6月, 2013 | 平和フォーラム - パート 2
2013年06月01日
ニュースペーパー2013年6月号
- インタビューシリーズ 全国自動車交通労働組合連合会 書記長 松永次央さんに聞く
- 拡大するオスプレイの低空飛行訓練
- 「従軍慰安婦問題」などの歴史認識を考える
- 新しい食品表示法制定へ
- 米原子力空母ジョージ・ワシントン配備から5年
- 7月に原発の新規制基準を策定
- 原子力委員会は世界の期待に応えよ
- イラク戦争10年キャンペーン 日本政府に戦争参加の検証を求める
- 各地の活動紹介 平和・人権・環境福岡県フォーラム
- 本の紹介「終わらないイラク戦争 フクシマから問い直す」
- 日朝国交正常化連絡会が全国総会と記念講演会
復帰41年目の5.15沖縄平和行進は、5月16日の結団式に続き、5月17日の早朝から東・西・南の3コースで行進がスタートしました。那覇市役所前で行われた南コースの出発式には400人の参加者が集まり、平和行進実行委員会の崎山嗣幸委員長が「沖縄を切り捨てた日である1952年4月28日を日本の主権回復の日として祝い、オスプレイの普天間基地撤回を求める全沖縄の訴えに対して何ら顧みることなく、憲法改悪に走り出している安倍政権に強い抗議の意思を示す行進となるよう、がんばろう」とあいさつ。また橋下徹大阪市長をはじめとする日本維新の会と自民党の政治家が、相次いで「従軍慰安婦」について差別的な発言をしている問題に対して「戦争を擁護し、女性をそして男性を蔑する典型的な思想であり断じて許すことは出来ない」と来賓らが訴えました。沖縄から基地と戦後体制を告発する平和行進が始まりました。(写真は6月17日の那覇市役所前での出発式)
【インタビュー・シリーズ その78】
規制緩和でタクシー業界は存亡の危機。法律の抜本改正を
全国自動車交通労働組合連合会 書記長 松永 次央さんに聞く
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【プロフィール】
1957年東京・豊島区生まれ。一般企業を経て、92年に日本交通(株)に入社と同時に、日交労働組合に参加し、同銀座支部で94年から支部役員、書記長、支部長を歴任。その間、日交労の常任執行委員、本部教宣部長を務め、2011年10月から全自交労連書記長に就任。若い頃はバスケットボールやスキーなど様々なスポーツを楽しむ。海釣りが趣味で「海を見ながら何も考えない時間はとても貴重」。しかし、今はほとんど休みも無く「書記長になったばかりなので、時間があれば労働関係の資料を読むばかり」の日々。
――松永さんが労働運動に入られる経緯を教えてください。
私は薬品関係の会社に就職し全国営業をしていました。しかし、業績も上がっている中で、突然、計画倒産をされました。労働組合もなかったので、労組を結成して約3年間闘い、一定の補償を勝ち取りました。その時、労組の必要性を痛感したのですが、同時に大変さも味わったので、日交労に入っても積極的に運動をやるつもりはありませんでした。しかし、組合の運営のやり方に意見を言ったら、それをきっかけに周りから組合役員に推挙されてしまいました。その後、会社と様々なことで交渉して、仲間を助けることに目覚めたのか、すっかり組合活動にはまってしまったようです(笑)。
――全自交労連はどのような組織なのですか。
戦後まもない1947年9月に、東京や名古屋、大阪など6大都市のハイヤー・タクシー関係の組合が集まり「全国旅客自動車労働組合連合会」(全旅労連)を結成し、58年に総評に加盟しました。60年に組合の名称を「全国自動車交通労働組合連合会」(全自交労連)に変更、ハイヤーやタクシー、観光バス、自動車教習所で働く労働者を組織しています。
全自交は早くから、ノルマ制の禁止、乗務距離の最高限度規制、休憩及び睡眠施設など過労運転防止に関する法規制の整備などに取り組んできました。大都市だけでなく地方組織の加盟も進み、65年には566組合、約5万人の組合員を擁したこともあります。
また、同じ産業で働く労働者を組織する全国交通運輸労働組合総連合(交通労連)や日本私鉄労働組合総連合会(私鉄総連)とともに「ハイタクフォーラム」を作って、ハイヤー・タクシー産業の健全化と適正な労働環境の確立を求めています。
――ハイヤー・タクシー業界は、小泉構造改革以降、大変な状況ですね。
2002年に改正道路運送法が施行され、需給調整規制の撤廃に伴い、増車と低運賃など、過当競争にさらされました。そもそも、公共交通やマイカーの発達で、タクシー利用者はこの30年間で、年間延べ32億人から15億人に減っているのです。そこに規制緩和で事業者が倍増したのですから、売り上げが減るのは当たり前です。その低下分はほぼ全額、人件費削減として労働者に押しつけられ、年収は、1991年の430万円を頂点に、2011年には291万円まで下がってしまいました。
タクシー産業で働く労働者の厳しさをマスコミなどが取り上げ、社会問題になり、09年に「タクシー適正化・活性化特別措置法」が施行されました。国も20~30%も車両が多いことを認めましたが、強制力のない減車の取り組みのため、不十分な台数削減にとどまり、減車しない事業者との不公正も生み出しました。また、運賃も新たに自動認可運賃制度が導入され、3年間で下限割れ運賃事業者は1208社から317社まで減りました。しかし、労働者の賃金・労働条件については抜本的な改善には至っていません。
――規制緩和政策の根本的な転換が必要ですね。
小泉構造改革を進めた竹中平蔵は「構造改革のモデルはタクシー業界だ」と言っていますが、いまや、タクシー運転手の平均年齢は57歳で、高知県や徳島県では65歳前後になっています。しかも、高知県では年収は160万円程度と最低賃金以下の状態で、若い人が入ってこないのですから、業界として存続できるか大変厳しい状態です。
私たちは、この現実を踏まえ、ハイタク政策を根本から転換させるため、業界団体や民主党と連携して、道路運送法を抜本改正して新たな「タクシー事業法」の制定を求めてきました。昨年3月に民主党がまとめた法案は、事業者資格の免許制、減車の徹底、運賃制度を改善するもので、成立を期待したのですが、12月の解散・総選挙で先延ばしされました。現在は、与野党間で内容を調整して、自公民の三党が合意して、今国会に提出されることに期待を寄せています。内容は不十分なところもありますが、それでも成立させないと業界が潰れてしまう危機感から、私たちも全力で関わっています。
特に労働環境の改善に向けては、歩合給の割合を抑えた固定給を中心とする賃金制度の再確立や、不当な運転手負担や賃金カットをなくすよう求めています。運賃制度では、下限割れ運賃を認可しないことや、「相対運賃」の根絶、極端な遠距離割引などを排除させ労働環境の抜本的な改善が望まれます。
また、過疎地域などで公共交通機関に寄りがたい場合に例外的に認められている自家用車を使った有償での輸送が、その趣旨を逸脱して拡大していたり、運転代行業でも違法営業が目立っており、実態調査を行って必要な法制化を求めています。これらは、利用者にも理解してもらうことが必要です。
――将来的にはどのような業界になればいいと思っていますか。
新潟県内でのタクシー運賃改定が公正取引委員会からカルテルと 認定されたことに抗議する行動(5月9日・公取委前) |
今は35万人のタクシー労働者がいます。そのうち、全自交労連は約2万2千人の組織です。ハイタクフォーラム(交通労連・私鉄総連・全自交労連)の組合員をあわせても約5万人しかおりません。将来は、組織を増やしタクシー労働組合連合会を作って、労働者の賃金・労働条件を確立し、各地域のタクシー事業者に「利用者に喜んでもらえるタクシー労働者を紹介して業界の活性化をめざす」、これが私の夢です。
タクシー労働者の中には、利用者を荷物のように扱ったり、様々な会社を渡り歩く人もいます。そうしたことを止めさせ、労働者もスキルアップする必要があります。全国的に報酬や労働条件を同じレベルにしていけたらと思っています。
――平和フォーラムに期待することはありますか。
いま、一番大きな問題は憲法だと思います。自民党の改憲案では国防軍を作るとしています。しかし、いまの自衛隊の人数だけで足りるのか、どういう人を募集しようとしているのかなど、問題が多いのに、マスコミは伝えようとしていません。96条を変えて改憲発議をしやすくして、国民投票をしようとしていますが、その前に止めていくことが必要です。私は意識的に組合員に憲法問題を提起していますが、参議院選挙での争点にしていくべきです。方針をしっかり打ち出せば、人は動いていくと思います。ぜひ、改憲反対の大規模な集会をやってほしいと思います。
また、脱原発や沖縄をはじめとする米軍基地の縮小・撤去も課題です。環太平洋経済連携協定(TPP)についても、新自由主義の直撃を受けた私たちは反対しています。消費税増税も、タクシー業界では売り上げ1000万円以下の免税となる個人タクシーもあるので、廃案を求めています。多くの分野で平和フォーラムに期待していますし、私たちも出来る限り活動に参加していきます。
〈インタビューを終えて〉
僕が幼い頃、故郷の北海道の村にはタクシーが1台ありました。赤いいすゞのベレット、リヤエンジン・リヤドライブの車に憧れ、運転するおじさんの姿が輝いて見えました。しかし今、規制緩和の象徴にされたようなタクシー業界は、その存続さえも危ない状況に陥っています。松永書記長の言葉に危機感がひしと伝わってきました。しかし、この熱い思いがあればこそです。働くことと共存できない社会は、発展しないと思います。働く者の権利と誇りを取り返す闘いは大切です。
(藤本 泰成)
「暗黙」から「公然」へ
拡大するオスプレイの低空飛行訓練
「竹トンボ」の構造上の欠陥
垂直モードで離着陸を行う米軍輸送機オスプレイは、基本構造の上で欠陥機です。ヘリコプターを除き、あらゆる飛行機・ジェット機は、機体が前進し、その風が翼にあたった流体の気圧差で揚力を生み出し機体を上昇させます。しかし、オスプレイはこの揚力を使わず、2基のエンジンの出力を直接使って浮上する構造です。「2つつないだ竹トンボ」の2つのプロペラに出力差が出たら、たちまち機体は揺らぐのです。これこそ、オスプレイが設計上、欠陥機と呼ばれるゆえんです。
2つのティルトローターエンジンはその出力をコンピューターで制御していますが、突風で突如機体が揺れ始めると、コンピューター制御による飛行かパイロットのマニュアル操作の飛行かで混乱します。墜落しているのはほとんどこのケースであり、揚力を使わない垂直飛行モード時のトラブルです。
この欠陥機を、世界一危険な普天間基地に配備したその姿勢の中に、日米両政府の沖縄に対する態度が現れています。しかしオスプレイの配備は、これが危険な機種であるということにとどまらず、安保条約と地位協定で定めた基地提供の枠組みを変えようとするものであり、悪い意味での「飛躍」をもたらす点です。
それがすなわち、全国各地で拡大しようとしている低空飛行訓練です。これまで米軍機の低空飛行訓練は、公然たる事前通知訓練として実施されず「暗黙の訓練」でした。オスプレイの配備以前にも、ジェット戦闘機など米軍機の低空飛行訓練が行われ、高知県の早明浦ダムに墜落する事故などを起こしてきました。しかし、米軍はこの訓練の実態を明かさず暗黙の訓練としてきました。外務省も、訓練ではなく基地間の移動であると、自治体からの問い合わせに答えていたのです。
どこでも許される飛行訓練
「オスプレイ配備撤回・米軍基地問題を考える全国集会」 (4月13日・東京・津田ホール) |
しかし、オスプレイの配備が予定されるにおよんで、これまでの「暗黙の訓練」で堪えることができないと知るや、米軍機の飛行訓練を「公然の訓練」に「飛躍」させます。このとき、また次の問題が起こってきます。すなわち「基地でもなく、訓練区域でもない場所で訓練できるのか」という問題です。そしてその飛行が、日本の国内法に準じるのか否かという問題です。
日本政府は一時、低空飛行訓練が「航空法に準じる」と言い、その後「航空法の適用外」であり、それは「地位協定5条2項」が根拠だと主張を転々とさせました。「基地でもなく、訓練区域でもない場所で訓練ができるのか」という問いに外務省は、「米軍は安保条約によって認められており、訓練のない駐留は考えられない。訓練は地位協定ではなく安保条約に基づいている」と答弁しました。つまり、安保条約は基地提供だけでなく、基地に訓練はつきもの、訓練があるのは当然だと言っているのです。これはすさまじい答弁です。
この解釈がまかり通れば、米軍の自由な訓練が許されることになります。地位協定という基地と米軍軍人の日本国内の行動について定めた枠組みは根底からくつがえります。これ以上の「飛躍」はありません。オスプレイの配備は、このように米軍への基地提供範囲を変えることを伴って実施されるものです。
沖縄で新たな緊張の「前線」に
公然となったオスプレイの低空飛行訓練によって、あらたな爆音問題が全国で起こってくるでしょう。しかし、もっとも重大な意味は、オスプレイの普天間基地への強行配備が、「停滞する」米軍再編に再びモーションをかける政治的脅迫であると言う点です。
「領土問題」の緊張を利用してきた安倍政権が、オスプレイの高性能と攻撃力こそ抑止力にとって必要だと宣伝し、「領土」的緊張の喉元である沖縄にその負荷を負わせているのです。緊張を生み出し、またそれを基地負担に変え、そればかりでなく、新たな緊張の「前線」に沖縄を追いやろうとしている。このことに、沖縄の人々が抑えがたい怒りの声をあげているのです。
「従軍慰安婦問題」などの歴史認識を考える
過ちを認め誠意を尽くす勇気を!
平和フォーラム・原水禁 事務局長 藤本 泰成
米国からも懸念が表明される
4月23日、靖国神社の春の例大祭にあわせて、安倍内閣の4閣僚を含む168人の国会議員が参拝しました。過去の日本の侵略戦争や植民地支配を否定し、従軍慰安婦は強制ではなく、将校以上の報酬を得ていたなどと主張する安倍晋三首相のナショナリズムに乗り遅れんがための大暴走とも言うべき状況が、政治家の間に生まれています。
中国・韓国などから一斉に批判の声が上がっていることに対して、安倍首相は「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない。その自由は確保している。当然だろう」と発言していますが、米国などからも「非公式に懸念が表明されている」と報道されています。「従軍慰安婦は強制ではなかった」などとの発言に対しては、シーファー前米駐日大使が「慰安婦は女性への搾取であり、見直しを受け入れる人は米国には全くいない」とまで言い切り、歴史認識問題は日本の大きな政治・外交課題になっています。
許されない橋下発言
その最中、5月13日に日本維新の会の橋下徹共同代表による差別発言がありました。これに対し、国内外から厳しい批判の声が上がっています。発言の要旨は「戦争の最中には慰安婦制度は必要で、当時は世界各国で持っていた。慰安婦を暴行、脅迫で拉致したという事実は証明されていない。慰安婦は戦争の結果であり、慰安婦になってしまった方の心情は理解し優しく配慮していくことは重要だ。在沖米軍の司令官に『風俗を利用しなさい。そうでなくては海兵隊の猛者の性的エネルギーはコントロールできない』と伝えた」と言うものです。
橋下共同代表は、男女の性的関係を男性側から一方的に捉え、女性が性のはけ口として利用されることを肯定しています。このような考え方が、現代社会で通用するはずが無く、女性のみならず人間社会を冒涜するものであることは明白です。そして、彼は過去の過ちとしてではなく、現在もその必要性があると言及しています。軍隊という暴力装置を肯定することを基本にした橋下発言は、人間の歴史が希求してきた「平和と人権の確立」という普遍の取り組みを全否定するものに違いありません。
言葉ではない具体策を示せ
このような事態に対して安倍首相は、一転して村山談話を踏襲する意向を示しています。外務省からは、「日本は国際的に孤立し、極めて不利な立場に立たされる」との危機感を強めていると伝えられています。外圧によってこれまでの主張を取り下げるという政治家としての資質を問われる事態となっています。
平和フォーラムは、地理的・文化的・歴史的、そして経済的に日本はアジアの一員であり、侵略戦争と植民地支配を肯定してきた明治以来の「脱亜入欧」の考えを脱し、アジア諸国との真の友好と信頼を築くべきであると主張してきました。そして、その第一歩として「従軍慰安婦問題」「強制連行問題」などの戦後補償問題の解決と、「朝鮮高校の授業料無償化制度からの排除」などに象徴される韓国・朝鮮人など在日外国人への差別の解消を求めてきました。このような事態に際して、日本政府は、単に言葉のみの謝罪と反省ではなく、具体的な政策によって「過去の過ちを認め、その反省に立って新しいアジアとの関係をつくる」ことを示していくべきです。
1945年の敗戦を終戦と言い換え、東京裁判を否定し、戦犯とされた人々を靖国へ祀り閣僚が参拝する中で、いかに言を重ねてもアジア諸国の理解を得ることはできません。被害を与えた諸国に対して「過ちを認め誠意を尽くしていく」ことは、決して自虐的ではありません。政治家に信念と勇気があれば、日本国民は必ずや理解できるものと思います。最後には、諸外国からの賛同と敬意とそして信頼を勝ち得ていくことになり、このことは、将来に向けて必ず日本の国益になるものです。
私たちは、憲法問題に加えこの問題を参議院議員選挙の争点に加えなくてはなりません。
新しい食品表示法制定へ
具体的な表示基準の改定を急げ
食の安全・監視市民委員会 代表/弁護士 神山 美智子
消費者、事業者が望む一元化への第1歩
4月5日に「食品表示法案」が閣議決定され、5月中旬から国会審議が始まりました。これまで消費者だけでなく事業者も望んできた表示一元化のための第一歩です。
食品表示は、安全の面からの「食品衛生法」、品質については「JAS法(農林物資の規格化及び品質表示に関する法律)」、栄養については「健康増進法」と3つの法律に分かれていました。消費者庁はこれらの一元化の検討会を設け、意見交換会を開催するなどして、各方面の意見を聞いてきました。
一方、食の安全・監視市民委員会と主婦連合会は合同で「食品表示法案要綱案」を公表したり、多くの消費者団体、生産者団体で「食品表示市民ネットワーク」を作って意見書の提出や集会、消費者庁との交渉を重ねてきました。
こうした経過を踏まえて上程された食品表示法案には、次のような特徴があります。
- 消費者の安全及び自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に必要な情報が提供されることが消費者の権利であることを尊重するとの基本理念が定められたこと。
- これまで酒税法に基づき、財務省が単独で規制してきた酒が表示法の対象となることが明示されたこと。
- 罰則などの他に、消費者の申出制度、適格消費者団体による差し止め訴訟などが盛り込まれ、これにより、違法な表示や表示のない食品があった場合、消費者が消費者庁長官に申出をして調査させることができるようになること。
不当広告やおかしな表示が横行している
食品表示のパンフ表紙 |
いくつかの課題も残されています。この法律は広告を対象にしていないので、氾濫する不当広告に対し、差し止め訴訟を起こしたり、申出をすることができません。これは今後も「不当景品類及び不当表示防止法」に基づいてやっていかなければなりません。
また、法律が成立後、2年以内に施行されるので、その間に前述の3つの法律に基づいて現在バラバラに設定されている表示基準の統一という作業が開始されます。しかし、実際に重要なことは、現在のわかりにくい表示、正しくない表示を適正なものにする作業です。消費者庁の説明では、この作業は施行後に始めるというのですが、それでは何度も内容が変わることになり、消費者だけでなく、事業者にとっても不便ですから、同時並行で進めてほしいものです。
これまで、おかしな表示の例として、加工食品の原料原産地表示をみると、カット野菜には表示義務があるのにドレッシングをかけると義務がないとか、刺身の一種盛は表示義務があり、盛り合わせにはないなどがあります。また、「調味料(アミノ酸など)」という表示は、実際に使用された添加物が何なのかわかりません。甘味料でアレルギーを起こす人の話がテレビで紹介されていましたが、お菓子の餡に含まれている甘味料が表示されていないので食べて反応してしまったそうです。これはキャリーオーバーという表示免除の制度で起きた問題です。
遺伝子組み換え食品には原則、表示義務があるのですが、例外が多すぎてわかりにくくなっています。たとえば味噌に表示がない場合は、遺伝子組み換え原料は使用していないという意味ですが、醤油に表示がなくても使用している可能性が高いということになっています。また消費者庁には監視に当たる人がいないので、実際の監視は保健所や農水省の表示Gメンが当たりますが、現在輸入食品の表示監視が国の検疫所の業務からはずれています。こうした法律の執行面の強化が必要です。
そして、表示を良くするために最も重要なことは、多くの人々が表示をみる習慣をつけることです。食の安全・監視市民委員会と食品表示市民ネットワークでは、こうした分かりにくく不正確な表示について広く知っていただくため、パンフレット(1部100円・上写真)を作成しました。ぜひ活用してください。
私たちは今後も議員や消費者委員会などにも働きかけて、具体的な表示基準の改定作業を早期に進めるよう要求していきます。
米原子力空母ジョージ・ワシントン配備から5年
東京湾に浮かぶ原子炉の危険性
神奈川平和運動センター 事務局長 小原 慎一
2008年9月に米海軍横須賀基地に原子力空母ジョージ・ワシントンが配備されてから5年が経過しようとしています。当時から課題であった市民の立場に立った「安全性の確保」「情報公開」は依然として不充分なままです。現在、5年次目のメンテナンス・改修作業が終了目前であり、5月20日過ぎに改修作業で発生した放射性廃棄物の積み出しが行われ、6月初旬に軍事行動に向かうと予想されます。
当初、私たちが指摘してきた空母原子炉の危険性は、主にこうした作業時の放射能漏れを想定していました。ところが東京電力福島第一原発事故によって、同程度の能力を有する原子力空母の原子炉事故の危険性がより現実的なものとなりました。
原子力空母の核燃料の交換は20~25年に1回とされ、高濃縮ウラン燃料を使うことで、長期間の連続使用が可能であると米海軍は説明しています。20~25年もの間、核燃料を交換しないため大量の核分裂生成物(死の灰)が空母の中に溜め込まれています。万が一起こった事故の際に、この大量の「死の灰」が放出されかねません。空母の原子炉の危険性は、原発以上との指摘を重く受け止めなければなりません。
「原子力行政の一元化」の埒外に置かれた米軍艦船
市民団体が作成したパンフ |
福島第一原発事故以来、今日まで日本国内で稼働している実用原子炉は、福井の大飯原発の他は、東京湾にある横須賀港に出入港する原子力空母と原子力潜水艦だけです。ところが、福島第一原発事故を受けて国内の原発や原子力施設の「安全と防災対策」の見直しが進む中でも、これら米海軍の艦船についての対策は全く放置されたままです。原子力規制委員会により昨年10月31日に決定されて、今年2月27日に改定された「原子力災害対策指針」でも、米軍艦船を対象外とされてしまいました。
これまでは、2004年8月25日付「原子力艦の災害対策マニュアル」が、原子力安全委員会の「原子力艦災害検討委員会検討結果」をもとに、極めて不充分な内容ながらも存在していました。原子力行政の一元化の流れの中、このマニュアルの位置づけさえも不透明です。
そのマニュアルも、防災計画上の「避難を計画する範囲」が、空母は半径1km以内、潜水艦は0.5km以内とされ、国内の当時の原発等の避難範囲と比しても格段の違いがありました。それは後に原子力空母配備にあたり「空母の原子炉事故はありえない。放射能汚染はあっても基地内にとどまる」とした米海軍の見解に一致するものです。横須賀市民や市行政当局からもその矛盾の解消が求められ続けていました。
国の無責任体制を追及し、要請行動を展開
原子力空母配備後も「情報公開」と「安全性の検証」を求めてきた横須賀の市民団体と神奈川平和運動センターは、横須賀市と神奈川県に対して地域防災計画の見直しにあたっては米軍艦船も国内の原子力施設と同様に扱うよう要請を繰り返してきました。国の対策が不透明な中で自治体も対応に苦慮しているのが現実です。
そこで、今年3月29日と4月26日の2回にわたり、原水禁国民会議とともに政府への申し入れを行いました。内閣府防災課は自らが担当窓口であると認めながら、原子力の専門家がいないとして具体的対策は示さず、2004年の旧マニュアルは有効などと回答しました。2回目に原子力規制庁同席で交渉し、規制庁側が技術的アドバイスをすることは可能との方向を示しました。一方で、横須賀市は外務省に対して国の責任ある対策を求め、「規制庁も含めた検討組織を立ち上げる」との回答を得ています。
原子力資料情報室に調査・研究を依頼した「拡散シュミレーション試算(福島第一と浜岡原発を参考に)」によれば、原子力空母の防災計画では「緊急時防護措置区域」(UPZ)の範囲は最低でも10.5kmは必要で、UPZの定める半径30kmの原子力防災指針の適用は当然のこととなります。そこに暮らす人々は三浦半島と横浜市南部を合わせて、対策が極めて困難な膨大な数です。
今回、国の無責任な対応を追及し一定の成果はあげたものの、米原子力艦船への対策は全く未知数であり、原子炉事故の危険性をより強く訴え、空母の母港撤回につなげる運動の強化が重要です。
7月に原発の新規制基準を策定
原子力を止めるために厳しい基準を
非常にわかりにくい意見募集のやり方
原発再稼働の方針を明らかにした安倍政権のもと、再稼働の前提となる7月の新規制基準策定にむけての様々な動きが急速に展開しています。5月10日まで行われた新規制基準案へのパブリックコメントでは、まだ案の段階であるにも関わらず、3000ページを超える膨大なものに対して、非常にわかりにくい意見募集のやり方が行われていました。
「原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に対する意見募集について」というのがそれです。ほぼ同時に、緊急時のモニタリングや、安定ヨウ素剤の配布などが問題点になる、防災指針の見直しに関するパブリックコメントも行っています。その前の2月には、安全基準骨子案を出し、それへのパブリックコメントも行いました。
今回はそれを具体的な条文の形にして、全体では行政手続法に基づくパブリックコメントの対象文書だけでも、27件に関するものにわたっています。その中にはよく見ると、もんじゅ、さらには福島第一原発の5号機、6号機も含まれており、これらも再稼働の対象にしていたのが明らかになりました。
問題だらけの新規制基準案
新規制基準案の本文には無く、付則で付け加えるという「5年猶予問題」は、第二制御室やバックアップ電源、加圧水型軽水炉のフィルター付きのベント設備など「特定安全設備」について、基準を満たさなくても5年猶予を与えるというもので、基準自体に自ら抜け穴を作るような不合理を出し、安全を保証できなくなる事態を招いています。 原発の稼働年数を40年に限定することにも、20年延長の例外規定があります。設計基準事故については、単一故障の仮定のみであり、同時に複数が故障する事態への対応が十分でありません。断層の判断についても、活動が否定出来ないものについては活断層と見なす原則を通すべきです。
45トンものプルトニウムをため込んでいる日本にとって重大な核セキュリティに関しては、テロ対策だけでも現実的な対応を想定しているとは到底思えません。火災防護についても、初期消火のみが事業者の責任で、あとは消防に任すというようなことでは、とても現実を見ているとは思えません。緊急作業時の線量限度の問題についても、100mSvを250mSvに引き上げる事が起こるのが現実です。リスクを知った上での限度を超えて作業をした人への懲罰の問題も未解決です。このように個別に見ていくと、問題点だらけで、全体として安全文化を構築していこうという姿勢が見られません。
委員会の透明性、公開性が重要
こうした一方で、原子力規制委員会は5月15日、1万点の点検漏れが見つかった日本原子力研究開発機構の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」については、運転再開に向けた活動を認めないことを明らかにしました。また、敦賀原発2号機についても、原子炉建屋の真下を通る破砕帯が「耐震設計上考慮する活断層である」とする報告書をまとめるなど、原子力規制行政の中で絶対必要な役割を担っていることも事実です。原子力の安全基盤を作り、すでに大量に作ってしまった核物質、放射性廃棄物の管理保全をしていくことは、脱原発を選択しても必要なことです。
原発ゼロを示す具体的なエネルギー政策が無ければ、津波の想定によって高さ29mなどという巨大な防潮堤を作るなど、本来エネルギー政策として投資すべきものから外れて、電気代や税金につけを回すという事態は続いています。しかし、原発ゼロ政策の方針を転換し、再稼働を進める安倍政権下にあっては、新規制基準や防災指針をより厳しいものにして、原子力を止めることに繋げていくことが、より現実的な方法ではないでしょうか。
また、仮に十分な規制基準が出来たとしても、その運用には検査体制、その人員など、総合的な観点からの対応が必要です。さらにリスクというものは、想定されない現象が起こるのが確実なのですから、バックフィット(最新の知見を技術基準に取り入れ、既存の原発にも適合を義務付ける制度)の原則を確固たるものにするのみではなく、リスク評価の不確定な部分など細目にわたって安全基準を確定出来ない以上、保険を義務化するような安全規制以外の対策も必要です。
安全文化を構築していくためには、委員会の透明性、公開性が重要です。今回のようなパブリックコメントの市民社会への周知のやり方では後ろ向きの姿勢としか思えません。根本的な改革を実現させるよう、市民の側からの働きかけを続ける必要があります。
5年猶予の問題にしても、この重要な判断が公開の議論の結果ではなく、3月19日に委員長の私案として出されて決まるという極めて公開性を欠くプロセスで行われました。このようなことが繰り返さないように委員会の公開・透明性を求めて行きます。
原子力委員会への世界の期待
核拡散と核テロの防止
去る5月2日に原子力委員会に呼ばれ、前号でも触れた日本の再処理政策と核拡散・核セキュリティについて報告してきましたので、今回はその発言内容を抜粋・要約してお伝えします。
ニューヨーク・タイムズ紙投稿と委員長の「返答」
招待理由の一つは、去年の11月にニューヨーク・タイムズ紙に日本の再処理政策に関する投稿をしたことでしょう。 プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル教授と二人で書いたこの投稿の中で、私たちは次のように述べていました。
「もともと再処理はプルトニウムを燃やしながらプルトニウムをつくるという夢の高速増殖炉に最初の燃料を提供するためのものだった。ところが、この高速増殖炉計画は進んでいない。分離したプルトニウムを無理やり軽水炉で消費する、プルサーマル計画も遅れている。それにもかかわらず、日本が再処理政策を続けてきた結果、プルトニウムが増え続けている。現在英仏にある35トンと国内の9トンを合わせて44トンに達している。これは国際社会にとって問題である。一つは、このプルトニウムがテロリストによって奪われる可能性、つまり核セキュリティの問題、もう一つは日本が先例となるという問題。つまり、日本に倣ってあるいは日本を口実に使って平和利用目的という名目で再処理を行う国々が増えるという核拡散の問題。このことをオバマ政権はもっと強調すべきだ。」
これを読まれた原子力委員会の近藤駿介委員長は同紙に投稿されて、懸念は共有するが、安心してほしいという意味のことを述べられました。日本は1991年から余剰プルトニウムを持たないとの方針を持っている。しかも、2003年からこれを強化している。六ヶ所再処理工場での再処理の前に、そこで出てくるプルトニウムの利用計画を発表するよう電力会社に要請しているとし、原子力委員会がなくなったとしても、新政権がこの原則を維持・強化することを望むという考えを表明されました。核テロと北東アジアの緊張についての懸念の高まりをその背景として挙げられています。
世界が注目する原子力委員会の判断
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利用計画の実態は、六ヶ所再処理工場の隣に建設されているMOX工場が出来上がればそこでMOX燃料をつくり、これを軽水炉で利用するとの意思表明をしているにすぎません。また、英仏にある日本のプルトニウムはこの利用計画では考慮しなくていいことになっています。しかも、電気事業連合会は再処理工場の早期運転開始を訴えながら、今年3月26日、この原子力委員会において原子力発電所の再稼働の行方が見通せない現状では、利用計画は出せないと述べています。
(近藤委員長は、プルトニウムの保有量増加のピークは超えていたと委員会で指摘。だが、それは、少量のプルサーマルの開始と、ガラス固化問題による再処理工場運転開始の遅延のため。運転が始まれば、激増する )。
世界が注目する原子力委員会の判断
今、原子力委員会がどのような判断を下すか世界が注目しています。近藤委員長の投稿を読んだ人々は、原子力委員会に期待を寄せています。鈴木委員長代理によると、国務省のカントリーマン次官補は、イランの核問題や米韓原子力協力協定への影響にまで言及し、経済面・環境面での理由がないまま再処理をすると日本の核不拡散面での役割に関する国際社会の評価に大きな傷がつく可能性もあると忠告されたとのことです。
原子力安全委員会(廃止)の斑目春樹元委員長は、原発の安全問題についてなぜ日本だけ外国でやっていることをやらなくていいか、その言い訳ばかりに時間をかけていたと述懐しています。再処理についてはどうでしょう。昨年の末には現段階での委員会の存続が危ぶまれていましたが、こ原子力委員会が現に存続しているのですから、委員の皆様方にはこの方針の強化方法をお示しいただくようにお願いします。
斑目元委員長の言われるように、いくら抵抗があってもやるという意志決定が必要です。英仏にある日本のプルトニウムの消費・処分計画が進まなければさらなる再処理は認められないという程度のことを言わなければ、原子力委員会の評判にかかわるのではないでしょうか。(田窪 雅文:ウェブサイト核情報主宰)
イラク戦争10年キャンペーン
日本政府に戦争参加の検証を求める
日本国際ボランティアセンター 代表理事 イラク戦争10年キャンペーン
共同代表 谷山 博史
イラク戦争は世紀の大失敗 誤り認めない日本
今年の3月20日、米軍主導のイラク戦争の開戦から10年を迎えました。日本国際ボランティアセンター(JVC)は、NGOやジャーナリスト、市民団体と協力して「イラク戦争10年キャンペーン(イラクテン)」実行委員会を発足させ、この世紀の大失敗とも言うべきイラク戦争を風化させず、今後このような戦争を2度と繰り返させないために、3月から4月にかけて各地でキャンペーンイベントを開催しました。3月20日に早稲田大学で開催したメインイベントは500人もの参加者を集め、大盛況のうちに閉幕しました。
イラク戦争はサダム・フセイン大統領政権下のイラクが大量破壊兵器を所持しているとの理由で、国連の議決もないまま始められた戦争です。開戦前、国連の大量破壊兵器査察団は査察の継続を主張、国連安全保障理事会の独仏中露の常任理事国は戦争に反対していました。世界中で総勢100万人を越える反対デモが起こり、日本でもかつてない数万人規模のデモが各地で起こりました。それにも関わらず、日本政府は国連加盟国に開戦賛成を働きかけるとともに、アメリカの開戦表明をどこの国よりも早く支持しました。加えてアメリカ占領下のイラクに自衛隊を派遣し、米軍の掃討作戦を側面支援しました。しかし、戦争の理由とされた大量破壊兵器は見つからず、もうひとつの理由とされたフセイン政権のテロ組織とのつながりも証明できませんでした。「世紀の大失敗」と言われるゆえんです。
イラク戦争をめぐっては戦争を主導したアメリカやイギリス、参戦したオランダでも検証が行われています。イギリスとオランダでは政府が独立検証委員会を設立してイラク戦争の国際法上の違法性や自国政府の政策面の是非を検証しています。オランダの検証報告書では「イラク戦争は違法」、「オランダ政府の米国支持は誤り」との判断を下しています。
一方、日本ではイラクテンイベントの発起人である市民組織「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」の働きかけにより、民主党政権の歴代外務大臣がイラク戦争の検証の必要性を国会で発言したり、イラク戦争検証議員連盟が発足したりするなどの動きがありましたが、政府はいまだにイラク戦争の違法性もイラク戦争支持の誤りも認めていません。そして自民党の政権復帰によって事態は悪化の一途をたどっています。
日本に戦争をさせないために何ができるか
「日米イラク戦争の正体」と銘打った3月20日のイベントは「イラク戦争は人ごとじゃない。日本に戦争をさせないために何ができるか話そう」と呼びかけました。実行委員会共同代表の志葉玲さんによる基調報告の後、イラク人ジャーナリストのアリ・マシュハダーニさんは、イラク戦争とその後の占領下での米軍の行為が犯罪行為にあたると批判し、それを報道しようとするジャーナリストへの弾圧の実情を語りました。
イラク戦争をアメリカと先導したイギリスからは、政府のイラク戦争独立検証委員会設立のきっかけをつくった反戦軍人家族の会のローズ・ジェントルさんが、大義なき戦争で息子を失った悲しみを語り、戦争責任を問う検証の意義を強調しました。元外務省国際情報局長で「戦後史の正体」の著者の孫崎享さんは、日米関係の重視から日本政府が戦争を支持したこと、その構図に今も変わりがないことから、今後戦争に参加しないためにもイラク戦争の検証が必要だと語りました。
さらに、(1)イラク戦争と劣化ウラン弾、(2)ローズさんと語るイラク戦争検証、(3)アリさんと語るイラク戦争の現実、(4)イラク戦争と自衛隊・在日米軍という4つの分科会がもたれ、最後に「早稲田宣言」として、日本政府にイラク戦争の検証を求めるとともに、平和憲法の精神にもとづいて、戦争に参加・支持する動きに反対する意思を表明しました。実行委員会はこの宣言を政府に届け、人々に広めることにしています。
いま日本では集団的自衛権の容認や憲法の改正に向けた動きが加速しています。この危機感が、忘れられようとしていたイラク戦争をテーマにしたイベントに多くの人を集める結果になりました。戦後、平和国家を任じていた国が戦争の当事者になったのがイラク戦争です。この教訓に立つことで私たちは、戦争に向かう権力を縛る運動を展開していかなければなりません。
《各地からのメッセージ》
「九州ブロックは一つ」を合い言葉に8県の連携で運動を推進
平和・人権・環境福岡県フォーラム 事務局長 前海 満広
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平和・人権・環境福岡県フォーラム(福岡平和フォーラム)は、2000年2月に、それまでの民主・リベラル福岡県労働組合会議(県労組会議)を改組し結成されました。県労組会議は、93年結成の「社会党と連帯する福岡県労組会議」を前身として、連合運動を強化・補完していく立場から選挙闘争をはじめ、反戦・平和・人権・環境等の様々な運動を担ってきました。
福岡平和フォーラムの組織構成は、19単産(組)、2民主団体が加盟しています。また、地区組織は20数地区あり、運動の連帯をはかっています。
原水爆禁止福岡県民会議(県原水禁)は、福岡平和フォーラム加盟組織と同様です。福岡平和フォーラムと財政の一元化をはかり原水禁運動と平和・人権・環境等の運動と分けて推進しています。さらに福岡県には「戦争への道を許さない福岡県フォーラム」(県フォーラム)という組織があります。この組織は99年9月に結成され、福岡ではこの両団体が車の両輪となって運動を展開しています。
平和フォーラムの運動の柱は、前述した「原水禁運動」と「平和・人権・環境等の運動」の2つの運動分野に分けて運動展開しています。運動課題は全国同様、さまざまな分野にわたっています。
また九州には、「九州ブロックは一つ」という合い言葉があります。九州8県が連携しあって運動を推進して行くことを確認しています。
そのため、(1)九州ブロック事務局長会議、(2)原水爆禁止九州ブロック連絡会議、(3)原発はもういらない九州ブロック連絡会議、(4)九州勤労協連絡会議の4つのブロック組織があります。福岡平和フォーラムも微力ながら、九州ブロックや全国各地と連帯し、運動推進をはかっていきます。ともにがんばりましょう。(写真は4月13日に東京で開催された「オスプレイ配備撤回・米軍基地問題を考える全国集会」で発言する前海さん)
【映画評】
終わらないイラク戦争 フクシマから問い直す
嘉指信雄・森瀧春子・豊田直巳 編
勉誠出版 2013年刊 |
1991年に、国連決議に基づく米国を先頭とする多国籍軍がイラクに侵攻し、ウラン兵器によりイラクの大地を放射能汚染しました。そして2001年同時多発テロがあり、03年3月、米国のブッシュ大統領(当時)は、中東への支配の強化と石油利権の確保のため、有志連合諸国を引き連れて、国際法違反の第2次イラク侵略戦争を開始。武力でイラクを制圧し、04年にフセイン大統領を拘束しました。そして06年5月にはイラクに傀儡政権を発足させ、2011年11月に米軍がイラクから撤退しました。
この戦争でイラクにおける民衆の犠牲者は、12万人を超え、社会、インフラ、自然は破壊され、その犠牲とテロ多発による社会の混乱は今も続いています。今年は第2次イラク戦争開始から10年です。世界では、とりわけ米国、英国、デンマーク、オランダなど戦争に関わった国々では、「イラク侵略戦争の検証」が行われています。しかし日本政府の検証はおざなりです。私たちは「ワールドピ-スナウ」に結集し、イラク侵略戦争反対の取り組みを数え切れないほど重ねてきました。しかし最近はあまりにも多くの重大な出来事が続くため、イラク戦争についての関心は次第に薄くなりつつあるのも事実です。
そうした中で、イラク戦争についての本が出版されました。3人の編者は、第1次イラク戦争で米軍によって使用された「ウラン弾」による被害の告発と被害者の支援を続けています。そして「NO DUヒロシマプロジェクト」を発足させ、ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)に参加し、ウラン兵器禁止の国際的キャンペーン運動へと取り組みを拡大しています。
多くの活動家たちがこの本の作成に参加し、アメリカ侵略戦争をさまざまな分野から告発しています。最初の豊田さんの写真が私たちをもう一度イラクに思いを馳せさせ、米国がイラクをウラン兵器で放射能汚染し、子どもたちに障害を多発させ続けていること、ファルージャでの殺りくの実態、大量破壊兵器、アルカイダとの関連がでっち上げであったこと、国際法違反の侵略戦争であったこと、そして、日本も加害者であったことなどを告発しています。小泉純一郎首相(当時)は、米国のイラク戦争を支持し、自衛隊をイラクに派兵しました。そして、在日米軍基地はイラク出撃基地となったのです。もう一度イラクの現実を見つめましょう。
(福山 真劫)
6月20日に日朝国交正常化連絡会が全国総会と記念講演会
日本と東北アジアの平和構築にあたって、唯一、日本が国交を持たない朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化と核開発問題の解決は最重要課題です。しかし、第1次安倍内閣の打ち出した「拉致問題の解決なくして日朝国交正常化なし」の方針に拘束されたまま、政権交代してもまともな交渉も行わず制裁を強めるばかりです。
いま、安倍内閣が再び登場して関係はさらに悪化し在日朝鮮人の人権侵害は極度に達しています。朝鮮半島の平和を確実なものにするためにも、多くの人たちと手を携えて、日朝国交正常化を求める取り組みを全国各地ですすめていかなければなりません。
「東北アジアに非核・平和の確立を!日朝国交正常化を求める連絡会」(日朝国交正常化連絡会)は、6月20日に全国総会と記念講演会で、そうした取り組みを確認します。講演会はどなたも参加出来ます。
日朝国交正常化連絡会記念講演会
日時: 6月20日(木)18:30~20:30
場所: 連合会館2階204会議室 (千代田区神田駿河台3-2-11)
内容: 主催者あいさつ/記念講演「歴史認識について」 高嶋伸欣琉球大学名誉教授/「朝鮮情勢について」和田春樹東京大学名誉教授/総会の報告と今後の運動提起/集会アピール
参加費: 500円(資料代等を含む)