中、国内では貧困と格差社会の進行に歯止めがかかりません。日本は、米国・中国に次ぐ世界第三位の経済大国でありながら、国内の貧困問題は深刻なレベルに至っています。平均所得は2017年度のデータでは551万6000円で、戦後最大値を示した1994年の664万2000円と比べると100万円以上減少しています。平均所得以下の世帯は約6割となっています。また、母子家庭の平均所得は282万9000円、平均所得以下の世帯は64.8%を占めています。所得が200万円未満の世帯は全体で11.5%ですが、母子家庭では36.3%に上ります。相対的貧困率は2012年の16.1%から若干改善して2015年に15.6%を示していますが、一人親家庭(多くが母子家庭)の貧困率はいまだ50%を超えて、OECD加盟35か国中ワースト1位となっています。

貧困層の拡大は、非正規労働者の増加に原因を見つけることができます。2018年の役員を除く雇用者5,596万人のうち、非正規の職員・従業員は84万人増加し,2120万人。就労人口の37.8%で、2018年賃金構造基本統計調査の雇用形態別賃金を見れば、正規労働者の平均賃金を100として、非正規職員は65.5%、女性の非正規労働者は58%にしかなりません。このような状況が、母子家庭の貧困率を高めていると考えられます。

社会学者の橋本健二早稲田大学教授が、「アンダークラス」と指摘する非正規労働者からパート主婦や役員・管理職を除いた人々は、就業人口の14.9%、929万人が存在します。彼らの多くは、フルタイムで働いているが、非正規という理由で圧倒的に所得が低く、平均年収は186万円、貧困率は38.7%に達します。結婚して家庭を作ることが困難で、男性の66.4%が未婚者、女性の43.9%が離死別を経験していると言われます。生活の満足感や幸福感が圧倒的に低い傾向にもあります。親しい人の数も少なく、いじめや不登校の経験者、中途退学の経験者も少なくありません。新たな貧困層は、社会問題化しています。

生活保護や医療・介護費、国民年金など社会保障に関する予算は縮小する傾向にあり、高齢者の貧困も深刻さを増してきています。全世代にわたる貧困の拡大は、教育機会の不均衡を伴って、貧困の連鎖として新たな階層を形成しつつあります。

現代の貧困問題は、「自己責任」「本人の努力が足りない」という個人の問題ではなく、現在の新自由主義政策からの脱却はもとより、雇用形態の改善をはじめ、税制度の抜本的な改革や様々なセーフティネットの充実が求められる構造的問題です。私たちは、こうした非正規雇用をはじめ、女性、高齢者、子どもなど弱者をむしばむ貧困問題にしっかりと向き合うことが求められています。

(5)女性の権利の確立を

安倍政権は、「女性活躍の旗を高く掲げ」、すべての女性が輝く社会づくりを公約として掲げています。しかし、「女性活躍推進」と「働き方改革」は、名称とは裏腹に、月100時間という長時間労働を合法化してしまいました。「同一労働同一賃金」は「人材活用の仕組みが違えば労働条件が違ってもかまわない」という正規雇用と非正規雇用の差別的取り扱いを固定化する結果となっています。差別賃金を補完しているのが税制です。所得税の配偶者控除の対象上限額が年103万円から150万円に引き上げられ、正社員並み(時給800円で1875時間)に働いても配偶者控除の壁が女性を「非正規雇用」「低賃金」に縛り付け、それは年金額にも及び、女性が生涯貧困から抜け出せない強固なシステムとなっています。

この男性稼ぎ主型賃金制度と税制は戦前の家父長制度の延長線にあり、このように経済的に下位に置かれ、安くていつでも解雇できる、労働力を産み、介護や育児を押しつける便利な道具として女性を貶めています。このような経済的・社会的地位の低さこそ日本で差別やハラスメント、女性への暴力が無くならない原因なのです。憲法24条は、両性の平等を謳い女性を家制度から解放しましたが、日本会議などは、「日本は憲法9条で武装解除され、24条で精神の武装解除をされた」と言ってはばからず「戦争のできる国作り」を精神的に支えた家父長制を基本にした家制度の復活を目論んでいます。自民党改憲草案を見れば明らかです。

幼児教育・保育の無償化が10月から実施されていますが、朝鮮学校幼稚部や外国人の幼児教育を対象外とする差別的取り扱いが問題となっています。さらに、最も経済的支援が必要な0~2歳児の無償化は実施されておらず、そこには「3歳までは母親が育てるべき」という3歳児神話で女性労働者を縛ろうとしているか、財政支出を抑えているのかは別として、女性が働き続ける環境整備と格差の是正にはつながらない政策です。

私たちは、選択的夫婦別姓の実現や、女性に差別的な税制や社会保障制度の改正、長時間労働・低賃金の労働環境を改めるよう、声を上げていかなければなりません。また、昨年から「#MeToo」あるいは「#WeToo」運動で職場のセクハラや性暴力の告発を女性たちがはじめていますが、他方で性被害や職場のハラスメントに対する警察権力や司法の判断に性暴力の加害者を擁護する傾向が強まっています。性暴力やハラスメントの被害者が権力のある加害者に訴えられるという理不尽なスラップ訴訟も増えているからです。ノーベル平和賞受賞者のデニ・ムクウェゲ医師は「戦争は女性の身体を戦場にする。戦時性暴力は平時の意識の延長にある」と平時の性暴力を正当に処罰することの大切さを訴えています。セクハラやDV、レイプの加害者が処罰されず、被害者の訴えが退けられることが続けば、法治国家ですらなくなります。

ILOでは仕事の世界におけるハラスメント禁止条約(190号条約)が採択され、日本政府も賛成しました。一刻も早く日本政府に批准させることが必要です。選択的夫婦別姓の実現、差別賃金・社会制度の解消など、女性も男性も安心して働き、一人ひとりの尊厳が守られる社会をつくらなくてはなりません。

(6)安倍政権の本質に存在する差別構造

自民党の杉田水脈衆議院議員は、新潮21に掲載した「『LGBT』支援の度が過ぎる」と題した寄稿文において、LGBTは「子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと差別的な主張を展開し、大きな批判にさらされました。こうした主張に対し、安倍晋三首相や二階俊博・自民党幹事長など政権の中枢からはむしろ擁護する発言が相次ぎ、さらには掲載紙が杉田議員への批判に反論する特集を組んだことから、さらに波紋を広げました。

また、4月には、財務省の福田淳一事務次官が女性記者に対してセクハラを行ったことが明らかになりました。しかし、当の福田事務次官のセクハラと、麻生財務相の「セクハラ罪という罪はない」「被害者は名乗り出ろ」という発言など財務省の対応は、官僚たちと官僚機構の人権感覚の低さをさらけ出しました。

2019年7月3日、日本記者クラブで開催された党首討論会において、安倍首相は記者団からの「選択的夫婦別姓を認めるか」「LGBTに法的な権利を与えることを認めるか」と言う質問に、反対の立場を取り、質問をした記者団に対して「単純化してショーみたいにするのはやめたほうがいい」「イエスかノーかは政治ではないですから」と「反論」しました。しかし、出席した他の政党党首は賛成に手を上げていることから、安倍首相の多様性を否定する姿勢が鮮明になりました。

米国で性的少数者(LGBT)の市民権運動を世界に広げた「ストーンウォールの反乱」がおきて今年で五十年が経過します。日本国内でも、様々にLGBTの権利を求める運動が広がっています。LGBTのカップルに証明書類を発行する同性パートナー制度が、2015年の東京都渋谷区をはじめに、今年8月現在24の自治体に広がっています。今のところ、税の配偶者控除や法定相続の権利は認められていませんが、公営住宅での同居や様々な場面での配偶者としての扱いなど、夫婦と同等の待遇が受けられるようになっています。また、北海道立高校の入学願書は、2020年度の入試から性別記載欄を廃止することが決定しています。北海道教育委員会は、「個人の性的志向や性自認の多様性への適切な配慮」とその趣旨を説明しています。LGBTなど多様な性のあり方に配慮するこのような動きを拡大していくことが求められています。

7月の参議院選挙では、女性候補の割合が強調され、LGBTや障がい者の立候補が目立ちました。中央省庁の障害者雇用推進法の法定雇用率の不正、大学医学部入試における女性差別問題、そしてLGBTに対する差別発言、様々な差別状況の顕在化とそれに対する市民の運動が、政治情勢の変化を呼び込んできたといえます。マイノリティーの権利が侵害される社会では、マジョリティーの権利も侵害される、在日コリアンへの、アイヌ民族などの先住民への差別、沖縄差別、部落差別、障がい者や性的少数者への差別の解消に、日本社会がしっかりとコミットしていくことが、市民社会の責任であり、またそのことによって自らの権利を守ることにつながると考えます。

日本におけるお粗末な人権感覚は、日本社会全体の人権問題に関するとりくみの弱さに起因していますが、一方で首相自らが差別的・排他的な考えにたつ安倍政権の問題でもあります。今年9月8日、柴山昌彦文部科学大臣が、高校生の「昼食の時間に政治の話をする」などのツイートに「こうした行為は適切でしょうか?」と返信したことが問題になりました。参政権が18歳まで認められる時代に、日本も批准している子どもの権利条約にある「意見表明権」を認めようとしない発言が、安倍政権の人権感覚を象徴していると考えます。

ここ数年で、障害者差別解消法、部落差別解消推進法、ヘイトスピーチ解消法など、多くの人権法が成立してきました。しかし、こうした社会的少数者・弱者に対する人権確立のとりくみは緒に就いたばかりであり、公的機関による人権侵害や差別を徹底的に糾弾するとともに、全ての社会的少数者・弱者が共存できる社会を創造することが求められ、こうしたとりくみこそが、日本社会を一人ひとりの人権を大切にする社会に成長させることにつながるものといえます。

 

7.権力による労働組合潰しを許さない

全日建関西地区生コン支部(関生支部)に対し、2017年12月のストライキ闘争や、建設現場でのゼネコンによる違法行為を摘発するコンプライアンス活動などの正当な組合活動を「威力業務妨害」や「恐喝未遂」として、滋賀県警や大阪府警が仕立て上げた6つの事件に加え、2019年6月以降、京都府警、和歌山県警が加わり、新たに6つの事件で19人の組合員が逮捕、起訴されるという弾圧へと拡がってきています。

いずれの容疑も、正当な労働組合活動を、威力業務妨害や恐喝未遂という犯罪にでっち上げたものであり、労働組合法を根本から否定するものです。さらに滋賀と大阪の警察・検察は逮捕された組合員やその家族に対して組合からの脱退勧奨を行うなど、違法行為をほしいままにしています。

また、5年前に解決済みの労使交渉課題も恐喝容疑がかけられるなど逮捕者は拡大し、関生支部の委員長や副委員長に至っては1年間に5回、6回と逮捕が繰り返され、1年以上にわたって長期勾留されたままです。しかも、保釈された組合役員の多くが組合事務所への立ち入りをはじめ仲間との面談や電話も禁止されています。

こうした事態は、戦後の労働組合運動が経験したことのないものです。平和フォーラムは、司法や警察権力が一体となった空前の権力弾圧に対し、自らの課題としてとりくみをすすめ、4月15日には「関西生コンを支援する会」(支援する会)の結成総会を行い、その事務局など中心的役割を平和フォーラムが担っていくこととなりました。

これまでの署名やカンパのとりくみに加え、現在、新たな取り組みとして、支援する会が中心になって、7月8日には国連人権理事会恣意的拘禁作業部会に重大な人権侵害事件として申し立ても行なっており、国内の世論喚起合わせ、国際世論からもこうした弾圧を跳ね返すとりくみが求められています。

 

8.核兵器廃絶に背を向ける被爆国日本

戦後の冷戦体制の終焉とそれに先立つ1987年の米ソによる中距離核戦力(INF)全廃条約の締結により核兵器開発に対する一定の制限が行われてきました。

しかし、2019年2月、トランプ大統領によるロシアへの一方的なINF全廃条約破棄通告と8月の失効により、米国、ロシアともに、互いを牽制し合うかのように、軍拡に繋がるようなミサイルの実験、開発が行なわれようとしています。軍縮を牽引するはずの国連安保理の緊急会合も各国の足並みの乱れにより成果は得られず、INF全廃条約に変わる新たな軍縮の枠組みが見通せないだけでなく、2021年に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)についても、その後の方向性に関して全く議論されていません。

このINF全廃条約の破棄は、米国、ロシアの2国間以外にも中国など含めた東アジアの核兵器拡大競争につながるものであり、日本としても傍観することが決して許されない事態を迎えています。

一方、核兵器の廃絶を求めて2017年7月に国連で採択された核兵器禁止条約は、2019年9月末現在で32カ国が批准し、発効要件の半数を超えるところまできています。しかし、日本政府は、アメリカなど核保有国とともに条約に反対し、署名・批准は行わないとしています。

このように核兵器開発をめぐって新たな緊張が生まれるなか、日本政府は、唯一の戦争被爆国として広島や長崎の被爆者の願いであった世界の核兵器廃絶へ向けて、早期に核兵器禁止条約に署名・批准するとともに、核保有国の核兵器禁止条約への参加にも積極的にとりくまなければなりません。

日本国憲法がうたう「全世界の国民が(中略)平和の内に生存」出来るように努力することこそ、日本の進むべき道です。日本国憲法の理念に反する核抑止論というレトリックを使ったままでは、国際社会からの信頼を失いかねません。

 

9.原発再稼働・核燃料サイクル・原発輸出の破綻

(1)安倍政権による原発推進政策

安倍政権は、2018年に原子力基本計画を改訂し、さらに、原発再稼働推進、核燃料サイクル推進、原発輸出推進を強引に押しすすめようとしています。

これまで再稼働した原発は、関西(大飯、美浜)、四国(伊方)、九州(川内、玄海)の3電力の9基となっています。しかし、テロ対策施設(大型航空機の衝突を受けた際などに原子炉を遠隔で冷却する緊急時制御室などを備える施設)建設が遅れている問題で、2019年4月24日、原子力規制委員会は、再稼働に向けた審査後5年以内とされた設置期限の延長を原則認めないことを決めたため、これまでに再稼働した9基は、設置期間に間に合わなければ、この期限を迎える2020年以降に順次、運転停止することになりました。

このテロ対策をめぐっては、関西電力・四国電力・九州電力の3社が4月17日、6原発12基で設置期限を超える見通しを示した上で、規制委員会に期限の延長などを求めましたが、九州(川内や玄海)、関西(高浜、大飯、美浜)、四国(伊方)が期限を超える見通しとしており、原発の再稼働を進める安倍政権にとってテロ対策施設建設は大きなハードルとなっています。

また、北海道においても、泊原発の再稼働が大きな焦点となっていますが、敷地内に走る活断層の問題やテロ対策施設の建設、避難計画の問題など多くの問題を抱えています。とくに函館の対岸にある大間原発(青森県大間町)は、世界に類のない「フルMOX原発」であるにもかかわらず、これまでに原発運転実績もない電源開発が計画を進めていることは大きな問題です。なお、大間原発に対しては、30キロ圏内に位置する函館市も反対の声をあげています。

(2)福島第二原発、柏崎刈羽原発など原発の廃炉問題

一方で7月31日、東京電力は福島第二原発4基を廃炉とすることを正式決定し、これによって福島県から全ての原発(10基)が廃炉となりました。「原発のない福島を」と県民が求めていたことがようやく実現に向けた一歩を踏み出したことになります。

8月26日、東京電力は、現在停止している「柏崎刈羽原発6・7号機が再稼働してから5年以内」との条件を付けながらも、柏崎刈羽原発の廃炉を検討していると地元自治体に伝えました。2007年7月の中越沖地震で、柏崎刈羽原発は甚大な被害を被っています。福島のことも踏まえるならば、東京電力に柏崎刈羽原発を再稼働する資格などなく、廃炉にするほかありません。

震災後に廃炉方針が打ち出された原発は21基となり、さらに今後も増えていくことは明らかで、すでに「廃炉の時代」に入っています。しかし、各電力会社とも、作業員・技術者の確保、資金の確保、廃炉技術の開発、放射性廃棄物の処理・処分の問題など多くの課題が山積しています。

(3)核燃料サイクル計画-再処理工場の破綻と核のごみ

六ヶ所再処理工場は、1997年に完成予定でしたが、これまでトラブルや設計見直しなどが相次ぎ、24回も完工を延期してきました。現時点での目標では、2021年上期に完成させるとしています。次々と原発が廃炉になるなかで、再処理工場の運転の前提となるプルサーマル計画や高速炉開発計画が滞り、プルトニウム利用はまったく進んでおらず、六ヶ所再処理工場の存在意義自体が問われています。

また、現在47トンもあるプルトニウムの使い道すら明らかではありません。再処理工場が稼働すればさらに多くのプルトニウムを保有することととなり、「余剰プルトニウムは持たない」とする国際公約と違反します。プルトニウムは核兵器にも転用可能な核物資でもあり、国際社会から疑惑の目を向けられるのは当然です。

2016年に廃炉が決まった高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の後継となる高速開発計画では、本格的な利用開始は今世紀後半とされ、具体的な内容は先送りになっています。また、フランスと共同で進めている「アストリッド」計画は、規模の縮小など後継炉開発が行き詰まっているのが現状で、まさに核燃料サイクルは破綻したと言うべきです。

日本原子力研究開発機構・幌延深地層研究センターは、8月2日、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の地層処分における研究期間を2028年末までに延長する新たな研究計画案を北海道および幌延町に提出しました。1998年の「深地層研究所(仮称)計画」では「全体の研究期間は20年程度」と明記されおり、2028年までさらに研究期間を延長する新計画案は、これまでの約束を反故にするものです。

核のごみの地層処分については、2017年に国が「科学的特性マップ」として「適地」を公表しましたが、現在までどこの自治体も受け入れ調査(文献調査)に同意していません。一方で原発の再稼働や新増設を進める安倍政権の原子力政策は、処理処分できない核のごみを増やすばかりで、長年「トイレなきマンション」と指摘されてきた根本的な矛盾を、今日さらに深刻化させています。

(4)重要性を増す「さようなら原発1000万人アクション」と原発ゼロ基本法案

福島原発事故以降「さようなら原発1000万人アクション」は、全国各地の団体・個人とともに、脱原発実現に向け奮闘してきました。原水禁・平和フォーラムは運動の中核を担い、運動を推進しています。

「さようなら原発1000万人アクション」として、立憲民主党など野党4党で提出した「原発ゼロ基本法案」に対する団体署名や屋内集会なども展開し、「早期審議入り」を求める声を上げてきました。法案は、いまの臨時国会に持ち越されました。引き続き院内外から原子力政策の真摯な議論を求める運動と世論づくりが急務です。

 

10.急がれる福島の復旧・復興

(1)困難な廃炉作業―収束はさらに長期化、避難生活と政府支援の打ち切り

東日本大震災・福島原発事故から8年半が過ぎ、依然として事故の収束作業は難航しています。廃炉に向けて最も困難といわれる溶融燃料(デブリ)の取り出し作業は、高い放射線に阻まれています。また、現在もデブリの全容を把握するには至っておらず、取り出しの技術の確立もこれからとなっています。政府・東京電力は、デブリの取り出し開始を2021年内、廃炉完了の目標を2041年から2051年と時期を示していますが、さらに長期化するものと考えられます。

被災者はいまだ厳しい状況におかれています。現在42,705人(2019年6月11日・福島県発表)の県民が避難生活を強いられ、この統計に含まれていない多くの自主避難者などはさらに厳しい状況のなかにあります。震災関連死も2000人を超えました。その原因は福島原発事故の影響によるふるさと喪失や生業を奪われ、長期にわたる避難生活、将来への不安などがあります。

居住制限区域・避難指示解除準備区域では、帰還困難区域を除き、除染作業によって年間被曝量20mSvを基準に、それを下回る地域から順次避難指示が解除されています。避難指示解除に合わせて、住宅支援などの補償が打ち切られ、避難者は追いつめられています。一方、帰還者も高齢者が中心で、インフラの整備やコミュニティの再生など多くの課題を抱えています。

福島原発事故の刑事責任を求めて、被害者らが訴えた「福島原発刑事訴訟」は、9月19日、東京地裁は不当にも旧経営陣3名に対して無罪を言い渡しました。あれだけの事故と被害をもたらした東京電力の経営責任を一切認めない司法判断は、市民社会の感覚からも大きく離れた不当判決です。

(2)子どもや住民、被曝労働者の「いのち」を守れ

2019年4月8日、福島県は、2018年12月31日時点での「県民健康調査」を実施し、事故当時18歳以下であった約38万人を対象にした甲状腺検査の結果、悪性ないし悪性の疑いの判定数が212人、内手術実施が169人であったことを公表しました。行政による長期にわたる公的なケアと医療面、経済面でのサポートや、県民の健康不安、特に子どもの健康にしっかりと向き合うことが求められているにもかかわらず、国や福島県は、原発事故との因果関係すら認めていません。

除染作業は、多くの労働者が多重下請けの中に置かれ、放射線量の高い場所での労働は、常に被曝と健康被害のリスクにさらされています。本来、収束作業の責任を持つ東電や除染作業を受注している大手ゼネコンなどが、本来、労働者の線量管理や健康管理に責任を持たなくてはなりませんが、下請けの多重構造のなかで、杜撰な管理の下、責任があいまいにされています。

また、中間搾取が常態化し、現場労働者の権利侵害も多数報告されています。このような中で、東京電力は、外国人技能制度を悪用し、福島原発事故の収束作業に外国人労働者を投入しようとしましたが、厚生労働省の指示で現在は見送られています。しかし、廃炉作業の人員不足を外国人労働者で賄おうとする動きは依然として続いています。専門的知識や言葉の問題、帰国後の健康管理や保障、横行するピンハネなど多くの課題が残されており、収束作業への外国人労働者の投入は許されません。

今後も長く続く事故の収束作業や除染作業における現場労働者の労働条件整備や、被爆線量の低減を求めていくことが重要です。

 

11.関西電力の原発マネー問題の徹底追及を!

関西電力の会長や社長など20人の役員・幹部に、高浜原発がある福井県高浜町の元助役(故人)から3.2億円もの多額の金品などが長年に渡り流されていることが明らかになり、八木誠会長と岩井茂樹社長は辞任に追い込まれました。金品を受領した原子力部門の幹部も更迭されました。

問題は原子力部門にとどまらず、送電部門にも3名の幹部に250万相当の商品券が渡され、関連会社「関西プラント」役員にも商品券が渡されています。調査が進めばその金額はさらに膨れあがるとも言われています。

いわゆる原発マネーが、各地の原子力施設がある地域や関連する企業・政治家などに流れていることは、これまで度々指摘されてきました。今回明らかになった関西電力の問題では、経営トップがかかわっていたうえ、社内調査報告や報酬減額処分については取締役会に報告さえしていませんでした。企業としてのコンプライアンス意識の低さとガバナンスの欠如は、看過できない重大な問題です。

関西電力は、元助役の強権的体質や地元との関係維持のためにやむをえず授受してしまったかのような発言を繰り返し、あたかも被害者のように見せようとしています。しかし、事の本質はそこにはなく、電気料金が原資となった原発マネーが、関係者に還流し、それが秘密裏に処理されてきたのではないかということです。そしてまた、電力という公共事業を担う企業のトップが行ってきたということに大きな問題があります。

経営トップがコンプライアンスも守れない企業に、原発を動かす資格がないことは明らかで、この問題を徹底的に追及するとともに、原発の稼働停止を求める世論をさらに高めていかなくてはなりません。

 

12.日米貿易協定などの通商交渉に関して

9月25日、日米両首脳が、米ニューヨークで、日米貿易協定に最終合意し、共同声明に署名しました。2018年9月に始まった二国間交渉はわずか1年で妥結しました。2020年1月1日の協定発効を視野に入れ、日本は現在の臨時国会での承認をめざすとしています。

日本は、牛肉など米国産農産物への関税を環太平洋経済連携協定(TPP)の水準に引き下げたのに対し、米国側の乗用車や自動車部品に課す関税の削減は先送りされました。このように、協定内容は日本側が一方的な譲歩を重ねたものであり、トランプ大統領の再選のために成果を誇示することを目的とした拙速な合意です。そのため、農業・農民団体はもちろん、野党各党からも反対の声が上がっています。

米国側は、牛肉や豚肉、小麦など日本への輸出金額の多い農産物で、今のTPP加盟国と同じ待遇を勝ち取りました。これにより、米国は70億ドル(7800億円)の輸出増を見込んでいます。今後、国会での審議を経て日米FTAが発効するならば、2018年12月のTPPや2019年2月のEUとの経済連携協定に続き、北海道をはじめ、日本の農畜産業に甚大な打撃を与えます。また、史上最低となった食料自給率のさらなる低下、安全な食の確保にも大きな影響を与えることは必至です。

こうした一連の交渉について、政府はかつてないほど情報を明らかにしませんでした。市民をないがしろにする安倍政権の姿勢が露呈したものです。日米交渉は今後も継続されます。これまでの交渉の情報公開や市民との意見交換をさらに求めていく必要があります。

11月9日から11日にかけ、北海道・函館市で、「平和・自由・人権 すべての生命を尊重する社会を 憲法理念の実現をめざす第56回大会」が開催されました(主催・護憲大会実行委員会)。

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9日の開会総会には道内各地をはじめ、全国から約2000人が参加しました。藤本泰成・実行委員長の主催者挨拶のあと、地元北海道実行委員長の江本秀春さんが歓迎の挨拶。また、地元来賓の函館市副市長の谷口諭さん、地元選出の衆議院議員の逢坂誠二さんからも挨拶を受けました。さらに連合副事務局長の山本和代さん、立憲民主党幹事長代行の辻元清美さん(衆議院議員)、社会民主党の吉田忠智さん(参議院議員)からそれぞれ連帯の挨拶がありました。勝島一博・事務局長から大会基調の提起を行いました。

開会総会メイン企画として、“日本社会は本当にこれでいいのか? 安倍政権の7年を問う!”と題し、清末愛砂さん(室蘭工業大学大学院准教授)、雨宮処凛さん(作家・活動家)、中野麻美さん(弁護士・日本労働弁護団常任幹事)がトークライブを行いました。

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10日午前は7つの分科会と2つのフィールドワークが開催され、それぞれ学習と議論を深めました。午後は3つのひろばを行いました。

11日は閉会総会が行われました。特別提起として、沖縄平和運動センターの大城悟さんから「自衛隊の南西諸島配備などの沖縄の現状」、東京平和運動センターの桐田達也さんから「東日本のオスプレイ配備」、核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会の久世薫嗣さんから「幌延深地層研究センターと『核のゴミ』地層処分」、高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会の長谷川和男さんから「朝鮮学校無償化問題」と、それぞれの課題について発言。勝島事務局長より大会全体のまとめを提起しました。続いて行われた遠藤三郎賞表彰では「函館空襲を記録する会」の活動を行ってきた浅利政俊さんが受賞されました。大会アピールは北海道実行委員会の近藤嘉宏さんから提案され、全体の拍手で確認されました。次回大会の開催地である滋賀県から、滋賀県民平和・人権運動センターの仁尾和彦さんが挨拶。最後に北海道実行委員長代行の清末愛砂さんが閉会の挨拶を行い、3日間の日程を終えました。

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憲法公布から73年 1万人が国会前で集会

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  日本国憲法の公布から73年を迎えた113日、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会など3団体が主催した集会が国会正門前で行われ、1万人の参加者が集まりました。

 主催者あいさつでは、総がかり行動実行委の共同代表小田川義和さんが大学入試の英語民間試験延期問題や相次ぐ大臣の辞任にふれ、格差を助長し、権力の腐敗が著しい安倍政権を許さず、9条改憲を阻止しようとよびかけました。続いて立憲野党の各党から、福島瑞穂参院議員(社民党)、穀田恵二衆院議員(共産党)、逢坂誠二衆院議員(立憲民主党)らがアピールをしました。

 韓国から、安倍糾弾市民行動共同の代表団が登壇し、徴用工問題など誤った歴史認識で韓国ヘイトを煽る安倍政治を批判し、平和憲法を守り、新たな日韓関係を作っていくことを訴えました。

 各界からのスピーチでは、作家の北原みのりさんが、性差別や暴力に苦しむ人びとに寄り添う社会のあり方について発言し、今回の国会前集会の主催者団体の一つである「3・1朝鮮独立運動100周年キャンペーン」から矢野秀喜さんが、日本の植民地支配による被害の歴史に向き合うことの大切さをアピールしました。オール沖縄会議からは山本隆司事務局長が、米国をはじめとした各地の市民との連帯で辺野古新基地建設反対のとりくみを進めていこうと訴えました。

 

戦争法制に関しては、現在25裁判、22都道府県で進められている「安保法制違憲訴訟」について杉浦ひとみ弁護士が報告したほか、安全保障関連法に反対する学者の会の千葉真さん(国際基督教大学特任教授)が安倍政権下で進められる軍事拡大路線を批判、日本労働弁護団から今泉義竜弁護士が、海外派兵の常態化すれば、自衛隊だけではなく運輸、医療、自治体などの労働者も動員されていく危険性を述べたうえで、労働者の権利向上に後ろ向きな安倍政権を退陣に追い込もうと述べました。

 

 

 

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 11月3日、東京・日比谷野外音楽堂で、「朝鮮幼稚園はずしNO!すべての幼児に教育・保育の権利を!11・2全国集会&パレード」が開催され、4000人が参加しました。朝鮮高校の高校無償化からの排除に続き、幼い子どもたちへの露骨な差別である幼保無償化からの朝鮮幼稚園の排除に抗議し、すべての子どもたちの教育・保育の権利を求めてパレードを行いました。

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 集会は、まず、主催者を代表してナン・スンウさん(朝鮮幼稚園幼保無償化中央対策委員会委員長)と藤本泰成さん(朝鮮学園を支援する全国ネットワーク事務局長、平和フォーラム共同代表)が挨拶しました。
 ナン・スンウさんは「私は日本のみなさんが在日朝鮮人の民族教育への支援を惜しまず、日本の当局への抗議の声をあげてくださっていることに大きく励まされている。すべての在日の同胞の心を込めて感謝を申し上げる。本日の行動は私たちに希望と勇気を与え、政府には大きな圧力になると確信する。本日の集会を契機に日本の皆さんと一層固く連帯し、幼保無償化の権利をかちとるまで、一歩もひるむことなく最後まで闘い続ける」との決意を表明しました。
 また、藤本泰成さんは「本日の集会の参加された在日の同胞と日本人のおもいは、差別のない明るい豊かな未来のために、それぞれ認め合い信頼しあい日本社会を共に生きていくことだ。日本列島と朝鮮半島は古来から切り離すことのできない文化を相互に影響し合いながら育んできた。しかし、日本は、近年、韓国併合を強制し過酷な植民地支配を続け、朝鮮の文化を破壊し、様々な蛮行を行ってきた。この歴史を安倍首相はじめ多くの政治家はしっかりと学ばなければならないはずだ。また、学ばなけれな政治家の資格はない。幼保無償化、高校の無償化を勝ち取るまでともに闘いましょう!」と訴えました。 
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 各政党からは立憲民主党初鹿明博衆議院議員、宮本徹共産党衆議院議員、福島瑞穂社民党参院議員がそれぞれ連帯の挨拶を行い、幼保無償化から排除する、明らかな差別の不当性を訴え、共に闘う決意を述べました。
 来賓あいさつとして、元文部省の大臣官房審議官の寺脇研さん。日朝友好促進東京議員連絡会の保坂正仁さん、が挨拶。連帯の挨拶として朝鮮幼稚園の保護者訴え、子ども教育宝仙大学教授の佐野通夫さんらがメッセージを発表しました。
 

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 9月9日、10月12日、首都圏は史上最強とも言える台風の直撃を受けた。被害は甚大で、日常生活を取り戻すまでには相当の期間かかるかもしれない。被災者の苦労はいかばかりか。自民党の二階俊博幹事長は、台風19号の被害について「まずまずの被害に収まった」と発言し、批判を浴びている。被災者の痛みを感じることのない人ごとのような発言は、批判されて当然だが、日本社会全体がこのような気候変動ともいえる状況に、余りにも無関心だったのではないだろうか。

 日本の平均気温は、徐々に上昇している。特に1990年代以降、高温となる年が頻出し、真夏日は10年で0.6日増加し、猛暑日も1990年代後半から特に増加している。文科省、気象庁、環境省のまとめを見ると、このまま気温上昇が続くなら今世紀末には日本で真夏日が最大で2.1倍、熱帯夜は3.3倍になると予測されている。日本が、亜熱帯に分類され、東京都内でもマラリヤが蔓延する日も遠くない。そんなことも想像される。

 EU議会では、フランスのマクロン大統領が、EU加盟国は2050年までに温暖化ガスの域内排出量を実質0にすることを提案し、ドイツのメルケル首相も、2021年から28年のEU共通予算の4分の1を気候変動やエネルギー効率関連に向けることを支持している。気候変動の危機を訴えて座り込みを続けてきたスウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16歳)に触発された若者の「学校ストライキ」は、日本も含めて世界125カ国2350都市に及んだ。

 国連の温暖化サミットで演説したグレタは、「私たちは、大量絶滅の始まりにいるのです」「なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よく、そんなことが言えますね」と、きびしい口調で述べ「未来の世代の目は、あなた方に注がれている」と、対策の強化を訴えた。

 歴史的台風が日本を襲い、未曾有の被害が出ているにもかかわらず、気候変動への日本人の関心は鈍い。そして政治家から根本的な対策をとの声を聞かない。温暖化サミットには、国連グレーテス事務総長の呼びかけでドイツのメルケル首相など、約60カ国の首脳級が出席した。日本は就任したての小泉進次郞環境大臣が出席したが、具体策を提起できなかった。原発が駄目なら石炭火力と易きに流れる日本は、若者の声にどう答えるのか。その声は、私たち日本の市民社会にも向けられている。
(藤本泰成)

ニュースペーパー2019年11月


平和フォーラムが全日建関西生コン支部への違法捜査をやめるよう大阪府警本部へ要請
 前代未聞の警察による労働組合弾圧で9月25日17時30分、全国から集まった平和フォーラム加盟組織代表者が、大阪府警察本部に対して要請を行うとともに、抗議の声を上げました。(写真)
 福山真劫平和フォーラム共同代表が、「ストライキ等憲法で保障されている労働組合活動を抑え込み、組織自体の破壊をもくろむ攻撃を絶対に許してならない、最後までともに闘う」と力強く決意表明をした後、長期勾留の弾圧を受けた当該組合員から、労働者の基本的権利を踏みにじり、平和活動を否定する戦前さながらの警察の取り調べの実態が報告されました。そして、過酷な取り調べの中でも、壁の外から激励の声が聞こえ、大いに勇気づけられたと、労働組合、支援者たちの連帯のとりくみの大切さを力説していました。
 大阪府警に要請した藤本泰成平和フォーラム共同代表ら代表団3名が、府警本部内での要請の模様を報告したうえで、「この弾圧は権力犯罪である、直ちにやめるよう要請してきました。府警担当者は上部に伝えると確約しました。違法捜査をやめさせるまで全国の力を結集して頑張ろう」と訴えました。
 最後に、菊池進全日建委員長が決意表明を行い、"団結頑張ろう"で、警察本部前に労働者の力強いこぶしを突き上げました。

インタビュー・シリーズ:150
危機にある日本の「食」をどうする?
ゲノム食品、農薬、自給率、巨大多国籍企業が種子を独占 山田正彦さんに聞く


やまだ まさひこさんプロフィール
 1942年生まれ、長崎県出身、弁護士。1993年衆議院選挙に初当選し、5期務める。農林水産大臣、衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員長などを歴任。
 現在は、弁護士業務に加え、「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」弁護団共同代表、「日本の種子(たね)を守る会」顧問、「デトックス・プロジェクト・ジャパン(DPJ)」共同代表として、TPPや種子法廃止の問題点を明らかにすべく現地調査を行い、また各地で講演や勉強会を行っている。
 著書に「『農政』大転換」「TPP秘密交渉の正体」「アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!」「タネはどうなる?!」「売り渡される食の安全」など多数あり。

─山田さんは農林水産大臣を経験されていますが、安倍政権の農業政策をどう見ていますか。
 安倍政権には農業政策なんてものはないと思います。自動車産業と農林水産業を数字でしか見ていないのです。例えばTOYOTAだけで32兆円の売り上げに対し、農林水産業は全体で8兆円の生産高としか見ていない。数字の大きい自動車産業を選んで、生産額の低い農業は捨てて、足りない農作物はアメリカから輸入すればいいという考えなのです。日本としては、報復関税を考えて、どうにか自動車産業を守りたい。それに対して、アメリカから輸入できるものは農産物くらいしかないのです。私が農林水産大臣だった時に、環太平洋経済連携協定(TPP)の影響を調べたら、食料自給率は14%にまで落ち込むと言われていました。そういうところを考えずに、数字だけしか見ていないのが安倍政権で「工業製品を売って、農産物は買えば足りる」という考えでしかないのです。

─日米貿易協定が9月に合意したことをどう思いますか。
 日米貿易協定は、アメリカの言い値で買うようなものです。アメリカのスーパーに行けば、オーガニック食品が基本です。ロシアも2016年には遺伝子組み換え食品(GMO)は販売禁止になりました。今や、GMO食品は売り場がないのです。だから、それを日本が引き受ける、というのが日米貿易協定の狙いです。
 最近出てきたゲノム編集食品を、アメリカでは「NEWGMO」と呼びますが、日本では、ゲノム編集のものと遺伝子組み換えがおこなわれたものとは違うものと考えられています。だから、ゲノム編集されたものは問題ないとして、厚労省や消費者庁も許可しており、10月から日本では表示なしで販売されることになりました。足りない分は輸入すればいいという考えの安倍政権は、食料自給だけでなく、食の安全もアメリカに売り渡そうとしているわけです。
 かつての民主党政権では、基本政策で食料自給率50%を目指して、第一次産業に力を入れていました。今、安倍政権は食料主権を守っていません。国家は国民を外敵から守る義務があります。それと同じように、国家は国民を飢えさせないために、安全・安心な食料を提供する義務があるのです。この食料主権は憲法25条の生存権に基づく考え方です。

─2017年に「主要農産物種子法」が廃止されましたが、どんな問題がありますか。
 現在、種子法廃止に対する訴訟を起こしています。種子法があったおかげで、おいしいお米が食べられたのであり、改良を重ねてこられたのです。米、麦、大豆を守ってきた法律だといえます。例えば野菜の種子は、30年前までは各地で農民などが改良してきた固定種が中心でしたが、現在では種子会社が作る優性種の「F1」(一代交配種)が主流です。今では、固定種は10パーセント、F1は90パーセントを占めていて、日本の野菜の種子のほとんどが海外に委託してつくられているのです。農薬や化学肥料、種子などは、モンサント、ダウ・デュポン、シンジェンタなど数社で作っているといっても過言ではないほど、これらの多国籍企業によってほとんどが生産されています。
 米・麦・大豆の種子は国や自治体が責任をもって開発するという種子法について、政府は民間の活力を阻害しているとして、ほとんど審議もしないまま、2017年に廃止をしてしまいました。食の安全などを考えたら、種子法廃止というのは大変なことなのですが、全然報道されませんでした。
 さらに、政府は300種くらいあるコメの種類が多すぎるとして、集約をしようとしています。農水省は、モンサントが作ったF1品種の米である「みつひかり」を紹介して回っています。コシヒカリの1.2~1.4倍の収量で、作りやすいとされています。しかし、F1という種子は単年でしか使えず、毎年種子会社から種を買わなくてはなりません。このままだと種の価格が高くなっていくことが容易に想像されます。

─各地では「種子条例」を制定する運動が起きていますね。
 2017年12月25日に種子法廃止の通知が出されて、2018年4月には廃止になってしまい、種を守れないという危機感から、地方自治体によっては個別に動き出しました。都道府県がこれまで通りに種子の開発を行うことが出来るように条例をつくったのです。私たちは条例をつくる動きを仕掛けるために、10万部ほどリーフレットをつくりました。条例は法律よりも低いと思われていますが、2000年に施行された地方分権一括法で強い権限を与えられたのです。
 条例を直接つくることが出来るように、請願権を使い、市町村議会議員などを通して、種子法に代わる条例を県が制定するよう意見書を出してほしいとお願いしたのです。地方議会は、もちろん自民党議員が多いです。でも、自民党議員の票田も含めて、農業従事者が地方ではそれなりに力があるので、与野党問わずとりくんでもらえました。一番初めに対策を行ったのが新潟県柏崎市でした。新潟県はコメ所であるからこそ、危機感を持って対策を講じてくれたのだと思います。続いて兵庫県です。酒米の山田錦の味が落ちることを心配したようです。続いて、埼玉、山形、富山、福井と続き、2020年度中には26の道県で成立すると見込んでいます。
 法律でなくても、条例で自治体ができるというのは、地方分権のおかげなのです。地方分権一括法では、国からは通知のみで、それは助言でしかないため無視しても問題ありません。条例は法律にさえ違反していなければ、何をしてもかまわないのです。つまり、地方自治で対策が出来るということなのです。
 海外でもそういった事例があります。イタリアのトスカーナ地方でのことですが、「自家採取禁止法案」、別名「モンサント法案」というものがあり、種子を農家が次年度用に自家採取をした場合に、罰金が課されるというものでした。それに対して、トスカーナ地方の伝統的な種子を条例で守ったという事例があります。種子はなくなってしまったらそれで終わりです。だから、私は今、対抗する運動を進めています。闘えば勝てるものなのです。

─食品の安全性や農薬の規制も問題がありますね。
 先日、学校の校庭整備のため、長い期間、モンサント社が販売するラウンドアップという除草剤を使い続けていたところ、末期がんになってしまったというドウェイン・ジョンソンさんに会ってきました。なんとモンサントは、ラウンドアップは発がん性があるというデータを持っていたにもかかわらず、販売を続けていたのです。ジョンソンさんは、長い間ラウンドアップを販売し続けていたことに対し、裁判に訴え、モンサントに勝訴しました。賠償金は320億円にのぼります。
 これだけ話題になったラウンドアップですが、日本ではどこでも手軽に買え、除草剤として使用されています。ジョンソンさんの裁判を経て、2019年8月から100円ショップのダイソーではラウンドアップの販売が禁止となりましたが、日本ではまだまだ野放しと言えるような状態です。
 ラウンドアップも含め、グリホサートという成分を持つ除草剤がたくさん使われています。農薬会社はこれまで、グリホサートは分解性が高く、人体には影響しないと言い続けてきたのですが、実際にはそんなことはありませんでした。私が2019年3月に国会議員など28人の髪の毛を検査したところ、19人からグリホサートが検出されたのです。ここまで高確率で検出されるとは、検査を依頼した学者たちも驚いたほどでした。それだけ残留性がある農薬なのです。
 アメリカに行った際に現地で購入したポテトチップスのパッケージの裏面には、農薬使用による発がん性などに関する注意書きがあるのです。日本ではこのような表記は見つかりません。海外のスーパーでは基本がオーガニック食品です。日本では、そのような流れは一部だけで、まだまだです。こういう点でも、日本と海外での食に対する安全への意識というか対応が違っているのがわかります。

─平和フォーラムも含めてこれからの運動についてお話ください。
 足元から運動をしていくことが大切だと思います。憲法問題なども大事なことだと思いますが、身近な問題を地域からとりくむことが大切ではないかと思います。まずは自分たちの食生活を守ること、これは平和でないと出来ないことなのです。そして、実際に生産している地域からその食生活を守るしかありません。
 農協や市民団体、労働組合を含めて、様ざまな条例を作る動きなどを、地方からとりくんでいくのが良いと思います。GMO食品はこの地域で販売してはいけないとか、販売したら罰金を科すとか、地方自治で闘っていってほしいです。こういうものは、一つ成功事例が出来れば、自信に繋がって、次の行動にも広がります。
 生活を守ることの根本は食の安全だと思います。食の安全に関して、日本は海外から大幅に遅れています。正しいと思うことを信じて続けていけば、日本の食の安全を確かなものに出来ると思っています。世界の潮流においていかれてはいけません。がんばりましょう。

インタビューを終えて
 生きていくうえで必要不可欠な「食」。日本の「食」は安心・安全だと思っていたのは私だけではないだろう。今回、山田さんのお話を聞いて、知らないうちに「食」の世界では言葉を失うほど驚くことが次々と起きていた。あのスナック菓子が、アメリカでは成分表の記載と並んでWARNINGとの記載があり売られているとは...。これから何を信じて食べればよいのだろうか...。
(北村智之)

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生物多様性から見て辺野古新基地建設はありえない
生物多様性は、あらゆる政策を縛っている 湯浅 一郎(ピースデポ共同代表)

 2018年9月の沖縄県知事選や2019年2月の県民投票は、沖縄県民が辺野古埋め立て中止を求めていることを示した。この民意を無視した埋め立て強行は、民主主義、地方自治の破壊である。が、もう一つ重要な視点として、生物多様性国家戦略や生物多様性条約に真っ向から反する行為を政府が率先して行っているという問題がある。政府は、目の前の都合によって、子孫が生きていくための未来を支える基盤をつぶしている。これは、気候変動問題と同様に国家による犯罪と言うべき行為である。生物多様性の観点から、辺野古新基地建設が如何なる意味で犯罪であるかを見ておこう。

生物多様性の保持・回復は現代の焦眉の課題
 2019年5月6日、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットホーム」(以下、IPBES)の第7回総会(パリ)で生物多様性に関する「地球規模アセスメント報告書」が発表された。この世界規模での生物多様性の現状を評価した初の報告書は、極めて衝撃的な内容を含んでいる。例えば「世界中に約800万種と推定される動植物について、約100万種が絶滅の危機にある」、「海生哺乳類の33%超が、絶滅の危機に直面している」等としている。
 20世紀末、人類は、このまま生物多様性を破壊していけば、自らも含めて破滅への道であることを自覚し始める。1992年6月、リオデジャネイロでの「環境と開発に関する国際連合会議」(地球サミット)で生物多様性条約が採択され、1993年5月に発効したことは、その一つの現れである。日本は2008年6月に生物多様性基本法を施行し、2010年10月、同条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋市で開催された。この会議では、2020年までに「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施する」ことを掲げた「生物多様性戦略計画20112020」(愛知目標)が採択された。これらを背景に閣議決定されたのが2012年9月の第5次「生物多様性国家戦略」である。しかし、冒頭で見たIPBES報告書は、生物多様性条約発効から四半世紀にわたる世界的努力にもかかわらず、事態はより悪化していることを示している。政府には、この警告を真摯に受け止め、「国家戦略」を守り、推進する責務がある。


土砂搬出反対署名提出集会で発言する筆者
(2019年6月10日)
3重の意味で生物多様性国家戦略に反する辺野古新基地建設
 辺野古新基地建設は、少なくとも以下の3点で生物多様性国家戦略に反している。
 第1に、そもそも辺野古・大浦湾を埋立てること自体が生物多様性国家戦略に違反する。埋め立てられる海はジュゴン・ウミガメ、サンゴ類の生息地であり、国際的な観点からも生物多様性の豊庫である。この海をつぶすことは、日本におけるジュゴンの絶滅もやむを得ないという選択である。2019年3月18日、沖縄県なきじん今帰仁村の海岸にジュゴン1頭の死骸が漂着したことは日本のジュゴンが絶滅の危機に瀕していることを示しているが、その要因の一つが辺野古埋め立てである。
 第2に埋立てに必要な土砂、海砂の採取にも同じ構図が当てはまる。埋立てには、東京ドーム約17杯分の計約2,062万m3の土砂を沖縄を含む西日本各地から供給せねばならない。その内訳は、岩ズリ1,644万m3、山土360万m3及び海砂58万m3である。ここで「岩ズリ」とは、採石の残余として発生する砂、泥及び小石の混合物で、その7割強は沖縄県外の香川県から鹿児島県までの西日本一帯から持ち出す。さらに2019年になり大浦湾側の海底に厚さ60mとも言うマヨネーズ状の軟弱地盤があり、海底地盤改良工事だけで砂杭7万7千本、敷砂用として新たに650万m3の砂が必要となる。この膨大な岩ズリや海砂採取は、それぞれの地で生物多様性の豊かな山や海を破壊することでしか確保されない。
 第3の問題が、辺野古への外来種持ち込みによる生態系の危機である。亜熱帯である辺野古に搬入される岩ズリの多くは温帯域で採取される。また同じ亜熱帯でも例えば沖縄本島と奄美大島では、島嶼としての歴史が異なり、それぞれ独自の進化を遂げている。辺野古に沖縄島以外から大量の岩ズリを持ち込めば、沖縄島独自の生態系に有害な外来種が侵入する可能性がある。アルゼンチンアリ(山口県など瀬戸内海一帯)、ハイイロゴケグモ、オオキンケイギク(奄美大島)、ヒアリなど有害な特定外来種が持ち込まれる可能性がある。少なくとも外来種侵入防除対策が不可欠となるが、政府は、防除対策をすると言うだけで、具体策は示されていない。
 以上より生物多様性から見て、辺野古新基地建設計画は中止すべきであるとの結論が見えている。
(ゆあさいちろう)

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「基地の島、沖縄」主権が奪われている日本の現状
岸本 喬 沖縄平和運動センター事務局次長

 「国土面積のわずか0.6%の沖縄に、在日米軍専用施設の70.3%が集中している。沖縄本島の18.2%を占めている」。これは、みなさんが何度も聞いたフレーズでしょう。
 2018年3月時点の米国防総省資料によると、在日駐留米軍人は55,026人、約半数の25,843人が沖縄駐留となっており、海兵隊だけをみると在日海兵隊の約80%が沖縄駐留となっています。 

「普天間基地」~沖縄国際大学へのヘリ墜落事故から15年、オスプレイ配備から7年~
 8月14日、2004年に起きた沖縄国際大学構内への米軍CH53型ヘリの墜落事故から15年が経ちました。この事故では米軍が大学構内の現場を占拠して、大学関係者なみならず、本来、救助や2次災害防止、事故原因調査にあたるべき、沖縄県警と宜野湾市消防署をも締め出し、取材にきたメディアをシャッタアウトしたどころか撮影したカメラまで奪おうとしました。
 このことは、言うまでもなく日本の主権が米軍により一方的に制限されたことにほかなりません。
 またその際、批判を受け策定したガイドラインは、結果米軍優先となり、2017年の東村高江で起きた同型機の墜落事故でも米軍が現場を封鎖し、県警が周辺を警備したことは記憶に新しく、地元紙は「米軍の特権を強化しただけだった」と批判しました。
 そして同年12月に、宜野湾市内の保育園と小学校に部品や窓枠を落下させ、今年6月には浦添市内の中学校テニスコートにゴム製テープを落下させています。「学校、病院を含む人口密集地を飛ばない」とする日米合意事項違反であり、県民の生命軽視は到底許されるものではありません。またそれにまったく抗議すらできない日本政府の対米従属を、沖縄の日常が浮き彫りにしています。
 オスプレイが普天間基地に配備されてから10月1日で7年となりました。沖縄平和運動センターは「NOOSPREY金曜行動」をその月からはじめ、同様に7年で316回目となりました。米国では事故を繰り返していた欠陥機オスプレイの配備に10万人が抗議県民大会を開催し、建白書をもって安倍総理に直訴する中で、ここでも民意を聞き入れず、安倍政権は主権を捨て米国追従となり強行配備しました。4年後の2016年12月には、新基地建設を強行する辺野古・大浦湾に目と鼻の先の安部(あぶ)海岸に墜落大破、同日に普天間基地の滑走路に胴体着陸事故を起こしました。
 地元紙によると、協定違反の夜間飛行が年々増大し、2017年170回、2018年224回、2019年(5月まで)111回を数えています。宜野湾市の基地被害110番には連日苦情が寄せられています。配備7年目を前に、9月には沖縄国際大学をはじめ県内9つの大学、短大、専門学校の学長らが教育機関周辺上空での米軍機の飛行中止を求める要請書を日米両政府に発信しています。専門家も指摘するとおり、米軍優先の日米地位協定であり、日本政府がすべての権利を放棄している以上、県民のいのちは守られません。

「嘉手納基地」~静かな夜を返せ!爆音訴訟 高裁、飛行差し止め請求棄却
 9月11日、米軍嘉手納基地爆音訴訟第三次の控訴審判決で、嘉手納基地周辺の住民・原告22,000人に対し、「住民の騒音被害は受忍限度を超えている」としながらも、住民が求めた夜間・早朝の米軍機飛行差し止めについての請求を退けました。高等裁判所の大久保正道裁判長は、一次、二次同様に、米軍機には日本政府の指揮・命令権が及ばないからだとする「第三者行為論」と原告住民や県民には理解できない論理によって退けました。では、第三者行為論というのであればと、原告団は米国政府に直接、夜間・早朝の米軍機飛行差し止め賠償を求めて「対米訴訟」を起こしましたが、高裁は棄却しました。これではいったい日常的に被害を受けている住民はどこに救済を求めればいいのでしょうか。裁判所までが政府に対し「忖度」しているのかと原告団は怒りをあらわにしています。
 フィールドワークなどでかでな道の駅から嘉手納基地の現実を目の当たりにされた方も多いと思います。地元紙を検索し主なものをピックアップすると、「次世代型の空中給油機KC46初飛来か」(7月15日付)、「長期訓練か!横田のオスプレイ3機飛来5ヶ月ぶり4度目」(7月23日付)、「米空軍の情報収集機コブラボール連日飛来北朝鮮を警戒か」(8月2日付)、「横田や岩国から米軍機飛来続々台風避難か」(9月8日付)、「米軍F15が緊急着陸フックランディング後は自走できず」(9月25日付)、「朝からうるさい嘉手納所属F15が急上昇・旋回、飛行訓練で騒音」(10月10日付)、このように嘉手納基地は横田や岩国などの県外、米本国、カナダなど海外からも訓練や警戒活動で様ざまな機種が使用し、爆音は絶えることがありません。高裁も認めるとおり、爆音は受忍限度を超えています。せめて「静かな夜を返してほしい」。40年以上にわたる裁判で周辺住民は訴えています。日本は三権が思考停止状態ではないでしょうか。
 1952年のサンフランシスコ講和条約第3条で沖縄について、「合衆国は、...住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする」と書かれています。すでに1972年の復帰から47年、米国・米軍及び日本政府の沖縄に対する認識は変わっていないのかもしれません。先述のとおり、主権を奪われているのは日本そのものなのに。
(きしもとたかし)

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「食・みどり・水」の課題に対しとりくみ続けてきた
「全国集会」 全農林労働組合 高橋和哉

50年を超える「食・みどり・水」の運動  2018年11月、50回目の節目として開催された「食とみどり、水を守る全国集会」は、1968年に静岡県熱川で開かれた「中央労農会議第1回全国活動者会議」を前身とし、1993年山口県山口市の第25回から現在の名称となり毎年開かれてきました。参加者数は当初こそ100人規模でしたが、「食とみどり、水を守る」課題が増え、それに対する運動の広がりとともに集会参加者も増加し、1987年山形県上山市の第19回から2005年長崎県長崎市の第37回までは毎回1,000人を超える大規模な集会となりました。近年は500人から800人で推移していましたが、毎年、開かれる「食・みどり・水」の課題を共有し、運動の学習と交流の場として定着してきました。
 しかし、「全国集会」を受け入れる全国の組織事情が厳しくなってきていることから、2019年3月28日に開かれた「第50回食とみどり、水を守る全国集会」第5回実行委員会で、「全国集会」は「第50回群馬・高崎集会」を区切りとして一旦休止するものの、都道府県でのとりくみを検証するとともに運動の継続性を考慮し、「全国活動者会議(仮称)」を毎年秋に開催することなどを確認しました。
 これを受け、8月27日の全国活動者会議第1回実行委員会で、「第51回食とみどり、水を守る全国活動者会議」を11月29日、東京都千代田区の「日本教育会館」を会場に100人規模で開催することを決定したところです。


第50回食とみどり、水を守る全国集会in群馬
2018年11月30日
労農運動の意義を継承し、山積する課題にとりくもう!
 中央労農会議が結成されて10年目の1970年に開催された「第2回全国活動者会議」で、高野啓吾事務局次長(当時)があらためて明らかにした同会議の目的は、「活動者会議は、労農提携を発展させていくうえで、労農提携の中心組織である中央・地方の労農会議が果たすべき課題を明らかにし、活動の指針を討議の中からつくりあげていこうとすること」であり、「単なる学習会や研究会といったものではなく、労農提携の運動を展開していくためのエネルギーをこの"場"でつくりあげていこうということ」としています。
 その目的通り、活動者会議には全国から第一線の幹部・活動家197人が結集し、儀式的な議事は一切はぶき、討議を中心に進められました。「業態別共闘の現状と問題点」では、(1)米価・食管闘争、(2)葉たばこ共闘、(3)林政共闘、(4)出稼者の組織化、(5)農協の民主化と農協労の組織化、について各組織から提案の説明がされ、情勢認識の共有を図るとともにそれぞれの地域や職場で運動を進める意思を固め合いました。
 前述の「第25回食とみどり、水を守る全国集会」は、11月18日から20日まで3日間の日程で開催され、全国からのべ2,304名が参加しました。スローガンは「町と村で生き続けられる農林業を!」。主催者あいさつで食とみどり、水を守る中央労農市民会議の志摩龍雄議長(当時)は、「緑・水・環境の保全に全力を挙げ、命と暮らしを守り、農林業の活性化、地域の活性化を図るため国民的な運動を強力に展開するとともに、政治経済のあり方を問いながら21世紀に向けて全人類の生存のため、私達の果たす役割はたいへん重要であるという自覚を持ってこれからの運動をすすめていくことが大事」と訴えました。
 集会は第1日目全体集会、第2日目分科会、第3日目総括集会の構成で行われ、分科会は、(1)農林業・食・緑・水講座入門、(2)農林業と食料政策・制度をめぐって、(3)食と営農をめぐって、(4)水と環境問題をめぐって、(5)中山間地域対策をめぐって、(6)地域活性化をめぐって、について、大学、生産者団体、消費者団体、中央省庁、地方自治体、労働組合や政党など各分野の講師からそれぞれ問題提起等があり、活発な議論が行われました。
 このように、この運動は名称や参集範囲の変更などはあったものの、「食・みどり・水」をめぐる様ざまな課題に対し学習を深め、議論を通じて問題意識を共有し、職場や地域での運動へとつなげていく取り組みとして今日まで続けられてきました。これは、関係者の努力の賜であり、労農運動へのエネルギーが生き続けている証ではないでしょうか。
 このたび、事務局を全農林中央本部が担い、実行委員会(平和フォーラム、全農林、自治労、日教組、全水道、森林労連、政労連農林水産共闘、全日農、日消連)と都道府県労農市民会議が連携を密にして、この運動を継承していきたいと思います。
(たかはしかずや)

第51回食とみどり、水を守る全国活動者会議
日時 11月29日(金)13:30~17:50その後、交流会18:00~
会場 東京・千代田区一ツ橋「日本教育会館」9階会議室
内容 あいさつ、各課題の講演、報告・意見交換
参加者 各都道府県の「食・みどり・水」運動に関わる組織代表等
参加費 6,500円(交流会参加費含む)
連絡先 全農林労働組合中央本部(髙橋・立花)03-3508-1395

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福島原発事故刑事裁判
被害事実を軽視、被災者を踏みにじる不当判決
福島原発刑事訴訟支援団 地脇 美和

 9月19日、東京地裁永渕健一裁判長は、東京電力福島第一原発事故の責任を問い、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3被告人の刑事裁判の判決で、「全員無罪」を言い渡した。
 この判決は、国の原子力政策を忖度した不当判決であると心の底から、抗議する。2012年6月、福島原発告訴団として、福島地検に、福島県民をはじめ、全国1万4716人が告訴・告発して以降、私たちは、被害者ではなく、国策に異議申し立てをする「あきらめない危険な人々」扱いだった。東京地裁は、傍聴のために、早朝のバスや新幹線で駆けつける福島県内外の人々に対して、法廷の廊下にバリケードをはり、多数の職員を配置し、所持品を取り上げ、カメラや録音機がないか、金属探知機や体を触るボディーチェックを行い、ノートに何か挟んでいないか、1ページごとの確認をした。法廷内には屈強な衛視を何人も立たせ、法廷内を監視、居眠りしている人を起こし、思わずあげた抗議の声を威圧した。

被害状況の事実認定をしなかった
 判決で許しがたいのは、双葉病院などからの避難の過程で44名も亡くなった悲劇を「長時間の搬送や待機等を伴う避難を余儀なくさせた結果、搬送の過程又は、搬送先において死亡させ」たと、たった一言で片付け、原子力災害のもたらした悲惨な被害状況について全く事実認定しなかったことだ。亡くなった方々と遺族への敬意が全く払われていない。現場検証の要請にも応じなかった。裁判長らは、全ての被災者を踏みにじり、再び傷つけた。悲惨な原発事故を二度と引き起こさないという規範は導き出されず、被害事実は徹底して軽視され、血も涙もない不当判決が出された。


東京電力刑事裁判の判決日9月19日、
東京地方裁判所前
安全対策のレベルも大きく引き下げた
 判決は、結論で、「自然現象に起因する重大事故の可能性が一応の科学的根拠をもって示された以上、何よりも安全性確保を最優先し、事故発生の可能性がゼロないし限りなくゼロに近くなるように、必要な結果回避措置を直ちに講じるということも、社会の選択肢として考えられないわけではない。」としつつ、「当時の社会通念の反映であるはずの法令上の規制やそれを受けた国の指針、審査基準等の在り方は、上記のような絶対的安全性の確保までを前提としてはいなかったとみざるを得ない。」と判断した。東電や政府は、「原発事故は絶対に起こらない。五重の壁に守られている。安全だ、心配する方がおかしい」と、さんざん喧伝していたことは、すっぽりと抜け落ちている。政府の地震調査研究推進本部(推本)が、一般防災の参考データとして示した長期評価(地震対策の前提とするために、ある地域に、どの程度の確率で、どのような地震が起きるかを予測した評価結果)について、原発の安全対策は、一般防災より高いレベルが求められるにもかかわらず、事実上否定した。
 伊方原発訴訟の最高裁判決(1992年)は「原子炉施設の安全性が確保されないときはこのような従業員や周辺住民の生命に重大な危害を及ぼし、環境を汚染し深刻な災害を引き起こすおそれがあり、このような災害が万が一にも起こらないように安全性を確保しなければならない」としていた。しかし、判決は最高裁判決を否定し、原発に求められる安全性のレベルを大きく引き下げる誤った判断をした。これは、過酷事故を起こしても罪にならないという「原子力ムラ」救済のメッセージであり、司法は独立しているのか、疑わしい。
 公判では、部下が津波対策を進めていたにもかかわらず、それを握りつぶした過程が、押収された多くの資料、会議録、メールなどで明らかになった。しかし、判決はこの事実を「供述の信用性には疑義がある」と根拠も示さず、切り捨てた。被告人に不都合な事実を切り捨て、証拠を無視した。
 事故から8年6か月。未だに原子力緊急事態宣言は解除されていない。解除できない実態があるということだ。この間、闇に葬られようとしていた事実が、あきらめない、泣き寝入りをしない人々によって、明らかにされてきた。私たちは、この不公正極まりない判決を許さない。わずか10日で、控訴を求める署名は2万筆を超え、控訴手続きが行われた。これから、高裁において、逆転有罪を勝ち取るべく、あきらめずに、みなさんと一緒に進んでいきたい。
(ちわきみわ)

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道民との約束を反故にする深地層研究計画延長提案を許さない!
北海道平和運動フォーラム 事務局長 難波 優

 幌延町は北海道の北部に位置する人口2,300人の町です。
 幌延町には、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターがあります。 

全道各地で「核のごみ」に猛反発
 1984年、旧動力炉・核燃料開発事業団は、「核のごみ」の貯蔵と処分研究を一体的にすすめる「貯蔵工学センター計画」を公表しました。翌85年10月30日、吉田登動燃理事長は、幌延町で建設予定の核廃棄物処理施設の横路孝弘知事への「調査通告」を強行しようとしました。道庁ロビーでの1,000人による阻止行動では、逮捕者がでるという激しい衝突になりました。さらに反対派の監視行動をかいくぐり、11月23日には抜き打ちの「現地踏査」が強行されました。これに道民が猛反発し、全道各地で抗議行動が起こり、「白紙撤回」に至りました。
 その後、「放射性廃棄物は受け入れ難い」とする道の「核抜き条例」や、「放射性廃棄物は持ち込まない」「研究終了後は閉鎖し埋め戻す」「最終処分場としない」などとする「三者協定」が締結され、「幌延深地層研究センター」がスタートしました。日本原子力研究開発機構・幌延深地層研究センターが「条例や協定を守るからやらせてほしい」と道民にお願いし、研究期間を含め約束したものであり、こうした経過を肝に銘ずるべきです。

協定を反故にする研究計画延長
 にもかかわらず、日本原子力研究開発機構・幌延深地層研究センターは8月2日、高レベル放射性廃棄物(「核のごみ」)の地層処分における研究期間を2028年度末までに延長する新たな研究計画案を道および幌延町に提出しました。1998年の「深地層研究所(仮称)計画」では「全体の研究期間は20年程度」と明記されており、2001年からはじまった研究は2021年ころには終了しなければなりません。また、歴代の幌延深地層研究センター所長は「程度といえば2~3年のこと」と明言していました。これらを反故にする「研究延長」は断じて容認できず、日本原子力研究開発機構・幌延深地層研究センター・北海道・幌延町に対し「白紙撤回」と「受入拒否」を求めた要請行動を実施してきました。
 2017年に公表された最終処分の適地を示す「科学的特性マップ」において、道内では幌延町を含む86市町村が「最適地」とされています。今回の「計画案」では、地層処分の技術基盤の整備の完了が確認できなければ、埋め戻しの工程は示さないとしており、研究期間の再延長とともに「三者協定」は空洞化され、なし崩し的に幌延が最終処分地にされる危険性があります。


2018年11月23日の「幌延デー」集会後のデモ
これ以上核のごみを増やすな!
 地震が多発する日本列島に安定した地層はなく、10万年間も監視が必要な、核廃棄物の存在をのちの世代に知らせることができない「地層処分」は即刻見直すべきです。まずは、「核燃料サイクル」政策を断念し、これ以上「核のごみ」を増やしてはならない。その上で、現在ある「核のゴミ」については、常に人間の監視が行き届く体制のもと長期的に管理し、その間に最終的な処分のあり方についての研究をすすめていくしかありません。
 引き続き、「核のごみ」の地層処分に反対し、「研究延長」の撤回を求めるとともに、幌延をはじめ道内すべての自治体において「最終処分場」を受け入れない運動を展開していかなければなりません。
 幌延町近辺の平年の初雪は10月22日。最も遅い初雪でも11月14日です。どういうわけか「11月23日」は吹雪の日が多いです。しかし、私たちは、「泥棒猫」のような卑劣な強行調査を忘れず、絶対に核廃棄物処理施設建設を許さないため、毎年「11月23日」に11.23幌延デー集会を開催しています。ぜひ、サロベツの地で何が起きているのか。全国のみなさんにも肌で感じていただければと思います。
(なんばまさる)

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中東情勢の混迷とトルコ配備の米戦術核

 10月6日にトランプ大統領がシリア北部から米軍を撤退すると発表した後、トルコ軍が同地域にいるクルド人勢力に攻撃を掛けた結果生じた混迷を極める状況の中で、シリアから最短で約110キロメートルの地点にあるトルコのインジルリク基地に置かれた約50発のB61型核爆弾のセキュリティーが注目されています。「米科学者連合(FAS)」の核問題専門家ハンス・クリステンセンらは、早急にこれらを撤去すべきだと訴えています。

冷戦時代の遺物──米欧の政治的「きずな」
 欧州配備の米国の核兵器について米国も受け入れ側の国々も公式には明確な情報を提供していません。以下、クリステンセンらの調査によって「公然の秘密」となっている状況を見てみましょう。
 トルコ配備の核兵器は、現在ヨーロッパの「北大西洋条約機構(NATO)」諸国の5カ国6基地に配備されている約150発のB61型核爆弾の3分の1を占めます。他の4カ国はベルギー、ドイツ、イタリア、オランダです。ギリシャと英国に配備されていたものは、それぞれ、2001年と2004~2007年に米国に持ち帰られました。
 もともと、米国の核兵器の欧州配備は、1949年に設立されたNATOが旧ソ連およびその同盟国側(「ワルシャワ条約機構(WTO)」(1955年設立))の圧倒的通常兵力に対抗するためとして進めたものです。1954年から核砲弾、核爆弾、短距離ミサイル、核地雷など米国のさまざまな核兵器の欧州配備が進められ、1971年には、その数は最高の約7300発に達しました。冷戦終焉時には約4000発だったその数は、大幅に減り、種類も核爆弾だけになったのですが、WTOは崩壊し、米ロの立場が完全に逆転しているにも関わらず、配備が続いています。NATOは、ヨーロッパ各国と米国の政治的きずなの象徴として、これらの核を配備し続けるべきだとの態度をとってきています。

欧州配備の米核兵器1954~2008年(クリステンセン/FAS)

危険なトルコ配備
 下の表にあるように約80発は米欧の「核共有(ニュークリア・シェアリング」の対象で、核戦争となった場合、トルコを除く受け入れ国4カ国のパイロットが自国の航空機で投下することになっています。インジルリク基地の状況は特殊で、米国もトルコも戦闘飛行隊を常駐させていません。非常時になると他所から航空機が飛来して運びだして使用する計画です。トルコのパイロットが投下に関わる計画かどうかは曖昧です。非常時の飛来はロシアに「核攻撃準備」を知らせるようなもので、実質的には同基地は貯蔵所に過ぎないと見られています。
 トルコでの核配備は60年前に始まりました。クリステンセンによると、2000年時点ではインジルリクに90発が配備されていて、そのうち40発はトルコのF16機で投下されることになっていました。もともと別の二つの基地に配備されていたこれら40発は、2005年頃までに米国に撤退となりました。
 残りの50発は、2016年7月のクーデター未遂事件の際に注目を浴びました。インジルリク基地のトルコ軍が関係していたということで、一時、同基地への送電が遮断され、米軍関係は基地からの移動を禁止されました。
 クリステンセンは、自分たちは何年も前から撤退を主張していたのに、政府が待ちすぎて今の状況を招いたと批判します。核セキュリティーのために撤退を決定すると、関係が悪化しているトルコを放棄したと見られるという事態になってしまっているからです。しかし、今決定をしないと、さらに危険な状況の中での撤退を迫られることになりかねません。輸送にはC-17輸送機が2機必要だろうとクリステンセンは見ます。
 10月14日には、ニューヨーク・タイムズ紙が、週末、国務・エネルギー両省高官らが撤収の検討と報じました。同月17日には、民主・共和両党の上院議員が、インジルリク基地にある米空軍の人員及び「アセット」を他の場所に移す可能性について報告するよう大統領に要求する法案を提出しました。
 クリステンセンは、「欧州における米国の戦術核についてどう考えるにしても、トルコはもはや容認できる場所ではない」と述べています。
(「核情報」主宰田窪雅文)

欧州配備の米核兵器 2019年(クリステンセン/FAS 2019)

欧州配備の米国B61 型核爆弾2019年(クリステンセン/FAS)

国名 空軍基地名 核兵器 航空機
ベルギー クライネブローゲル B61-3/-4 20発 F-16
ドイツ ビュッヘル B61-3/-4 20発 PA-200
イタリア アビアノ B61-3/-4 20発 F-16 (米軍)
ゲディ B61-3/-4 20発 PA-200
オランダ フォルケル B61-3/-4 20発 F-16
トルコ インジルリク B61-3/-4 50発 無[飛来計画]
計:5ヵ国 6基地 150発

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《投稿コーナー》
みんなの力で死刑をなくそう!
平岡 秀夫(「死刑をなくそう市民会議」共同代表世話人、第88代法務大臣)

「死刑をなくそう市民会議」の発足
 今年の6月1日に、死刑問題に係わる各種の市民グループ・学者・弁護士の代表的な方々が発起人となり、また、多くの著名人の方々が参加の呼びかけ人となって戴いて、「死刑をなくそう市民会議」が発足しました。
 そして、8月31日には、明治大学リバティーホールで350人の参加者を得て「死刑をなくそう市民会議」の設立集会が開かれました。そこでは、我が国最大の人権擁護団体である日弁連の中本和洋前会長が、冒頭の基調講演において、日弁連が2016年10月の福井人権大会で初めて死刑廃止宣言を出した時の会長として、宣言を出すまでの厳しい道のりを話してくれました。
 世界の潮流は、死刑廃止へと向かっている(2018年12月末現在、世界各国の中で、死刑存置国が56カ国であるのに対し、死刑廃止国は142カ国((10年以上死刑の執行を停止している「事実上の廃止国」28カ国を含む)になっています。)にもかかわらず、日本では、まったくその兆しが見えてこないのは何故でしょうか?

日本の世論調査の結果は何から来るのか
 実は、日本の政府は、なぜ死刑を廃止しないのかと問われて、「国民世論の多数が,極めて悪質,重大な犯罪について死刑もやむを得ないと考えていること」を一番大きな理由として挙げています。しかし、その説明の源となる内閣府の世論調査には、マジックがあるのです。
 確かに、一番最近(2014年11月)の世論調査では、「死刑は廃止すべきである」とするものが9,7%であるのに対し、「死刑もやむを得ない」とするものが80,3%もあり、我が国では、圧倒的に死刑維持派が多いように見られています。
 しかしながら、この設問の仕方に問題が有ることはさて置いて、さらに詳しくこの世論調査を見てみますと違った側面も見えてきます。例えば、「死刑もやむを得ない」(80,3%)のうちには「将来的に廃止してもよい」が40,5%もありますし、また、「もし、仮釈放のない『終身刑』が新たに導入されるならば、死刑を廃止する方がよいと思いますか。それとも、『終身刑』が導入されても、死刑を廃止しない方がよいと思いますか。」の問については、「廃止する方がよい」が37,7%になります。
 市民の皆さんが死刑のことについてもっと詳しく知ることになれば、死刑の存廃問題についての市民の意識も変わってくるのではないかと思われます。

死刑のことをもっと知ろう
 そこで、死刑のことをもっと詳しく知ってもらうために、幾つかのクイズを出してみます。ちょっと考えてみて下さい。先ず質問です。

  • 先進諸国(OECD35カ国)のうち、死刑存置国はどれくらい?2018年サッカーワールドカップ(SW)のベスト16カ国、2019年ラグビーワールドカップ(RW)日本大会出場20カ国の中ではどれくらい?
  • 死刑を廃止した国は、どうやって廃止した?
  • 日本の死刑執行方法はどんな方法?何で決まっているの?
  • 日本の死刑執行は誰が命じているの?死刑執行の順番をどのように決めるの?
  • 最高裁は、なぜ死刑は憲法に違反しないと言っているの?

次に答えです。

  • OECDの死刑存置国は、事実上の廃止国である韓国を除けば、日本と米国の2ヶ国だけ。米国も、全米50州のうち、2019年7月末現在、廃止22州、停止4州、10年間執行せず7州(廃止州と停止州以外)。SWベスト16では日本だけ、RW出場20カ国では日本と米国だけ。
  • 死刑を廃止した国でも、廃止直前は、死刑を支持する国民世論が大きかった国が多いのです(例えば、英国では81%(1962年)、仏では62%(1981年)、フィリピン80%(1999年))。しかし、それらの国の政治的リーダーが死刑廃止を決断してきました。
  • 日本の死刑は、絞首刑によって執行されます。1873年(明治6年)の「太政官布告65号」という当時の法律に相当するもので決められていますが、首がちぎれたり、首を絞めることで苦しみを与えたりすることもあって、「残虐な刑」と非難されることもあります。死刑執行後にはその執行結果を記録しているのですが、その記録の開示を求めても、「海苔弁(黒塗り)」状態です。
  • 日本の死刑は、法務大臣がその執行を命令しますが、命令を出す前には、法務省刑事局が中心となって執行の可否について慎重に審議をしています。しかし、どのような順番で命令を出しているのかは、明確な基準はありません。オーム真理教関係者の死刑執行は、政治的な思惑の下で、オーム真理教関係者以外の者との順番、オーム真理教関係者の中での順番が決まったと見られています。
  • 最高裁大法廷の1948年(昭和23年)3月12日判決では、「一人の生命は全地球よりも重い」と生命権(憲法13条)を尊重しつつも、「憲法は、現代多数の文化国家と同様、死刑を想定し是認している」とし、「公共の福祉のために死刑の威嚇による犯罪防止を必要としない時代に達したならば、死刑も残虐な刑罰」と判示しました。また、4人の裁判官の補充意見では「憲法は、死刑を永久に是認したものとは考えられない」と言っています。当時、世界で7カ国しか死刑を廃止していなかった時の判決が、今も判例として生き残ったままです。
(ひらおかひでお)

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加盟団体の活動から(第21回)
教え子を再び戦場に送るな!
内藤奨 日本教職員組合・組織共闘部長


戦争法案反対 10万人国会包囲行動
(2015年8月30日)
 日本教職員組合(日教組)は、全国の教員・学校職員等による労働組合の連合体であり、教職員労働組合連合体としては日本最大の組織です。日教組は1947年6月8日に、教育の民主化と研究の自由を獲得すること、平和と自由とを愛する民主国家の建設のため団結すること、そのために経済的・社会的・政治的地位を確立することを目的に、三つの教職員団体が合同して結成されました。具体的には、全国の子どものための教育条件の整備や教職員の待遇の改善、地位の向上などを主な目的として、教育に関わる制度・政策に対する提言など数多くの活動を行っています。
 また、長い期間、トップダウンで画一的な教育を行うことに反対し、現場の教職員による柔軟で人間的な教育の実現を訴え、文部科学省(旧文部省)などの教育行政と対立してきましたが、1995年には単純な対立の構図では解決できなくなった様々な教育課題の状況をふまえ、教育行政との関係は拮抗と協調のパートナーシップにもとづく新たな展開へと移りました。現在は、多様な価値観を認め合いながら、ともに学びともに生きる横断型の市民社会をめざし、子どもと教育、教職員に関する様ざまな課題・政策に対する要求や提言、各種活動を行っています。
 日教組はこうした運動の一つとして、1951年第18回中央委員会で決定された「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンを掲げ、平和運動にも積極的に関わってきました。そこには、自らが愚かな戦争に加担して、数多くの教え子を死なせ、また多くのアジア等の人々に惨禍を与える教育をしてしまったことへの痛切な反省が存在しています。日教組は、安倍政権による憲法改悪を阻止し、改めて憲法前文や9条に示された恒久平和主義の意義、基本的人権の尊重及び国民主権の重要性を確認し、一人ひとりの人権が尊重される平和で民主的な社会の実現をめざし、引き続き平和フォーラムと連帯し、とりくみをすすめていきます。
(ないとうすすむ)

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〔本の紹介〕
『この世界の片隅に〈上・中・下〉』
著者:こうの史代 双葉社

 今、当たり前のように、勉強することも、恋愛をすることも、どんな仕事をするか、何を食べるかを選ぶことも「自由」にすることが出来ます。こんな当たり前だと思うことが、許されなかったのが、戦争です。
 「この世界の片隅に」は2016年、映画化を望む多くの声に支えられ、クラウド・ファンディングで制作資金を集め、公開後は徐々に公開規模を拡大し、連続上映1000日を超える人気作品で、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
 原作は、戦時下の広島県呉市で生活する主人公すずの日常を、昭和9年1月から21年1月まで描いたものでしかありません。広島で生まれ育ち学生だった主人公が、呉に嫁ぎ生きていく。終戦を迎え、戦時下で失ったものは何だったのか。生まれた場所も時代も違う主人公に対して、いつの間にか気持ちを重ねてしまい、主人公が涙を流す描写の時には、一緒に泣いてしまうほどの作品です。空襲警報が鳴る、焼夷弾が落ちてくる、瓦礫の下に人が死んでいる、自分を訪ねてきてくれた人と別れるときに2度と生きて会えないという気持ちになる、繋いでいた手の先にいた小さな子どもが次の瞬間には生きていない、家の外が燃えている。とある少女を主人公にして日常を描いたものといっても、それは決して、1人だけが悲しい人生を送ったという話ではないということが容易に想像できます。当時の広島、長崎、日本中で、そして戦争の被害にあった地域で生きる世界中すべての人に共通する状況だったのではないでしょうか。
 この作品は、漫画を原作に、テレビドラマや映画にと映像化をしており、場面によっては鍵となるフレーズも変わっています。また2019年12月20日には、「この世界のさらにいくつもの片隅に」と題し、多くの新規場面を追加したバージョンの映画が公開されます。
 「さらにいくつもの」というフレーズの通り、前作の主人公の人生のみならず、さらにいくつもの人生が描かれることになります。それぞれの人生、戦時下の日常がどのようなものであるか、体験していない世代こそ、登場人物を自分に置き換え、作品の中で自分が一緒に生きている、それはどんな世界なのかを想像しながら鑑賞していただきたいです。
(橋本麻由)

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核のキーワード図鑑


原発への マネー道

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平和・自由・人権 すべての生命を尊重する社会を憲法理念の実現をめざす第56回大会

日時:11月9日(土)~11日(月)
場所:北海道函館市

11月9日(土)
◎開会総会15:00~16:00「函館アリーナ」
◎メイン企画16:00~18:00「同アリーナ」

11月10日(日)
◎分科会9:30~12:30「函館アリーナ」「花びしホテル」
◎フィールドワーク8:00~17:00「函館近郊」
◎ひろば14:00~16:00「函館アリーナ」

11月11日(月)
◎閉会総会9:30~11:00「函館アリーナ」

※問い合わせは平和フォーラムまで。

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