8月, 2015 | 平和フォーラム

2015年08月31日

ビデオ報告「止めよう!辺野古新基地建設 8.31集会」

8月31日に東京・豊島公会堂で開かれた「止めよう!辺野古新基地建設 辺野古新基地建設の問題点を探る」の集会の模様をビデオにまとめました。(10分38秒)

2015年08月30日

平和軍縮時評2015年8月号 安保法案・新ガイドラインと核兵器-「非人道兵器依存」政策から脱却しよう  田巻一彦

   違憲が明白な「安保法案」。同法案が『実効化」を目指す「日米新ガイドライン」には、核兵器国を除く国際社会の大多数が「非人道兵器」と認識する核兵器による「拡大抑止」に依存して、安全保障を確保するという、大きな根本的問題がある。「広島、長崎」から70年目の今年、「唯一の戦争被爆国・日本」が目指すべきは、核兵器依存政策から脱却することを通して、核兵器廃絶の真の先導者へと転じることである。ここでは「安保法案反対」のもう一つの論理を考えたい。

「安保法案」の目的が、4月27日に発表された「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)を実効化するための国内法制整備であることは論をまたない。「指針」は、次の事項を強調しながら日米防衛協力を強化するとしている:

  • 切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応
  • 日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果
  • 政府一体となっての同盟としての取組
  • 地域の及び他のパートナー並びに国際機関との協力
  • 日米同盟のグローバルな性質

憲法平和主義の諸原則を修正することなしに、これらの目標を達成することは不可能である。法案の国会審議では、「集団的自衛権行使」や「自衛隊の海外活動拡大」の違憲性が、野党はもとより与党が証人として招致した憲法学者、さらにはメディアからも厳しく指摘されている。法案に反対する市民の声は、国会を幾重にも包囲し、その包囲網は日を追うごとに厚みを増している。にもかかわらず、政府は国民の懸念や不安をはぐらかすような言辞を弄しながら、今国会中の成立を目論んでいる。

「新ガイドライン」の核兵器依存

「新ガイドライン」が目指す安全保障が、憲法平和主義に反するものであるだけでなく。核兵器廃絶を求める国際世論と規範に背を向けるものであることに焦点を当てたい。
「指針」は冒頭部で次のように言う:

「日本は、『国家安全保障戦略』及び『防衛計画の大綱』に基づき防衛力を保持する。米国は、引き続き、その核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じ、日本に対して拡大抑止を提供する。」(Ⅰ 防衛協力と指針の目的)。

すなわち、「指針」は、核兵器に依存して安全を確保するという基本政策に立つものだ。
1968年1月30日、当時の佐藤榮作首相は、日本の核政策は次の四本柱からなることを明らかにした。第1に「非核三原則」の堅持、第2に核軍縮への努力、第3に国際的な核の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存すること、そして第4に核エネルギーの平和利用、である。この連綿と続く基本政策が半世紀を経た今、「新ガイドライン」と「安保法案」という形を得ようとしているのだ。
広島、長崎の被爆から70年目の夏、私たちは、「唯一の戦争被爆国・日本」が、二つの町を襲った惨禍の恐怖に基づいて安全保障を確保するという道を、これ以上進むことを受け入れることができるであろうか。

「核兵器のない世界」を遠ざける「新ガイドライン」

安倍首相は「安保法案」国会審議の中で、「抑止力」について次のように述べた。

「まさに抑止力とは、日本に対して攻撃をする、あるいは日本を侵略しようとすれば相当の打撃をこうむらなければならないということを覚悟しなければいけない、となれば、それはやめておこうということになるわけであります。(略)」

安倍首相の答弁を米国の言葉を借りて言えば次のとおりとなる。オバマ政権が13年6月19日に発表した「合衆国の核使用戦略に関する報告」からの抜粋だ。同報告は同日発表された大統領の「核使用戦略」を説明した文書である。

合衆国は、合衆国、同盟国並びにパートナーを攻撃することの代償として受ける結果が、攻撃することによって得られる利益を著しく上回るであろうことを潜在的敵国に確信させうる、信頼性ある核抑止力を維持するであろう。

オバマ大統領は、09年4月の「プラハ演説」で、核兵器のない世界を目指すことを約束し、そのために安全保障における核兵器の役割を低下してゆくとした。この「報告書」も「核兵器の役割の低下」を基調としたものであり、「核兵器の基本的役割は引き続き、合衆国、同盟国並びにパートナーに対する核攻撃を抑止することにある」とし「死活的国益を防衛する極限的な状況においてのみ、核兵器の使用を考慮する」という抑制的姿勢が示されている。しかし、2010年の「核態勢見直し(NPR)」で設定した目標である、「核攻撃の抑止を核兵器の『唯一の目的』とする条件はまだ整っていない」とも述べている。
安倍首相は上記と同日の国会審議で「(抑止力は)持っていることに意味のある、抜かない刀」とも言った。しかし米国にとって、核兵器は「抜く時」に備えて日々磨かれる「刀」なのである。

   核兵器廃絶を願い、行動する世界の心ある非核兵器国と市民社会は、日本のような核抑止依存政策が、核兵器のない世界へ向かう道の障害物であるとみなしている。日本は「核抑止」を受け入れるだけでなく、その「信頼性」を高めることを積極的に要求している。「新ガイドライン」は、そのような誤った認識を基礎とするものである。

核兵器は非人道兵器―「ウィーン会議」の警告

14年12月8日から9日、オーストリアのウィーンで、158か国の政府代表、国連、赤十字国際委員会(ICRC)、赤十字・赤新月運動、市民社会の諸団体、学術研究者が参加して、「核兵器の人道的影響に関するウィーン会議」7が開催された。この会議での議論を見れば、日本政府の「核抑止依存政策」が、国際的潮流に背を向けた無定見であることは明白である。オーストリア政府がまとめた「会議報告及び討議結果の概要」の要点は次のとおりである。

  1. 核兵器爆発の影響は、その原因の如何にかかわらず、国境で制御し得ず、地域的、ひいては地球規模の結末を生じうる。
  2. 核兵器爆発がもたらす人道上の影響の範囲、規模、相互関係は壊滅的なものであり、それは一般的に理解されているものよりも複雑である。
  3. 核兵器の使用や実験は、それらの兵器が短・中・長期的にもたらす破壊的な影響を証明してきた。
  4. 核兵器が存在する限り、核兵器爆発の可能性が消えることはない。たとえ可能性は低いとみられるとしても、核兵器爆発のもたらす壊滅的結末を考えれば、危険性は容認しがたいものである。人的ミスやサイバー攻撃に対する核指揮統制ネットワークの脆弱性、高い警戒態勢に維持されている保有核兵器、前進配備、核兵器の近代化といった現状をもってすれば、事故、間違い、不認可あるいは故意の核兵器爆発の危険性があることは明白である。
  5. 国際的な対立や緊張関係の激化、そして核兵器保有国における現在の安全保障ドクトリンを考えれば、核兵器が使用されうる多くの状況があると考えられる。核抑止は核戦争の準備を必然的に伴うものであり、よって核兵器使用の危険性は現実味を帯びている。(略)核兵器爆発の危険性を回避するための唯一の保証は核兵器の完全廃棄にほかならない。
  6. いかなる国家あるいは国際機関であろうとも、人口密集地域における核兵器爆発がもたらす短期的な人道的緊急事態ないし長期的な結末に対して十分な対処を講じることは不可能であり、そのような能力はおそらく存在し得ない。
  7. さまざまな法的側面から核兵器の問題を見れば、保有、移転、製造、使用を普遍的に禁止する包括的な法的規範が存在しないことは明らかである。
  8. 核兵器爆発が起こった際の壊滅的な結末、そして核兵器の存在そのものに内在する危険性には、法的な議論や解釈のレベルを超えて、倫理面及び道徳面での重大な疑義が呈されている。

このような認識は、今年4月から5月にかけて開かれた「15年NPT再検討会議」における議論にも大きな影響を与えた。非核兵器国の多くは、ウィーン会議で共有された、核兵器使用による「人道的結末」への認識をベースに、核兵器廃絶のための効果的な法的枠組みの確立を求めた。

   パン・ギムン国連事務総長は、「NPT再検討会議の成果に関する声明」で次のように述べた。「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結末をもたらすとの認識の拡大が、核兵器の禁止と廃絶を導く効果的措置を目指す緊急の行動を強制するものであり続けることを希望する」。「再検討会議」は最終文書の合意にいたらず決裂した。しかし、このような認識は、今後の核軍縮・核廃絶議論の基層を形成するものとなるであろう。

「国民保護」の虚妄を暴いた被爆都市・広島、長崎の「計画」

ウィーン会議は「核兵器爆発による影響や結末に対処を講じることは、いかなる国家にも国際機関にも不可能である」と警告した。しかし、日本政府にそのような真剣な認識はない。04年に成立した「国民保護法」に基づいて、国はすべての地方公共団体に「国民保護計画」の策定を求めた。この時閣議決定された「国民の保護に関する基本指針」は、武力攻撃事態の1類型として「核兵器攻撃」挙げた。05年3月25日付の「指針」第1版は、「風下に避難する」、「汚染された可能性のある食物や水を摂取しない」など、もっぱら核爆発後の防御策を述べるのみであり、多くの人々が熱戦、爆風や初期放射線によって一瞬のうちに生命を奪われることは顧みられなかった。
これに対して広島市は、シミュレーションに基づく独自の「核兵器攻撃被害想定」を行い、その結果を踏まえて「核兵器攻撃による被害を避けるためには唯一、核兵器の廃絶しかない」との結論を述べた「計画」を、07年11月に策定した。 一方、長崎市は、07年1月に策定した「計画」で「核兵器攻撃」の項目の記載を行わず、「計画」の序章などで、「核兵器攻撃」を回避するための外交努力と兵器廃絶の国際世論形成のために主導的役割を果たすよう求めると同時に核兵器廃絶に向けた市としての決意を述べた。長崎市の計画案は、他都市の計画との整合性を求める長崎県との協議が難航し、長い間懸案とされてきたが、14年2月、原案のまま受理された。

   2つの被爆都市による「国民保護計画」は、核兵器攻撃に対処は可能であるという国の認識に対して、「国民を守るためには核兵器の廃絶しかない」という見識を明らかにした。これは「ウィーン会議」の討議を先取りするものとして、高く評価されるべきものである。

核抑止からの脱却と、核兵器廃絶こそが安全を守る

「新ガイドライン」は、以上述べたように「核抑止依存」という誤った政策と原則を前提とするばかりでなく、核兵器による人道的結末への考察と思慮を欠いたものである。「新ガイドライン」の実効化によって国民の生命と安全を守るという「安保法案」の目的に偽りがないとすれば、今日本に求められているのは、「核抑止依存」から脱却するための具体的な行動の方向性を示すことだ。

   広島・長崎から70年の今年は、核兵器廃絶と軍事力依存の安全保障からの脱却への歩みを進める転換点とされるべきである。北東アジア非核兵器地帯構想のイニシアチブをとることは、その具体的な行動の一歩となりうるだろう。

2015年08月15日

ビデオ報告「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8.15集会」(2015年)

2015年8月15日に東京・千鳥ヶ淵墓苑で開かれた、平和フォーラム主催の「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8.15集会」の模様をビデオにまとめました。(9分22秒)

2015年08月15日

「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8・15集会」平和フォーラム代表誓いの言葉

「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8・15集会」誓いの言葉

    フォーラム人権・平和・環境
            共同代表   福 山 真 劫

 70年目の熱い夏がまたやってきました。
私たちは今年もまたここ千鳥ヶ淵の戦没者墓苑に、皆様の御霊の追悼のため、また平和への誓いを固めるために、集いました。
 しかし今私たちの目の前で展開されている日本の政治の情勢を、みなさまに何と報告したらいいのでしょうか。申し訳なさでいっぱいです。
 私たちは、憲法に「政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、」と書き込み、広島の原爆死没者慰霊碑には、「安らかに眠ってください過ちは再び繰り返しませぬから」と書いています。また1995年村山談話には、「国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に過ちなからしめんとするがゆえに、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここに改めて痛切な反省の意を表し、心からお詫びの気持ちを表明いたします。」と書き込んでいます。先の大戦の結果、国内310万人、国外2000万人を超える尊い人々の犠牲者を出しました。その結果、こうした文言の中で、被害と同時に「加害の責任」を明確にしてきました。
 この「平和への誓い」とそれを支えてきた日本の平和と民主主義の体制がいま音を立てて崩されようとしています。憲法と同じ年である私にとっては、自分の生きてきた過程で、最大の「平和と民主主義の危機」だと恐怖に近いもの実感しています。
 安倍自公政権が、現在私たちの目の前で、立憲主義、憲法9条、民主主義を壊して暴走を続けているのです。それは、具体的には、戦争法案の強行であり、沖縄辺野古への基地建設の強行であり、鹿児島県川内原発再稼働です。沖縄では、戦後70年、沖縄米軍基地を押しつられ続けてきました。その上にまた米軍新基地建設をしようとしています。今翁長知事を先頭に「島ぐるみ・オール沖縄」の反対運動が燃え広がっています。しかし安倍自公政権は、建設強行の方針を変えていません。2011年東電福島原発事故以来、4年5か月が経過しますが、今でも原因もわからず、収束・廃炉の目途も立たず、10万人を超える人々が避難を続け、放射能を垂れ流し続けているのに川内原発を政府と九州電力、原子力利権屋集団は、再稼働するのです。
 自民党政権は、戦後70年の間で、2回にわたり「憲法9条」の重大な解釈改憲を行いました。その1回目は、「自衛隊を創設」する時です。憲法9条は、「非武装平和主義」です。その9条の解釈を変更し、「自衛のための最小限度の実力」・自衛隊を合憲としました。その後憲法9条を空洞化させ続け、それでもまだ、野党と民衆と世論の力で「自衛隊は国外で武力による威嚇・行使、戦争はしない」との一線は守ってきました。しかし安倍自公政権は、今その一線を超えて、「戦争法案」を衆議院に続き、参議院でも強行採決により成立させ、「自衛隊」が国外で「戦争する国」にしようとしています。これは2回目の重大な解釈改憲であり、立憲主義、憲法9条、世論を無視する民主主義の破壊です。こんな暴挙を許していることをどうして皆様に報告することができましょう。皆様の怒りと悲しみが押し寄せてきます。
 今回国会に提出されている戦争法案の本質は明らかです。米国の軍事戦略の下で、自衛隊が中東から東アジアまで戦争する国になることであり、日本も軍事大国になることです。戦後70年の平和を壊し、戦争に踏み出す体制をつくりだすことです。戦争の足音が聞こえてきます。
 8・9の長崎の平和祈念式典で、被爆者代表の谷口スミテルさんが、「今政府が進めようとしている戦争につながる安保法案は、被爆者をはじめ平和を願う多くの人々が積み上げてきた核廃絶の運動、思いを根底から覆そうとするもので、許すことはできません。」と指摘しています。私たちも絶対許すわけにはいきません。
 そして私たちも、安倍自公政権の暴走をだっまて見ているだけではありません。
昨年3月、戦争させない1000人委員会を立ち上げました。そして12月には、超党派で、日本の社会運動につきものの分岐と分裂を超えて、統一した「戦争させない!9条壊すな総がかり行動実行委員会」を発足させ、「戦争法案廃案・安倍政権退陣」めざしての、大きな運動の一翼を担っています。
 そしていま自立した市民による「戦争法案廃案・安倍政権退陣」をめざす大きなうねりが全国から巻き起こりつつあります。学生へ、子供を持つ母親へ、学者、文化人、労働組合へ、宗教団体へ、保守層へ、野党へ、全国へと拡大しています。どの世論調査でも、戦争法案、賛成約30%、反対約60%であり、安倍内閣の支持率も40%を切り、不支持率は、50%を超えています。戦争法案は国会会期末に向け、いよいよ山場です。また沖縄の基地建設反対闘争も山場を迎えます。
 私たちは、安倍自公政権の暴走をとめ、憲法に基づく平和・民主主義、脱原発の社会の確立のために、すべての勢力と連帯して、全力で頑張ります。連帯して闘えば、負けることはありません。とりわけ8月30日は、「戦争法案廃案安倍政権退陣国会10万人・全国100万人大行動」を計画しています。
 全力で頑張る私たちをぜひ見守り続けてください。お願いします。
 

2015年08月15日

千鳥ヶ淵「戦争犠牲者追悼、平和を誓う集会」に250人参加

 

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敗戦70年目の8月15日、平和フォーラムは東京・千鳥ヶ淵の国立戦没者墓苑で「戦争犠牲者追悼・平和を誓う集会」を行い、各団体の代表など約250人が参加しました。集会は、無名戦役者の遺骨を納めた納骨場所(六角堂)の前で、I女性会議の中村ひろ子事務局長の司会・進行ですすめられ、正午の時報にあわせて黙とうしました。続いて、福山真劫・平和フォーラム代表、近藤昭一・民主党衆議院議員、吉田忠智・社会民主党党首(参議院議員)、阿部知子立憲フォーラム副代表(衆議院議員)、内田雅敏「戦争をさせない1000人委員会」事務局長による「誓いの言葉」が述べられたあと、各団体・参加者による献花が行われました。このうち、福山代表は、「戦争法案成立阻止や沖縄の基地建設反対のヤマ場を迎え、安倍自公政権の暴走をとめ、憲法に基づく平和・民主主義、脱原発の社会の確立のために、すべての勢力と連帯して、全力で頑張る」と誓いを述べました。

→福山真劫平和フォーラム代表の誓いの言葉
→立憲フォーラム「戦後70年8月15日の決意」
→内田雅敏「戦争をさせない1000人委員会」事務局長の誓いの言葉
→ビデオ報告

2015年08月15日

「安倍談話」に対する平和フォーラム代表の見解

安倍談話に対する見解

          フォーラム平和・人権・環境 共同代表  福山真劫

  安倍晋三首相は8月14日、国際的にも、国内的にも注目をされていた「安倍談話」を閣議決定し、発表しました。
 その内容は、予測されていた通りの安倍首相の本質を絵にかいたような薄っぺらな「談話」です。日本が引き起こした侵略戦争と植民地支配は絶対に許されない重大な犯罪という認識もそれに対する真摯なお詫びもありません。それがゆえに、現在、安倍が進めている「戦争する国」路線の修正もなく、不協和音を立て続けている中華人民共和国、大韓民国へのメッセージも弱く、70年を経過するも未解決の日本軍慰安婦や、強制連行・強制労働、日朝国交正常化等への具体的言及もありません。結局、村山談話の本質を改ざんし、「米国の意向」を忖度しながらの、安倍自公政権が「現実に推進している政策」を真逆の美辞麗句で覆い隠すものとなっています。
 「なんの罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実」「これほどまでの尊い犠牲の上に、現在の平和がある。これが戦後日本の原点であります。2度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう2度と用いてはならない」「先の大戦への深い悔悟の念とともに、我が国はそう誓いました」と書いています。安倍首相がそう本気で思っているのであれば、なぜ安倍談話の翌日15日に靖国神社に有村、高市、山谷の側近の3大臣が参拝するのか、なぜ戦争法案成立を強行するのか、沖縄辺野古に新基地建設を強行するのか、軍事大国化へ進み続けるのか。なぜ日朝国交正常化に動き出さないのか。
 「唯一の被爆国として、核兵器の不拡散と究極の廃絶をめざし」とあります。それではなぜ米国の核の傘に入っているのか、東北アジア非核地帯構想へ踏み出さないのか、プルトニウムを貯め続けるのか。「戦時下で多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます」とあります。なぜ韓国の世論を無視して、日本軍慰安婦問題を「解決済み」とするのか。
 「暴力の温床ともなる貧困とも立ち向かい」とあります。なぜ世界の貧困・差別の構造に立ち向かわずに、「自衛隊派兵の戦争法案」なのか、なぜ国内で貧困と格差社会推進の政策をとり続けるのか。
 安倍首相は、当日の記者会見冒頭に「政治は歴史から未来への知恵を学ばねばなりません」と述べました。いったいどんな知恵を学んだというのでしょうか。「安倍談話」の衣の下から見えてくるものは歴史認識を修正し、戦争する国をめざして、戦争法案を強行し、沖縄への新基地建設を強行し、日本軍慰安婦課題、強制連行・強制労働課題、日朝国交正常化の先送りです。何も学んでいません。こうした安倍政権の暴走は、絶対に許せません。フォーラム平和・人権・環境は、平和・民主主義・憲法理念の実現・脱原発社会めざして、安倍自公政権と対抗して全力で取り組みます。

2015年08月11日

川内原発の再稼働に対する抗議声明

川内原発の再稼働に対する抗議声明

原水爆禁止日本国民会議 議長 川野浩一

 九州電力は、本日(8月11日)、川内原発1号機を起動し、再稼働に踏み切りました。新規制基準の導入後、初めての原発再稼働で、14日にも発電と送電を行うとしています。
 安倍首相は、「世界で最もきびしいレベルの新規制基準」に適合する原発を「地元了解の上で原発運転を順次再開していく」との方針を示していますが、政府は繰り返し「再稼働は事業者の判断」としてその責任を国ではなく事業者に押し付けています。
 また、規制委員会の田中俊一委員長は、「(再稼働の判断について)規制委が判断しなければいけない理由は何もない」(8月5日発言)として、再稼働の可否の判断に責任を負わないとしていしています。
 一方、地元自治体もこれまで「国が安全と認めた原発」の再稼働には同意するとしており、自治体自らの判断と責任を回避しています。事故が起こった時の責任を、誰もが巧妙に回避し、無責任体制の中で再稼働が行われます。
 地域住民の合意も得ていません。毎日新聞世論調査(8月8日、9日)では、再稼働に「反対」57%、「賛成」30%となっています。圧倒的多数が、不安を持って再稼働に反対をしています。その上、実効性のある避難計画も不十分であり、行政をはじめとした対応も多くが未整備のままです。再稼働させるための環境は整っていないのが現実です。
 「世界で最もきびしいレベルの新規制基準」についても、同型の原子炉である高浜原発の運転差止訴訟判決の中で、「合理性を欠く」などと指摘され、適合しても「安全性は確保できない」とされました。基準そのものが不十分であることが司法によって明らかにされています。規制委員会が何度も指摘しているとおり、新規性基準に適合しても安全とは言えず、過酷事故の起こることを前提にして、その対応を含めての規制基準であることは明確です。福島原発事故の検証も不十分な中で設けられた新規制基準には限界があり、安全が担保された訳ではありません。
 現在、日本国内の原発は一基も稼働していません。しかし、電力不足の声は聞かず、昨年後半からは原油価格の下落から石油や液化天然ガスなどの火力の燃料費が下がり、原発を持つ電力9社の今年の4月から6月期決算は、震災後初めて経常損益が全て黒字となっています。どこにも危険である原発を再稼働しなくてはならない理由はありません。
 この間、原発労働者の緊急時被曝線量の大幅引き上げ(年間250mSv、生涯1000mSv)が行われ、今後、自治体職員やバスの運転員など事故に対応する労働者の被曝線量の引き上げも検討されています。原発の事故を前提とした被曝線量の引き上げは、市民や労働者の健康的生存権の侵害にあたります。事故を前提に進められる原発の再稼働は、まさに住民や労働者の「命」よりも企業の「利益」が優先されるもので許すことはできません。
 原水爆禁止日本国民会議は、このような無責任体制の中で世論も人権も無視し、強引に進められる川内原発の再稼働に断固抗議し、「命」の軽視を許さず、現地の住民・市民とともに廃炉に向けてより一層の運動強化をはかっていきます。

 

2015年08月04日

原水禁世界大会・広島大会に3400人 被爆70年-あらためて「人類と核は共存できない」を確認

(more…)

2015年08月02日

被爆70周年原水爆禁止世界大会が福島・いわきから始まる

      

福島原発事故を忘れず、核廃絶・脱原発を確認

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被爆70周年原水爆禁止世界大会の福島大会が8月1日、いわき市の平中央公園で開催され、福島や東北各県をはじめ、全国各地から850人が参加しました。2011年3月の東京電力福島第1原発事故を機に、毎年福島で開催されて5回目の今年は、事故の避難者が多く暮らすいわき市で初めて開かれました。(写真上左)
原爆や東日本大震災の犠牲者などに黙とうをささげた後、主催者を代表し、川野浩一・大会実行委員長(原水禁議長)は、自ら長崎で被爆した経験をもとに「国家による原発被害に対する補償を明確にさせなければならない」と指摘、さらに「事故にも関わらず原発再稼働をめざし、さらに戦争法案を成立させようとする安倍政権に反対し、断固として平和を守ろう」と訴えました。
地元あいさつに立った角田政志・福島県平和フォーラム代表も「いまだに11万人が県内外に避難し。苦しい生活を余儀なくされている。放射性廃棄質の最終処分など何も決まっていない中で、政府は被害者に自立を強いて、補償を打ち切ろうとしている」と批判し、脱原発社会の実現を呼び掛けました。また、開催地のいわき市の清水敏男市長からも歓迎あいさつを受けました。
大会の基調提起を藤本泰成・大会事務局長が行い、特に「福島の今から考える フクシマを繰り返すな」として、「放射能被害は継続中で意図的な風化は許さない」「東電は被災者の暮らしに責任を持て」「国は被災者の健康に責任を持て」などの福島原発事故に対する責任を追求するとともに、「原発の再稼働を許さない」「破綻する核燃料サイクル」「原発輸出に反対する」「エネルギー政策の転換を」などと提起しました。
大会にはアメリカ、ドイツ、韓国からも参加があり、代表してドイツの緑の党の国会議員であるベーベル・ハーンさんは「ドイツでは原発の廃絶を決めたが、それは福島の事故によって原発に安全はありえないことを知ったことと、廃棄物の処理にめどがついていないからだ。そして、自然エネルギー推進で40万人の雇用を生み出した。これは平和への歩みだ」と強調しました。
被災者からの訴えとして、楢葉町からいわき市に避難している青木基・町会議員が、事故当時の混乱を生々しく語り、「避難先での病気悪化や孤独死などの災害関連死が1900人以上となって、直接死を上回っている。避難生活で家族の絆や地域の歴史・伝統が崩壊している。そうした中で楢葉町は9月にも避難指示の解除をしようとしているが、病院や介護などのインフラが完備しない中では生活が成り立たず、若い世代も戻ってこない。国が最後まで責任を持つべきだ」と苦しい実態を報告しました。
一方、毎年、全国の高校生が国連欧州本部を訪ねて核廃絶を訴えている「高校生平和大使」に今年選ばれた白河高校の鈴木愛望さんは「被災地の実態を訴え、核や戦争のない地球を作る手伝いをしたい」と元気に決意を述べました。
最後に大会アピールを確認し、集会後、参加者は横断幕やのぼり旗を持ち、市の中心部をデモ行進しました。

 

講演会やフィールドワークも行われる

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1日は、デモ行進が終わってから、再び参加者が集まり学習集会が開かれ、弁護士で、最近は映画監督としても活躍する河合弘之さんが「日本の原発の行方」と題し、原発を推し進めようとする、電力会社を中心とした、原発メーカー、ゼネコン、商社などの経済界、銀行、御用学者、メディア、そして経産省や原子力委員会、自治体、関係労組などによる「原子力ムラ」の構造を説明し、「これらの言い分をすべて論破するために、『日本を原発』という映画を作った。すでに500回以上自主上映している。ぜひ各地でも上映会を」と呼び掛けました。(写真上の右)
また、2日にはフィールドワークが行われ、原発のある大熊町や双葉町をはじめ、周辺の町村を訪ねました。多くの地点は放射線量がいまだに高いため、車窓からの視察になりましたが、徐染が行われ廃棄物を入れたフレコンバッグの山が各所に見られ、事故当時のままで無人となった家屋や草木が生えた田畑などが続いていました。特に原発の近くの高速道路上の空間線量は、許容限度をはるかに超える5マイクロシーベルト以上を表示しており、収束にはほど遠い実態が明らかになりました。
車窓からは第1原発の排気筒やクレーン、廃棄物の中間貯蔵施設が予定されている広大な原野、道路脇から住宅などにつながる道や玄関前は全てゲートが付けられた異様な光景が続いていました。
参加者からは「こんな実態の中で、政府や自治体は避難者の帰還をなぜ強引に進めようとしているのか」「フレコンバッグの耐用年数が来たらどうするつもりか」など、多くの質問や意見が出されました。説明にあたった、いわき実行委員会の担当者からは「先が見えない孤立感から自殺者も多い。この現実をどうか忘れないでほしい」と訴えがありました。

(写真左は常磐線「富岡駅」前、背後にフレコンバッグの山、右は双葉町の原発推進の看板、道路にはゲート)

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