12月, 2013 | 平和フォーラム

2013年12月30日

平和軍縮時評12月号 米国防費の聖域扱いは終わった―それでも核兵器予算は増額のまま  湯浅一郎

1)   減少が始まった米国防費

2001年にブッシュ政権が登場してから今日までの米国防費の推移(図1)を見ると興味深い。2001年には、約3100億ドルであったものが、ブッシュ政権の最後の年2008年には、約6700億ドルと倍増している。これには、アフガン戦争やイラク戦争の戦費増も関わっている。そしてオバマ政権になってからは、2010年をピークにして、2011年から減少が始まっている。その契機は、2008年9月15日、リーマン・ブラザーズが破たんしたことにある。このリーマンショックに伴う金融危機をきっかけとして、米国は、2年続けて1兆ドルの空前の財政赤字に陥った。仮に1ドル100円とすれば100兆円になる。これは、日本の一般会計予算総額に匹敵する。オバマ政権(2009年1月)の最大の任務は、これをいかに克服するかにあった。そして、「2011年予算管理法(BCA)」により2013年から実際の削減が始まり、聖域であった国防総省(DOD)予算や組織見直しにも手がかかり始めているのである。これまでのところでは、主に戦費の減少が目立つ。このことは、米国は戦争をやっていられる情勢ではないことをしめしている。基本予算は、まだ横ばい程度であるが、それでもわずかづつ減少が始まっていることも重要である。以下、国防予算削減の状況を見ていく。

米国防予算は、長期にわたり聖域とされてきたが、2013会計年度は、「2011年予算管理法」(BCA、公法112-25)により強制的に削減された。11年8月2日に成立した同法は、2012-21会計年度の10年間に関して支出総額を抑制する方法を規定している。抑制対象となるのはもっぱら裁量的支出である(米国の予算は、メディケアやメディケイドを含めた社会保障関連費や公債費などの「義務的経費」と歳出法による議会承認を必要とする「裁量的経費」に分かれる)。01-10会計年度の積算では、米連邦の予算全体が24.42兆ドル。そのうち裁量的経費が10.09兆ドル、さらにそのなかの国防費が5.40兆ドルとなっている。裁量的経費に占める国防費の割合は実に53.5%に上る。そのために軍事費の大幅削減は避けられない。
BCAはまず各会計年度に関して支出認可額の基本的上限額を定め、そこへ支出強制削減を加えて最終的な上限を算出する仕組みになっている。たとえば、13会計年度の裁量的国防予算は、基本的上限が5460億ドル、強制削減が547億ドルとなり、差し引き4913億ドル分の支出しか認められないことになる。また同法では、強制削減が13年1月2日を期して実施されることになっている。米国政府と議会は、BCAを修正しない限り、これらの期日までに支出削減の具体策をまとめなくてはならなかった。
しかし、オバマ政権が12年2月13日に議会に提出した13会計年度国防予算は、BCAが認める支出額を大きく上回って、裁量的支出に6390億ドル(うち、戦費関連885億ドル)をあてるかなり強気のものだった。BCAは戦費関連を強制削減額算定のベースに含めないと規定しているため、5510億ドルが計算のベースとなる。最終的にはここから592億ドルを強制削減しなくてはならない。ただし、オバマ大統領の意向で、軍人関連の支出は強制削減対象に含まれないことになっているので、作戦・維持費、調達費、研究開発費、軍事建設費など、国防予算内の他の分野がより多くの削減額を引き受けることになる。政府要求に対する強制削減率は10.3%となる。
2012年末、米国では、ブッシュ政権時代の大型減税の失効とBCAによる支出強制削減が集中する年末年始の「財政の崖」回避に向けて、オバマ政権と議会、民主党と共和党の間で激しい議論が闘わされた。13年1月2日、「2012年米国納税者救済法」(ATRA、公法112-240)が滑り込みで成立し、当面の危機はなんとか回避された。同法は、世帯年収45万ドル以上の富裕層以外の減税措置を恒久化すると同時に、支出強制削減の期日を2か月先送りするものである。支出強制削減の期日は1月2日から3月1日へと延長された。また、13会計年度に関して、国防予算自体の上限を5460億ドルから5440億ドルへと減らす一方で、国防予算に関する支出強制削減の額を年間547億ドルから427億ドルへと減額した。
しかし、ATRAは事態の根本的解決先送りするための暫定手段に過ぎず、イラク、アフガン戦争を経た米国があらたな軍事戦略を構築し予算面での「選択と集中」を迫られている状況に何の変化もない。この点に関して議員や民間からもすでに数多くの提案が出されている。その中には、核兵器予算を100億ドル削減するよう要求しているエドワード・マーキー下院議員(民主)らの提案が含まれている。

2)   米核兵器予算、軍事費削減でも続く増額

米軍事戦略において、依然として中心に位置する核兵器関連予算の状況を見てみよう。緊縮予算編成が求められるなか、12年2月13日に発表された米エネルギー省(DOE)国家核安全保障管理局(NNSA)の2013会計年予算案には、対前年度比4.9%増にあたる115億ドルが計上された。NNSA予算の3分の2にあたる75.8億ドル(対前年比5.0%増)は、「核兵器活動」関連予算である。米国の核兵器予算は、これとは別に年間300億ドル近くの国防総省(DOD)の開発、維持・運用等の予算があるが、ここでは保有核兵器の維持にとって重い意味をもつNNSA予算に焦点を当てる。
NNSA予算案で著しい増額要求がなされているのは次の二つの分野である。

  • 備蓄核兵器維持管理(SSMP)活動:核兵器の維持、検査、改修、信頼性評価、解体・廃棄、研究・開発、認証など広範な活動を通して備蓄核兵器の維持管理を行う。13会計年要求額20.9億ドル(対前年比11.5%増)。
  • 技術基盤・施設における準備活動:NNSAが管轄する3つの核兵器研究所、4つの核兵器製造工場及びネバダ国家安全保障施設(旧ネバダ核実験場)における施設整備と研究開発を中心とする。要求額22.4億ドル(対前年比11.7%増)。この中で中心となるプロジェクトは、「核態勢見直し」(NPR)において施設名を特記されたY12国家安全保障複合体のウラニウム処理施設(UPF)とロスアラモス国立研究所の化学・冶金研究核施設の大規模更新(CMRR-NF)である。UPFは3億4千万ドルと前年の倍額で建設を加速させる。一方、CMRRNFは、水質・土壌汚染等がネックとなり、「少なくとも5年延期」となり予算には含まれない。

10年12月に採択された米上院の新START批准承認決議には、3分野への支出に関する支出10年計画の実行を政府に義務付ける条項が含まれていた。3分野とは、1.備蓄核兵器維持管理、2.核兵器研究所の設備、研究開発への投資、及び3.戦略運搬手段を含む核戦力の競争力維持である。このうち1.と2.のすべてと3.の一部がNNSA所管である。
図2は、NNSA13会計年予算書の総括表をもとに、核兵器活動(Weapons Ativities)に関する予算をぬきだして、10年12月の10年計画と、13会計年予算での「5年計画」を対比したものである。「緊縮予算」への配慮は若干の下方修正に反映されているが、備蓄核兵器維持の予算は、ひき続き増額が見込まれている。NNSAは、10年5月の報告書で、「将来のNNSAのインフラは、よく計画されることによって約3000から3500発の作戦配備、兵站予備及び予備貯蔵弾頭を支援する」ものであるとしている。これは、2010年5月に公表した備蓄核弾頭数約5100発からの大幅削減ではある。しかし、新STARTによる配備弾頭数の上限1550発を差し引くと、それとほぼ同数の備蓄弾頭を残すことを意味している。
財政赤字により軍事費も削減される情勢下で、核兵器維持予算へは相変わらず増額が見込まれている現実は、米国内の政治力学に委ねておく限り、核兵器ゼロの世界への道筋が見えてこないことを強く印象付けている。日本も含めた国際世論の力が必要である。

とは言え、聖域であった米国の軍事費の削減が始まっていることも事実である。問題は、この軍事費削減という状況を、軍事力によらない道づくりのためにどう生かしていけるのかである。ここには、2つの相反する現象が見られる。第1は、2012年1月に出された「合衆国のグローバル橋動力を持続する-21世紀の国防における優先課題」と題された米国の新国防戦略指針に見られるように、軍事の役割を低減し、防衛、外交、開発、国土安全保障、情報などをバランスさせ、統合した「全政府的アプローチ」の必要性を強調していることである。国際的な利害対立に対して、軍事一辺倒ではなく、外交を中心に総合的に対応していくというわけである。
※「本時評」2012年2月号参照。
もう一つは、自らの財政赤字による慢性的な国防費の削減を補うために、同盟国に対する応分の「責任分担」と「財政負担」の要求となって跳ね返ってくる側面である。13年10月の日米安全保障協議委員会「2プラス2」では、日米の軍事一体化と相互運用の強化が確認され、14年中に日米防衛協力指針の見直しをすることが合意された。日本政府は、軍備を拡大し、同盟国としての責任分担を拡大しようとしているのである。
我々日本の市民のすべきことは、米新戦略における軍事の役割を低減し、全政府的アプローチを広げていく方向性を大きく取りだすことである。例えば北東アジア非核兵器地帯の設立など外交に基づく平和の枠組み形成を求める世論を強めていくことが改めて求められている。

2013年12月27日

辺野古新基地建設容認に対する抗議声明

2013年12月27日

辺野古新基地建設容認に対する抗議声明

フォーラム平和・人権・環境
代表 福山真劫

 2013年1月27日、日比谷野外音楽堂での「オスプレイの配備撤回」「普天間基地の閉鎖・撤去」を求める集会に、沖縄県内の41市町村すべての長および議会議長が集合した。「安倍首相は日本を取り戻すと言っているが、その中に沖縄は入っているのか」。翁長雄志那覇市長の発言に続いて、沖縄県内からの多くの発言が続いた。どの声も宜野湾市の米軍普天間基地へのCV-22オスプレイの配備に強く反対していた。オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会実行委員会から安倍晋三首相に宛てた「建白書」には、オスプレイ配備反対の要求とともに「米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること」との文言が示されていた。沖縄県は、保革一致して普天間基地の県外移設を要求していた。このことは、県民全体の悲願であり、政治判断が入り込む余地のない一枚岩とも言える堅固な要求であったはずだ。

 しかし2013年11月27日、自民党沖縄県連は中央の圧力に屈し、普天間基地県外移設の方針を名護市辺野古での新基地建設容認へと変更した。そして12月25日、安倍晋三首相の示す沖縄振興策と基地負担軽減策を了として、仲井真弘多沖縄県知事は移設先の辺野古の埋め立て申請を承認する意向を固めた。「驚くべき立派な内容を提示いただいた」との仲井真知事の発言を沖縄県民はどのように聞いたのか。

 安倍首相の示した負担軽減策は交渉の開始を示唆するもので、具体的な内容は、オスプレイの訓練飛行の全国展開しかない。しかし、安全性への疑問も解消されず、航空法上も認められないオスプレイの全国展開が、市民社会の合意を得るとは考えられない。沖縄では、日米合同委員会の合意を無視して飛び回るオスプレイに、きびしい抗議の声が上がっているが、日本政府は何の手立ても講じていない。市民社会は、日本政府の負担軽減の言葉に全く信頼を置いていない。日米地位協定の改定や基地返還の前倒しなども不確実な「空手形」であって具体性はない。また、毎年3000億円台という沖縄振興策も、これまでもそうだったように、沖縄県民一人ひとりの生活を向上させるものでないことは明白である。北部振興策が名護市民の生活向上に何ら寄与しなかったことは、2010年の市長選挙での選択に表明されている。そもそも交付金政策が基地問題や原発問題で何をもたらしたか、沖縄県民は騙されまい。

 1872年から始まる「琉球処分」以降、沖縄の歴史は中央政府からの弾圧と差別の歴史である。沖縄文化の破壊と差別、「本土決戦の捨て石」とされた沖縄戦の悲劇、戦後の米軍政下での苦難、沖縄の近現代は沖縄県民の苦難の歴史である。狭い県域に全国の米軍基地の74%を引き受ける沖縄、賃金水準も失業率も全国最低水準に置かれる沖縄。そして今、沖縄県民の多くが反対するなか、辺野古へ新基地建設を押しつけようとしている。県民の主権者としての権利はどこに存在するのか。

 平和フォーラムは、沖縄県民の声に寄り添い、基地のない沖縄をめざしてとりくんできた。「米軍は日本を守るために存在する」という幻想に惑わされてはならない。米軍は自らの利益のために存在する。そのことを忘れてはならない。沖縄を今なお縛り続けている「国への従属」「中央への従属」「米国への従属」、この3つの従属を解消しなくてはならない。

平和フォーラムは、今後も、沖縄県民とともに闘うことを決意する。そして、県民の声を無視した辺野古新基地建設に反対し、政府・自民党並びに沖縄県知事・自民党沖縄県連に対し、米国従属の政策を改め、普天間基地の米国内移転と即時返還、在日米軍基地の縮小・撤去への交渉を直ちに開始することを強く要求する。
 

2013年12月26日

安倍晋三首相の靖国神社参拝への抗議声明

2013年12月26日

安倍晋三首相の靖国神社参拝への抗議声明

フォーラム平和・人権・環境
代表 福山真劫

 2013年12月26日、安倍晋三首相は靖国神社に参拝しました。現職の首相が参拝するのは、2006年の小泉純一郎首相以来7年ぶりとなります。

 今春の靖国神社例大祭には、麻生副総理以下4閣僚及び168人の国会議員が参拝しました。安倍首相は、アジア諸国の批判に対して「我が国の閣僚はどんな脅しにも屈しない」と発言しました。また、侵略戦争についての国会答弁において「侵略という定義は国際的にも定まっていない。どちらの国から見るかで違う」とし、日本が犯した侵略戦争の過ちを否定するかのような発言を行っています。また、8月15日の全国戦没者追悼式の式辞においても、歴代首相が言及してきた侵略戦争における加害責任に対する反省や哀悼の言葉を省略しました。第一次安倍内閣時代に参拝しなかったことを「痛恨の極み」と表現してきた安倍首相にとっては、当然の行為なのでしょうが、しかし、これまでの経過を顧みない個人的主張に沿った発言や行為は、一国のあり方を危ういものにすると考えられます。

 8月26日、韓国において国連のパンギムン(潘基文)事務総長は「日本政府や政治指導者は、とても深く自らを省みて、国際的で未来志向のビジョンを持つことが必要だ」と述べ、日韓における歴史認識問題に対して日本側の対応を非難しました。韓国のみならず国際的な受け止めの中で、きわめて異例の発言に至ったと考えられます。日本の政治家は、この発言を真摯に受け止めなくてはなりません。

 現在、日本と中国・韓国は、領土問題や歴史認識をめぐって対立的関係に陥っています。しかし、一方で2012年の日本の貿易は、財務省貿易統計で見ると輸出入とも第一位は中国であり、輸出総額の54.6%、輸入総額の44.2%はアジア諸国となっています。日本がアジアの一員であること、そしてアジアとの関係なくしては将来を構想できないことは明らかなのです。安倍首相は、衆議院総選挙に先立つ自民党総裁選から「強い日本をつくる、日本を取り戻す」と発言をしてきました。安倍首相の言う「強い日本」とは、アジア諸国を差別し侵略と植民地支配に邁進した戦前の日本なのでしょうか。「私を右翼の軍国主義者と呼びたいなら呼びなさい」と開き直る姿勢は、そのことへの懸念をいっそう深いものにしています。

 平和フォーラムは、侵略戦争と植民地支配の歴史の反省に立ち、アジア諸国民への加害の責任を果たし、新しい友好と協調の関係を構築していくこと、加えて東アジア地域の経済的統合をめざす中で平和と繁栄の社会を構築していくことを主張してきました。そのためには、アジア諸国民が納得する歴史認識と戦後責任を明確にしていくことが重要であると考えています。アジア諸国が過去の侵略戦争の象徴と考え、その首謀者として断罪された戦争犯罪人を合祀する靖国神社への安倍首相の参拝が、日本の将来にとって何の意味があるのでしょうか。戦前の社会で、戦争の遂行に果たしてきた靖国神社の役割を考えるとき、アジア諸国を含めて多くの反対を押し切って靖国参拝を強行する安倍首相は「軍国主義者」そのものと考えられるのではないでしょうか。

 今回の安倍首相による靖国神社参拝が、日本の将来にとって大きな禍根を残すものであり、決して許すことはできません。平和フォーラムは、アジア諸国との新しい友好と協調の連帯のために、日本における平和の火を絶やすことのないよう重大な決意を持って、安倍晋三首相の靖国神社参拝に対して満身の力をもって抗議します。
 

2013年12月25日

12月25日の質疑の概要

12月25日の質疑の概要(PDF)

2013年12月25日

群馬、長野、新潟3県の組織と平和フォーラムで政府へ申し入れ―オスプレイ共同訓練で

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  2014年2月下旬~3月下旬に、MV22オスプレイを使用した陸上自衛隊と米海兵隊による共同訓練が、相馬原演習場(群馬県)、関山演習場(新潟県)で行うことが発表されました。それを受けて12月25日、群馬県と新潟県、両県に隣接し、訓練では上空をオスプレイが飛行する可能性が高いとみられる長野県の組織の代表者と平和フォーラムで、防衛省への申し入れと交渉を、衆議院議員会館で行いました。
 申し入れの中で、 少なくとも、 訓練実施の事前に当該自治体に対し、詳細な訓練計画を示し、了解を得よとの要請に防衛省側は、「自治体から要請があれば、住民説明会は開催する」と回答しました。また、訓練の詳細については、調整中であるとして、最後まで明らかにされませんでした。

報告 12/5分 7/12分(PDF)
 

2013年12月24日

南スーダンにおけるPKO活動への銃弾の供与に関する声明

南スーダンにおけるPKO活動への銃弾の供与に関する声明

                                                                フォーラム平和・人権・環境
                                                                          代表 福山 真劫

 12月23日、日本政府は治安の悪化が著しい南スーダンにおいて国連平和維持活動(PKO)を展開する国連部隊(韓国軍)に対して、弾薬1万発を無償供与することを閣議決定しました。日本政府は、これまで武器輸出三原則に沿って「PKO協力法の物資協力においては武器の供与はしない」ことを方針として、「イラク支援法」や「テロ対策特別措置法」においても武器弾薬の供与は行いませんでした。今回の措置は「武器輸出三原則」と「PKO協力法」の二つの壁を一気に押し破るものです。

 国連は南スーダンのPKOへの大幅な増強を勧告しており、情勢がきわめて緊迫したものであることは十分に理解するものの、これまでの政府答弁を覆し、武器輸出三原則がなし崩しになる可能性のある事柄を、閣内の拙速な判断のみで行ってよいとは考えられず、日本の役割が弾薬の無償供与にあるとは考えられません。
 日本社会は、侵略戦争の反省にたって、専守防衛に徹し「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と決意しました。その上で、日本社会はどんな状況にあっても人間に銃を向けることを頑迷に拒み続け、諸外国から批判されながらも、そのことによって平和国家としての信頼をつくり上げてきました。平和フォーラムは、そのことこそ一番大切にしていかなくてはならないと考えます。

 1万発の弾薬が、どれほどの人間の命を救いどれほどの人間の命を奪うのでしょうか。そして亡くなった人間の向こうに、どれほどの悲しみが存在するのでしょうか。敵と味方、正義と不正義を超えて、悲しみと憎しみが広がっていきます。憎しみの連鎖をつくり出すことに手を貸してはなりません。戦争を未然に防ぐこと、そして話し合いのテーブルを作り出すこと、平和への営みは様々に存在します。国境なき医師団(MSF)の報告によると、南スーダンの4カ所の難民キャンプには約17万人が避難しています。子どもの3分の1が栄養失調、1日に5人子どもたちが亡くなっていく現実があります。日本政府が真剣に難民の生活と向き合うならどれほどの人の命を救うことが出来るのでしょう。
 日本への要請は、韓国軍からなされたと報道されていますが、この供与を持って冷え込んだ日韓関係を修復しようとする意図があるとしたら、本末転倒と言わざる得ません。侵略と植民地支配の歴史認識をめぐる対立は、歴史をしっかりと見つめ直すことで解決を図らなくてはなりません。そのことは、平和へ通じる最良の道なのです。

 平和フォーラムは、日本政府がこれまでの「武器輸出三原則」と「PKO協力法」での政府方針を堅持し、弾薬の供与などとは異なる方法で南スーダンの人々の平和と安全に尽くすべきであると考えます。特定秘密保護法の強行採決から今後予想される国家安全保障基本法ならびに集団的自衛権の行使容認など、戦争をする国づくりを、私たちは絶対に許しません。日本国憲法の平和主義は、国際社会が戦争の惨禍から学び、つくり上げた「パリ不戦条約」の精神に基づく普遍の理念なのです。
 平和フォーラムは、日本政府が平和憲法の理念を守り、専守防衛の方針の下に世界に向けて徹底した平和主義を貫き、そこから考えられる平和へのとりくみに全力を尽くすことを強く要請します。

                                                                                  以  上

2013年12月18日

声明/国家安全保障戦略(NSS)等の閣議決定への抗議声明

2013年12月18日

国家安全保障戦略(NSS)等の閣議決定への抗議声明

フォーラム平和・人権・環境
事務局長 藤本 泰成

 政府は12月17日、国家安全保障戦略(NSS)を策定し、新防衛計画大綱、中期防衛力整備計画(中期防)と合わせて閣議決定した。
 国家安全保障戦略も、新防衛計画大綱も、中期防も国民からの何ら意見を聞くこともなく、関係省庁と政府内部の密室で討議され、国会での実りある質疑応答・審議を経ることなく決定された。
 これまでも市民からの意見から乖離して、政府権限で閣議決定されてきたが、これまでの防衛計画とは桁違いに危険な内容を持っている。
 NSSは基本理念を「国際協調主義に基づく積極的平和主義」とした理由を、「国際社会において我が国に見合った責任を果たすため」と説明。中国や北朝鮮への「強い懸念」を表明。武器輸出三原則の見直しを行う方針を打ち出した。また、策定にあたって、「我が国と郷土を愛する心を養う」とする表現を入れている。
 新防衛計画大綱では、日米の防衛協力の指針・いわゆるガイドラインの見直しを進め、日米同盟の抑止力を強めていくとし、その大綱に基づく中期防では、総額24兆円6700億円で、廃止された前の計画に比べて、1兆1800億円増加した。中期防はそれを具体化している。
自衛隊の装備と防衛計画は、それでも憲法との「整合性」を装ってきた。自衛隊の装備は、「憲法が許す最低限」の装備を踏み越えてきたが、それでも憲法9条を意識した「専守防衛」の名目を残してきた。
 しかし、この数年間「専守防衛」の名目も徐々に薄められ、「基盤的防衛力」・「動的防衛力」・「強靭な機動的防衛力」と変えられ、いまや「統合機動防衛力」に変わった。陸海空3自衛隊を一体的に運用して、領海・領空を超えて外国領土に踏み込む、むき出しの自衛隊派兵を「積極的平和主義」と呼んでいる。そこには、もはや憲法との整合性の微塵も見られない。集団的自衛権をすでに前提とした、そして国家安全保障基本法を前提とした、海外自衛隊出動を裏付ける戦略と防衛計画である。
 平和フォーラムは、こうした「戦争する国づくり」につながる動きに反対し、とりくみを強化していく。
 

2013年12月14日

原水禁/「エネルギー基本計画案」に対する抗議声明

(more…)

2013年12月08日

立憲フォーラム声明/特定秘密保護法案の成立に抗議し、安倍政権の暴走を共に止めましょう。

特定秘密保護法案の成立に抗議し、安倍政権の暴走を共に止めましょう。

 議会制民主主義を平気で踏みにじり、国民の声を完全に無視した卑劣で暴力的な安倍政権と与党の特定秘密保護法案の強行可決に私たちは強く抗議します。戦後築いてきた自由と平和を求める日本社会を根底から突き崩し、戦争のできる国家へ突き進む暴走安倍政権への対決を強め、この間、同法案に反対や不安の声をあげた多くの皆さんとの連携・協力を一層深め、立憲主義を貫くための活動を行っていく決意を、ここに改めて表明します。

 この間、与党が行った国会の運営はあきれるほど杜撰で、強行、場当たり的でした。この法案の参議院の審議はわずか1週間・21時間余、さらには内閣・経産の各委員会の民主党の委員長を二人解任するという前例のないことを行い、通したい法案を押し通しました。また、法案への批判が高まるや、会期二日前の12月4日に内閣官房に「保全監視委員会」など3機関設置を提案、翌5日には別組織を設けるとする等、日替わり、猫の目のような提案を会期末のギリギリに出してくることは、如何に生煮えの、欠陥法案であるかを示しています。そして、衆議院特別委員会と本会議、参議院特別委員会と本会議の合計4回の強行採決です。

 この法案に対する批判、抗議の声はかってない広がりをみせました。NYタイムズの社説や、102カ国の作家らでつくられている国際ペンクラブ、国連のピレイ人権高等弁務官ら国外からの強い批判です。国内では被災地福島での公述人全員、地方自治体や首長、日弁連など法曹界、新聞労連や出版労連らマスコミ関係、宗教界や連合、益川敏英・白川英樹氏らノーベル賞受賞者ら2000名の「学者の会」、そして吉永小百合さんら映画人の反対声明などなど。言論の自由が奪われることへの不安と、民主主義の基本が政府の透明性にあるのに逆行していると指摘したのです。

 燎原の火のような勢いで広がる反対・廃案の声に慄いた与党は、問答無用とばかりに臨時国会での成立を強行したのです。しかし、私たちはここに安倍政権の弱点がある、と考えます。口で経済重視と言いながら、国内の格差をひろげ、何が何でも日本国憲法を空洞化し、戦争のできる国に強引に引っ張っていこうとするのが政権の根本姿勢だということに、多くの人々が気づき始めています。国民をみくびった安倍政権のやり方への怒りを忘れることなく、年明け以降、安倍政権が繰り出す国家安全保障基本法案や集団的自衛権容認などに、反撃していきましょう。立憲フォーラムは立場を超えた多くの人々と共にその一翼を担う決意を、ここに表明します。

  2013年12月6日                     立憲フォーラム
 

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