11月, 2016 | 平和フォーラム

2016年11月30日

平和軍縮時評2016年11月号 核兵器廃絶へ、歴史が動き始めた―17年3月に核兵器禁止条約の交渉が始まる!  田巻一彦

核兵器禁止条約交渉が、来年3月には国連で始まる。ヒロシマ、ナガサキから71年、被爆者やNGO、核廃絶に熱心な国々が苦闘する中で蓄積されてきたマグマが、とうとう地殻を変動させ始めた。「どのような禁止条約を作るのか」、「どうやって合意するのか」、という胸がおどるような議論が始まるのだ。化学兵器、生物兵器、クラスター弾、対人地雷…数々の大量破壊兵器・非人道兵器の禁止条約が作られてきた。核兵器だけにはそれがない。ようやく人類は「大量破壊・非人道兵器の本丸」に攻め込もうとしているのだ。2015年からの経過を振りかえり、「禁止条約交渉」に託されたミッションについて考えたい。

第1幕:2015年国連総会での決議-公開作業部会(OEWG)の開催決まる
◎2010年以来、核兵器の使用が「壊滅的な人道上の結末をまねく」との認識と懸念は、13年~14年の3回の国際会議(オスロ、ナヤリット、ウィーン)で深められ、核兵器廃絶運動の強固な岩盤へとなっていった。核兵器は法的に禁止されるべきだという声が、非核有志国家(代表格はオーストリア、メキシコ、アイルランド、ニュージーランド等)やNGOの間から高まってきた。いくつかの条約案もすでに構想されている。そのような状況の中で迎えた第70会期国連総会では「多国間軍縮交渉を前進させる」と題された決議が採択された。その決議の要旨はこうだ。(1)「核兵器のない世界の達成と維持のために必要な、具体的で効果的な法的てだてを議論する「公開作業部会」(OEWG)を2016年に開催する。(2)開催場所はジュネーブ (3)会議には国家・国際機関の代表だけでなく、NGOも参加する。(4)作業部会は次の国連総会に報告書を出す。
◎この決議に核保有国は激しく抵抗した。フランス代表は5カ国(米、英、ロ、仏、中)を代表してこう演説した。「この決議では核兵器をなくすことなどできない、(我々がやってきたような)ステップ・バイ・ステップ以外に方法はない」、「非人道性だけでなく安全保障の問題も考えなければならない」。そういうことを考慮しないこの決議は、分裂主義的だ。

第2幕:核禁止派と抵抗派―埋められない分岐
◎16年の2月、5月そして8月にジュネーブで開かれていた核軍縮「公開作業部会」)(”OEWG”と呼ぶ)は、素晴らしい会議だった、そして素晴らしい結論に合意した。「核兵器を禁止し全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書」(つまり「核兵器禁止条約」など)を交渉するための会議を2017年に開催することを、「幅広い支持のもとに勧告する」報告書が採択されたのは8月19日のことだ。
◎核保有国(米、英、仏、ロ、米、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮は全員がボイコットしたこの会議の正味20日近くに及ぶ議論は、「核兵器禁止交渉」の開始を求める非核兵器国(禁止推進派)と核依存国(禁止抵抗派。安全保障を大国の核の傘に依存している国。日本はこれに含まれる)との「異種格闘技」とも呼べる論争だった。参加した約100か国の代表のうち、おおざっぱにいえば「推進派」が70%、「抵抗派」と「その他」が30%といったところだったろうか。核保有国は全員ボイコットだったのだから、いきおい日本のような「核依存国」が核保有国に代わって議論の矢面に立つことになる。
◎禁止推進派の代表格であるメキシコは、次のように「核依存国」を批判した。「この部屋は現状を変えようとする者と守ろうとする者に分かれている。核依存国の『前進的(漸進的)アプローチ』(日本はこのタイトルの文書提案を提出していた)は何も新しくない。彼らの狙いは現状維持だ」。そうすると「抵抗派」代表の日本が応じた。「現状維持派と改革派という単純な二分法を我々は受け入れない。核軍縮過程はジグザグに進むものだし、そうあるべきだ」。このように2派の応酬が随所で展開され、最後までに折り合いはつかなかった。

第3幕:「禁止交渉開始」の勧告、多数決で採択
◎公開作業部会(OEWG)の最終日である16年8月19日は、このような膠着状態の中でやってきた。議長(タニ・タイ大使)が用意した最終報告書案には、「核兵器禁止交渉を始めることに」に対する「賛成」と「反対」の両論が併記されていた。その最終報告書がコンセンサス(全会一致)で採択されるものと多くの人々が信じていた中で、思いがけないドラマが起こる。核兵器依存国=抵抗派のオーストラリアらが突然コンセンサスでの採択に反対を唱え、多数決にかけるべきだと主張したのだった。
◎「禁止推進派」はそれでは採決にかける報告書案を修正しようと提案する。もともと「両論併記」案は禁止推進派にとっては満足できないものだった。報告書は、はっきりと「禁止交渉開始」をうたった文書に修正され、その案が採決にかけられたのだ。
◎賛成68、反対22、棄権13で採択された報告書には次の勧告が含まれていた:

「67.作業部会は、総会に対して、すべての加盟国に開かれ、国際機関並びに市民社会が参加し貢献する、核兵器を禁止しそれらの全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書を交渉するための会議を2017年に開催するよう、幅広い支持のもとに勧告した。」

◎報告書につけられた「注」は、賛成国の内訳を次のように述べている:アフリカ・グループ(54か国)、東南アジア諸国連合(10か国)、及びラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(33か国)、並びにアジア、太平洋及び欧州のいくつかの国。多数決をとろうと提案をしたオーストラリア等は、反対。日本は棄権。公開作業部会(OEWG)の結果が「核兵器禁止派」の勝利だったことは誰の目にも明らかだった。

第4幕:第71回国連総会、「核兵器禁止条約・17年交渉開始」を決議
◎16年10月に開会した第71回国連総会「第1委員会」(軍縮・国際安全保障)には、15年と同じ「多国間軍縮交渉を前進させる」と題された決議案が提出された。イニシアチブをとったのは、次の6か国である。オーストリア、ブラジル、アイルランド、メキシコ、ナイジェリア、南アフリカ。「第1委員会」での採決の日には共同提案国が57か国まで膨らんだ。この決議案の重要な内容は次のとおりだった。

  • 核兵器を禁止しそれらの全面的廃棄に導く法的拘束力のある文章を交渉するため、2017年に国連の会議を招集する。
  • 会議は17年3月、6月、7月に開かれる。
  • すべての加盟国に対し、この会議に参加するよう要請する。

◎この決議の第1委員会での採決結果は次のとおりであった。賛成123、反対38、棄権16、欠席16.核保有国で唯一賛成したのが北朝鮮、米ロ英仏とイスラエルは反対、中印パは棄権。「核依存国」ではNATO加盟国中オランダを除く27か国と、オーストラリア、韓国、そして日本(!)が反対した。この決議は12月のクリスマスまでには、総会でもう一度採決にかけられ、そこでとおれば正式に成立することになるが、そうなるのは間違いない。
◎実際、この決議に反対する核保有国、特に米国の同盟国への締め付けは常軌を逸したものだった。米国はNATO加盟国、協力国に次のような文書を送った。「核兵器が存在する限りNATOは核の同盟であり続け」、ゆえに「核兵器の即時禁止あるいは核抑止の非合法化の交渉は、NATOの抑止政策と同盟国が共有する安全保障上の利益と根本的に相いれない」。そして米国は第1委員会の議論の中でも次のように訴えた。「合衆国は核兵器禁止条約交渉の場を設定するいかなる決議にも『反対』の票を投じ、交渉には参加しない。他のすべての国に対し同じように行動するよう要請する。」
◎日本は、この要請に優等生よろしく従って「反対」票を投じたわけだ。岸田外相は、決議が「核兵器国と非核兵器国の協力による具体的・実践的措置を積み重ねていくことが不可欠」との日本の基本的立場に合致しないからだと言った。このもっともらしい理由は、8月の公開作業部会(OEWG)の最終文書の採択にあたっての理由と同じだ。だが、8月は棄権だったのだ。それが反対に転じた理由の説明とはなっていない。米国の忠実な同盟国・核の傘依存国として、ここで日和見を決め込むわけにゆかなかったのだろう。しかし、この投票が「被爆国」の歴史に残した汚点は計り知れない。
◎かろうじて日本が「交渉会議には参加する」といっているのが唯一の救いだ。よろしい、参加してもらおうではないか、それも人の足をひっぱるのではなくて有意義な貢献をしてもらおうではないか。

第5幕:そして17年3月、禁止条約交渉が始まる!
◎核兵器禁止を求める有志国家と市民NGOの共通の願いだった「核兵器禁止条約」の交渉がとうとう始まる。しかし、我々は入り口にたったに過ぎない。なぜなら「核兵器禁止条約」とはいうが、国家も市民もその禁止条約の具体的内容や手順について、「これだ」と誰もがうなずくことのできる共通のイメージは今のところないからだ。共通のイメージは最初から一つのものである必要はないが、どのような条約を交渉するのかという問題が核心課題であることに変わりはない。みんなで知恵をだしあってゆこうではないか。

2016年11月26日

第48回食とみどり、水を守る全国集会in札幌に600人

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環太平洋経済連携協定(TPP)の国会批准が大詰めを迎える中、11月25日~26日、札幌市で「第48回食とみどり、水を守る全国集会」が開かれ、全都道府県から600人以上が参加しました。
初日の全体集会で主催実行委員会を代表し、石原富雄実行委員長は「TPP協定は、アメリカの大統領選挙で、離脱を明言するドナルド・トランプが次期大統領となったことで、発効はほぼ不可能となったが、今後、日米二国間の自由貿易協定などでさらなる自由化、規制緩和が迫られるだろう。食と農、地域を守るために引き続き奮闘しよう」と訴えました。また北海道実行委員会の高倉司実行委員長も、北海道での運動などを紹介し、ともに活動を進める決意を表明しました。
連合北海道の出村良平会長や、北海道知事・札幌市長(ともに代理))からの歓迎あいさつを受けた後、集会実行委の勝島一博事務局長(平和フォーラム事務局長)が情勢と運動の提起を行い、「TPPなど貿易自由化」「食をめぐる状況と食料・農業・農村政策」「森林・水を中心とする環境問題」について、動きと今後の課題を提起しました。

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全体集会後、「TPPと私たちの食・農・暮らし・地域」をテーマにシンポジウムが行われました(上写真)。北海道新聞編集委員の久田徳二さんをコーディネーターに、北海道農民連盟の山居忠彰書記長は「TPPが農業にどのような影響を及ぼすか」について述べ、先の衆院でのTPP審議の不十分性や、北海道農業に重大な打撃を与えるTPPに対し「しっかりとした対抗軸を構築しよう」と訴えました。
TPPで食の安全はどうなるのかについて、日本消費者連盟の纐纈美千世事務局長は、輸入農産物の安全審査の簡略化・形骸化、表示制度の弱体化などが懸念されるとして、「安い食品の裏側にあるものをしっかり見て、生産者とつながり、日々の食事や買い物の際に産地などを知る権利、選ぶ権利を考えよう」と呼びかけました。
山形県南部の3市5町で「置賜自給圏推進機構」が作られていることについて、同機構の理事で農業をする菊地富夫さんは「TPPなど経済のグローバル化が進むと、地域の特色が失われ、地域の中でお金が循環せず、儲けは都市や大企業のものになっている。これに対抗し、様々な人々、業種が集い、地域内で経済の循環をめざしている」と紹介。「村から豊かさと便利さを問い直す時ではないか」と語りました。
京都大学の岡田知弘教授は「TPPが地域経済・地方自治体にどう影響を与えるか」について述べ、「TPPは農業だけの問題ではなく、非関税障壁の撤廃で国民主権・地方自治権を脅かすものだ。自治体が中心となって地域内経済循環を高めることこそ必要」として、中小企業振興条例や公契約条例を制定し、地域経済・社会を守るバリア作りを提起しました。

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第2日目は分科会が開かれ、「入門講座」では「先住民のアイヌ民族を中心とした北海道の歴史」や「北海道で進む市民による再生可能エネルギーの取り組み」が報告されました。「食の安心・安全・安定をめぐって」では、「北海道食の自給ネットワーク」や有機農業の取り組み、地域食材を取り入れた学校給食の活動などが報告されました(上写真)。
TPP問題を中心とした「食料・農業・農村をめぐって」では、研究者、国会議員、農民団体から、TPPの問題点や、今後の動き、対抗運動について討論が行われました。さらに「森林・水を中心とした環境問題をめぐって」では、TPPなどでの水道の民営化の動き、水循環基本法、北海道森林作り条例などについて報告と討議が進められました。
また、フィールドワークは「北海道開拓の村」を訪ねて、北海道の歴史や文化に触れました。

2016年11月26日

第48回食とみどり、水を守る全国集会 分科会報告

第1分科会「入門講座」
参加者=101人

「北海道の歴史」
講師=阿部ユポさん(公益社団法人北海道アイヌ協会 副理事長)
公益社団法人北海道アイヌ協会は、北海道に居住しているアイヌ民族を主な構成員として組織し、「先住民族アイヌの尊厳を確立するため、人種・民族に基づくあらゆる障壁を克服し、その社会的地位の向上と文化の保存・伝承及び発展に寄与すること」を目的とする。1946年設立。アイヌとはカムイ(神々)に対する「人間」という意味で民族呼称でもある(同協会HPより)。
阿部さんのお話を伺うと、アイヌは、古くは中国の元との間に戦争があり、日本からは長い間、侵略・征服され続けており、また時にはロシアの干渉を受けてきた民族であることがわかります。特に日本は明治初期においてアイヌ併合を行い、アイヌの姓名や言語、宗教、生業及び文化を禁止しました。
日本の戦後教育においてアイヌ教育は盛り込まれず、阿部さんも「一司」という名を親からいただいたように、「アイヌということを話さず立派な人間になれ」と教育されてきたと言われます。こうすることでアイヌの歴史に空白が生まれてしまい、アイデンティティが喪失してしまう恐れがあります。
しかし、世界各地の先住民族は、歴史を含めてその存在を保護される流れが出てきています。アイヌにおいても倭人との不幸な歴史を乗り越え、今後を築いていく必要があるとの見識が深まりました。

「再生可能エネルギーの取り組み」
講師=鈴木亨さん(北海道グリーンファンド理事長)
鈴木さんが再生エネルギーに取り組むきっかけとなったのは、1986年のチェルノブイリ原発事故であり、生活クラブ生協・北海道での脱原発運動が出発点です。1999年に、電気代の5%を元手に基金を造り市民共同発電所を市民の手で作るという「グリーン電気料金制度」を開始しました。5%を負担して発電所をという発想ではなく、5%の省エネと自然エネルギーの普及に個人で取り組むことができる制度だということです。こうして市民自ら参加し当事者になることで、エネルギー問題への意識啓発が図られていきます。
ドイツにおける自然エネルギーは、その40%以上が個人や農家によって所有されています。また、2000年から施行された「再生可能エネルギー法」の成果として、発電量の約30%が自然エネルギーによるものとのことです。日本の自然エネルギーは発電量の14.5%を占めており、そのうち約半分はダムによる水力発電です。今以上のダムの増加は見込みづらく、14.5%を増加させるためには風力等の自然エネルギーが期待されています。
グリーン電気料金制度や市民出資等を通じて、日本においても21基の市民風車が電力を発電しています(2016年11月現在)。21基の下では、子どもの未来へのプレゼントといった思想や、生徒会が直接、市民出資へ参加し環境教育に活用したり、売電収入の一部を元に地域振興の活性化につながるといったメリットがあるということです。

 

第2分科会「「食の安心・安全・安定をめぐって」
参加者=108名

報告者=大熊久美子さん(北海道食の自給ネットワーク事務局長)
報告者=滝本和彦さん(北海道赤井川村有機農業者)
報告者=住岡章子さん(岡山県津山市立戸島学校食育センター)

大熊さんは、「北海道食の自給ネットワークは第1次産業の活性化と食料自給力を高めることを目的に1999年に設立。2000年の大豆トラスト運動に続き、2002年から2011年まで小麦トラスト運動に取り組み、多くの産地の情報を消費者に届けた。その中で、消費者がスーパーの買い物で見る所が『値段から産地へ』と変わり、生産者も、消費者が初めて畑に来てくれたということで、双方で意識が変わった。また、小学3年から6年を対象にした食育講座で、必ず生産現場に行くことにしている。その中で、子どもは『卵が温かい』ことを知り、生きているものの命を頂いていることを学び、嫌いな野菜を食べるようになった」と述べました。

札幌の西、小樽の南に位置する赤井川村の滝本さんは、「アスパラ、ニンニク等を栽培している。特にホワイトアスパラは『カルデラの貴婦人』、グリーンアスパラは『カルデラの貴公子』等のブランド名で販売。紀伊国屋スーパーをはじめ、現在20数社と取引がある。東西7キロ、南北7キロのカルデラの中にある村は、昼夜の温度差が大きく美味しい農産物ができると言われている。村の人口1158人、農家119戸のうち有機JAS取得農家は15戸である。離農者数に新規就農者が追いつけず、また新規就農者はすぐ金になる小面積のハウス経営に向かい、余った農地をどう管理かが課題だ。将来は現在の有機農家が農業の中心になることは確実であるが、農家だけでは後継者をつくれない。消費者の支援が必要だ」と語りました。

岡山県津山市立戸島学校食育センターの住岡章子さんは、「2011年から5年間、西粟倉小学校で『ふるさと元気給食』に取り組んだ。給食食材の生産者の苦労や喜びを子どもたちに伝え、生産者と子どもたちが一緒に給食を食べる『ふるさと元気感謝給食』等を実施した。この中で、子どもたちの食材に対する好き嫌いが減少し、5年生の子どもたちが生産者を表彰したり、6年生は『ふるさと元気ごはん』や『ふるさと元気食堂』を考案する変化があった」と報告しました。
質疑応答では、遺伝子組み換えと認知症やアレルギー問題、年金暮らしと新規就農問題、センター方式給食と食育問題、グローバル化対策等について議論が行われました。

 

第3分科会「食料・農業・農村をめぐって」
参加者=123人

コーディネーター=岡田知弘さん(京都大学大学院経済学研究科・教授)
パネラー=東山 寛さん(北海道大学准教授)
佐々木隆博さん(衆議院議員)
石川純雄さん(北海道農民連盟委員長)

石川純雄さんは、この間のTPPの動向を踏まえて、生産者の立場からTPPの危険性を訴えました。コメについても加工用のコメが農家の大きな収入源になっていることを挙げ、日本の農家に与える影響は甚大であることを述べました。また、食品の安全性についても、一例として、BSEの検査のことを挙げ、アメリカの外圧で、すでに7月時点で全頭検査はなくなっている現状について述べ、あわせて、今後、TPPが進めば、遺伝子組み換え食品が市場に出回る危険性があることについて指摘しました。今後、食料主権の問題を真剣に考えるべきであり、その際には消費者も見てくれにこだわらず「地場産を食べる」ことが必要であると述べました。

佐々木隆博さんからは、国会でTPPの審議に関わってきた立場から、TPPの問題はアベノミクスの失敗と大きな関係があることについて指摘がありました。いわゆる「三本の矢」のうち、金融政策、財政出動については実体経済がともなっていない極めて危ういものであり、「民間投資を喚起する成長戦略」が切り札であること、そしてその中身は労働・医療・農業の規制緩和であり、これがまさにTPPの中身と同じであることが示されました。アベノミクスは所得再分配政策の失敗であり、進めれば進めるほど個々人の格差、地域の格差が増大することをデータで示した上で、日本は貿易依存度がそれほど高い国ではないので、改めて国内での再分配政策を作り直すべきであると述べました。

東山寛さんからは、研究者の立場から、この間のTPPをめぐる経過について仔細に報告がありました。その上で、国会審議の問題点について2013年の国会決議で掲げた「除外」や「再協議」に相当する区分が協定にないことや、TPPを進めれば国境措置と国内農業保護のバランスが崩れることは明らかで、関税による財源のない中で、現行の政策を維持することは不可能なはずであり、その検討が全くなされていない危険性について指摘がありました。その上で、トランプ政権が仮にTPPを批准しなかったとしても、日本がTPPを批准してしまえば、二国間の協議になった時にそこが土台として交渉になることから、TPPを批准してはならないことを強く訴えました。
その後、岡田知弘さんを司会に、TPPの今後とこれからの課題について討議が行われた。今後、TPPを土台としてアメリカとの二国間での協議に移行していく可能性が高いこと、その際には、前提として、食料自給の課題など、この国のあるべき姿について国民的な議論をしていくことが必要であることなどが語られました。

 

第4分科会「森林・水を中心とした環境問題をめぐって」
参加者=104人

 講師=内田聖子さん(アジア太平洋資料センター共同代表)
報告者=段坂繁美さん(元北海道森林・林業・林産業活性化促進議員連盟連絡会事務局  長)
報告者=奥野和人さん(水循環基本法フォローアップ委員・自治労公営企業局長)

内田聖子さんから「水は誰のものか~世界の水民営化とTPP・TSA(自由貿易協定)~」と題し、世界的な水をめぐる状況、水道民営化の流れと民営化がもたらしたもの、貿易協定のリスクについて報告がされました。世界的な民営化の失敗事例により、水は公共のものという訴えが広がっていること、また水ビジネスが拡大する一方で、途上国では安全な水にたどりつけないという2極化があるなかで、地域の水をどうするかという観点と世界の水の状況をあわせて考えることが訴えられました。また日本政府は、貿易協定や水道法改正などで外資系を含め民営化をより促進させる意向を示しているが、安易な民営化は大きなリスクが伴うことについても注意喚起がされました。
また、貿易協定と水道事業に関して、とりわけ投資家の利益を優先するISDS条項は国民の生活を守ることと対立し、敗訴の場合、多額な賠償金を国民の税金で支払うことなどの問題点について説明がされ、自治体が条例などでハードルをつくる等、民営化の動きに反対していくことが重要であると訴えられました。

段坂繁美さんは、地方議員と森林づくりについて、条例とのかかわりを中心に報告。24年間道議会議員を務め、北海道森林・林業・林産業活性化議員連盟協議会を通して、業界団体や労働組合とともに「森づくり条例」など森林や水を守っていくための条例制定に取り組み、森や水を守る活動に取り組む議員の仲間を増やし、選出国会議員を動かして、政府を動かすことが重要と訴えました。

奥野和人さんからは、水循環基本法の概要とフォローアップ委員会の活動、基本法制定以降の主要な経過について報告されました。水循環基本法の基本理念である、水は国民公共の財産であり公共性の高いものであり、健全な水資源が保全され安全で清廉な水環境が必要であることが強調され、そのための運動が必要であることを訴え、課題として超党派の議員を増やすこと、基本法の認知を高めることが必要であると述べました。
質疑応答では、貿易協定が水道事業に影響を及ぼすことを市民にアピールする方法などが質問され、映画などを通じて民営化の失敗や公営水道事業の重要性を訴えることが効果的であることや、日本の自治体も積極的に貿易協定の議論に参加し、情報を得るべきだなどと論議が行われました。

 

第5分科会 フィールドワーク「北海道開拓の村」を訪ねる
参加者=37人

 フィールドワークは、北海道実行委員会が運営を担当し、北海道地方森林労連のメンバーの案内で行われました。当初は「野幌自然休養林」も訪れる予定でしたが、例年より早い積雪で林内を歩行するのが困難であるため、「北海道開拓の村」の視察だけに変更になりました。
見学の前に、北海道の森林保全について森林労連の担当者から説明が行われました。1978年には5局89署あった北海道内の営林署は、今年(2016年)わずかに1局21署3支署であり、署員数も17,717名から915名に減り、非正規雇用に多くを頼っており、巡回ポイントを1ヵ月1度訪問するのが精一杯という厳しい状況であるということでした。
「北海道開拓の村」は、明治(一部江戸期のものもある)から昭和初期の建造物が移築復元・再現されている野外博物館で、当時の雰囲気を体験してもらえる施設として1983年4月に開村しました。<市街地群>、<漁村群>、<農村群>、<山村群>から構成されています。
まず、参加者全員で森林労連の担当者の案内で、林業関係の施設がある<山村群>で「森林鉄道機関庫」、伐木・造材や集・運材に従事した人たちが生活した「旧平造材部飯場」、「炭焼小屋」などを見学しました。設備の大きさから、北海道での林業の盛時の様子が伺われる展示でした。
その後4グループに分かれ、私の参加したグループは「北海道開拓の村」のボランティアの方から、小樽でのニシン漁の繁盛を思い起こさせる「旧青山家漁家住宅」がある「漁村群」を見学し説明を受けました。その後、<市街地群>の建物の一部を見ましたが時間が足りず、一部分を駆け足で見て回ったに留まり、<農村群>などは見ることができませんでした。
明治初期の教育施設の展示に、旧札幌農学校の寄宿舎である「恵迪寮」や、「旧北海中学校」がありましたが、ボランティアの方から明治期の札幌農学校では授業が英語で行われ、語学力不足の学生のためにできたのが「旧北海中学校」の前身の語学学校だったという話を伺いました。建物からその歴史が浮かび上がるようでした。
午前中だけの短い時間でしたが、北海道の歴史の一端に触れることができたと感じられるフィールドワークでした。

2016年11月18日

原水禁/原子力規制委員会の美浜原発3号機の運転延長認可に対する抗議声明

(more…)

2016年11月16日

南スーダンPKOへの新任務付与の閣議決定に抗議する

南スーダンPKOへの新任務付与の閣議決定に抗議する

フォーラム平和・人権・環境
事務局長 勝島一博

   政府は11月15日の閣議で、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊に、安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」や「宿営地の防衛」などができる新任務を付与する実施計画の変更を決定しました。
   現在、自衛隊(約350人)が参加している唯一のPKOは南スーダンで、キール大統領とマシャル前副大統領が激しく対立するとともに、軍事衝突が起こり、200万人が住む場所を追われています。4月26日にはマシャル氏が首都に戻り暫定政権が発足するも、7月8日以降内戦状態に逆戻りしてしまい、7月10日までの死者は民間人33人を含む272人にのぼり、PKO部隊の中国人兵士が死亡、陸上自衛隊の宿営地がある国連施設でも3000人の市民が避難しており、現地の治安情勢は予断を許さない状況と言えます。
   こうした中、今月11日、国連の事務総長特別顧問は、南スーダンで「民族間の暴力が激化し、集団殺害になる危険性がある」と警告するとともに、反政府勢力のマシャル氏は「和平合意と統一政権は崩壊した」と発言しています。また、日本政府が公表した「基本的な考え方」では、現地の治安情勢については「極めて厳しい」、「首都ジュバも楽観視できない」と指摘するとともに、「政府としても南スーダン全土に『退避勧告』を出している。最も厳しいレベル4の措置である」と報告しています。
   にもかかわらず、日本政府は、稲田朋美防衛相がたった7時間、柴山正彦首相補佐官がわずか1日の現地視察で、南スーダンの治安情勢について「比較的落ち着いている」との判断を下すとともに、スーダンで起きている銃撃戦は、自衛隊の撤退が必要な「紛争」ではなく「衝突」だと強弁しています。
   このように、すでに南スーダンにおいてPKO五原則のひとつである「紛争当事者間の停戦合意」を満たしているとは到底言えず、また、現地で活動するNGOからも、「駆け付け警護」がかえってNGOを危険にさらすことになることが指摘されています。
   さらに、「比較的」などというあいまいな言葉で自衛隊に危険な任務を押し付ける、政府の無責任な姿勢も断じて許すわけにはいきません。
   戦後日本は、平和憲法のもと、武器によって殺したり、殺されたりする事態を免れてきましたが、今回の新任務付与によって、海外での武力行使への道をひらくことが危惧されます。
   いよいよ、次期派遣から新任務が付与されることになりますが、PKO五原則が守られない新任務の派遣は直ちに中止すべきであり、日本の果たすべき役割は、平和憲法に基づき軍事によらない人道支援や民生支援こそ世界に向けた日本の役割であると、私たちは強く訴えます。
   私たちは、今回の閣議決定に抗議し、その撤回を求めるとともに、自衛隊の南スーダンからの即時撤退を求め、全国での闘いを強化するものです。

2016年11月14日

憲法理念の実現をめざす第53回大会(護憲大会)閉会総会  まとめ 勝島一博事務局長

3日間にわたる憲法理念の実現を目指す第53回もいよいよ閉会の時が近づいてきました。
この3日間、参加者の皆さんには、開催地富山で真摯な議論をいただいたことにまず感謝したいと思います。ありがとうございました。
また、本大会成功に向けて多忙な中、ご協力いただいた助言者の皆さん、そして、大会を支えていただきました地元富山実行委員会の皆さんに心から感謝申し上げます。
さて、この3日間の中で多くの貴重な意見をいただき議論を進めることができました。しかし、この場で議論のすべてにわたってまとめることは私には到底難しく、私なりの稚拙な報告と喫緊の課題について申し上げさせていただき「まとめ」とさせていただきたいと思います。

さて、今大会の名称は「譲れない命の尊厳、人権・戦争・沖縄」であり、開会総会では「漂流する日本政治 安倍政権のこれまでとこれから」と題し、3名の学者の方々から問題提起をいただきました。
名桜大学の大城准教授は、沖縄高江のヘリパッドの建設強行のために配置された機動隊員による「土人・シナ人」発言に象徴される沖縄への差別意識や、警察が、戦後自治体警察として生まれ変わったにも関わらず、政府が国策を強行するために警察権を濫用していると指摘をするとともに、辺野古や高江での市民に対する暴力的活動を契機に、戦前の体制に回帰することを問題視をし、警察権の政治的濫用を糾弾し続けなければならないと話されました。
また、金子横浜市立大学名誉教授からは、アベノミクスは失敗したが、戦争法成立と政権支持率は維持したとの分析を行い、今後は、格差是正をはじめ、成長至上主義からの脱却や、さらに、国境を超えた経済への対応などを進めるべきとのお話をいただきました。
また、日本大学清水教授からは、自民党改憲草案やPKO派遣について、その問題点を指摘するとともに、改めて安倍政権の改憲策動への警鐘を鳴らされています。
一方、分科会では、第1分科会の「非核・平和・安全保障」から第7分科会の「憲法」の分科会まで7つの分野でそれぞれのテーマに沿って参加者の皆さんからの多くの発言もいただき議論が深められたと聞いています。
詳細については触れることはできませんが、それぞれの先生からいただいた問題提起や議論をしっかりと受け止め持ち帰っていただくとともに明日からの運動につなげていかなければなりません。

そのうえで、喫緊の課題について、3点申し上げまとめとさせていただきたいと思います。
第1の課題は、憲法を守る闘いです。今臨時国会の重要課題の1つは何といっても改憲勢力が3分の2を占める状況の中で憲法「改正」に向けた憲法審査会が1年と半年ぶりに11月16日に参議院で開催されようとしています。
これに先立って、7月11日、参議院選挙の投開票の翌日、与党勝利の結果を受けて記者会見した安倍首相は、引き締まった表情で「憲法審査会でどの条文をどう変えるべきか議論すべきだ」と述べ、また、今臨時国会の所信表明演説でも各党に改憲のための議論を呼びかけています。
しかし、安倍首相の発言からは「憲法を変えたい」という意思は伝わるものの、主権者である国民の議論すら盛り上がらない中で、日本の法秩序の要である憲法をなぜ今変えなければならないのかについては語られず、また、改憲案の中身についての質問にも詳しい説明はされていません。そして、最近になって、自民党・下村幹事長代行は、改正の優先課題として、「緊急事態条項の創設や参議院選挙区の合区解消」を挙げていますが、国会周辺からは「お試し改憲」などと軽はずみな言葉さえ聞こえてきています。
政治評論家の森田実さんは、こうした改憲議論に対し、「現行憲法で対応できない課題は、戦争以外には見当たらない」とし「基本的人権の尊重をうたった普遍的な価値を前提とする今の憲法に大きな不備はない。国民生活の向上のために必要な課題が生じれば、淡々と法整備を進めればよい」と真っ向から否定しています。
さて、自民党が2012年に決めた憲法改正草案は、開会総会でも申し上げましたが、侵略戦争を反省した現憲法の前文を削除し、さらに陸海空軍の戦力を保持しないとした9条2項を廃止して国防軍を創設するなど憲法の平和原則を踏みにじるものとなっています。また、「犯すことのできない永久の権利」としての基本的人権は否定され、権力を縛る憲法を逆に国民を縛るものへと変えようとしています。
琉球大学高良教授は、2日目の午後、基地ネットワークのひろばのなかでで、第2次大戦を引き起こしたドイツのヒットラーについて触れ、「ヒットラー一人の力でファシズムが進行したのではなく、ヒットラーを支えた者たちがいた。支えた者たちとは国民であり、国民が権力を監視しなけれえば誰がする」と結んでいます。
本来、立憲主義において、憲法は国民が権力者を縛るものですが、放っていても自動的に実現するものではありません。ひとたび、私たちが権力者に憲法を守らせる力が弱まった時、今日の自民党改憲草案のように、権力者は憲法を国民を縛るものへと変えようとしてきます。
これまで私たちは、労働組合はもちろんのこと、憲法学者や文化人、学生、主婦、宗教家など広範な人びととの連帯や市民の自発的な運動参加を実現する中で、集団的自衛権行使を柱とした戦争法の廃止を求めてかつてない運動を全国で展開してきました。
引き続き私たちは、私たち自身が憲法を守らせる力を養っていくとともに、国会を中心にした闘いと各地の闘いの連携を強めながら、この間の戦争法廃止を求める闘いをさらに上回る闘いを共に創り上げていきたいと思います。全国での奮闘を心から期待し、共にがんばりたいと思います。

第2の課題は、今大会のスローガンにもあります沖縄の闘いについてです。
まずは、基地の縮小・撤去を求め、辺野古や高江で、全国から投入された機動隊の暴力にも屈することなく、全力で闘っている沖縄平和運動センターをはじめとしたみなさんに心から敬意を表しますとともに、フォーラム全体で、全国の職場や地域で自らの闘いとして沖縄の闘いをさらに強化していきたいと思います。
現在、安倍政権は、大城事務局長の報告にもありましたが、地方自治を踏みにじり、法を捻じ曲げ、また、「基地はいらない」とする度重なる選挙で示された沖縄の民意を無視して辺野古や高江の工事を強行しています。
さらに、この工事の強行を後押しするのが全国から導入された機動隊の暴力による弾圧や国に追従する司法の不当判決であり、絶対許すわけにはいきません。
この司法や警察権力を巻き込んだ沖縄での安倍政権の暴走に対し、院内での闘いはもちろんのこと、沖縄で、全国各地でこの暴走を止める闘いを強化しようではありませんか。
具体的には、1)すでにスタートした「沖縄県民の民意尊重と、基地の押し付け撤回を求める」全国統一署名を全力で取り組みたいと思います。各団体での力強い、かつ、スピーディなとりくみをお願いします。
また、2)12月10日の「最高裁の民意によりそう判決を求める全国アクション」の取り組み強化です。
すでに、日比谷野外音楽堂での集会とデモ行進の準備を進めていますが、この東京の集会は「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲行動実行委員会と基地の県内移設に反対する県民会議、さらに、戦争させない・9条壊すな!総がかり実行委員会の共催として準備しています。今後各県でも最高裁判決に向けた学習会や集会、街頭宣伝など取り組みを重ねていただき、12月10日に各県一斉の取り組みを実施したいと考えています。本日参加のみなさんの各地での取り組みを改めてお願いします。

そして、3つ目の課題は、南スーダンへのPKO部隊の派遣についてです。
南スーダンへのPKOの派遣については、昨日の第1分科会の半田滋東京新聞編集員から提起を頂きました。
半田さんは、2012年の現地南スーダンの取材や、今年10月24日の公開された自衛隊の「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防衛」の訓練に参加した経験を踏まえて、11月15日に閣議決定される新任務を帯びたPKO部隊の派遣について南スーダンの現状も含めてお話されました。
まず、昨年の安保法制の改正に伴うPKO法が多くの憲法学者が指摘するように憲法違反の疑いが強いこと、また、現在の南スーダンの厳しい治安情勢の中にあって自衛隊員の安全が確保することが極めて難しいと指摘しています。
この現地の治安情勢については、政府見解についても紹介されましたが、政府見解では、起きているのは「戦闘」ではなく「衝突」としながらも、公表された「基本的な考え方」では、「治安情勢は極めて厳しい」「今後の治安情勢については楽観視できない情況である」「政府としても南スーダン全土に『退避勧告』を出している。もっとも厳しいレベル4の措置であり、治安情勢が厳しいことは充分認識している」と報告されています。
また、稲田朋美防衛大臣の事前の治安情況の視察と「安定している」とする政府見解に触れ、現在現地は武力衝突が起こりづらい雨季でしかも首都のジュバだけをたった7時間視察しただけでは治安について判断できるものではないと指摘しています。
安全保障関連法の成立により、今後は、PK0部隊の任務に「駆けつけ警固」や「宿営地の共同防衛」が加わることになります。宿営地から離れた場所で武装勢力に襲われた民間人や他国軍兵士を、武器を所持し助けに行く任務や、武器を持って検問や巡回にあたることを可能としたため、事実上の内戦状態の中で隊員らは武力行使を行うこととなり、さらに危険は高まることとなります。
戦後日本の自衛隊は、平和憲法のもと、海外に派遣される場合においても 1 発の銃弾さえ発したことはありませんでした。
いよいよ、次期派遣にむけて、稲田朋美防衛大臣は、安全関連保障法にそって新任務の訓練を行うことを表明し、「戦争ができる国へ」大きく踏み出すこととなりますが、すでに、防衛省では「今後武器使用の教育を最重視する」としており、「殺し殺される」 現実がすぐそこまで近づいてきています。
次の交代時期は11月といわれ、11月15日の閣議で新任務を付加した派遣内容が、決定されようとしています。開会総会のメイン企画で、清水先生からは「PKO参加5原則が守られない新任務の派遣は中止すべき」、日本の使命は平和憲法に基づき「軍事によらない人道支援、民生支援こそ日本の役割」との発言がありました。平和憲法に違反した安全保障関連法によって平和憲法に違反した取り返しのつかない行動が行われないよう全国で取り組みをさらに強めていこうではありませんか。
結びに、3日間の議論でも明らかになりましたが、安倍政権のもとで日本の国の形が大きく変えられようとしています。そして、いよいよ巨大な安倍政権に対し、日本における立憲主義、民主主義、平和主義を守る闘いが正念場を迎えています。今護憲大会での議論を職場や地域にしっかり持ち帰り、明日から、私たちがこの闘いの先頭に立って奮闘しあうことをこと全体で確認し、3日間の大会のまとめとさせていただきます。ご苦労様でした。

 

2016年11月14日

憲法理念の実現をめざす第53回大会(護憲大会)分科会報告

第1分科会 非核・平和・安全保障第1分科会は、「非核・平和・安全保障」をテーマとして、半田滋さん(東京新聞論説委員・編集委員)と大城渡さん(名桜大学上級准教授)を問題提起・助言者に迎え、開催された。

運営委員から初めての参加者の挙手を求めたところおよそ3分の1の参加者の手が挙がり、新鮮味と取り組みの広がりを感じながら講師の報告に入った。

まず、半田さんから「安全保障関連法施行による自衛隊の変化」と題し、これまで自衛隊の海外派遣が強行採決から14回目の派遣となり、そのうちPKOは13回を数え、今回の南スーダンにおけるPKOが開始されるにあたって、国内での訓練の公開の報告がされた。2012年に半田さんが現地を視察した時は武器を持っている隊員はいなかったが、今回の訓練は武器を持った隊員が警護していた。しかし訓練は、銃を撃つ場面は公開されなかったが、実際には前日に稲田防衛相に公開していると報告があった。

そして、今回派遣される南スーダンはスーダンから独立した世界で一番新しい国で、石油のみが産業を支え、その利権をめぐって大統領派と副大統領派による武力衝突が起きた。副大統領は解任され、国外へ脱出しているが、取材に対して「戦闘が起きている」「標的になる」との発言をしているが、日本政府は戦闘ではなく衝突と誤魔化し、治安情勢は厳しく「避難勧告」を出しながらも、稲田防衛相は危険地帯を視察せずに安全と決めつけPKOを推し進めようとしている。国連は7月の武力衝突後、4000人規模の治安部隊を追加派遣。PKO部隊が敵視され、攻撃を受けることも。

そもそもこの安保関連法自体が合憲なのか、すべての法案の具体的議論がなく、改正PKO法に関しては全く議論がされていない。今回の法改正で新たに加わったのが、宿営地の防衛と駆けつけ警護。

以前、守るのはNGOと言っていた。現在避難勧告で日本人はいない。居ても国連職員としての日本人などの少数。駆けつけ警護は行う必要性がないから大丈夫と判断しているのか。

このPKOに参加しているのは途上国ばかりで、先進国では日本のみ。今まで日本政府がPKOを撤退させたのは民主党政権時のゴラン高原派遣のみ。と報告。

次に大城さんから「外交・安全保障権限と地方自治の緊張関係とその調整」外交や安全保障は国の専権(専管)事項か?と題して報告を受けた。

まず、沖縄からの問題提起として、2013年当時の仲井眞知事が辺野古埋め立てを承認して以降主要な選挙は辺野古新基地反対の候補が当選している。このような選挙結果でも「沖縄に寄り添う」と語る政府は民意を全く顧みていない。また、2015年翁長知事が辺野古基地建設拒絶の意向を正式に伝えたが、その10日後には安倍首相はオバマ大統領との会談で辺野古新基地建設推進を確認する合意を行った。

地域づくりや住民生活に関わる「地方自治」(民意)と、国(政府)の「外交・安全保障権限」が衝突した場合、憲法上どのような調整が図られるべきか。」「外交や安全保障については、国(政府)の専権(専管)事項である。(から、地方が国(政府)の決定に異論をはさむことはできない)」という趣旨の言説が見られる。この言説の当否について「専権」と「専管」の意味の違いを検証。「専権」とは「権力をほしいままにすること。思うままに権力をふるうこと」、「専管」とは「一手に管理すること」とされており、恣意的な権力の行使を抑制することに主眼がある立憲主義の観点に基づけば、国の専権事項を安易に認めることは慎まなければならない。専権事項の容認・拡大は専制政治をもたらす危険を高める。

憲法上、法律を制定する権限は国会の「専管」事項であり、「専権」事項ではない。

国の(政府)の外交・安全保障権限は憲法73条により外交権限が、授権されているが過去の政府の行為(外交政策の失敗)が戦争の惨禍をもたらした一因にもなった歴史を反省して、政府の外交権限も厳しい制約を受ける。

地方自治の保障として、仮に国の外交・安全保障権限が地方自治に当然優越するなら、憲法上の地方自治の保障は形骸化してしまう。

外交・安全保障権限と地方自治の緊張関係とその調整は、沖縄の実態として長年地方自治が劣位におかれていた。しかし、地元紙は安倍・オバマ合意は「沖縄の民意に反し、政府が外交の場でも自らの立場に固執し、辺野古推進の合意に至ったことは、政府による外交権限の乱用であり、沖縄の自治権を侵害し、明白な違憲である。」と端的に論じた。と締めくくった。

参加者からの質問意見・報告には全国一般、長崎、石川、青森、宮崎、富山の9名から、南スーダンにおけるPKO活動への疑問、新アメリカ大統領移行による変化、各地の取り組みの報告がされ、半田さん・大城さんから回答、説明を受け、最後に半田さんから「警鐘を鳴らす愚直な行動で周りに広げる運動と政治家との結びつきが必要」と感想をいただき、分科会を終了した。

 

第2分科会 地球環境―脱原発に向けて―

第2分科会では、はじめに問題提起・助言者である原子力資料情報室の伴英幸さんより「原子力政策の動向と今後の課題」として提起を受けた。

伴さんは始めに「原子力と憲法」という切り口で、原子力政策が憲法の様々な条項に反していることを指摘、特に福島第一原発事故以降の状況は平和的生存権の侵害に当たることや、また、幸福追求権や公務員の賠償責任など、憲法で規定された多くの条項に違反すると指摘された。

続いて核燃料サイクルの状況と問題点について、高速増殖炉「もんじゅ」が、原子力規制委員会の勧告を受け、政府が「廃炉を含め抜本的見直し」せざるを得ない状況にあること、日本とフランス以外は核燃料サイクルを行っていないことなど、すでに核燃料サイクルは破綻しており、再処理継続の意義は完全に失われていることなどについて指摘された。

しかし、このような状況にもかかわらず日本は核燃料サイクルを継続するとしており、電力会社が再処理から撤退したくてもできない構造が作られていることなどが話され、最後に再稼動問題と国民負担について触れられ、原発の稼働や廃炉にかかる様々な負担を、国民に押し付けることを許してはならないと述べられた。

その後、会場より6名の方から様々な視点からの質問や意見が出された。

現状の原発政策に対する質問や、今後廃炉を進めるにあたっての問題点、自然エネルギーへの転換が進まないことや、柏崎における市長選挙への協力の呼びかけなどの発言が出され、伴さんから質問等に答えていただきながら会場全体で課題を共有した。

続いて各地からの報告として、福井県より、「もんじゅ」の廃炉に向けた動きについて話された。これまでの取り組みの報告や「もんじゅ」の危険性について触れられ、「廃炉に向けた動きは歓迎するが、まだまだ困難が多い、次世代のために住みやすい社会を作るために努力したい」と決意が示された。

北海道からは、高レベル放射性廃棄物の処分場問題について話された。北海道の幌延では「幌延地層研究センター」がつくられ、核抜き条例などが制定される中で受け入れざるを得なかった経過や、今後全国で最終処分場問題が浮上することは明白であり、北海道だけの問題ではなく、「最終処分場適地」は全国でも7割ほどが該当する可能性に触れられ、核のゴミは動かさないことを前提に、原発の稼働を止めて新たな核のゴミを発生させないことが重要であることが訴えられた。

福島県からは、原発事故から5年8カ月が経過し、原発事故の「記憶の風化」が進んでいるなどと言われているが、福島県民にしてみれば、日々の生活が原発事故を引きずっており、失われた人権が回復していないとの訴えがあった。

進まない除染や除染廃棄物の問題や、小児甲状腺癌について、国が原発事故との因果関係を認めていない現状について、一歩ずつ国に責任を迫っていくとの決意、そして帰還の問題では賠償・補償の打ち切りとセットになっているなどの酷い政策についてもこれを改めさせ、国・東電に被災者の生活再建の保障をさせるよう働きかけていくなどの報告が行われ、最後に、福島第二原発が再稼働できるまでに復旧している。しかし福島第二原発の廃炉をめざすとの強い決意が述べられた。

石川県からは志賀原発の現状と裁判の状況について話された。志賀原発は次々とトラブルを起こし、2011年3月11日から現在まで停止している。かつては地裁で運転差し止めの判決が出されたこともあったが、2010年11月に最高裁で敗訴した。このような厳しい状況の中で3.11をむかえ、改めて1、2号機の運転差し止めの裁判を行っている。この裁判は勝つのは間違いないと確信しているが、北陸電力は裁判引き延ばしを行い、規制委員会の判断を待つ姿勢に徹している都の報告があり、裁判とともに志賀原発の廃炉に向けて努力を続けていくことが述べられた。

鹿児島県からは署名の協力への呼びかけとともに、県知事選について報告された。

知事選では約84,000票差で勝ったが、原発立地自治体である薩摩川内市でも37票差で三反園知事が得票数を上まわったことが非常に大きい。これはこれまでの再稼働反対の取り組みの成果とともに、4月の熊本地震で原発は危険だという意識が拡がったことがある。

しかし、県議会では自民党が過半数を占めており、厳しい状況もある。引き続き1号機再稼働をさせない取り組みを続けていくことが話された。

以上の報告を受け、助言者の伴さんより、高レベル放射性廃棄物の地層処分への批判、脱原発を掲げて当選した首長をサポートする運動の重要性、全国各地での原発運転停止を求めた裁判の力強い取り組みについて感想が述べられ、これまで原発に依存してきた地域経済を、私たち自ら「後始末」をどうしていくのか提起していかなければならないそうした時期に来ているとの提起を受け、最後に佐藤運営委員のまとめとして「原子力が憲法違反であるとの提起を受け、福島の現状がまさに憲法違反の状況がある。福島第一原発事故の記憶が風化しているとの提起は、自分自身が少し感じている。自らの組織に戻って多くの仲間に伝えたい。安倍政権がある限り原発は推進されている。いつ行われるか解らないが衆院選の取り組みが重要。」として分科会を閉じた。

 

第3分科会 歴史認識と戦後補償

第3分科会では、まず、問題提起・助言者の上杉總さんが自身で作成したレジュメ「日本会議と憲法改正」にそってお話をされた。

改憲の推進勢力である日本会議が徹底的な秘密主義の下でいかなる団体かがよくわからなかった。「日本会議の研究」(扶桑社刊)は15万3000部も売れ、日本会議の正体を解きほぐす端緒となった。この若いジャーナリストの菅野完さんや青木理さんの活躍でようやく右派的「空気」を暴露して憲法改正運動を低調にさせ、カルト的宗教団体が運動の中心的な担い手であることを知らしめた。

加えて、日本会議国会議員懇談会には約290人の国会議員が入会しているが、アクティブなメンバーが限られて大方の人は義理で入会し一年間1万円の会費を払っているだけであること、神社本庁は各々神社があるだけで各々が政治活動を簡単にはできないこと、戦前から軍人が脈々と活動を続けていることを踏まえて、日本会議や神社本庁に対する誤解や過大評価されていたことがわかった。

日本国憲法は押しつけ憲法という人々がいるが、「日米合作の憲法」であった。日本国民が普通選挙で選んだ国会議員がGHQ案をもとに憲法改正案として国会に提出した。衆議院で修正し連合国極東員会の意見をとり入れて貴族院、枢密院で可決成立した。日米が中心になって共同して作り上げたのが現行日本国憲法です。

大阪市の教科書採択については教科書展示場のアンケートの比重が高いことを知って、育鵬社と日本教育再生機構(日本会議)がフジ住宅を唆し組織的なアンケート運動を展開した。この不正採択をめぐって、大阪市議会では第三者員会の設置が決議され、調査が開始された。 討論では延べ11人の方から(教員の方が多かった)質問や現場の報告があった。

 

第4分科会 教育と子どもの権利

第4分科会では、子どもの貧困問題と教育-子どもの権利の視点から-というテーマで荒牧重人(山梨学院大学)さんから提起があった。

子どもの貧困は見えづらい、可視化しにくいといわれる中で、2013年に議員立法で成立した「子どもの貧困対策の推進に関する法律(以下貧困対策法)およびそれに基づく「子供の貧困対策大綱」により多様な形で対策が取り組まれている。しかし、一般的な貧困の指標である相対的貧困率が16.3%であり、子どもの貧困が最も現れているひとり親家庭では、54.6%になっているような現状を改善するに至っていない。また、政府の政策によるその貧困率が増加している「逆転現象」が生じていることも指摘されている。テーマに関わっていろいろ問題は多いが、子どもの貧困問題の解決および教育において今日もっとも必要とされている子どもの権利の視点から考えていくとの話から始まった。

国の子どもの貧困対策とその課題、子どもの貧困の捉え方、子どもの権利・条約を基盤とした取り組み、子どもの貧困対策とこどもにやさしいまちづくりという項目で提起が進められていった。特に、子どもの権利の視点から子どもの貧困を捉えることによって、その子どもの貧困問題の解決につながる。子どもの権利と子どもの自己肯定感は通底するが、その自己肯定感の低さと貧困世帯とは相関関係にある。なぜ、子どもの権利かについて子どもは、独立した人格と尊厳を持つ権利の主体であり、子どもは単に「未来の担い手」ではなく、いまを生きる主体である。子どもを「社会の宝」に留めてならない。子どもは社会の一員・構成員として位置付けることが大切である。子どもとの関係を一方的にしないためにも子どもの権利の視点と手法は必要である等、いくつかの視点から述べられた。

子どもの貧困対策と教育の役割を検討する際に重要なことは、これまでの教職員・学校・地域の取り組みの成果を確認し共有するという点である。どうしても課題が先行しがちになるが、成果をもとにしない課題の提示や確認はそれだけに終わってしまい、解決の方向にむかわない。また、政府の子どもの貧困対策で強調されている「学校をプラットホームとした総合的な子ども支援」等を展開するためには教職員・学校の条件整備が不可欠である。条件整備のないまま、教職員・学校に課題を押し付けているのが現在の安倍政権下の「教育改革」の実態である。いま、子どもや教職員・学校を取り巻く現状はがんばれば解決できるようなものではない。現場の意見を反映した施策や制度、親・保護者・地域・NPO法人等々の連携・協働なしには解決の方向すら見えないことが多い。教職員・学校・教育関係者に「がんばりすぎない」ことを強調された。

これらの提起をもとに、①子どもの貧困の実態とその状況をどう捉えるか②これまでどういう取り組みをしてきたか③今後どのような取り組みが必要なのかの柱立てのもと討論に入った。教職員はがんばりすぎている。目の前にいる、困っている子どもに手を差し伸べそれがやり過ぎる傾向にあり、また当たり前だと考え自分だけで解決しようとする事例や、奨学金は将来の子どもたちの借金となるが利用者が増えていること、主権者教育をするにあたっては投票のための教育ではないこと、労働教育もきちんとした形でするべきであること、就学援助費が年々増加している報告、高校受験で定数内不合格となった子どもの話等が出された。また、子ども中心に考え、子どもに優しい町づくりをしている自治体の取り組み事例があげられた。

困難な子どもを抱えているのに。教育関係者の議論が活発にならない。背景に貧困問題があるということが表にでない。教育関係者は謙虚過ぎる。自分たちでがんばってしまう。協力・協働をし、発信をしていく必要がある。子どもの貧困を単にお金がない状況だけで捉えてはいけない。自治体が貧困問題を扱っているが、少子化に特化してはいけない。子ども自身が育っていく支援をし、子育て支援をしっかりと考える。子どもの権利を考えてとりくまなくてはならない。子どものことを語り、子どものことを思って教育条件整備をしなくてはならない。子どもが、学校の中で学校の構成員として位置付けられているか、子どもの権利を連動させながらやっていくことが大切。地域とかいろんな人の力をかりて、教職員が連携・協働していくことに動いていき、子どもの権利条約に関する取り組みをいかしていくことが重要である。と最後に荒牧さんから助言をいただき分科会を終了した。

 

第5分科会 人権確立

第5分科会では3名の助言者から問題提起を受けた。

はじめに、「在日朝鮮人の権利擁護」についての提起がありました。

相談活動などを行うなかで、在日朝鮮人という理由でアパートの入居を断られ、バイトのシフトに名前を書かれず差別・せん称語が記載されていたなどの事例があった。

安倍談話がだされ、アジア・アフリカを勇気づけたいという内容は盛り込まれていたが、在日朝鮮人に対する言及は含まれておらず、日本が韓国を植民地支配していた事実は忘れ去られようとしている。また、在日朝鮮人の意味を理解していない人が増加している傾向に危機感を感じると指摘。1923年におきた関東大震災の際に、デマによって多くの在日朝鮮人が軍隊や市民によって虐殺されたことに関しても日本政府は真相究明をしておらず侵略責任も果たしていない。

朝鮮学校に対する差別と歴史についての提起もあった。朝鮮解放直後に朝鮮学校がはじまり、国語を学ぶ場であった。当時のGHQと日本政府に封鎖に追い込まれそうにもなったが、1965年に朝鮮学校は各種学校と認識するべき通達がだされ、段々と在日朝鮮人の権利を保障する運動が始まってきた。

しかし、2012年に安倍内閣が発足し、朝鮮学校の無償化が廃止となった。追い打ちをかけるように、2013年3月、東京の町田市が防犯ブザーを朝鮮学校に支給をしなくなった。全国から抗議があり、撤回はされたが正式な謝罪がされなかった。

在特会などによる朝鮮学校襲撃もあり、朝鮮学校に対し上と下から差別を受けている現状がある。政府はヘイとスピーチ解消法をつくったが、政府・自治体が原因を作り出していることを認識しないといけないと述べました。

続いて、「男女賃金差別」について、裁判に至った経過や実態を含めての問題提起を受けました。

2級建築士の資格を取得し、技術手当で5万ほどもらっていたが、女性という理由で総合職でなく、一般職の扱いとなった。総合職は男子、一般職は女子と通達に明記されていた。このようなことは不当であると社長上司を含めて、訴え続けてきたが改善されず、裁判に踏み切った。

裁判では男女で分けた事実は労基法違反と認めたが、基本給のうち年齢給だけ認めた。1審判決では能力を調べた記録はなく、職能級の格差賃金は認めないとされた。高裁での会社の反論は能力の高い仕事はしていないために賃金に差が発生したと証言。自己の行った仕事は能力が低いと立証できない証拠を提出すると、会社側がそれを矮小化した。矮小化に反する証拠をだすと、書いた図面をほかの人間が書いたものと虚偽の証言をした。

司法のもっている性格、会社が主張していないにも関わらず裁判所が判断することが裁判の問題点である。男は大黒柱、女は家事など性別の役割分担といった先入観を司法が認めてしまっている。これを変えるためには多くの人に男女差別を解決しなければ社会はよくならないということが訴えされた。

最後に「全国部落調査復刻版事件」について問題提起を受けました。

事件の概要は、全国部落調査の書籍化検討を掲載し、アマゾンで販売された。「旅行・図書館の検索に役立つことでしょう」とふざけた内容でweb上にアップされており、同和問題解決のためのものではなかった。

これに対し、アマゾンへ抗議活動を行い、販売中止となったが、すでに53冊が予約されていた。解放同盟が法務省に申し入れを行い、全国大会で緊急行動の確認後、抗議行動を行った。裁判所が異例のスピードで仮処分、出版禁止の強制執行を行い、法務局が人権侵犯事件として説示をした。

また、部落解放同盟人物一覧として解放同盟関係者の個人情報がweb上に掲載された。鳥取ループは一覧を削除したとしているが、現在は複製されミラーサイトで閲覧できる状態になっており、この複製したことに関しては否定を続けている。

244名が原告となり、東京地裁で計2億3千万円の損害賠償請求を求める裁判を行っている。

第1回公判では、鳥取ループ側は、同和地区出身者は法律上存在しないとして、こちらの要求を退ける答弁書を提出した。2回公判では、原告側が具体的な差別事例をあげたが、鳥取ループは研究のために行ったと答弁書を提出した。

このような事件を許してはならず、必ず裁判で勝訴しなければならない。部落差別解消法・人権侵害救済法をめざし、協力をもとめ、国民の反対の声をぶつけなければならない。

問題提起を受けて、参加者から意見・質問がありました。富山県石川の部落差別の現状、差別は罪悪であることを社会の常識すること、地域で取り組みを行う重要性などについて意見が出されました。

 

第6分科会 地方の自立・市民政治

2016年7月の参議院選挙後、国は沖縄県に対して強権的な姿勢で臨もうとしています。9月には、福岡高裁那覇支部が、翁長沖縄県知事が辺野古埋め立て承認の取り消し撤回に応じないのは違法だとして、国側勝訴の判決を下しました。翁長県知事は最高裁に上告を行ったが、判決の内容次第でいつ工事再開が強行されてもおかしくありません。また、沖縄県東村高江の米軍北部訓練場において、オスプレイの使用が計画されているヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の移設工事が一方的に再開されました。参議院選挙において、基地のない沖縄を求める民意が改めて示されたにもかかわらず、国はむしろ態度を硬化させつつあることに対し、危機感を持たざるを得ません。

このように、沖縄における県と国の関係が予断を許さない情勢にあって、安心・安全な市民生活をどう守るのか、地方の自立に向けた国と地方の関係をどのように構築していくのかについて、基地をめぐる沖縄のたたかいを題材に改めて展望するための議論の場として、本分科会を設定しました。

まず、堀内匠さん(地方自治総合研究所研究員)による講演「地方分権・地方自治(基礎編)~沖縄における現実~」では、地方分権の基礎的な解説とともに、辺野古新基地建設問題を題材に、沖縄において分権改革の理想が踏みにじられた経緯が説明されました。国と地方の関係を対等・協力関係とする理想のもと、2000年の分権改革において機関委任事務が廃止されるとともに、国地方係争処理委員会が設置されました。沖縄においても、代理署名問題を契機に基地の撤去に向けた気運が高まっていましたが、分権改革を経たにもかかわらず、強制収用に関わる一連の事務が国の直接執行事務とされたこと、その後の辺野古をめぐる訴訟の一連の流れを見れば、実態は改革の流れに反するものでした。残念ながら地方六団体をはじめ他の自治体は危機感に乏しいのが現状ですが、その上で、自治の尊厳を取り戻し、分権・自治を実現するためには、沖縄の問題を地方全体の問題として受け止めなければならないとの指摘を受けました。

次に、高良鉄美さん(琉球大学法科大学院教授)による講演「沖縄から読み解く地方分権・地方自治」では、基地問題を中心に平和実現に向けた取り組みを進めてきた沖縄の歴史的経過を踏まえ、沖縄発の「自治の尊厳」を取り戻すためのメッセージが発信されました。具体的には、地方自治は、憲法95条で保障された住民の権利であることから、住民意思の反映である地方自治が国によって阻害されてはならないことが、スイスの直接民主制や沖縄県内の高校生3万人投票などの実践例を交えて説明されました。また、沖縄から見た日本の姿について、客観的かつ冷静な視点からの日本という側面、子供の貧困などにみられる日本の縮図という側面、そして基地の問題は沖縄特有の問題ではなく、軍事国家化・軍国主義化に傾きつつある日本の未来の姿であるとの3つの側面から、指摘を受けました。その上で、対等・協力の国と地方の関係を実現し、地方自治を活用するためには、沖縄だけではなく地方全体が力を合わせるべきとの提言を受けました。

次に、平良誠さん(自治労沖縄県本部執行委員)より、沖縄からの闘争報告を受けました。オール沖縄が作成した啓発用動画「7POINTS―いまさら聞けない、沖縄新基地建設問題―」の上映に続いて、辺野古や高江における闘争において非暴力を貫くことの重要性に触れた上で、ともに運動を進めていくことの呼びかけが行われました。

続いて、これらの講演および報告を受けて、全体での討論が行われました。青森からは沖縄と本土との情報格差についての指摘と民主主義を変えるために沖縄だけでなく日本全体から声を上げていくことが重要との意見表明、石川からは総括の必要性と運動を進めていく上で労働組合が批判ばかりではなく市民運動の強化のためにリーダーシップを発揮するべきとの意見表明、熊本からは基地集中と子供の貧困が沖縄でどうとらえられているのかについての質問、茨城からは、脱原発闘争を進める立場から国による支配・介入に地方が対抗していく方法についての質問、秋田からは辺野古・高江の行動および12月10日の全国行動に呼応した各地での行動への参加の呼びかけがありました。これらの意見や質問を受けて、助言者および闘争報告者から、沖縄二紙の報道は、基地が住民に及ぼす影響の大きさの現れであり決して「偏向」ではないこと、住民監査請求など地方による国への具体的な対抗方法について、そして2016年参院選における実績を広げることの呼びかけなど、今後各地での運動を進めていく上での助言および連帯に向けたエールを受けました。

 

第7分科会 憲法

第7分科会では、問題提起・助言者の清水雅彦さんから「憲法が保障する権利・自由~理解しているか使っているか」として提起を受けました。

はじめに、憲法とはなにか、憲法の基本概念とはなにかを再確認しました。憲法は、人権規定が目立ちますが、本来は組織規程により組織を縛るものであり、権力の暴走を起こさせないこと、憲法が保障する権利を守るために国家運営をしていかなければいけないことが明記されていることを学びました。

次に、本題の憲法で保障されている各権利に触れながら、現在の権利が使われていない実態や自民党政権が長く続いた結果、最高裁判所も保守的になり、国家が保障をしているとは言いがたい事実を聞くことが出来ました。

幸福追求権(13条)では、憲法の条文で明らかにされている個別的権利以外の権利について、司法の場などを通じて、具体的な権利が確立されてきた経過があります。しかし、自己決定権などまだまだ司法の及ばない権利があることも学びました。

法の下の平等(14条)では、絶対的な平等を規定しているのではなく相対的な平等を規定しており、許される合理的な区別が存在すること、スタートラインが違うことに対し結果が平等となることを目指し個別に違うことを行う制度は差別ではないことなどを聞きました。例えば、男性に生理休暇がないことや構造的に基礎学力が劣っているコミュニティーに学力向上をさせるために入学等の枠を設けることなどは差別にあたらないことを確認しています。

夫婦・両性の平等(24条)においては、戦前の家父長制度の解体を目指したものですが、結婚年齢や再婚禁止期間の違いなど男尊女卑的な法律は存在していますし、両性結婚などが認められていないように「女性は子どもを産むためのもの」的な思いが見えることを学びました。

自由権においては、奴隷的拘束・意に反する苦役からの自由(18条)の条文により、本人の同意があろうとも奴隷的拘束は無効とされ、意に反する苦役が認められないからこそ、日本には懲役制度がないことを確認しました。また、警察においても警察法での組織規程を拡大解釈し、取り締まりを行っている実態があり、令状がなかったり現行犯でなかったり、立証がなければ、それに従わない権利があることも聞くことが出来ました。

社会権においては、生存権(25条)保障は年々切り下げられており、国民は国家に対し、立法や財政処置を求めていく必要があります。教育を受ける権利(26条)においても、経済的な理由を背景に差別が実態として存在していると考えられます。

労働者の権利について、日本の労働組合の組織されている労働者は20%にも満たず、私たちはその権利を十分に発揮できていません。このことは労働政党が与党になれず、結果的に政府、最高裁判所も保守的になっていることから、我々の運動の広がり、組織化が今後も課題となることを確認しました。

質疑の場では、「国家は憲法に書かれていることに対して義務を怠っているのではないか。例えば差別禁止法がないことなど。」の質問に対し、「立法不作為というのがある。場合によっては、賠償責任もある。」と助言をもらい、「差別や貧困があるのは平和ではないと考えると基本的人権を実現することも平和には必要ではないか」とう質問には「憲法条文に「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とあり、9条を消極的平和、何かをしないことでの平和とするならば、この全文こそが積極的平和を表すものであり安倍首相の「積極的平和主義」の実態は「積極的戦争主義」でしかない」とあまり知られていない憲法や法律のこと教えてもらいました。討論の場では、各県で行われている憲法学習の取り組み報告を受けて「憲法カフェ」や「仲間の集まりやすい小規模学習の実施」などの取り組み共有を行っています。

今回の分科会では、憲法と権利について学習しましたが、日本人は権利に対する知識がまだまだ不十分なことと、国家はその権能を強化しようと権利が使いづらくしていることを知りました。今よりも権利を後退させる憲法改悪はもちろん許してはいけませんが、今ある権利も実現化させるよう学習し政治を正していかなければなりません。

 

 

 

2016年11月14日

1800人参加し富山で「譲れない命の尊厳!人権・戦争・沖縄─憲法理念の実現をめざす第53回大会(護憲大会)」

「譲れない命の尊厳!人権・戦争・沖縄─憲法理念の実現をめざす第53回大会(護憲大会)」を正式名称に、11月12日から14日までの日程で、富山市のオーバードホールをメイン会場に、全国・富山からの1800人が参加して開催されました。全国47都道府県持ち回りで行われる護憲大会の、富山での開催は1995年以来2度目。21年ぶりの開催となりました。
今回の大会は、安倍内閣のもとで、昨年9月19日に「戦争法」が強行成立された上、その後の参院選で与党が3分の2議席を占めるに至り、改憲に向けての動きをいよいよ本格化させる事態を迎えたものとなりました。この安倍政権を打ち倒すために総力で対決してきた私たちがそのとりくみを総括し、さらに強固にどう築くかが問われる大会でした。
大会は、第1日に開会総会・メイン企画、第2日に分科会・フィールドワーク・ひろば、最終日に閉会総会という日程で行われました。。

11月12日の開会総会は、本秋季一番の冷え込みとなっていた東京とは逆に汗ばむほどの陽気と、立山連峰の全景が臨める好天のもと、紅葉に映える街路樹をはじめとした周囲の木々という、絶好の環境に恵まれて行われました。前段のオープニングでは、富山の自主的グループの和太鼓「でんでこ」による演奏がにぎやかに行われました。
開会総会は、総合司会として、自治労中央執行委員の竹内広人さんとI女性会議富山県本部議長の辻井秀子さんが進行しました。最初に、藤本泰成・実行委員長の主催者あいさつ、つづいて、佐幸明・富山県実行委員会委員長の地元あいさつ、 下田祐二・連合中央執行委員、近藤昭一・民進党副代表(衆議院議員)、吉田忠智・社会民主党党首がそれぞれ連帯あいさつを行いました。
このうち藤本実行委員長は、安倍政権が「積極的平和主義」の名の下に戦争法の発動へと突き進むという状況について「歴史は、私たちが戦争をしない声を上げ続けなければ、あっという間に私たちを戦争に飲み込んでいくということを示している」と警鐘を打つとともに、依然として根強い「押しつけ憲法論」という改憲論について「つまるところ憲法9条の平和主義を変えようというのが改憲派の本質」とあらためて指摘。「自民党憲法改正草案に未来はあるのか。私は断言する。絶対にないということを」と断じました。そして、川島洋さんの反戦詩「誓い・償い・誇り」を読み上げ、安倍首相に対し、この詩に向き合ってもらいたいと訴えるとともに、「大会を通じて憲法が掲げる理想を真撃に学んでほしい」と参加者に呼びかけました。
県教組委員長でもある佐幸県実行委員長は、「駆け付け警護」などの新任務を帯びた自衛隊PKO派遣について、教育労働者の立場から「自己犠牲という正義感をあおって若者をそんな任務に就かせてはいけない」と訴えました。吉田党首は戦争法の具体化について「問題点を訴えていかなければならない。そのことが発動阻止の大きな力になる」と述べ、「大衆行動、裁判闘争、国会における闘いの三位一体の闘いによって戦争法廃止を実現しよう」とアピール。「現実の政治、国民生活の現状は大きく憲法理念とかけ離れていると言わざるを得ない」とした上で、「いま大事なことは現実の政治や国民生活の現状をより憲法に近づけていくこと。憲法の理念や条文を活かす『活憲運動』を一大国民運動にしよう」と訴えました。
これらを受けて、勝島一博実行委員会事務局長が基調提案しました。

→藤本泰成実行委員長の主催者あいさつ   →佐幸明富山県実行委員長の地元歓迎あいさつ   →勝島一博事務局長の大会基調提案

開会総会に引き続いて開かれた「漂流する日本政治 安倍政権のこれまでとこれから戦争法阻止、立憲主義確立、憲法擁護のため私たちは今後どう闘うのか」と題したメイン企画は、大会実行委員長を務める藤本泰成・平和フォーラム代表を司会・コーディネータに「アベノミクスと格差社会」「安倍政権と憲法」「沖縄の現状」の3本の柱で、それぞれの専門家の講演・問題提起を受けました。
最初は横浜市立大の金子文雄教名誉授が「アベノミクスと格差社会」と題して講演。護憲大会で経済政策を提起を受けるのは、アベノミクスのよって格差社会が一段と拡大し、人権問題としても深刻だからです。
2人目は日本体育大学の清水雅彦教授。「安倍政権の憲法とは」と題して、自民党の日本国憲法改正草案(2012年4月公表)の問題点、特に緊急事態条項やPKO派兵を中心に提起を受けました。
最後の3人目は名城大学の大城渡上級准教授。米軍基地と警察の機動隊の関係について提起。基地周辺で反対運動をする住民に対し、警察が「市民を保護する名目のもと、治安目的で拘束している」と指摘。法律で保護の対象となるのは「泥酔、迷子など、自分で判断できない要救護者。意思表示をする住民を保護名目で拘束するのは、違法な逮捕・監禁だ」と訴えました。また、基地周辺で「警察による住民の暴力的な弾圧」があっても、動画などで全国に発信されないと、警察から相手にされないことが多々あるという。米軍基地に関する「警察の介入は民意をないがしろにし、政府の活動を手伝っているようだ」と批判、警察が政府の国策強行のための手段、道具化されて行く状況は、戦前の警察活動の政治化そのものであり、軍国主義体制の復活だと厳しく指摘しました。
3人の提起を受けて藤本実行委員長がまとめ・集約を行いメイン企画を終了しました。
第1日目は最後に中松清孝富山県実行委員会副委員長が閉会あいさつをして終了しました。

第2日の11月13日は、午前から「非核・平和・安全保障」、「地球環境-脱原発に向けて」、「歴史認識と戦後補償」、「教育と子どもの権利」、「人権確立」、「地方の自立・市民政治」、「憲法」の7分科会、「富山市内名所コース」と「黒部峡谷コース」の2つのコースのフィールドワーク、午後には「男女共同参画-女性と人権」、「辺野古新基地建設・沖縄基地問題」、「イタイイタイ病とフクシマ」の3つの「ひろば」、特別分科会「運動交流」が行われました。

→憲法理念の実現をめざす第53回大会(護憲大会)分科会報告

最終日の閉会総会は、会場をボルファートとやまに移して行われました。最初に、「高江」について沖縄平和運動センター事務局長の大城悟さん、「オスプレイ」について第9次横田基地公害訴訟原告団団長の福本道夫さん、「もんじゅ」について原子力発電に反対する福井県民会議代表委員の中嶌哲演さん、「再稼働」について新潟平和運動センター事務局長の有田純也さんの4人の特別提起を受けました。
このうち、大城事務局長は、高江のヘリパッド建設工事強行の状況について、政府が北部訓練場の過半の返還を年内に前倒しし、12月20日に返還式典を行なうとする中で「4ヵ所同時に環境に配慮することなく工事が進められている」と批判。さらに、10月に逮捕されて以降、沖縄平和運動センターの山城博治議長の不当勾留が続き、11月11日に器物損壊、公務執行妨害、傷害の各罪で起訴されたことについて「明らかにわれわれの運動に対する弾圧」と指摘。ヘリパッド建設に反対する市民に対し機動隊員が10月、「士人」との差別発言を浴びせたことにも触れて「一機動隊員に帰せられるものではなく、もっと大きな組織、あるいはこの国の政治や今の社会を映し出している」とし、人権軽視の「アベ政治」との対決が迫られていると訴えました。
福本団長は、来年以降に米空軍のCV22オスプレイを横田基地に配備する計画について報告。米軍基地内においてのみへリ(垂直離着陸)モードで飛行し、(水平固定翼モードとの)転換モードで飛行する時間をできる限り限定するとの12年9月の日米合同委員会合意があるにもかかわらず「ヘリモードの形になるのは基地の外。それもかなり離れた所からヘリモードでもって着陸している」と述べ、これは横田だけのことではないと指摘しました。
中嶌代表委員は、廃炉の方向性が強まる高速増殖炉「もんじゅ」について、「超危険、超浪費だけではなく、実は平和憲法の根幹を揺り動かすような問題を含んでいる」と述べ、高純度の核兵器級プルトニウムを作れるもんじゅと核武装の潜在的技術力確保との関連にあらためて注意を促しました。
有田事務局長は、10月の新潟県知事選で柏崎刈羽原発反対の県民の民意が米山隆一知事を誕生させたことについて「民意をつかめば選挙に勝てる」と報告。柏崎原発は全7基中3基が07年新潟県中越沖地震以降、残り4基も福島原発事故の11年以降停止しているとして「(任期1期目の)4年間、石にかじりついても再稼働させなければ柏崎原発を事実上廃炉にすることができる」と訴えました。
次に、「大会のまとめ」を勝島事務局長が提案。大会議論の詳細に触れるとともに、次回第54回大会まで1年間、全力で安倍政治を許さず、憲法理念の実現をめざそうと訴えました。
→勝島事務局長の大会のまとめ
大会は、平和・護憲運動の功労者を表彰する「遠藤三郎賞」として、毎年憲法記念日に平和行進を続けてきた青森県憲法を守る会を表彰しました。その後、「憲法理念を実現する営みは、多くの人びとによる、さらなる努力を必要とする。現実に止まることなく、怯まず、諦めず、そして弛まず、信念をもって憲法理念の実現に向け、全力でとりくんでいかなくてはなりません」との大会アピールを採択しました。最後に富山県実行委員会の山崎彰事務局長の「がんばろう三唱」のコールで3日間の日程を終了しました。
→大会アピール

 

2016年11月14日

譲れない命の尊厳!人権・戦争・沖縄-憲法理念の実現をめざす第53回大会アピール

   日本国憲法が公布されてから70年が経過します。侵略戦争と植民地支配に明け暮れ、アジア諸国に多大な被害を与えながら、自らも沖縄戦や広島・長崎への原子爆弾投下に象徴される惨禍を経験し、敗戦に至った日本が、その代償として得たものが、日本国憲法です。日本国憲法の平和主義は、アジア・太平洋戦争で失われた尊い命の集積であり、戦後のアジア諸国への日本の破ることのできない約束なのです。私たちは、そのことを決して忘れてはなりません。

   日本国憲法は、敗戦の混乱と米軍の駐留下のなかで制定されたが故に、その制定過程についてさまざまな誹謗を投げかけられてきました。しかし、憲法調査委員会(松本烝治委員長)が、市民社会の前提となるべき個人の自由と民主主義に基づいた憲法草案を作成できなかったことの結果として①戦争の放棄、②象徴天皇制、③封建制度の廃止というマッカーサー指令に基づく連合軍極東司令部(GHQ)の案文が採用され、その後日本政府により加筆・修正のうえ、成人男女が参加する初めての完全普通選挙の下での議会で圧倒的多数で可決された事実、自由に物言えず権力に怯えて暮らした戦時から解放された当時の日本社会から圧倒的賛意をもって受け入れられた事実は、決して消すことはできません。

   私たちは、この護憲大会を開催しながら、50年以上にわたり、憲法理念の実現をめざして運動を展開してきました。憲法の公布から70年を迎えたいま、その理念を実現できたでしょうか。貧困と格差の拡大、「戦争法」の成立、沖縄の民意を無視した基地建設の強行、福島第一原発事故の現状と世論を無視した原発の再稼働強行、故郷を奪われた福島の被災者など、今の日本社会において、平和と民主主義、基本的人権の尊重という憲法理念は、何一つとして十分に実現できていません。私たちはいまなお、憲法理念の実現をめざすとりくみの途上にあることを、いま一度確認しあいましょう。

   安倍政権は、天皇を元首とし、戦争をすることを前提とし、個人の権利が「国益と公の秩序」によって制限され、個人にも憲法尊重義務を課すという、「憲法改正草案」なるものを振りかざし、憲法の改正を提起しようとしています。しかし、憲法の何をどうするか、何が不足していて何が間違っているのか、具体的な議論はありません。自民党によって示された「憲法改正草案」は、およそ近代憲法と呼べるものではありません。何よりもそれは、戦争に明け暮れた時代へと逆戻りさせる内容であり、不戦の誓いを破り、一人ひとりの権利を抑圧し、物言えぬ時代に逆戻りさせようとするものです。このような憲法改悪の策動を、絶対に許してはなりません。

   70年間、一度として改正されることのなかった憲法が、古色蒼然としたものであるかのような一部の主張は、あきらかに誤りです。日本国憲法の理念は揺らぐことなく、私たち一人ひとりの「不断の努力」によって、少しずつ輝きを増してきたのです。そして、この憲法理念を実現する営みは、多くの人びとによる、さらなる努力を必要とすることでしょう。現実に止まることなく、怯まず、諦めず、そして弛まず、信念をもって憲法理念の実現に向け、全力でとりくんでいかなくてはなりません。そのことを確認しつつ、私たちのたたかいをよりいっそう強化し、さらに発展させる決意をお互いに確認しつつ、53回目の大会を閉じていきます。

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