3月, 2015 | 平和フォーラム
2015年03月30日
平和軍縮時評2015年3月号 集団的自衛権と安保法制与党合意 塚田晋一郎
昨年7月1日の閣議決定によって、安倍政権は日本を集団的自衛権行使可能な国にするための、直接的な契機となる最初の一穴を空けた。その際も、そして現在に至るまで、安倍首相はじめ政府高官らは、これは憲法の範囲内での方針の変更であり、いわゆる「解釈改憲」ではないと一貫して主張してきている。
しかし現在行われようとしていることは、戦後日本が70年間かけて積み上げてきた平和・非戦国家としての「ジャパン・ブランド」としての国際的・歴史的地位を失墜させかねないものである。そして憲法を最高法規とするこの国の規範や民主主義そのものを、根底から破壊する動きに他ならない。
集団的自衛権の罠
安倍政権は、集団的自衛権は国連憲章で認められた、すべての国が持つ権利であり、権利があるのに使えないとしている歴代内閣の解釈がおかしいのだという論理で、行使へ向けてひた走っている。しかし、集団的自衛権とはなにか、またどのように実際に行使されてきたのかという事実の検証はまったくなされていない。
集団的自衛権が国連憲章の中に盛り込まれた歴史的背景には、各国の政治的な思惑があった。多国間協調による集団安全保障の考えに基づき起草された国連憲章は、1944年の草案では、多国間における武力行使は国連安全保障理事会の承認事項としていた(当時、自衛権に関する規定は存在しなかったが、各国が個別的自衛権を有していることは暗黙の了解となっていた)。しかし当時すでに世界の覇権争いを画策していた米ソは、そのことを足かせと考えた。また、個別的自衛権のみでは生存できないと考えた中南米諸国が集団的自衛権の規定を要請したともいわれる。その結果、国連憲章に第51条(自衛権)が加えられることとなり、同条において個別的および集団的自衛権が初めて明文化された。
戦後の米ソ対立構造の中で、この第51条を根拠に、北大西洋条約機構(NATO)およびワルシャワ条約機構が構築され、集団的自衛権の行使を名目にした他国への軍事介入が繰り返された。1956年のソ連によるハンガリー介入や58年の米英によるレバノン・ヨルダン介入、83年の米のグレナダ介入をはじめ、軍事大国が他国に介入をした事例は枚挙に暇がない。
冷戦後、2001年の9・11攻撃をブッシュ米大統領は「新たなタイプの戦争」と定義した。そして翌12日の国連安保理決議1368は、「国連憲章に従って、個別的又は集団的自衛の固有の権利を認識し……あらゆる必要な手順をとる用意があることを表明する」とした。この安保理決議の下で、米国は個別的自衛権として、その他の参加国は集団的自衛権の行使としてアフガン攻撃を行った(9・11は国家による攻撃ではなかったので、自衛権行使ではなく、刑事事件に対する法執行であったとの見解もある)。
1991年の湾岸戦争は安保理決議678によって根拠づけられた。2003年のイラク戦争で米英は、12年前の同決議を改めて援用しつつ決議1441(イラクの武装解除義務違反)と組み合わせて武力行使の根拠とした。しかしそれらの決議は、具体的に個別的・集団的自衛権のいずれにも触れていない 。コフィ・アナン国連事務総長(当時)は、イラク戦争は国際法上の根拠をもたない「違法な行為」であったと明確に批判している 。英国では、政府が誤った戦争に導いたことを問うイラク戦争検証委員会が設置され、経過の徹底検証が進められてきた。イラク戦争において、英国軍は数百人規模の死者を出している。こうしたリアリティを欠いた議論は無責任であり、許されない。また、集団的軍事行動に参加すれば、それに反発するテロ攻撃を日本が受ける危険も高まる。2005年の英・ロンドン同時爆破事件では50名以上が、04年のスペイン・マドリード列車爆破事件では、190名以上が命を落としている。このようなリスクについて現在の日本ではほとんど議論がなされていない。
まとめると、集団的自衛権の行使とは、1.国連憲章によってすべての国が有する権利であることは自明である。2.しかし実際には軍事大国による他国への軍事介入の口実として用いられてきたものであり、集団的自衛権を用いる国は「普通の国」ではない。3.結果として、自国民の生命をさらに危険に晒し、実際に多くの民間人被害を出すことに繋がっている。すべての議論の出発点に、こうした事実認識が置かれなければならないはずであるが、昨年からの議論では、この点がまったく無視されていることは非常に問題である。
安保法制の与党協議
自民・公明両党は、2月13日から、集団的自衛権行使をはじめとする、安全保障関連法の国会提出に向けた与党協議を開始した。昨年7月1日の閣議決定に至る与党協議と同じく、自民党の高村正彦副総裁が座長を務め、公明党側は北側一雄副代表が協議のトップとなった。
初回の2月13日の協議は、武力攻撃に至らない侵害、いわゆる「グレーゾーン事態」と呼ばれる事態への対処が主題となった。これは集団的自衛権行使にはならない事態に関するテーマであり、与党協議の入口として比較的議論しやすいテーマ設定がなされたことがうかがえる。現在、ほとんどのメディアは「グレーゾーン事態」という言葉をそのまま使用しているが、そもそもこの概念自体を慎重に捉える必要がある。
具体的に想定されているのは、尖閣諸島などへの国籍不明の武装船等の上陸した場合などであるが、仮にそうした状況が起きた場合は、これまで通り海上保安庁がまず状況確認を行うべきである。いきなり武装した自衛隊を派遣すれば、相手の態度を硬化させ、無用な戦闘行為を誘発しかねない。いざ自衛隊を派遣するという事態になった場合には、どのような装備を搭載した、どのような艦船や部隊が出動するのか、まずは情報収集が先になる。情報のない中でいきなり重武装の艦船を派遣することは返って事態を深刻化させ、延いては自衛隊員の命を危険に晒すことにもなりかねない
安倍首相は、先般のシリアでのISによる人質殺害事件を利用し、邦人救出のためにも自衛隊を出動させることが必要であるとまで発言している。人質事件の経験から学ぶべきことは、まったく逆のことであり、情報収集や外交交渉などのインテリジェンス活動である。そのような事態が発生した際に、実力組織である自衛隊を送りこんでも人質の居場所の特定すら危ういという事実は、数度にわたる米軍特殊部隊による人質奪還作戦が失敗に終わっていることをみても明らかである。自衛隊の機関紙『朝雲』が、この安倍首相の発言に対して異議を表したことからも、いかに荒唐無稽な論理で自衛隊の海外派遣を無制限に拡げようとしているかがわかる。
3月5日の朝日新聞は、「(安全保障法制)乱立、五つの『事態』 集団的自衛権行使へ改正案」との見出しの記事で、「新たな安全保障法制をめぐり、政府は現行の武力攻撃事態法を改正し、集団的自衛権の行使を可能とする方針を固めた。日本が直接攻撃される武力攻撃事態に加え、日本の存立が脅かされる『存立事態(仮称)』なども加わり、複数の事態をいかに整理するのかが課題となる。それぞれの事態に応じて手続きや歯止めのかけ方も、与党協議の焦点となりそうだ」と報じた。
五つの事態とは、日本への攻撃がなされた場合の、1.武力攻撃事態、2.武力攻撃予測事態、3.緊急対処事態、それに他国への攻撃などの場合の4.存立事態(仮称)、5.重要影響事態(仮称)の五つである。このうち4.と5.が、政府が新設しようとしている概念である。「存立事態」は、「日本と密接な他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」とされ、この文言は、7月1日閣議決定の、集団的自衛権行使の新三要件の一つ目と一致している。「事態」の定義がどのようになっていくかは、法案がより具体化していく中で明らかになるであろう。いずれにしても、国民にとって非常に分かりにくい議論がなされており、民意との乖離は非常に大きい。
これまで政府は、97年の日米ガイドライン改定や99年の周辺事態法における「周辺事態」の概念、または2003年のイラク派遣の際には「非戦闘地域」など、その時々の状況に応じて、自衛隊の活動範囲を拡げるために、様々な概念を生み出してきた。とにかくまずは自衛隊を海外に出す必要があり、そのために概念を生み出すという、手段と目的が倒錯した論理である。
しかし、今回の法整備がこれまでの根本的にことなるのは、第一に、国民世論の反対の中で強行された「閣議決定」という非民主的手段による事実上の解釈改憲の上に行われていること、そして第二に、今回の法整備は、これまでのアフガン派遣における「テロ対策特措法」や、イラク派遣における「イラク特措法」(いずれも失効している)のような時限立法ではなく、今後の日本の外交安保政策を規定し続ける海外派遣恒久法(名称未定)の制定を含んでいることである。
政治日程ありきの与党合意
3月20日、安全保障法制に関する自公与党協議は、「安全保障法制整備の具体的な方向性について」と題する合意文書を発表した。昨年7月1日の閣議決定を法案に落とし込むべく2月13日から週1回ペースで再開された与党協議は、わずか5週間で方針の合意に至った。
報道に寄れば、関連日程は以下のとおりである。
3月26日 高村自民党副総裁(与党協議座長)、ワシントンで講演
4月12日・26日 統一地方選の投開票
26日 安倍首相訪米
27日 日米外務・防衛閣僚会合(2プラス2)、ワシントンで開催
→与党協議再開(短期間)
5月中旬 安保法制閣議決定
→国会審議
6月中まで 日米ガイドライン改定作業完了
6月24日 国会会期末 (→8月上旬頃まで延長?)
このように、首相・関係閣僚の訪米日程と国内の統一地方選の間断を縫う非常にタイトなスケジュールで安保法制は進められようとしている。国会では、集中審議もなされるであろうが、国民の理解はまったく進んでいない。最新の世論調査でも、集団的自衛権行使や、今国会での成立および新たな法整備そのものへの反対は過半数を超えている。その問題性をまず指摘し、3月20日の与党合意の概要および問題点を以下に概観する。
与党合意の概要と問題点
冒頭の項目、「全般」には、公明党の強い要望により、自衛隊の海外活動に当たって、1.国際法上の正当性、2.国会の関与等の民主的統制の確保、3.自衛隊員の安全確保、の3点が盛られた。しかし、閣議決定における「新三要件」と同様に、与党合意には随所に抜け道が設けられており、いずれも時の政権による恣意的運用が可能であり、何ら歯止めになっていない。
●武力攻撃に至らない侵害への対処(自衛隊法改正)
米軍および他国軍の「武器等の防護」を可能とし、その判断には「国家安全保障会議を含め内閣の関与を確保」としている。日本への武力攻撃がない段階で、米軍および他国軍を自衛隊が守るということである。これまでの、日本が攻撃をされた場合にのみ反撃するという専守防衛の概念から逸脱している。自衛隊が進んで出て行くことにより、国民の生命および幸福追求権が、むしろ損なわれることにつながる。
●他国軍隊に対する支援活動(周辺事態法→重要影響事態法(仮称))
これまでの「周辺事態」(そのまま放置すれば日本有事に至るおそれのある事態)を廃し、「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)の概念に。1.武力行使との一体化を防ぐための枠組み、2.原則国会の事前承認、の2点が要件。しかし「原則」には当然ながら「例外」がある。自民党はこの「原則」を書き込むことに執着した。
●他国軍隊に対する支援活動(海外派遣恒久法を新設)
1.武力行使との一体化を防ぐ、2.関連国連決議、3.国会事前承認を基本、4.隊員安全確保、の4点が要件。1.はこれまでの「非戦闘地域」ではなく「現に戦闘が行われていない現場」という、地理的概念に加え時間的概念を含むものに。例えば戦闘が休止した場所への補給任務を他国軍から要請され、出向いた時に戦闘が再開したとしても、自衛隊がただちに撤退することは不可能だろう。自衛隊の戦争参加に直結しうる。2.は、例えばイラク戦争も、過去の安保理決議の援用で開始され、当時のアナン国連事務総長は「違法な戦争」と批判した。同様に、今後も国際法が守られる保証はない。3.国会承認を「基本」としている。つまり例外がある。4.隊員の安全確保は、たとえば1.で述べたような状況に巻き込まれた場合、不可能だろう。戦闘現場の実相を無視しており、机上の空論に近い。
●国際的な平和協力活動の実施(PKO協力法改正)
「国連PKOでの業務の拡大、武器使用権限の見直し」を行う。PKO以外の多国籍軍による人道支援等の活動について、1.PKO参加5原則と同様の原則、2.関連国連決議等、3.国会事前承認を基本、4.隊員の安全確保、5.4点が要件。PKO参加5原則は、以下のとおり。(1)紛争当事者間の停戦合意、(2)受入国を含む紛争当事者の同意、(3)中立的立場の厳守、(4)以上の条件が満たされない場合に撤収可能、(5)武器使用は要員防護のための必要最小限に限る。「業務の拡大」により、より危険度の高いミッションに自衛隊が参加することが想定されており、武器使用基準も大幅に拡大されるであろう。「平和協力活動」の名の下に、戦後初めて日本人が他国の民を殺す状況を生み出しかねない。
●憲法第9条の下で許容される自衛の措置(集団的自衛権=自衛隊法・武力攻撃事態法などの改正)
1.「新三要件」によって新たに「武力の行使」が可能となる新事態について武力攻撃事態等との関係を整理し、名称・定義を現行の武力攻撃事態法に明記、2.自衛隊法第76条(防衛出動)、第88条(防衛出動時の武力行使)の改正、3.原則国会の事前承認、の方向性で検討するとしている。「新三要件」は歯止めになっておらず、無制限の武力行使につながりかねない。また、自衛隊法第76条は、防衛出動は「武力攻撃事態法第9条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない」としている(武力攻撃事態法第9条は事前承認が「原則」だが、「事前に国会の承認を得るいとまがない」場合には事後も認めている)。この点がどうなるのかも注意が必要である。第88条は「わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる」の箇所が変えられると思われる。
●その他関連する法改正事項
「(3)在外邦人の救出」はいわゆる「テロリスト」等により拘束された邦人の救出であるが、ISに対する米軍特殊部隊の人質奪還作戦が幾度も失敗に終わっていることなどからも、こうしたミッションに自衛隊を投入することの意義は非常に疑わしい。戦闘の現場を一番知る自衛隊の機関紙である『朝雲』が反論していることも想起したい。
おわりに
戦中派の方々は、現在の状況を「いつか来た道」と批判されることが多くなってきた。少し前まで、特に若い世代の中では「そんなの大げさだ」との受け止めも多かったように思う。しかし、現在起こっていることをこのまま見過ごし続ければ、その行く末は、戦後日本初めて、日本人が戦闘行為によって他国の民を殺し、また日本人も殺されるという日が来ることになろう。私たちはいま、戦後日本の歴史において、これまでになく重要な十字路に立っていることを改めて想起し、世代を超えてあらゆる努力を尽くさねばならない。
2015年03月28日
フクシマを忘れない!さようなら原発大講演会に1300人
東京電力福島第1原発事故から4年、安倍政権が進める原発再稼働を許さず、脱原発社会を作ろうと、「『さようなら原発』一千万署名市民の会」の呼びかけで、3月28日、東京・新宿区の新宿文化センターで、「フクシマを忘れない!さようなら原発大講演会」が開かれ、市民など1300人が参加しました。
開会あいさつで呼び掛け人の鎌田慧さん(ルポライター)は、「福島原発事故はまったく収束していない。しかし、政府は原発再稼働を進めようとしている」として、再稼働に反対し、原発をなくすまで闘う決意を呼び掛けました。
福島現地からの報告をいわき市議で、東京電力幹部らを業務上過失致死傷容疑で告訴した福島原発告訴団副団長の佐藤和良さんが行い「今も12万人もが避難をし、子どもたちの甲状腺ガンが多発、汚染水問題や、作業現場では労災事故が相次いでいる」と現状を報告。「そうした中でも放射線量が下がったとして強制的に帰還をさせようとしている。人の命よりも人口流出を恐れている」と、政府や自治体を批判。原発事故が誰の責任で起きたか明らかにするための告訴・告発の闘いに協力を呼び掛け、「あきれはてても、あきらめない!」と訴えました。(顔写真中)
作家で呼びかけ人の大江健三郎さんは、鎌田慧さんの脱原発の著書や「それでも日本人は原発を選んだ」(朝日新聞出版)、「安倍改憲の野望」(かもがわ出版)などの本をあげ、それらの著書の憲法学者の奥平康弘さん等の考えや、ドイツのメルケル首相の言葉を引用しながら、「原発のある状態では人間の未来はなく、やめる以外に希望は見出せない。それを私たちは引き継いでいかなければならない」と述べました。(顔写真左)
「福島の放射能汚染の現実から」と題し、京都大学原子炉実験所の今中哲二さんは、原発事故がどのように起こったかを改めて検証し、事故直後からの飯舘村での実態調査などを通じて、「日本も放射能汚染と向き合う時代になった」として、「日本が民主主義の国であるなら、原発の安全性に責任のあった人々をすべて審問し、裁判にかけてしかるべき罰をうけてもらうことが必要」と強調しました。(顔写真右)
最後に呼びかけ人の落合恵子さん(作家)が、「安倍政権がやっていることは民主主義に対するテロリズムだ。いつまでも続くことはできない。これにノーと言い続けよう」と呼び掛けました。
最後に参加者全員が、原発に対し「NO」と書かれた紙を掲げて、「再稼働反対」と一斉に声をあげました。(上写真右)
2015年03月28日
ビデオ報告「3.28フクシマを忘れない!さようなら原発大講演会」
2015年03月24日
翁長沖縄県知事の「辺野古移設関連作業停止指示」に関する事務局長談話
翁長沖縄県知事の「辺野古移設関連作業停止指示」に関する事務局長談話
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 藤本泰成
沖縄県の翁長雄志知事は、3月23日、米海兵隊普天間基地の移設先とされる辺野古沖新基地建設に関して、移設に関連する作業の1週間以内の停止を沖縄防衛局に指示したことを発表しました。
沖縄県は、立ち入り禁止区域を示す浮き輪を固定するために、防衛局が投下した最大45トンのコンクリートブロックが、埋め立て予定区域外の珊瑚礁を損傷しているのではないかとし、海底調査を実施してきました。しかし、新基地建設反対の運動を阻止するために建設予定地を大きく囲むように設定された立ち入り禁止区域内での調査を米軍が拒否したため、翁長知事は、岩礁破砕許可条件にある「公益上の事由」に基づいて工事の中止を命じたものです。この間、翁長知事は、仲井眞弘多前知事の埋め立て承認手続きの可否を問う第三者委員会の結果が出るまで工事を中止するよう防衛局に求めていましたが、3月12日には半年間中断していたボーリング調査を再開していました。翁長知事の今回の勇気ある決断は、法律に基づいた手続きであり、県民世論を無視した新基地建設工事の強行に反対してきた平和フォーラムは、心から歓迎するものです。
米国務省のハーフ副報道官は、「移設は計画通り進んでいくとわれわれは理解している」と語り、移設は住民の負担軽減と米軍の能力向上につながるという傲慢な見解を示しました。同様に、菅義偉官房長官は「仲井眞前知事に承認を受けた、粛々と工事は進める」として、翁長知事の指示を無視するとの発言を行っています。
2013年12月27日、仲井真弘多前沖縄県知事は、県外移設との主張を突然翻し、唐突に辺野古沖の埋め立て申請を許可し、新基地建設工事に道を開きました。「選挙で『県外移設』を掲げた政治家としての公約違反であり、県議会が重ねて全会一致で求めてきた『県内移設反対、普天間基地は国外・県外移設』とする決議を決定的に踏みにじるものである」とした、2014年1月10日の沖縄県議会の抗議決議が、菅官房長官が主張する「仲井眞前知事の承認」には、県民の支持も含めて民主的手続きを全く欠いたものであることを明白にしています。加えて、2014年11月の県知事選挙での翁長雄志候補の圧倒的勝利が、「普天間基地の国外・県外移設」が県民の意志であることを揺るぎないものにしています。日本政府および米国政府は、直ちに翁長知事の指示に従い、作業を停止するべきです。
辺野古沖やキャンプ・シュワブゲート前では、工事の強行に反対する県民の法に則った整然とした抗議行動が行われていますが、海上保安庁は、反対派女性の一人に馬乗りになって制圧するなど暴力的排除を行い、けが人の出る事態となっています。沖縄県民、そして沖縄県知事の話に耳を貸さない強硬な態度は、民主主義国家と呼べるものではありません。日本政府は、直ちに沖縄県民および沖縄県知事との対話を開始し、沖縄県民の「国外・県外移設」との要求に沿った政策の転換を図るべきです。
平和フォーラムは、政府の傲慢な姿勢を許さず、翁長知事の判断を尊重し、沖縄県民の思いに連帯して、普天間基地即時返還・辺野古新基地建設反対のとりくみに全力を尽くすことを決意します。
2015年03月23日
集団的自衛権行使を前提とした安全保障法制に関わる与党合意に反対し、憲法の平和主義に基づく安全保障体制の構築を求める声明
集団的自衛権行使を前提とした安全保障法制に関わる与党合意に反対し、憲法の平和主義に基づく安全保障体制の構築を求める声明
フォーラム平和・人権・環境
代表 福山真劫
自民・公明の与党両党は、3月20日に開催された「安全保障の法整備に関する与党協議会」において「安全保障法制整備の具体的な方向性について(とりまとめ案)」を基本的に合意した。冒頭には「我が国が日本国憲法の下で平和国家として歩んできたことを踏まえつつ、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備する」と記載され、その全文から見えてくるのは、「武力の行使をもってしないと国民の命と平和な暮らしは守れない」との誤った認識である。
日本国憲法は、その前文において「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」と謳っている。そのことを基本に、憲法9条1項において「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とし、その2項において「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を規定した。武力を行使しないことを基本にして、日本国憲法は平和をつくり上げるよう要請している。その要請に基づいて、日本は戦後、武力行使を行わず平和国家の道を歩んできた。
与党合意の「日本国憲法の下で平和国家として歩んできた」とは、そのことを指す。そう言いながら、なぜ武力行使を基本に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことになるのか、全く理解できない。初めから武力行使ありきの安全保障の議論に、私たちは絶対に与しない。
米国の歴史家ジョン・W・ダワーは、「日本は米国の軍事活動に関与を深める『普通の国』ではなく、憲法を守り、非軍事的な手段で国際問題の解決をめざす国であってほしい」と述べている。与党合意はその「普通の国」をめざしている。世界の警察として君臨してきた米国の強力な同盟国として、その世界覇権に協力することを基本に、自衛隊の軍事活動の全面展開をめざしている。
イスラム社会の混迷を見れば、米国に与することが日本に何をもたらすかは明らかだ。戦後一度としてなかった外国人による政治的テロの脅威も格段に高まり、世界に展開される自衛隊員の生命へのリスクも高まり、武器使用の拡大は偶発的な交戦状態を生み局地戦争への拡大も懸念されるのではないか。戦後の平和主義は根底から崩れていく。
「いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守り抜く」と言いながら、これほどまでに国民の命をないがしろにする政権が、戦後あっただろうか。アジア・太平洋戦争、ヒロシマ・ナガサキ、東京大空襲、命の尊厳に関わる歴史とその教訓に全く学ぶことのない政権は、日本の将来をどのように描いていくのか。
戦後70年を経過して、なお、日本国憲法の平和と民主主義の理念は輝きを失っていない。平和フォーラムは、その理念に基づいた、武力によらない平和構築への努力を続けることこそが、私たちの安全保障につながるものと確信する。そのために、安全保障法制の与党合意に反対し、憲法理念を基本にした平和構築へ、「戦争をさせない1000人委員会」の全国的運動と連帯し、組織の総力を挙げてとりくむことを決意する。
2015年03月18日
(声明)米軍機の相次ぐ部品落下事故に抗議する
米軍機の相次ぐ部品落下事故に抗議する
フォーラム平和・人権・環境
(平和フォーラム)
事務局長 藤本 泰成
米海兵隊・普天間基地所属のMV-22オスプレイが、民間地上空で部品を落下させた可能性があることが3月16日にわかった。事故が発生したのは3月12日で、米当局から通報があったのは4日後になっている。
2015年1月以降、1月15日AH1W攻撃ヘリコプター、1月23日HH60救難ヘリコプター、2月4日F15戦闘機、2月12日EP3電子偵察機、3月12日MV-22オスプレイ、3月16日RC135V電子偵察機と6件もの米軍機による部品落下事故が立て続けに起きている。一歩間違えば、人命にもかかわる重大な事故である。にもかかわらず、米軍当局から日本政府への連絡は、発生した翌日もしくは1月23日、3月12日の事故では3、4日後の通報となっている。日米合同委員会の合意(1997年3月)では「速やかに」通報することが日米間で合意されている。事故を通報するという最低限の約束ごとも軽視されている状況だ。これは民間航空機ではありえないことだ。
しかも米軍機に関しては、航空特例法によって、空を安全に飛行するために制定されている航空法が大幅に適用除外されている。民間航空機の事故では、国土交通省の外局である運輸安全委員会が、事故原因の究明調査、調査結果に基づき必要な対策を求めることになっている。しかし米軍機の事故にかかわる調査機関はない。存在するのは、密室で議事録も公開されない日米合同委員会があるだけである。そして、この日米合同委員会で合意された事項ですら、守られることが皆無なのである。
中谷元防衛大臣が部品落下事故に対して、「米軍に遺憾の意を表明」し、「早期の情報提供、安全管理、再発防止策の徹底を申し入れている」と述べているが、何ら具体策を示しているわけではない。日本政府として、事故原因が究明されるまで飛行停止を求めることが、日本の市民社会において、安全確保のために最低限すべきことだ。
現在、日本にある米軍基地および自衛隊基地の間で、訓練移転として米軍機の行き来が頻繁に行われている。米軍機の部品落下事故は全国に広がるということだ。米軍基地が過重に押しつけられている沖縄に限らず、日本全国、とりわけ軍事基地周辺住民にとって、安全といのちがないがしろにされ、日常生活を不安に陥れる事態が広がることを座視することはできない。
平和フォーラムは、相次ぐ米軍機の部品落下事故に強く抗議するとともに、日米双方に事故原因の究明を徹底すること、その結果が出るまでは事故機の同型機も含むすべての飛行を中止することを求めるものである。
2015年03月15日
「原発のない福島を!県民大集会」に6500人参加
「原発のない福島をめざそう!」。東日本大震災による福島第一原発事故から4年目を迎えた3月14日、福島市「あづま総合体育館」において「2015原発のない福島を!県民大集会」が開かれ、県内外から6500人が参加しました。県平和フォーラムや生協連、女性団体連絡会などさまざまな団体の代表が呼びかけ人となった実行委員会が主催し、事故の翌年から毎年3月に開催されています。
計画的避難地域に指定されている川俣町山木屋地区の皆さんの勇壮な「山木屋太鼓」の演奏や、震災をきっかけに結成されたグループ「ハッピーアイランド」の創作ダンスのアトラクションで幕開け。実行委員会を代表し、角田政志実行委員長(福島県平和フォーラム代表)が「事故から4年がたったが、収束にはほど遠い。12万人も人たちが避難生活を余儀なくされ、故郷に戻れるかどうか、先が見えない。このオール福島の集会を原点に、すべての原発の廃炉と被害の補償、生活支援を国と東京電力に求めていこう」と訴えました。
連帯あいさつに立った「さようなら原発1000万署名市民の会」呼びかけ人の落合恵子さん(作家)は「原発事故を機に、私たちは誰かを犠牲にしない社会を約束した。しかし、いま、原発が再び稼動しようとし、沖縄に新たな基地を作ろうとしている。大事なことを忘れさせようとする装置がある。しかし、それに流されずに、福島とずっと寄り添っていきたい」と呼びかけました。
トークリレーでは、県内のさまざまな方々が思いを語りました。ハイロアクション福島の武藤類子さんは「復興とは元に戻ることではなく、新しい道をたどることだ。世界中から原発をなくし、一人ひとりが尊重される社会を作ろう」と述べました。JA新ふくしま農協の菅野孝志さんは「農業王国福島の信頼は地に落ちたが、農産物検査や土壌調査を徹底して行い、次の世代のために豊かな土と自然を守る」と決意を表明。
汚染水問題に直面するJF相馬双葉漁協の遠藤和則さんは「試験操業を繰り返し、検体調査をやって少しずつ再開に向けて動き出したところに、再び汚染水問題が起きている。まだ本格操業まで壁があるが、安全な魚を出荷したい」と厳しい現状をにじませました。 旅館業などの状況について、喜多方市で旅館を営む檜澤京太さんが「福島は全国屈指の観光地でおもてなしの努力を重ねてきた。その文化をなくさずにオール福島で新たな行動を」と訴えました。
若い世代の訴えでは、昨年、福島から高校生平和大使に選ばれた石井凛さんは「ジュネーブの欧州国連本部で福島のことを訴えた。これからも発信を続けたい」と決意を述べ、同じく平和大使の本田歩さんは「原発は正義に反するものだ。故郷をお金で売ってはいけない。命を守るために原発に反対する」と力強く訴えました。
曹洞宗円通寺住職の吉岡棟憲さんが「仏教者として国に懺悔することを求めたい。しかし、国は謝罪せず嘘をついている」とし、「浜通り、中通りを元通りに」と声を上げました。最後に「事故を記憶し、事故から学び、これからの人たちに明るい未来を約束するために、『原発のない福島を』めざし、力を合わせていきましょう」と集会アピールを採択。呼びかけ人の清水修二・福島大学副学長が「これまで想定される損害賠償だけでも11兆円にのぼる。このツケは結局国民に回る。しかし、政府は原発推進を変えていない。これをただしていこう」と閉会あいさつを行い、終了しました。
翌15日には、原発事故による放射能汚染に襲われ、いまだ全住民の避難が続く飯館村などを視察。放射線量が高いために立ち入り禁止になっている地域や、除染作業で出た膨大な土などを詰めたフレコンバッグの山などを視察しました。
2015年03月11日
東日本連絡会 第1回 外務省・防衛省要請行動
オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会とフォーラム平和・人権・環境は2015年3月11日、オスプレイの配備問題をめぐって外務省、防衛省に対して申入れを行いました。
2015年03月09日
地域を破壊するTPPは止めよう!市民団体などが集会開く
「公約も国会決議も踏みにじる『合意』はあり得ない!」と、東京・渋谷区の「東京ウイメンズプラザ」で、「TPPを考えるフォーラム 地域を破壊するTPPは止めよう!」が開かれ、市民など約200人が参加しました。TPPは農業に限らず、地域経済・雇用、医療などを脅かすことになります。しかし、交渉は秘密理に行われており、内容の情報開示もないまま、国会決議を踏みにじる合意は許されないとして、平和フォーラムも含む市民団体などによる実行委員会(主婦連合会の山根香織会長など呼び掛け)が主催しました。
基調講演を京都大学大学院の岡田知弘教授が「TPPは地域に何をもたらすか」と題して行い、「TPPは多国籍企業の利益追求のためにあり、関税だけでなく、様々な非関税障壁の撤廃は、国や地方自治体の主権、国民主権を侵害することになる」としました。さらに、TPPを先取りする安倍流「構造改革」や国家戦略特区による「岩盤規制」の撤廃と資本参入の危険性を指摘しました。
パネルディスカッションでは、全国農協青年組織協議会理事で、熊本で農業を営む善積智晃さんが農業現場の報告として、「TPPは地方創生と逆行する。食料は重要な資源だ。なぜ国は守ろうとしないのか」と訴えました。また、「TPPは医療を壊す」として、福岡県歯科保険医協会の杉山正隆副会長が、「TPPは混合診療の解禁や株式会社の病院参入、薬代の高騰などを招き、実質的な国民皆保険制度の崩壊を招く」と警鐘を鳴らしました。