3月, 2013 | 平和フォーラム - パート 2
2013年03月17日
「清水澄子さんを偲ぶ会」開く
2003年12月に就任して以来、平和フォーラムのとりくみの重要な役割を果たされてきた副代表の清水澄子さん(享年84歳)は本年1月14日、永眠されました。清水さんは、1951年に福井県労働組合評議会に勤務し、働く女性の権利拡大のとりくみをはじめられ、I女性会議の前身である日本婦人会議の結成から中心的役割を担い、参議院議員としても活躍し、毎年の憲法理念の実現めざす大会(護憲大会)では人権や戦後補償のオピニオンリーダーとして、また、日朝国交正常化連絡会の共同代表として、アジアの平和と人権の確立を求めて尽力されてきました。清水さんは、4年前に肺がんと診断され、抗がん剤治療を受ける闘病のもとでももたゆまず最後まで活動を続けられてきました。
3月17日、「清水澄子さんを偲ぶ会」がI女性会議主催のもと東京・連合会館で開かれ、ジェンダー平等をとりくむ多数の女性をはじめ、平和フォーラム、社民党・旧社会党の国会議員や関係者、在日朝鮮・韓国人の方々など全国から約400人が参加しました。
会の前段に昨年10月I女性会議の結成50年のときの清水さんのあいさつのビデオや写真が映写された後、高橋広子共同代表の司会で開会。清水さんの活動を「一生を女性運動、平和運動のよき指導者として情熱をもってまい進され、捧げられた」と紹介しました。黙とうにつづいて、各界からの偲ぶ言葉を受けました。発言されたのは、国際婦人年連絡会世話人の山口みつ子さん、北京JAC(世界女性会議ロビイングネットワーク)共同代表の舟橋邦子さん、アジア女性と連帯する朝鮮女性協議会会長の洪善玉さん(代読)、金大中平和センター理事長で故・金大中韓国大統領夫人の李姫高さんによるビデオメッセージ、日朝国交正常化連絡会顧問で東京大学名誉教授の和田春樹さん、福山真劫・平和フォーラム代表、社会民主党の福島みずほ党首、友人代表の山村ちずえさん、ご遺族を代表して夫の清水茂夫さん、最後にI女性会議の村上克子共同代表でした。
このうち、福山代表は「清水さんや私たちが求め続けた平和、民主主義、過去の清算、日朝国交正常化、脱原発とは正反対の路線を安倍政権は突きすすもうとしている。清水さんがめざしたものを実現させるため全力でがんばる決意だ。天から激励し続けてください」とのべました。長く運動を共にしてきた山村ちずえさんは、「昨年5月から11月にかけて関西に3回来てもらった。休んでいるときはせきやたんが出て非常に苦しそうだったが、講演の90分間はせきも出ず、見事に日朝友好を訴えられた。彼女の執念は驚異的」と話しました。お連れ合いの茂夫さんは、「福井県で『働く婦人の会』を創設したのを皮切りに、彼女は60年間、婦人運動を続けてきた。がんの告知を受けた後、私は『だいぶ一所懸命やったのだから、家でゆっくりしたら』と言ったが、彼女は『私は死ぬまでやる』と答え、昨年末、入院するその日まで机に向かっていた。責任感が強く情熱をもって活動した。清水澄子は燃えつきて逝ってしまった。皆さんには彼女の思いを受け継ぎ、それぞれの活動を発展させてかってほしい活動に明け暮れ、今も、どこかの出張へいっているような感じ」との発言は、参加者の心に強く響くものでした。村上共同代表は「いま『日本を取り戻そう』という人がいるが「取り戻す」とは戦前にもどすこと。『取り戻す』社会ではなく前進する社会へ力をかしていただきたい」と追悼と参加者への謝意の言葉をのべました。
2013年03月15日
政府の環太平洋戦略経済連携協定(TPP)交渉参加表明に対する声明
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 藤本 泰成
安倍晋三首相は3月15日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明しました。その理由として、「アジア太平洋地域の成長を取り込む」「日本経済全体としてのプラス効果」「アメリカとの関係強化による安全保障、地域の安定」などをあげ、「1日も早くルール作りに参加する必要がある」としました。また、自民党のTPP対策委員会は14日、コメなど農林水産分野の重要5品目や国民皆保険制度などの「聖域」扱いを安倍首相に求めたものの、「交渉に参加しなければ、国民生活の水準、国際社会における地位を保つことができない」など、事実上、交渉参加を容認しました。
平和フォーラムは、菅直人元首相が2010年にTPP参加検討を表明して以来、TPPは食料や農業、環境等に与える影響が大きいことなどから、慎重な検討が必要であると指摘してきました。TPPは農業問題だけでなく、食の安全、医療や公共サービス、労働、金融など、広範な「社会的共通資本」に大きな打撃を与えることが予想されます。それらの規制の撤廃、全面開放が行われれば、市場主義、競争原理が一層激しさを増し、矛盾と格差の拡大をもたらし、日本社会の有り様に重大な影響を及ぼすことが懸念されます。
さらに、日本の参加は、TPP交渉を主導してきた米国の意向に沿うものであり、このことで「日米同盟」体制をより深化させ、経済におけるブロック化を強めるとともに、軍事面を含めて、東アジアでの安全保障体制に影響を与えることも想定されます。
しかし、このような重要な問題について、この間、十分な情報開示や国民的議論がほとんど行われてきませんでした。特に自公政権下では政府と国民との意見交換は一度も行われていません。昨年からの米国との事前協議における、自動車や保険、牛肉などの貿易問題での米国からの要求についても明確にされていません。今後のTPP交渉においてはさらに、既存の参加国間で既に合意した事項はすべての受け入れを求められます。
このような情勢の中で、政府が十分な情報を開示せず、国民的議論を行うことなく、性急にTPP交渉への参加表明を行ったことに対し、平和フォーラムは強く抗議し、その撤回を求めます。
また、自民党は先の衆議院総選挙時に、TPPに関して「食の安全・安心の基準を守る」「ISD 条項(投資家による国の訴訟権)は合意しない」「政府調達・金融サービス等はわが国の特性を踏まえる」なども含めて公約としました。そして、「聖域(死活的利益)の確保ができないと判断した場合は脱退も辞さないものとする」としています。
私たちは、今後、国内外の多くの団体と連携して、政府やTPP交渉参加各国の動きを監視し、農業・食料をはじめとして、国民生活に打撃を与えるような協定に強く反対して運動を進めます。
2013年03月13日
「主権回復国際社会復帰記念の式典」に関する事務局長見解
2013年3月13日
「主権回復国際社会復帰記念の式典」に関する事務局長見解
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 藤本泰成
3月12日、政府主催の「主権回復国際社会復帰記念の式典」を、1952年の「サンフランシスコ講和条約」が発効した4月28日に合わせて開催することを閣議決定しました。政府は「(敗戦から)7年間の長い占領期間を知らない人が増えている」「節目の日を記念し、わが国の国際社会の平和と繁栄への貢献の意義を確認する」との理由を示しています。しかし、これまで政府主催のこのような式典が開かれたことはなく、唐突に天皇・皇后までも巻き込む式典を開催する理由とは考えられません。
「サンフランシスコ講和条約」は、そもそも全面講和ではなく、ソビエト連邦(当時)やポーランド、チェコスロヴァキア(当時)などの国は調印していません。インドやビルマ(当時)、中華人民共和国などは参加していません。それらの国との和平は先送りされました。
日本本土の米国の占領政策が終了する中、この条約により「南西諸島や小笠原諸島を合衆国の信託統治に置く」とされ、沖縄県民などはその後長く米軍統治下に置かれ、苦難の生活を強いられました。沖縄県民はこのような経過から、4月28日を「屈辱の日」と呼んでいます。また、戦前・戦中の植民地政策の中で、様々な形で日本での生活を強いられた在日韓国朝鮮人の問題もそのまま残されました。
政府は「沖縄の県民の苦難の歴史を忘れてはならない」としました。現在沖縄は、辺野古新基地建設、東村高江のヘリパット建設、普天間基地へのオスプレイ強行配備などに県民が猛烈に反発している。また、米軍関係者の犯罪も絶えることなく「日米地位協定」の全面改定も急務とされる。全く問題解決ができない中で、沖縄県民の寄り添うような言葉だけでごまかし、県民が「屈辱の日」と呼ぶ4月28日を祝うことが許されるでしょうか。植民地支配を反省することなく、在日韓国朝鮮人の生徒が通う朝鮮学校を「高校無償化制度」の適用から排除を政権誕生早々に実現させ、さらに河野談話を否定し「近隣諸国条項」の廃止をもくろむ安倍自民党政権のもとで、自らの「解放」だけを喜ぶことが許されるでしょうか。
平和フォーラムは、唐突な「主権回復国際社会復帰記念の式典」に反対するとともに、これらの課題の解決に政府が真剣に対応することを強く求めます。そのことが真の意味での国際社会への日本の復帰につながり、日本全体で心から主権回復を祝うことができると考えます。
2013年03月12日
安倍内閣による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加の姿勢に対する見解
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 藤本 泰成
いま、安倍晋三首相は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加の姿勢を強めており、近日中にも表明を行うのではないかとの見方が広まっています。
安倍首相は、去る2月22日におこなわれた日米首脳会談で、「TPP交渉参加は聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった」としています。しかし、日米首脳会談では、「全ての物品を自由化交渉の対象にする」ことを確認しており、関税撤廃の例外を認めたわけではなく、これまでの米国の姿勢から一歩も変わるものではありません。また、日本の交渉参加には交渉参加国全ての国の承認が必要であり、関税撤廃を強く主張しているオーストラリアとニュージーランドは例外を認めないとしています。
さらに、TPP交渉は農産物の関税だけの問題ではなく、国民生活や行政、経済活動など多方面にわたって影響するものです。自民党は先の衆議院総選挙時に、TPPに関して6項目の条件を掲げ、その中で、「国民皆保険制度を守る」「食の安全安心の基準を守る」「ISD 条項(投資家による国の訴訟権)は合意しない」「政府調達・金融サービス等はわが国の特性を踏まえる」などを公約としました。これらの点が守られるかどうかも明確になっていません。
しかも、既存の参加国間で既に合意した事項に対し、後から参加した国が再協議を求めたり、拒否したりすることができず、すべての受け入れを求められることも明らかになりました。今年の10月頃の合意をめざすとされるTPP交渉に、仮に日本が今から参加表明をしたとしても、米国議会での承認手続きなどから、実際の交渉参加は早くても合意直前であり、日本の主張を反映させることは困難です。また、交渉に参加してから離脱することは事実上不可能と言われています。
こうしたことについて、いまだに政府から情報の開示もなく、国民的議論も行われていません。民主党政権時には、2012年だけでも政府と国民との意見交換会は87回行われてきましたが、自公政権になってからは1度も開かれていません。また、多くの自治体ではTPP交渉参加に反対または慎重に行うよう求める意見書が出されています。これは、農業などを中心とした第一次産業が壊滅的な影響を受けるばかりではなく、日本が長きに渡って培ってきた「社会的共通資本」「地域公共サービス」に大きな打撃を与えるからです。
このような情勢の中で、政府が十分な情報を開示せず、国民的議論を行うことなく、性急にTPP交渉への参加表明を行うことについて、平和フォーラムは強く反対します。私たちは、今後、多くの団体と連携して政府の動きを監視し、TPP交渉参加を表明するような事態に対しては、強く抗議し、その撤回を求めて運動を進めます。
以 上
2013年03月09日
ビデオ報告「3.9つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」
2013年03月09日
「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」に1万5000人参加
2011年3月11日の東日本大震災・東京電力福島第1原発事故から2周年を前に、3月9日、東京・明治公園で「さようなら原発1千万署名市民の会」主催で、「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」が開かれ、全国から1万5千人が参加しました。
集会は二部形式で開かれ、第1部は日本音楽協議会のオープニングライブを皮切りに、脱原発に取り組む各団体や各地からリレートークが行われました。福島県葛尾村から避難している小島力さんは村民による集団訴訟の取り組みを、国際環境NGOFoE Japanの満田夏花さんは「原発ゼロの後退を許すな」と訴え、原子力資料情報室の伴英幸さんも「原発再稼働をさせてなならない」と述べ、毎週金曜日に官邸前デモをするMisao Redwolfさんは「選挙結果はあっても脱原発は国民の声だ」と語気を強めました。日本消費者連盟の富山洋子さんは「安心できる社会を次代へ」と語り、元山口県祝島島民の花田恵美代さんは「海の埋め立てを許さない」との祝島島民のメッセージを代読しました。
沖縄出身の金城吉春さんとアシビナーズの歌と三線演奏をはさみ、各地からの訴えでは、茨城・東海原発(大石光伸さん)、静岡・浜岡原発(伊藤実さん)、青森・六カ所村再処理工場(山田清彦さん)、北海道・泊原発(小野有五さん)について、それぞれの現状と取り組み報告が行なわれました。福島からは、双葉町の井戸川克隆・前町長と浪江町から避難している柴口正武さんが避難者の立場から「事故は全く収束していない」などと東京電力と政府の対応を強く批判しました。
第二部は女優の木内みどりさんの司会で進められ、最初に全員で黙とうを行った後、呼びかけ人から4人が発言。鎌田慧さんは「原発事故より経済が大事だという政治の動きがあるが、私たちはそれを許さない」と指摘。大江健三郎さんも「福島原発事故をなかったことにしようとする勢力と闘い、原発の再稼働はさせない」と語り「今日のデモは最後まで歩く」と決意を表明しました。落合恵子さんは「原発を推進してきた自民党が政権を取ったが、くじけずに行こう」と呼びかけ、澤地久枝さんは「福島で被爆した人達は全て国の責任で補償させよう」と訴えました(写真左は集会で訴える大江健三郎さん)。
早くから原発問題を訴えてきた作家の広瀬隆さんは、地震発生や子どもたちの健康、生態系のの異変など、原発事故による恐怖の実態を指摘した後「原発を稼働させる方が多大な金がかかるということをマスコミはきちんと報道してほしい」と訴えました。また、集会参加のために来日した韓国の環境団体「韓国環境運動」の共同代表で「核なき世界のための共同行動」のチェ・ヨル代表が、国際的に連帯して脱原発をめざそうと呼びかけました。
最後に福島から京都に避難している斎藤夕香さんが「事態の深刻さを知らずに避難をしていない人も多い。多くの人に伝えていきたい」と述べ、「私たちのことを忘れないで、繋がってほしい」と訴えました。
集会後に、二つのコースに分かれて、「原発はいらない」「政府は責任を取れ」「エネルギー政策の転換を」「再稼働を許すな」などとシュプレヒコールを行い、横断幕やプラカードを持ち、沿道の人達に呼びかけながら行進をしました(写真右は行進の先頭を行く呼びかけ人の皆さん)。
2013年03月08日
日朝連絡会学習会-「朝鮮半島情勢と非核・平和に向けた課題」テーマに
3月8日、日朝国交正常化連絡会は、連合会館で約30名が参加して、学習会と会合を行いました。冒頭、1月14日に亡くなられた清水澄子連絡会共同代表(朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会代表)に黙とうを捧げるとともに、福山真劫共同代表(平和フォーラム代表)が追悼の言葉を述べました。学習会では、李鍾元早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授から「朝鮮半島情勢と非核・平和に向けた課題」について講演と提起を受け、つづいて和田春樹顧問(東京大学名誉教授)が「北朝鮮とどのように向き合うか」の補足提起を受け、意見交換しました。厳しい状況ではあるけれども、対話のチャンネルをさまざまに増大させていくことを確認し合いました。
2013年03月05日
垂直離着陸輸送機MV-22オスプレイの低空飛行訓練・夜間飛行訓練実施への抗議声明
2013年3月5日
垂直離着陸輸送機MV-22オスプレイの低空飛行訓練・夜間飛行訓練実施への抗議声明
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 藤本泰成
在日米軍サルバトーレ・アンジェレラ司令官は、2月28日の日本外国特派員協会での記者会見で、沖縄県普天間基地に配備されている垂直離着陸輸送機MV-22オスプレイの国内での訓練実施を発表しました。遅れて、小野寺五典防衛大臣も同日、配備済みオスプレイ12機のうち3機が、3月6日から8日にかけて山口県岩国市の米軍岩国基地周辺において低空飛行訓練・夜間飛行訓練を実施することを発表しました。飛行訓練ルートについては、3月4日に九州各県を飛行する通称イエロールートとされました。直前の通知は、住民の安全を確保するという各自治体の責任と主体性を無視した暴挙と言えます。
平和フォーラムをはじめ多くの市民は、この間一貫して墜落の危険性の高いオスプレイの配備や飛行訓練の実施に反対してきました。日米政府、米軍の訓練実施強行を許すことはできません。
在日米軍は、これまで日本国内の7つの飛行ルートで米空母艦載機などの低空飛行訓練を実施してきました。多くの被害が報告されているにもかかわらず、日本政府は通常の基地間移動などとしてその実態を野放しにしてきました。1994年には、オレンジルート下とされる高知県早明浦ダム近くでA6イントルーダー攻撃機が墜落、乗員2名が亡くなる事故が起きています。日本国内での米軍機の墜落事件は、これまで250件以上にのぼり、1959年の沖縄県宮森小学校(死者17人)での米軍機墜落事件、1977年の横浜市青葉区(死者3人)など、多くの痛ましい事件が起こっています。2004年の沖縄国際大学にCH-53ヘリコプター墜落事故は記憶に新しいですが、1973年以降、ヘリコプターの墜落事故は北部演習場を中心に20回を超えています。オスプレイが墜落しないと誰が断言できるでしょうか。
米国政府および米軍は、ニューメキシコ州やハワイ州の米軍基地におけるオスプレイの飛行訓練を地元住民の反対によって中止しています。日本において多くの反対があるにもかかわらず低空飛行訓練や夜間飛行訓練を実施する米国政府・米軍の姿勢は、断じて許すことはできません。また、そのことに異議を唱えず容認する日本政府の姿勢も同様です。
平和フォーラムは、在日米軍の存在が、そしてオスプレイが、日本の安全保障に資するとする日本政府の主張に断じて異議を唱えるものです。沖縄を中心に日本の市民生活を不安に陥れるオスプレイは、米国の東アジア政策を補完するものであり、決して日本の安全保障に資するものではありません。強力な軍事力をもってしても自国の安全を保障できないことは、2001年9月11日の米国での同時多発テロにおいて証明されています。私たちは、日本国憲法前文に示された平和主義を基本に、東アジア諸国との真摯な対話の中で自らの安全を守ろうとするものです。
平和フォーラムは、組織の全力を挙げて、市民生活を不安に陥れるオスプレイの配備、低空飛行訓練、夜間飛行訓練に反対し、日本社会で生活する全ての市民とともに、オスプレイの全国展開に「NO!」の声をあげ続けることを表明します。
2013年03月01日
日本社会が容認する「体罰」(暴力)=いじめ
大阪市立桜宮高校バスケット部主将の自殺事件や女子柔道ナショナルチームに所属する選手らの日本オリンピック委員会(JOC)提訴などで、「体罰」(暴力)が問題視されている。しかし、この問題は今に始まったことではない。教育現場だけではなく、日本社会の中に「体罰(暴力)」を容認する空気がないだろうか。「強いチームをつくるためには体罰(暴力)も必要」という桜宮高校の顧問、「おれが厳しく指導してきたから、勝ったのだ」という女子柔道の園田隆二監督の言葉も、スポーツ界の多くの人々に共通する考え方なのではないだろうか。このことは、古い体質という言葉で済ませてはならない。日本社会がどう進んでいくかの大きな試金石になるのだと思う。
「兵隊やくざ」という映画を幼いときに見た記憶がある。軍隊を描きながら全く戦闘シーンのないこの映画は、代わりに軍隊内の不条理と暴力、いじめを描いている。大宮二等兵(勝新太郎)の直情的な正義感と大暴れだけを覚えている。「おまえたちの代わりは、一銭五厘(葉書一枚の値段)でなんぼでも集まるんだ。でもな、馬は葉書一枚じゃこないんだよ」という言葉に象徴される軍隊内のいじめと暴力の肯定。私には、今の「体罰」(暴力)問題に共通するものを感じさせる。戦闘に勝つという目的に邁進する軍隊は、勝つために人の命を使い捨てる、個人の尊厳を無視するところにしか存在しない集団だ。そして、そこには階級という絶対的なヒエラルキーが存在する。それらをベースにして「体罰」(暴力)=いじめが存在する。
安倍晋三首相は、自らを「再チャレンジ」の結果と評したが、勝利する者は少ない。競争社会には必ず勝者と敗者が存在し、プロセスを問わない勝利は、侮蔑に満ちて敗者へのエールを送らない。日本社会全体に、勝利至上主義が蔓延する中で、「公益と公の秩序」(自民党改憲案に頻出)を求め個人をないがしろにする社会は、そのこと故に「体罰」(暴力)=いじめを容認することになる。改憲論者が主張する「行き過ぎた人権」という言葉は、詰まるところ「暴力」肯定の社会なのだ。
戦後、軍隊内でのいじめや暴力が問題にされたとは聞かない。戦前の警察権力などによる多くの弾圧事件も、国としての真相解明と名誉回復などの措置が執られたわけではない。日本社会は、戦前の社会の「負」と「闇」の部分を曖昧に、戦後を生き抜いてきた。改憲論議が続く中で、もう一度しっかりとそのことを見つめ直すことが必要ではないか。