2月, 2013 | 平和フォーラム

2013年02月28日

「被災59周年 3.1ビキニ・デー全国集会」が開催される

「被災59周年 3・1ビキニ・デー全国集会」が開催される

2013年02月28日

被災59周年ビキニデー アピール

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2013年02月28日

平和軍縮時評2月号 「集団的自衛権」議論は憲法改悪への序章―安倍タカ派政権の本質は対米追従  田巻一彦

2月28日、安倍首相は「施政方針演説」で防衛、安全保障政策の骨格を示した。草稿から抜粋しよう。

6. 原則に基づく外交・安全保障
… 私の外交は、『戦略的な外交』、『普遍的価値を重視する外交』、そして国益を守る『主張する外交』が基本です。
… その基軸となるのは、やはり日米同盟です。
… 日米安保体制には、抑止力という大切な公共財があります。これを高めるために、我が国は更なる役割を果たしてまいります。
… 北朝鮮が核実験を強行したことは、断じて容認できません。拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決に向けて具体的な行動を取るよう、北朝鮮に強く求めます。
… 尖閣諸島が日本固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も明白であり、そもそも解決すべき領有権の問題は存在しません。
… 我が国は、世界の大国にふさわしい責任を果たしていきます。
7. 今、そこにある危機
… 11年ぶりに防衛関係費の増加を図ります。今後、防衛大綱を見直し、南西地域を含め、自衛隊の対応能力の向上に取り組んでまいります。
… 我が国の外交・安全保障政策の司令塔となる『国家安全保障会議』の設置に向けた検討を本格化します。同時に、『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』において、二十一世紀の国際情勢にふさわしい我が国の立ち位置を追求してまいります。
… 安全保障の危機は、『他人事』ではありません。『今、そこにある危機』なのです
(以下略)」

わりと大人しくまとめたな、というのが筆者の印象である。政権「投げ出し」から6年目の復帰ということもあったであろう、また「震災復興」や「経済再生」という焦眉の難題を前にして「はしゃぎすぎ」を避けたとの計算もあったであろう。
この演説を、自民党が2012年衆議院選に向けて策定した「重点政策2012」と比較したとき、安倍氏がいかに「爪を隠すタカ」を演じようとしたのかがよくわかる。
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/seisaku_ichiban24.pdf
「重点政策」には次のような「威勢のよい文句」がちりばめられている。「施政方針」との重複を割けながら引用すれば次のとおりだ。

〈外交を取り戻す〉

  • 日本の平和と地域の安全を守るため、集団自衛権の行使を可能とし、「国家安全保障法」を制定します。
  • 日本を守るため、減らし続けてきた自衛隊の人員・装備・予算を拡充します。
  • 国際貢献をさらに進めるために「国際平和協力一般法」を制定します。

さらに付属文書〈政策BANK「外交・安全保障」〉は、本命とよぶべき「憲法改正」に言明した上で、米戦略に追随するための自衛隊強化路線が示す。

 

  • 「憲法改正により自衛隊を国防軍として位置づけます。
  • 米国の新国防戦略と連動して自衛隊の役割を強化し、抑止力を高めるため、日米防衛協力ガイドラインを見直します。

「政策BANK」はさらに、「憲法改正」を「特出し」し次のように述べる、少し長いが、このセクションの全文は次のとおりだ。

—————————————————————————————

「憲法改正」
・自民党は新しい憲法草案を提示しています、

  1. 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三つの原理は継承
  2. 我が国は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇陛下を戴く国家であることを規定
  3. 国旗は日章旗、国家は君が代とする。
  4. 平和主義は継承しつつ、自衛権の発動を妨げないこと、国防軍を保持することを明記
  5. 家族の尊重、環境保全の責務、犯罪被害者への配慮を新設
  6. 武力攻撃や大規模災害に対応した緊急事態条項を新設
  7. 憲法改正の発議要件を衆参それぞれ過半数に緩和

—————————————————————————————

祖父にして戦犯の岸信介の遺訓を継ぐ安倍首相のためにあるかのような、「基本政策」である。これと「施政方針」のギャップは、「政治的ペテン」と呼ぶにふさわしい。
安倍氏は、大企業の利益を優先し弱者を切り捨て、再生産する「アベノミクス」による一時的好況感を追い風に、7月の参議院選に「大勝利」して、いよいよ「爪を隠さないタカ」としての本性をあらわにすることを目論んでいるのかもしれない。
改憲を通して、「天皇中心の国家観」と相まった軍備の質的・量的拡大を目指すこの安倍路線を、たんなる「復古」ととらえてはならないであろう。安倍氏が、天皇を担ぎ、憲法を改正までして目指そうとしているのは、「日米同盟」の下で、「米国とどこまでも行く日本」である。
しかも、安倍氏の戦略は「集団的自衛権行使」を可能とする憲法解釈を突破口とすることにおいて、6年前と何も変わっていないのである。なぜなら、この問題は一般国民には極めて見えにくく、わかりにくい、それゆえに見過ごされてしまうという側面を持つからだ。せめて、私たちは、この問題に関する正しい見識をもっていたいと思う。

「集団的自衛権行使」―政府解釈は「持っているが行使できない」
国連憲章第51条は「集団的自衛権」について、次のように述べる。「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」。つまり、集団的自衛権が国際法に合致した権利であることは、そのとおりである。ただし「憲章」のこの規定が、ここでは詳しく触れないが、紛争を防止するための「集団的安全保障体制」(集団的自衛権とは違う!)の幾重もの措置を前提にしていることを忘れてはなるまい。
先にすすもう、この「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する」(1972年10月14日、参議院決算委員会政府提出資料)権利を日本は持っているが行使できない、というのが従来の政府解釈である。

「わが国が、国際法上右の集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然のことといわなければならない」。
「(略)我が憲法の下で、武力行使が行われることが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない」。 (1972年10月14日、参議院決算委員会政府提出資料)

第1次安倍政権、「政府解釈」変更を企てる
第1次安倍政権によって設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(「安保法制懇」、座長:柳井俊一元駐米大使)の最大の主題は、この政府の憲法解釈を変更することであった。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyou/index.html
第1回会合(2007年5月19日)において、安倍首相は検討課題を次の四類型に整理して示した。

 

  1. 共同訓練などで公海上において、我が国自衛隊の艦船が米軍の艦船と近くで行動している場合に、米軍の艦船が攻撃されても我が国自衛隊の艦船は何もできないという状況が生じてよいのか。
  2. 同盟国である米国が弾道ミサイルによって甚大な被害を被るようなことがあれば、我が国自身の防衛に深刻な影響を及ぼすことも間違いない。それにもかかわらず、技術的な能力の問題は別として、仮に米国に向かうかもしれない弾道ミサイルをレーダーで捕捉した場合でも、我が国は迎撃できないという状況が生じてよいのか。
  3. 国際的な平和活動における武器使用の問題。例えば、同じPKO等の活動に従事している他国の部隊又は隊員が攻撃を受けている場合に、その部隊又は隊員を救援するため、その場所まで駆けつけて要すれば武器を使用して仲間を助けることは当然可能とされている。我が国の要員だけそれはできないという状況が生じてよいのか。
  4. 同じPKO等の活動に参加している他国の活動を支援するためのいわゆる「後方支援」の問題がある。補給、輸送、医療等、それ自体は武力行使に当たらない活動については、「武力行使と一体化」しないという条件が課されてきた。このような「後方支援」のあり方についてもこれまでどおりでよいのか。

約1年の審議を経て、「法制懇」がまとめた提言は従来の大方において政府解釈の変更を支持するものであった。これは、座長を含む委員の人選からして「予定されていた」結論であった。以下は「報告書」(上記URL)からの抜粋である。

 

  1. 公海における米艦防護については、厳しさを増す現代の安全保障環境の中で、我が国の国民の生命・財産を守るためには、日米同盟の効果的機能が一層重要であり、日米が共同で活動している際に米艦に危険が及んだ場合これを防護し得るようにすることは、同盟国相互の信頼関係の維持・強化のために不可欠である。個別的自衛権及び自己の防護や自衛隊法第95条に基づく武器等の防護により反射的効果として米艦の防護が可能であるというこれまでの憲法解釈及び現行法の規定では、自衛隊は極めて例外的な場合にしか米艦を防護できず、また、対艦ミサイル攻撃の現実にも対処することができない。よって、この場合には、集団的自衛権の行使を認める必要がある。このような集団的自衛権の行使は、我が国の安全保障と密接に関係する場合の限定的なものである。
  2. 米国に向うかもしれない弾道ミサイルの迎撃については、従来の自衛権概念や国内手続を前提としていては十分に実効的な対応ができない。ミサイル防衛システムは、従来以上に日米間の緊密な連携関係を前提として成り立っており、そこから我が国の防衛だけを切り取ることは、事実上不可能である。米国に向かう弾道ミサイルを我が国が撃ち落す能力を有するにもかかわらず撃ち落さないことは、我が国の安全保障の基盤たる日米同盟を根幹から揺るがすことになるので、絶対に避けなければならない。(略)よって、この場合も集団的自衛権の行使によらざるを得ない。また、この場合の集団的自衛権の行使による弾道ミサイル防衛は、基本的に公海上又はそれより我が国に近い方で行われるので、積極的に外国の領域で武力を行使することとは自ずから異なる。
  3. 国際的な平和活動における武器使用について、国連PKO活動等のために派遣される自衛隊に認められているのは、自己の防護や武器等の防護のためのみとされる。(略)自衛隊は、同じ国連PKOに参加している他国の部隊や要員へのいわゆる駆け付け警護及び国連のPKO任務に対する妨害を排除するための武器使用を認める国際基準と異なる基準で参加している。こうした現状は、常識に反し、国際社会の非難の対象になり得る。国連PKO等の国際的な平和活動への参加は、憲法第9条で禁止されないと整理すべきであり、自己防護に加えて、同じ活動に参加している他国の部隊や要員への駆け付け警護及び任務遂行のための武器使用を認めることとすべきである。(略)
  4. 同じPKO活動等に参加している他国の活動に対する後方支援について、(略)しかし、後方支援がいかなる場合に他国による武力行使と一体化するとみなすのか、「戦闘地域」「非戦闘地域」の区分は何か等、事態が刻々と変わる活動の現場において、「一体化」論はこれを適用することが極めて困難な概念である。(略)補給、輸送、医療等の本来武力行使ではあり得ない後方支援と支援の対象となる他国の武力行使との関係については、憲法上の評価を問うこれまでの「一体化」論を止め、他国の活動を後方支援するか否か、どの程度するかという問題は、政策的妥当性の問題として、対象となる他国の活動が我が国の国民に受け容れられるものかどうか、メリット・デメリットを総合的に検討して政策決定するようにすべきである。

「法制懇」が「メリット・デメリットを総合的に判断すべき」と判断を留保したのは類型④のみであった。とくに①と②は米国の強い要請を背景にしたものであることを忘れてはならない。「法制懇」の立ち上げが、「第2次アーミテージ報告」(本コラム12年11月号参照:http://www.peace-forum.com/p-da/121130.html)が、政府解釈の変更を強く迫ったのと前後することであったのは決して偶然ではない。現在の政府解釈の論理は、憲法9条の下での自衛権の行使にはおのずと限界がある」という基本認識に立つものだ。この原則を「日米同盟の利益」の前に解体しようというのが「集団的自衛権行使」を巡る議論の本質である。 安倍「政権投げ出し」の後を継いだ福田首相は、「法制懇」提言をいわば「塩漬け」にして先に進めることをしなかった。福田氏は元来この解釈変更には慎重だった。そして、民主党中心の連立政権によって「提言」は止めをさされた・・・はずであった。安倍再登板によってふたたび議論はゾンビのようによみがえったのである。2月8日には、「法制懇」の活動が再開された。

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自民党「重点政策」は集団的自衛権の行使は「日本の平和と地域の安全を守る」ためであるという。だが、ここでいう「地域」を日本周辺の地域と考えるならばそれは誤りである。その実は、米国とともに日本が活動するすべての「地域」を指す。昨年8月の第3次「アーミテージ報告」は、日本にイランまでゆくことを求めているのだ。
前記の福田政権の例でわかるように、必ずしも自民党の中にもコンセンサスがないことも、覚えておこう。だが、自民の比較的ハト派的政治家が次々と引退する中で、安倍氏の暴走を止める内的な力も弱まっていることは間違いない。だからこその「重点政策」なのである。
冒頭で述べたように、この「解釈見直し」は、最終的には憲法改悪にまで至る「包括的プロセス」の1歩に過ぎない。私たちは、このことに警鐘を鳴らすことを怠ってはならない。

2013年02月12日

朝鮮民主主義人民共和国の3回目の核実験実施に対する声明

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2013年02月11日

250人参加し「東アジアの平和と友好に向けた課題-『建国記念の日』を考える2.11集会」


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   平和フォーラムは例年2月11日、戦前の「紀元節」を「建国記念の日」としていることに異議を唱え、集会を行っています。戦後の日本は、自民党内閣のもとで、東アジアとの関係、とくに歴史認識については繰り返し問題が引き起こされてきました。民主党政権下では韓国併合100年で植民地支配についての菅首相談話などの前進面もありましたが、竹島や尖閣諸島などの「領土問題」での近隣諸国との対立と東アジアの緊張状態は強まりました。昨年末の総選挙の結果、河野談話や村山談話をを否定し、教科書の「近隣諸国条項」の見直しをも主張する安倍晋三を首班とする政権が誕生しました。近隣アジア諸国はもとより、欧米諸国からも安倍首相の戦争や原発事故についての責任と謝罪の欠落した姿勢に対して右翼政権として懸念や警戒が強まっています。これらを踏まえて、「東アジアの平和と友好に向けた課題-『建国記念の日』を考える2.11集会」を名称に、会場の日本教育会館に250人が参加して学習集会を行いました。
   福山真劫代表の主催者あいさつにつづいて、「東アジアの平和をめぐる状況と課題」と題して新潟国際情報大学教授の佐々木寛さんの講演、「横浜の教科書問題」について教科書問題を考える横浜市民の会代表の佐藤満喜子さんの提起を受け、最後に藤本泰成事務局長の閉会あいさつで終了しました。
   このうち、福山代表は、「自民党は憲法解体、戦前復古を鮮明にして衆議院選挙に勝利した。安倍政権はこの間、軍備増強、オスプレイ配備、原発推進、教育への介入と危険な動きを強めている。一方、この『右翼的政権』に対しては国際世論の批判も高まっている。市民の運動で危険な動きにストップをかけよう」と提起しました。
   佐々木さんは「衆議院選挙は最低の投票率であり、無効票も多く、政治不信が強く表れた。『脱原発』やこれからの国の行方を政策として示す力が政党になかった。日常の具体的な問題から政策を立ち上げる力を失った政党(政治家)が政治不信を生んだ。しかし、国民には新自由主義に対する漠然とした不安がある。そこに『空っぽのナショナリズム』がつけ入る」と話しました。
   これは日本に限りません。経済のグローバリズムが世界中に「格差と貧困」を拡大し、政治がうまく回らない中で、領土問題を契機にナショナリズムをたきつけ、国内の不満を外国に向けさせる動きがあり、世界的にナショナリズムを高揚させています。佐々木さんは、この状況を「ナショナリズムが一番インターナショナルな状況」と皮肉混じりに描写した上で、「領土問題は内政問題のある種の目くらましに使われている」と警鐘を打ち鳴らしました。そして、統治権力の正統性と国民的アイデンティティーが揺らいでいることがあると指摘。そこでは「空っぽの日本を埋めるために空っぼのナショナリズム、空っぽのシンボルをそこに注入し、本当は信じていないかもしれないのに熱狂するという心理が働く」と分析し、「やせ細った日本にはやせ細った希望しかない」と述べました。
   その上で佐々木さんは、「領土問堤の最終的解決は戦争しかない」というのが冷厳な現実であり」その一方でナショナリズムは外交上の選択肢を狭めてしまうもろ刃の剣であるため、国家の思惑通りに、脅威はあおるが戦争はしないというバランスの枠内でナショナリズムの制御が可能であるかどうかは困難な問題になると指摘。「取り残された国民」が戦争賛美に動員されるおそれがあることが歴史の教訓である以上、民衆の相互扶助の仕租みへその自律的共同性をつくっていけるかどうかに、これからの平和という問題の行方はかかっていると指摘しました。また、尖閣諸島の問題でも、島には米軍の練習場があることさえ明らかにせずに「脅威」ばかりがつくられていると指摘しました。
   日本人は忘れやすい民族といわれるが、「植民地主義の歴史」や「3・11の経験」を忘れることは権力の温床となること。何度も同じ過ちを繰り返さないためには植民地主義の歴史をふまえ、被災地や沖縄、アジアの人々など、強い国家主義から置き去りにされる人たちの視点で政治にかかわることが必要だと強調しました。
   安倍自民大勝、石原・橋下維新躍進と総括される先の総選挙を振り返って佐々木さんは、「私たちの明日の生活という大事な話と明日の国の形という大きなことをつなげるストーリーをつくるという政治、政党の役割」が失われ、政治不信の高まりと同時に「何が争点であるのか自体が争点となる」という状況下、その間げきを縫う形で、人気取りに終始し「体系的な政策を持たない」維新が伸びる結果となったと特徴づけ、安倍政権の盛衰いかんにかかわらず「ある種のファシズムタイプの政治がこれからメジャーになっていく可能性がある」と述べました。あわせて漠然とした不安が広がる中での「リスクをめぐる政治」の顕在化という問題を提起しているとして、「リスクは目に見えないので、『そこに敵が来ている』と言えば、敵がいるかのようにも機能することができる」としました。
   最後に「自分たちは誰かを踏みつけにしていないか?踏みつけていた人と一緒にたたかえるか?」を常に問い、大きなもの(国家)によりかかるのではなく、「自分で自分の人生を考え、交流し、支えあうこと」-その先に本当の民主主義がある。地域の生活に根差した自立的コミュニティーをつくることが政治を変える力になると示しました。
   佐藤さんからは、横浜では市教委の委員差し替え、現場教員の声や採択検討委員会報告を無視した教委の密室審議と無記名投票の導入、採択地区の広域(単一)化などを経て2009、2011年に歴史をゆがめる「つくる会」系の中学教科書採択が強行された結果、副読本や資料に対しても危険な介入が行われ、職員の懲戒処分にまで広がっている」と報告。例えば教組が作成した「中学校歴史資料」に対する自民党や産経新聞の執拗な批判。議会では教員が教科書を批判することを禁止する意見書」が提出される(明らかな憲法違反で否決)。中学生用副読本については、教育長が関東大震災時の朝鮮人虐殺の記述のあった2012年度版を回収し、2013年度版では「虐殺」の文言を削除させるなど、信じがたいことが起きていること。市で採択した教科書で学んだ中学生が高校進学後に使用するのだから一貫性があった方がよいという理由で、市教委事務局が(教科書無償措置法の対象ではない)高校の採択意見書を勝手に書きかえるという事態にまで至ったこと。もっとも問題なのは「教育に政治が介入してはいけない」という民主主義の基本を保守系の若い議員も産経新聞も意に介しておらず、教科書採択時だけでなく、全国で監視を強めることが必要なこと。「いったん採択されたら何が起こるか。教科書採択だけでは済まない」と強く警告を発しました。

佐々木寛さんレジュメ   佐藤満喜子さんレジュメ   佐藤満喜子関連記事   

2013年02月01日

「差別を許さない」ことが平和をつくる!

「障害を持ったことで、底上げされている気分。私は誰かを感動させるために、生きているんじゃない」。12月25日付の朝日新聞で「生きる 光と音のない生-目と耳の力失った女子大生-」という記事にあった言葉だ。「そもそも生きるって、自分って、なんだろう?(中略)私ってポンコツじゃないか、と」と自問する彼女の回りに集まった友人の中で、彼女を入れたつきあい方の「場のルールがいつの間にかできた」という。共生の社会のあり方が見えてくる。

この記事を読みながら、子どもの日の記憶がよみがえった。故郷北海道の小さな農村で、土蔵が燃える火事があり若い女性が焼死した。亡くなった女性は、精神疾患を病み、その土蔵の中で他人の目から隔離されて生きていた。1960年代の日本には、病気や障がいを恥とするような社会的風潮があった。病気や障がいを持つ人々に、きびしい社会だったと思う。戦前の社会は、戦争に勝つというひとつの目標に社会が収れんされた。「一旦緩急あれば義勇公に奉仕」と、徴兵制度の中で命をもって国に報いることを強制された。その裏で、戦えない障がい者は、戦えないが故にきびしい差別にさらされた。「家の恥」とは、そのような雰囲気の中でも醸成されていく。戦争をする国家は、究極の差別国家だと思う。

障がい者の高校進学を求めて闘っている人々がいる。中学卒業者の98%が進学するにもかかわらず、高校は義務教育でないことを理由に、入学者選抜制度を用いて子どもたちを選別する。その結果、高校は経済的にも社会的にも能力的にも均質な集団となる。そして、能力主義・適格者主義は、障がい者、特に知的障がい者の普通高校進学を阻む。かくて子どもたちは、均質な集団生活から突然多様な人々が生きる社会に投げ出され、戸惑うこととなる。障がい者と共に生きる術もルールも身につけない中で、ともすると排除の方向に動いていく。

安倍内閣は、高校無償化の朝鮮高校適用を、省令をもって排除しようとしている。究極の差別、人権侵害。その安倍内閣の教育再生会議のメンバーに作家の曾野綾子が選ばれた。かつて彼女は「国から色々なことをしていただいている私たちは、奉仕活動を通じて少しでも国にお返しするのが当たり前」と述べていた。就労もままならない状況に置かれている障がい者が、どう奉仕するのか。徴兵制の中の障がい者を思い浮かべる。障がい者の思いはいかばかりか。その言葉の裏に潜む差別に気づかない人間に、教育を語る資格はない。

2013年02月01日

ニュースペーパー2013年2月号



 沖縄県宜野湾市の海浜公園で12月23日、「オスプレイ配備撤回!米兵による凶悪事件糾弾!怒りの御万人(うまんちゅ)大行動」が開催され、約3,000人が参加しました。沖縄では9月下旬から普天間基地前で座り込みを行い、27日から30日にかけて主要なゲートを封鎖に追い込んでいます。オスプレイ撤去のためには非暴力直接行動が重要ですが、一方で県民が気軽に参加できるアピール行動も必要です。そうした判断から今回は、ミュージシャンと共同しての「サウンドデモ」を中心としたものになりました。集会へは平和フォーラムの呼びかけで、全国からも約130人が参加しました。(写真は集会に参加した全国の代表団)。

【インタビュー・シリーズ その74】
フクシマを防げなかった反省の上に新しい運動を
医師・チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西 振津 かつみさんに聞く

【プロフィール】
 広島・長崎の被爆者の健康管理、チェルノブイリ原発事故被災者への支援活動などを通じて、放射線の健康影響について学び、1991年に「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」を設立。毎年ベラルーシの汚染地域を訪問する。2004年から、「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)評議員を務める。共編著に『ウラン兵器なき世界をめざして-ICBUWの挑戦-』(合同出版・08年)、共訳書に『戦争はいかに地球を破壊するか-最新兵器と生命の惑星』(緑風出版・05年)。昨年9月、日本人としては3人目となる「核のない未来賞」を受賞。

──「核のない未来賞」の受賞おめでとうございます。この賞はどのようなものでしょうか。
 ありがとうございます。ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・JCOを経験した日本で、またチェルノブイリを経験した世界で、再び核被害を起こさせてはならないと活動してきたのに、フクシマの原発重大事故が起こる前に原発を止めることができなかった。このような、私たちの運動の現状を前にして、受賞を素直に喜べないという……複雑な気持ちがあります。
 「核のない未来賞」はドイツに本部を置く「フランズモール財団」が創設した国際賞で、「将来世代のために核のない世界をめざす」活動に貢献した人々や団体に贈られ、「世界を変えていくのを促進しよう」という目的でつくられた賞です。これまで日本では広島市長であった秋葉忠利さん、写真家の樋口健二さんのお二人が受賞していました。
 今回の受賞、原水禁世界大会などで来日されたこともある、私の尊敬するアメリカの反核科学者のロザリー・バーテルさんの推薦によるものです。彼女は昨年亡くなりました。推薦していただいた者としても、彼女の遺志を引き継いでゆかねばと思っています。

──核問題に関わるきっかけを教えてください。
 医学生だった1980年頃、樋口健二さんなどの本を読んで、原発被曝労働者の存在を知ったことが問題にかかわるきっかけです。原発は下請け労働者の被曝労働がなければ絶対に動かないのです。私は医師になって、人々の健康をあずかる仕事に就くための勉強をしていたときでもあり、大きな衝撃をうけました。また当時は、総評労働者が各地の公開ヒアリング阻止闘争にも積極的に取り組んでいました。組織労働者を中心とする福島県「双葉地方原発反対同盟」と、大阪の科学者や阪南中央病院の医師らが協力して取り取組んでいた福島の下請け労働者の実態調査からも学びました。
 医大卒業後、赴任した阪南中央病院で、ヒロシマ・ナガサキの被爆者の健康管理や実態調査に関わる中で、原爆被爆者の「こころ、からだ、くらし」の苦しみを知ることになりました。

──福島原発事故から2年になろうとしている現在の状況をどうご覧になられますか。
 福島事故によって、今、約400万人もの人々が「放射線管理区域」レベルの汚染地域で暮らしています。地震国にもかかわらず、国策で原発を推進してきた結果起こったこの事故は明らかな人災です。国と東電の責任を厳しく問うてゆかなければなりません。
 ヒロシマ・ナガサキやチェルノブイリを繰り返してはならない、「核と人類は共存できない」と、私たちは運動を進めてきました。それにもかかわらず、この日本で、多くの人々が被曝するような事態を起こしてしまったことの重大さ。私たち反核運動の側も、反省し、弱点を克服しなければなりません。しかし昨年末の衆議院選挙の結果を見ると、運動をとりまく状況も、まだまだ厳しいものがあります。
 脱原発とフクシマの被災者の援護・連帯の課題は、私たちの運動の「車の両輪」として取り組んでいく必要があると思っています。原発推進のために、フクシマの被災者への援護が切り捨てられ、さらなるヒバクが押し付けられようとしているのです。フクシマの課題を、全国の運動の課題としても真剣に取り組まなければなりません。ヒロシマ・ナガサキと同じように、フクシマから全国そして世界に向けて発信し、運動を広げ、強め、「フクシマを核時代の終わりの始まりに」してゆかねばなりません。
 月に一度、福島の医療機関などの依頼で健康相談に通っています。被災住民には「ただちに健康障害」は見られませんが、被曝による将来の健康リスクを下げるためにいかに被曝量を減らし、人々の健康と生活を守っていくのかが課題となっています。現地では問題が山積みです。しかし、何事もなかったかのように「復興」を強調する行政やマスコミの宣伝の中で、見えない放射能から子どもたちを守ろうと懸命に取り組んでいる人々が孤立していくような状況もあります。
 放射線被曝は、どんなに低線量であっても線量に応じたリスクがある。つまり「しきい値」がないということは、ヒロシマ・ナガサキの被爆者のデータからもすでに明らかになっています。このことを、フクシマの被災者の今後の健康管理にも役立てるべきです。
 事故を起こした国や東電の責任をしっかり追及していくことと同時に、放射線の健康影響を正しく人々に伝えることは、誤解や偏見に基づく差別を許さないためにも重要です。

──国内だけでなく世界の様々なヒバクシャに寄り添って運動を進められているようですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか。


「被災57周年3.1ビキニ・デー全国集会」
で講演する振津さん(静岡市・2011年3月1日)

 私が運動に参加し始めた「冷戦時代」の80年代には、米国による欧州への中距離核配備に反対し、欧州を中心に世界の反核運動が連帯し盛り上がりました。スリーマイルやそしてチェルノブイリ事故が起こり、反原発運動の国際交流も進みました。そんな中で二回の「核被害者世界大会」や「世界ウラン公聴会」などが開かれ、世界の核被害者の声が上がり始めました。そのような動きにも大きな影響を受けました。
 私自身もチェルノブイリ事故や旧ソ連の核被害者などに接し、アメリカやオーストラリアなどの先住民のウラン採掘による核被害者とも出会い、被災地に足を運び、世界のヒバクシャとの連帯の活動が始まりました。そして植民地支配などの下で、社会的弱者に核被害が一方的に押しつけられていく構造があることも知りました。核の「軍事利用」も「平和利用」も、常に「差別と抑圧」の構造の上に成り立つものだということを知り、容認できないと思ったのです。

──原水禁・平和フォーラムに対して期待することをお聞かせください。
 いままさに正念場にきていると思います。これまで原水禁運動の担ってきたもの、また運動の財産をしっかり引きついでいくと同時に、フクシマを防げなかった運動の反省も必要ではないかと思います。運動の弱さを克服し、もう一度原点に還って、運動を強めていくことが必要ではないでしょうか。
 特にフクシマでは、目に見えない放射能汚染と闘いながらの生活と活動を強いられている仲間の皆さんと連帯し、被災地での複雑で困難な状況をよく理解し、運動の具体的な支援もしながら、ともに進んでゆくことが求められています。「三つのホショウ」要求など被爆者援護法運動の経験や、世界のヒバクシャとの連帯運動の経験を活かしてゆくことも重要です。
 事故を起こした国の責任を認めさせ、謝罪させ、原発推進をやめさせ、国家補償に基づく「原発被災者援護法」(健康手帳の交付、検診と医療の無料化、生活保障など)を求めていく、全国的な運動を展開すべきではないでしょうか。原水禁が、その運動の先頭に立って、しっかり取り組んで欲しいものです。私も皆さんとともに頑張りたいと思います。

〈インタビューを終えて〉
 振津さんが強調されたのは、福島の現在の取り組みについてでした。「福島はこれからが重要なんです」と繰り返し述べられました。原水禁がこれからも福島の取り組みに役割を果たし、脱原発の闘いと福島への支援を両軸として展開して欲しいと訴えられました。「事故の風化」という問題ではなく、これからが現地福島での取り組みの本番であると。
(道田 哲朗)

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安倍自公政権と対決する
求めるものは平和・社会民主主義・脱原発
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 福山 真劫

憲法改悪、新自由主義、原発推進の狙い
 私たち平和フォーラムは、平和・社会民主主義・脱原発・憲法理念の実現を目標として、時代ごとに対応し、戦略・戦術を変化させながら取り組んできました。2009年、政権交代が実現したときには、「抵抗型の運動から政策実現型の運動へ」と、運動の組み立て方を変化させてきました。もちろん大衆団体ですから、大衆的な運動を背景に目標の実現をめざすのは当然のことです。
 2012年12月16日の総選挙において民主党は惨敗し、安倍晋三自民党総裁を首相とする「危機突破内閣」と称する自民党と公明党による連立政権が誕生しました。06年、「戦後レジームからの脱却」を掲げ、憲法体制の解体をめざし、自ら崩壊したあの安倍政権の再登場です。自民党は選挙公約で、「日本を取り戻す」と掲げています。彼らの狙いは明確です。平和憲法の改悪、新自由主義の推進、原発・核燃サイクル路線の推進です。
 私たちのめざす目標とは正反対です。私たちはもう一度原点に立ち返り、めざす目標を高く掲げて、抵抗・対決型の運動を基本に可能な限り連帯の輪を大きく広げ、安倍路線の政策を変更させ、私たちの政策を実現しなければなりません。

「古くからの支配層」の攻勢につぶされた民主党
 第46回衆議院選挙の結果、民主党は57議席にとどまり、自民党294議席、公明党31議席の自公合わせて衆議院で3分の2を超える325議席を獲得しました。また第3極は明暗が分かれ、日本維新の会は54議席、みんなの党は18議席。日本未来の党(当時)は9議席に留まり、社民党は2議席、共産党は8議席でした。
 民主党は比例区の得票数では維新の会にも敗れる大惨敗となりました。石原、橋下に代表される維新の会が大幅に議席を増やしたことは、彼らが自民党よりも右の勢力であるがゆえに、将来に深刻な影を落としています。なぜこうした結果になってしまったのか、徹底した総括が必要です。
 とりわけ民主党の敗因は、党内の多様な路線の共存と主導権争いの深刻さ、政権担当能力の低さ、普天間基地問題での腰砕け、大飯原発の再稼働、消費税をめぐる党の分裂、自衛隊出身の森本敏防衛大臣の起用、平和・民主・脱原発などの市民団体との連携の弱さ、野田佳彦前首相による「自爆解散」など、多くの原因が指摘されています。しかし結局「安保ムラ」、「原子力ムラ」、「公共事業ムラ」、「金融・財界ムラ」、「保守勢力」、「米国」、「官僚」、「マスコミ」の連合軍、つまり「日本の古くからの支配層」の攻勢に抗しきれず、つぶされたというのが本質だと思われます。

右傾化路線の実相と米国の要求


自衛隊の「降下訓練」を視察する小野寺五典防衛相。
安倍首相のスローガンの一つが
「国防軍」の創設(防衛省ホームページ)

 日本は東日本大震災や福島原発事故からの復旧の遅れ、長期にわたる不況と進行する財政危機、少子高齢化と格差社会の進行、非正規労働者の拡大、東アジアでの緊張激化、沖縄へのオスプレイ配備・米軍基地をめぐる対立の深刻化、戦後補償や脱原発政策など多くの課題に直面しています。
 安倍のスローガンは「美しい国」、「戦後レジームからの脱却」、「新しい国・日本を取り戻す」。安全保障等の分野での公約には「日米同盟強化」、「集団的自衛権の行使」と「自衛隊の強化」。また、「尖閣諸島の実効支配強化・公務員の常駐」、「戦後補償裁判・慰安婦問題などへの反論と反証」、「天皇元首化」「国防軍創設・緊急事態対処などの憲法改悪」。その他にも「近隣条項見直し」、「人権委員会設置法案・外国人参政権導入反対」、「教育の政治的中立・地方公務員の政治的行為の規制」、「原発再稼働は3年以内に結論」などと書かれています。これが「日本を取り戻す」とする安倍の路線です。これらは国際的な時代の流れに逆行しており、日本の直面する課題に応えられるはずもありません。
 選挙後、彼は記者会見で「今回のわが党の勝利については、自由民主党に信任が戻ってきたということではなく、民主党政権による3年間の間違った政治主導による政治の混乱と停滞に終止符を打とうとする国民の判断だったのだろう」と述べました。「自民党に信任が戻ってきたということでなく」ということはそのとおりです。国民は安倍の「戦後レジームからの脱却・日本を取り戻す」という右傾化路線を支持したわけではありません。民主党政権の「体たらく」に対して投票を棄権したり、第3極や自民党に投票したりしたのです。また、それは戦後最低となる59.3%という投票率の低さ、2009年の自民党が惨敗した総選挙のときよりも、自民党は選挙区、比例区とも得票数を減らしているということからも明らかです。昨年12月19日に公表された朝日新聞の世論調査では、「自民党の政策を支持したが7%、民主党政権に失望した81%」となっています。
 米国の「ジャパンハンドラー」の一人であり、戦略国際問題研究所アジア・日本部長のマイケル・グリーンの昨年12月17日付のインタビュー記事が「東洋経済ONLINE」に掲載されています。「安倍政権の総選挙での勝利は、河野談話の見直し、靖国神社への参拝、尖閣列島への公務員の常駐施設の建設などについて有権者が支持を表明したものだと結論づけるとしたらそれは大きな誤りだ」「私が安倍政権に期待したいのは、海洋諸国と手を結び、防衛費を増額し、日米同盟を強化し、集団的自衛権の行使を認め、その一方で日中関係の安定化に努めるという戦略だ」などと述べています。

http://toyokeizai.net/articles/-/12157

 これが米国の日本への要求です。ジョセフ・ナイ(ハーバード大学教授・クリントン政権の国防次官補)やリチャード・アーミテージ(ブッシュ政権の国務副長官)などの主張と基本的には同じです。安倍は米国の意向を受け、日米同盟の強化、動的防衛力の強化、防衛大綱の見直し、自衛隊の強化・国防軍化、集団的自衛権の行使の合憲化、辺野古基地建設の加速、米国従属の軍事大国化路線をめざして、すでに着々と動き出しているのです。また原発政策では、茂木敏充経済産業大臣は「2030年代の原発ゼロ」の実質的見直しを公言しています。

私たちの闘いは時代の流れ
 今回の総選挙の結果でつくり出された政治情勢は、戦後の平和と民主主義にとって、最大の危機になろうとしています。安倍自公政権とその応援団である日本維新の会やみんなの党。その日本を泥沼に導きかねない路線に対抗して、私たちは国民運動を背景に全面的な反撃態勢を作り上げ、それを前進させることが必要です。
 連合の古賀伸明会長は昨年12月20日の中央委員会で、「組合員だけの運動を脱皮し、すべての働くものにフォーカスした運動を」と提起しています。連合は約700万人の勤労者を組織するナショナルセンターとして、その奮闘が今ほど求められるときはありません。脱原発、日米地位協定の改定、非正規労働者の権利確立、格差解消、民主主義の実現、すべての働く者のため全力でがんばってほしいと思います。平和フォーラムも連合と連携して、取り組みを強化していく決意です。
 民主党は野田佳彦代表の辞任を受け、12月25日、海江田万里代表・細野豪志幹事長による執行部体制がスタートしました。野党として、平和・社会民主主義・脱原発をかかげて、政府・自公・維新の会と対決してほしい。もし党内の一部勢力の中に存在する、対米重視・集団的自衛権の合憲・新自由主義・原発推進を方針として掲げるのであれば、民主党という政党の存在意義はないと思われます。社民党についても、この間の取り組み経過と選挙総括を行い、平和・社会民主主義・脱原発勢力の一翼を担い、参議院選挙めざして日常の闘いに全力で取り組んでほしいと思います。
 平和フォーラムは民主党、社民党、その他野党と連携し、政策の実現をめざすと同時に平和フォーラム会員議員との連携強化を踏まえ、民主リベラル勢力の総結集をめざす決意です。
 私たち平和フォーラムは、まず私たちの運動の積み重ねとそれを発展させる力に自信を持ちたいと思います。私たちは現在まで毎年「護憲大会」、「原水禁大会」、「食とみどり、水を守る全国集会」を積み重ね、北海道から沖縄まで全国各地で連帯の輪を広げ、あまたの闘いをつくってきました。そうした経過を踏まえ、(1)脱原発の闘い、(2)沖縄と連帯しての反米軍基地の闘い、(3)自衛隊の強化・集団的自衛権行使合憲に反対する国民運動、(4)憲法改正の動きへの反撃、(5)東アジアでの緊張緩和・日朝国交正常化と戦後補償の前進、(6)格差社会やTPP問題、その他の課題で全国闘争を展開し、安倍自公政権と対決します。
 平和フォーラムの役割はますます重要となっています。国民は安倍の右傾化路線を支持したわけではないのです。国民が求めているのは、平和・社会民主主義・脱原発・憲法理念の実現です。私たちの闘いは時代の流れであり、正義であるがゆえに、連帯の輪を拡げ、闘いが前進することは確実です。

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低空飛行訓練に関するアンケートに152自治体から回答
オスプレイ配備と米軍機低空飛行訓練を止めるために
NPO法人ピースデポ 代表 湯浅 一郎

 世界一危険といわれる米軍の垂直離着陸機オスプレイの沖縄配備を撤回させるには、全国規模での反対世論の形成が必須である。そのために自治体の平和力を生かすことが重要だが、一つの焦点に低空飛行訓練がある。
 1990年代半ば以降、事故報告書(十津川・91年、早明浦ダムなど・94年)を通じ、全国に8本の低空飛行訓練ルートが存在することが明らかになった。しかし、米政府の公式資料でルートの地図が明示されたのは、オスプレイの環境レビューが初めてである。オスプレイの普天間配備が強行された現在、低空飛行訓練は、従来からの戦闘機を中心とした訓練に、オスプレイの低空飛行訓練が加わることになる。
 この現状に照らし、従来の低空飛行訓練の実態を全国規模で捉える作業は極めて重要である。96年の「脱軍備ネットワーク・キャッチピース」の全国自治体アンケートでは23道県の131自治体から低空飛行訓練の情報が寄せられている。しかし、その後の実態はほとんど不明である。そこで、自治体が有する情報を収集すべく平和フォーラムからの委託業務として全国の自治体へのアンケートを行った。10月末、環境レビューに提示された6本の訓練ルート下などの計226自治体(27道県含む)に送付した。現在までに届いた152自治体(19道県含む)(67%)の回答を基に中間報告をする。

1.既存の低空飛行訓練について
 

  • 低空飛行の有無については、「あり」58(道県は15)、「無し」91(道県は2)である。予想以上に「無い」が多い。平成の自治体大合併による関心の拡散ではないかと考えられる。
  • 道県は「あり」が大部分で、「無し」は福島、富山県。
  • 米軍基地のある14都道県でつくる渉外知事会として、オスプレイの配備や飛行訓練に関して「関係自治体の意向を尊重するよう」要請している(北海道)との回答があった。
  • 中国地方知事会(鳥取、島根、岡山、広島、山口)は、「平成25年度 国の施策に関する提案書」(2012年8月)で低空飛行訓練の中止を求めている。
  • 熊本県からの回答には、防衛省の資料として「米軍機の低空飛行訓練に対する苦情受付状況」の集計表が添付されていた。12年5月31日現在、全国で合計1,538件である。このうち1,020件が群馬県。これは、渋川周辺の人口密集地域での対地攻撃訓練の結果と考えられる。これを基に調べたところ、1件ごとに受付状況表が存在していることが分かり、以下の事例が浮かび上がった。
    1. 東通原発(青森県)や人形峠(岡山県)では、原子力関連施設の上空を飛行する実態について、当該施設から国に飛行しないよう要請されている。
    2. 群馬、島根、広島県では「小中学校に向け急降下、急上昇などの行為が繰り返され、子どもたちが恐怖におののいている」などの苦情がくり返し出ている。
  • 広島県は無回答だったが、ホームページで公開しているとの確認を得た。それによると1997年から県内の市町村から集めた情報を毎年外務省に提出し、低空飛行訓練の中止を求めている。2012年上期には過去最多の1,012件の目撃情報があった。学校の上空を飛行すること、週末や祝日も飛行があることを具体的に示し、99年の日米合同委員会合意で留意されている事項が無視されている実態に抗議している。

2.オスプレイ配備とその低空飛行訓練について

  • 多くの県で、昨年7月以降、地域の防衛局が説明に来たり、環境レビューなどで公表されている資料による説明が行われたりしている。しかし個々の市町村に対する説明はほとんどない。
  • この問題につき「低空飛行の中止を求める」との回答が33件あることは注目される。
  • 多くは、「安全保障政策上の問題であり、政府において責任を持った判断をなすべき事項であると考える」。ただし「県民に不安を与えるような飛行訓練が行われた場合には、県として、適切な対応をとるよう、外務省、防衛省及び在日米軍関係機関へ要請を行う」(群馬県)との回答である。

 今後、より詳細な分析をし、低空飛行訓練の全面的な中止を求め、日米地位協定そのものの見直しを求める運動の拡大へ寄与していきたい。

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新たな食品表示法制定への課題
消費者のためになる法・制度を求めて活動

 消費者庁は、今年の通常国会に新たな食品表示法案を提出する予定です。これは、現行の食品表示に関わる法律が、「食品衛生法」(厚生労働省管轄)、「農林物資の規格・品質表示法」(JAS法・農林水産省管轄)、「健康増進法」(厚生労働省管轄)とバラバラであったものを統合しようとするものです。2011年9月から消費者庁内に「食品表示一元化検討会」が設けられ、昨年8月に同検討会の報告書が出されました。また、消費者団体などとの意見交換も行われ、3月頃の法案提出が想定されています。
 これに対し消費者団体は、法・制度の統合は以前から要望してきたものの、検討会報告などに様々な問題があるとして、消費者のためになる新たな食品表示法の制定を求め「食品表示を考える市民ネットワーク」を作り活動をしています。

消費者の知る権利、原料原産地表示の徹底


刺身の表示。上の盛り合わせには産地表示はない

 同ネットワークの要求の第一として、法の目的に「消費者の知る権利、選択する権利の確保」を明記することを求めています。食品表示を適正なものにすることで、消費者の安全を確保し、誤認することなく、自主的で合理的な商品選択が確保されるよう、事業者に対して必要な情報を開示させることが必要です。そのために、消費者の権利を明確にした食品表示法が求められます。
 第二に、全ての加工食品の原料原産地表示の義務化です。原料原産地表示は、その食品がいつ、どこで作られ、どのような経路で食卓に届いたかという生産履歴を明らかにすることによって、消費者が安全性に関して自ら判断し選択するための大切な情報の一つです。これまでも加工食品の産地偽装事件が多く発生しており、出どころの明らかな国産食品を食べたいという消費者の声が高まっています。
 しかし現在、生鮮食品は産地表示義務がありますが、加工食品は乾燥きのこ類・緑茶・もちなど20食品群と、個別に品質表示基準が定められている4品目(農産物漬物・野菜冷凍食品・かつお削りぶし・うなぎ蒲焼き)が対象で、不十分なままです。そのため、例えば単体の刺身は表示対象でも、刺身の盛り合わせは加工食品として表示対象外です。カット野菜も生鮮食品で表示されますが、それにドレッシングをかけたものは対象外です。こうした矛盾をなくすためにも、基本的に全ての産地表示を義務化することが必要です。また、外食・中食についても原産地表示が求められます。

遺伝子組み換え食品や食品添加物表示の改善へ
 第三に、全ての遺伝子組み換え(GM)食品や飼料表示の義務化の問題です。消費者の多くはGM食品に不安を持っています。しかし、現行の制度では、食用油や醤油などに使われる輸入ナタネや大豆の多くはGM食品であるにも関わらず、表示の対象外です。これに対し、EUでは全ての食品が対象となっています。また、日本では5%までは「意図しない混入」ということで「遺伝子組み換えではない」と表示が可能ですが、EUは0.9%未満までの混入に限っています。その他、外食や飼料作物への表示も含め、EU並みの表示制度が求められています。
 さらに、食品添加物の一括名、簡略名の廃止および原材料と添加物を分けて表示することを求めています。消費者は添加物の少ない安全な食品を求めています。しかし、現行の制度では、使用されている多くの添加物が隠されています。例えば「調味料(アミノ酸等)」のような一括名や、リン酸化デンプンなど化学合成デンプンを簡略名の「加工デンプン」と表示しています。一括名、簡略名を廃止し用途と物質名の表示や、原材料と添加物を分けて明確に表示することが必要です。
 食品表示を考える市民ネットワークでは、こうした点を検討する場を早急に設置することを求め、検討の場に消費者代表およびこうした表示を積極的に実践している事業者を委員に加えることも求めています。

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解散・総選挙で廃案となった「脱原発法案」
法案の再提出で国会での論戦を

多くの国会議員の賛同で法案提出
 脱原発への様々な動きが盛り上がる中、昨年8月22日に平和フォーラム・原水禁も参加する「脱原発法制定全国ネットワーク」が立ち上がり、その中で「脱原発基本法案」が発表されました。市民が立案に関与し、そこに政党や議員の賛同を求めて、政党間の違いをまとめる中で、法案提出につなげていきました。
 その結果、国民の生活が第一、社民党、新党きづな、減税日本、新党改革、新党大地・真民主の6会派(当時)の国会議員23名によって、通常国会の会期末の9月7日に国会に提出しました。その際、政権政党(当時)の民主党からも55名の議員が賛同し、みんなの党、みどりの風、無所属などの議員も含め、合計103名の国会議員が賛同議員に名を連ねました。
 法案は、次の臨時国会で議論が交わされることが期待されましたが、衆議院の解散・総選挙となり、残念ながら議論もないまま廃案となってしまいました。

選挙の争点とならなかった脱原発


脱原発法の成立をめざす、国会議員と市民の集い
(衆議院第1議員会館・2012年9月4日)

 脱原発法制定全国ネットワークは、衆議院総選挙の候補者に脱原発法に賛成か否かを問う調査や、当選後に法案への賛成を約束する契約書を結ぶなど、選挙戦を側面から応援しました。しかし、12月16日の投票の結果は、自民党、公明党が3分の2以上の議席を確保するという、脱原発を進める側にとって大変厳しい結果となりました。
 戦後最低の投票率を見てもわかるように、自民党の政策への積極的な支持で決まったものではなかったといえます。12政党が乱立し、争点となるべき脱原発や沖縄へのオスプレイ配備などの基地問題、環太平洋連携協定(TPP)といった課題は全国化せず、局地的課題に限定され、消費税導入もすでに主要政党間での既定路線となっており、争点にならないまま、民主党への失望だけが加速した結果になったといえます。
 また、選挙直前まで政党の離合集散が続き、有権者がその主張を見極めることが困難となったこと、政党のマニフェストも民主党の政権公約の失望とともにその有効性を失ったことが、政党政治への不信感を生みだし、議論は深まらないまま終わった選挙でした。
 一方で、これまで原発を強力に推し進めてきた自民党でさえ、真正面から原発推進を言う状況になかったことも確かです。それだけ、福島第一原発事故の影響は大きく、脱原発への世論の盛り上がりを無視できないところまで、推進派を追いつめていると見ることもできるのではないでしょうか。

参議院選挙で脱原発派の拡大を
 自民党が政権へ復帰した中で、民主党が進めてきた原子力政策の見直しは必至です。原発再稼働や新増設に対しても積極的に動くことが予想されます。核燃料サイクル政策についても、いま以上にテコ入れがなされる可能性が高いと思われます。総選挙の結果を踏まえ、市民運動の側では、今年7月の参議院選挙で脱原発勢力をどうやって増やすかという議論も始まっています。
 脱原発基本法は、衆議院解散によって一旦廃案となりましたが、再度議論を国会内で展開するために、あきらめるわけにはいきません。むしろ、今こそ脱原発法が必要です。脱原発法制定全国ネットワークとしては、衆議院や参議院での法案提出をめざし、参議院選挙において原発政策を中心争点に押し上げ、脱原発勢力の拡大をめざしていく方針です。
 当面、参議院での法案提出は10人以上の国会議員が必要となりますので、その人数の確保を図ることにしています。衆議院への提出は20名以上の国会議員が必要となりますので、現在の国会での議席状況では、厳しいものがありますが、状況に合わせて提出を図ることになっています。平和フォーラム・原水禁は引き続き、この取り組みに全面的に協力していきます。

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脱原発国のもう一つの顔
ドイツは「乾式貯蔵先進国」

 脱原発国ドイツは、原子力発電所の使用済み燃料の「乾式貯蔵先進国」でもあります。ドイツでは、炉から取り出し後、5年以上プールで冷やした使用済み燃料を「CASTOR V」という鋳鉄製容器に入れ、原発敷地内の貯蔵建屋で保管して、直接処分場の完成を待ちます。冷却は、空気の自然対流を利用します。CASTORは「放射性物質貯蔵・輸送兼用キャスク」という英語名の頭文字。Ⅴは、取り出し後5年を意味します。

敷地内乾式貯蔵を義務付けた社民と「緑」の政策
 原発敷地内の乾式貯蔵は、1998年の選挙で登場した社会民主党(SPD)と90年連合・緑の党の連立政権が、2000年6月14日に電力業界との間で達した合意(翌年6月11日最終署名)に基づくものです。合意には(1)各原子炉の寿命を32年とする計算式による原子力の段階的廃止(2)2005年7月1日以降の使用済み燃料の英仏再処理工場への輸送禁止(3)ゴアレーベンでの最終処分場用探査作業の一時停止などとともに(4)使用済み燃料の各原発の敷地内あるいはその近傍での乾式貯蔵施設の建設(遅くとも5年以内に実現)が含まれていました。
 中間貯蔵施設の建設が間に合わない5つの原発では、1~2ヵ月で建設可能な暫定貯蔵施設(5年間貯蔵可)の建設が認められました。コンクリートの箱に容器を1基ずつ横置きするこのモジュール方式が、福島第一原子力発電所の4基の原子炉の使用済み燃料を冷却プールから降ろすための作業の一貫として採用されることになったのは、本誌先月号で見たとおりです。
 メルケル保守政権は、この合意に基づいて2002年4月22日に改正されていた原子力法を10年12月8日に再改正して原子炉の寿命延長を図った後、福島事故の後の11年8月6日に再々改正して、22年末までの原子力廃止を決め、脱原発を決定的なものにしたのです。

発端となったゴアレーベン再処理工場の議論


暫定貯蔵用に搬入された容器
(ネッカーヴェストハイム原発)

 大量の使用済み燃料のプール保管は、テロなどで冷却材喪失事故が起きる可能性があり危険だという点が注目されたのは、ニーダーザクセン州ゴアレーベンの再処理工場建設計画を巡る議論の中でのことでした。同州のアルブレヒト首相(キリスト教民主同盟=CDU)は計画に関する国際的科学者の公開討論会を79年3月末から1週間にわたって開いた後、5月16日に出した建設許可拒否の声明で、工場の使用済み燃料受け入れプールの危険性を主要な理由の一つとして挙げました(プールの容量は六ヶ所と同じ3000トン)。後にバイエルン州で計画されたバッカースドルフ再処理工場では、受け入れ施設に乾式が採用されましたが、1989年4月、電力業界がコスト高を理由に計画を放棄し、ドイツの再処理は英仏委託だけとなりました。

推進役となったメルケル環境大臣
 最終処分場、再処理工場、MOX燃料工場などを含むゴアレーベンの総合計画は変更され、再処理工場の受け入れプール施設は、乾式中間貯蔵施設へと姿を変えました。同じ70年代半ばに計画されたノルトライン・ヴェストファーレン州アーハウスのプール式中間貯蔵施設も乾式に変わりました。電力会社の共同設立会社GNS社がプール式では政府の要求する安全基準を満たせないと判断したためです。世界初の乾式輸送・貯蔵容器を開発し、再処理政策をとっていない国々での乾式貯蔵普及の先頭に立ったのもGNSです。
 上述の2施設は現在、主にガラス固化体や特殊な炉の使用済み燃料などの中間貯蔵施設となっていますが、元々は大量の軽水炉の使用済み燃料の貯蔵もするはずでした。計画を変えさせたのは激しい輸送反対デモと輸送容器汚染発覚です。1998年5月、ドイツから英仏への使用済み燃料輸送用容器が両国への輸送時と、ドイツへの返還時に汚染されていたことが明らかになり、メルケル環境大臣(当時)が、英仏への輸送とこれら2施設への輸送を、改善策実施まで禁止すると発表しました。これが敷地内乾式貯蔵の発端となりました。例えば、3基のCASTOR Vをすでに敷地内に抱えていたネッカーヴェストハイム原発ではこのとき、いずれ輸送が再開されるとの前提の下に、暫定貯蔵施設の計画に着手しました。この後、9月の選挙の結果、社民・「緑」の連立政権が成立し、脱原発、再処理用輸送中止とセットの形で敷地内乾式貯蔵義務付けが決まったのです。
(田窪 雅文:ウェブサイト核情報主宰)

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韓国大統領選挙の結果が意味するもの
恵泉女学園大学 准教授
イ・ヨンチェ


大統領選挙戦で握手する
朴槿惠次期韓国大統領(左)
(中央日報ホームページより)

ノスタルジアと経済成長に期待する中産層の離反
 昨年12月19日に行われた第18代韓国大統領選挙で、 セヌリ党のパク・クンヘ(朴槿惠)が有效投票の51.6%を得て、48.02%を得た民主統合党のムン・ジェイン(文在寅)に108万票の差で勝利しました。イ・ミョンバク(李明博)保守政権に対する国民の不満がピークに達しており、新自由主義政策による貧困の格差がさらに広がり、投票率が75%を超えたことで野党及び進歩勢力が有利だろうという期待にもかかわらず、結果は明らかに野党及び進歩運動陣営の惨敗を意味しました。
 投票の結果によればまず、文在寅はソウル及び首都圏地域の中産層の支持を獲得することができませんでした。これは中産層が文在寅の福祉・分配政策よりも、保守安定化を選択したと言えます。
 第二に、高齢者層の保守勢力に対する支持傾向が強まりました。20~30代は、文在寅に対する高い支持率を見せた反面、高齢者層は朴槿惠を支持しました。特に、60代以上は圧倒的に朴槿惠を支持しました。韓国の高齢者の貧困及び自殺率が世界1位のレベルにもかかわらず、彼らが普遍的な福祉の拡大政策よりも、生活貧困層の福祉縮小が予想される朴を選択した「矛盾的」投票行為がみられます。
 これは、朝鮮戦争の廃墟とパク・チョンヒ(朴正煕)軍事政権期の高度経済成長を経験した彼らが、娘の朴槿惠への期待に変わっていることも意味します。その意味で、今回の選挙は、未来に対する選択よりは、過去に対するノスタルジア、または経済成長への幻想が反映される選挙であったと言えます。
 しかし何よりも、キム・デジュン(金大中)からノ・ムヒョン(盧武鉉)政権期に始まった新自由主義による経済格差問題に対する明確な代案を中産層に提示することができなかった野党の政策的無能力さが大きい敗北の原因であったと言えます。盧武鉉政権当時の韓米FTA締結、済州島海軍基地建設の確定、国家保安法廃止の失敗、イラク派兵など、民主化運動勢力の裏切り及び限界に対して、未だに国民からその信頼を得ていないと言えるでしょう。

朴政権と今後の日韓関係の展望
 朴槿惠政権は、富裕層に対する増税を抑制して、財閥中心の経済成長政策を維持しているという側面で、「失敗した」李明博政権の新自由主義政策の限界を、大きく乗り越えることはできないでしょう。政権引き継ぎ委員会の不透明な人事、選挙公約であった高齢層に対する補助金の取り消しなど、すでにその政策の本質や権威主義的政権運営を暗示する様子が伺えます。重要なのは、野党及び民主化運動勢力が敗北を謙虚に受け入れて、身を削る自己総括をしながら、「48%」という支持層と結束させていけば、 国民の支持も早いスピードで回復されるでしょう。
日韓関係に関して、東アジアで徐々に孤立している日本の安倍政権は、朴槿惠保守政権の誕生を誰より歓迎していたでしょう。しかし、親日派の娘という朴槿惠に対するイメージが強い韓国国民の情緒の中で、新大統領がすぐ対日融和政策を取ることは厳しいでしょう。新政権には、国内の経済活性化及び格差拡大の解消が何より優先的な課題となっています。また、対米関係及び対中関係の回復、そして南北関係の改善策を模索する課題も要求されています。
 しかし、対日関係は他に比べて短期間に可視的な対応が期待できない側面もあります。その面から、日韓関係は長期的な政策を考える可能性が高いでしょう。2015年は、日韓国交正常化50周年、戦後70年になる節目の年でもあります。1998年の金大中大統領と小渕恵三首相(ともに当時)の、「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ宣言」による10年間の日韓関係をより新しい段階に変えていくための「新日韓パートナーシップ宣言」を両政権は準備していくでしょう。「新日韓パートナーシップ宣言」は、1965年の国交正常化の時のように、歴史問題を曖昧に処理して、新しい保守による50年間の東アジアを企画するようになってはいけません。その意味でも今は、日韓の市民社会が挫折をするときではなく、お互いにより緊密な連帯を模索して協力していくべきでしょう。

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《各地からのメッセージ》
平和と脱原発運動、地域の仲間と連帯して
愛媛県平和運動センター 事務局長 大原 英記

 愛媛県平和運動センターは、18単産・単組、構成人員8,000名の少数組織です。財政難のため中予地区労センターと共に運営し、反戦・平和・護憲・環境・脱原発・部落解放・地域共闘・闘争支援などに取り組んでいます。
 5月3日の憲法集会には、毎年1000人規模の参加があり、昨年は評論家の佐高信さんや秋葉忠利・前広島市長の講演後、パレードを開催しました。また、個人や団体で構成する「憲法9条を守る愛媛県民の会」にも加盟し、映画鑑賞などにも取り組んでいます。そして、毎年の「護憲大会」にも参加し、「平和・人権は黙っていては守れない」を行動で示すことを訴えています。毎年7月には県内各自治体に「核廃絶を訴える要請行動」や、福島・広島・長崎大会に代表団を派遣しています。
 脱原発の闘いでは社民党と連携し、県知事や四国電力の要請行動に取り組んでいます。「四国ブロック平和フォーラム」としても毎年学習会を開催し、同じく要請行動を行っています。共闘行動としては、対岸の大分県平和運動センターと「伊方原発停止・廃炉、愛媛・大分共闘会議」を立ち上げ廃炉にむけての取り組みを進め、山口県平和運動フォーラムにも参加を呼びかけています。また、「伊方原発をとめる会」を四国四県・大分県・西日本を中心に結成し(会員:1200名、団体会員:120団体)取り組みを行っています。
 伊方原発の運転差し止めを求め松山地裁に提訴し、1月29日に第3回口頭弁論が行われます。大飯の再稼動に続くのは伊方原発と言われていますが、南海地震と原発の沖合6kmにある、世界最大級の中央構造線活断層による地震の同時発生によりM8・1000ガル以上の地震が起きるとされています。直下型地震の場合、制御棒の挿入や揺れによる主要機器の損傷も大きな問題と指摘されます。また、閉鎖性海域の瀬戸内海に面しており、過酷事故の場合、瀬戸内海沿岸に壊滅的な被害をもたらすこととなります。瀬戸内を死の海にさせてはなりません。
 保守・改憲派が台頭する今日ですが、決意を新たにがんばりましょう。(写真は伊方原発ゲート前で行われた集会・2010年2月13日)

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【本の紹介】
ほうしゃせん きらきら きらいだよ
澤地久枝、鎌田 慧 編著  丸木 俊 画


七つ森書館 2012年刊

 作家の大江健三郎さんらが呼びかけた「さようなら原発1000万人署名」。現在約820万筆が集まり、1000万筆にあと一息。その署名用紙の中に様々な手紙が添えられ、署名を集めた人々の息づかいが聞こえてきます。それらを読むたびに、胸に熱いものがこみ上げ、自らの姿勢が問われてくるものでした。その手紙を集めたのが本書です。編者の鎌田慧さんが書いているように「署名を集めたさまざまな手が書いた汗と涙の結晶」ともいうべき珠玉の手紙の記録です。
 その一端を紹介すると「私の母がひとり雪の青森駅に3日間立ち、集めた一枚の署名用紙も入っています」、「いままでの人生、仕方がないと目をつぶってきてしまったことが多くありました。今回は絶対、目や耳をふさいでは駄目だと思っています」、「学校の先生や部活の皆、家族から30人分の署名を集めました。少しでもお役にたてれば、と思います」など。
 この他にも本書に収めきれないたくさんの声が、今でも届いていて、それらはどれも心を打つものばかりです。手紙は全国各地から老若男女、さまざまな層の方から届いています。この中には海外からのものもあって、署名運動の拡がりとフクシマがもたらした事態の大きさが伺われます。これらの動きには「命」への危機感が、その基本にあるのだろうと思います。
 本書にもあるように、市井の人々への拡がりによる署名などの行動が、この間の運動の盛り上がりを支える大きな底流となっているのだと思います。その底流の上に、昨年7月16日に東京で17万人を集めて開催された「さようなら原発集会」や、全国各地に拡がる金曜行動があるのだと思います。「命」を基本にさまざまな人々が福島や子どもたちの未来を思い、声を上げ始めたのが、3.11以降の大きな流れであり、本書にはその思いがあふれています。ぜひ多くの人に本書を通じてその思いに触れてほしいと思います。
(井上 年弘)

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3月9日~11日「つながろうフクシマ!さようなら原発大行動」

 原水禁も参加する「さようなら原発1000万人アクション」では、東日本大震災・福島第一原発事故から2年目となる3月11日にかかる3日間を「つながろうフクシマ!さようなら原発大行動」と位置づけて、首都圏で集会や講演会を開催します。

●「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」
 日時:3月9日(土)11:00開場
 会場:東京・明治公園
(JR「千駄ヶ谷駅」5分、地下鉄「国立競技場駅」2分)
 内容:11:00~ブースの出店、音楽やトーク、パフォーマンスなど
    14:00~15:00 集会 15:15 デモ行進出発

●「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」
 日時:3月11日(月)18:30~20:30
 会場:品川区立総合区民会館「きゅりあん」
    (JR京浜東北線、東急線、りんかい線「大井町駅」1分)
 内容:大江健三郎さんらの講演。

※福島では3月23日に県民大集会が開催されます。
「原発のない福島を!県民大集会」
 日時:3月23日(土)11:00~
 会場:福島市・あづま総合体育館
    (JR福島駅よりバス、タクシーなどで20~30分)

※詳細はホームページをご覧ください。
http://sayonara-nukes.org/2012/12/121220/

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