11月, 2016 | 平和フォーラム - パート 2

2016年11月14日

憲法理念の実現をめざす第53回大会(護憲大会)まとめ 勝島一博事務局長

憲法理念の実現を目指す第53回大会に全国から参加された皆さんに心から感謝いたしますとともに、昨年の9月19日の戦争法の強行成立以降、憲法違反の集団的自衛権行使を容認した閣議決定の撤回と戦争法の廃止を求めて全国の職場や地域で奮闘いただいた皆さんに心から敬意を表します。
また、各級選挙闘争が続く中、本大会開催に向けてご苦労いただいた富山県実行委員会の皆さんに心から感謝申し上げます。
さて、昨年の第52回青森大会では、この戦争法の成立に対し、安倍政権の暴挙を許さず、「自衛官を戦場に送らない」「殺すことなく、殺されることなく」をタイトルに据え、「戦争法」の発動を許さず、その廃止に向けて粘り強く取り組むことを全体で確認しました。
そして、この1年間の戦争法の廃案を求める2000万署名運動をはじめとしたさまざまな取り組み経過を踏まえ、今回は、「譲れない命の尊厳!人権・戦争・沖縄」というタイトルのもと、第53回護憲大会を開催することとなりました。
少しの時間をいただき大会基調を提案させていただきますが、限られた時間の中で全体に触れることはできません。お手元に基調をお配りしておりますので詳細はお読み取りいただくとして、私からは、4点に絞って提案することをお許しいただきたいと思います。

まず、1つ目の課題は、公布70年の節目を迎え大きな岐路に立った日本国憲法についてです。
過去の侵略戦争と植民地支配の反省から、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないよう」誓った日本国憲法が、安倍政権のもとでいよいよ戦争ができる国へと大きく変えられようとしています。
2012年の自民党の憲法改正草案の発表に始まり、特定秘密保護法の制定や昨年の憲法違反の集団的自衛権行使を容認する戦争法の強行成立。そして、先の参議院選挙により改憲勢力が3分の2を占めるなど、今国会での憲法審査会の開催と合わせて、安倍政権は9条改憲を柱とした明文改憲へと突き進もうとしています。
特に、憲法改正を党是とする自民党の憲法改正草案では、現憲法に貫かれた「天賦人権」に基づく「犯すことのできない永久の権利」としての基本的人権が否定され、また、国民主権が軽んじられ、あくまでも国があっての国民へと変えられています。さらに、先の戦争への反省はなく、9条の「戦争放棄」の題は「安全保障」に置き換えられ、「国防軍」が創設されることにより集団的自衛権が全面的に認められ、国内の治安維持にも「国防軍」が展開されようとしています。
さらに、「公益及び公の秩序」の名のもとに基本的人権が制限されるばかりか、 立憲体制を一時停止させる「緊急事態宣言」という制度も設けられています。
一方、「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防衛」などの新任務を付与された南スーダンへのPKO部隊の派遣は、15日にも閣議決定されようとしています。この新任務の付与は武器使用基準の緩和と合わせ、事実上の内戦状態の中で隊員らは武力行使を行うことになり「殺し殺される」現実がすぐそこまで近づいているといえます。
新任務による派遣はまさに憲法違反であり派遣中止に向けた早急な取り組みが求められています。
このように、加速する憲法改正や新任務によるPKO部隊の派遣など、いよいよ、巨大な安倍政権に対し、日本における立憲主義、民主主義、平和主義を守る闘いが正念場を迎えています。ありとあらゆる闘を全国で展開していかなければなりません。

2つ目の課題は、安倍政権のもとで進められる軍学共同体制や軍需産業の育成についてです。
2017年度の概算要求では、軍事に応用可能な大学や独立行政法人の基礎研究に対する助成額が2015年度の3億円から2017年度には110億円へ著しく拡大されていることに注目しなければなりません。日本学術会議はこうした軍事研究を後押しする制度に対し、かつて科学者が戦争に協力した反省から、戦後2 度にわたって「戦争目的の軍事研究はしない」とする声明を決議するとともに、現在も軍学共同に異を唱える大学も数多くあります。このような防衛省資金に対する学術研究への助成を警戒するとともに、軍事と学術研究の一体化に警鐘を鳴らしていかなければなりません。
また、ここ数年、経済界からの要望により軍需産業を育成して経済危機を乗り切ろうとする動きが活発化してきています。
これを受け、安倍首相は、2014年4月には武器輸出三原則を撤廃、新たに「防衛装備移転三原則」を決定し、武器輸出や他国との共同研究が自由化されることになりました。
そもそも、武器輸出三原則は、これまで他国が武力を保持することに日本が加担しないことを決めた原則で、日本経済が生産と武器の輸出に依存しないように歯止めをかけ、武器に対する日本経済の常習性(依存度)を低くとどめる効果をもった原則でもありました。
この武器輸出三原則については、国会決議も行われましたが、その内容は、憲法の平和主義に基づき、衆参両議院で国会の総意として可決されたものです。したがって、安倍政権下で国民的議論や国会審議もほとんどなく一内閣の閣議決定で変更できるものではありません。
その後、2015年10月には武器輸出や武器の開発・生産、調達などを担う防衛装備庁が新設されましたが、この防衛装備庁により日本の産軍複合体が強められていくことを警戒しなければなりません。
戦後、日本は、憲法9条のもと、平和主義を掲げ戦争に加担しない国づくりをめざしてきました。しかし、武器輸出の国策化はこの流れに明らかに逆行するものです。
また、武器輸出を禁じた政策は、世界に例のない貴重で先進的な原則でした。本来なら、武器の代わりに武器輸出を禁じた武器輸出三原則こそ世界に輸出し広めるべきではないでしょうか。
一方、2015年7月には防衛省の後押しで、横浜で国内初の大規模な兵器展示会が開催され、日本から海上自衛隊と共に20社が参加しました。さらに、2017年5月には幕張メッセで2回目の展示会が予定されています。このように近隣諸国の紛争を日本のビジネスチャンスにするなど許すわけにはいきません。
戦後、日本は、憲法の平和主義に基づいて戦争に加わることはありませんでした。そして、武器を輸出しない、「死の商人」にはならないとする日本のモラルはその象徴でもありました。
また、日本製の武器によって人が殺されるということが現実となればその被害をこうむった国や人たちは当然日本を敵国とみなすことにもなりかねません。安倍政権は、武器輸出を「防衛装備移転」という言葉でごまかそうとしていますが、みなさん、ほんの少し想像力を働かせてみて下さい。武器が輸出されたその先に人が殺される光景を思い浮かべることは容易なことではないでしょうか。
いわゆる「原子力ムラ」がそうであるように、いったん「兵器ムラ」という軍学・軍産複合体という利益共同体 (相互の依存体質) ができてしまうと引き戻れなくなり、取り返しのつかないことになりかねません。今が正念場であり、憲法の平和主義を守る闘いと位置づけ、日本の武器で人を殺し殺されることがないようとりくみを強めなければなりません。

3つ目の課題は、沖縄です。
現在、米軍施設の74%が日本の0.6%の面積の沖縄に集中しています。そして、沖縄県民は、基地あるが故の事件・事故が多発するなど過重な負担を負わされ続けています。
1996年には、その前年の少女暴行事件を契機に発足した日米特別行動委員会で米軍普天間基地を5年ないし7年以内で日本に返還することが合意されました。しかし、20年たった今も普天間基地は返還されず、今年の5月には、またしても元海兵隊員による女性暴行殺害事件が起きるなど米軍関係者による凶悪犯罪も後を絶ちません。
また、普天間基地の返還とあわせ、日本の主権が制限されている日米地位協定の抜本的見直しも強く求められてきましたが、協定そのものの見直しは今日まで行われず運用の見直しにとどまっています。
また、辺野古新基地建設をめぐっては、15年10月13日、翁長雄志知事による仲井眞前知事の「辺野古埋立承認」の取り消し以降、国が翁長知事を訴えた代執行裁判で3月4日に「和解」が成立し、現在新基地建設は一時中断しています。
しかし、7月22日、国が「不作為の違法確認訴訟」を福岡高裁那覇支部に提訴した結果、9月16日、福岡高裁那覇支部は、翁長知事が埋立て承認の取り消しを取り消すよう求めた是正指示に従わないのは「違法」であるとして国側全面勝訴の不当な判決を言い渡しました。
この判決内容は、新基地建設の妥当性にまで踏み込み、埋立承認を取り消したことを「日米間の信頼関係を破壊するもの」とまで言い切りました。また、辺野古新基地建設反対の民意についても、「反対する民意に沿わないとしても、基地負担軽減を求める民意に反するとは言えない」「普天間飛行場の被害を除去するには新施設を建設する以外にない」と述べ、県側の主張はすべて否定し、「辺野古が唯一」とする国の代弁者と間違えるほど国の主張を全面的に追認する不当な内容となっています。非政治的であるべき司法権の独立とは何なのか強い疑問を持たざるを得ません。
翁長知事は、この判決に激しい憤りを表すとともに、「長い長い闘いになろうかと思う。新基地は絶対に作らせないという信念を持ってこれからも頑張っていきたい」と表明しています。
一方、7月11日、突然国は、米軍北部訓練場のヘリパッド建設に強制着工しました。そして、強制着工にあたっては、警視庁をはじめとする全国から500人規模の機動隊を動員し、抗議する市民に暴力を加え排除するとともに、県道を長時間にわたって封鎖し工事資材等を運搬する大型ダンプを先導しています。
一方、世界は今、「自然と共生する社会」の実現に向け進み始め、日本も生物多様性条約を締結し、それに沿って、沖縄でも2013年に「生物多様性おきなわ戦略」がつくられました。
この計画は、沖縄の未来を創る素晴らしい計画です。
しかし、ヘリパッド建設の名のもとに、生物多様性に富み、希少種が多く、現在世界遺産への登録も目指しているやんばるの森は、オスプレイが飛び交い、伐採手続きを経ずに木々を切り倒す違法行為すらまかり通っています。まさに、「自然と共生する社会」を否定する行為以外の何物でもありません。
また、この間の、個人を名乗った沖縄防衛局の行政不服審査請求や、地方自治法を踏みにじる国の代執行訴訟に対し、多くの行政法学者が政府の手法を「適法でない」と指摘するとともに、翁長知事は「訴権の濫用」と厳しく批判しています。
このように、原発再稼働や戦争法成立と同様に、辺野古・高江の新基地建設においても、沖縄の民意も顧みず、法を乱用し基地建設に向けた手続きや工事をやみくもに進める。まさに法治国家、民主主義国家を破壊する行為が行われています。
そして、この沖縄の姿は日本の映し鏡であり、辺野古問題を私たち自身が自らの課題として取り組むことが今求められています。
また、現在、沖縄の闘いの先頭に立って闘いを指導してきた山城平和運動センター議長が不当逮捕され拘留されています。このことに強く抗議するとともに、今後、最高裁に向け、12月10日には「高江オスプレイパッド、辺野古新基地の建設を許さない!東京集会」やこの東京集会と連動した全国の同時アクションが予定されており、現在進められている署名活動と合わせて多くの方の参加をお願いいたします。

最後に、脱原発社会への転換を求める取り組みについてです。
福島原発事故から5年半が経過しましたが、いまだに9万人近い被災者が避難生活を余儀なくされ、子どもたちの甲状腺問題、原発労働者の被曝、中間貯蔵施設や避難住民の帰還と補償の打ち切りなど課題は山積しています。
そして、多くの国民は脱原発社会を求め、再生可能エネルギーへの転換を求めています。しかし、政府はこうした声を無視して2015年8月11日の鹿児島川内原発に続き、翌年には、福井県・高浜原発や愛媛県・伊方原発を再稼働させました。
さらに、現在、再稼働に向けて、原子力規制委員会で新規制基準に基づいて21発電所28機の審査が行われていますが、この中で、あろうことか老朽原発を60年間継続運転しようとする流れが定着しようとしています。
安倍政権は、2030年度の電力供給における原発比率を20~22%にする計画を掲げるなど、いよいよ本格的に原発推進路線へ立ち返ろうとしており、脱原発社会を求める多くの国民の声とは真逆の方向へ進もうとしていると言えます。
一方、3月9日の大津地裁の稼働中の高浜原発の運転差し止めの仮処分決定や、三反園鹿児島県知事の川内原発の停止要請など、司法や行政による原子力発電への警鐘もならされ始めています。
そして、10月16日投開票で行われたお隣りの新潟県知事選挙は、原発再稼働反対の声を背景に、再稼働に慎重な米山隆一氏が与党の原発推進候補を約6万票の大差で破る結果となったことも新潟県民の民意の表れとして注目しなければなりません。
さて、現在、核燃料サイクルの中心施設である「もんじゅ」に廃炉の方向が出されようとしています。この「もんじゅ」の廃炉は、これまで進めてきた核燃料サイクルの破綻以外の何物でもなく、廃炉を契機に、私たちは改めて脱原発社会の実現に向けて原発政策の抜本的な見直しこそいま求めていかなければなりません。

以上大変雑駁ではありましたが、基調に盛り込まれたいくつかの課題について触れさせていただくとともに、3日間参加者の皆さんの討論によってさらに豊富化されることをお願いし、基調の提案とさせていただきます。

 

2016年11月12日

憲法理念の実現をめざす第53回大会(護憲大会)開会総会  大会基調提案 勝島一博事務局長

憲法理念の実現を目指す第53回大会に全国から参加された皆さんに心から感謝いたしますとともに、昨年の9月19日の戦争法の強行成立以降、憲法違反の集団的自衛権行使を容認した閣議決定の撤回と戦争法の廃止を求めて全国の職場や地域で奮闘いただいた皆さんに心から敬意を表します。
また、各級選挙闘争が続く中、本大会開催に向けてご苦労いただいた富山県実行委員会の皆さんに心から感謝申し上げます。
さて、昨年の第52回青森大会では、この戦争法の成立に対し、安倍政権の暴挙を許さず、「自衛官を戦場に送らない」「殺すことなく、殺されることなく」をタイトルに据え、「戦争法」の発動を許さず、その廃止に向けて粘り強く取り組むことを全体で確認しました。
そして、この1年間の戦争法の廃案を求める2000万署名運動をはじめとしたさまざまな取り組み経過を踏まえ、今回は、「譲れない命の尊厳!人権・戦争・沖縄」というタイトルのもと、第53回護憲大会を開催することとなりました。
少しの時間をいただき大会基調を提案させていただきますが、限られた時間の中で全体に触れることはできません。お手元に基調をお配りしておりますので詳細はお読み取りいただくとして、私からは、4点に絞って提案することをお許しいただきたいと思います。

まず、1つ目の課題は、公布70年の節目を迎え大きな岐路に立った日本国憲法についてです。
過去の侵略戦争と植民地支配の反省から、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないよう」誓った日本国憲法が、安倍政権のもとでいよいよ戦争ができる国へと大きく変えられようとしています。
2012年の自民党の憲法改正草案の発表に始まり、特定秘密保護法の制定や昨年の憲法違反の集団的自衛権行使を容認する戦争法の強行成立。そして、先の参議院選挙により改憲勢力が3分の2を占めるなど、今国会での憲法審査会の開催と合わせて、安倍政権は9条改憲を柱とした明文改憲へと突き進もうとしています。
特に、憲法改正を党是とする自民党の憲法改正草案では、現憲法に貫かれた「天賦人権」に基づく「犯すことのできない永久の権利」としての基本的人権が否定され、また、国民主権が軽んじられ、あくまでも国があっての国民へと変えられています。さらに、先の戦争への反省はなく、9条の「戦争放棄」の題は「安全保障」に置き換えられ、「国防軍」が創設されることにより集団的自衛権が全面的に認められ、国内の治安維持にも「国防軍」が展開されようとしています。
さらに、「公益及び公の秩序」の名のもとに基本的人権が制限されるばかりか、 立憲体制を一時停止させる「緊急事態宣言」という制度も設けられています。
一方、「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防衛」などの新任務を付与された南スーダンへのPKO部隊の派遣は、15日にも閣議決定されようとしています。この新任務の付与は武器使用基準の緩和と合わせ、事実上の内戦状態の中で隊員らは武力行使を行うことになり「殺し殺される」現実がすぐそこまで近づいているといえます。
新任務による派遣はまさに憲法違反であり派遣中止に向けた早急な取り組みが求められています。
このように、加速する憲法改正や新任務によるPKO部隊の派遣など、いよいよ、巨大な安倍政権に対し、日本における立憲主義、民主主義、平和主義を守る闘いが正念場を迎えています。ありとあらゆる闘を全国で展開していかなければなりません。

2つ目の課題は、安倍政権のもとで進められる軍学共同体制や軍需産業の育成についてです。
2017年度の概算要求では、軍事に応用可能な大学や独立行政法人の基礎研究に対する助成額が2015年度の3億円から2017年度には110億円へ著しく拡大されていることに注目しなければなりません。日本学術会議はこうした軍事研究を後押しする制度に対し、かつて科学者が戦争に協力した反省から、戦後2 度にわたって「戦争目的の軍事研究はしない」とする声明を決議するとともに、現在も軍学共同に異を唱える大学も数多くあります。このような防衛省資金に対する学術研究への助成を警戒するとともに、軍事と学術研究の一体化に警鐘を鳴らしていかなければなりません。
また、ここ数年、経済界からの要望により軍需産業を育成して経済危機を乗り切ろうとする動きが活発化してきています。
これを受け、安倍首相は、2014年4月には武器輸出三原則を撤廃、新たに「防衛装備移転三原則」を決定し、武器輸出や他国との共同研究が自由化されることになりました。
そもそも、武器輸出三原則は、これまで他国が武力を保持することに日本が加担しないことを決めた原則で、日本経済が生産と武器の輸出に依存しないように歯止めをかけ、武器に対する日本経済の常習性(依存度)を低くとどめる効果をもった原則でもありました。
この武器輸出三原則については、国会決議も行われましたが、その内容は、憲法の平和主義に基づき、衆参両議院で国会の総意として可決されたものです。したがって、安倍政権下で国民的議論や国会審議もほとんどなく一内閣の閣議決定で変更できるものではありません。
その後、2015年10月には武器輸出や武器の開発・生産、調達などを担う防衛装備庁が新設されましたが、この防衛装備庁により日本の産軍複合体が強められていくことを警戒しなければなりません。
戦後、日本は、憲法9条のもと、平和主義を掲げ戦争に加担しない国づくりをめざしてきました。しかし、武器輸出の国策化はこの流れに明らかに逆行するものです。
また、武器輸出を禁じた政策は、世界に例のない貴重で先進的な原則でした。本来なら、武器の代わりに武器輸出を禁じた武器輸出三原則こそ世界に輸出し広めるべきではないでしょうか。
一方、2015年7月には防衛省の後押しで、横浜で国内初の大規模な兵器展示会が開催され、日本から海上自衛隊と共に20社が参加しました。さらに、2017年5月には幕張メッセで2回目の展示会が予定されています。このように近隣諸国の紛争を日本のビジネスチャンスにするなど許すわけにはいきません。
戦後、日本は、憲法の平和主義に基づいて戦争に加わることはありませんでした。そして、武器を輸出しない、「死の商人」にはならないとする日本のモラルはその象徴でもありました。
また、日本製の武器によって人が殺されるということが現実となればその被害をこうむった国や人たちは当然日本を敵国とみなすことにもなりかねません。安倍政権は、武器輸出を「防衛装備移転」という言葉でごまかそうとしていますが、みなさん、ほんの少し想像力を働かせてみて下さい。武器が輸出されたその先に人が殺される光景を思い浮かべることは容易なことではないでしょうか。
いわゆる「原子力ムラ」がそうであるように、いったん「兵器ムラ」という軍学・軍産複合体という利益共同体 (相互の依存体質) ができてしまうと引き戻れなくなり、取り返しのつかないことになりかねません。今が正念場であり、憲法の平和主義を守る闘いと位置づけ、日本の武器で人を殺し殺されることがないようとりくみを強めなければなりません。

3つ目の課題は、沖縄です。
現在、米軍施設の74%が日本の0.6%の面積の沖縄に集中しています。そして、沖縄県民は、基地あるが故の事件・事故が多発するなど過重な負担を負わされ続けています。
1996年には、その前年の少女暴行事件を契機に発足した日米特別行動委員会で米軍普天間基地を5年ないし7年以内で日本に返還することが合意されました。しかし、20年たった今も普天間基地は返還されず、今年の5月には、またしても元海兵隊員による女性暴行殺害事件が起きるなど米軍関係者による凶悪犯罪も後を絶ちません。
また、普天間基地の返還とあわせ、日本の主権が制限されている日米地位協定の抜本的見直しも強く求められてきましたが、協定そのものの見直しは今日まで行われず運用の見直しにとどまっています。
また、辺野古新基地建設をめぐっては、15年10月13日、翁長雄志知事による仲井眞前知事の「辺野古埋立承認」の取り消し以降、国が翁長知事を訴えた代執行裁判で3月4日に「和解」が成立し、現在新基地建設は一時中断しています。
しかし、7月22日、国が「不作為の違法確認訴訟」を福岡高裁那覇支部に提訴した結果、9月16日、福岡高裁那覇支部は、翁長知事が埋立て承認の取り消しを取り消すよう求めた是正指示に従わないのは「違法」であるとして国側全面勝訴の不当な判決を言い渡しました。
この判決内容は、新基地建設の妥当性にまで踏み込み、埋立承認を取り消したことを「日米間の信頼関係を破壊するもの」とまで言い切りました。また、辺野古新基地建設反対の民意についても、「反対する民意に沿わないとしても、基地負担軽減を求める民意に反するとは言えない」「普天間飛行場の被害を除去するには新施設を建設する以外にない」と述べ、県側の主張はすべて否定し、「辺野古が唯一」とする国の代弁者と間違えるほど国の主張を全面的に追認する不当な内容となっています。非政治的であるべき司法権の独立とは何なのか強い疑問を持たざるを得ません。
翁長知事は、この判決に激しい憤りを表すとともに、「長い長い闘いになろうかと思う。新基地は絶対に作らせないという信念を持ってこれからも頑張っていきたい」と表明しています。
一方、7月11日、突然国は、米軍北部訓練場のヘリパッド建設に強制着工しました。そして、強制着工にあたっては、警視庁をはじめとする全国から500人規模の機動隊を動員し、抗議する市民に暴力を加え排除するとともに、県道を長時間にわたって封鎖し工事資材等を運搬する大型ダンプを先導しています。
一方、世界は今、「自然と共生する社会」の実現に向け進み始め、日本も生物多様性条約を締結し、それに沿って、沖縄でも2013年に「生物多様性おきなわ戦略」がつくられました。
この計画は、沖縄の未来を創る素晴らしい計画です。
しかし、ヘリパッド建設の名のもとに、生物多様性に富み、希少種が多く、現在世界遺産への登録も目指しているやんばるの森は、オスプレイが飛び交い、伐採手続きを経ずに木々を切り倒す違法行為すらまかり通っています。まさに、「自然と共生する社会」を否定する行為以外の何物でもありません。
また、この間の、個人を名乗った沖縄防衛局の行政不服審査請求や、地方自治法を踏みにじる国の代執行訴訟に対し、多くの行政法学者が政府の手法を「適法でない」と指摘するとともに、翁長知事は「訴権の濫用」と厳しく批判しています。
このように、原発再稼働や戦争法成立と同様に、辺野古・高江の新基地建設においても、沖縄の民意も顧みず、法を乱用し基地建設に向けた手続きや工事をやみくもに進める。まさに法治国家、民主主義国家を破壊する行為が行われています。
そして、この沖縄の姿は日本の映し鏡であり、辺野古問題を私たち自身が自らの課題として取り組むことが今求められています。
また、現在、沖縄の闘いの先頭に立って闘いを指導してきた山城平和運動センター議長が不当逮捕され拘留されています。このことに強く抗議するとともに、今後、最高裁に向け、12月10日には「高江オスプレイパッド、辺野古新基地の建設を許さない!東京集会」やこの東京集会と連動した全国の同時アクションが予定されており、現在進められている署名活動と合わせて多くの方の参加をお願いいたします。

最後に、脱原発社会への転換を求める取り組みについてです。
福島原発事故から5年半が経過しましたが、いまだに9万人近い被災者が避難生活を余儀なくされ、子どもたちの甲状腺問題、原発労働者の被曝、中間貯蔵施設や避難住民の帰還と補償の打ち切りなど課題は山積しています。
そして、多くの国民は脱原発社会を求め、再生可能エネルギーへの転換を求めています。しかし、政府はこうした声を無視して2015年8月11日の鹿児島川内原発に続き、翌年には、福井県・高浜原発や愛媛県・伊方原発を再稼働させました。
さらに、現在、再稼働に向けて、原子力規制委員会で新規制基準に基づいて21発電所28機の審査が行われていますが、この中で、あろうことか老朽原発を60年間継続運転しようとする流れが定着しようとしています。
安倍政権は、2030年度の電力供給における原発比率を20~22%にする計画を掲げるなど、いよいよ本格的に原発推進路線へ立ち返ろうとしており、脱原発社会を求める多くの国民の声とは真逆の方向へ進もうとしていると言えます。
一方、3月9日の大津地裁の稼働中の高浜原発の運転差し止めの仮処分決定や、三反園鹿児島県知事の川内原発の停止要請など、司法や行政による原子力発電への警鐘もならされ始めています。
そして、10月16日投開票で行われたお隣りの新潟県知事選挙は、原発再稼働反対の声を背景に、再稼働に慎重な米山隆一氏が与党の原発推進候補を約6万票の大差で破る結果となったことも新潟県民の民意の表れとして注目しなければなりません。
さて、現在、核燃料サイクルの中心施設である「もんじゅ」に廃炉の方向が出されようとしています。この「もんじゅ」の廃炉は、これまで進めてきた核燃料サイクルの破綻以外の何物でもなく、廃炉を契機に、私たちは改めて脱原発社会の実現に向けて原発政策の抜本的な見直しこそいま求めていかなければなりません。

以上大変雑駁ではありましたが、基調に盛り込まれたいくつかの課題について触れさせていただくとともに、3日間参加者の皆さんの討論によってさらに豊富化されることをお願いし、基調の提案とさせていただきます。

 

2016年11月12日

憲法理念の実現をめざす第53回大会(護憲大会)基調提案 勝島一博事務局長

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2016年11月12日

護憲大会地元歓迎あいさつ/支持と共感が得られる運動を

第53回護憲大会富山県実行委員会 実行委員長  

佐 幸  明(富山県教職員組合執行委員長)

   全国各地よりご参加の仲間の皆さん、富山においでいただきありがとうございます。昨年に開通した北陸新幹線で富山も身近になりましたが、20年ぶりに富山での開催の機会をいただいたことに感謝申し上げます。当時の富山県のキャッチフレーズ「いい人、いい味、いきいき富山」は県民性をうまく表していますが、一種味わい深い方言に、立山山麓から富山湾まで豊かな自然からとれるコシヒカリや梨にリンゴ、ホタルイカに甘海老、寒鮒など、是非見て聞いて味わってほしいものが沢山あります。

   一方、富山は四大公害病の一つ「イタイイタイ病」が発生した地でもあります。公害裁判としては日本で初めて被害住民が企業に全面勝訴したことでも有名です。それに至るまでの萩野医師の苦闘、地域住民の対立と苦悩、弁護団の苦慮の末に裁判で勝ち得ることができた取り組みを語り継ぐことが必要であり、私たちにとって大きな教訓としての財産を風化させ忘れてはいけないと思います。

   さて、戦後71年目を迎えたこの一年間で様々なことがありました。①初めて衆参両議院で改憲勢力が3分の2以上の議席を確保し、いつでも憲法改正の発議ができる状況になってしまったこと、②安全保障関連法案が施行され、自衛隊が海外での武器使用、つまり戦闘を想定した作戦訓練が正式にスタートしたこと、③18歳選挙権に合わせて主権者教育、政治的中立性の名のもとに教育への威圧が強まったこと、他にも辺野古に代表される沖縄基地問題、3.11東日本大震災によってもたらされた福島の原発事故問題、そして私たちの命、食を脅かし農業を破壊するTTPを強行採決で進めようとする政府の姿勢等、日本のあり方が民主国家としての前進から大きく後退する事態になってきたように感じてなりません。

   日本が、諸外国に憲法9条という形で示してきた平和主義は、世界への範としてゆるぎないものです。戦後70年を過ぎても、人々を殺しあってきた負の連鎖を未だに乗り越えてはいません。世界では、内戦やISなど、多くの罪なき人々が死ぬ紛争やテロが起きています。邦人がそれに巻き込まれているのも現実です。そして、北朝鮮の脅威も増しているのかもしれません。それでも、それによって憲法を、9条を否定してはいけないのです。原爆投下の当事国アメリカの大統領が初めて広島を訪問し「核を保有する国々は、核兵器なき世界を追求しなければならない」とスピーチしたように、日本は戦争加害国として、唯一の被爆国として、過酷な原発事故の当事国として、世界にメッセージを発信する義務と使命があると思うのです。

   ただ、悪いことばかりではありません。確実に平和憲法を求める声も全国的に高まってきています。シールズをはじめ国会前で声を上げる若者たち、小さな子供を抱えて集会に参加する母親たちなど止むに止まれぬ思いで立ち上がった人々の姿に、大きな希望を感じるものでもあります。どんな運動でも、支持と共感が得られなければ意味がありません。先の参議院選挙の結果は、私たちの運動をより多くの市民に支持と共感が得られるものにしなさいと私たちに突き付けているのだと思うのです。昨年の9月19日以来、この富山でも毎月19日に「安保法廃止集会」を労働組合をはじめ市民グループも参加して行なわれています。ある女性が一人で街頭に立ち、それに賛同する人々が集い運動の輪が広がるような草の根的な動きも富山でもありました。その行動は、今でも続いています。

   平和は何もせずに得られるものではありません。それを追い求め続けなければ失ってしまいます。愚かな行為が人間の性だとしたら、これを学び克服することは人間の使命であると思います。全国を動かした「米騒動」発祥の地富山から、声なき人々の心に護憲の灯をともす行動を発展させていきましょう。そして、子供たちを再び戦場に送ることがない平和な世界をつくるためにともに頑張りましょう。

2016年11月12日

護憲大会主催者あいさつ 藤本泰成共同代表

憲法理念の実現をめざす第53回大会実行委員会委員長      
フォーラム平和・人権・環境共同代表 藤 本 泰 成

   全国から、そして富山県内から、「憲法理念の実現をめざす第53回大会」に参加をいただき、実行委員会を代表して、心から感謝を申し上げます。また、今大会の開催に対して、ご苦労いただいた富山県実行委員会の皆様に対しても、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

   アジア・太平洋戦争の敗戦を待つ、1945年8月2日午前0時、174機の米空軍B-29戦略爆撃機が、この富山市を空襲しました。死者約3000人、負傷者約8000人と言われ、焼失家屋は24914戸、富山市街地の99.5%が焼け野原となりました。死亡者の率は全国平均の2倍以上、家屋の焼失率は、地方空襲では最大となっています。

   空襲が深夜であったこと、米軍機は、まず最初に富山市の周辺部に、円を描くように火をつけ、逃げ場をふさいだこと、そして、日本の憲兵隊や警防団などが、橋を封鎖して、避難する住民に、消火にあたれと、燃えさかる火の中に返したことなど、様々な要件が重なって大きな被害になったと考えられます。

   いかに大量に、効率よく、多くの人の命を奪うかが戦争です。命の尊厳を全く顧みないのが戦争です。
   つい、70年前の出来事を私たちは忘れてはなりません。

   昨年9月19日、安倍政権は強行採決によって、安全保障関連法、「戦争法」を成立させました。戦争の影が忍び寄っています。「積極的平和主義」という欺瞞を持って、私たちを戦争にかり出し、そして日本を戦場にしようとしています。

   安倍首相は「荒唐無稽の話しだ」と一笑に付すに違いありません。しかし、歴史は、「私たちが戦争をしない」と言う声を上げ続けないかぎり、あっという間に私たちを戦場に飲み込んでいくことを、明確に示しています。
   近々、国会では憲法審査会が開かれるでしょう。憲法の何が、どこが間違っているのでしょうか。読売新聞や産経新聞は、「押しつけられた憲法」と批判し、「『制度疲労』を起こした条項は多岐にわたる」とか、「時代の変遷に伴い、現実との様々な乖離が生じている」とか主張していますが、その条項や根拠を示すことがありません。

   つまるところ、憲法9条の平和主義を変えようというのが、改憲派の本質です。戦争の時代へ、日本を引き戻そうとすることが、改憲派の魂胆です。

   1946年11月3日、日本国憲法が公布されました。平和と人権、民主主義の憲法です。そのとき、どれだけの人々が、この憲法に希望を見たのかは、想像に難くありません。そして、日本国憲法は、侵略戦争と植民地支配の反省にたって、戦争の放棄を謳っています。これは、アジア諸国への私たちの心からの、決して裏切ってはならない約束なのです。

   「押しつけられた」と、憲法をののしり、自主憲法を制定して、その先に、どのような社会が待ち受けているのでしょうか。
   天皇を元首と仰ぎ、戦争することを可能にし、そのために私たちの権利を「公益と公の秩序」と称して、奪い取る。あの「自民党改憲草案」に私たちの未来があるでしょうか。私は、断言します。ぜったに無いということを。
   ある反戦の歌を紹介します。

安倍首相
第9条をもう一度読んで下さい
書かれてはいない私たちの声とともに

(かつて他国を侵略し
   あらゆる非道残虐をおこない
   多くの人々を殺し傷つけ苦しめ
   みずからも深手を負った 我々)
日本国民は
   (国際社会が国際法と国連を通じてその実現に努める)
正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し

   (無慈悲な破壊と大量殺戮でしかなく
   報復による暴力の連鎖しか招かない)
国権の発動たる戦争と

   (暴力団の強迫 政治家の胴喝 ボス猿の威嚇
   それらよりはるかにおぞましく愚かしい
   そしてむごたらしく 悲劇的な)
武力による威嚇又は武力の行使は

   (たとえ同盟国の反感を買い 腰抜けと笑われ
   みくびられ 一時的に国益を損なおうとも)
国際紛争を解決する手段としては
永久にこれを放棄する

こんなふうに 書かれなかった声を
あなたのために添えなくてはならないとは
なんとかなしく 情けないことでしょう
日本国憲法の「戦争の放棄」とは
そのような意味であるのを私たちはみな知っています
それは私たちがみずから誓ったこと
私たちの無期限の償いであり
私たちの内なる誇りです
この誓いを 償いを 誇りを
あなたは右足で踏みにじり
左足で他国の民の命を踏みにじる
その恥ずべき姿勢のまま
あなたは歴史に汚名を残すのですか

   川島洋さんの「誓い・償い・誇り」と言うこの詩は、副題が 「イラク侵略戦争に追随する首相に」となっていて、本当は、出だしは小泉首相だったんですが、安倍首相の置き換えて朗読しました。何の違和感もありません。
   しっかりと、安倍首相は、この詩の言葉に向き合っていただきたいと思います。

   この三日間、真摯に学び、積極的に話し合い、憲法の理想を高らかに訴えることを、みなさまにお願いして、開会にあたっての挨拶といたします。

2016年11月12日

原水禁/日印原子力協定署名に対する抗議声明

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2016年11月10日

「衆議院本会議でのTPP採決強行に抗議する」(TPPを批准させない!全国共同行動)

衆議院本会議でのTPP採決強行に抗議する
 

TPPを批准させない!全国共同行動

 本日11月10日、衆議院本会議は、TPP協定の承認案及び関連法案の採決を強行した。私たちは、強く抗議し、TPP協定の廃案めざして引き続き運動を強化することを呼びかける。
 そもそもTPPは、私たちのいのちと暮らし、地域の行方に重大な影響を及ぼす事が明らかであるにも関わらず、十分な情報開示も審議時間も保障しないまま衆議院の通過を強行したものであり、とうてい認められない。
 昨日、アメリカでは次期大統領にトランプ氏を選んだことで、TPPの行方はますます不透明になっている。この中で立法府の独立性を侵して、協定承認を強行する安倍政権の態度は異常である。
 私たちは、衆議院の強行通過に強く抗議するとともに、参議院での徹底した審議と廃案を求めて、さらに全国的な共同運動を広げて奮闘するものである。         以 上
  

 「全国共同行動」事務局連絡先(共同事務局)
 ・TPP阻止国民会議(連絡先:山田正彦法律事務所)
   千代田区平河町2-3-10ライオンズマンション平河町216(℡03-5211-6880 FAX03-5211-6886)
 ・フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
   千代田区神田駿河台3-2-11連合会館内(℡03-5289-8222 FAX03-5289-8223)
     Eメール:ichimura@gensuikin.org
 ・STOP TPP!!市民アクション(連絡先:全国食健連)
   渋谷区代々木2-5-5 新宿農協会館3階(℡03-3372-6112 FAX03-3370-8329)
          Eメール:center@shokkenren.jp

2016年11月05日

さようなら原発講演会第一回「もんじゅは廃炉だ!黄昏の核燃料サイクル」開催

 11月5日、「さようなら原発講演会第一回 もんじゅは廃炉だ!黄昏の核燃料サイクル」が開催されました。

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まず集会の冒頭で、鎌田慧さんが「9月23日の集会は雨でデモは中止になったが、次からは雨でもやりたい。鹿児島に続いて新潟県知事選挙でも不利な状況をはねのけて勝利した。私たちは勝っています」と話しました。

続けて講師の海渡雄一さんが「もんじゅは廃炉だ!黄昏の核燃料サイクル」というタイトルで講演を行いました。最初に「もんじゅは、人件費を除いて、建設費・維持管理費・燃料費だけで2014年までに1兆3千3百億円を費やしながら失敗した。資源小国の夢のエネルギーとして1950年代に軽水炉導入と共に言われたが実現していない」と話した後、高速炉と高速増殖炉の違いから、各地での裁判での状況など幅広い内容について触れました。

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質疑応答でも、「私見だが日本が核燃サイクルを維持したいのは(核爆弾に転用できる)プルトニウム技術を確保しておきたいからでは」としました。

講演会最後に、長く海渡さんともんじゅ訴訟に関わってきた福武公子弁護士は「今は福島からの避難者と共に国と東電を相手に千葉で裁判を起こしている。来年3月頃にかけて千葉をはじめ各地の判決が出されようとしている。こちらの支援もよろしく」と話しました。

講演会後、参加者からは「自民党の支持者でも半数以上が再稼働に反対しているなどの話を聞くと元気がでる」などの声が聴かれました。

 

2016年11月01日

原発推進派よ、何を言う ─廃炉費用の市民負担

10月16日投開票の新潟県知事選挙で、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働にきわめて慎重な姿勢をとり続けてきた泉田裕彦知事の姿勢を受け継ぐとして、市民団体や社民党・共産党などの応援を受けて立候補した米山隆一さんが当選した。新潟県民の意志がどこにあるかは明確だ。朝日新聞の県民世論調査でも、柏崎刈羽原発再稼働反対は64%、自民党・公明党推薦の対立候補の森民夫前長岡市長も、選挙戦の終盤には再稼働に対して「問題があればノーと言う」と言わざる得ないほど、明確な姿勢を県民が示したと言える。政府は、票差以上に「原発反対」の声が大きいことを認めなくてはならない。また、この結果を電力供給地=原発立地地域の声として、電力を大量に消費する都市圏の市民は真摯に受け止めなくてはならない。

現在、経済産業省は「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」において、2つの廃炉費用(老朽原発と事故を起こした福島第一原発)を、電力の「託送料」(送電網の使用料)に上乗せする案を提示している。これは結局、原発を否定し新電力を選択した消費者に対しても、廃炉費用を負担させようとする案に他ならない。

老朽原発の廃炉には、1基560~830億円かかると言われ、実際はもっと多くなるかもしれない。総費用約3兆円に対して、電力各社の現在の積立額は1.7兆円ほど。一方、事故を起こした福島第一原発は、賠償と除染に計15兆円、廃炉費用だけでも当初の2兆円から数兆円規模で膨らむと見込まれている(いずれも電気事業連合会試算)。

「原発の電気は安い」と言っていたのはどこの誰か。原発推進を社是とする読売新聞や産経新聞は「今まで原発の安い電気を使ってきたのだから、その受益を考えれば廃炉費用を広く誰もが負担するのは当然」と主張している。「バカも休み休み言え」などと品の悪い言葉も使いたくなる。事故の反省から「脱原発」を掲げ、もう原発は止めますから払いきれない廃炉費用を何とか支払って下さいと頭を下げるなら、勘弁のしようもある。原発再稼働に反対し「脱原発」を求めている市民に対して、「再稼働はやります、事故の費用は払って下さい」などと、よくも口が裂けずに言えたものだ。

この国は、結局責任を取らない。安倍晋三首相は2006年12月22日の国会答弁で「日本の原発で全電源喪失という事態が発生するとは考えられない」「原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期している」と言っている。
(藤本泰成)

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