10月, 2008 | 平和フォーラム - パート 3

2008年10月01日

他人の痛みをわが痛みとして

全日建運輸連帯が結成20周年
9月8日、全日本建設運輸連帯労働組合の結成20周年の集会が東京でありました。全日建運輸のモットーと闘いの歴史について、とりわけ関西生コン支部の闘いなどがDVDで映し出されました。そこには、労働現場で資本家と向き合い、弾圧に屈せず、資本家に買われている暴力団の暴力に屈せず、資本家の側に立つ警察権力に屈しない組合員と指導部、全日建運輸の闘う姿がありました。その姿は力強く、胸には誇りが輝いているように見えました。労働運動がスマートになる中で、組合の原点を見る思いでした。引き続いて運動の最前線で奮闘してほしいと思います。
またDVDの中で、モットーは「他人の痛みをわが痛みとして感じととることのできる組合作りを」であると紹介されていました。私たちはこの言葉は知っています。またそうでなければならないということはよく知っています。しかし私たち自身の生き方の中で、また、私たちの組織がどれだけ実践できているのかと深く考えてみると苦しくなってきます。胸をはって私は「がんばっている」と言い切れないのです。しかし、不断にその言葉の意味する原点に立ち返り、私たちの日常の行動を続ける必要があるように思えます。
労働運動の分野で見るならば、勤労者の3分の1といわれる非正規労働者の痛みを、世帯数の4分の1といわれる年収200万円以下の人々の痛みを、さらには年間3万人を超えている自殺者の痛みを、わが痛みとして感じ取れているのでしょうか。平和運動の分野では、戦争犠牲者の痛みを徴用され強制連行された人々の痛みを、米軍に侵略され殺され続けているアフガンやイラクの民衆の痛みを、どれだけ感じとれているのだろうか。鉢巻を締め直しましょう。

福田自公政権を許さない
9月1日、安部に続いて福田も政権を放棄しました。政権を担っていても、米国から求められている「新テロ特措法の延長」に目途がつかないからということのようです。ふざけるな、どこを見ているのだ、国民の痛みが、悲しみが、怒りがわからないのかと言いたい。
福田自公政権が退陣をしなければならない理由は明確です。国民の最後のセイフティネットの社会保障制度が壊れつつあるという実態に対して、市場万能主義の中で格差社会が進行し、権利の保障されない非正規労働者と貧困層が増え続けている実態に対して、福田自公政権は無策であるから退陣をせざるを得ないのです。予定されている衆議院総選挙で、何としても総力を結集して、民主党、社民党を中心とする政権を作りましょう。希望を作りましょう。

2008年10月01日

ニュースペーパー2008年10月号

【インタビュー・シリーズ その27】
静かな空をとりもどすために飛行差し止めを
厚木基地爆音防止期成同盟委員長 鈴木 保さんに聞く

【プロフィール】
1925年生まれ。51年に相模鉄道(相鉄)に入社し、相鉄労組に参加。相鉄労組・副委員長、神奈川県交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)・事務局長として、神奈川県内の労働運動を牽引。一方で厚木爆同委員長として、地域住民の反基地運動の中心を担う。

──厚木基地爆音防止期成同盟(厚木爆同)には、いつから参加しているのですか。
 1955年から大和市に住んでいます。厚木爆同の結成は1960年ですが、私が参加したのは62年からです。当時の会費は、月20円でした。最初は会員として参加していたのだけど、会議で少し発言すると、「鈴木さん、役員になってください」と言われ、それで役員になって、70年に委員長になりました。

──当時の厚木基地は、どのような様子でしたか。
 米海軍西太平洋艦隊の航空機が駐留していましたが、大型機はなく、いまほどうるさくはありませんでした。それでも、58年から60年にかけて基地の拡張が行われて騒音が増大していきました。それで60年に350世帯が参加して厚木爆同が結成されます。
 73年に空母ミッドウェーの横須賀母港配備が始まり、それに伴って厚木基地には空母艦載機が駐留し、そこから、騒音はさらにひどくなりました。
 いま大きな問題になっている夜間離着陸訓練(NLP)は、最初は行われていませんでした。国内では青森県の三沢基地と山口県の岩国基地がNLPの訓練場所だったのです。それが82年に、厚木基地の司令官が口頭で、NLPの開始を通告してきました。だからNLPに関する取り決めの文書は無いのです。

──実力闘争も行ったと聞いています。
 政府が私たちの要求を聞かないので、69年の2月に、実力行使に入ることを決定しました。水素で脹らませた風船500個をあげて、飛行を阻止しようとしたのです。万が一にも航空機に接触すれば、墜落事故の可能性もあります。だから爆同の中にも慎重な意見がありました。また、防衛施設庁の役人が来て「やめてくれ」「飛行規制について日米で検討する」というので、この風船行動は中止にしました。
 水素風船はあきらめたけれど、8月15日から3日間、滑走路の北側にある農民の共有地にやぐらを立てて、座り込むことにしました。やぐらを立てるために、改築中の小学校から、4トントラック2台分の廃材をもらってきました。ところが、座り込み開始日の8月15日の朝、共有地に行ったら廃材がないのです。「かっぱらわれたかな」と思った。それで、あたりの銭湯を訪ねて歩きました。「廃材を盗んだか」とは聞けないので、「お宅の銭湯は、重油ですか、マキですか」って。銭湯に盗まれたわけではなさそうでした。あれは、たぶん、防衛施設庁が持って行ったのでしょう。
 それでもう一回、廃材を取りに行って、やぐらを作りました。やぐらの上にさらに竿をつなげて、12~13メートルぐらいの高さになりました。
 夜になると、古タイヤを燃やしてね。これは、茨城県にある航空自衛隊の百里基地に反対していた農民の戦法、「百里黒煙闘争」に学んだのです。タイヤを燃やしているところに、当時の社会党衆議院議員だった加藤万吉さん(9月12日逝去)が来て、「鈴木さん、危ないから火を消しなよ」というのです。でも消さなかった。この行動で、まる2日間、飛行を止めたのです。
 私たちの実力行使と、加藤万吉さんら社会党議員の交渉によって、私たちは3つの成果を獲得しました。飛行高度の制限強化、テレビ受信料の減免、引地台地域の返還─です。いま引地台は、公園と小学校になっています。大和市の市史には、米軍から返還されたとしか書かれていないのだけれど、本当は厚木爆同の実力行使で返還されたと書くべきだな。

【米海軍厚木基地とは】
 神奈川県の綾瀬市と大和市にまたがる航空基地。戦前に旧日本海軍が建設し、敗戦時に米軍が接収した。現在は、米海軍と航空自衛隊が共同で使用。米海軍の配備部隊は、第5空母航空団(横須賀を母港とする空母の艦載機部隊)。同部隊が行う飛行訓練の爆音は、綾瀬市・大和市をこえ、相模原市・座間市・海老名市・藤沢市、東京の町田市におよぶ。「厚木」基地と言われるが、厚木市には隣接していない。日米は在日米軍再編で、艦載機部隊の厚木基地から岩国基地への移転で合意した。

──厚木爆同は、3回にわたって爆音訴訟を提訴して、すべて損害賠償の勝利判決を勝ち取っていますね。
 実力行使で一定の成果を得た後、「今後はどうするのか」という話になりました。そこで、国に対して損害賠償を求める裁判を起こすことになったのです。71年に大阪空港訴訟の最高裁判決があって、損害賠償を勝ち取りました。それにならったのです。「厚木爆同で裁判を始める」って言ったら、全国133人の弁護士が支援してくれました。原告は1世帯1人で92名です。
 1976年9月8日に提訴しました。9月8日という日は、1964年に大和市の鉄工所にF8戦闘機が墜落して、5人の死者が出た日です。ですからその現場に行って、爆同の会員で総持寺(横浜市鶴見区)のお坊さんにお経をあげてもらい、それから裁判所に向かいました。
 この裁判は、「勝った」と思っていたのです。2審は東京高裁で行われたのですが、83年10月30日に現場検証がありました。その日は、珍しくたくさんの飛行機が飛んでいて、裁判官も「うるさい」と言ったのです。私たちはこの言葉を聞いていた。ところが89年4月9日の判決で敗訴。その後、最高裁で損害賠償が認められました。提訴から判決まで19年6ヵ月かかりました。

──空母ミッドウェーの横須賀母港化の時には、横須賀市役所へも要請に行ったそうですね。
 73年7月16日に、仲間と20人ぐらいで、横須賀市役所に行きました。知り合いの議員に頼んで市長との面会を約束したけれども、役所に行くと市長がいない。秘書課で聞くと、「企業の創立25周年の会であいさつに行っている」と言う。「いつ戻ってくるか」と聞いても、「わからない」。そこで職員に「市長の自宅の住所を教えてくれ。そうすればあなたたちを煩わせないで、自分で会いに行く」と言ったのです。
 そうしたやりとりをしているうちに、2人の職員が飛び出して行った。なんだろうと思ってあとを追うと、階段のところに市長がいました。それで私はこう言ったのです。「空母の母港化は、横須賀市が決めたのなら、自治権の問題だからしかたない。しかし、母港化を受け入れたのなら、艦載機も引き取ってくれ」と。

──爆同の皆さんの取り組みを、大和市民はどのように見ていたのでしょうか。


新型戦闘機スーパーホーネット配備に抗議する厚木爆同
(05年5月・厚木基地前)

 1次訴訟の時には、ヤクザ者みたいなのから電話で脅しがあった。それから「いい気になるなよ」と書かれたはがきが届きました。3次訴訟の時には、自治会で説明会を開いて、それで多くの市民が参加してくれました。中には「この人が…」と思うような、保守系の人もいました。「基地には賛成している。しかし、日夜の騒音は許せない」という人もいました。
 それから、「反対しているのは極左だ」「鈴木とはつきあうな」といわれていました。でも、そうした人たちも、4次訴訟には加わってくれています。保守的な人でも、騒音を許せないという人は多いですね。

──その4次訴訟が始まりました。
 4次訴訟には、損害賠償だけではなくて、飛行差し止めも入れました。97年からやってきた3次訴訟では、私たちは飛行差し止めを入れたかったのですが、弁護士から反対されました。4次訴訟では、逆に弁護士から飛行差し止めの話がでたのです。厚木爆同は2年後には結成50周年を迎えます。だから今度の4次訴訟では、飛行差し止めを勝ち取りたいですね。

〈インタビューを終えて〉
 横須賀港に向かう米空母。相模湾沖を通過しつつ、艦載機は次々と厚木飛行場に向かう。飛行場周辺では、轟音を立てて、昼夜かまわず訓練を繰り返す。会話は閉ざされ赤子は泣き叫ぶ、市民生活のすべてが凍り付く。我慢ならぬと、50年闘い続けた。言葉の中を固い信念が貫く。実力行使も辞さない、その勢いが3度の裁判を闘い抜き、勝利に導いた。今また第4次訴訟。そして、全国の爆音訴訟を束ねる。83歳。まだ、若い者には負けない!
(藤本泰成) 

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さあ総選挙だ 政権交代を勝ち取ろう!
戦争する国づくり、市場万能主義、原発推進路線の転換を

時代は動き出している─米国支配の終わり
 世界は大きく揺れています。米国経済はサブプライムローン問題に端を発し、リーマン・ブラザース、メリルリンチなど米国の有数の証券会社が破綻し、50年来といわれる深刻な危機に直面し、その影響が世界的に拡大しています。またブッシュが始めたアフガニスタン・イラクへの侵略戦争が泥沼化し、米国の財政と社会に深刻な危機をもたらしています。さらに、ロシアとNATOとの関係や、東アジアでも軍事的緊張が高まっています。
 これらの一連の動きは、政治・経済・社会における米国の一極支配が終わろうとしていることを示しています。ブッシュ・ネオコン路線、つまり軍事力による世界支配、市場万能主義路線の行き詰まりが明確になる中で、路線と政策の見直しが求められています。
 そうした中、米国で大統領選挙が始まり、民主党オバマ候補と共和党マケイン候補の争いになっています。米国が国連を中心とする平和維持の枠組みに実質的に復帰し、市場万能主義の経済路線の見直しをすることができるのかどうかが、この選挙戦の中で問われています。民主党のオバマ候補の奮闘と米国の良心に期待が集まっています。
 日本では、9月1日、突然福田首相が安倍前首相と同様に辞任を表明しました。その無責任さにあきれるばかりです。福田自公政権は内閣改造後も支持率は20%台であり、その悪政と無策を考えるならば辞任して当然であり、野党に政権を渡すべきであることはいうまでもありません。あるいはただちに解散・総選挙を実施し、「従来通りの自公政権か野党連立政権のどちらを選択するのか」国民の意思を問うべきです。しかし自公政権は自民党総裁選挙の茶番劇を実施し延命を画策しました。それにもかかわらず、確実に市民は自公政権の本質を見抜き、政権交代を求めています。

自公政権の悪政・無策は数え上げればきりがない


横須賀の原子力空母配備に反対する全国集会
(7月19日・横須賀)

 福田自公政権は、市場万能主義路線に基づき、公的規制を壊し、格差社会を作り続けています。その結果、権利の保障されない非正規労働者が雇用労働者5,000万人中の約3分の1の1,600万人となり、年収200万円以下の勤労者が4分の1の1,000万人をこえると政府統計でも明確になっています。また年金制度、医療制度など社会保障制度が崩壊の危機に直面しています。
 さらに防衛省の元事務次官の汚職、農水省幹部の業者との癒着、社会保険庁幹部の無責任性など官僚制度の腐敗が次から次へと暴露されています。経済における不況の進行に対しても無策です。
 平和課題では、新テロ特措法による米国の侵略戦争に加担し、横須賀の原子力空母母港化や沖縄辺野古への新基地建設など、米軍再編成を強行実施し、戦争する国づくり路線を継続し、憲法9条の空洞化、平和を危機に追い込んでいます。原子力の商業利用の面でも、原発震災の危険性が指摘され、プルトニウム利用路線が破たんしているにも関わらず、いまなお路線転換をせず、原発を推進しています。そんな彼らに日本の明日を託すことはできません。

自公政権打倒に向け野党勢力は総結集を
 いま市民の多数派は政権交代を求めています。2005年の衆議院総選挙では、マスコミを政治利用した小泉元首相が、無党派層を取り込み自民党に勝利をもたらしました。しかし2007年の参議院選挙では、市民の多くは、「戦後レジームからの脱却・憲法改正をめざす」安倍前首相に「ノー」を突きつけ、与野党逆転をもたらしました。
 そしてこの1年間は自公政権と野党との対決の1年であり、自公政権の悪政が次から次へと露呈し、彼らに政権担当能力のないことが国民の前に明らかとなりました。民主党も社民党も政権交代目指して、全力でがんばることが求められています。また連合や平和団体、市民団体もがんばっています。自公政権打倒に向け、野党勢力は総結集し、政権交代を実現しましょう。

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総選挙とともに最高裁判所裁判官の国民審査も行われます
憲法・人権軽視の裁判官には×印を

 福田首相の突然の辞意表明により、自民党総裁選挙という茶番劇が行われ、この記事の執筆時点(9月19日)での最新の報道では、この総裁選挙で選ばれた自民党総裁を首班とする新内閣が10月3日に衆議院を解散し、10月26日投票という日程で、総選挙へとまっしぐらに進もうとしています。

何も書かないと信任。○や△は無効です 3枚目の投票用紙を忘れずに
 総選挙の投票日には、衆議院議員の小選挙区、比例区の投票用紙とともに、3枚目の紙「最高裁裁判官の国民審査」の投票用紙が配られます。華々しい衆議院の選挙戦に隠れて、ともすればこの投票を忘れがちではないでしょうか。総選挙と同時に第21回最高裁裁判官の国民審査が行なわれるのです。
 最高裁判所は、国会(立法)、内閣(行政)と並ぶ三権の一つ、司法の最高機関です。「憲法と人権の番人」とも呼ばれ、その判断次第で人の生命や財産、権利にも、国の指針にも大きく影響します。最近でも、戦争中に中国人を強制連行・強制労働させながら賃金不払いなどを争った広島西松訴訟の最高裁判決は、日中共同声明で請求権を放棄したとして被害者の訴えを認めた高裁判断を覆しました(2007年4月27日)。判決を聞いた老齢の原告は怒りをあらわにしました。
 こうした判決をはじめ、戦後補償、環境問題、基地騒音訴訟、投票の格差、婚外子相続など、重要な判決が出されています。しかし、国会議員や大臣に比べて、最高裁の判事が誰かはもとより長官が誰なのかもほとんど知られていません。(ちなみに現在は島田仁郎長官です)

司法改革への姿勢もチェックしましょう ×(バツ)が悪いことはありません!

 ようやく最近になって司法改革の動きもはじまりました。2009年からは有権者が裁判の判決に参加・関与する裁判員制度も開始します。しかし、まだまだ裁判所は、国の機構のなかでも改革が遅れています。裁判員制度も運用次第では、市民に死刑など重罪判断をさせる制度になる恐れも持っています。
 このなかで、最高裁裁判官国民審査は、主権者が裁判官の判断をチェックする重要な機会です。とはいえ、裁判官の経歴、判決内容、憲法や人権に対する考えなど、まったくといってよいほど知られていません。棄権のつもりで何も書かないで投票している人が多いのが実態です。しかし、無印のままでは信任となってしまいます。また、○や△は無効です。きわめて非民主的、前近代的な方法で審査しています。

 平和フォーラムは、審査対象となる裁判官についての情報を十分に提供することや、○×式に改めることを求めていますが、改善されていません。また、投票のやり方や信任・不信任のルールの説明も不十分です。期日前投票が、衆議院総選挙では公示日の翌日からできるのに、国民審査は投票日7日前からしかできません。総選挙の投票と同時に必ずできるようになっていません。
 いまの制度では×印をつけることだけが権利行使です。今回対象となる那須弘平、涌井紀夫、田原睦夫、近藤崇晴、宮川光治、櫻井龍子の6人の裁判官の過去実績・経歴を検討するとともに、制度自体に対する批判として、できるだけ「×」を増大させることが必要です。
 バツが悪いことはありません。審査対象となる裁判官について十分検討し、意見がはっきり違うのでやめさせたい裁判官、憲法と人権を守らない裁判官、民主的な改革に逆行する裁判官には×印をつけましょう。わからないときは投票用紙を返しましょう。

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農業生産資材が高騰 「もう限界だ!」
経営を直撃 食料の安定・安全にも重大な影響が

 「もう農業は続けられない…」─いま全国の農業生産者からは悲痛な叫びが起こっています。原油高で、農業生産をする上で必要な肥料や農業用燃料が高騰しています。また、世界的な穀物価格の値上がりによる家畜の飼料代も上がり、「牛乳を搾れば絞るほど借金がふくらんでいく」(酪農家)状態が続いています。これは、食料の安定・安全問題にも影響を与えています。

2倍~3倍も高騰する肥料や重油代
 この間の原油や肥料・飼料価格がどのように推移してきているかを見てみると、原油は発展途上国の経済発展等による需要増加と、原油先物市場への投機マネーの流入により、史上最高水準まで高騰しました。原油価格の高騰により、生産段階の資材価格の値上がりに加えて、農産物が消費者に届くまでの加工処理、流通コストも大幅に上がっています。農業用の重油価格は4年前に比べて2倍以上になっています。
 肥料価格では、食料需給がひっ迫する中で、各国が自国の農業生産に必要な肥料原料の確保を優先したことによる肥料需給の増大と、一部輸出国の輸出制限によって、前年比で概ね2~3倍も値上がり。
 飼料でも、バイオエタノールの生産拡大によるトウモロコシの需要増大などにより、価格が史上最高水準まで上がっています。加えて、海上運賃の高騰で、配合飼料価格も約50%上昇しています。
 こうした資材費の高騰は、北海道などの大規模農業を直撃しています。JA北海道中央会の試算によると、肥料価格の引き上げで、20~25ヘクタール規模で2年前に比べて約200万円、30~40ヘクタール規模で約300万円の経費増。飼料費では、平均的な経営面積48ヘクタール規模で400万円以上の負担となっています。

農産物価格に転嫁できない


北海道では連合などが1万人総決起集会
(9月11日・札幌)

 このように経費が増加しているにもかかわらず、国内の農産物価格は低迷を続けています。野菜の価格は平年を2~3割下回る近年にない安値で推移し、農家経営は非常に厳しい状態が続いています。牛肉価格も家計消費の悪化等に伴い低下。今後注目される生産者米価については、「ライスショック」と言われた昨年のような大幅下落はないと言われていますが、過剰作付け米の影響による価格低下も予想されています。
 特に深刻になっているのは酪農です。牛乳は各地の生産者団体と乳業メーカーの交渉によって価格が決められますが、生産者団体の中央酪農会議の試算では、飼料高によって牛乳1キロあたり6円~8円もの赤字が続いています。このため、廃業や生産縮小する酪農家も多く、北海道以外の都府県では生乳販売量は前年に比べて5%以上も減少しています。しかし、スーパーマーケットの力が強いため、生産者の価格が抑制されています。今春、生産者乳価は1キロあたり3円上がりましたが、乳業メーカーがさらに3円、スーパーが4円を取って、店頭では10円の値上がりになっています。こうしたことの是正も必要になっています。

食と農の危機をテーマに11月に全国集会
 こうした事態に農業・農民団体は危機感を募らせています。平和フォーラムが9月2日に農民団体とともに開いた「資材高騰 もう限界!日本の食と農を守る緊急中央行動」で、北海道農民連盟(組合員2万8千戸)の山田富士雄委員長は「今回の資材高騰はかつてない最大の危機だ。石油ショックの時も資材は高騰したが、農産物価格支持制度で農家手取りは確保された。今は何もない。この危機を乗り越えなければ自給率向上など夢のまた夢。国は早く対策を打ち出すべきだ」と訴えています。
 このままでは日本農業が立ち行かなくなり、食料の安定供給にも重要な影響を与えることになります。総選挙も近いと言われる中、政権交代と農政の抜本的転換が必要になっています。平和フォーラムは、こうした食と農の危機にどう立ち向かうかをメインテーマとして、11月27日~28日に青森市で「第40回食とみどり、水を守る全国集会」を開きます。また、農民・消費者団体と今後も取り組みを進めていくことにしています。

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インドに対する原子力関連輸出の特例扱い認める
核拡散防止の形骸化がすすむ危険性

日本政府も容認 温暖化対策などを理由に
 9月6日、ウィーンで開かれていた核分野の輸出管理に取り組む「原子力供給国グループ」(NSG)の臨時総会で、アメリカとインドの米印原子力協力協定にともない、核拡散防止条約(NPT)に未加盟で核保有したインドに対して、原子力技術や燃料などの輸出を認める例外扱いを承認しました。
 日本政府もこれを容認し、NSGに加盟している45ヵ国すべてが合意しました。例外扱いは、核兵器5大国以外にも核兵器の保有を認めるという、NPTの基本理念に反するものです。核拡散に例外を認めることへの最大の関門の通過を許してしまったと言えます。
 総会では、インドが核実験凍結(モラトリアム)継続をあらためて宣言したことや、国際原子力機関(IAEA)の査察対象が拡大すること、地球温暖化対策としてインドの原子力発電は有効だと判断された、などと報じられています。
 例外措置が認められたことで、核拡散防止の原則が崩れて、インドの隣国パキスタンは、インドと同様の地位を得る権利を主張するのは明らかです。さらに北朝鮮や、核開発疑惑のイランやイスラエルにも核保有の口実を与えるものであり、NPT体制の形骸化、崩壊を招きかねない重大な局面を迎えています。

2010年のNPT再検討会議での核不拡散合意を
 原水禁は早くからこの問題点を指摘して、全国の約30の自治体から、「日本政府が国際社会で指導力を発揮することを求める要請書・意見書」を政府に提出するなどの運動に取り組んできました。
 また、連合や核禁会議とともに、外務大臣に対して例外規定に反対することと、インドにNPTや包括的核実験禁止条約(CTBT)への加盟を求めるよう要請してきました。
 被爆国でありながら、核不拡散外交の理念を放棄したかのような政府・外務省の対応に強く抗議するとともに、容認の理由とされる「温暖化防止効果」などの事実に基づかない説明に対して、今後も追及を続けていく必要があります。
 米印原子力協力協定に関しては、最大の山場を逃してしまいましたが、今年5月のNPT準備会合(ジュネーブ)での世界のNGOの活躍が活発化しました。この問題に対する国際的なネットワークは今も活動をつづけています。今後2010年のNPT再検討会議での実効ある核軍縮・不拡散の合意形成をめざして、平和市長会議などとも連携し、世界の核軍縮の動きに連動してさらに拡大していかなければなりません。

インドを特例扱いしたNSG決定に関する声明
 原子力供給国グループ(NSG)臨時総会で6日、米印原子力協定を例外扱いとするガイドラインの変更が決まり、核不拡散条約(NPT)に加盟しないで、1974年と1998年に核実験を行って核兵器計画を進めているインドに対し、原子力関連輸出を行うことに承認を与える歴史的決定がなされた。米国の押し進めてきたNPT体制の形骸化がさらに一歩進んでしまったと言える。
 インドは包括的核実験禁止条約(CTBT)にも署名していない。さらに、核分裂性物質の製造を続け、その核兵器の量を拡大し続けている。ところがこの決定で、NPT加盟国にだけ認められてきた民生用原子力貿易を、IAEAによる包括的保障措置も受けないインドに与えることになる。核拡散防止の原則が崩れて、パキスタンはもとより、イランや北朝鮮、イスラエルにも大きな影響を与えるだろう。
 CTBT発効要件国うち未署名は、北朝鮮、パキスタン、インドの3ヵ国で、インドの署名・批准がない限りCTBTは発効しない。さらに、核保有国5ヵ国は、核兵器用核分裂性物質の製造を中止しているが、インドは、製造を続けている。CTBTの署名・批准及び核兵器用核分裂性物質の即時生産停止を条件とすることさえ、日本政府は主張しなかった。
 日本国内からは、広島・長崎両市長が2年近く前から、さらに、全国の約30の自治体が、米印原子力協力の問題点を指摘して、この問題について慎重な議論がなされるよう日本が国際社会で指導力を発揮することを求める要請書・意見書を政府に提出していた。これらの要望や、最近出されていた、被爆者団体、広島・長崎県知事、全国の平和市民団体の要求、超党派の国会議員の反対の声も無視した日本政府の態度は到底容認できない。
 原水爆禁止日本国民会議は、あたかも核不拡散外交の理念を放棄したかのような政府の対応に強く抗議する。今回のNSG会合で、日本政府が核不拡散と核兵器廃絶のために何をしたのか、説明を求めるものである。

 2008年9月8日
 原水爆禁止日本国民会議

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活断層の上の「もんじゅ」なぜ動かすのか
運転再開の是非を問う公開討論会
ストップ・ザ・もんじゅ(大阪) 池島芙紀子

風下に住む関西で必死の取り組み
 08年10月に運転再開予定であった高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は、ナトリウム漏えい検出器の誤警報問題( 08年3月)によって、09年の2月に延期されました。「事故が起これば日本列島の半分を失う」といわれる超危険な原発「もんじゅ」に対して、風下に住む関西の住民は20年近く必死に取り組んできました。
 8月24日、大阪で行った「もんじゅ公開討論会」には、運転再開が迫っている危機感もあり、関西一円や福井、全国各地から約200名が参加しました。95年のナトリウム火災事故の前から、国や動燃(現・日本原子力研究開発機構)を相手に、その時々の重要課題で公開討論会を続けてきましたが、今回は大変緊迫した空気で、会場を含めて長時間のやりとりが続きました。
 これまで出席していた文部科学省(旧科技庁)が参加しなかったものの、推進派側は日本原子力研究開発機構(原研機構)の広報部長や同敦賀本部の担当者などが参加。反対派側は、元京大原子炉実験所の小林圭二さん、社民党の近藤正道参議院議員のほか、福井や関西各地の市民運動家がパネラーとなりました。

地盤は積み木細工のように脆弱


公開討論会in関西(8月24日 大阪)

 テーマは、1)地震と「もんじゅ」、2)誤警報問題、3)「もんじゅ」の必要性としましたが、メインは「地震」に置き、議論をすすめました。「もんじゅ」訴訟原告の福井の中嶌哲演さんから、裁判の中で「白木─丹生の断層」を活断層だと指摘したにもかかわらず被告側が意図的に認めず、いまになって「活断層」と言っていることの矛盾が指摘されました。近藤議員も「原研機構はまず謝るべきではないか」と迫りましたが、「間違っていたとは否定できない」(原研機構)としつつも反省のない姿勢に、強い怒りが発せられました。  活断層をめぐる論争では「もんじゅは活断層の線上から500メートル離れているので良い」とする原研機構側の主張に対し、活断層を原子力安全・保安院(保安院)がいう断面層でとらえず地表に現れた線上に限定した暴論だと参加者の怒りが爆発し、原研機構は「直下の解釈が違う」と繰り返すばかりでした。
 「もんじゅ」の地盤が積み木細工のように脆弱であることや、地震に弱い「もんじゅ」の構造等の問題点を明確にして、とうてい運転再開など許されないことを反対派側は主張しました。

調べてもいない地下構造でデタラメ答弁
 特に中越沖地震をどう反映させるかでは、柏崎刈羽原発(1~4号)の基盤面(解放基盤表面)での推定観測波が1,700ガル(周期0.02秒)と報告されており、0.1秒前後では4,000ガルを越えており、基準地震動S2を全周期で完全に越えていた事実が示されました。
 S2とは「起こるとは考えられないが念のため」検討した地震動で、「現実の地震は越えるはずがなかったのでは」「柏崎刈羽原発を襲った揺れと同じものが『もんじゅ』を襲ったときに大丈夫なのか」と追求されると、原研機構は「地下構造が違うため『もんじゅ』では同じようなことは起こらない」と否定。しかし、保安院が全国の事業者に地下構造の調査を指示するかどうか検討中であり、「どこの事業者も地下構造をまだ調べてない。嘘を言ってはいけない」(近藤議員)と一喝されました。
 また、「調査が終わるまで運転再開はしないと確約せよ」と迫りましたが、原研機構は「保安院から地下構造等の調査の指示が出ればしっかりやる」の一点張りで、最後まで「強行しない」とは言わず、歯切れの悪い答弁に終始した公開討論会でした。
 来年2月の運転再開をまずは何とか食い止めなければいけません。そのためにも以下の「もんじゅを廃炉に!集会」に結集してください。

『もんじゅ』を廃炉に!関西集会
 日時:11月16日(日)13:00~
 会場:大阪市浪速人権文化センター(大阪市浪速区)
 主催:とめようもんじゅ関西連絡会/大阪平和人権センター

『もんじゅ』を廃炉に!全国集会
 日時:12月6日(土)11:00~16:30
 会場:敦賀市白木海岸/敦賀市民文化センター
 主催:原水禁/原子力資料情報室/福井県民会議ほか

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検証体制のハードルを上げた米国
朝鮮半島の非核化停滞への不安

核施設の無能力化が中断
 朝鮮半島の非核化への動きが、またまた停滞しはじめました。米国は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)にとって到底受け入れられない「核計画検証手続き案」を示し、この案について北朝鮮から回答がないことを理由に「テロ支援国家指定」解除を遅らせています。これに反発した北朝鮮も、テロ支援国家指定解除の延期は、「(これまでの米朝協議の)合意違反」であると非難し、寧辺の核施設無能力化作業を中断して、一部施設を復旧する姿勢を見せています。
 いま朝鮮半島の非核化が進展するかどうかは、ブッシュ大統領が限られた時間のなかで、現実的な妥協案を示すことができるかにかかっています。一方北朝鮮も、未曾有の食料危機といわれるなかで、6月26日に提出した核計画書の範囲(寧辺周辺の核施設)をこえる検証をどこまで受け入れられるかが課題です。
 昨年秋から北朝鮮は核施設の無能力化作業を進めてきましたが、その作業中も、米朝はウラン濃縮やシリアへの核施設の移転などをめぐって対立し、ようやく妥協点を見いだし、6月26日に北朝鮮は「核計画申告書」を6ヵ国協議議長国・中国に提出したのです。この長い協議があったからこそ、ブッシュ米大統領は核計画申告書の提出後、直ちにテロ支援国家指定解除を決定し、議会に通告したのです。

米の「テロ支援国家指定解除」も延期
 さらに7月10日~12日に中国で開催された6ヵ国協議主席会合では「検証3原則( 1)核施設への立ち入り、2)文書の検討、3)技術者へのインタビュー)や、国際原子力機関(IAEA)の支援を確認し、非核化作業部会で細部の合意をめざす。08年10月末までに北朝鮮への経済・エネルギー支援を完了し、寧辺の核施設無能力化の完了に取り組む」との合意が発表されました。
 このとき米国は後述する検証草案を提出していたと考えられますが、北朝鮮は態度を留保しています。米国が8月11日にテロ支援国家指定を解除すれば、検証についての考えの相違は、それまでの米朝協議の流れのなかで妥協は可能であと考えられていました。
 シンガポールで7月下旬に開催されるASEAN地域フォーラムに併せて持たれる6ヵ国協議非公式外相会議は、朝鮮半島の非核化が、第2段階から核兵器廃絶への第3段階(最終段階)へ移る儀式の場とさえ考えられていました。

強硬政策に転換した米国
 しかし、7月23日のわずか1時間ばかりの6ヵ国協議非公式外相会議で、「検証問題」が大きな焦点となって浮上してきます。会議後に中国の楊外相は次の6項目が合意されたと説明しました。

  1. (北朝鮮の核廃棄へ向けた)第2段階の措置の完全で均衡のとれた履行が重要であり、この過程で核計画申告についての検証プログラムを作成する。
  2. 非核化作業部会の会合を早期実施する。
  3. 既存の合意に盛り込まれた各国の義務を遂行することを再確認する。
  4. 6ヵ国協議の過程が核問題解決および2国間関係の正常化などに重要であることに同意する。
  5. 6ヵ国協議のさらなる進展に努力する。
  6. 公式の6ヵ国外相会談を早期開催する。

 そして7月24日以降、ライス米国務長官、ヒル同次官補、米国家安全保障会議(NSC)のワイルダー・アジア上級部長、訪韓したブッシュ米大統領が次々に、「北朝鮮が検証手続きに合意しない場合、8月11日のテロ支援国家指定解除は実現しない」と述べ始めます。

北朝鮮に受け入れ不可能な検証案
 米国務省のソン・キム朝鮮部長が6ヵ国協議担当特使に就任し、7月31日から8月1日にかけて北朝鮮の李根米州局長と検証手続きについての協議が行われました。このとき米国が提示した核計画の検証手続き案を、読売新聞は8月6日に「検証手続き草案」の全文を入手したと報じ、「草案では、北朝鮮が核申告に盛り込まなかった核兵器や高濃縮ウランによる核開発、他国への核拡散の実態なども検証すると明記、核計画の全容把握のため厳しく望む姿勢を打ち出している」と報じました。
 これは北朝鮮にとって到底受け入れられない検証案といえます。この案を受け入れれば、米国などは北朝鮮のあらゆる場所へ行き、際限なく調査できますが、北朝鮮が求める、南北朝鮮の非核化の確認(検証)は不可能です。
 米ネオコンが再び力を持ち始めたのでしょうか? 米国務省に米上院軍事委員会からの圧力も指摘されています。大統領選挙がからむのでしょうか? しかし、今求められるのはブッシュ米大統領と北朝鮮の現実的な対応によって、状況を前に進めることです。

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【本の紹介】
東京湾の原子力空母
原子力空母横須賀母港化を許さない全国連絡会 編


2008年 新泉社刊

 「東京湾の原子力空母」が出版されました。内容は、1)なぜ横須賀に原子力空母なのか、2)空母原子炉の危険性、3)大地震と原子力事故、4)母港化をやめさせるためには、の4章から構成されています。この本を手に取り、読むことによって、横須賀に原子力空母「ジョージ・ワシントン」が配備される背景、米軍の意図、そして原子力艦船の母港化による「危険性」が私たちの前に明らかにされます。
 神奈川県横須賀市には戦前から「日本軍」の軍港として長い歴史がありました。そして戦後、米軍の基地として引き継がれ、1973年には航空母艦「ミッドウェー」、続いて95年から「インディペンデンス」、98年から「キティホーク」が配備され、米軍唯一の空母の国外母港として位置づけられ、現在に至っています。
 アフガン、イラク戦争には、横須賀を母港としていた「キティホーク」が出撃し、イラク、アフガンの民衆の上に爆撃を加えました。それでも配備されてきた空母は3隻とも通常艦でした。

 
 しかし、2005年、日米両政府は、「未来のための変革と再編」という米軍再編成と原子力空母の横須賀母港化を合意しました。米軍再編成は「憲法9条」に照らして当然違憲ですし、また日米安保条約をも踏み越える内容を含むものであり絶対に許されないものです。原子力空母の横須賀母港化は、米軍の中東への侵略のための機動力を一挙に向上させると同時に、ミサイル防衛のための重要な役割を果たすことになります。そして軍事機密というベールで覆われ、安全性の確認できない原子力発電所を東京湾に作ることになります。
 平和フォーラム・原水禁、神奈川平和運動センター、地元の平和団体、市民団体は「原子力空母の母港化に反対」し、多様な取り組みを積み上げてきました。ジョージ・ワシントンは、火災事故を起こし修理のため、当初の配備予定の8月19日から延期され、9月25日に配備の予定です。この本を読み、どう行動すべきか、考えてほしい。
(福山真劫)

 ※平和フォーラムで、1~9冊は1300円、10冊以上は1200円(送料別)の特価で取り扱っています。

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【映画評】
フツーの仕事がしたい
(08年/日本)
土屋トカチ監督

 いま、若者の間で、小林多喜二の『蟹工船』がブームになっています。1929年に発表されたプロレタリア文学の代表作で、蟹工船で酷使される貧しい労働者が描かれています。非正規労働の拡大やワーキングプアの増大など、現代の過酷な労働が『蟹工船』と重ね合わされ、反響を呼んでいるのです。
 そんななかで、一つのドキュメンタリーが完成し、「現代の『蟹工船』」(毎日新聞)と注目を集めています。それが、『フツーの仕事がしたい』です。この作品が描くのは、バラセメント(セメントの粉)を輸送する運転手、皆倉信和さん(36歳)さんの姿です。月552時間(無休で1日19時間!)にも及ぶ長時間労働で、家に帰れない日々が続き、心体ともにボロボロ。「会社が赤字だから」と、歩合給や個人請負制と形態が変えられ、賃金も一方的に下がりました。
 危険な過積載、過労による事故や病気…、殺人的な労働で1人の運転手が事故で亡くなったのを契機に、彼は藁にもすがる思いで労働組合に加入して闘う道を選びます。その組合が、平和フォーラムにも加盟している全日建運輸連帯労組でした。しかし、会社は暴力を使って組合からの脱退を迫ります。映画の冒頭から、そうした会社と組合との激しいやりとりが映されます。
 映画は、脅迫や重病などの困難を乗り越えて、労組の仲間とともに成果を勝ち取るまで、長期に渡り密着して記録されています。「普通の仕事がしたい…」─病院のベッドの上で皆倉さんはつぶやきます。このなんともやるせない言葉は、程度の差はあれ、いま多くの労働者が心の中で反芻していることかもしれません。
 そうした中で、連合も含めて「反貧困」への闘いが拡がっています。格差がますます激しくなろうとする時代に、組合を作り団結することの意味を改めて見直すことが出来る作品と言えます。また、それを記録するドキュメンタリーの力強さも思い知らされました。
 10月から東京、横浜で公開。その後、大阪や名古屋でも上映が予定。また、自主上映も各地で行われています。詳しくはこちらのウェブで。
(市村忠文)

http://nomalabor.exblog.jp/

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投稿コーナー
市民メディアセンターMediRの講座始まる
社会運動の力になりたい
MediR事務局長 松浦 敏尚

MediRは「学校」です
 市民メディアセンターMediR(メディアール)は、メディア教育とメディア制作・上映支援、情報発信支援やメディアに関する政策提言をめざしています。
 「日本にも市民のメディアセンターをつくりたい」─そんな思いの出発点となったのは、05年末に香港でおこなわれたWTO(世界貿易機関)閣僚会議反対行動で目の当りにした、韓国のメディア活動家の姿でした。カメラを持ってデモ隊とともに走り回る人、ラジオやネットで毎朝毎晩ニュースを配信する人、マスメディアの報道に抗する情報発信に全力をあげる彼らの多くが、韓国のメディアセンターで学んでいることを知り、数ヵ月後には韓国をスタディーツアーで訪れました。
 以来2年余りの間議論を重ね、10月から44のメディア講座を開講し本格的にオープンします。制作技術を含むメディアリテラシー教育から、映像で学ぶ現代社会の諸問題まで、多彩な講座を用意。詳しい内容や受講申込は次のサイトをご覧下さい。http://medir.jp
 MediRは学校ですが、単なるメディアの専門学校ではありません。一方向の関係になりがちなメディアとの関係を見つめ直し、マスメディアの行動原理を学んだり、制作現場の実情や報じられない現実を知ったり、そこに生きる人々の思いに想像力を働かせたりして、参加者ひとり一人が自ら表現や発信をしていく主体へと変化していく空間になりたいと思っています。
 MediRは誰にもひらかれたメディアセンターであると同時に、在日外国人や女性、障害者、非正規労働者などのいわゆるマイノリティとよばれる方々との関係をとりわけ重視しています。社会運動はこうした現実を人々に伝え、人権が守られる公正な社会の実現をめざして奮闘しています。しかし、全体として社会的影響力があるとは言えない状況です。それは、情報の発信方法などメディア戦略を位置づけるという意識の立ち遅れが、国家と資本の論理むき出しの情報であふれている現状を許しているのではないかと思います。

韓国では市民の情報発信が巨大な力に


メディア講座で学ぶ市民
(MediR事務所)

 近年の韓国では、メディアセンターと市民の情報発信が巨大な力となって、世界の耳目を集めるダイナミックな社会の変化を生み出している事例を数多く見ることができます。アメリカからの牛肉の輸入問題等をめぐった100万人キャンドル行動では、街のあちこちにカメラとパソコンをもって生中継をする市民があらわれ、マスメディアが報じない市民の表情や討論の様子、戦闘警察(機動隊)の暴力などを報じました。会社から帰宅して映像をネット上で見てから街に繰り出した人も多かったことから、夜の10時頃に参加者数のピークを迎えるということも少なくなかったそうです。
 韓国では、マスメディアに圧倒されない世論をつくるために「信じられるメディアを武器に」という気風は、軍事独裁政権だった80年代の民主化闘争を闘っていた頃から脈々と受け継がれ、90年代の中葉には、社会変革の重要な柱としてメディア戦略を意識し実践する運動が登場してきます。彼らは、視聴者運動、言論労組の運動、独立映画運動、情報通信分野の運動と連携しながら、2002年に韓国映像メディアセンターMEDIACT(メディアクト)を設立しました。このMEDIACTで学んだ受講生の多くが、いま韓国社会の民主主義の前進のために姿を現しています。これは、メディアセンターの役割を考える上で、非常に大きなヒントと影響を私たちにも与えています。

情報のつくり手・発信者を数多く生みだそう
 韓国と比べると日本では、市民の情報発信や市民メディアグループの動きはまだ緒についたばかりです。しかし、7月のG8洞爺湖サミットをめぐる市民の行動を取材するG8メディアネットワークの活動や、市民メディア同士のネットワーキングの広がりなど変化を見せてきています。MediRはこうした時期に、情報のつくり手・発信者を数多く生み出し、マスメディアと大資本の元にあるメディアを私たちの手に取り戻す役割と期待を背負ってスタートします。
 どんな政治的逆風にも簡単に崩れ去ることのない、活発な発信と討論で補強される自由な言論空間を拡大していきたいと思っています。10月からのMediRの挑戦に熱いご支援をよろしくお願いいたします。

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投稿コーナー
第40回食とみどり、水を守る全国集会

 「食と農の危機に立ち向かおう!~あずましの里青い森から 未来に向けて “ケッパるぞー”~」

◎日時:11月27日(木)13:30~28日(金)14:30
◎場所:青森市「青森市民ホール」「青森国際ホテル」

■日程:第一日目
《開会集会》 あいさつ、基調報告、運動功労者表彰
《食と農の危機に対してどう立ち向かうか─私の提言》鈴木宣弘(東京大大学院教授)、菅野芳秀(アジア農民交流センター共同代表)、野村和夫(パルシステム生協連産直事業部長)

■第二日目
《分科会》
◇第1「課題別入門講座」
◇第2「食の安心・安全・安定をめぐって」
◇第3「食料・農業政策をめぐって」
◇第4「森林・水を中心とした環境問題をめぐって」
◇第5「フィールドワーク」

《総括集会》
◇特別報告「食料・農業・農村問題と地域農業の再生~東北・青森の実践動向~」神田健策(弘前大教授)
◇まとめ、アピール・決議採択

◎参加費(前納)
◇2日間参加17,000円(宿泊費含)
◇日帰り参加3,000円
◇フィールドワーク2,500円

◎申込・問い合わせ
 全農林労組青森県事務所内・全国集会実行委員会(電・017-775-1646)

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