8月, 2013 | 平和フォーラム

2013年08月30日

平和軍縮時評8月号 核兵器の人道的側面に関する国際的議論と若者の役割  金マリア

1.   「核兵器の人道的側面」に関する国際的議論の昂揚

   世界で初めて、そして唯一、核爆弾の直接的被害を受けた日本。1945年8月、広島と長崎に原爆が投下されてから68周年を迎えた。この半世紀を越える期間中、数多くの日本の被爆者は、肌で経験してきた核兵器の非人道性を世界の人々に訴えてきた。そして、やっと近年、核軍縮を議論する国際社会の場において、核兵器の非人道性への関心が高まってきた。
   2010年NPT(核不拡散条約)再検討会議の「最終文書」で初めて「核兵器の非人道性」が言及されて以来、12年5月に開かれた15年NPT再検討会議第1回準備委員会や同年10月の国連総会第1委員会(軍縮・国際安全保障)における議論を通して、「核軍縮の人道的側面」に対する議論が拡大してきた。12年5月2日には16か国による「核軍縮の人道的側面に関する共同声明」が発表された。続いて、同年10月には2回目の声明が発表され、賛同国が35か国(国連オブザーバーのバチカンを含む)に拡大した。そして、5月のNPT準備委員会において、ノルウェー政府は、13年春にこの問題に関する国際会議を主催する方針を明らかにした。その結果、今年3月4日から5日に掛けて、オスロで「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(以下、「オスロ会議」)が開かれ、127か国、国連、赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月運動、それから市民社会の代表者が参加した。
   今年4月24日の15年NPT再検討会議第2回準備委員会では、南アフリカ政府の主導によって3回目の共同声明が発表された。「核兵器の人道的影響に関する共同声明」というタイトルに変わった声明は、オスロ会議を「核兵器爆発のもたらす影響についての事実情報を基盤とする議論のプラットフォームを提供した」と評価した。同声明の賛同国の数は80か国にまで増えた。オスロ会議が核兵器の人道的側面に関する国際的議論に弾みを付け、支持を拡大させたことがわかる。核兵器の非人道性を最もよく知っているはずの日本政府と広島・長崎の被爆者が多数いる韓国が、この声明に賛同していないことは極めて残念である。日韓両政府に賛同させるよう求めていくことは、私たちの大きな課題であろう。

2.   世界の若者「BANg」の結成と特徴

   核兵器の人道的側面に関する国際社会の議論に関わっている多様なアクターの中で、若者の果たす役割は決して小さくない。筆者もいわゆる「若者」の一人として、ここでは特に若者の取り組みを紹介し、その意味を考えたい。実際、オスロ会議成功への貢献という意味で、最も際立っていたことの一つに、「核兵器廃絶世代」(BANg: Ban All Nukes generation)という若い活動家たちの素晴らしい取り組みがあった。
   BANgは、2005年のNPT再検討会議が失敗のうちに閉会した直後、ニューヨーク国連本部のカフェテリアにいたヨーロッパの数人の若者から始まった。当時、彼らはお互いのことをよく知らなかったが、会議の失敗を防ぐために自分たちがどんな役割も果たせなかったことについて話し合った。その中で彼らは、若者が与えられる影響は大きく、更に団結するとその力は大きくなるという事実に気付いた。その結果、同年にBANgが結成された。BANgは、「若者が一緒にプロジェクトを行う」という極めて基本的な概念に基づき、それぞれが持っているアイデアを、皆で協働して現実化することを目指している。

   今年3月4日朝8時、氷点下14℃。オスロのラディソンブルホテルの向かい側に30か国語で「ありがとう」と書いたバナーを持った32人の若者が並んだ。BANgによるプロジェクト「あなたの声を上げよう―核爆弾禁止!」(Claim Your Voice-Ban the Bomb)の一員として筆者もこの中にいた。オスロ会議の参加者を迎えるためだった。私たちは、開会の前にポジティブな雰囲気を整えることによって、政府や市民団体という組織ではなく、人間一人ひとりの心を開きたかった。実際、私たちが「ありがとう」と叫ぶ姿を見た人は、誰もが笑顔に変わって会場のホテルに入った。ノルウェーのアイデ外相の場合は、応援している私たちに近づいてきて握手をしてくれるなど、世界各国の政府代表が熱い反応を見せてくれた。

   今回のオスロ会議でBANgが行ったプロジェクト「あなたの声を上げよう―核爆弾禁止!」について具体的に紹介したい。BANgは、ノルウェー政府がオスロ会議の開催を発表した後、速やかに企画を立て、欧州連合(EU)から資金を調達することに成功した。12年の秋には、同プロジェクトを支持するヨーロッパ各国の反核・平和団体と協力関係を結んで、各国でプロジェクトの宣伝を行った。同年の冬には、参加者の募集を開始した。対象となったのは、主にEUからの資金の対象になる9か国(オーストリア、ベルギー、ドイツ、イタリア、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、スイス、英国)の学生であったが、それ以外の地域からも「海外参加者」という名前で特別募集を行った。その結果、海外参加者はアメリカ、オーストラリア、韓国・日本、そしてイスラエルから一人ずつ選ばれた。筆者は、韓国・日本を代表する参加者であった。海外参加者の場合は、EUからの資金の対象にならなかったため、ウェブ上の募金運動を通して全世界の活動家や一般市民から募金を頂いて費用を充当することが出来た。

   13年1月から2月までは、選抜された参加者一同が事前準備に入った。数回のインターネット会議を通して、オスロ会議に向けて各地域で行っている活動を共有し、オスロで一緒に出来ることのアイデアを集めた。私たちがオスロで行う活動の目的は、次のようにシンプルで明確なものに設定した。「オスロ会議に参加する政府に対し、正しい選択をして、核兵器を廃絶するよう要求する。」
   2月27日から3月6までは、同プロジェクトのハイライトである、オスロ現地での活動を実施した。従来からのBANgの成果であり、強みでは3つある。まず1つ目は、核軍縮教育である。 BANgのホームページに行くと、独自で開発した核軍縮に関する教育資料や参考になるリンクなどの情報が載っている。BANgが教育を重要視する理由は、ただ「核兵器は悪いものだ」という言葉を聞いたり、話したりするだけでは本当の意味の運動が始まらないという思いからだ。核兵器というものが、人間と社会にとってどのように悪い影響を与えるのか、なぜ自国の安全保障に無用なものなのかなど、核軍縮について若者自身が納得できることが基本であるという考え方である。自分の頭で核軍縮の必要を理解し、核兵器廃絶運動の必要性を実感すれば、彼らが周りの人や自国政府に対して核軍縮を求める声をあげることは自然について来る。このように、 一人一人が確信さえ持てば、正しいことのために叫ぶ声にも自信が付くはずだ。
   2つ目は、国際舞台で行うロビー活動である。BANgは、今まで「ユース(若者)代表団」という名前で、NPT再検討会議や国連総会など国際会議に参加し、各国の外交官と面談を行ってきた。若者と外交官の面談ということは、短期的な観点から見ると、外交に与えられる影響が間接的であることから「ロビー活動」と言えないと思う人がいるかも知れない。また、外交官にとって若者との面談は、ただ一時的で表面的な顔合わせに過ぎず、自分たちを誇示するためのイベントのように見えるかも知れない。しかし、各国の外交官に対して、核兵器に反対する若者がこれだけいるということを見せ、ともすれば彼らが返答に困るような賢い質問をすることによって、外交官個人に深い印象を残したり、刺激を与えることができる可能性もある。そうすれば、長期的な観点で、一国の外交政策また国際的議論の方向を変えることにつながるとも考えられる。
   最後の3つ目は、「FUN」(楽しさ)である。どんな活動であれ、主体である自分が楽しまないとその活動は継続できない。楽しさという味がないと何か物足りなく感じる。また、難くて形式にとらわれる既成世代のやり方や考え方と異ならない限り、若者ならではの特性はなくなる。クリエーティブなアイデアに富み、それを行動に移せる情熱とエネルギーがあふれる、そして目立つ行動をしても温かく見てもらえる若者だからこそ、色んな新しくて楽しいアクションをすることができるのである。

3.   オスロ会議での3つの活動と若者の役割

   BANgは、オスロでこの3つの強みを活かし、ソーシャルメディアを含むメディアの活用をさらに加え、大きく3つの活動を行った。
   1つ目は、各国政府との面談であった。まず、事前準備の段階に、核兵器の人道的側面の議論で重要な役割を果たしていると判断される国の政府に面談を要請した。その後、オスロ現地では、ロビー専門家である「核軍縮・不拡散議員連盟」(PNND)国際コーディネーターのアラン・ウェア氏を招いてワークショップを開いた。彼からは、核軍縮分野の政府関係者や議員などとの話し方やマナー、注意事項などを彼自信の体験を例に聞きながら学んだ。そして、実際の状況でどのように対処すれば良いかを仮想劇を通して理解を深めた。最終的に私たちの面談が決まった国は、ノルウェー、スイス、メキシコ、ドイツ、そしてルーマニア政府であった。私たちは、面談の時間と場所を決めた後、国別にチームを分けて、各国の核軍縮政策を把握したり、面談に出る外交官の特徴を調べたり、適切な質問を考案する準備を経て、実際の面談を行った。結果は、5つの国とも成功であった。
   2つ目の活動は、アクションであった。私たちはオスロ現地を見てから一番効果的なアクションを考えることが良いと判断し、現場で会場の前に行って環境を把握してから、アクションのアイデアを具体化した。そして、会議の数日前に、キャンペーン&アクション ワークショップを開いた。ここには、「IKVパックス・クリスティ」の核軍縮プログラム担当者であるスージー・スナイダー氏を招いて、アクションの成功と失敗の事例を聞きながら、実用的なノーハウを学んだ。その後、アイデア会議を持ち、オスロ会議とICAN市民社会フォーラムで行うアクションを決定し、準備物を作り、事前練習を行った。それに、オスロ警察と連絡を取って、行政的に必要な準備も済ませた。
   3月2日から3日までは、ICAN市民社会フォーラムの「マーケットプレイス」(イベント市)の時間に、ターゲットX、折鶴、Fish Bowl、バナーペインティングなど様々なプログラムを担当し、フォーラムに来た人々が楽しく参加できるようにした。4日と5日はオスロ会議であった。まず4日の朝8時から10時までは、会場のラディッソン・ブルーホテルの前で、「Thank you for caring!」(気遣ってくれてありがとう!)というメッセージを伝えるアクションを行った。目標は、各国政府と団体に感謝の気持ちを伝え、肯定的な心構えで会議に臨むように雰囲気を整えることであった。会議の最終日である5日の午後3時から4時半までは、同じ場所で「Abolish Nukes! Act Now!」(核兵器廃絶!いま行動を!)というメッセージを、色んな有名な曲に私たちが作った歌詞を入れて歌った。このアクションの目標は、会議の成功を喜び、各国政府が会議の結果を行動に移してくれるよう呼びかけることであった。
   3つ目の活動は、メディアの活用であった。まず、メディア・ワークショップを開いて、記事作成を練習したり、メディアとコミュニケーションをとる時の注意事項などを勉強した。その後、私たちの中でメディアを担当するチームを決めた。このチームは、写真撮影、メディアリリース、現地と各国のメディアへの記事転送、Facebook、Twitter、そして同プロジェクトのブログを管理する役割を担った。そして、この中で一人が私たちのスポークスマンになって、日程中ずっとメディアとのやり取りを担当した。

   3月5日、ノルウェーのアイデ外相が発表した議長要約で、オスロ会議の結論を出した。 筆者は、核兵器の人道的側面に関する国際的議論において、若者が一つの中心的な役割を果たすべきである理由を、外相が結論として示した3つのポイントから探せると思う。

  1. 「いかなる国家も国際機関も、核爆発によって引き起こされた直接的な人道的非常事態に適切に対処し、被災者を救援しうるとは考えにくい。さらにそのような能力を確立することは不可能である。」

       核兵器の爆発が起こり、非常事態になっても適切な対処はできないとしたら、この実態を知った以上、核兵器の使用を防止することが人間としての道義的な義務である。若者は、未来を担う責任を負っている存在として、この義務を果たすべきである。

  2. 「核兵器使用と実験の歴史的経験は、核兵器の直接的及び長期的な破壊的影響を示している。政治状況は変化したが、核兵器による破壊の可能性は依然として残されている。」

       核兵器による破壊の可能性が残されているとしたら、残っている人生の時間を考えると、既成世代より若者の方がその被害を受ける可能性が高い。その意味で、若者自身が自分たちを守るためには核兵器の廃絶にもっと積極的になるべきである。

  3. 「核爆発の影響を国境内に封じ込めることは不可能であり、地域的であれ地球規模であれ、複数の国家や国民が影響を被る。」

       核爆発の影響というのは、ただ国境と民族を超えるだけではない。空間だけではなく、時間も超えるものである。被爆の影響は複数の世代に及ぶということから、若者は自分たちの世代で、この悪い影響の連鎖を断ち切る責任を持っているのである。

2013年08月30日

日米親善ネイビーフレンドシップデーにおける子どもたちへの銃の一時貸与への抗議声明

2013年8月30日

 

日米親善ネイビーフレンドシップデーにおける
子どもたちへの銃の一時貸与への抗議声明

 

フォーラム平和・人権・環境
代表 福山真劫

 今年8月3日、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)で行われた毎年恒例の一般開放行事で、基地を訪れた市民に米兵が銃を持たせていたということが、8月27日の市民団体の抗議などで明らかになった。
 市民団体によると、行事当日に米兵らが子どもを含む見学者に銃を持たせ、射撃姿勢をとってみせたり標的を狙う構えなどをしたという。実射はなかった。
 これに対し同基地のデービッド・グレニスター司令官は29日に市役所を訪れ、銃は実際に部隊で使用されている本物だったことを認め「文化的な違いから一部の方に不快な思いをさせた」と謝罪した。これに対して沼田芳明副市長は「来場者を楽しませるためとはいえ、日米では銃の意識が異なっており、行き過ぎがあったと感じる」と述べ、配慮を求めた。
 しかし、この事件が「文化的な違い」や「銃の認識」以上に大きな問題を孕んでいることは明らかである。戦争において銃を持つということは、敵を攻撃すること、つまり人を殺すということだ。今回の事件は横須賀が米軍の居座る街だということを改めて思い知らせ、ましてや子どもに対しては教育上深刻な影響を与えうる。市民団体の抗議文によると、開放行事では米軍兵士が「Kill Kill Kill」(殺せ、殺せ、殺せ!)と叫んだり、相手の首を絞めるなどの「武闘訓練」も公開されていたという。これは海軍と市民の「交流」というレベルを大きく逸脱しており、市民(特に子ども)の感情に悪影響を与えるという意味で到底看過することは出来ない。よもや集団的自衛権行使の先がけとして、この様な「交流」が進められていると言うのではあるまい。
 横須賀は2006年に女性が路上で殺害されるなど米兵による犯罪が多発してきた。発生した米軍犯罪は、「軍の街」に起因している。原子力空母の母港とされてきたヨコスカに起因した事件である。しかし、今やこの「軍の街」を観光として活用しようとする動きがあることは見逃せない。今回の事件は、米軍が軍と武器で「交流」しようとする姿勢を現わしている。地域住民に対する配慮など毛頭ないという姿勢を現わしているのである。
  よってわたしたちは、米軍が事の深刻さをより正確に認識して心から謝罪すること、二度とこうした事態が起きないよう再発防止に努めることを求める。また、横須賀市にも米海軍基地に対して強く抗議することを求める。

2013年08月30日

シリアへの空爆と軍事介入に抗議する声明

2013年8月30日
フォーラム平和・人権・環境
(平和フォーラム)
事務局長 藤本泰成 

 

シリアへの空爆と軍事介入に抗議する声明

 

 アメリカはまた過ちを犯そうとしている。
 どのような理由があるにせよ、シリアへの空爆は許されない。
アメリカの呼びかけで始まろうとしているシリアへの英米仏による軍事行動に対し、平和フォーラムはきびしく抗議を発する。
 大量破壊兵器の保有を大義名分として、10年前にイラクを攻撃し進駐したが、戦争の起因となった大量破壊兵器なるものは見つからなかった。
 ブッシュ親子二代の大統領が行ったイラク戦争が、この国に平和をもたらせただろうか。「テロとの戦い」は21世紀に消す事の出来ない傷跡を残しただけではないか。
 シリアが泥沼の内乱に突入し、世界はこの帰趨を憂えんでいる。内乱は長期の内戦に発展し、すでに多くの市民が血を流している。国連と世界各国が内戦の即時停止を訴えて続けている。
 内戦の停止を武力以外の方法で世界は模索しなければならない。その努力を放棄してはならない。
 だが、アメリカは、アサド政権が同国民に対して、化学兵器を使用したと断定し、ケリー米国務長官は、化学兵器の使用を「倫理への冒とく」と断じた。
 化学兵器の保有と使用は断じて許す事は出来ない。だが、化学兵器という「倫理への冒とく」への回答としての空爆も「倫理への冒とく」ではないか。
 化学兵器の疑惑をめぐり派遣された国連の調査団は8月31日までにシリアを出国し国連に報告書を提出するとしている。これに前後して米、英、仏は、シリアへの軍事介入に向けた最終調整を行い、軍事介入を「正当性」を持たせる手続きを講じている。
 どのような手続きも、軍事介入という手段を正当化することはできない。
 平和フォーラムは、シリア空爆を強く批判する。アメリカをはじめとする同盟国なる国々の軍事介入を強く批判する。停戦と和平に向けた交渉の場をつくり出す外交努力に総力を傾けよ。
 軍事介入によって、武力の行使によって、世界が軍事による安全保障に傾斜することを強く懸念する。
 米軍は地中海東部に配備しているミサイル駆逐艦を帰還させ、武力空爆の準備を即時撤回せよ。
 同時にアサド政権は、化学兵器をふくむ全ての武力と暴力によって、国民を弾圧することをやめよ。反政府勢力も武器の使用をやめよ。これ以上同胞民衆に被害を拡大させることをやめよ。
非暴力的手段で事態を回避し打開することを訴える。                                      

以上

2013年08月21日

松江市教育委員会による「はだしのゲン」閲覧制限措置に対する見解

2013年8月21日
 

松江市教育委員会による「はだしのゲン」閲覧制限措置に対する見解

 
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 藤本泰成
 
 故・中沢啓治さんの漫画作品『はだしのゲン』について、島根県・松江市教育委員会が2012年12月、市内の小中学校に対し図書室での閲覧制限措置をとるよう求め、『はだしのゲン』を所蔵するすべての学校がこれに応じていたことが明らかになりました。
 
 昨年8月に「『はだしのゲン』は間違った歴史認識を植え付ける」とする陳情が松江市議会に上がったものの、陳情は全会一致で不採択となりました。しかし、松江市教委は事務局の判断で、「過激な描写があり、子どもが自由に読むのは不適切」とし、各小中学校での閲覧を制限するよう校長会において要請したものです。多くの市民・学校関係者などからの批判を受けて、松江市教委は要請の撤回を視野に再検討を行うとしています。
 
 『はだしのゲン』は原爆被害の実相を伝える作品として、これまでに高い評価を得ています。また、約20カ国語に翻訳され、世界の人々にも読まれているものです。戦争の実態を知り平和の尊さを学ぶことは、侵略戦争の反省に立つべき日本にとって教育の重要な要素であり、平和教育を推進すべき教育委員会がとる判断として、失当であると考えます。
 
 松江市教委は「過激な描写」が問題であるとしていますが、戦争自体が残酷なものである以上、そのことを隠して戦争の実相を伝えること、そして理解することは困難です。子どもたちから戦争を考えることを奪う行為に他なりませんし、何をどう描き、何を伝えようとしたのか、そのことを踏まえない今回の規制は、表現の自由を侵すおそれがあるものです。直ちに撤回することを心から要請します。
 
 この間、歴史認識に関して、侵略戦争や植民地支配を否定する考えや、国家主義的な考えに基づく陳情が各地で繰り返し行われています。例えば神奈川県でも、「日の丸・君が代」に関する記述から、特定の教科書の不使用を要求する陳情が行われました。この陳情が不採択となったにもかかわらず、神奈川県教育委員会はこの教科書を選択しないよう各校に要請したことが明らかになり、問題になっています。 
 
 教育は市民社会全体で責任を負うものであり、政治的な思惑に基づいた陳情によって左右されてはなりません。教育は、憲法の理念に基づいて、各学校の方針、生徒や地域社会の実態、直接子どもたちの教育に携わる保護者・教職員の考えなど、各学校が総合的な判断からその責任によって行うものであるべきだと考えます。
 
 日本国憲法前文には「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」とあります。この理想に向けて、次代を担う子どもたちが胸を張って進んでいくために、そしてまた、過去の歴史をしっかりと見つめその反省に立ち、憲法で保障された国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を基本にした教育の発展のために、教育行政はすすめられなくてはならないと考えます。
 

2013年08月15日

千鳥ヶ淵「戦争犠牲者追悼、平和を誓う集会」に200人参加

 

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敗戦68年目の8月15日、平和フォーラムは東京・千鳥ヶ淵の国立戦没者墓苑で「戦争犠牲者追悼・平和を誓う集会」を行い、各団体の代表など約200人が参加しました。集会は、無名戦役者の遺骨を納めた納骨場所(六角堂)の前で、I女性会議の大塚優子中央常任委員の司会・進行ですすめられ、正午の時報にあわせて黙とうしました。続いて、福山真劫・平和フォーラム代表、那谷屋正義・民主党参議院議員、福島みずほ・社会民主党選挙対策委員長(参議院議員)、阿部知子立憲フォーラム副代表(衆議院議員)による「誓いの言葉」が述べられたあと、各団体・参加者による献花が行われました。このうち、福山代表は、安倍政権の歴史認識の修正について内外から許さない民衆の大きなうねりができていることを踏まえて、平和への願いをもう一度胸に刻むとの誓いを述べました。

→福山平和フォーラム代表の誓いの言葉
→ビデオ報告

2013年08月15日

戦争犠牲者追悼、平和を誓う集会・誓いの言葉

フォーラム平和・人権・環境代表 福 山 真 劫

   暑い夏の日がまたやってきました。
   私たちは、ここ千鳥ヶ淵戦没者墓苑に集い、先の戦争の犠牲になられた皆さんのみ魂に追悼のまことをささげると同時に反戦平和の確立と憲法理念の実現めざして全力で奮闘する決意を改めてここに表明します。
   68年前、1945年8月15日、天皇は、「ポツダム宣言」を受諾することを公表しました。これにより、大日本帝国は崩壊し、アジア・太平洋地域への侵略戦争、植民地支配は終焉しました。この戦争でアジアでは2000万人を超える犠牲者を生み出し、日本人も310万人を超える人々が犠牲となりました。日本政府は当然のこととして、私たちも被害者であると同時にとりわけアジアの諸国と民衆に対して、償いきれない加害責任を負っています。
   その年、世界は連合国を中心に、「われら一生のうち2度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」とする国連憲章を持つ、国際連合を発足させました。またこうした流れの中で、日本は、国民主権、基本的人権、そして戦争放棄し、戦力不保持で、交戦権を放棄するという徹底した平和主義を原則とする憲法を手にすることができました。これが戦後の世界と日本の出発の原点であり、平和と民主主義の確立めざして、新しい時代が確実に始まりました。
   しかしそれ以降米ソ対立による冷戦、テロとの戦争の時代と続く、この68年間、自民党を中心とする保守勢力は、世界の軍事的支配を狙う米国の意向も受けながら、日米安保体制を基本に、米軍基地を全国に展開させ、憲法の平和主義の空洞化を進め、日本は、今や世界で5本の指に入る軍事大国として東アジアで君臨するようになり、軍事的脅威となっています。それでも平和憲法の制約により、自衛隊は朝鮮戦争でも、ベトナム戦争でも、第1次湾岸戦争でも、アフガン・イラク戦争でも、後方支援はしたとしても、直接戦争・戦闘行為には参加しておらず、戦闘行動による戦死者はいまだひとりも出ていません。この事実は画期的なことであり、平和憲法とともに日本が世界に誇れる最大の財産です。
   しかし戦後レジームからの脱却・憲法改正をめざす自民党を中心とする勢力が、昨年12月の衆議院選挙では3分の2、今年7月の参議院選挙では過半数の議席を獲得し、安倍自公政権が誕生しました。彼らは、平和の尊さを忘れ、東アジアで軍事的緊張を作り出し、偏狭なナショナリズムをあおり、戦争する国をめざして、日本の平和への最後の砦を壊し、集団的自衛権行使の合憲化、憲法の9条の条文を変えようとする動きを強めています。しかし国民の多数は、何よりも平和を求め、集団的自衛権行使の合憲化も憲法9条の改悪にも反対です。私たちの平和・民主主義勢力の正念場です。
   日本は9条の改悪への危機と同時に今深刻な危機に直面しています。
   福島では、東電福島原発の、事故の終息のめども立たず、放射能を環境に垂れ流し続けています。15万人を超える人々が避難したままで、放射能管理地域レベルの汚染地に400万人もの人々が生活をし続けています。にもかかわらず、安倍政権は再稼働だ、原発輸出だと動いています。
   また沖縄では、政府が県民挙げての反対を押し切り、オスプレイを強行配備し、辺野古新基地建設を強行しようとしています。
   日本軍慰安婦、強制連行・強制労働者など被害者たちの怒りには無視をし続け、日朝国交正常化は、放置し、朝鮮高校授業料無償化では政府が新しい差別を作り出しています。
   アベノミクスの中で格差社会がさらに進行し、非正規労働者、貧困層の矛盾がますます深刻になろうとしています。
   私たちは、こんな安倍政権に日本の現在と将来を託すわけにはいきません。
   しかし私たちにとって、悪いことばかりではありません。中国、韓国だけでなく国際世論は、安倍政権の歴史認識の修正、村山・河野談話の見直し、靖国参拝、などの右傾化に対して懸念を表明し、東アジアで平和共存体制の確立を目指すべきとしています。また国内でも憲法の改悪を許さない、脱原発、沖縄と連帯、在日との連帯、格差社会を許さないなど、安倍政権を包囲する民衆の大きなうねりができようとしています。私たちも、みなさまの願いをもう一度胸に刻み、平和、民主主義、憲法擁護、脱原発の旗を掲げて、その戦列の一端を担って頑張ることを誓います。私たちの行く末をぜひ見守り続けてください。

2013年08月15日

戦争犠牲者追悼、平和を誓う集会・誓いの言葉

フォーラム平和・人権・環境代表 福 山 真 劫

暑い夏の日がまたやってきました。
私たちは、ここ千鳥ヶ淵戦没者墓苑に集い、先の戦争の犠牲になられた皆さんのみ魂に追悼のまことをささげると同時に反戦平和の確立と憲法理念の実現めざして全力で奮闘する決意を改めてここに表明します。
68年前、1945年8月15日、天皇は、「ポツダム宣言」を受諾することを公表しました。これにより、大日本帝国は崩壊し、アジア・太平洋地域への侵略戦争、植民地支配は終焉しました。この戦争でアジアでは2000万人を超える犠牲者を生み出し、日本人も310万人を超える人々が犠牲となりました。日本政府は当然のこととして、私たちも被害者であると同時にとりわけアジアの諸国と民衆に対して、償いきれない加害責任を負っています。
その年、世界は連合国を中心に、「われら一生のうち2度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」とする国連憲章を持つ、国際連合を発足させました。またこうした流れの中で、日本は、国民主権、基本的人権、そして戦争放棄し、戦力不保持で、交戦権を放棄するという徹底した平和主義を原則とする憲法を手にすることができました。これが戦後の世界と日本の出発の原点であり、平和と民主主義の確立めざして、新しい時代が確実に始まりました。
しかしそれ以降米ソ対立による冷戦、テロとの戦争の時代と続く、この68年間、自民党を中心とする保守勢力は、世界の軍事的支配を狙う米国の意向も受けながら、日米安保体制を基本に、米軍基地を全国に展開させ、憲法の平和主義の空洞化を進め、日本は、今や世界で5本の指に入る軍事大国として東アジアで君臨するようになり、軍事的脅威となっています。それでも平和憲法の制約により、自衛隊は朝鮮戦争でも、ベトナム戦争でも、第1次湾岸戦争でも、アフガン・イラク戦争でも、後方支援はしたとしても、直接戦争・戦闘行為には参加しておらず、戦闘行動による戦死者はいまだひとりも出ていません。この事実は画期的なことであり、平和憲法とともに日本が世界に誇れる最大の財産です。
しかし戦後レジームからの脱却・憲法改正をめざす自民党を中心とする勢力が、昨年12月の衆議院選挙では3分の2、今年7月の参議院選挙では過半数の議席を獲得し、安倍自公政権が誕生しました。彼らは、平和の尊さを忘れ、東アジアで軍事的緊張を作り出し、偏狭なナショナリズムをあおり、戦争する国をめざして、日本の平和への最後の砦を壊し、集団的自衛権行使の合憲化、憲法の9条の条文を変えようとする動きを強めています。しかし国民の多数は、何よりも平和を求め、集団的自衛権行使の合憲化も憲法9条の改悪にも反対です。私たちの平和・民主主義勢力の正念場です。
日本は9条の改悪への危機と同時に今深刻な危機に直面しています。
福島では、東電福島原発の、事故の終息のめども立たず、放射能を環境に垂れ流し続けています。15万人を超える人々が避難したままで、放射能管理地域レベルの汚染地に400万人もの人々が生活をし続けています。にもかかわらず、安倍政権は再稼働だ、原発輸出だと動いています。
また沖縄では、政府が県民挙げての反対を押し切り、オスプレイを強行配備し、辺野古新基地建設を強行しようとしています。
日本軍慰安婦、強制連行・強制労働者など被害者たちの怒りには無視をし続け、日朝国交正常化は、放置し、朝鮮高校授業料無償化では政府が新しい差別を作り出しています。
アベノミクスの中で格差社会がさらに進行し、非正規労働者、貧困層の矛盾がますます深刻になろうとしています。
私たちは、こんな安倍政権に日本の現在と将来を託すわけにはいきません。
しかし私たちにとって、悪いことばかりではありません。中国、韓国だけでなく国際世論は、安倍政権の歴史認識の修正、村山・河野談話の見直し、靖国参拝、などの右傾化に対して懸念を表明し、東アジアで平和共存体制の確立を目指すべきとしています。また国内でも憲法の改悪を許さない、脱原発、沖縄と連帯、在日との連帯、格差社会を許さないなど、安倍政権を包囲する民衆の大きなうねりができようとしています。私たちも、みなさまの願いをもう一度胸に刻み、平和、民主主義、憲法擁護、脱原発の旗を掲げて、その戦列の一端を担って頑張ることを誓います。私たちの行く末をぜひ見守り続けてください。

 

2013年08月15日

ビデオ報告 2013戦争犠牲者追悼、平和を誓う8.15集会

2013年8月15日に東京・千鳥ヶ淵戦没者墓苑で行われた「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8.15集会」の模様をビデオにまとめました。(8分30秒)

2013年08月09日

被爆68周年原水禁世界大会が閉会。 「人類は生きねばなりません」長崎で大会宣言


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