10月, 2013 | 平和フォーラム

2013年10月30日

平和軍縮時評10月号 武器貿易と世界 ―輸出規制強化こそ日本の役割  塚田晋一郎

はじめに

   21世紀に入ってから、10数年が経過しようとしている。1990年代初頭の米ソ東西冷戦の崩壊によって、超大国同士の全面核戦争から人類共滅に至るという最悪の事態は避けられたかに見えた。
   しかし、今なお世界には米ロをはじめとする核兵器保有国は、既得権である核兵器を手放そうとせず、17,000発もの核兵器が存在している。さらに、そのうちの約2,000発は、早ければ数分程度で発射可能な「警報即発射態勢」に置かれ続けている。これは、核兵器という最大・最悪の「恐怖の兵器」によって他国を脅し、自国の安全を担保しようという、冷戦思考の継続そのものに他ならない。
   私たちの住む北東アジアでは、未だ以て冷戦当時と全く変わらぬ形で物理的な国境線が引かれ、領土問題や歴史認識などの時には些細な火種によって、各国間の不信の連鎖のエスカレーションが再生産される国際関係が残っている。
   核兵器をその総体の頂に置く「軍事力による安全保障」から、軍事の役割を低減し、各々の国家・社会が有する政治、経済、文化の力を幅広く取り入れた、「軍事力によらない安全保障」へのシフト(移行)が必要だ。これは、圧倒的な軍事力とカネや利権によって行われる現行の政治体制や安全保障体制に対して、しばしば「非力な理想論」であるとの批判に直面する。しかし、「軍事力による安全保障」の継続は、国家間の不要な緊張関係を増幅させ、人々の暮らしと安全・安心を脅かし、そして何よりも、私たちの限りある資源を不必要に消耗し続けることに他ならない。
   私たちが生きるこの世界の歴史と現在、そしてこれからの人類の進むべき方向性を見通せば、「軍事力によらない安全保障」をめざした「非軍事へのシフト」は、不可避かつ現実的な選択となる。私たち人類が、子や孫の世代まで、その系譜を繋いでいこうとするのならば、人命を奪い、莫大なカネがかかり、そうしたこれまでのシステムを再生産し続けてきた既得権を存続させるものでしかない「軍事力」に群がる人々の有り様やその思想から、いち早く脱却する以外に方法はない。

   本稿では、こうした軍事力をめぐる現状の現実的課題として、世界の武器貿易の現状と日本について考えたい。とりわけ、今の時局、安倍晋三政権は、これまでの戦後日本の在り方を大きく変えていこうとしている。安倍首相は、あと3年ほどの任期の間に、改憲を達成することを最大の政治目標としているとされる。その目玉は言うまでもなく、「戦力不保持」と「交戦権の否認」をうたい、戦後日本が曲がりなりにも「平和国家」として歩んできた礎であり、今もってその「普通でない国」の屋台骨であるといえる、第9条を、葬り去ることである。また、9条のみならず、アジア太平洋を侵略した「かつての日本」の深い反省の上に平和国家としての再出発を誓った「前文」や、国民の権利を規定した条項を、まったく別のものに書き変えようとしている。いわゆる「普通の国」になろうとしている、というものである。2012年4月27日に発表された自民党「日本国憲法改正草案」に、そうした狙いが臆面もなく表現されている。
   国家安全保障会議(NSC)や、初めて策定される「国家安全保障戦略」、新しい防衛大綱、秘密保護法、武器輸出三原則の見直し、集団的自衛権の憲法解釈見直し作業など、大きな動きが出てきている。とりわけ、ここでは、武器輸出三原則の緩和に関わって、現在の世界の武器貿易の在り方を見ていきたい。その最新の動きとして、4月に成立した「武器貿易条約」がある。

武器貿易条約が成立

   2013年4月2日、国連総会において「武器貿易条約」(ATT、Arms Trade Treaty)が採択された。ATTは、通常兵器の国際貿易の規制のための基準を確立し、不法な国際貿易等を防止・根絶するための条約である。戦車、航空機、小型武器・兵器等8類型の物品(第2条)の移転が、国連安全保障理事会による武器禁輸措置を含む国際取極めに違反する可能性がある場合には、これを許可してはならない(第6条)とされる。
   総会の投票結果は、賛成156、反対3(イラン、北朝鮮、シリア)、棄権22か国(ロシア、中国、インド等)であった。6月3日には署名開放され、10月に署名国は100か国を超え、4か国が批准済みである。条約は50か国目が批准してから90日後に発効する(第22条)。

   ATTのための努力は1990年代後半、ノーベル平和賞受賞者やNGOらが、通常兵器の移転を規制するための条約を求めたことから始まった。03年には、NGOのキャンペーン「コントロール・アームズ」が発足した。同キャンペーンは、国際人権法や国際人道法の重大な侵害やジェノサイド(大量虐殺)等につながる可能性がある場合は通常兵器を移転しない、地域の安定や持続可能な開発に悪影響を与える可能性等がある場合は通常兵器を移転しない、といった様々な移転許可基準をATTに盛り込むことを求めた。
   国連におけるATTプロセスは06年に開始され、12年7月にコンセンサス(全会一致)ルールによるATT国連会議が開催された。しかし最大の武器輸出国である米国と、中東諸国をはじめとする輸入国の間での認識の隔たりが大きく、交渉は決裂に終わった。
   その後、 13年3月18日から28日にかけて、国連決議に基づいて、最終国連会議が開催された。同会議に提出された草案は、米国の意向が大きく反映されたものであり、輸出国側の裁量が大きいものとなっていたため、参加国間の溝は埋まらず、同会議でもコンセンサスは達成できなかった。
   このような状況の中、早期成立・発効が優先されるべきだと判断した原提案国(英国、アルゼンチン、豪、ケニア、コスタリカ、日本、フィンランド)によって、国連総会に提案された3月28日の最終案と同じ文案が多数決で採択されたのである。反対票を投じたイラン、北朝鮮、シリアのみならず、コンセンサスに失敗した草案を多数決に持ち込むという手法に不満を持った国は少なくない。例えば、最終的に棄権に回った中国は、「このような手法は、多国間交渉の原則に否定的な影響を与えかねない」とし、コンセンサスを追求することの重要性を訴えた3。また真の意味で武器貿易を取り締まる実効性に乏しい条約を成立させることは、むしろ武器輸出先進国の防衛産業の活動に「お墨付き」を与えることになる、という懸念が根強いことも事実である。

武器貿易はこれからも規制されない

  &nbsp
;交渉過程で輸入国や
NGOの批判を招いたのが、米国の主張で第7条3項に書き込まれた「圧倒的なリスク(overriding risk)」という言葉である。第7条は、第6条により禁止されない輸出行為についても、輸出がもたらしうる潜在的リスクを評価し、リスク軽減措置を検討することを輸出国に義務づけるとともに、軽減できないような「圧倒的なリスク」が存在する場合には、輸入を許可してはならないと定めている。どのような武器移転が「圧倒的なリスク」となるかの規準は明記されておらず、輸出国の裁量と恣意が入り込むことを許し、禁止の「抜け穴」になりうることは、3月の最終会議でも問題とされた。
   この他にも大きな問題が残されているが、ATT推進国の多くはひとまず成立を目指し、その上で実効性をもたせてゆく努力をするべきとの大局的な判断から総会採決に臨んだのであった。ATTを推進してきたNGOの多くも、現状の条約が不完全であることを認識したうえで、今後、実効性をいかに持たせていくかに力点を移している。
   ATTは、これまで世界的な規制の枠組みが存在しなかった武器国際貿易に対し、初めて国際的なルールを設けたということに、一定の意義がある。しかし、条約には不十分なところ、定義のあいまいさや、第7条に見られるような「抜け道」が多分に残っている。また、最大の輸出国・米国の署名及び議会での批准承認は困難が予想される上、第2の輸出国であり棄権票を投じたロシアによる署名の見通しは立っていない。さらに、交渉会議で改めて浮き彫りになったように、武器輸出国側と輸入国側の間における利害の隔たりは大きい。仮に条約が発効した場合も、その運用方法や再検討のあり方は、長期的な課題となるであろう。

日本は経験を活かし、世界を導け

   結論として、現段階では、ATTが加速する武器の国際共同開発や武器貿易を「取り締まる」ことはできず、むしろ武器貿易に「お墨付き」を与えるものとして作用していくことであろう。現行の条文のまま改正されない状態が続けば、基本的には米ロをはじめとする武器貿易産業が盛んな大国が、紛争地帯の中小国に対して武器を輸出し、地域紛争などで武器が使用され、民間人を含む多数の死者を生むという、負の連鎖はそのまま続いていく。
   一方で、日本はこれまで、武器輸出三原則を用いながら、実質的には「武器禁輸政策」を取ってきた。2003~06年のアフガニスタンでのDDR(武装解除・動員解除・社会復帰)は、日本がリード国となり、伊勢崎賢治政府特別代表の指揮のもと、国連アフガニスタン支援ミッションの支援を受けて実施された。この3年間の事業の結果として、アフガン旧国軍約6万名の武装解除が完了したとされる。こうしたミッションを日本が担えた(伊勢崎氏の言葉を借りれば「日本以外に担えなかった」)のは、ほかでもなく、曲がりなりにも日本は「平和国家」であるというイメージが、中東地域に根付いていたからに他ならない。
   しかし、2005年の小泉純一郎政権によるミサイル防衛の米国との共同開発・生産解禁以降、日本は「武器禁輸国家」からの脱線の角度を、年を追うごとに大きくしている。2013年9月28日、小野寺五典防衛大臣は、最先端の兵器は国際開発が主流であり、日本はその流れから取り残されているとして、武器輸出三原則を抜本的に見直す考えを示した。さらに、12月頃から、見直し議論が加速する見通しである。
   現在の政権は、時代に全く逆走していると言わざるを得ない。日本は、戦後の長きにわたり培ってきた「平和国家」や「武器禁輸国家」をこそ財産とし、不十分な武器貿易条約を強化していくイニシアティブをとれる位置にいるはずであり、国際規範を作る側に立たねばならない。

2013年10月29日

2800人が参加し、「知る権利を守れ!」とデモ行進 秘密保護法案と立憲主義否定の国づくりに反対する10.29集会

131029_0001.jpg 10月29日の夜、平和フォーラムは東京・日比谷野外音楽堂で「秘密保護法案と立憲主義否定の国づくりに反対する集会」を開き、市民や労働組合の代表など2800人が参加しました。10月25日に安倍内閣は「特定秘密保護法案」を閣議決定し、臨時国会に提出しました。しかし、これは市民の「知る権利」を制限し、「戦争の出来る国づくり」を進めようとしていることから、世論調査でも反対の声が多くなっています。
 集会では、主催者を代表し福山真劫・平和フォーラム代表が「いま憲法は最大の危機にある。私達の知る権利を奪う秘密保護法案を許したら次は憲法の改悪につながる。マスコミも反対している。国会議員も国会内でがんばってもらいたい。みんなの力を結集すれば必ず廃案に出来る」と力強く呼び掛けました。
 多くの国会議員も参加し、民主党衆議院議員で立憲フォーラム代表の近藤昭一さんは「安倍首相は戦後レジームの転換を叫び、憲法をないがしろにしている。臨時国会で秘密保護法とセットで『国家安全保障会議』(日本版NSC)創設法案の成立も狙っている。なんとしても阻止しなければならない」と決意を表明。
 社民党の党首の吉田忠智さんも「安倍首相は戦争の出来る軍事大国化をめざしている。憲法96条の改憲を許さなかったっ闘いをさらに広げていこう」と訴えました。さらに、立憲フォーラム幹事長の辻元清美・衆議院議員は「何を秘密にするかを内閣で決めて、国権の最高機関の国会に対しても明らかにしないのは、国会議員がなめられていることだ。立憲主義を守るためにがんばる」と述べました。
 連帯あいさつとして、日本弁護士連合会の秘密保全法制対策本部本部長代行の江藤洋一さんは「戦前の治安維持法でも逮捕者の多くは起訴をされなかったが、これによって国民が政治活動を萎縮してしまった。また、国会が行政を監視できなくなる」など法案の問題点をあげて、日弁連としても反対していくとしました。
 また、新聞労連の大江史浩書記長も「新聞労連は中立の立場を取る事が多いが、秘密保護法には反対だ」と言明し、「憲法21条の表現の自由を脅かすもので、私達も処罰される恐れがある。情報の公開こそ必要だ」と訴えました。
 結成されたばかりの「秘密保護法反対ネットワーク」から弁護士の海渡雄一さんが「この法律はアメリカと情報を共有し、世界を戦争をする国と同盟国を分けるものだ」として、「さらに反対の世論を高めていかなければならない。11月21日に同じ日比谷野音で大集会を開催するので、再び結集をしよう」と呼び掛けました。
 集会アピールをI女性会議の大塚優子さんが提案し、「知る権利の侵害が民主主義、憲法、平和への侵害になる」と確認。最後に平和フォーラムの藤本事務局長が「稀代の悪法・秘密保護法を世論の力で廃案に追い込もう。今日はその第一歩だ」と訴え、全員で「団結がんばろう」を三唱して集会を終えました。
 集会後、参加者は国会に向けてのデモ行進を行い、衆議院議員面会所では参列した議員と「法案の廃案に向けてともに闘おう」とエールの交換をおこないました。

集会アピール     立憲フォーラムの声明     ビデオ報告   リーフレット(PDF・10.31版)

Ourplanet-TV(動画)  IWJ (動画)

131029_0002.jpg福山真劫 平和フォーラム共同代表

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民主党衆議院議員 立憲フォーラム代表 近藤昭一さん

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社民党党首 参議院議員 吉田忠智さん

131029_0005.jpg立憲フォーラム幹事長 衆議院議員 辻元清美さん

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秘密保護法反対ネットワーク 弁護士 海渡雄一さん

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日本弁護士連合会 秘密保全法制対策本部本部長代行 江藤洋一さん

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日本新聞労働組合連合〈新聞労連〉書記長 大江史浩さん

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I女性会議 大塚優子さん

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藤本泰成 平和フォーラム事務局長

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団結がんばろう!

写真:今井明

2013年10月29日

集会アピール/秘密保護法案と立憲主義否定の国づくりに反対する10.29集会

集会アピール

 市民の「知る権利」を制限することから、集団的自衛権の体制づくりが始まろうとしています。
国政に参加する市民の権利に暗幕をおろし、国が歩もうとする方向の、最も大切な情報を隠して、これから政府は何を始めようと言うのでしょうか。

 10月25日、政府は特定秘密保護法案を閣議決定し、今臨時国会に提出しました。
 そもそも、法案の中心である秘密の内容が、これほどあいまいな法案は前例がありません。
 「なにが秘密か、秘密」。これがこの法律の特徴であり、本性です。
 「知る権利」や「報道の自由」といった言葉が、法案に挿入されたとしても、努力義務どまりであり、市民は、どのような知る権利が奪われたのか知る術もありません。

 いずれの国の戦争も、その国に住む人への情報操作によって進められてきました。日本が行った先の戦争も、国民に対し、巨大な情報操作と、情報操作を土台とする幾重もの謀略で進められてきました。「軍機」、「極秘」と印が捺(お)されれば、大多数の人が知ることのない事態がひとり歩きし、国の中の「国」が、大多数の人を引きずって、立ち戻ることのできない所まで国を運んでしまったのではないでしょうか。

 特定秘密保護法案は、国会の国政調査権に制限が加えられる可能性をもち、国会が最高機関であることを薄め、シビリアンコントロール(文民統制)を損なうものです。
 また、特定秘密の指定は、第三者のチェックを受けることなく、時々の行政の長による恣意的な運用を許してしまいます。有識者会議を設置しても個々の秘密指定の妥当性をチェックする権限は与えられていません。
さらにこの法案は、厳罰化によって公務員を萎縮させ、想定以上の「知る権利」の侵害が進行します。秘密を取得した者、漏えいを教唆した者も処罰され、報道機関の取材活動だけでなく、行政を監視する市民運動も罪に問われかねません。
 またこの法案は、「防衛」、「外交」、「特定有害活動(スパイ)防止」、「テロ対策」の4分野を対象としていますが、特定有害活動防止など基準と概念があいまいで、国民監視につながるおそれをもっています。さらに、特定秘密を取り扱う人への調査は、際限のないプライバシー侵害です。

 これまで、戦後憲法のなかにあっても、多くの秘密を国は生み出してきました。しかし、今回この法案がめざそうとしているのは集団的自衛権の体制づくりと密接に結びつき、秘密の「塊」を生み出し、立憲主義と憲法の平和原則を崩そうとしている点に最大の問題があります。
 私たちは、市民の「知る権利」の侵害が、民主主義の侵害、憲法の侵害、平和への侵害の道の扉になろうとしていることに最大の注意をはらいます。
 特定秘密保護法案を許してはなりません。「同盟国」首相への盗聴を許して、市民に情報統制を強いる社会を許してはなりません。

2013年10月29日
秘密保護法案と立憲主義否定の国づくりに反対する10.29集会
参加者一同

2013年10月29日

ビデオ報告 秘密保護法案と立憲主義否定の国づくりに反対する10.29集会

10月29日に東京・日比谷野外音楽堂で開かれた「秘密保護法案と立憲主義否定の国づくりに反対する集会」とデモ行進の模様をダイジェストにまとめました(約9分)。

2013年10月25日

立憲フォーラム/三権分立を否定する憲法違反の特定秘密保護法案の制定に反対する声明

三権分立を否定する憲法違反の特定秘密保護法案の制定に反対する声明

立憲フォーラム

 10月25日、安倍内閣は「特定秘密の保護に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出した。与党は同法案を審議するため、衆院に「国家安全保障に関する特別委員会」を設置、「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案」とともに、今臨時国会での成立を目指すとしている。そもそも国民主権を原則とする民主主義国家として、政府が国民に対して「秘密」を持つこと自体に慎重でなければならない。国の持つ情報は本来国民のものであり情報公開の原則を徹底した上で、「秘密」は最小限かつ国民が納得出来るものに限定する必要がある。 

 しかし、同法案は「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」が「特定秘密」に当たる判断されれば、すべてが秘密とされ、秘密を漏らした人、知ろうとした人は最高で懲役10年という罰則が課せられる。その対象は国だけでなく、都道府県警察や企業、一般市民となるため膨大な数の国民が関わることになる。
 しかも、「特定秘密」の範囲は広範かつ不明確であり、範囲を定めるのは各行政機関の長、大臣である。同法案には個別の秘密指定の是非を監視する制度は存在せず、内閣の承認があれば永久に秘密にすることができる。特定秘密を取り扱う者の「適正評価」の際のプライバシー侵害のおそれも強い。とりわけ懸念されるのは普通の市民の活動がテロリズムの名のもとに犯罪化されてしまう恐れがあり、公安警察保護法ともいうべき内容となっていることである。

 私たち立憲フォーラムは立法府にいる国会議員として、特定秘密保護法案は三権分立を否定する憲法違反の法案であり、これに強く反対する。国会は行政権力や司法権力から自立した存在であるにも関わらず、行政機関の長の判断一つで特定秘密が国会に提供されず、漏えいした国会議員が処罰の対象となっている。国民を代表する国会議員が行政を監視するのではなく、行政によって国会が支配されかねない構造となっており、立憲主義のあり方を根底から蝕むものといわざるをえない、からである。
 統治機構の在り方、国民主権や「知る権利」など国民の諸権利や報道の自由を侵すだけでなく、重大な法案にかかわらず、法案の概要が示されたのは9月上旬であった。

 このような重大な法案を、国民の広範な議論を抜きに、拙速な手続きと審議で今臨時国会で成立させることは断じて認められない。立憲フォーラムは、憲法の基本原理を尊重する立場から、「特定秘密の保護に関する法律案」に強く反対することを改めて表明する。重要な公的情報を適正に保管するための公文書管理法の改正、国民の知る権利を充実させるための情報公開法の改正こそが優先されるべきである。 

以上

2013年10月25日

2013年10月25日

「核兵器の人道的結末に関する共同声明」への日本政府の参加に際しての声明

 「核兵器の人道的結末に関する共同声明」への日本政府の参加に際しての声明

原水爆禁止日本国民会議
議長 川野 浩一

 「核兵器は巨大で制御不能な破壊力を持ち、無差別に受け入れがたい人道的結末を引き起こす。いかなる状況においても二度と核兵器が使用されないことが人類の生存の利益である」
 これは、10月22日(日本時間)に国連総会第一委員会において日本も含め125カ国が賛同した「核兵器の人道的結末に関する共同声明」の趣旨です。参加にあたって日本政府は「唯一戦争の被爆国であり、核兵器の使用の悲惨さをもっともよく知る我が国として支持するものです」との外務大臣談話を発表しました。これまで同趣旨の声明への参加を見送ってきた日本政府に対して、田上富久長崎市長は、今年の平和宣言の中で「これは二度と、世界の誰にも被爆の経験をさせないという、被爆国としての原点に反します」ときびしく批判しました。日本政府の官界の参加は、広島市・長崎市、被爆者、多くの平和団体、世界各国のNGOのたゆまぬとりくみの結果として、心から歓迎するものです。今後、日本政府が核廃絶への強力なイニシアティブをとることを強く要請します。
 また、大阪地裁は10月24日、在外被爆者への被爆者援護法の全面適用をめぐる訴訟の判決で、韓国在住の被爆者からの医療費支給申請を却下した大阪府の処分を取り消しました。この判決は「戦争を遂行した国が自らの責任で救済を図る国家補償の援護法が、在外被爆者には適応しないとする合理性はない」としています。関係諸機関は、この判決を真摯に受け止め、被爆者の側にたって対応することを強く求めます。
 被爆者は、戦後社会を貧困と差別、病魔と闘いながら生きてきました。それ故被爆者は、単に自らの補償だけではなく、「世界から核兵器を廃絶する」「二度と被爆者を出してはならない」という強い思いを世界に発信し続けてきました。今、日本では福島原発事故によって放射線被害の恐怖にさらされている人々がいます。事故の収束に向けて放射線の恐怖と闘いながら日夜努力している人々がいます。「二度と被爆者を生まない、NO MORE HIBAKUSYA」の思いは、福島にも向けられています。
 長崎に落とされた原子爆弾はプルトニウムを利用してつくられました。日本は、原子力政策・核燃料サイクル計画の中で、長崎型原爆約5500発分ともいわれる大量のプルトニウムを所有しています。世界からは「核保有国」との指摘もあります。原水禁は、「核と人類は共存できない」として、すべての核利用に反対をして運動を展開してきました。「被爆者に寄り添い、新しい社会をつくる」。このことを基本に、東日本大震災・福島原発事故を契機に、原子力政策・核燃料サイクル計画から脱却し、原発も核兵器もない世界をめざすことが求められています。
 原水禁は、日本政府の「核兵器の人道的結末に関する共同声明」への参加に対して、そのことを強く求めます。

 

2013年10月25日

「特定秘密保護法案」の閣議決定に抗議する声明

「特定秘密保護法案」の閣議決定に抗議する声明

フォーラム平和・人権・環境
代表 福山真劫

 政府は、10月25日、午前の閣議で、特定秘密保護法案を閣議決定しました。
 知る権利が侵害され、民主主義の根幹に触れるにもかかわらず、多くの部分でこれほど曖昧な法律案はなかったのではないかと考えます。
 10月24日の国会審議において、担当の森雅子内閣特命大臣は、特定秘密の範囲の基準について、最後まで明確な答弁が出来ませんでした。「何が秘密かは秘密です」といった法案では、政府の恣意的な取り扱いを許すことになります。
 知る権利や報道の自由といった言葉が挿入されたとしても、努力義務に止まり、公務員への厳罰規定とともに、市民の利益が大きく侵害される可能性がきわめて大きいといえます。
 過日の朝日新聞に、戦争中「学校の宿題で高台から港をスケッチしていたら、軍事施設をのぞいていた」として特高警察に捕まりひどい暴力を受けた経験が投書され、「特定秘密保護法」と戦前の「軍機保護法」とを重ねて絶対に法案を許してはならない旨が主張されていました。東京新聞の社説は「戦前に戻すのか」、毎日新聞の社説は「この法案には反対だ」ときわめて強い調子で批判をしています。決して戦前の「物言えぬ社会」を許してはならないと考えます。
 このような重大な意味を持つ法案が、短い臨時国会で可決に向かって走り始めたことは、許し難い暴挙であり、憲法、民主主義への挑戦ともいえます。平和フォーラムは、政府による特定秘密保護法案の閣議決定に対して、満腔の怒りを持って抗議します。
 「情報は市民の財産である」ということは、近代市民社会の常識であり、米国においても保持された秘密は一定の期間後すべてが公開されることとなっています。「最後は市民に知らされる」ということが、権力の恣意的運用に対する大きな歯止めとして民主主義を担保することとなります。現在も、日本の防衛秘密は公文書管理法の適用外とされ、国民に知らされずに廃棄されています。 
 このような日本社会のあり方が、平和フォーラムが求める「ひとり一人に寄り添う政治と社会」「持続可能で平和な社会」から、大きく逸脱していく引き金になっているのだと考えます。 
 平和フォーラムは、国民の利益にたった国家運営と民主主義を基本にした国民の権利を守る立場から、「特定秘密保護法案」の廃案に向けて全力で取り組むことを表明します。

 

 

2013年10月21日

10.21横田基地集会へ620人

1382350873635.jpg 10月21日、東京・福生公園を会場に、「横田基地へのオスプレイ配備策動を阻止し、基地の整理・縮小・撤去を求める三多摩集会」が開催され、都内を中心に約620人が参加しました。主催は三多摩平和運動センター、共催は東京平和運動センター。平和フォーラムも参加しました。
 集会では、沖縄からかけつけた沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが、「市街地の上空を無差別に飛び回り、世界中に恐怖を振りまくオスプレイ。これに沖縄県民が反対しないわけにはいかない」と、力強く訴えました。
 集会後は、横田基地前を通るデモ行進を行い、「オスプレイはいらない」「憲法改悪を阻止しよう」と声をあげました。

集 会 決 議

 7月30日、米太平洋空軍司令官の発言として、横田基地をオスプレイ配備の有力候補地として日米両政府間で協議中であるとの報道がされました。横田基地周辺自治体で構成する市長・町長も直ちに配備検討の撤回を求める要請を行いましたが、私たちは総力を結集して配備策動を阻止することが重要です。
 オスプレイは試作段階で4回の墜落事故を起こし、30人の死者を出しています。2007年には部隊配備が始まりましたが、2010年4月、2012年4月、2012年6月と3回墜落し、6人が犠牲になりました。その後も事故が止まりません。
 こうした危険極まりないオスプレイの沖縄普天間基地配備を阻止するため、沖縄では昨年9月に10万3千人が結集し、「オスプレイ配備に反対する9・9県民大会」を開催しました。しかし、日米両政府は県民の圧倒的反対の世論を無視し、昨年10月1日に欠陥機オスプレイを普天間基地に強行配備しました。普天間基地は早期返還の日米合意が反故にされ続け今日に至っています。にもかかわらず、世界一危険と言われる普天間基地に、生命の安全を脅かすオスプレイを強行配備したことは許し難い暴挙であり、厳しく糾弾しなければなりません。
 今年の1月には、沖縄県すべての41市町村の町及び議会議長・県議会各会派の代表が署名・押印した建白書を安倍総理に手渡しました。建白書は、オスプレイ配備撤回と普天間基地の県内移設に反対する内容です。
 しかし、日米両政府は沖縄県民をはじめ全国の反対の声には聞く耳を持たず、オスプレイは連日沖縄の住宅地の上空を飛び回り、県民に大きな不安を与え続けています。当初は12機の配備でしたが、9月25日には予定した最後の1機も配備され、普天間基地は24機態勢になりました。不安は増大するばかりです。
 本土においても、山口県岩国基地を拠点に低空飛行訓練が開始され、10月16日には滋賀県のあいばの演習場で日米共同訓練が強行されました。25日には、高知県で実施する共同防災訓練でもオスプレイを使う予定です。危険の拡散は許されません。
 私たちは、オスプレイの横田基地への配備策動を阻止するため職場・地域の皆さんとの連帯を強め、全力で闘います。そして、オスプレイの普天間基地配備撤回・普天間基地の即時閉鎖・辺野古新基地建設反対、横須賀への原子力空母配備撤回、横田基地の日米軍事一体化反対などを求めて、全国の仲間と連帯して取り組みを強化していきます。96条や9条をはじめとした憲法改悪の動きにも機敏に対応することが求められています。横田基地をはじめとした全ての米軍基地の整理・縮小・撤去をめざして奮闘しましょう。

 以上、決議します。

 2013年10月21日

横田基地へのオスプレイ配備策動を阻止し、
基地の整理・縮小・撤去を求める三多摩集会
参加者一同
 

2013年10月13日

10.13原発ゼロ★統一行動 福島を忘れるな!再稼動を許すな! 

 

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10月13日に東京の国会議事堂周辺で、「10.13 原発セ?ロ☆統一行動─福島を忘れるな・再稼働を許すな─」が行われました。これは、原発に反対する市民団体などで作る「首都圏反原発連合」と、「さようなら原発1000万人アクション」「原発をなくす全国連絡会」がともに開いたもので、集会やデモ行進などに多くの人々が参加。国会や霞ヶ関周辺は「原発いらない!」「再稼動を許すな!」などの声が響き渡りました。
日比谷公会堂で開かれた集会には、会場の定員一杯の2000人が参加し、首都圏反原発連合のミサオ・レッドウルフさんは「9月15日に大飯原発が止まり、今は日本で原発は動いていない。再稼動を許さないために、各団体が集まって統一行動をすることになった。一人一人が声をあげていくことが大切だ」と訴えました。
福島からの報告では、鮫川村焼却炉問題連絡会の和田央子さんが「茨城県との県境に近い鮫川村に、原発事故による放射能ゴミの焼却炉を作られようとしている。焼却によって放射性物質は濃縮され、環境中に放出する恐れがある。こうした施設をこれから20ヶ所も作る計画だ。なぜ東京電力の責任が追及されないのか。東電が回収し管理すべきだ」と、反対運動を続ける決意を述べました。
医師で、広島原爆の際にも被爆しながら治療にあたった経験を持つ肥田舜太郎さんは「広島での放射能被害のことがきちんと検証されなかったために、福島原発の事故にも対応できていない。アメリカの責任も大きい。チェルノブイリ原発事故でも周辺の人々の7割は病気に罹っている。命を守るために原発を止める。そしてアメリカなどの核兵器をなくすことが大切だ」と力強く語りました。
作家の大江健三郎さんも「3.11で多くの日本人は原発をなくすことを決意した。しかし、今、多くの政治家にはその決意がない。私たちは、子ども達が明日の世界を生きていけない場所を原子力によって作り出してしまった。その責任を自覚し、人間が本質的に生きていける世界を取り戻す必要がある」と呼び掛けました。
最後に、さようなら原発1000万人署名の呼びかけ人のルポライターの鎌田慧さんが、「原発はウソと金と脅しで作られてきた。民主主義の対極にある。再稼動を絶対させない運動を周辺自治体と連携して進めよう。そして1000万署名を達成し、福島から東京への大行動をおこそう」と訴えて集会を終えました。
集会後、霞ヶ関の経済産業省や東京電力本店前を通るデモ行進が行われ、思い思いのプラカードや横断幕を掲げた参加者がコールを繰り返し、脱原発を訴えました。さらにデモが終わった夕刻からは国会議事堂正門前で集会が開かれ、原発現地からのアピールや国会議員などのスピーチ、ライブ演奏などが夜まで行われました。

(写真は2000人が参加した日比谷公会堂の集会(左)と子ども達を先頭に元気にデモ行進をする人達)

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