2019年7月アーカイブ

 2018年の沖縄県知事選や2019年2月の県民投票で示された沖縄県民の名護市・辺野古での埋め立て中止を求める民意を無視した埋め立て強行は、民主主義、地方自治の破壊である。が、もう一つ重要な視点として、生物多様性国家戦略や生物多様性条約に真っ向から反する行為を政府が率先して行っているという問題がある。政府は、目の前の都合によって、子孫が生きていくための未来を支える基盤をつぶしている。これは、犯罪と言ってもいい行為である。本稿では、生物多様性の観点から、辺野古新基地建設が如何なる意味で犯罪であるかを見るとともに、ここにきて大浦湾の軟弱地盤問題を契機に浮上した、新たに砂の大量供給が避けられないという課題について解説する。

1)生物多様性の保持・回復は現代の焦眉の課題
 2019年5月6日、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットホーム」(以下、IPBES)の第7回総会がパリで開催され、生物多様性に関する「地球規模アセスメント報告書」が発表された●1。これは、世界規模での生物多様性の現状を評価した初の報告書であるが、極めて衝撃的な内容を含んでいる。例えば、以下のようなことが書かれている。
「世界中に約800万種と推定される動植物について、約100万種が絶滅の危機にある。」
「海生哺乳類の33%超が、絶滅の危機に直面している」。
 今年3月18日、沖縄県今帰仁(なきじん)村の海岸にジュゴン1頭の死骸が漂着し、防衛省が確認した3頭のうちの「個体B」とみられる●2。他の大浦湾で目撃された個体Cは、15年6月から、嘉陽沖周辺で目撃された個体Aは、18年9月以来、ともに未確認である。日本のジュゴンが絶滅にひんしていることは確実である。沖縄で起きているジュゴンの激減は、日本における海生哺乳類の絶滅の典型であろう。
 生物多様性の重要性に関する認識は20世紀後半、急速に広がった。そして20世紀末、人類は、このまま生物多様性を破壊して行くことは、自らも含めて破滅への道であることを自覚し始める。1992年6月、リオデジャネイロでの「環境と開発に関する国際連合会議」(地球サミット)で生物多様性条約●3が日本を含む157か国が署名し、1993年5月に発効したことは、その一つの現れであろう。この条約は、世界規模での環境保全の機運が高まり、国際的な生物多様性の保全を目的として作られた条約である。18年12月現在、194か国、EU 及びパレスチナが締結しており、米国は未締結である●4。
 日本はこれに基づき95年10月、第1次生物多様性国家戦略を策定し、08年6月には同条約を推進するために生物多様性基本法が施行される。その前文には、「今日、地球上には多様な生物が存在するとともに、これを取り巻く大気、水、土壌等の環境の自然的構成要素との相互作用によって多様な生態系が形成されている。人類は、生物の多様性のもたらす恵沢を享受することにより生存しており、生物の多様性は人類の存続の基盤となっている」と格調高い思想が掲げられている。
 そして、2010年10月、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋市で開催され、日本は議長国として重要な役割を果たした。この会議においては、2050年までの長期目標(Vision)として「「自然と共生する」世界を実現すること」を掲げた。それは、「生物多様性が評価され、保全され、回復され、そして賢明に利用され、そのことによって生態系サービスが保持され、健全な地球が維持され、すべての人々に不可欠な恩恵が与えられる」世界であるとする。同時に2020年までの短期目標(Mission)として「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施する」ことを掲げ、2011年以降の新たな世界目標として「生物多様性戦略計画2011-2020」(愛知目標)が採択された。そして短期目標を達成するため5つの戦略目標と、その下に位置づけられる2015年又は2020年までの20の個別目標を定めている●5。例えば、目標11として「少なくとも陸域及び内陸水域の17%、また沿岸域及び海域の10%、特に、生物多様性と生態系サービスに特別に重要な地域が、効果的、衡平に管理され、かつ生態学的に代表的な良く連結された保護地域システムやその他の効果的な地域をベースとする手段を通じて保全され、また、より広域の陸上景観や海洋景観に統合される」、目標9として「侵略的外来種及びその定着経路が特定され、優先順位付けられ、優先度の高い種が制御又は根絶される。また、侵略的外来種の導入又は定着を防止するために、定着経路を管理するための対策が講じられる」などがある。
 これらを背景として閣議決定されたのが2012年9月の第5次「生物多様性国家戦略」である。「国家戦略」には、4つの「生物多様性の危機」が示されている。
第1:開発など人間活動による危機
第2:自然に対する働きかけの縮小による危機
第3:外来種など人間により持ち込まれたものによる危機
第4:地球温暖化や海洋酸性化など地球環境の変化による危機
 しかし、冒頭で見た 19年5月のIPBES報告書は、生物多様性条約発効から四半世紀にわたる世界的な努力にもかかわらず、事態はより悪化し、深刻化していることを示している。政府には、この警告を真摯に受け止め、もろもろの政策に反映させる責務があるはずである。 

2)3重の意味で生物多様性国家戦略に反する辺野古新基地建設
 上記の観点から見るとき、辺野古新基地建設は、如何なる問題を含んでいるであろうか。 辺野古埋立て用土砂の採取・搬入で考えると、生物多様性国家戦略に示された4つの危機では、岩ズリや海砂の採取が第1の危機(開発など人間活動による危機)、辺野古への土砂の持ち込みが第3の危機「外来種の持ち込み」をもたらす可能性がある。少なくとも以下の3つの意味で、生物多様性国家戦略に反しているといわざるを得ない。

  1.   岩ズリ・海砂で、生物多様性の宝庫=辺野古の海を埋立て、戦争に備える基地を強化する。
  2. 本州や奄美などの土砂・海砂採取地では、山を削り、海底を掘ることで、生物多様性の観点から重要度の高い海域を汚染する。
  3. 岩ズリや海砂の移動に伴い、それに混って外来種が持ち込まれ、沖縄島の生態系をかく乱す。

 以下、それぞれにつき、やや詳しく見てみよう。
 第1は、そもそも辺野古・大浦湾を埋立てること自体が生物多様性国家戦略に違反している。
辺野古新基地は、辺野古側のサンゴ礁が続く浅瀬と大浦湾側の深い入り江の約160ヘクタールを埋め立てて建設される。辺野古・大浦湾の海はジュゴン・ウミガメの生息地であり、サンゴ類など国際的な観点からも生物多様性の豊庫である。この海をコンクリート詰けにして、つぶしてしまうことは、絶対的損失であり、日本におけるジュゴンの絶滅も仕方ないという選択である。
 第2に埋立てのための土砂、海砂の持ち出し計画にも同じ構図が当てはまる。
 辺野古埋立てのため国は、東京ドーム16.6杯分相当の計約2,062万m3の土砂を、沖縄を含む西日本各地から採取、供給する計画(付属図書10「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」)である。その内訳は、岩ズリ1,644万m3、山土360万m3及び海砂58万m3である。ここで「岩ズリ」とは、採石の残余として発生する砂、泥及び小石の混合物。多くは採石場に積み上げられている。岩ズリの7割強は、表1のように沖縄県外の香川県から鹿児島県までの西日本一帯から持ち出す計画である。

表1 供給業者の採取場所別、岩ズリストック量(単位:千立方メートル)
地区名        ストック量     備考
本部地区       6,200       沖縄県
国頭地区       500      沖縄県
徳之島地区     100     鹿児島県
奄美大島地区  5,300       3か所(鹿児島県)
佐多岬地区     700     南大隅町(鹿児島県)
天草地区      3,000         御所浦(熊本県)
五島地区      1,500         椛島(長崎県)
門司地区      7,400         北九州市門司3か所(福岡県)、黒髪島、向島(山口県)
瀬戸内地区      300         小豆島(香川県)   合計 25,000  ※使用量  16,440

 第3の問題が、辺野古への外来種持ち込みによる危機である。
 亜熱帯である辺野古に搬入される岩ズリの多くは温帯域で採取される。従って、そこには辺野古とは異なる生態系が展開されている。また同じ亜熱帯でも例えば沖縄本島と奄美大島では、当初になって言った歴史が異なることで、その後、それぞれ独自の進化を遂げて、異なる生態系が発達している。辺野古に沖縄島以外から大量の岩ズリを持ち込めば、沖縄島独自の生態系に有害な外来種が侵入する可能性がある。岩ズリ採取地周辺では、アルゼンチンアリ(山口県など瀬戸内海一帯)、ハイイロゴケグモ、オオキンケイギク(奄美大島)、ヒアリなど有害な特定外来種が混入している可能性があり、少なくとも外来種侵入防除対策が不可欠となる。              
 防衛省(事業者)は、土砂調達に係る契約に当たり、仕様書等に、使用する埋立土砂が生態系に対する影響を及ぼさないものであることを確認する旨を規定し、埋立土砂の供給業者に所要の調査等を義務づけるなどの措置をとるとしているが、侵入防除対策は未だ策定されていない。
 この問題を重視した沖縄県議会は、15年7月10日、「公有水面埋立事業における埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例」●6を制定し、同条例は15年11月1日に施行された。事業者に外来生物の有無の調査結果を含む事前届け出を義務づけるとともに、県による立ち入り調査権を定めている。しかし「勧告」しかできないなど不十分な点があり、条例の運用だけで、外来生物の沖縄島への親友を阻止することには困難が伴う。
 沖縄県条例の適用第1号は、内閣府沖縄総合事務局(事業者)が行った那覇空港第2滑走路事業のために奄美から石材(岩ズリではない)搬入した問題である。採石業者の調査では何も発見されなかったが、沖縄県の立ち入り調査から6か所の採石地すべてから特定外来種であるハイイロゴケグモ、オオキンケイギクが発見された●7。業者は、簡易洗浄をしたが、それにより外来種が除去できたのかどうかのチェックもないまま、石材は那覇に持ち込まれた。この結果、奄美から外来生物が、そのまま持ち込まれることを止められたかどうかは、不確かなままである。これを確実にするためには、第3者機関がチェックする体制をつくることが不可欠であろう。

 辺野古埋め立ては、国が率先して生物多様性国家戦略に反し、生物多様性条約を破る行為を推進していることになる。政府は、生物多様性基本法や国家戦略よりも、米軍基地の新設を優先している。中長期的な未来を見るのでなく、「抑止力を保持すること」を理由に目先の都合によって政策を押しつけていることは明らかである。

3)大浦湾地盤改良のために大量の砂(主として海砂)が必要
 2019年になり、大浦湾側の海底には、厚さ60mとも言うマヨネーズ状の軟弱地盤(防衛省調査)があり、計画変更の必要性を国も認めざるを得なくなった●8。計画変更について沖縄県知事からの許可が下りない場合、国が訴訟を起こす可能性が大きいが、いずれにせよ沖縄島外からの土砂搬入が始まる時期は大幅に遅れることになった。
 そればかりか、そもそも地盤改良工事のために、新たに膨大な砂が必要となり、それが調達できなければ、地盤改良自体が困難になるという大きな課題が浮上している。地盤改良工事では、砂杭7万7千本、敷砂のために新たに650万m3(県庁舎22棟分)の砂が必要となるとされる●9。これは沖縄の年間海砂採取量の約3~5年分である。政府は「調達は可能」とするが、どこから調達するのかが大きな問題である。元々、海砂は、ケーソン護岸の中詰として58万m3が予定されていたが、それを10倍するような砂が必要なのである。
 必要な砂の本命と想定される海砂採取の環境への影響については、瀬戸内海での貴重な経験がある。瀬戸内海の各県は1998年の広島県を皮切りに2006年の愛媛県まで、海砂採取を禁止してきた。要約すれば以下のような問題がある。海砂採取は、海底の砂泥を真空ポンプを使って根こそぎポンプアップして行われる。船上で篩にかけ砂分だけ取り出し、礫や泥は高濃度の濁水として放出する。砂地で暮らしていた生物は、いきなり強引に甲板にたたきつけられることになる。
 その結果、第1に洲や砂堆の消滅で海底の砂堆に生息している生物が減少した。これにより、食物連鎖に関わる生態系ピラミッドの構造の変化が起こった。瀬戸内海では、砂泥底で夏眠したり産卵するイカナゴの減少が著しく、それがクラゲの増加を誘発し、これを食べる高次生態系の鯛・サワラなどの高級魚を減少させ、スナメリクジラの減少の一要因ともなったと考えられている。第2に、濁水の拡散により透明度が悪化し、微粒子の付着により藻場が減少した。これらが、同時に影響することで、「縫い目のない織物としての自然」のバランスを崩し、生態系の健全性が損なわれていったのである。
 こうした負の経験に照らせば、海砂採取は、どこであっても大規模なことはすべきではない。この経験から、90年代までは、全国で年間2000万m3を超えて採取されていたのが、今日では900万m3程度に半減している。最近10年の全国的な海砂採取は、九州中四国の8県でほぼ全量を行っている(表2)。福岡県、長崎県で全体の半分を占め、3番目に多いのが沖縄県である。こうした点を考慮すると、新た必要となる650万m3の砂の調達先としては、以下の3つを織り交ぜたものになると考えられる。
 a)沖縄周辺の海砂採取量を増やす。
 沖縄県では年間の総採取量の制限がないので、採取量を現在より増やす可能性は高い。
 b)県外から持ち込む。これだけ大量の海砂の沖縄だけでの調達は不可能である。九州や四国では、ほとんどの県が年間採取量の総量規制を定めている。例えば、福岡県では、総量の上限は400万m3である。現時点で、福岡県では、230~320万m3採取しているので、総量枠との関係では約70~170万m3まで供給できる余裕がある。
 c)砂の代わりに「鉄鋼スラグ」を使用。これも環境への深刻な影響を与える可能性が高い。
 いずれにせよ、政府は、埋め立てそのものに入る前に、その前提として、大浦湾の軟弱地盤を改良する工事に、膨大な予算と時間を投入せざるをえないという難題に直面している。海砂の供給を止めるための取り組みをすすめるだけでも、計画を頓挫させていく大きな要素になりうるのである。

 以上より、辺野古新基地建設は、3重の意味で生物多様性国家戦略に反していることが浮き彫りになる。しかも埋め立ての中心である大浦湾側の軟弱地盤の改良工事だけでも兆単位の税金を追加投入せねばならないことになっている。通常ではありえないことである。
 長期的視野を持って生物多様性という観点から辺野古新基地建設を見るとき、どこから見ても計画を中止せねばならないという必然性が見えている。そういう世論を全国的により広めていくことで計画は止められる。さらにいえば、長期的視野を持って生物多様性という観点からさまざまな国策を検証する方法は、人類社会の直面する壁を壊していくという戦略的意義を有している。我々の闘いは、その最前線にある。


1 環境省のIPBES関連サイトは以下。
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/ipbes/index.html
グローバルアセスメントの原文は、以下で入手できる。
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/ipbes/deliverables/files/spm_global_assessment_report.pdf
2 「琉球新報」2019年3月19日。
3 日本語訳全文は、環境省生物多様性センターの以下のURLから入手できる。
http://www.biodic.go.jp/biolaw/jo_hon.html
4 批准状況は以下。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html
5 愛知目標における20の個別目標は、以下。
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/aichi_targets/index_03.html
6 全文は沖縄県HPの以下のURL.
https://www.pref.okinawa.jp/site/gikai/documents/giinnteisyutu01.pdf
7 「琉球新報」16年3月25日
8 第198回国会 衆議院本会議における安倍首相の答弁(2019年1月30日)。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000119820190130002.htm
9 「沖縄タイムズ」2019年2月25日。

表2 近年における県別海砂採取量の経年推移(万m3)

 フクシマ アピール


 原発事故から8年余りが経過しましたが、原発事故で失われた人々の生活は取り戻せません。今でもたくさんの県民が、原発さえなければという思いを抱きながら暮らしています。旧避難区域では「復興」に向けた努力が続けられていますが、まだまだ住民の帰還には多くの課題があります。故郷への帰還を待ち続けながらも、その思いが叶わず「無念」のうちに亡くなられた方も多く、原発事故関連死は2000人を超え増え続けています。

 「廃炉なくして復興なし」とする被災県民の、8年以上の苦渋の重さは計り知れません。福島では、昨年6月の東電による福島第二原発の廃炉検討表明以降も、全基廃炉の即時決定を求める運動を続けてきました。同時に、課題が山積している事実を通して、廃炉以降の次なる運動へのステップについての議論も行ってきました。東電の廃炉決断は当然のことです。しかし、被災者の生活再建や健康への懸念を払拭できるものではありません。重大事故を起こし甚大な被害をもたらした東電と国の責任は明らかで、被害者支援・賠償の切り捨てを許さず、被害者の人権の確立と補償を求めるとりくみを進めなければなりません。
 福島県に隣接する、女川・東海第二・柏崎刈羽原発をはじめ全国で、原発の再稼働反対の運動が進められています。世界では、フクシマ原発事故の甚大な被害を教訓に、脱原発の方向にエネルギー政策を転換する国が増えています。8年以上が経過しても元に戻せないフクシマの現実を直視し、そして共有し、フクシマから発信し続け、原発のない社会の実現を展望した運動を強めなければなりません。国の原発推進政策を中止させ、エネルギー政策の転換を強く求めていきましょう。
 
 原発事故直後の高線量の中で、多くの人々が、被ばくを強いられた事実を消すことはできません。そして健康への不安は消えることはありません。私たちは、国策で推進した原発で重大事故を起こし、放射能汚染をもたらし、多くの人々に被ばくのリスクを負わせ、人権を侵害した国と東電の責任を改めて厳しく問い、責任を持って被害者の健康管理と医療、生活の補償を行うよう、とりくみを進めなければなりません。
 国や東電は、原発事故による放射能の被害を消し去ろうとする動きをより強めています。県内では、「復興」と東電福島第一原発の事故収束・廃炉作業の「安全性」をPRする施設が次々と作られています。また、モニタリングポストの撤去や米の全袋検査から抽出検査への切り替えの動き、トリチウム汚染水の海洋放出問題、除染土壌を公共事業に再利用する実証実験など、事故による放射能汚染を隠し、さらに拡散しようとしています。このような動きに反対するとりくみを引き続き強めましょう。
 フクシマの悲劇を二度と繰り返してはなりません。私たちは全国、全世界の反核・脱原発運動と連帯します。ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・チェルノブイリをはじめ、世界の核被害者と連帯します。「核と人類は共存できない」ことを原点に、原発も核も戦争もない平和な社会の実現に向けともに前進しましょう。
 
 2019年7月27日

 被爆74周年原水爆禁止世界大会・福島大会

福島から被爆74周年原水禁世界大会始まる

 

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国と東電に原発事故の責任を問う

 2011年3月におきた福島第1原発事故を機に、原発も核も戦争も無い社会の実現をめざそうと、毎年7月下旬に原水爆禁止世界大会・福島大会が開催されてきました。今年も、7月27日に福島市の福島県教育会館で開催され、県内や東北各県を初め、全国から620人が参加しました。
 主催者あいさつを則松佳子・大会副実行委員長(原水禁国民会議副議長)が行い「先の参議院選挙では改憲勢力が3分の2を占めることを阻止したが、戦争への道に絶対反対しよう」と呼びかけるとともに、「来年の核不拡散条約(NPT)の再検討会議に向けて1000万署名の推進なども討議を重ねよう」と、広島・長崎へと続く原水禁大会の意義を訴えました。
 地元あいさつに福島県平和フォーラムの角田政志代表が立ち、東京電力が福島第2原発の廃炉を正式に表明したことに対し「原発の無い福島を訴えてきた我々の運動にとって大きな一歩だが、廃炉までは長い年月がかかる。これからも監視する必要がある」として、「東電と国の責任と問い、福島の悲劇を繰り返さないためにしっかり取り組む」と述べました。
 核兵器廃絶への若者の声を国連に届ける「第22代高校生平和大使」に福島県から選出された斉藤帆香さんと赤沼優希さんは「福島の真の復興から世界の平和につなげたい」(斉藤さん)、「福島の現実が知られていない。もっと発信をすることが私たちの使命」(赤沼さん)と、それぞれ決意を表明しました。
 大会の基調提起を藤本泰成・大会事務局長が行い、特に福島原発の現状と課題として、避難者の支援、子どもや住民の健康対策、原発の再稼働を許さず、エネルギー政策の転換を求めていくことを強調しました。

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被災者の生活再建・健康問題でシンポジウム

 続いて、「被災者の生活再建・健康問題と脱原発」をテーマにシンポジウム(上写真左)が行われ、原発事故で大きな被害を受けた飯舘村の村議会議員を務める佐藤健太さんは、「村の大部分で避難が解除されたが、帰還した人は高齢者が中心で、多くは避難したままだ。事業所も再開したのは3割程度で、小売業はゼロ。労働力不足も深刻だ」と現状を報告し、「そうした中で復興予算は村の一般会計の数倍もあり、住民の合意形成なしに箱物作りに使われ、今後の維持・管理が問題になる」と、政府の単年度予算の仕組みの改善を求めました。
 県民の健康については「きらり健康生協」の福地庸之専務理事が、「原発事故の発生時に正確な情報が伝わらず、多くの人が無用な被ばくを強いられた」と批判し、県民健康調査での子ども達の甲状腺障害の多発や、避難の長期化で死亡する人が多いことを取り上げ「この責任を問いながら、地域や世代間、避難者などの分断を超えて団結していくべき」と指摘しました。
 大阪の医師の振津かつみさんは、福島での医療活動を続けながら、1986年のチェルノブイリ(ウクライナ)の原発事故を教訓にした健康問題にも取り組み、「チェルノブイリでは生涯にわたって医療や健康保障を国の責任で行っている。福島でもそうさせるために、広島・長崎の被爆者への原爆手帳を参考にした健康手帳を作ってはどうか」と提起しました。

 シンポジウムと並行し「福島原発事故と再稼働」をテーマに特別分科会(上写真右)も開かれ、原子力資料情報室共同代表の山口幸夫さんが、原発震災の解明も充分なされない中で、全国で原発の再稼働が行われていることを批判し、「専門家に任せておけない。市民、住民による直接・間接の行動が不可欠だ」として、討論・熟議から合意形成への民主主義の重要性を強調しました。
 各地の報告では、福島のほか、宮城の女川原発、茨城の東海原発、新潟の柏崎・刈羽原発について、各県の代表から状況や運動の経過が訴えられました。

 シンポジウム・特別分科会終了後、ふたたび全体会が開かれ、「被害者支援・賠償の切り捨てを許さず、被害者の人権と補償を求める取り組みを進める」「原発事故による放射能の被害を消し去ろうとする国と東電の動きに反対する取り組みを強める」などの「フクシマアピール」を全体で確認しました。
 その後、デモ行進が行われ、炎天下の中、参加者は横断幕を先頭に「原発をなくせ!」「国・東電は責任をとれ!」「原発再稼働を許さないぞ!」などとコールを繰り返しながら県庁前まで行進しました。(下写真)
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2019年7月22日
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 勝島一博

7月21日投開票された第25回参議院選挙の結果、自民、公明、維新の「改憲勢力」が改憲発議に必要な3分の2の議席を割り込みました。

この間、私たち、平和フォーラムは、13項目にわたる政策合意を基本に野党共闘を推進する市民連合の中心的役割を担いながら、この参議院選挙を改憲阻止の闘いと位置づけ取り組みを進めてきましたが、参議院で改憲を許さない大きな一歩を築くことができました。

全国で奮闘いただいた各都道府県組織及び、中央加盟団体の皆さんに心から敬意を表します。

しかし、安倍晋三首相は、残り2年余の総裁任期の中で「残された任期の中で憲法改正に挑んでいきたい」と主張するとともに、野党の一部の取り込みにも意欲を示しており、私たちは、引き続き平和憲法を守り憲法理念実現をめざす闘いの強化と立憲野党との連携強化が求められています。

一方、私たちは、参議院選挙の中で、安倍政権のもとで強行成立させられた憲法違反の安保法(戦争法)や共謀罪法の廃止、脱原発・再生可能エネルギーの推進、沖縄辺野古新基地建設の中止と普天間基地の返還、森友学園・加計学園や南スーダンにおける日報隠蔽などの疑惑の究明と透明性の高い行政の確立などを求めるとともに、立憲主義を踏みにじり暴走を続ける安倍政権の退陣を求めて様々な取り組みを進めてきました。しかし、与党が過半数を占めるという結果の中で安倍政権は継続されることとなり、改めて、これらの課題に対する総がかり行動実行委員会や戦争をさせない1000人委員会、さよなら原発1000万人アクションの取り組みを強化していかなければなりません。

私たち平和フォーラムは、安倍政権の暴走を阻止し、その退陣を求めるとともに、立憲主義の回復と憲法理念の実現をめざしさらに職場や地域での取り組みを強化していきます。

190719集会HP.JPG46回目の19日行動に1500人

   総がかり行動実行委員は、全国市民アクションと共催で46回目となる19日行動として7月19日、国会議員会館前行動を開催、1500人が参加、参院選に勝利し、安倍政権打倒への決意を確認し合いました
 
 集会は、菱山南帆子さん(9条壊すな!実行委員会)の司会で始まり、まず、主催者を代表して福山真劫さん(戦争をさせるな1000人委員会)があいさつ、「参議院選挙は、憲法破壊・ウソの政治・貧困格差を拡大する道を進むのか、平和と民主主義・憲法を擁護し、共に生きる道を進むのか、
そのどちらかを選択する選挙だ。また、我々の最低の目標は改憲勢力の3分の2を割らせることだ。自分だけ投票に行くだけでは勝てない。多くの人に声をかけていこう」とよびかけました。
 政党からは、日本共産党の山添拓参院議員、立憲民主党の大河原雅子衆院議員が参加、それぞれ、「野党共闘と市民との力で参院選選挙に勝利を!」と訴えました。
 次に、市民団体の4団体から発言。市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)の廣渡清吾東大名誉教授は、「これまで、二度の国政選挙があったが安倍政権に大きな打撃を与えきれなかった。安倍政権は国民を簡単にごまかせると思っている。私たりはもっと怒っ
ていい。安倍政権は改憲を選挙の争点にしてきた。いまここで反撃しなくてどこでするのか。みんなの力で情勢を変えよう」と訴えました。
 千葉県第5区市民連合の徳武純平さんが、参院選千葉選挙区では、3人区で異例ながら立憲と共産の候補が野党共闘の力でお互い協力し合って闘っている。3番目の議席を共産と自民が競り合っている。勝利に向けて、たたかう現状を報告しました。
「年金切り下げ違憲訴訟原告団」の馬場目トミ子さんは、2013年以降3年間で強行された2.5%の年金切り下げは、低年金で厳しい生活を強いられている高齢者への憲法25条違反として32地裁、約4000人の原告団で闘っているその闘いの報告をしました。
 土井とみえさん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)は、市民連絡会の訪問団として、沖縄の辺野古新基地建設反対の現地のたたかいと、参院選の沖縄選挙区のオール沖縄としての高良鉄美候補必勝に向けてのたたかいに参加してきたその報告を行いました。
 最後に、木下興さん(憲法共同センター)が行動提起を行い「参議院選必勝のためさらに奮闘すること」を訴えるとともに、「今後の行動として8月19日の19日行動、強行採決4周年目を迎える9・19行動への参加。そして、イラン情勢ホルムズ海峡への軍事的な動きがみられた場合は何らかの官邸前での行動も設定する場合があること」等を提起しました。
 

  参議院選挙を迎えて、未来のためのエネルギー転換研究グループと市民連合は、原発ゼロ・エネルギー転換に向けた緊急院内集会を開催します。
 日本のエネルギー政策は、2011年の福島第一原子力発電所事故前と根本的には変わっておらず、参議院選挙では原発・エネルギー政策は最重要な争点の一つであるべきです。
 未来のためのエネルギー転換研究グループは、大学や研究機関に所属する研究者や再生可能エネルギーに関わる実務家などによって構成された組織であり、6月25日に『原発ゼロ・エネルギー転換戦略:日本経済再生のためのエネルギー民主主義の確立へ』を発表しました。未来のためのエネルギー転換研究グループと市民連合は、下記の日時で院内集会を行いますので、ここにご紹介します。積極的なご参加をよろしくお願いします。


■日時:2019年7月12日(金)12:00~13:00(開場:11:30)
■場所:衆議院第二議員会館 多目的会議室(1階)
■主催:未来のためのエネルギー転換研究グループ、
    安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)
■プログラム
・市民連合
山口二郎氏(法政大学教授)
佐々木寛氏(新潟国際情報大学教授)
・未来のためのエネルギー転換研究グループとしての原発・エネルギー政策提言について
  説明:明日香壽川氏(東北大学教授)
執筆者からの補足説明:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)ほか
・各政党担当者、NGO、専門家からの意見表明
・参加者を交えて質疑応答

■その他 当日は第二議員会館ロビーで11:30から入館証を配布します。

■連絡先
認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所
担当:道満
TEL: 03-3355-2200 / FAX: 03-3355-2205

平和フォーラム/原水禁担当
TEL03-5289-8222 菊地  
 
 

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高い投票率が、野党勝利に不可欠です。
街宣時には、投票呼びかけのビラを配布する予定です。
ぜひ、ご参加ください。
 
日時:7月15日(月祝)14:00-
場所:新宿駅西口
主催:安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
   戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
 

高齢者の免許返納について考える

 福岡市早良区や東京都池袋の事故など、高齢者が引き起こした悲惨な交通事故によって、高齢者の運転が社会問題化している。俳優の杉良太郎さんや教育評論家の尾木直樹さんが免許を返納したと伝えられ、高齢者の免許の返納があたりまえのように報道される。63才の私がこのまま運転を続けると非難されかねない勢いがある。この議論は正しいのか。

 警視庁発表の資料を見ると高齢者(65才以上)の事故が増えているという。高齢運転者(第1次当事者)交通事故発生件数は平成22年6979件をピークに減少傾向にあり、平成30年は5860件だ。しかし、事故全体に占める高齢運転者事故の割合は年々増加し、平成20年の11.1%から平成30年には18.0%となっている。これが、高齢者の交通事故が増えているという根拠となっている。がしかし、65才以上の免許保有者は、社会の高齢化(65才以上は27.7%)に伴って平成14年に826万人であったものが、10年間で1421万人と1.7倍となっている。免許保有者の割合が増えれば事故の割合も増えるのはあたりまえだ。平成24年の統計では、16才から24才の免許保有者の1.54%が事故を起こしているとされるが、65才以上では0.72%となっている。事故全体に占める割合は65才以上で16%(保有者割合は17%)だったが、20代では21%(同14%)、30代は19%(同20%)だった。精神科医の和田秀樹さんは、「75才以上の高齢者より16~24才の若者の方が事故は多い。それより免許を返納して外出しなくなることで、認知症の発症や進行を呼ぶ」と述べている。

 一方で、車の技術革新はめざましい。斜め後方から車が近づくとか、レーンを逸脱しそうだとか、前方の車や歩行者を認識したりすると警報がなり、自動的にブレーキが掛かり、危険を回避しようとする。前・後方への急発進にも自動的にブレーキがかかる。スバル自動車は、アイサイト(予防安全システム)を搭載してから追突事故率発生率が84%、歩行者事故発生率が49%減少したとしている。企業の広告だから鵜呑みにはできないが、乗ってみると実感できる。

 地方都市では、食料品のスーパー、衣料品店、大規模病院など多くは郊外にある。車の運転ができないと生活の質は大きく低下する。20代から70代の男女を対象としたある調査では、64.7%の人が運転免許は「いつかは返納するつもり」と答え、39%「一定年齢になったら返納すべき」と答えているという。しかし一方で、買い物、仕事、通院に必要で返納するつもりはないとの声も聞こえる。事故というひとつの現象を捉えて、全体を評価することは難しい。画一的な制限には、熟慮が必要だ。
(藤本泰成)

ニュースペーパー2019年7月


立憲野党と市民の共闘で、参院選に勝利し、安倍政権を退陣に追い込もう!
 6月26日に通常国会が閉会しました。今国会では、消費増税、脱原発、再生可能エネルギーの飛躍的拡大、東アジアの平和など議論すべき課題は山積していながら、法案審議を棚上げして首相が外遊を繰り返し、長期にわたり予算委員会が開かれない等、安倍政権の怠惰な姿勢が明確になりました。「年金以外に2000万円の準備が必要である」とする審議会報告を諮問しながら世論の反発を招くと突如「受け取り拒否」(!?)したり、また年金システムの棄損を悪化させながら責任を棚上げする、安倍政権への批判が高まっています。その一方で、憲法審査会を利用し、改憲への道を強引に開こうとする動きも続いており、予断を許さない状況が続いています。また沖縄での無法な辺野古新基地建設のための埋め立て工事・環境破壊が進行しています。
 こうした中、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)は、5月29日に4野党1会派(立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会民主党、社会保障を立て直す市民会議)と、13項目にわたる政策に合意しました。また32の1人区の統一候補の推薦を決定しました。野党が統一して来る参議院選挙を闘う体制は出来上がりました。
 立憲野党と市民の共闘で、参議院選挙に勝利しなければなりません。野党共闘は必要条件にすぎず、十分条件ではありません。仏作って魂入れずにならないためには、全国各地草の根の選挙闘争が決め手です。安倍改憲を阻止し、政権打倒のために、総力での取り組みが求められています。
(写真は5月29日参議院議員会館で政策合意した、市民連合と4野党1会派)

インタビュー・シリーズ:146
平和だからこそ語れる講談師を生涯続けていけたら
講談師 田辺一乃さんに聞く


プロフィール
 本名菊入和子。1962年東京都生まれ。國學院大学文学部Ⅱ部を卒業し人事院に勤務。2004年9月田辺一鶴に入門して「一乃」。2006年5月前座。2010年2月二ッ目昇進。2010年一鶴死去のため一邑門下へ移籍。2019年4月真打昇進。

 原水禁大会や3・1ビキニデー集会などで、度々ご登壇いただいている講談師の田辺一乃さん。この春めでたく真打に昇進し、さらに芸に磨きがかかっています。原水禁では、「第五福竜丸物語」、「ゴジラ誕生物語」など、「核」にまつわる題材を講談調にまとめ、だれもわかりやすく、かつ楽しく聞ける物語として語っています。今日はその田辺さんの人となりを伺います。

─真打昇進おめでとうございます。前座、二つ目と修行は大変だったと思いますが、田辺さんはどのようなきっかけで講談師になられたのでしょうか。
 ありがとうございます。私は一生働きたいと思っていたので、高校を卒業して公務員の道に進みました。人事院に入り、働きながら夜学に通い、大学を卒業しました。40才を過ぎて、広報紙の担当となり、その時に田辺一鶴師匠にエッセイを書いていただく機会があり、それが師匠との出会いでした。その際師匠から「生き生き元気で楽しく働くこと」という話を聞きました。その後、師匠の主宰する講談教室にも通うようになりました。
 一鶴師匠からよく、「一生働くっていうけれどいつまで働けるの」と言われ、公務員ですから「定年は60才」とこたえましたが、「講談師には定年はなく、一生だよ、それに楽しいよ」と言われました。師匠は「楽しくないことなんて仕事にできないだろう」とよく言っていました。講談の道に度々誘われましたが、最初のころは速攻で断っていました。
 当時、公務員だったので兼業禁止でしたが、講談教室に通っているうちに亭号の「田辺」をもらい前座見習いを3カ月ほどやっていたところ、そのことが人事課に分かってしまいました。しかし前座は一切収入はなく「兼業禁止に触れない」ということになりました。その頃、広報から人材局の研修担当に移っていましたが、局長もその他の上司も、人材育成に役立つのではないかと言われ、伝統芸能の継承ということで、兼業申請を出し無給の前座を認めてくれました。2年ほど公務員をやりながら前座を務めていましたが、結局、研修担当の時に公務員を辞めました。

─公務員を辞職されてからの修業は、どうでしたか?
 前座、二つ目の時には、全然余裕はありませんでした。同じ年に一度に6人が入り、若い人が多かった。講談の仕事は少なく、厳しいと言えば厳しい時代でした。しかし、人事院在職時に研修の講師をしていたこともあり、企業や官庁の外部講師の仕事をしながら、講談の実績を積み上げてきました。その時、元いた職場にもだいぶ助けていただきました。
 暇なときには常に講談のネタを考えていました。古い講談本を基に、台本をこつこつ書いていました。2年後、一鶴師匠が亡くなりました。そのショックはあまりにも大きくその後2年間はぼ~っとしていました。一鶴師匠が亡くなった時、「そもそも講談を何のためにやっていたんだろう」と思い、何も手がつかないような状態でした。
 一鶴師匠が亡くなったあと、しばらく師匠につかない状態でした。そこで姉弟子である田辺一邑師匠が、新たな師匠になって面倒を見てくれることになり、引き続き田辺一門で修行をさせていただきました。

─落語は近年ブームが続いていますし、講談も話題にもなる講談師が登場して盛り上がっていますね。
 今、落語家は800人くらいいます。テレビでも人気があります。講談師は現在80人くらいで「絶滅危惧種」のようなものですが、若い方や女性の方の入門があります。
 私の入った田辺一門は新作講談が主流で、一鶴師匠から二週間に一本新作を書くよう言われましたが、なかなか書けない日が続きました。書いても「つまんないねえ!」と師匠からよく言われていました。
 それが台本を100本書き上げたころには、だいぶ楽な気持になりました。そして新作講談も書けるようになりました。修行中ですから古典をきっちりやりますが、身近な話や社会の動きなどを反映したネタも作り、『第五福竜丸物語』、『ゴジラ誕生物語』などもその流れです。他にも「東京江戸野菜シリーズ」や東京五輪の話などの新作をつくっています。演芸場や敬老会、商工会、呑み屋さんなど様々な場所で披露しています。
 落語でも戦時中に封印していた「噺」がありましたが、講談でも同じようなものはありました。戦後、GHQの目もあったのでしょうか、暫くの間「敵討ち」のような講談はしませんでした。サンフランシスコ講和条約が結ばれるまではそれが続いたといいます。
 また、戦争で多くの講談師が亡くなり、講談師が東西合わせて21人まで減ってしまいました。戦後テレビの普及で大衆演劇といわれる芸が廃れた時期もありました。しかし、テレビドラマでよく見る「大岡越前」や「水戸黄門」、「遠山金四郎」などは、講談が元になっているもので、現代にまで続いています。

─原水禁とのかかわりはどのようなことだったのでしょうか。
 原水禁の井上さんが、私の『第五福竜丸物語』を知り、直接会いに来てくれたのが始まりです。その後、ビキニデー集会の時に『第五福竜丸物語』を話しました。久保山愛吉さんのお墓のある弘徳院で『第五福竜丸物語』『ゴジラ誕生物語』を演じました。原水禁世界大会でも「話芸で学ぶ平和と核」として広島や長崎でも、そして、沖縄でもさせていただきました。昨年は祝島(上関原発建設予定地対岸の島)でも、島民の前で古今亭菊千代師匠の落語とともに演じました。

─『第五福竜丸物語』、『ゴジラ誕生物語』を作られたきっかけは。
 『第五福竜丸物語』は、高校の時の担任が墨東地区の震災・戦災のフィールドワークをしていて、第五福竜丸展示館のことを聞いていました。その後、第五福竜丸のことを展示館の方々に教えていだき、自分でも調べたりして、作品へと結びついていきました。第五福竜丸以外にも多くの被曝した船があったことなどもわかりました。
 『第五福竜丸物語』では誰を主人公とするかに悩みました。考えた挙句、人ではない船を主人公にしたのです。狸や天狗も時には登場する講談なら、船がしゃべってもさほど違和感はありません、船を主人公にすれば怒ったり、泣いたりせずに淡々と物語を語ることができるのではないかと思ったわけです。それを面白いと言ってくれる人もおり、励まされました。ただし作品に仕上げる際には、事実関係の数字などには気を付けるように心がけました。そして完成した作品を第五福竜丸展示館の人にも観ていただきました。『第五福竜丸物語』を作ったのは、3・11東日本大震災の後で、その次に『ゴジラ誕生物語』を作りました。
 『ゴジラ誕生物語』は、戦後復興期の話です。ゴジラ映画の一作目は、ビキニの事件をきっかけに同じ年に作られたそうです。円谷英二さんの特撮の裏話ですが、当時の苦労と日本人が持つ放射能への恐怖と怒りがゴジラを生み出し、国民的ヒットとなった娯楽映画が生まれました。そのことを伝えたくて講談にしてみました。

─平和や核に対する思いをお聞かせください
 戦争より話し合いで解決することが大切でしょう。今の時代、戦争しなくちゃいけない理由はないのではないでしょうか。みんな平和に生きたいと望んでいるはずです。講談では、原則として実在の人物が講談の題材になりますが、「講談師みてきたような嘘を言う」というように、先の「水戸黄門」や「遠山金四郎」のようにはしばしにフィクションを入れます。軍記物や悪人が主人公になることも多いですが、そこには人の憐れや人情などがあります。平和だからこそ語れる話芸なのではないかと思います。

─最後に一言
 みなさまには、ぜひ講談を聞きに来て欲しいと思っています。なかなか機会が少ないかもしれませんが、ぜひ高座に足を運んで欲しい。今度の原水禁大会(広島大会)でも、古今亭菊千代師匠の落語とセットで演じますので、ぜひ観に来てください。楽しいですよ。

インタビューを終えて
 「一生働きたい」との思いで、公務員(人事院)に就職された一乃さん。公報誌の依頼で田辺一鶴さんに会いに行かれたのが...人生の転機。一鶴さんに認められ「楽しい仕事だけしなさい」と言われたとのこと。一乃さんのお話を聞いていると、一生働けて楽しい講談師という仕事につかれているということが伝わってきました。8月の原水禁大会・ひろば「話芸で学ぶ『平和と核』」を聞きに行こうと思います。
(北村智之)

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参議院選挙で安倍の退陣を勝ち取ろう
フォーラム平和・人権・環境  共同代表  福山 真劫

何が起こっているのか
 安倍の憲法破壊、うそと無責任の政治が続き、日本の平和・民主主義が崩壊しようとしています。具体的に見れば、戦争法から憲法9条改悪への動き、専守防衛を逸脱する防衛予算の膨張、沖縄県民の意思を無視して辺野古への米軍新基地建設強行、森友・加計などウソの政治、貧困・格差の深刻化、消費税の税率アップ、福島原発事故の収束も核廃棄物の処分場の目途もない中での原発推進などなどです。そうした中で、「100年安心の年金プラン」の崩壊を表す2000万円問題、年金の5年に一度の「財政検証」の結果公表の先送り、FTA交渉における日本側の大幅譲歩を示すトランプのツイッター、米軍基地を防衛するためのイージスアショア建設と調査のいい加減さなど安倍政治の矛盾がさらに噴き出しています。
 このように安倍政権は、国内政策は八方ふさがりで、対応能力をなくし、外交政策でも、ロシア、朝鮮民主主義人民共和国との交渉の目途もなく、政権末期の様相を呈しています。
 そうした中で、6月26日、国会閉会、7月4日公示、7月21日投票の参議院選挙がおこなわれます。
 私たちはいつまで安倍自公政権の暴走を許しておくのでしょうか。今度こそ日本の憲法・民主主義破壊の暴走を止め、ウソと無責任政治を終わらせるため、安倍首相を退陣に追い込む必要があります。立憲野党の闘い方で、安倍政権退陣を勝ち取ることは可能です。


市民連合の駅頭街宣
(2019年3月10日・新宿)
2回の選挙を踏まえて、本格的野党共闘を
 2013年の参議院選挙では、1人区を野党がバラバラで闘ったため、勝利したのは2選挙区のみでした。2016年の参議院選挙では、私たちは、32の選挙区で統一候補を実現し、野党共闘で、11の選挙区で勝利しました。そういう意味で、画期的でしたが、初めての野党共闘の経験であり、また野党系の諸団体の中で、「共産党との連携」を拒む団体もあり、不十分な闘いを余儀なくされ、改憲勢力の3分の2の議席保有を許してしまいました。
 2017年の衆議院選挙では、選挙直前に、希望の党が創設され、民進党が分裂し、立憲民主党が誕生しました。そうした中で、野党共闘の形成をめざしましたが、希望の党と共闘体制が組めなかったこと、立憲民主党、共産党、社民党の3党で政策合意ができ、野党共闘をめざしましたが、候補者調整が不十分になってしまったことなど野党共闘体制が不十分な結果となりました。そしてまたも改憲勢力に3分の2超える議席数を与えてしまいました。
 立憲、希望、共産、社民への得票数を足しこむと2610万票、自公への得票数は2554万票で自公の得票数を上回っています。
 今度の参議院選挙こそ本格的野党共闘を形成し、自公政権を打倒する必要があります。今回は希望の党も崩壊し、国民民主党が創設され、野党共闘に加わりました。
 自民党の戦略は、(1)野党共闘を分断すること、(2)争点をぼかし、令和改元、天皇即位、G20などを政治的利用し、煙に巻くことです。それに対する私たちの戦略は、野党共闘をつくること、争点ぼかしを許さず、安倍政治の本質を明らかにし、わたしたちのめざす方向・政策を提起することです。

安倍政権に終止符を!32選挙区で候補者1本化と政策合意
 平和フォーラムの結集する市民連合と総がかり行動実行委員会は、そうした問題意識から、立憲民主党、国民民主党、社民党、共産党、社会保障を立て直す国民の会の4党1会派に候補者の一本化を求めながら、5月29日、「だれもが当たり前に暮らせる明日へ」を基本に13項目の政策合意を確認しました。
 13項目の合意は、憲法9条改定反対、安保法制・共謀罪の廃止、防衛予算の見直し、辺野古基地建設中止・地位協定の改定、東アジアに非核平和・日朝国交正常化、原発ゼロ実現、消費税率引き上げ中止、子ども・若者関連予算の飛躍的拡充、貧困・格差の解消、LGBTs・女性差別の解消等です。(詳細は市民連合ホームページ参照)
 そして6月6日立憲野党は最終的に32の1人区で統一候補者の具体名を確認しました。
 これで、野党全体で自民党・公明党勢力と対決をする体制ができました。1人区は野党共闘の統一候補勝利、複数区と比例区は、それぞれの政党が勝利めざして闘います。
 今回の参議院選挙の焦点は、憲法9条改悪、嘘と無責任政治に終止符を打つため、最低でも、彼らに3分の2を握らせないこと、できれば改選過半数、参議院での与野党逆転を勝ち取ることです。改選議席数は、124で、非改選の内訳を見れば、憲法擁護勢力は、41議席です。参議院の議席数は、245で、今回は最低でも41議席を獲得し、非改選と合わせて82議席にする必要があります。
 野党共闘、市民連合、連合、総がかり行動実行委員会が連帯の輪を拡大して闘えば絶対に勝てます。
 安倍政権が誕生して、6年半になります。長期政権は権力維持のために、必ず腐敗します。今度こそ悪臭まみれの安倍自公政権に終止符を打ちましょう。
(ふくやましんごう)

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神奈川・相模原補給廠からのレポート
米軍ミサイル部隊の新司令部?今後の動向を監視し、駐留撤回へ
沢田 政司(相模原補給廠監視団)


司令部庁舎に立った「星条旗」と「日の丸」
地元自治体を軽視した突然の駐留通告
 2018年10月16日、相模総合補給廠に新たな司令部が駐留を開始した。第38防空砲兵旅団という耳慣れぬ名の司令部で、2019年10月までに115名の兵員になるという。
 その半月前の9月28日、南関東防衛局が相模原市に駐留開始を通知してきた。米国が防衛省に通知したのは9月5日。3週間以上も通知を隠しておいてから、地元市に通告してきたのだ。
 2018年4月、米空軍の特殊作戦機CV-22オスプレイ5機の橫田基地への飛来の時もそうだった。3月中旬の通知が半月以上も伏せられ、地元自治体への通告が後回しにされたのだ。
 加えて、相模原市への通知は、週末の金曜日の夕方だった。市役所が一番対応をとりにくい曜日帯、時間帯を狙ったとしか思えない...。「このような情報が突然に、しかも決定事項として提供されたことは大変遺憾な事態です」。相模原市長は即座にこうコメントし、抗議の意思を示した。10月4日、同市は外務、防衛省に要請行動を行い、文書で改めて突然の通知に抗議し、基地の強化・恒久化は認めることができない旨を申し入れた。


駐留開始当日の2018年10月16日、
相模補給廠正面ゲート前で70名余の抗議行動
補給廠の恒久利用を許さない
 10月31日、相模総合補給廠のほど近くにあり、在日米陸軍司令部の置かれるキャンプ座間で、第38防空砲兵旅団司令部の再編成式が行われた。その場で、1981年以来37年ぶりに同司令部が再編成されたこと、従来はハワイで執られていた指揮機能の一部を同旅団司令部に移し、青森県つがる市と京都府京丹後市に置かれるミサイル防衛中隊、沖縄県の嘉手納基地の迎撃ミサイル部隊の指揮、統制、調整を行うことが明らかにされた。さらに、グアムにある高々度迎撃ミサイルシステム(TAHAAD)部隊も指揮下に収めることも...。が、依然として指揮、統制の中身は全く不明である。
 明けて2019年3月下旬、同司令部のオフィス機材の引越が終わり、5月には司令部庁舎前の掲揚塔に、「星条旗」の「日の丸」の2本の旗が立った。10月に司令部要員が115名となるのかどうか...。現在、要員は宿舎のあるキャンプ座間との間を米軍の公用バスで通退勤している。その数は20名にも満たない...。
 東京新聞編集委員の半田滋さんは、新司令部の駐留開始は遊休化する相模総合補給廠の維持を図る方便と指摘する。半田さんの遊休化論には賛成しかねるが、新司令部の駐留は結果として、相模補給廠の恒久化に資するものであることは確か。1938年に旧日本陸軍が、1945年に米陸軍が占有してから81年が経った。新司令部の駐留により、この先も基地が存続し続けてしまうのか。今後の動きに目を光らせ、駐留の撤回を求めていきたい。
(さわだまさし)

相模原総合補給廠とは
 相模原総合補給廠は神奈川県相模原市にある米陸軍の基地です。JR横浜線の矢部駅から相模原駅にかけての北側一帯は、旧日本陸軍時代から軍事基地として占有され続けています。
 現在、敷地面積は197ヘクタール、横浜スタジアム75個分ほどの広さです。朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争。米国が陸軍を投入したアジアでの4つの戦争で、戦闘車両、地上戦用物資・資材、病院用資材等を送り出しました。
 基地の一部返還は実現しましたが、国有地のため、道路を除き地元利用の道は開けていません。一方、共同使用区域については、相模原市が管理・運営するスポーツレクリエーションゾーンの造成、整備が進んでいます。
 基地縮小の動きもある一方で、今回の新司令部駐留のような動きもあり、基地返還へのとりくみに予断を許せない状況が続いています。(「県民のいのちとくらしを守る共同行動委員会」のチラシから引用)

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新たな大気汚染「香害」メーカーは販売中止を、国は規制を
杉浦陽子 日本消費者連盟『消費者リポート』編集長、「香害」担当


開設期間に電話が鳴りっぱなしだった
相談窓口「香害110番」
相談が殺到「香害110番」
 日本消費者連盟は、2017年7月と8月の2日間、香りの害に苦しむ人からの相談窓口「香害110番」を開設しました。私たちは、暮らしの場から合成洗剤をはじめとする化学物質をなくし、石けんを使ったシンプルな生活を提唱しています。近年、新たに浮上した「香害」の状況や悩みをお聞きし、香害から身を守る社会をどうしたら築けるか、意見を集約して運動につなげたいと企画しました。
 2日間の相談件数は、電話、メール・ファックス合わせて213件と予想以上の反響でした。女性が8割で50代が最も多く、反応するものの1番は柔軟剤でした。「他人の香りで息ができなくなり、耳鼻科に行っても治療ができないと言われ、精神科に行きなさいと言われた」「コインランドリーの排気口から流れてくる大量の匂いがひどい」など切実な声が集まりました。
 訴えに共通するのは、(1)頭痛、吐き気、めまい、味覚障害などあらゆる症状が持続して、それまでの生活が困難になること(2)香害が個人の好みの問題とされ、神経質な人といった偏見の目から、誰にも救済されず孤立しがちであること、です。訴えた人の半数以上は、化学物質過敏症と診断されていました。「今後発症する人も出てくる可能性がある。これは公害問題だ」という声から、私たちは患者支援団体や環境団体とともに、香害をなくす活動連絡会を結成し活動を始めました。


DVD「香害110番」、
上映権付1500円
メーカーを告発、国に規制を求める
 メーカーは消費者の健やかな生活に貢献するのが使命のはずです。香害のような健康被害を生む商品を、ひとまず販売中止にするのが本来の企業のあり方です。しかし、柔軟剤などを製造するP&G、ライオン、花王など洗剤メーカーで構成する日本石鹸洗剤工業会は、使用量を守らない消費者が香害の原因と言い、柔軟剤の香りや成分そのものに何ら問題はないという見解を変えていません。ただし製品表示に「香料」としか記載されていない現状から、詳しい成分表示をすべきという私たちの要望に対し、前向きに検討すると先ごろ回答しました。
 メーカーは売れるとなれば、テレビCMなどを大量に流し、消費者の欲望を掻き立てて、「買う人がいるから製造する」と消費者に責任を転嫁します。そのようなメーカーを規制するのが国、行政の役割です。私たちは、消費者庁に相談窓口の設置を、厚生労働省に原因物質の究明と規制を、文部科学省に学校など公共施設での自粛啓発を、経済産業省に洗剤業界への販売規制を、と要望を出してきました。しかしどの省庁も「香害原因の科学的知見が得られない」の一点張りで、今のところ対策に動き出す気配はありません。


「香料自粛のお願い」
ポスター付ブックレット500円
動き出した地方自治体
 そうこうしているうちに、学校に行きたくても行けない香害被害の子どもたちの実態が明らかになってきました。事態を重く見た地方自治体で、教育委員会が保護者に香料自粛を求める動きや、地方議会が国に対策を求める動きが出てきました。
 私たちが発行したブックレット『香害110番』を読んだお母さんが、学校の養護教諭を訪ねて、保健だよりに香りの自粛を求める内容を掲載してもらったり、香りのエチケットのポスターを張ってもらったりする活動も広がっています。
 苦しんでいる人は孤立しています。あなた1人ではない、私もいずれ発症するかもしれない。そういう視点に立って、みんなが自然の空気を取り戻せるよう、他人への想像力を持ち行動に移していきましょう。そして香害という公害をまき散らすメーカーに販売中止を求め、国に規制を設けるよう、共に要請していきましょう。
※香害とは:柔軟剤、消臭除菌スプレー、制汗剤、芳香剤、合成洗剤などの強い香りを伴う製品による健康被害のこと。体臭は含まれない。
※DVD、パンフのご注文は日消連(03-5155-4765)まで
(すぎうらようこ)

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被爆74周年原水爆禁止世界大会
平和と核廃絶、脱原発、ヒバクシャ援護連帯への歩みを強めよう

東北アジアの平和と非核化
 NPT(核拡散防止条約)再検討会議を2020年4月に控え、広島・長崎での原水禁大会直前に米ロのINF全廃条約(中距離核戦力全廃条約)が失効します。朝鮮民主主義人民共和国やイランの核問題も見通しがつきません。一方で「核兵器禁止条約」の批准に向け、国際社会の努力が進められています。核兵器は、米ロを中心に1万4000発余も存在し、人類の生存を脅かしており、核兵器廃絶は喫緊の課題となっています。
 日本を取り巻く周辺諸国との関係は、安倍政権下では必ずしもは良好とはいえません。特に日朝関係では「力」の外交が押し進められてきました。日米軍事一体化を進め、核兵器禁止条約批准に背を向けてトランプ政権の核政策を後押しするなど、唯一の戦争被爆国、平和憲法を持つ日本として独自の外交も国際貢献も行うこともできずに来ました。さらに安倍政権は、憲法改悪、沖縄・辺野古への新基地建設強行、原発再稼働など、民意を無視し強引な政治を進めています。
 原水禁大会を通じて核を中心とした新たな国際情勢の変化と安倍政権の危険な動きに対し、東北アジアの平和と非核化に向けたとりくみ、平和と核廃絶、脱原発、ヒバクシャ援護連帯などの課題をどのように進めていくかを考えます。

原水禁福島大会―被災から8年、フクシマの現状を考える
 被災から8年が経過する中で、4万人を越える被災者がいまも苦しい避難生活を余儀なくされ、避難指定解除と帰還の強制、補償の打ち切りなど、被災者はますます厳しい状況に追い詰められています。まさに「棄民化」ともいえる状況です。
 安倍政権や財界、電力会社は、原発推進政策を強行していますが、原発政策は破綻しています。この破綻の現実と福島原発事故がもたらした様々な問題について、福島大会や広島・長崎大会の分科会で掘り下げていきます。
 福島大会では、「生活再建問題」「県民の健康問題」など切実な問題を県内外に発信し、あわせて特別分科会として、原発再稼働の問題に直面する原発立地県の報告などを踏まえ、再稼働の問題について考えます。福島大会の二日目は、30キロ圏内の被災地へのフィールドワークを行い、被災の現状を知っていただきます。


被爆74周年原水禁大会マグネット
核兵器課題―平和と核兵器廃絶を考える
 8月5日に広島で開催される国際シンポジウムでは、「核兵器禁止条約採択から1年──今日本は何をすべきか」をテーマに、国内の研究者や外務省の担当者、および米国、中国、韓国のゲストを交えて討論を深めます。
 「東北アジア情勢と朝鮮半島の非核化、東北アジア非核地帯化構想へのアプローチ」など米中韓の視点からも掘り下げます。米トランプ政権の動き、安倍政権の動きがどのように東北アジアに変化を与え、私たちはどのように進むべきかを考えます。
 また、分科会では、「沖縄で何が起きているのか」「日・米・韓軍事同盟の行方」「朝鮮半島の非核化と日本」をテーマに平和と核軍縮の問題を考えます。どれも喫緊の課題で、安倍政権が進める強権的政策により、東北アジアがさらに不安化していることを訴えます。INF全廃条約の失効により、日本を取り巻く米中ロの核軍拡や新たな冷戦構造が危惧される中で、平和と非核化に向けたとりくみの重要性を学びます。

原子力課題―破綻する原子力政策の転換を
 原子力課題では、福島原発事故で私たちが学んだ教訓を基礎として、原子力政策の根本的な転換を訴えます。安倍政権下で進められるエネルギー基本計画の矛盾と問題点を明らかにしながら、各地で進められる原発再稼働や老朽化原発の危険性、破綻する核燃料サイクル政策とその矛盾と危険性、原発に頼らないエネルギー政策の転換の必要性を訴えます。さらに各地でとりくまれている脱原発への闘いの報告と連帯の強化を訴えます。

ヒバクシャ課題―残された課題解決とマーシャル諸島の核被害の実態
 ヒバクシャ課題では、戦後74年を迎えてもなお、解決されていない多くの被爆者の課題が残されていることを確認し、被爆者の高齢化が進むなかで課題解決が急がれていることを訴えます。被爆者問題が積み残しとなる根本的な原因は、政府による原爆被害の過小評価と侵略戦争の責任を認めず、戦後補償の責任を果たそうとしないことにあります。被爆者の援護も国家補償として全く不十分のままとなっています。そのことが在外被爆者、長崎の被爆体験者、被爆二世・三世などの様々な問題につながっています。それぞれの抱える問題について理解を深め、運動の展望を考えます。
 さらに、ヒバクシャとの国際連帯として、今年はマーシャル諸島の被災者を招き、原水禁運動の契機となったビキニ事件をはじめ一連の核実験での被曝の実態を報告していただき、核被害の現実を考えていきます。
(井上年弘)

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在朝被爆者の援護が急務
厚労省交渉で明らかになった、日本政府の不誠実な対応と差別の実態
金子 哲夫(原水爆禁止広島県協議会 代表委員)


 在朝被爆者支援全国連絡会議(原水禁、平和フォーラムなどで構成)は2018年9月、朝鮮民主主義人民共和国に訪問し、在朝被爆者の現状調査を行いました。帰国後その実情を踏まえて政府への要望書提出を検討していましたが、当時2回目の米朝首脳会が予定されており、期待を持ちながらその成功を見守ることとし、2018年中の政府要望を先送りにしました。しかし、2019年2月の米朝首脳会談で大きな成果が得られなかったため、4月22日に厚生労働大臣に対し次の4項目を柱とする要望書を提出するとともに、担当者(厚労省原子爆弾被爆者援護対策室)から得られた回答を質していきました。(写真)

在朝被爆者支援の要請4項目
(1)在朝被曝について、何ら対策がとられてこなかった現状について、率直に謝罪・反省し、朝鮮人被爆者の支援について基本的な方策を明らかにすること。
(2)在朝被爆者支援のため、現状を早急に把握し、被爆者援護法に保障された権利を実現するための方策を確立すること。
(3)在朝被爆者が被爆者健康手帳を取得することが困難な状況にあることを認識し、放射線などによる被害と高齢化のため、健康状態が深刻化している現状に鑑み、人道上の立場から、緊急の対策を講じること。被爆2世、3世への対策も講じること。
(4)以上のような対策を実現するため、朝鮮民主主義人民共和国と公式、非公式の協議を直ちに開始すること。

調査すら不充分な日本政府の対応
 以上の要望は、厚労省との交渉の場を設けていただいた石橋通宏参議院議員を通じて、事前に届けていましたので、政府(厚労省)からの回答をまず聞くことになりました。我慢して最後まで聞いていたのですが、その回答は予測されたことではありましたが、全く中身のない、不誠実なものでした。もちろん現在の日朝関係を考えれば、担当者レベルで回答できることには限りがあることは、十分承知はしていますが、在朝被爆者の実情を全く認識していないものでした。その最たるものが、「在朝被爆者に対する支援について」というタイトルで厚労省が準備したたった1枚の資料の1番目に書かれていた「在朝被爆者の実情」です。そこに書かれていたことは「2001年の被爆者実態」でした。あまりのひどさに出席者全員が唖然とするばかりでした。確かにこの年、政府は在朝被爆者調査のため、最初の「外務省・厚生労働省合同調査団」を朝鮮民主主義人民共和国に派遣しています。しかし、その後政府として調査のための訪朝がなかったからといって、18年前の実態しか示せないというのですからあきれるしかないわけです。さらに2番目以降に記載された支援策(例えば、健康管理手当が海外から請求できるようになったなど)も、この間裁判を通じて拡大した在外被爆者対策の変遷が羅列されているばかりで、特別に、在朝被爆者対策といえるものはなにも記載されていません。
 出席者から厳しい声が飛んだのは当然です。金鎮湖広島県朝鮮人被爆者協議会理事長は、「在朝被爆者の現状や思いについて話しに来た。被爆者は本当に苦しんでいる。もっと現状をきちんと認識して、8月6日にはよい返事をもって広島に来てほしい。」と、長崎の平野伸人さんは、「在外被爆者の援護が進んでいくなかで、在朝被爆者だけが置き去りにされている」と指摘しながらさらに、持参した三菱重工・霧島寮(強制連行で従事させられていた朝鮮人の寮)を示しながら「この中で今わかっているのは、5名だけ。450名ぐらいは全然その消息が分かっていない。本気で、実態を調査すべきだ」と政府の不誠実な対応を厳しく指摘しました。

差別なくすべての被爆者支援を求めて対策を
 政府の説明を聞いてはっきりしたことは、2001年の調査の際、朝鮮被爆者協会と面談しているにもかかわらず、その後一度も直接コンタクトをとっていないということです。そのことが明らかになりましたので、私からは次のことを強く指摘しました。「政府は、常々国交がないからといって差別することはないといっているが、被爆者援護法適用が在外被爆者に拡大された時、朝鮮被爆者協会にだけ、全く周知も連絡もしていないのだから、結果的には差別してきたのではないか」「まずそのこと(周知すること)を早急に実施して、協会と連携が取れるようにし、実態を把握すべきだ」ということを指摘しました。もちろん厚労省が周知したからといって、直ぐに前進するとは考えられませんが、「差別しない」というのであれば、そんな小さなことからでも具体的に実施すべきです。在朝被爆者支援全国連絡会議の福山真劫さんからは、「在朝被爆者は2名だけで、本当に被爆者対策をやっているといえるのか。安倍首相は、日朝国交回復が課題といっているのだから、この被爆者問題を進めることがその端緒になるのではないか」と日朝間の現状を踏まえながら指摘しました。最後に「今の日朝関係の中で、在朝被爆者に対して具体的に何ができるか検討する」よう求めて交渉を終えました。なお、この交渉には、石橋通宏、福島瑞穂両参議院議員に同席していただきました。
(かねこてつお)

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日本のプルトニウム削減宣言の実態

 一年前の7月16日、米国起源の使用済み燃料を日本が再処理してプルトニウムを取り出すことを一括して認める日米原子力協力協定が30年の効力期限を迎えて、期限を定めない形で自動延長されました。これと前後して、7月3日に閣議決定されたエネルギー基本計画に「プルトニウム保有量の削減に取り組む」という文言が入り、7月31日に原子力委員会が発表した方針が、我が国は「プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は...現在の水準を超えることはない」と宣言しました。この「新方針」は、国際原子力機関(IAEA)の計算方法で核兵器約6000発分という日本のプルトニウム保有に懸念を抱く米国の圧力によってもたらされたと見られていますが、方針の実現可能性は?

平和利用について聞かれて面食らう日本原燃と混乱の背景
 電力会社が主要株主となっている日本原燃は、六ヶ所再処理工場を2021年秋までに完成させ、翌22年初めから運転開始しようとしています。数年でフル操業を達成し、年間約7トンのプルトニウムを分離する計画です。その日本原燃に原子力規制委員会が2016年12月14日の臨時会議で尋ねています。田中知委員「再処理の事業者として、自らが分離するプルトニウムが平和利用目的のないプルトニウムかどうかを今後どう判断していくのか...判断基準?」更田豊志委員長代理「要するに、どういう状態のプルトニウムがどれだけたまると過剰ということになるのかと。それは自社で判断をされるのか、あるいはどこかの判断を仰ぐことになるのか。」やっと質問の意味を理解した日本原燃側は質問で返します。工藤健二社長「それは私どもだけではなくて、国際の話につながるわけで...御当局というのは、どこが?」田中俊一委員長「利用目的のないプルトニウム...どこが一体それを決めるのか」更田委員長代理「原子力委員会は平和利用目的の事業であるという観点から判断をされるのだろう...が...これは日本原燃がやる事業であるからといった理由で平和利用目的だという判断はなかなか下しづらい...」。
 福島事故を受けて2012年9月に発足した原子力規制委員会は「国際約束に基づく保障措置の実施のための規制その他の原子力の平和的利用の確保のための規制に関すること」をその任務の一つとしています。近藤駿介原子力委員会委員長(当時)も、翌13年に原子力委のあり方について議論された際、規制委設置法から言って原子力の「平和の目的への限定」は規制委の「所掌となったと解するべき...ただし、このことについて規制委員会の意思を確認するまでの間は、原子力委員会が管理する」と述べています。ところがあり方検討の結果、原子力委の所轄を原子力の平和利用(軍事利用しないこと)の確保と放射性廃棄物の処理処分などに限るようにとの提案が同年12月に有識者会議から出されます。翌14年12月16日、改正原子力委員会設置法に基づく新体制の原子力委が活動を始めるに当たって、岡芳明委員長は「原子力の平和利用、放射性廃棄物の処理・処分等の原子力利用に関する政策の重要事項に焦点を当てて、国民の目線で取り組んでまいります」と意思表明をします。
 この後、2016年5月、経産省管轄の再処理専門認可法人を作り、使用済み燃料発生時にその再処理費用を払い込ませるという「再処理等拠出金法」が成立し、同10月に再処理機構が設立されます。前年10月14日、規制委の会議で認可法人の利点について説明を求められた経産省は、認可法人になれば、再処理計画に経産省が介入してプルトニウム・バランスを管理できると説明しています。そして、同法が採択された際の衆参両院の附帯決議には、「認可法人が策定する再処理等事業の実施中期計画を経済産業大臣が認可する際には、原子力の平和利用やプルトニウムの需給バランス確保の観点から、原子力委員会の意見を聴くものとし、その意見を十分に斟酌して認可の適否を判断するものとすること」とあります。
 これを背景に、問題の臨時会議開催から4か月後の2017年4月、規制委が原子力委に、判断するのはおたくですかと尋ねることになります。後者が上記の附帯決議に触れ、プルトニウムの需給バランス確保について確認し「必要に応じて経済産業大臣、電気事業者、再処理関連事業者等に対して意見を示す」と応じました。

六ヶ所再処理工場の適切な在庫は60トン?
 これで役割分担が明確化されたかに見えますが、在庫がどのくらい膨らめば利用目的のないプルトニウムとなるのかについての「判断基準」はどうするのかという規制委の問いの答えはでていません。2016年の臨時会議で村上秀明副社長は「MOX工場[用]の在庫としてはどのぐらいが適切かという議論があり...在庫としては60トンHM(重金属)[形状は金属酸化物の粉末となっている]」と述べています。日経新聞の記事(2019年3月19日)によると、規制委も政府関係者もこれをプルトニウム60トンと捉えた可能性があります。再処理工場では、プルトニウムとウランを1:1で混ぜた混合酸化物(MOX)製品が製造されます。これを隣接して建設中のMOX燃料製造工場でウランと混ぜてMOX燃料を作ります。副社長の発言は意味が把握しづらいのですが、言及しているのはMOX製品の在庫貯蔵容量のことで、含まれるプルトニウムは30トンと見られます。これにMOX燃料製造工場の在庫を合わせた量が六ヶ所施設に存在するのが妥当というのが日本原燃の主張のようです。日本の保有量は、再処理委託した英仏(37.3トン)と日本国内(10.5トン)合わせて約48トンという2017年末現在の水準を超えないとする宣言と日本原燃の主張は両立できるのか。仮に、六ヶ所の妥当な総在庫量を37.3トンとし、英仏保管分を全て日本の原発で燃やしてゼロにしたとすると、日本国内分が48トンという状態に移行します。これで国際的な懸念の払しょくになると考えるのか。また、追加割り当て予定の0.6トンも含め約22トンを保管する英国にはMOX燃料製造工場がありません。これをどうするのか。さらに、規制委は原子力委からの返答で核セキュリティーについて持つ責任から逃れられたと考えているのか。両委員会や日本政府には、これらについて明確に説明する責任があります。
(「核情報」主宰田窪雅文)

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《投稿コーナー》
「嘘」を散りばめた廃炉ビジネス
福井県平和・環境・人権センター 事務局長 宮下 正一

原発銀座・福井から
 福井県には、15機の原発が建設・稼働してきた。現段階で7機の原発の廃炉が決定し、5機の原発の廃炉作業が進められている。いずれ遠くない日に全ての原発が廃炉になる。この様な中、福井県の自治体や産業界では、廃炉ビジネスに期待を寄せている所が多くある。
 ところが、膨大な放射性物資とそこから出される放射線が、廃炉作業を妨げる。たとえ原子炉が解体出来たとしてもそれらの放射性廃棄物を安全に保管する所など何処にもない。福井県民には、これらの事実をほとんど知らされていない。「廃炉ビジネス」という言葉だけが福井県民や原発立地地の住民に、またもや「夢」のように振りまかれている。
 原子力発電に反対する福井県民会議(反原発県民会議)は、原発の廃炉問題を取り上げたいと、この数年間総会議案書に掲げてきたがなかなか実現しなかった。高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉になることを通してこの廃炉問題を具体的に進めることにした。
 「嘘」を散りばめた廃炉ビジネスの実態を暴き、原発の廃炉の在り方で福井県民の将来ばかりでなく日本の将来を左右する大切な事であることを強く訴えて行く。
 そのために、「原子力発電所の廃炉問題に関わる検討委員会」を本年4月23日に設置した。これから回数を重ねて提言書を作り、国や福井県への提言活動を行うとともに、県民に対しての宣伝活動を行う決意だ。

動き始めた廃炉検討委員会
 「原子力発電所の廃炉問題に関わる検討委員会」は、本年4月23日に初会合を開くことが出来た。
 最初に行ったことは、中嶌哲演代表委員から5名のみなさんに委嘱状を手渡した。
 次に、座長を長沢委員にお願いした。
 長沢座長がみなさんの意見を取りまとめて次の3点に論点整理した。
(1)原子炉建屋の解体撤去問題
(2)使用済燃料の取扱問題
(3)廃炉段階の地域経済問題
 (1)の「原子炉建屋の解体撤去問題」については、解体撤去せず長期密閉管理するのが望ましいことで一致した。
 (2)(3)については、時間がなく次回以降に議論することになった。


廃炉の決定した「もんじゅ」
今後の協議と提言と運動
 第1回の検討委員会では①の「原子炉建屋の解体撤去問題」について、委員全員の方向は「解体撤去せず長期密閉管理するのが望ましい」ということになったが、詳細を議論して提言にする取り組みが必要と思われる。
 出された提言を活かす運動は、反原発県民会議による国や県への要請行動や各自治体にある環境安全協議会などへの意見反映、県民への宣伝行動など出来る事は沢山ある。これからが勝負だ。
(みやしたまさかず)

原子力発電所の廃炉問題に関する検討委員会要綱
原子力発電に反対する福井県民会議

  1. 委員会設置の趣旨
    福井県ではこれまでに建設・運転を行ってきた原子力発電所が、15機ありましたが、月日が経つことなどによりその内7機の廃炉が決定して、5機の廃炉工事が着手されています。
    福井県においては、いずれ15機すべての原発が廃炉になることは間違いありません。
    若狭湾は、廃炉された原発のたまり場とか墓場とかになっていくのです。
    この廃炉作業に問題が生じると県民の命と健康に大きな影響を及ぼし、故郷に住めなくなることすらあると私たちは考えています。
    そのため、廃炉における問題点を指摘・提言するための専門家委員会を設置します。
  2. 委員会の任務
    この委員会は、原子力発電所の廃炉における問題点を検討し、あるべき姿を県民会議に提言してサポートを行うことをその役割とします。
  3. 委員の対象
    関西・北陸ブロックに居住・活動する原子力発電に関する専門家を対象に県民会議が委嘱します。
    発足時の委員のみなさんは、
    木原壯林 若狭の原発を考える会
    末田一秀 核のごみキャンペーン関西、はんげんぱつ新聞編集委員
    長沢啓行 若狭ネット資料室室長
    山崎隆敏 反原発市民団体活動家
    山本雅彦 日本科学者会議
    (あいうえお順)
    今後委員を増員する場合は、協議の上行うこととします。
  4. 委員の任期
    当面2年間とします。(以下略)

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加盟団体の活動から(第17回)
あらゆる差別の撤廃をめざして
部落解放同盟中央執行委員共闘部長 高橋 定


部落解放同盟第76回全国大会
2019年3月2日~3日
 部落解放同盟は、1922年に結成された全国水平社を前身とし、1946年に設立した部落解放全国委員会の結成により始まり、1955年に大衆的運動体であることを明確にするために改称されました。
 綱領に、「部落民とすべての人びとを部落差別から完全に解放し、もって人権確立社会の実現を目的とする。」と定め、日本社会における部落差別の撤廃を基軸とした取り組みを通して、あらゆる差別の撤廃をめざしながら、国内外の人権・平和・環境を中心とした社会正義を追求する運動体です。
 2016年に施行された「部落差別解消推進法」は、現在もなお部落差別が存在し、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況に変化が生じているとした上で、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、相談体制の充実等について定めることで、部落差別のない社会を実現することを目的とするものです。しかし部落差別解消推進法施行から2年が経過した現在も、インターネット上には、部落差別をはじめ様々な差別やそれを助長する情報が掲載されています。特に、鳥取ループ・示現舎は、「部落探訪」と称して全国の被差別部落を訪れ、YouTubeに動画を掲載し「アウティング」を続けていますが、これに対してYouTubeやGoogleは削除要請に応じていないのが現状です。
 狭山事件の石川さんの無実を勝ち取る闘いは、事件発生から56年が経過しました。狭山事件は、部落差別による冤罪事件です。当時、警察は別の誘拐殺人事件の犯人を取り逃がす大失態をおかし、警察庁長官が辞任する事態になりました。そして警察は名誉挽回のために犯人逮捕を急ぎ、被差別部落に集中見込み捜査をおこない石川さんを別件逮捕しました。検察から開示された取り調べ録音テープでは、石川さんがまるで犯行の様子を語れていない状況が明らかになっています。
 この間、弁護団は、科学的根拠をもった蛍光X線によるインクの成分分析やコンピューターによる筆跡鑑定を提出し、石川さんの無実をさらに明らかにしています。部落解放同盟は、これからも部落差別は許さないという姿勢を強く示すとともに、被差別マイノリティと協働して、差別のない社会の実現に向けて取り組みを進めていきます。
(たかはしさだむ)

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〔本の紹介〕
『沖縄・辺野古から見る日本のすがた』
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会編 八月書館

 本書は、安倍政権が強行成立させた安保法制(戦争法)に対する反対運動で生まれた共闘組織、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会による初めてのブックレットです。2018年12月14日の土砂投入強行に怒り、翌年2月24日の辺野古新基地建設の是非を問う県民投票に向け、2月に緊急出版されました。そしてこの5月、この手のブックレットとしては異例の第2版を発行するに至っています。
 沖縄県民の意思を無視して新基地建設を強行する国の姿勢は、だれが見てもおかしいことで、民主主義も人権も地方自治も三権分立も、国の基盤となる原理が、沖縄にはないかのようです。こうした沖縄の現状をとりあげながら、日本社会の今を描いています。沖縄・辺野古に関心を寄せる人だけではなく、地方自治、安全保障、人権問題など様ざまな領域に興味を持たれている方にも広く読んでいただきたい書籍となっています。
 本書の構成は、前田哲男さんが沖縄の戦後史からひもとき、米軍基地が沖縄に集中する過程を説明し、北上田毅さんが、軟弱地盤の問題や県の行政手続きや指導を無視して工事を強行する国の無法ぶりを解説しています。
 行政法の研究者である白藤博行さんは県と国の争訟をとりあげ、国と司法のあり方に警鐘を鳴らしています。飯島滋明さんは、戦争ができる国づくり着々と進めてきた安倍政権の政策や法律を簡易に説明しています。日本の安全保障問題を理解することができます。佐々木健次さんは日米地位協定の改定に向けた方向性について日弁連の意見書を基に報告し、そして最後に、山城博治さんが平和への思いを感動的に語るなど、集会でのエネルギッシュな山城さんとは別の側面を垣間見ることができ、たいへん興味深いです。各方面に詳しい学者・研究者、弁護士、市民活動家らの叡智が詰め込まれた本書を片手に、ぜひ地域・職場での闘いに、また辺野古現地の闘いに結集していただければと思います。
 なお、辺野古の埋立の問題を歴史的に追うのであれば、岩波ブックレット『辺野古に基地は造れない』、『世界』(2019年7月号岩波書店)と合わせて読んでいただければ、この間の経過を漏らすことなく理解することができるでしょう。
(近藤賢)

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核のキーワード図鑑


みんな地球で生きている

お詫び
先月号に掲載予定だった橋本勝さんの「核のキーワード図鑑」を編集部の手違いで掲載しませんでした。下に6月号の分を掲載します


地球の背に無数の核兵器......

7・3新宿駅西口街頭宣伝のお知らせ

7_3新宿西口街宣HP.png

7月3日(水)18時30分より、新宿駅西口にて街頭宣伝を行います。
参院選告示日前日の街頭宣伝です。ぜひ、ご参加ください。
 
【新宿駅西口街頭宣伝】
日時:7月3日(水)18:30-
場所:新宿駅西口
登壇者:山口二郎(市民連合)、町田ひろみ(安保関連法に反対するママの会)、内田雅敏(弁護士) …他
主催:安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合/戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

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