11月, 2015 | 平和フォーラム - パート 2

2015年11月16日

憲法理念の実現をめざす第52回大会(護憲大会)閉会総会  まとめ 藤本泰成事務局長

3日間にわたり、この青森で真摯な議論をいただきました。本当にありがとうございます。もとより議論の全てに渡ってまとめることは困難です、皆さんには、それぞれのまとめがあると思いますが、ここでは私なりの報告をさせていただき「まとめ」としたいと思います。

2015年、戦後70年の激動の一年が、もう少しで終わろうとしています。安倍政権は、「消費税や年金と違い、国民生活にすぐに直接の影響がない。法案が成立すれば国民は忘れる」と、市民社会を愚弄しつつ、反対の声を押し切って「安全保障関連法」私たちが思う「戦争法」を強行成立させました。侵略戦争と植民地支配の反省から生まれた憲法の平和主義を、単なる閣議決定と数の力で、圧倒的な市民社会の反対を押し切りました。

この戦争法の成立を、シンポジウムの中で、中野晃一さんは「クーデター」といいました。前田哲男さんもそのリポートの中で、「クーデター」との言葉で表現しています。クーデターと言う言葉は、広辞苑を引くと「非合法的手段に訴えて政権を奪うこと」と説明されています。つまり、この戦争法は民主的手続きを経ず、非合法的に成立したということ、市民社会のほとんどがそう感じたのだと思います。

中野さんは、安全保障は憲法の範囲内で行うべきであり、安倍首相のいう積極的平和主義は、決して日本社会の安全を保障しないと述べています。軍事力に頼むことで安全保障が成立するというのは幻想に過ぎない。そのことは、2001年の9月11日の同時多発テロが証明しています。パリ時間13日夜、私たちが今大会の開会を迎えるという朝に、サッカーやコンサートを楽しむパリの市民に、爆弾と銃撃の嵐が襲い、132人が死亡したという衝撃的な事件が発生しました。犠牲になられたパリの市民の冥福をお祈りいたします。平和を求める私たちは、イスラム国の暴挙を許すことはできません。しかし、欧米諸国のこれまでのあり方にも大きな問題があります。

米国による対テロ戦争、イラク戦争やアフガン戦争によって、決して平和を作り出すことはできませんでした。力で強いものが弱いものをねじ伏せる、そのことで自発的な服従を強いる。しかし、人間の尊厳は、決してそのような事態を許すことはありません。「武力で平和はつくれない」と、日本の市民社会は常にそのことを意識してきたのです。

平和憲法の危機であるとする市民社会の意識と感覚は、「戦争させない・9条壊すな総がかり行動実行員会」の運動に結実し、国会周辺で12万人もの人々が「戦争法」反対の声を上げました。

人々がつながることで、新しい市民社会の動きができています。鎌田慧さんはその力を、大江健三郎さんの「侮辱」と言う言葉を引いて、憲法前文の「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることの決意」と「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようとした決意」と、二つの大切な日本社会の決意を、安倍首相が勝手に潰したことを、日本社会への「侮辱」と表現し、そのことが市民の大きな動きにつながったとの認識を示しました。

中野さんは、この動きを、自分と同じではない人が、同じ目的に向かう、それぞれの他者性を認めながらの運動であり、「ここに来ると同じ思いを持っている人がいる」という安心感の中での運動だと分析しています。

長野の戦争をさせない1000人委員会の運動に関わる喜多英之さんの報告にも、多様性を認めるという運動の姿勢、鎌田さんが言う柔軟な運動の姿がありました。それぞれがそれぞれの違いを認め合うこと、その基本的姿勢は平和への大切な力であり、民主主義の基本なのです。

私たちみんなで立ち上げた、そして、多くの人が全国で参加してくれている「戦争をさせない1000人委員会」。中野さんは、総がかり行動が「敷き布団」、それがあったから、多くの掛け布団、多くの組織が生まれたと表現されました。暖かい社会をつくっていくために、私たちは、その敷き布団をもっともっと厚くしていきましょう。

基調提案で触れなくてはならない大きな課題がありました。時間の関係で省いたことを私は悔いています。第1分科会そしてひろばで、今日の特別報告で触れられた沖縄の基地問題、米海兵隊普天間基地の代替としての辺野古新基地建設問題です。
そこには、法の設置目的をねじ曲げて恣意的に運用した行政不服審査や地元市民を分断しようとする行政区への補助金の交付など、翁長知事の埋め立て申請の取り消しを79%の市民が支持している沖縄を無視した、安倍政権の実態が報告されています。安倍政権は、翁長知事の主張を無視し、強引に基地建設工事を続行しています。

私はこれらの報告を聞きながら、日本には二つの植民地政策が存在すると感じました。日本政府による沖縄の植民地化、そして米国による日本の植民地化です。私たちは、市民社会の主体的な判断として、これらの植民地政策に立ち向かわなくてはなりません。

この青森にも、三沢基地が存在します。防衛省が次期主力戦闘機に決定しているF35が配備される予定ともいわれています。この戦闘機も、あの危険なオスプレイ同様に、開発段階で多くの問題が発生し、開発の遅れと巨額な費用が大きな批判を生んでいます。米国、そしてそれに追随する安倍政権の強引な基地政策をこれ以上許すことはできません。

シンポジウムで、憲法学者の清水政彦さんは、「テロの背景には、世界の貧困問題がある。日本国憲法がいう、「専制と隷従、圧迫と偏狭を永遠に除去し、そして恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」という理想を、世界で実現しなくてはならないと指摘しています。

日本社会では、子どもの貧困が、社会問題化しています。神奈川の県立高校、学力不足の子どもたち受け入れる「チャレンジスクール」の校長である中野和己さんからの報告は、きわめてきびしい子どもたちの置かれている現実、そして、そのことを放置する政府や教育委員会のあり方を、子どもたちに寄り添ってきた立場から話されました。

学力不足の子どもたちの多くが年収220万円以下の貧困家庭、また生活保護家庭に育ち、家庭内に何らかのトラブルを抱えながら、アルバイトを余儀なくされる現状が語られ、その結果としての基礎学力不足、大人への不信感、人間関係を維持することへの脆弱さなどを持ってることを明らかにし、貧困に落ち込んだ子どもたちの、その中から抜け出すことがいかに困難かが語られました。ボランティアやNGO等を巻き込んだ学習支援やキャリア支援などを受けながらの教育実践、学校だけではどうにもならない現実があります。

同じく第4分科会の荒巻さんのレポートは、「紛争や災害が多発している今日の国際状況や東日本大震災・福島原発事故は、『全世界の国民』の『ひとしく恐怖と欠乏から免がれ、平和のうちに生存する権利』の実現に緊急かつ真摯に向き合うことを求めています」と結んでいます。

平和学の権威、ヨハン・ガルトゥング博士が言うところの積極的平和は、まさにそのことを実現していこうとするとりくみに他なりません。

「子どもの貧困」と題する朝日新聞の特集記事には、多くの市民の声が載せられています。
「離婚した友人が2人の子どもを抱え、一気に貧困化しました」「本当に困っていても自己責任論が強く、親はなかなか相談しずらい」との声があります。
8年前に離婚した3人の子どもの母親は、「ごめんねと思うのは一緒にいてあげられる時間が少ないことです。次女は『休んだらお給料が減るから来なくていいよ』とよく言っていました」「精神的に追い込まれ、働く意欲がわかなかったり、周りの目が気になって援助の申請ができなかったりする人の気持ち、よく分かります。だから、『申請してこないなら自己責任』と門切り型に切り捨てるのはどうか辞めて欲しい」と訴えています。

国の論理による、国家の「安全保障」のためには、5兆円を超える防衛費を計上しながら、憲法に規定された「生存権」の保障には、全く目を向けていない政府の姿勢が、市民一人ひとりの声からも浮かび上がってきます。

今年度のノーベル文学賞は、ベラルーシの作家スベトラーナ・アレクシェービッチさんに授与されました。「戦争は女の顔をしていない」「ボタン穴から見た戦争」そして有名な「チェルノブイリの祈り」などの著書のあるノンフィクション作家です。
東京大学の沼野充義教授は、朝日新聞の書評の中で「あくまでも被災者に寄り添い、ひたすら人々の気持ちを再現しようと努める」と彼女の作品を評し、そのことが「『国家の論理』を振りかざす権力に対する、しなやかな抵抗になるのは当然のことだろうと」書き、そして、「戦争と死についてきちんと書くことこそが、平和と生の最も雄弁な擁護になるのだ」と結んでいます。

私たちは、2011年の3月11日、あの東北地方太平洋沿岸を襲った巨大地震と原発事故以降、「一人ひとりの『いのち』に寄り添う政治と社会」を求めて、とりくみをすすめてきました。

ここ青森は、核燃料サイクル計画の中心を担う「六ヶ所再処理工場施設」が存在します。このことは、大会の中心課題として議論されました。福井県の敦賀市の「高速増殖炉もんじゅ」の計画を含めて、全く先の見えない計画がなぜ続いていくのか、原子力資料情報室の伴秀幸さんの報告に、「立地自治体などが、核燃マネー依存から抜け出せない」「一部の政治家や学者の既得権益の維持」「莫大な建設投資」などの言葉があります。そこには、私たち市民社会に寄り添う政治の姿勢は、全く見えてきません。

来年の5月3日の憲法集会も、「いのち」の問題を基本に据えて、開催する予定です。

「明日を決めるのは私たち!」これが、今の日本を変えるキーワードです。

私たちの手で、私たちの未来を変える!

また一年、それぞれの場所で、それぞれの立場で、頑張ることの決意を確認し合い、そして、本大会が、青森の皆さまを中心に、多くの仲間の力で、盛会に終わることができましたことに感謝し、「まとめ」といたします。

 

2015年11月15日

憲法理念の実現をめざす第52回大会(護憲大会)分科会・ひろば報告

第1分科会「非核・平和・安全保障」

参加数=228名

問題提起・助言者    前田哲男(ジャーナリスト)
  大城   悟(沖縄平和運動センター事務局長)

質疑&回答(要旨)

  • 国は防衛費を増やしている。動向を注視しなければならないが、助言者としての見解は?
    回答:
       民主党政権時代の防衛費は、微減ではあるが減少傾向となっていた。
       安倍内閣に代わり増加傾向に転じている。これは、日米安保条約の拡大を考慮してではないか。日本の軍拡はとどまることを知らない。
     
  • 中国の防衛費が拡大しているが、これをどう見るか?
    回答:
       中国が増額しているから日本も増やす考えが、今の安倍政権。
       中国は、軍備を外洋化しているが、これは平和につながらない。しかし、この政策は、日米のガイドライン(安保条約)強化が挑発となり、対抗しようとしているのではないか。
     
  • 沖縄の辺野古埋立では、賛成派の3地区に補助金を出しているが、沖縄全土に影響していくのではないか?
    回答:
       原発問題も沖縄基地問題も根っこは一緒。反対派、賛成派と様々にあるが、私たちが平和を求めることに変わりはない。

    討論(要旨)

    1. 日米ガイドラインの問題で横須賀の報告。
         ヘリ空母が、自衛隊のイージス艦の先導が入港してきた。追加配備をすると聞いた。目的は、ミサイルの精度強化や作戦の充実という。日本が共同行動を図っているのは協同作戦が進んでいることの表れか。
         「思いやり予算が本年度切れるが、今後どうなるか注視する。
       
    2. 平和や安保条約を考えたときに、平和運動や労組に関わりのない人たちの理解や、関心はどこまであるのか不安感がある。
         もっとわかりやすく説明をしなければ世論は流されてしまうのではないか。大衆行動につなげるためにどうすればよいかアドバイスが欲しい。
       
    3. 公職選挙法の改正で選挙権が18歳に引き下げられ、この動向が不安である。ニュースや新聞・マスコミ報道の一部だけを捉えると、現政権の取り組みが良いものだと鵜呑みしている感じがする。彼らにはどのように平和を伝えればよいのか・・・
       
    4. 日本の平和や安全保障は危機的な状況にある。戦争準備法とも言える成立した法律を施行させないことが重要。このことは、9条を壊していくし他の条項にも影響する。宮城では食い止めるために、準備委員会を立ち上げる。全国でも必要だと考える。
       
    5. 広島から報告する。昭和50年後半までは原爆について学校教育として行っていた。また、8月6日は登校日としていた。これらの取り組みが少なくなっていくのは残念。今後もしっかり伝えていかなければならない。
       

    まとめ・・(要旨)

    大城:       国民の無関心さに危惧を感じるとの話があったが、8月の国会前行動を見たとき、国民の危機意識が大衆行動となっていると感じた。
       子ども(学校)教育が、政府の考えを大きく関与している中で、選挙権が引き下げられたのは不安。教組の皆さんに頑張っていただきたい。
    前田:       米軍基地施設が完成したのちに生まれた人にとっては、異物ではなく自然のものとなって受け入れられている。平和についても同様だろう。
       平和の問題を学ぶことは大切であり、後世に語り継ぐ責務がある。

    第2分科会「地球環境-脱原発に向けて」

       第2分科会は、はじめに鎌田慧さんより挨拶と、国による核燃料サイクルと原子力政策の問題点について提起を受けた。その中で1985年「むつ小川原開発」の一部として核燃料サイクル計画が盛り込まれたが、それ以前から六ケ所は核燃料サイクルの拠点として狙われていたことなどに触れ、「もんじゅの命運は尽きようとしている」と再処理工場を止める運動をしようと呼びかけられた。
       続いて浅石さんより青森県内の原子力施設や再処理の問題点などが詳しく報告され、伴さんからは「六ケ所再処理を止めるのは今」として既に破綻が明らかな核燃料サイクルが何故止まらないのか、そのロジックや、原発依存のエネルギー政策への批判なども交えて報告された。
       会場からは最終処分の問題や石油備蓄基地と隣り合わせの再処理工場の危険性などについての質問があり、福島県からの参加者は「原子力政策の失敗を自治体や市民に押し付ける国のやり方に怒りを覚える」、宮城県からは村井宮城県知事が「市町村長の総意」として加美町が最終処分場の候補とされたことに対して「なぜ加美町なのか具体的な説明は一切ない、絶対に認められない」との発言があった。また、福井県からは運転差し止めの仮処分が出たことを受け、「もんじゅを廃炉に、そして高浜3、4号機の再稼動をさせない。」との決意とともに12月の福井の集会への参加アピールがあった。
       最後に座長と運営委員より、「原発と核燃料サイクルなど日本の原子力政策は多くの人々の犠牲の上に成り立っている。平和や人権、環境保護の観点からも原子力政策を改めてさせる必要がある。引き続き憲法を守る取り組みとともに取り組んでいこう」とまとめて分科会を終了した。

    第3分科会「歴史認識と戦後補償」

       第3分科会は「歴史認識と戦後補償」というテーマで、安倍首相のゆがんだ歴史観が平和と信頼と友好を作り出すための障害になっているなかで、アジア諸国との和解のために何が今必要かを学んだ。
       はじめに、琉球大学名誉教授の高嶋伸欣さんから「戦後70年、アジア諸国との和解のために」として、高嶋さんのこれまでの教育現場で実際に使ったものをはじめとする多くの資料を参照しながら提起を受けた。
       今年、「戦後70年談話」いわゆる安倍談話が発表されたが、安倍首相の歴史認識のひどさもあり、「70年談話」には多くの問題があるが、特に2点に触れたい。
       1点目は、「あの戦争に何らかかわりのない世代の子どもたちに謝罪をし続ける宿命を背負わせてはなりません」としていること。日本軍は戦時中、大量の米をベトナムから日本に送り日本人の餓死者を防ぎ防ぎ、命のリレーを次世代へつないだが、ベトナムでは100万人以上の餓死者を出している。このことでも、「かかわりのない世代」など有り得ず、関係ないでは済まされない。
       2点目は、日本が「アジアで独立を守り抜いた」とし、「日露戦争の勝利はアジアの人々を勇気づけた」としている点である。インド大反乱や太平天国の乱でアジア民衆の抵抗が大きかったため列国の対日政策が変わったため日本の独立が達成されたものであり、日露戦争の勝利は、少数の侵略的帝国主義的諸国に日本が加わったに過ぎなかったのである。
       「70年談話」は保守派からも批判されている。特に日本軍のアジア独立貢献論について、有識者会議の報告でアジア太平洋戦争が「アジア解放を目的にしたとは言えない」とされ、安倍首相は挫折し談話には盛り込まれなかった。
       しかし、安倍政権の歴史修正主義は確実に教科書検定制度を通じて教科書に浸透しつつある。新版中学校歴史教科書の記述では、関東大震災の朝鮮人虐殺については、「被害者は数千人」から「数に通説なし」、アイヌ差別の旧土人保護法については、土地を「取り上げ」から「あたえ」に、沖縄戦の住民虐殺では、スパイ扱いし「殺害」から「処罰」などに教科書検定で記述が変更されている。
       われわれは、安倍歴史観のおそまつさを広く共有し、発信していこうと問題提起がされた。

       その後の質疑・討論では、次のような意見が出された。

    • 自治体での検定教科書の展示会での閲覧が、形骸化している。安倍政権を監視する場を追求する必要があるのはないか。また、反動化する教育に対して判断する力を持つことが必要で、「おかしいぞ」と言っていくことが必要だ。

         一般の人の意見を聞く機会であるはずの展示会で、教科書の内容について意見を受け付けない自治体があるなど問題は多い。意見を押し上げていく努力が求められる。
       

    • 福沢諭吉について歴史修正主義をつながるとしているという意見があるなど評価が分かれるが見解を。

         福沢諭吉は小学校6年生の教科書にも出てくるが、有名な「学問のすすめ」では「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」の後に「~と言えり」と書かれている。これは、「私はそう思わないが、欧米ではそう言われている」と読むことができる。福沢諭吉は啓蒙思想家だとしての思い込みがあるのではないか。侵略等を奨励したことも忘れてはならないのではないか。
       

    • 18歳選挙権へむけて教育現場では困惑している。選挙制度の学習はできても、現場教員には「自分の意見は示してはならない」との指導がされている。どこまで教えていくべきか迷いがある。

         客観的とは何か?例えば地理で使用する地図も、さまざまな情報の何を記載するかは編集者が取捨選択した情報の価値判断になる。受け取る側に100%客観的なものはなく、憲法・民主主義の到達点は人権が制限されたりしている弱者の視点に立つか否かになる。誰でも弱者を追い込む側になることがあるということを学んでいく判断力をつける学習が必要では。教師が「私はこれが正しいと思う」と言ってはならない。一人ではなくみんなで考え、討論して生徒に判断させることだと思う。
       

       また、参加者から感想として、地元でアジア連帯(日朝・日中)の交流活動に取り組むなかで、日本を含めたアジア各国のそれぞれの人たちがどのような戦後を生きてきたのかを考え、地域・学校でお互いを受け入れ共有化していくことが歴史認識の相互理解につながっていると感じているとの実践の報告もされました。
       最後に、安倍首相の歴史観は権力者からの視線であり、私たちは庶民から見た視点の歴史観を持たなければならない。安倍歴史修正主義では真のアジア諸国との和解はあり得ない。戦後補償を言うと金銭面がクローズアップされがちだが、長い友好関係は侵略の歴史を直視していくことで築かれる。このことが世界に日本のイメージを高める、友好関係を拡げることになり、真の「愛国的」な行動ではないか?歴史の学習不足の安倍政権下で、日本人が肩身の狭い思いをしないよう、安倍首相は「歴史に口出しするな」という広範な世論を作っていくことが重要と全体で確認し、分科会を閉じた。

    第4分科会「教育と子どもの権利」

       最初に、神奈川県立田奈高校の中野和己校長から高校現場における子どもの貧困の実態とその克服にむけたとりくみについて話を受けました。
       田奈高校は、神奈川県より「学習意欲を高める全日制の新たな学校のしくみづくり」(クリエイティブスクール)の指定を3校の1校である。全日制の新たな学校のしくみづくりとして、中学までに、持っている力を必ずしも十分に発揮しきれなかった生徒を積極的に受け入れ、社会で必要な実践力を育む学校とされている。入学にあたって、入試を行わず、中学での成績も考慮せずに面接やグループ討論を基本に選考していることが特徴である。
       生徒の実態は、九九を半分が言えない生徒が半数いるなど学力上の困難、貧困や家庭の崩壊、人間関係を構築するのが困難で不登校や退学してしまうなどの課題がある。
       そのため田奈高校では負の連鎖を断ち切ることを使命として3つの支援を行っている。一つ目は、大学生や大学院生による学習支援ボランティアを活用した「田奈ゼミ」の開講、二つ目は、生徒の困難な実態を把握するため教育相談担当者(コーディネーター)を複数配置し、スクールカウンセラーや外部機関等と連携した組織的な教育相談体制の構築、労働局やハローワークなど外部との連携により資格取得や就職支援のためのキャリア支援センターの設置である。
       田奈高校に通っている生徒は、非常に明るく高校生活を楽しんでいる。また、卒業生や中退生も頻繁に高校に顔を出している。教職員の負担は大きく、外部の人材に頼っている現状を持続させることは困難と考えているが、50年後の日本のために寄与していきたい。

       次に、山梨学院大学法科大学院教授の荒牧重人さんから子どもの権利に関しての問題提起を受けました。 田奈高校の中野校長は、支援と話された。教育関係者は、指導と言いたがるが、支援は使わない傾向にある。田奈高校の試みは、教育と福祉との連携の試みである。日本の現状は、行政が縦割りで、教育行政が所管する学齢期の福祉対策による下支えがなく、学校が孤軍奮闘している。田奈高校のとりくみは、この状況を変える挑戦である。その一つのモデルケースとして私たちは、ユニセフが提唱者している「子どもに優しいまちづくり」にとりくんでいる。子どもは宝という考えから、社会の一員としての子どもの力を借りて社会を立て直すことが必要である。
       権力者の統治の手段は、軍事・情報・教育を手中に収めることである。教育は国民の内面を支配することにつながり、安倍政権は教育への介入を強めている。すでに大学は、独法化の時に骨抜きにされ、文科省の方針に従うようにされている。道徳の教科化、教科書検定基準の改悪など矢継ぎ早に教育改革をすすめている。安倍教育改革へのオルターナティブとして、今までの教育実践の成果と効果を総括・確認して共有するとりくみが必要である。また人権という観点から教育を組み直したい。国際人権規約には、教育に関する条項が詳細に定められている。また、過去には教育が国家のための国民を育成するという役割を担ったことへの反省から、他の国際規約とは違い教育だけが、その役割・目的が明記された。
       親、家庭、教師、地域がダメという、ダメダメ論から子どもにやさしい町をつくることが大事。また、子どもの権利だけが保障されることはない。教職員が人間として、専門職として、教育労働者として保障されることが重要となる。また、「子育て支援」とは親や家庭を支援する政策であるが、子どもを直接支援する「子ども支援」が両輪となって行われなければならない。

       その後、会場からの質疑応答が行われ、分科会は終了しました。

    第5分科会「人権確立」

    参加者-61人

       マイナンバー制度について
       個人番号は、取り消せないがカードは拒否できるのか?
       申請は個人の意思に基づく。しかし、会社によっては、就業規則を変更して申請させる動きがある。労働組合の運動が必要性。役所、自治体の現場が大変。カードの発行をしない運動を展開する必要がある。
       個人番号を記載する場面では、事業者に理由と目的を明示させる。在日外国人、性同一性障がいなどで戸籍上とはことなる人達がおり、人権侵害が発生する可能性も。
       DV被害の人達への影響も大きいのでは?
       運動を展開して、被害者の人には、対応すると総務省が回答。しかし、25万人の被害者がおり、現実的にはもれがある。政府の対応は、人権感覚がない。
       個人番号の写真は、認証システムは子どもから老人に変わっても認証するのか?
       15歳以下の子どもは、親が変わりに申請。認証システムは、優秀で、わかる。
       12月1日に、マイナンバー訴訟を起こす準備をしている、是非、ご協力を。
       事前登録型制度の根拠は?三つの制度とは?
       日本中で、不正に個人情報が取得されている。
       事前登録型は、本人が申請、被害告知は不正取得されても知らせる義務自治体にはないため、被害があった時知らせる制度。全市民対象(委任状)は、委任状を偽造して不正取得した事件があった。委任した人に知らせる制度。
       身元調査は、当然という意識の背景は?東北地方には、制度はないが、原因は?
       身元調査の意識が増えたのではなく、以前から根強い。
       韓国では、2億人以上の個人情報が漏洩、多くは、個人情報にアクセスできる従事者。必ず、日本でも漏洩する可能性が高い。マイナンバーと戸籍の問題を深めていく事が必要性ある。
       秘密保護法で、適正評価の実態が不明、情報があれば教えて。特定秘密を扱うことに、適正かどうかを判断する基準。一般的には、国家公務員。本人や家族も調べられる。

    問題提起者・助言者
       マイナンバーは、国が国民を管理するために悪用される。本人通知も本人の知らない間に個人情報が取られ、結婚差別などの人権侵害に悪用されている。マイナンバーが導入されると必ず盗まれ、悪用される。様々な国で、番号法が導入されているが限定的に活用されている。これは、政治のあり方が問われている事で、今の安倍政権は、民意を無視し、ごまかし、情報を公開しない、こういう政治を許してはいけない。

    第6分科会「地方の自立・市民政治」

       2015年11月15日、ラ・プラス青い森「メープル」において、第6分科会「地方の自立・市民政治」が開催され、およそ100名が参加した。
       はじめに東京自治研センター特別研究員の伊藤久雄さんから「福島と沖縄から考える地方の自立・市民政治」と題した問題提起を受けた。まず、福島の現状について、楢葉町の帰還者がまだ4%であることや、政府の「特定避難勧奨地点」解除の問題や精神的損害賠償の終了など、まさに「原発事故はなかったことにする」という政府の姿勢について報告があった。このなかで、用地買収に同意した人が9月末時点で9人であったことが報告された。伊藤さんはこれを「カネで解決」しようとする政府の方針であるとし、政府の交付金は原発被災者には渡らないことや、県や町が何に使うか不明であることなどを挙げ、政府の手法の誤りを指摘した。さらに福島の状況は、住民と、町・県・国との意識のはなはだしい乖離があることが根本にあり、このまま事態が推移すれば県内の汚染土は行き場を失い、県内の市町村の対立や、住民同士の対立を生じる危険性があることを指摘した。
       続いて、沖縄の現状について、辺野古移設をめぐる国と沖縄県との対立にしぼって報告がされた。沖縄県の翁長知事は普天間基地の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消したが、これに対し国がとった手法が「私人」として行政不服審査法を使ったことは許されないとして、本来国は「国地方係争処理委員会」で争うべきであったと指摘した。一方で県側が「国地方係争処理委員会」に審査を申し出たことを高く評価し、地方自治の観点からも、きわめて意義深いものである」と述べた。
       以上を踏まえ市民政治の確立について、翁長知事の判断の背景にあるのは、各種選挙で示した沖縄県民の「民意」であることを指摘。一方、福島県において昨年10月の知事選挙において、自民党による知事候補おろしがあり、民主党の候補者に自公が相乗りしたこと、また、反原発の候補者も2人となったことにより、福島の住民の民意が分散されてしまったことが指摘された。あわせて、各種選挙で低投票率や無投票が増加している状態では、市民政治は確立できないとの問題提起があった。今後は、市民の政治的関心を高めるために、「一つの自治体全域にトータルに関心を持ち政策提案できる活動」が重要であることが提起され、来年の参院選に向けては、そのような地域の力を結集して、自公による金のバラマキと争点隠しに対処できるよう、野党が結束して争点を明確にすることが重要であるとの課題提起がされた。
       つづいて、自治労沖縄県本部の平良誠さんから、沖縄の現状についての報告を受けた。平良さんは沖縄の地元紙である琉球新報・沖縄タイムスの記事を資料として示し、ゲート前における500人の抗議の緊迫した状況が報告された。その上で、国が代執行を目論んでいることについて強く批判、地方分権の時代において決して許されないことであると述べた。また、アメリカの総領事が、辺野古移設に反対する沖縄の民意について「小さな問題にすぎない」と発言したことに強い憤りを示した。
       こののち議論に入り、「多様な市民の主張をとりまとめていくために、どのような方法があるか」「自治体の財政力が厳しい中で、どのように市民自治をつくっていけばよいか」などの質問があり、電源立地交付金の問題や、被災地での住宅の課題などが報告された。また、福島からは「目にみえない放射性汚染」と闘うむずかしさが報告され、それでも今後もがんばっていく、と力強い決意が示された。
       また、沖縄の一行政区に国が補助金を出すという、法的根拠のなんらない行為に対する批判がなされた。
       以上をうけ、最後のまとめとして、「安倍政権は憲法違反の戦争法を私たちに押しつけ、沖縄県に対しても代執行という強権的な手段を発動しようとしている。これに対抗するには沖縄のように地域から陣形をつくり、市民自治を確立して民意をまとめあげていくしかない。来年の参議院選挙に向け、それぞれが今日の議論を持ちかえり、地域・職場から、運動をつくっていこう」と総括し、分科会を終了した。

    第7分科会「憲法」

    第7分科会(憲法とは何か、立憲主義とは何か ~なぜ登場し、何のためにあるのか)

    【清水雅彦さん講演概要】

    1 憲法とは何か
       今日本社会において日本国憲法が生かされるているか。例えば、労働組合活動が憲法18条で保障されているが組織率は17.5%。憲法が実践されていないことが如実に表あれている。いろんな権利が憲法で保障されているのに認識していない人が多い。
       憲法の誕生はヨーロッパにおける市民革命における副産物。階級がなかった原始共産制社会から奴隷制社会、封建制社会と移行していくが、封建制社会は生まれた時から階級が決まっていて差別や国王がら弾圧されるなど理不尽な社会。国家が悪さをしてきたので近代市民革命により法の支配(憲法)に代わってきた。国家を縛るために憲法が生まれた。
       近代憲法は、国家からの自由(人身の自由・経済的自由・精神的自由)を保障したが、資本主義社会の中で国家が労使間に介入できないため、弱い労働者との格差が拡大し、資本家が労働者革命を防ぐため妥協してワイマール憲法(社会権、生存権、教育の権利、労働基本権)つくった。
       日本は、第二次世界大戦を経て日本国憲法をつくり生まれ変わった。近代立憲主義を引き継いだ内容と同時に20世紀の憲法として現代憲法的な内容が盛り込まれた。
       私は日本国憲法をすべて肯定するものでなく、将来的には「改憲」の立場にある。第1章(天皇)は全部削除すべき。天皇制は封建制の遺物。天皇制は民主主義と法のもとの平等に反するもの。世界的にも君主制から民主制に移行しており、将来的に日本も改憲すべきだが、今の政治勢力では到底無理。また、悪用される危険が大なので、今は徹底的に護憲を貫くべき。

    2 憲法の基本概念
       憲法は国家権力を縛るもの。その憲法を守るため、憲法の最高法規制の宣言が98条にある。宣言だけでなく、81条(裁判所)で担保している。また、公務員の憲法尊重擁護義務が99条にあり、そういう意味では石原新太郎元都知事や安倍首相は99条違反に問われなけばならない。96条(憲法改正)を安倍首相は国会議員2分の1に改正したいとしているが、硬性憲法の意味や意義を知らない議論だ。違憲審査制(81条)は、一時の一般庶民の感情でものが動く場合があり、それを防ぐための是正措置としてアメリカではじまりヨーロパでも導入していった。
       このようにいろんな形で憲法を守ろうしている。憲法改正の限界説の根拠として、「人類普遍の原理」(全文1段)、基本的人権の永久の不可侵性(11条、97条)、改正手続、基本原理(国民主権、基本的人権の尊重、平和主義)があるが、これは、これまでの世界の多くの人たちの闘いの成果の内に日本国憲法がある。決して変えてはならない将来に引き継ぐ人類普遍のもの。96条を変えれば何でも出来ると考える人がいるが、変えていけない部分がり、憲法改正の限界説だ。
       「法事主義」は「悪法も法なり」で必ず守らなかければならいもの。「法の支配」は、「法は正義にかなっていなけらばならない。悪法は無効にすべき。時には破るべき」との考え方。日本国民は、法事主義的な人が多いが、この法律は正しいのか、守るべきなのかを考え判断することが必要。残念がなら数の力で悪法が出来ている。裁判所も保守的で違憲の判断をやらない。市民は悪法を時には不服従とて時にはやぶってもいいと考える。例えば国旗・国歌法は国民主権に反するので私はやぶってもいいと考える。憲法81で「法の支配」に変わった。教育の場や市民生活の中でも「法の支配」的考え方を広める必要がある。戦争法も憲法違反の悪法。自衛隊、指定公共機関、公務員など抵抗して欲しい。
       橋本大阪市長や安倍政権的な民主主義は、単純多数決主義だが 現代立憲主義は多数派の暴走を阻止することも目的にしている。多数派の暴走を食い止めるため81条で違憲審査権があり、現代立憲主義の考え方を広めていく必要がある。

    3 終わりに
       自民党の改憲案は復古主義的改憲論復活と新自由主義的改憲論であり危険。まだまだ憲法の価値感や知識が市民に根付いておらず、また、使えていない。平和フォーラムに結集する皆さんが、職場、地域で憲法学習を積み上げて、特に第3章の国民の権利を広めていくこと。自民党政権の中で憲法理念が生かされていないので、改めて憲法理念を徹底的に追求していくことが重要。

    4 質問・意見
       講演のあと、7名の参加者から、平和活動、憲法を守る取り組み、教育現場などでの運動の広め方などについてい、意見・質問が出され議論を深め、憲法学習の輪を広めていくことを意思統一し終了した。

    ひろば1「男女共同参画(女性と人権)」

       男女共同参画の実践と教育、女性の自立を支援する活動を続けている佐藤惠子さん(NPOウイメンズネット青森理事長、元青森保健大学教授)を講師に「女性の人権と憲法~戦争への達を繰り返さないために~」と題した講演が行われ、、107人(うち男性19人)が参加した。佐藤さんの講演要皆は、以下の通り。
       結婚後、子育てが辛く育児ノイローゼになり、夫との葛藤など悩みもがいていた。その時出会ったのが、女性学だった。女性問題は「人権問題」と気づき、その後大学で教鞭をとり、自身の自立と社会での実現をめざした。女性の人権とは個人として尊重され、自分の意志で自分らしく生きること。日本では多くの女性に「生きがたさ」がある。
       女性は職業を通して自立して生きていくことが未だに認められず、労働権が侵害されている。経済力が剥がされる一方で、家事・育児・介護などのケア役割が押し付けられ、仕事や自分の時間、個としての自分がなくなる。それは役割分業の押しつけで、自分の意志でそうなるのではない。 憲法24条には「家族生活における個人の尊厳と両性の本質的平等」とある。
       しかし、夫は仕事で自己実現しているのに私は全部(名前も仕事も)失った。ケア役割が必要なら男女がともに担うべきとして、夫と議論する中から分担するようになった。
       日本国憲法によって初めて女性の人権保障が明文化された。この法律を作る際に、ベアテ・シロタ・ゴードンさんが「男女平等条項」を起草した功績はとても大きい。戦前の婚姻は夫と妻は主従関係とされ、女性は家制度の下で無権利状態だった。明治政府は武士の家制度にならい、国が国民をコントロールする手段として「家制度」を使った。ベアテさんがこれを変えようとした熱い思いが結実したのが憲法24条。そのおかげで女性の人権はここまで来た。
       男女共同参画社会基本法が1999年に制定されたが、憲法理念の実現を目指すこの法律はとても重要。たとえ基本法が政治的妥協の産物であっても、私たちがより良いものに実現するよう働きかけるべき。「全ての人がかけがえのない個人として尊重される社会」をめざすことは憲法11、13、14条の実現を図ることとなる。この基本法は日本の男性の生き方、働き方をも変え、男性の家庭参画という底辺を変える可能性を持つ。
       平和が人権の基盤。どのような理由があろうとも戦争は殺しあいであり、すべての人々の人権を踏みにじる絶対悪である。パリでのISのテロを見るまでもなく、一度始めたら止められない。戦争させない、しない勇気を主権者である国民が強力に示すべきだ。
       憲法を現実に合わせて変えるのではなく、憲法をよりどころとして現実を変えていくことが大事。環境権にしても、人権条項に照らせば全部法律でカバーできる。
       (中国脅威論や領土問題などの)挑発に乗ってはいけない。「非戦」を誓った現憲法がいかに大切か、憲法が示す社会を実現するために活動することだ。平和憲法に基づいた女性の人権確立こそが、これからの私たちの進む道だ。

       質疑応答では、ひろばに参加していた福島みずほ参議院議員から自民党憲法草案などの問題点に関する指摘や、国会報告があった。
       また、自治労青森県本部の女性部から「侵略を心に刻み語る平和の旅」の参加報告が行われた。「南京大虐殺記念館」訪問で、91歳になる南京大虐殺の生存者の女性からの証言を聞き、日本兵が強姦を自慢話にしていたこと、首を落とす競争をしていたなどの記録もあり、「被害者の数の問題ではなく、何の罪もない人々を殺し、非人間的な行為が蔓延していたことこそ問題だ」と話した。さらに「教育こそ平和の武器だ。私たちは見てきたことを伝え、憲法を学ばなければならないと思う」と熱く決意を語った。
       会場にはI女性会議十和田支部が作成した「女性と戦争」の歴史がパネルで展示され、女性が戦争に協力させられ、犠牲となった歴史が解説されていた。内容を見ると今の安倍政権の姿と重なり、この国が危険な分岐点に来ていることを教えていた。

    ひろば2「辺野古新基地建設反対・沖縄基地問題交流会」

       ひろば「辺野古新基地建設反対・沖縄基地問題交流」は、前田哲男さん、大城悟さんを発題者として、「全国基地問題ネットワーク」の運営で行なわれ、約150人が参加した。司会は神奈川平和運動センター事務局長の小原慎一さん。各地の取り組みや課題について活発に報告し合った。
       前田さんは「平時即有事」をキーワードに、「切れ目のない」安保協力をうたった新ガイドライン(防衛協力指針)合意および戦争法制定が地域や自治体に及ぼす影響について問題提起した。
       前田さんは、新指針には「平時からの協力措置」の1項目として「施設の使用」が盛り込まれ、「施設・区域の共同使用を強化」「適切な場合に、民間の空港および港湾を含む施設の実地調査の実施に当たって協力」とされていることに注意を求めると同時に、戦争法制定の一環として、有事法制の一部として作られた特定公共施設利用法、米軍行動関連措置法(米軍行動円滑化法)が改正され、その対象が米軍以外の他国軍隊、あるいは、集団的自衛権を行使する「存立危機事態」にまで拡大されたことを指摘。
       米軍と自衛隊相互の基地共同使用について「基地行政に目立った変化を与える可能性がある」としたのに加え、集団的自衛権行使に際して、港湾や飛行場などを管理する自治体や、医療、放送通信、交通運輸、エネルギー供給などに携わる「指定公共機関←正対して自衛隊や米軍などへの協力が義務づけられることに関して、「自治体が管理している施設にまでガイドラインや戦争法がズカズカ踏み込んでくる。それが戦争法の極めて危険な側面」と強調した。
       大城さんは「政府は法治国家とか民主主義という言葉を何度も口にするが、辺野古にはそういうものは一切ない。国はやりたい放題だ」と安倍政権を批判し、全国の仲間の支援を要請した。
       政府は辺野古新基地建設の理由として「普天間の危険性除去」を繰り返している。これに対し大城さんは、仲井真前知事の埋め立て承認について検証するため沖縄県が設置した第三者委員会が承認には法的瑕疵(かし)があると結論づけた理由の一つとして挙げた、「埋め立ての必要性が立証されていない」との見解に触れ、「なぜ普天間の危険性除去のため埋め立てが必要なのかとの問いに政府は回答できていない」と指摘。
       また、今後の闘いの展望について大城さんは「多くの県民を集めて(米軍キャンプ・シュワブの)ゲートを本当に封鎖する行動をつくっていきたい」と述べ、現地闘争体制の強化に意欲を示すとともに、現場の闘いを支える広範な陣型として「県民総がかり行動をあらためてつくり、基地建設をしっかり止めていかなければならない」と決意を新たにしていた。

2015年11月14日

憲法理念の実現をめざす第52回大会(護憲大会)開会総会  大会基調提案 藤本泰成事務局長

ただいま、ご紹介をいただきました、中央実行委員会の事務局長の藤本です。まずは、全国各地からお集まりいただきましたみなさまに対し、心から感謝を申し上げます。加えて、52回を数えます「憲法理念の実現をめざす全国大会」の開催を、快くお引き受けいただき、その労をおとりいただいております青森県平和労組会議の皆さまにも、心より感謝を申し上げます。

少しのお時間をいただき、大会基調の提案を行なわせていただきたいと思います。お手元に、基調をお配りしております。詳細は、そちらでお読み取りいただきたいと思います。時間の関係もありますので、基調全体に触れることはかないませんが、基本的な部分と私の思いも含めて、ご提案いたします。

アジア・太平洋戦争の敗戦から、70年を経過しました。1853年に旗艦サスケハナ号など4隻の米艦隊を率いてペリー提督が浦賀に来航して以来、先んじて近代社会を成立させた西欧諸国への憧憬を以て、近代資本主義社会の確立に日本は奔走しました。「脱亜入欧」の考え方の下、急速な近代化を進める日本は、その社会矛盾の解決を帝国主義的侵略に求め、台湾、朝鮮半島、南洋諸島などへの植民地支配と中国大陸への侵略戦争に明け暮れることとなりました。

明治維新から70年以上、私たちは戦争を実感する時代に在ったのです。結果、日本人310万、アジア全体で2000万とも言われる犠牲の上に、1945年8月15日、ポツダム宣言を受諾し無条件降伏を余儀なくされました。
戦争に倦んだ私たちの先輩は、不戦と民主主義の日本国憲法を、心のそこからわき上がる喜びとともに受け入れ、新しい日本社会のスタートを切ったのです。

日本国憲法は、日本人による戦争の被害を受けたアジア諸国への、日本人自身が選択した「約束」としての存在なのです。そして、その約束を将来にわたって守り続けることこそが日本人の責任なのです。

戦後70年を迎えた今年は、憲法持つ意味が大きく問われた年になりました。安倍政権は、多くの反対を押し切り、「集団的自衛権」の行使を基本にした「戦争法」を、去る9月19日未明に強行成立させました。日米ガイドラインの改定に示された米国の要求、国連の安全保障政策における「普通の国」にならんとする外務官僚の要求、そして憲法を改正し再軍備に道を開くとしてきた日本の保守政治の主張を実現するために、立憲主義・民主主義・法治主義さえないがしろに、日本の市民社会の絶対的反対を押し切った、政治の暴挙と言えるものです。そして、先に成立した「特定秘密保護法」と相俟って、日本社会を戦前の物言えぬ社会へと作り替えていくものです。

私たちは、1945年8月15日、あの敗戦の日を境にして、以前の70年と以後の70年を見つめ直さなくてはなりません。そして、自らの社会を選択しなくてはなりません。答えは明らかです。

米国は、自らが招いたイスラム国(IS)の暴挙に対する「有志連合」の一員として日本を位置づけています。世界各国で引き起こされてきた「自爆テロ」の対象として、日本が位置づけられたと言っても過言ではありません。
トルコやロシアの空爆参加、その後のロシア民間機の墜落など、中東情勢は混迷を極めています。日本の「戦争法」の成立が、米国とイスラム過激勢力との不毛な戦いに、日本が引きずり込まれる可能性を現実のものとしています。私たちは、「戦争法」の実働を許さず、その廃止を求めてとりくみをすすめなくてはなりません。自衛官を戦場に送ることなく、対話と協調をもとめ何事も平和的解決をめざす日本国憲法の理念を守らなければなりません。

安倍政権は、米海兵隊普天間基地の代替施設として、辺野古沖の新基地建設を、沖縄県民、沖縄県知事の反対を圧殺して、強引にすすめています。知事の公有水面埋め立て申請の承認取り消しには、本来の法の目的を逸脱して自らが自らに不服審査を請求する、反対する名護市を無視し法の根拠もなく辺野古の地元3行政区に対して直接に補助金の交付を行うとするなど、恥も外聞もない行動に出ています。辺野古新基地建設に反対し、基地交付金によらない行政のあり方を求めて来た名護市民の思いを踏みにじり、地元市民の感情をもてあそぶ、卑劣な政治手法を許してはなりません。

「戦争法」とそれに基づく自衛隊の世界展開を保障するために、2016年度の防衛費の概算要求額は、5兆911億円で、過去最大となってます。哨戒ヘリコプター17機で約1032億円、オスプレイ12機で約1321億円、最新鋭F35戦闘機6機で約1035億円、総計で2015年度予算を366億円上回るものです。
一方で、日本社会の貧困は深刻な事態となっています。相対的貧困率は16.3%、非正規労働者も全体の4割を超えました。母子家庭の平均年収は約181万円、相対的貧困と言われるのが二人世帯で平均年収177万円以下、子どもたちの6人に一人が、一人親の6割が相対的貧困に陥っています。しかし、安倍政権は2013年以来、3段階で生活保護基準引き下げを行って来ました。社会保障費を削減する中での、防衛費の拡大は、安倍政権の本質を象徴しています。

安倍政権の経済政策・アベノミクスは、急激な円安などによって、中小の多い輸入産業の衰退を、実質的賃下げを、正規労働者の縮減と非正規労働者の増大など、市民生活を直撃しています。
今回の、新三本の矢も、成長率3%を必要とする、経済界からも疑問の声があがる2020年国内総生産600兆円、保育料を実施的に引き上げておいての出生率1.8%、特養の入所基準を引き上げながらの介護離職ゼロなど、何の根拠もなく耳障りの良い数字をあげつらう、選挙目当て、支持率回復目当てに、市民社会を愚弄するものです。

バブル経済の崩壊以降、失われた10年とも20年とも言われる時代に、経済は低迷し1997年をピークに賃金は減少し、非正規雇用が増大してきました。社会の閉塞感は拡大し、排外主義や民族差別などによるヘイトスピーチの横行、ろうそく火災などに象徴される貧困の広がりや貧困故のネグレクトなどが社会問題化しています。そのような社会の変化に便乗し、利用しながら、国家主義的傾向を強める安倍政権の政治手法を、絶対に許すことはできません。

「戦争法」の強行採決には、反対が多数を占め、およそ8割近くの市民がが説明不足としましたが、法の成立以降、安倍内閣の支持率は40~45%へ回復しています。
「戦争法」反対の運動が、しかし、市民社会の思いをくみ取れていない現状にあることを真摯に省みなくてはなりません。市民社会の中に、戦争反対のとりくみへの冷めた感情や反発が存在しないか、そのことをしっかりと見据えることが重要な視点となると考えます。生活者の窮乏は深刻で、きわめてきびしい生活実態があります。

本年5月3日の憲法集会は、平和といのちと人権を!の下に、戦争・原発・貧困・差別を許さないと声を上げました。私たちの危機感はそこにあります。
沖縄で、福島で、そして日本中で、「いのち」を粗末に扱う、人間の尊厳を奪う政策が進んでいます。

日本の市民社会が、そのことに気づかないわけではありません。気づいていながらも、なお何かに期待しないではいられない現状に追い込まれているのだと思います。

来夏に予定される参議員選挙に向けて、野党一致して、それらの市民の思いに寄り添うことが求められています。

市民社会の寄り添わない政治は、市民社会を更なる悲劇に追い込むことでしょう。戦争と貧困は、社会の表裏であり、貧困が戦争を、戦争が貧困を生み出すことは明らかです。そして、その時、失われていくのは、市民のささやかな喜びであり、穏やかな生活であり、そして一人ひとりの「いのち」なのです。
戦前の70年、戦後の70年、私たちの選択肢は明らかなのです。

今日から3日間、真摯な議論をお願いし、基調の提起とさせていただきます。

 

2015年11月14日

護憲大会主催者あいさつ/憲法理念の実現のため、安倍自公政権と総力で対決を

憲法理念の実現をめざす第52回大会実行委員会委員長
フォーラム平和・人権・環境共同代表 福 山 真 劫

Ⅰ. はじめに
全国から結集ありがとうございます。
大会を準備していただいた地元関係者の皆さん本当にありがとうございます。
多忙な中、出席いただいた来賓の皆さんありがとうございます。心bからお礼を申し上げます。またこの1年間の平和フォーラムや1000人委員会、総がかり行動実行委員会へ結集しての取り組み本当にありがとうございます。確実に新しい可能性を作りつつあると確信しています。
2012年第2次安倍自公政権は誕生して以来、憲法を破壊しながら「戦争する国・軍事大国への道」を暴走し続けています。2013年12月、国家安全保障会議法、特定秘密保護法、防衛計画大綱制定、2014年4月 防衛装備移転3原則制定と続きました。
そして今年4月、日米ガイドラインの改定、安倍の米国議会での「演説」、5月安保法案閣議決定、8月歴史認識の改ざんをめざす安倍首相談話の公表、労働者保護法の改悪、9月、戦争法の強行採決、沖縄知事との協議決裂・辺野古米軍新基地建設強行、原発再稼働強行、と続いています。
また経済政策は、アベノミクスと音われる新自由主義路線のため、「貧困と格差社会」が深刻化しています。厚生労働省の発表によると子どもの相対的貧困率は、16.3%、子どもの6人に1人、労働者の中で非正規労働者の割合は38%、年収200万以下の勤労者は1200万人をこえ、」増加し続けていると報告されています。
私たちはいま「戦後最大の平和と民主主義の危機、生活の危機」を迎えています。

Ⅱ. わたしたちはどう闘ったか
こうした安倍自公政権の暴走に対して、わたしたちは、1000人委員会、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」を結集し、全力で闘い、1960年安保闘争以来といわれる大衆運動を作りあげました。「総がかり行動実行委員会」は、従来の闘いの枠組みではない共産党系の市民団体を含む共闘組織です。多くの経過がありますが、それを乗り越え、安倍の暴走に対する危機認識が新しい闘いの枠組みに踏み切らせました。日本の平和と民主主義に私たちが大きな役割を果たさなければならないとの認識しているからでもあります。とりわけ8・30には、国会周辺に12万人の市民が結集し、全国では、1000か所以上で、市民の「戦争法案・廃案」の集会が開催されました。また9月14日からの週の山場では、連日4万、5万を超える市民が国会周辺に押し寄せ、戦争法案廃案・安倍政権退陣の声をあげました。そして運動は、学生のシールズ、学者の会、ママの会、立憲デモクラシーなど闘いは大きく多様な形で全国に拡大しました。連合も取り組みました。若者たちは、「俺たちの未来を勝手に決めるな」とコールし、高齢者の皆さんは、「孫、子の明日のために」と闘いました。
しかしそれでも9月19日戦争法を強行採決させてしまいました。原因はいくつかあります。「マスコミの世論調査で60%の反対の市民」の運動参加が不十分であったこと、非正規労働者や年収200万以下の層への働きかけが弱かったこと、全国での闘いの拡大が弱かったこと、労働運動との連携が弱かったこと、国会における野党の弱さなどなどです。また一方脱原発の闘いは、福島で、鹿児島で、愛媛で、福井で、青森で、さようなら原発1000万アクションを中心に大きく高揚しています。
次は、こうした運動の到達点と反省点をかみしめ、闘いを作り上げる必要があります。

Ⅲ. 安倍自公政権の本質を認識し、全力で闘いを
日本の戦後70年は、日本国憲法擁護勢力と日米安保条約擁護勢力の間での日本の基本のあり方をめぐっての闘いの歴史でもありました。日本は「アジア太平洋戦争」の犠牲の上に、「非武装・平和主義」の憲法9条を制定しました。しかしこの9条は米国政府の世界戦略と保守政権の下で空洞化され続け、現在は、英、仏、独に匹敵する軍事力・自衛隊を保有しています。しかし、最後の歯止めとして「自衛隊」は、「海外で武力による威嚇、行使、戦争」はしないとしてきました。しかし今回の戦争法は憲法解釈を変え、日本を海外で戦争する国にする内容のものです。最後の歯止めを壊しました。米国政府は、「米軍再編成協議」や「アーミテージサイレポート」にあるように日本政府に「集団的自衛権行使の合憲化」を求め続けてきました。そして今回突破したのです。
可決された法全体を見れば、日本の自衛隊が中東から東アジアまで、米国の軍事戦略の下で自衛隊が米軍とともに闘う体制を確立するための法体制の整備であることは明白です。日米軍事同盟体制がさらに強化されます。もちろん日本の安保村の連中は、そうした中で、日本の軍事大国化、および戦争による金儲けも確実に視野に入れてうごきだしています。
また一方の焦点である沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設も米軍の出撃基地を強化するものであり、戦争法と同じように日米の軍事同盟体制の強化をめざすものです。
こうした安倍自公政権の動きを絶対に許せません。
安倍自公政権は、「1億総活躍社会」政策を打ち出し、高揚した安倍退陣の連動を分断、沈静化させようとしています。しかしそうはいきません。安倍自公政権の矛盾は深刻化し、対抗する闘いは、全国各地で広がっています。この夏の闘いを経験した私たちは連帯して闘えば必ず勝てると確信しつつあります。
当面の最大の課題は、1.戦争法廃止・発動阻止・立憲主義確立、2.沖縄・辺野古への米軍新基地建設阻止、3.原発再稼働阻止、4.参議院選挙闘争です。
沖縄では、辺野古新基地建設阻止のため、翁長知事を先頭に「県民ぐるみ」の闘いを作りあげています。1945年アジア太平洋戦争の最終局面で本土防衛のため沖縄を戦場にし、1951年サンフランシスコ講和条約では沖縄を切り捨て、本土だけ独立し、1972年本土並み・憲法体制のもとへを求めた日本復帰では、米軍基地を押し付け、そして今また日米安保体制のため、米軍の74%の基地の押し付けている中で、さらに新基地を押し付けようとしています。どれだけ沖縄に犠牲を強いるのでしょうか。沈黙をすることは安倍政権の共犯者になることです。共犯者にならないために、今すぐ「本土」における連帯した闘いが求められています。
9月19日、参議院で与党が過半数という議席数の差に、私たちは悔しい思いをしました。7月参議院選挙が予定されています。戦争法案廃案めざして、闘った人々、諸団体は、何としても野党の選挙協力を実現し、勝利しようとして決意しています。10月16日の野党と諸団体の意見交換会でも参加したすべての団体が野党に対して野党共闘を求めていました。
従来のように野党がばらばらで闘ったのでは、自公に対して惨敗は必至だと分析されます。自公政権を過半数割れに追い込むためには、レベルはともかく野党共脚を絶対に実現させる必要があります。しかし共産党主導による参練院選挙闘争では絶対成功しません。戦争法案廃案めざして闘った大衆運動を背景に民主党・社民党主導による選挙共闘をつくりだすことが求められています。

Ⅳ. 闘いの基本と具体課題
わたしたちの闘いの組み立て方の基本は、まず平和フォーラム、「戦争させない1000人委員会」の運動と組織の強化です。職場と地域に、1000人委員会を作りましょう。その基盤の上で、総がかり行動実行委員会を強化し、具体的には、1.2000万署名運動、2.19日の日全国行動、3.毎月第3火曜日全国街頭宣伝行動、4.準備されている違憲訴訟支援の取り組み、5.沖縄と連帯しての闘い、6.参練院選挙における野党支援の取り組み、7.脱原発・再稼働阻止の闘い等です。11月8日、「わたしたちはあきらめない」とする新聞広告を行いました。署名用紙も掲載しています。総がかりで取り組む初めての署名運動です。目標は2000万筆です。
また青森は、原発関連施設立地県として、また三沢米軍基地の立地県として、脱原発・再処理工場反対・核燃サイクル路線反対の陶い、平和・民主主義の確立のための長い闘いの歴史を重ねてきたところです。ぜひ多くのものを学び、胸に刻みましよう。
私たちには、この間闘い続けてきたという自負と誇りがあります。安倍自公政権退陣に追い込む戦略の下で闘われるこれらの闘いの一翼を担うべく全力で闘いましよう。
ありがとうございました。

 

2015年11月14日

憲法理念の実現をめざす第52回大会(護憲大会)開会総会  大会基調提案 藤本泰成事務局長

ただいま、ご紹介をいただきました、中央実行委員会の事務局長の藤本です。まずは、全国各地からお集まりいただきましたみなさまに対し、心から感謝を申し上げます。加えて、52回を数えます「憲法理念の実現をめざす全国大会」の開催を、快くお引き受けいただき、その労をおとりいただいております青森県平和労組会議の皆さまにも、心より感謝を申し上げます。

少しのお時間をいただき、大会基調の提案を行なわせていただきたいと思います。お手元に、基調をお配りしております。詳細は、そちらでお読み取りいただきたいと思います。時間の関係もありますので、基調全体に触れることはかないませんが、基本的な部分と私の思いも含めて、ご提案いたします。

アジア・太平洋戦争の敗戦から、70年を経過しました。1853年に旗艦サスケハナ号など4隻の米艦隊を率いてペリー提督が浦賀に来航して以来、先んじて近代社会を成立させた西欧諸国への憧憬を以て、近代資本主義社会の確立に日本は奔走しました。「脱亜入欧」の考え方の下、急速な近代化を進める日本は、その社会矛盾の解決を帝国主義的侵略に求め、台湾、朝鮮半島、南洋諸島などへの植民地支配と中国大陸への侵略戦争に明け暮れることとなりました。

明治維新から70年以上、私たちは戦争を実感する時代に在ったのです。結果、日本人310万、アジア全体で2000万とも言われる犠牲の上に、1945年8月15日、ポツダム宣言を受諾し無条件降伏を余儀なくされました。
戦争に倦んだ私たちの先輩は、不戦と民主主義の日本国憲法を、心のそこからわき上がる喜びとともに受け入れ、新しい日本社会のスタートを切ったのです。

日本国憲法は、日本人による戦争の被害を受けたアジア諸国への、日本人自身が選択した「約束」としての存在なのです。そして、その約束を将来にわたって守り続けることこそが日本人の責任なのです。

戦後70年を迎えた今年は、憲法持つ意味が大きく問われた年になりました。安倍政権は、多くの反対を押し切り、「集団的自衛権」の行使を基本にした「戦争法」を、去る9月19日未明に強行成立させました。日米ガイドラインの改定に示された米国の要求、国連の安全保障政策における「普通の国」にならんとする外務官僚の要求、そして憲法を改正し再軍備に道を開くとしてきた日本の保守政治の主張を実現するために、立憲主義・民主主義・法治主義さえないがしろに、日本の市民社会の絶対的反対を押し切った、政治の暴挙と言えるものです。そして、先に成立した「特定秘密保護法」と相俟って、日本社会を戦前の物言えぬ社会へと作り替えていくものです。

私たちは、1945年8月15日、あの敗戦の日を境にして、以前の70年と以後の70年を見つめ直さなくてはなりません。そして、自らの社会を選択しなくてはなりません。答えは明らかです。

米国は、自らが招いたイスラム国(IS)の暴挙に対する「有志連合」の一員として日本を位置づけています。世界各国で引き起こされてきた「自爆テロ」の対象として、日本が位置づけられたと言っても過言ではありません。
トルコやロシアの空爆参加、その後のロシア民間機の墜落など、中東情勢は混迷を極めています。日本の「戦争法」の成立が、米国とイスラム過激勢力との不毛な戦いに、日本が引きずり込まれる可能性を現実のものとしています。私たちは、「戦争法」の実働を許さず、その廃止を求めてとりくみをすすめなくてはなりません。自衛官を戦場に送ることなく、対話と協調をもとめ何事も平和的解決をめざす日本国憲法の理念を守らなければなりません。

安倍政権は、米海兵隊普天間基地の代替施設として、辺野古沖の新基地建設を、沖縄県民、沖縄県知事の反対を圧殺して、強引にすすめています。知事の公有水面埋め立て申請の承認取り消しには、本来の法の目的を逸脱して自らが自らに不服審査を請求する、反対する名護市を無視し法の根拠もなく辺野古の地元3行政区に対して直接に補助金の交付を行うとするなど、恥も外聞もない行動に出ています。辺野古新基地建設に反対し、基地交付金によらない行政のあり方を求めて来た名護市民の思いを踏みにじり、地元市民の感情をもてあそぶ、卑劣な政治手法を許してはなりません。

「戦争法」とそれに基づく自衛隊の世界展開を保障するために、2016年度の防衛費の概算要求額は、5兆911億円で、過去最大となってます。哨戒ヘリコプター17機で約1032億円、オスプレイ12機で約1321億円、最新鋭F35戦闘機6機で約1035億円、総計で2015年度予算を366億円上回るものです。
一方で、日本社会の貧困は深刻な事態となっています。相対的貧困率は16.3%、非正規労働者も全体の4割を超えました。母子家庭の平均年収は約181万円、相対的貧困と言われるのが二人世帯で平均年収177万円以下、子どもたちの6人に一人が、一人親の6割が相対的貧困に陥っています。しかし、安倍政権は2013年以来、3段階で生活保護基準引き下げを行って来ました。社会保障費を削減する中での、防衛費の拡大は、安倍政権の本質を象徴しています。

安倍政権の経済政策・アベノミクスは、急激な円安などによって、中小の多い輸入産業の衰退を、実質的賃下げを、正規労働者の縮減と非正規労働者の増大など、市民生活を直撃しています。
今回の、新三本の矢も、成長率3%を必要とする、経済界からも疑問の声があがる2020年国内総生産600兆円、保育料を実施的に引き上げておいての出生率1.8%、特養の入所基準を引き上げながらの介護離職ゼロなど、何の根拠もなく耳障りの良い数字をあげつらう、選挙目当て、支持率回復目当てに、市民社会を愚弄するものです。

バブル経済の崩壊以降、失われた10年とも20年とも言われる時代に、経済は低迷し1997年をピークに賃金は減少し、非正規雇用が増大してきました。社会の閉塞感は拡大し、排外主義や民族差別などによるヘイトスピーチの横行、ろうそく火災などに象徴される貧困の広がりや貧困故のネグレクトなどが社会問題化しています。そのような社会の変化に便乗し、利用しながら、国家主義的傾向を強める安倍政権の政治手法を、絶対に許すことはできません。

「戦争法」の強行採決には、反対が多数を占め、およそ8割近くの市民がが説明不足としましたが、法の成立以降、安倍内閣の支持率は40~45%へ回復しています。
「戦争法」反対の運動が、しかし、市民社会の思いをくみ取れていない現状にあることを真摯に省みなくてはなりません。市民社会の中に、戦争反対のとりくみへの冷めた感情や反発が存在しないか、そのことをしっかりと見据えることが重要な視点となると考えます。生活者の窮乏は深刻で、きわめてきびしい生活実態があります。

本年5月3日の憲法集会は、平和といのちと人権を!の下に、戦争・原発・貧困・差別を許さないと声を上げました。私たちの危機感はそこにあります。
沖縄で、福島で、そして日本中で、「いのち」を粗末に扱う、人間の尊厳を奪う政策が進んでいます。

日本の市民社会が、そのことに気づかないわけではありません。気づいていながらも、なお何かに期待しないではいられない現状に追い込まれているのだと思います。

来夏に予定される参議員選挙に向けて、野党一致して、それらの市民の思いに寄り添うことが求められています。

市民社会の寄り添わない政治は、市民社会を更なる悲劇に追い込むことでしょう。戦争と貧困は、社会の表裏であり、貧困が戦争を、戦争が貧困を生み出すことは明らかです。そして、その時、失われていくのは、市民のささやかな喜びであり、穏やかな生活であり、そして一人ひとりの「いのち」なのです。
戦前の70年、戦後の70年、私たちの選択肢は明らかなのです。

今日から3日間、真摯な議論をお願いし、基調の提起とさせていただきます。

 

2015年11月14日

護憲大会地元歓迎あいさつ/「戦争しない国」を取り戻そう!!

第52回護憲大会青森県実行委員会 実行委員長  金 澤  茂(弁護士)

   ご参加の皆さん、遠路青森の地においでいただき、感謝申し上げます。
   私の本業は弁護士(高齢で事実上引退)ですが、現在、青森県の社民党・平和労組・市民で構成する「憲法を守る青森県民の会(守る会)」の共同代表をつとめています。その理由で地元実行委員長を仰せつかりました。
   青森県の特徴は、軍事基地と核施設の集中です。沖縄県議会の8月31日可決の戦争法案廃案を求める意見書には、法案が成立すれば、「自衛隊を米国と一体となって戦争に参加させること」になり米軍基地集中の沖縄も「出撃拠点になるだけでなく、武力攻撃の対象となる」と書かれていました。当県も同様です。米空軍三沢基地のほか、自衛隊3隊すべての施設が存在しています。加えて有事のさい真っ先に攻撃の対象となり得る六ヶ所核燃、東通り原発、それに建設中の大間原発など核施設が集中しています。
   当県に危険施設が集中したのは辺境の地であるだけでなく全国一の貧困県だからです。農林漁業しか頼るもののない当県の歴史は国策に翻弄され続けてきた歴史でした。軍事施設と核施設の集中はその結果です。
   そんな県でありながら、残念なことに青森県は社民党の力が弱小です。2期続けて県議会の社民党議席ゼロという状況です。
   「守る会」は、憲法施行50年目の1997年10月に発足しました。労働事件の処理を通じて社会党・平和労組の皆さんと緑があった私は、一市民の立場で設立に参加し、以来、代表(共同)をつとめてきました。
   2004年の九条の会発足に伴い同年秋、青森では「守る会」と県労連系の憲法ネットあおもり両組織の、憲法を守る一点共闘の場との位置づけで青森県九条の会が結成されました。共闘実現は、当県の護憲運動では画期的なことでした。県九条の会は、県内初の九条の会となり、私は発足以来、現在まで代表(共同)をつとめています。事務局は私の事務所に置いています。
   4年ほど前にJR総連系の青森県9条連が参加し、現在、県九条の会は事実上、この三者と市民(青森ペンクラブなど)が支えています。
   今回の戦争法案阻止の闘いでは、県九条の会はじめ県内各九条の会がリードする形で、県内各地で集会、パレード、街頭宣伝、学習会・講演会、署名活動、スタンデイングアピールなどさまざまな形の運動が行なわれました。
   このように、当県では、共闘組織としての県九条の会を中心とする運動が定着し、「守る会」は県九条の会の運営・活動に主体的に参加してきました。
   いまだ当県内に「戦争をさせない1000人委員会」の正式組織が作られていないのは、そういう事情によるものです。
   私は長い間、「戦争しない国日本」が私の祖国だと言ってきました。その国民であることが名誉であり誇りでした。戦争法成立により、私は齢80にして亡国の民となりました。当県出身の寺山修司(中・高同期)は、20歳のころ「マッチ擦るつかのま海に霧探し身捨つるほどの祖国はありや」と歌い、「祖国」との決別を宣言しましたが、私は60年遅れて無理やり祖国喪失を押し付けられました。
   憲法違反で無効の戦争法に基づく「戦争する国」は文字通り偽物の国です。何としても一日も早く本物の私たちの国「戦争しない国」をこの手に取り戻さなければなりません。
   憲法を大切に思う人々が、全国で繰り広げた今回の戦争法案阻止の闘いの総括と、戦争法廃止に向けてのこれからの闘いの展望を切り開くことがこの大会の使命だと思います。まことに歴史的な大会です。
   私たちは今、厳しい逆境の中にありますが、参加された皆さんが、勇気と希望を得られて帰途につかれることを心から祈念いたします。

2015年11月10日

「憲法理念の実現をめざす第52回大会」青森市で11月14日~16日開催

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「不戦と民主主義─戦後の誓いを忘れない 憲法理念の実現をめざす第52回大会」が11月14日(土)13時~16日(月)11時まで青森市内で開催されます。大会はどなたも参加出来ます。

●11月14日(土)13:00~ 青森市文化会館大ホール
オープニング/開会総会
シンポジウム「戦争法廃止・立憲主義確立・憲法擁護のため私たちは今後どう闘うのか」
シンポジスト 鎌田慧(ルポライター、戦争をさせない1000人委員会呼びかけ人)/中野晃一(立憲デモクラシーの会、上智大学教授)/清水雅彦(戦争をさせない1000人委員会事務局長代行、日本体育大学教授)/喜多英之(戦争させない1000人委員会・信州事務局、長野県平和・人権・環境労働組合会議事務局長)

●11月15日(日)9:30~ 青森市内
分科会 (1)非核・平和・安全保障、(2)地球環境-脱原発に向けて、(3)歴史認識と戦後補償、(4)教育と子どもの権利、(5)人権確立、(6)地方の自立・市民政治、(7)憲法
フィールドワークや「ひろば」なども開催。

●11月16日(月)9:30~ 青森市文化会館大ホール
閉会総会 特別提起/大会のまとめ/遠藤三郎賞・平和運動賞表彰/大会アピール

問合せ:平和フォーラム(電03-5289-8222)
現地実行委:青森県平和推進労組会議(電017-775-2401)

2015年11月02日

辺野古新基地建設工事再開に対する抗議声明

 辺野古新基地建設工事再開に対する抗議声明

 

2015年10月29日

フォーラム平和・人権・環境

(平和フォーラム)

代表 福山真劫

 

 仲井眞弘多前沖縄知事が承認した辺野古の埋め立てを翁長雄志県知事が取り消したために中断されていた沖縄米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事の作業を、沖縄防衛局は29日早朝から再開した。沖縄県民の思いを踏みにじる行為に、平和フォーラムは強く抗議する。

 辺野古新基地建設反対を主張して立候補し大差で勝利した翁長知事は、前知事の埋め立て申請の承認に瑕疵があるのではないかとして第三者委員会に調査・報告を求めた。第三者委員会は、今年716日に、①埋め立ての必要性に合理的な疑いがある、②埋め立てで生じる利益と不利益を比べると合理的ではない、③環境保全措置が適正と言い難い、④法律に基づく既存の環境保全計画に違反している可能性が高い、などとして承認手続きの瑕疵を認定した報告書を翁長知事に提出した。翁長知事は、時間をかけて慎重に検討した結果として、1013日に承認取り消しを決定した。政府は、前知事の埋立承認の段階で表明された「環境の保全についての懸念が払拭できない」とする生活環境部長意見や辺野古環境アセスの評価書補正段階で沖縄防衛局が設けた、「環境影響評価に関する有識者研究会」において「研究会は事業によって環境に影響が出るのは避けられないという見解を出したが国は『影響がない』というスタンスに変わった」との横浜国立大学松田裕之教授の証言など、多くの疑問に何ら答えていない。

 それどころか翌日14日午後には、沖縄防衛局は、「私人の立場」として、石井啓一国土交通相に対し、行政不服審査法に基づく審査請求および承認取り消し処分の執行停止を申し立てた。国土交通省は1027日、処分効力の停止を決定した。今回の移設工事の作業再開は、この決定に基づいている。このような、法の目的を逸脱した運用は許されない。岡田正則早稲田大学教授、紙野健二名古屋大学教授など94人の行政法研究者が声明を発表し、「政府がとっている手法は、国民の権利救済制度である行政不服審査制度を濫用するものであって、じつに不公正極まりないものであり、法治国家に悖るものといわざるを得ない」とした。翁長知事も、「同じ内閣の一員である国土交通相に対して審査請求したことは不当と考えている」と述べている。

 一方で、政府は、辺野古新基地建設予定地周辺の辺野古・豊原・久志の3地区に対して、地域振興費用を直接交付すると区長に表明した。そもそも行政区は地方自治体の権限の下で委任された事務などに従事する組織であり、法的権限は限定的である。辺野古新基地建設に反対し、基地交付金を受け取らない名護市に対するきわめて政治的な圧力であり、市民社会への挑戦である。今後、支出の枠組みや法的根拠を検討するとしたことは、法治国家の姿とは言えない。稲嶺進名護市長は、「地方自治への介入であり、市と地域の間への分断工作」と強く批判している。

 翁長知事は、辺野古新基地に対して明確に反対し、米軍基地の存在が沖縄経済にとってマイナスであるとの主張を変えることはない。沖縄経済の基地依存率は5%にも満たない。沖縄県民は、美ら海と山原(やんばる)に象徴される豊かな自然と独自の文化、そして東アジアの中心としての歴史を大切に、生きていこうとしている。そして沖縄戦という悲惨な歴史の記憶から平和を維持しようとしている。日本政府には、そのような沖縄県民の選択に寄り添いそのことに支援していく義務を持つ。県民の命を軽視しその思いを踏みにじる日本政府の姿勢に、沖縄県民の怒りは収まることはないだろう。

 平和フォーラムは、政府の暴挙を許さず、沖縄県民と堅く手を握り、辺野古新基地建設阻止に向けて全力でとりくんでいく。

 

以上

2015年11月01日

積極的平和主義と難民

欧州連合(EU)は、今後2年間で12万人の難民受け入れを決定した。混迷を続ける中東情勢の中で、例えばシリア難民は国連の調査で400万人を越える。EUへは34万人のシリア難民が流入しているが、それは全体の10%にも満たない。米国やカナダで1万人、オーストラリアが5000人の受け入れを表明している。安部首相は、9月30日(日本時間)の国連総会の一般討論演説で、約8億1000万ドル(約972億円)の経済支援をシリア・イラク難民に拠出する方針を示した。今年1月17日にもカイロにおいて、中東地域全体で25億ドル(約2940億円)相当の支援を表明している。日本社会には、安倍政権の人道的とりくみとして、好ましく映ったのだろうか。他国の反応は別だ。

日本は、難民認定基準が他国と比べてきわめてきびしい。昨年度、日本に対する難民申請者は5000人を超えているが、認定数は11人、人道上認められた残留許可も110人にとどまってる。シリア難民も申請をした約60人のうち、認定したのはたった3人だ。多くの人々が日本では難民として認められないのが現状だ。命からがら逃げてくる難民にとって、自身の来し方や何者であるを証明することは困難だ。杓子定規の法解釈が、いかに難民の心を傷付けているか、想像に難くない。

ロイター通信の記者が、「難民の一部を日本に受け入れることは考えていないか?」と質問したところ、安倍首相は「人口問題として申し上げれば、我々は移民を受け入れる前に、女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手がある」と答えた。安倍首相の回答は、難民の受け入れを人口問題と捉え、人道的視点に欠ける。

財政支援だけでは、難民キャンプの生活を長期間強いられる。永続的で静謐な生活環境、医療も、教育も、そして労働も権利としてあたりまえに行使できる支援が重要だ。そのための難民受け入れであって欲しい。緒方貞子元国連難民高等弁務官は、朝日新聞のインタビューにこう答えている。「難民受け入れは積極的平和主義の一部ですよ。本当に困っている人たちに対してね。それから開発援助も底辺に届くようなものをどれだけやるのか。それが積極的ですよ。難民受け入れに積極性を見いださなければ、積極的平和主義というものがあるとは思えないと言っていたと、書いて下さい」。

安倍首相の言う「積極的平和主義」は、難民を生み出すものにしか見えない。だからこその難民受け入れではないか。
(藤本泰成)

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